JP2005268100A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 電極と有機薄膜層との界面および/または有機薄膜層同士の界面での正孔あるいは電子の輸送が効率的に行われ、駆動電圧を低減可能な有機EL素子を提供すること。
【解決手段】 陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有し、少なくとも1の有機薄膜層が化学結合を介して陽極、陰極または他の有機薄膜層と結合していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に有機EL素子という)及びその製造方法に関わるものであり、さらに詳しくは、電気材料として有用で、かつ導電性又は半導電性を有する新規な多環式縮合芳香族炭化水素骨格含有有機シラン化合物を含む有機薄膜層を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
有機化合物は、末端官能基の化学反応による変換が可能であるため、材料として使用する場合に、自由度が高く、しかもこれまでの無機材料を用いたデバイスにはない新規機能を付与できることが特徴である。このような利点から、有機デバイスは以前から着目されており、有機TFT(有機薄膜トランジスタ)や有機ELのような有機デバイスに利用する研究が多くなされている。有機EL素子は、基体上に陽極、有機薄膜層、陰極が順次積層された構成であり、陽極と陰極の間に電界を印加することにより陽極より注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質を発光させる自発光素子である。したがって、より高いデバイス特性のためには、陽極からの正孔あるいは陰極からの電子を効率よく輸送する輸送層の開発や、効率の高い発光層の開発が必要である。また、電極と有機薄膜界面におけるキャリアインジェクションも重要であり、如何にキャリアを効率よく有機薄膜中に注入するのかが課題である。キャリアインジェクションを解決する一般的な手法としては、例えば、発光層よりもLUMOレベルの低い有機薄膜を電子輸送層として、発光層よりもHOMOレベルの高い有機薄膜を正孔輸送層として準備し、有機薄膜層を正孔輸送層、発光層、電子輸送層の多層構造とすることが挙げられる。このように発光層と電極との間に輸送層を有する構成とすると、発光層のみの場合と比較してキャリアインジェクションが容易に起こる効果が得られるためである。このとき、例えば発光層では単色性(蛍光スペクトルピークの半値幅が小さいほど好ましい)、高い量子効率(輝度が大きいほど好ましい)、低い分子結晶性(消光を防ぐため)が求められる。また、正孔輸送層には輸送特性としての高い正孔移動度やHOMOレベルの上昇のための高い電子吸引性が求められ、電子輸送層には輸送特性としての高い電子移動度や、LUMOレベルの低下のための高い電子供与性が求められる。
こういった背景のもと、有機EL素子としての発光層、正孔輸送層、電子輸送層あるいはそれらの界面に関する研究報告が多くなされている。発光層や輸送層の材料開発による有機ELの発光効率を向上させる手法としては、例えば、アセン骨格の有機化合物を使用する報告がなされている(例えば、特許文献1および特許文献2)。これらの報告は、テトラセン骨格や、ペンタセン骨格を有する有機化合物を発光層や正孔輸送層、あるいは電子輸送層に使用することによって、有機EL素子の発光効率を高めようとするものである。一方、界面均質性を高めるための報告としては、例えば、金属上にアルキルシラン処理を行う方法が報告されている(例えば、特許文献3)。この報告は、陽極上にアルキルシラン処理による表面改質を行い、その上に積層される有機薄膜への正孔輸送特性を向上させようとするものである。
これらの報告例を含め、従来の技術では、発光層、正孔輸送層および電子輸送層として使用される有機薄膜を、物理吸着を介して累積させる手法が一般的であった。
特開平10−36832号公報 特開2002−93581号公報 特開平8−330071号公報
しかしながら、物理吸着によって形成された有機薄膜は、膜の耐久性が低く、すぐに劣化してしまうことが課題であった。また、物理吸着によって発光層、正孔輸送層または電子輸送層などの有機薄膜を形成するために、電極と有機薄膜との界面または発光層と正孔輸送層または電子輸送層との界面において効率的に正孔輸送あるいは電子輸送が行われず、結果として駆動させるために大きな電圧が必要となる課題を有していた。特に、特許文献3における報告において、陽極/アルキルシラン界面は化学吸着であるが、その上に形成される正孔輸送層との界面は物理吸着からなされている。アルキルシランは基本的に絶縁性であるため、この報告を元に有機ELを形成した場合、結果的に陽極/正孔輸送層界面での注入障壁が形成されることが課題となった。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、電極と有機薄膜層との界面および/または有機薄膜層同士の界面での正孔あるいは電子の輸送が効率的に行われ、駆動電圧を低減可能な有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明は、陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有し、少なくとも1の有機薄膜層が化学結合を介して陽極、陰極または他の有機薄膜層と結合していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも1の有機薄膜層が化学結合を介して陽極、陰極または他の有機薄膜層と結合されているため、素子の耐久性が高く、また界面でのホールあるいは電子の注入を効率的に行うことができる。また本発明の有機EL素子は、有機薄膜層にπ電子共役系化合物を含むため、ホールあるいは電子の移動度が大きい。よって、本発明の有機EL素子は比較的小さな駆動電圧にて発光を起こすことができる。
本発明の有機EL素子は、有機層において発光するアセン骨格を有する化合物を含むため、電極間に当該化合物を含む有機層のみを発光層として有する1層型の素子としても使用できる。一方で、本発明の有機EL素子を、電極間に複数の有機層を有する多層型の素子とした場合に特に効果が大きい。すなわち、アセン骨格に電子吸引性基あるいは電子供与性基を導入した有機シラン化合物を用いることによって、当該化合物を含む有機薄膜層を正孔輸送層としても、あるいは電子輸送層としても使用可能である。中でも、本発明で使用される有機シラン化合物はπ電子共役系分子とケイ素原子とを有し、それの直接結合による電子吸引の効果を有するため、特に電子輸送層として使用したときに、本発明の有機EL素子は電子移動特性等の性能が特に優れ、より低駆動電圧で高発光効率を実現できる。
(有機EL素子の構成)
本発明の有機EL素子は陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有してなるものである。
陽極および陰極は有機EL素子の分野で従来から使用されている、あらゆる電極が使用可能である。詳しくは、陽極は通常、光透過率が高く、かつ正孔注入特性が高い薄膜が使用され、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、SnO、インジウム錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム亜鉛酸化物などのような金属酸化物または混合金属の酸化物を使用することができ、金のように高い仕事関数を有する金属、またはPEDOT(poly[3,4-(ethylene-1,2-dioxy)thiophene])、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)などのような高分子に電解質等のドーパント(dopant)を添加した伝導性高分子等が挙げられる。陰極は通常、電子注入特性が高い薄膜が使用され、例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金等のような合金、あるいは、マグネシウム、カルシウム等、あるいは、フッ化リチウム(LiF)/アルミニウム、リチウムオキサイド(LiO)/アルミニウム等のような二層構造を有する電極等が挙げられる。
有機薄膜層は、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、発光層からなる群から選択された1またはそれ以上の有機薄膜層が組み合わされて使用される。そのような有機薄膜層を用いた本発明の有機EL素子の構成として、例えば、以下に示す具体例が挙げられる。
構成(1);陽極−発光層−陰極、
構成(2);陽極−正孔輸送層−発光層−陰極、
構成(3);陽極−発光層−電子輸送層−陰極、および
構成(4);陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極。
本発明の有機EL素子はいかなる構成を有する場合であっても、少なくとも1の有機薄膜層、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、発光層から選択される少なくとも1の有機薄膜層に、後で詳述される有機シラン化合物が含有される。有機シラン化合物が含有されると、有機シラン化合物と、当該有機シラン化合物含有層が形成される層、例えば、陽極、陰極または他の有機薄膜層とが反応して化学的に結合され、結果として有機シラン化合物含有層と当該層が形成される層とが化学結合によって強固に結合される。そのため、それらの層間の界面において正孔や電子等のキャリアの注入・移動が効率よく起こり、全体としての発光効率が向上し駆動電圧を有効に低減可能となる。したがって、全ての有機薄膜層に有機シラン化合物が含有され、有機EL素子のすべての界面において化学結合による結合がなされていることが、キャリア注入の点で好ましいが、量子収率がより高い材料を発光層に使用することによって発光層自体の発光特性を大きくする観点からは、電極と輸送層のみが化学結合を介して結合されることがより好ましい。さらに、有機EL素子の製造効率の点では、より基板に近い輸送層と電極のみが化学結合を介して結合されている場合が最も好ましく、この構成においても正孔/電子輸送効率を向上させることができる。すなわち通常、透明基板上に陽極、所望の有機薄膜層および陰極を順次、積層して有機EL素子を製造することを考慮すると、正孔輸送層と陽極とが化学結合を介して結合されることがより好ましい。
例えば、有機EL素子が上記構成(1)を有する場合、有機薄膜層は発光層のみであり、当該発光層に有機シラン化合物が含有される。この場合、発光層は少なくとも下部の電極(例えば、陽極)と化学結合を介して結合される。そのような発光層は有機シラン化合物単独から構成されていてもよいし、または有機シラン化合物と他の発光物質との混合物から構成されていてもよい。他の発光物質としては、従来から有機EL素子の発光物質として使用されている物質であれば、特に制限されず、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq3)、スチリル化合物(dimerized styryl compound)、ベンツオキサゾール(benzoxazole)誘導体及びその金属錯体、ベンツイミダゾール(benzimidazole)誘導体及びその金属錯体、ポリ(p−フェニレンビニレン)のような高分子及びその誘導体または共重合体形態の誘導体、ポリフルオレン(polyfluorene)及びその誘導体等が挙げられる。
また例えば、有機EL素子が上記構成(2)を有する場合、有機シラン化合物は正孔輸送層または発光層の少なくとも一方の層、好ましくは正孔輸送層のみに含有される。正孔輸送層に有機シラン化合物が含有される場合、正孔輸送層は陽極と化学結合を介して結合される。そのような正孔輸送層は有機シラン化合物単独から構成されていてもよいし、または有機シラン化合物と他の正孔輸送物質との混合物から構成されていてもよい。他の正孔輸送物質としては、従来から有機EL素子の正孔輸送物質として使用されている物質であれば、特に制限されず、例えばN,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(4−メチルフェニル)−4,4'−ジアミン(TPD)等のトリフェニルジアミン化合物、N,N,N',N'−テトラ−(m−トルイル)−m−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン化合物、3,5−ジメチル−3'5'−ジ三級ブチル−4,4'−ジフェノキノン等のジフェノキノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−三級ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール化合物等が挙げられる。上記有機シラン化合物及び他の正孔輸送物質との混合比は、有機シラン化合物の割合が1重量%〜100重量%の範囲内となるように混合すればよいが、混合比率によって注入される正孔の量が変化するので、適切な注入が得られるように混合量を調整することが好ましい。殊に、有機シラン化合物と他の正孔輸送物質とが、互いに異なるエネルギー準位及び正孔に対する移動度を有する場合、化合物を選択し、最適な混合比率を見つけ出すことで、発光素子の構造に最適な正孔の濃度を調節することが望ましい。正孔輸送層に有機シラン化合物が含有されない場合の正孔輸送層は上記他の正孔輸送物質から構成されていればよい。
発光層に有機シラン化合物が含有される場合、発光層は正孔輸送層と化学結合を介して結合される。そのような場合の発光層構成材料は上記構成(1)の発光層と同様である。発光層に有機シラン化合物が含有されない場合の発光層は上記構成(1)の他の発光物質から構成されていればよい。
また例えば、有機EL素子が上記構成(3)を有する場合、有機シラン化合物は電子輸送層または発光層の少なくとも一方の層、好ましくは電子輸送層のみに含有される。電子輸送層に有機シラン化合物が含有される場合、電子輸送層は発光層と化学結合を介して結合される。そのような電子輸送層は有機シラン化合物単独から構成されていてもよいし、または有機シラン化合物と他の電子輸送物質との混合物から構成されていてもよい。他の電子輸送物質としては、従来から有機EL素子の電子輸送物質として使用されている物質であれば、特に制限されない。なお、発光層がAlq3のように、発光する性質と同時に電子を移送できる性質を有していれば、電子輸送層は形成しなくてもかまわない。代表的な電子輸送物質の例としてはAlq3が挙げられるが、フタロシアニン銅錯化合物を使用することもできる。上記有機シラン化合物及び他の電子輸送物質との混合比は、有機シラン化合物の割合が1重量%〜100重量%の範囲内となるように混合すればよいが、混合比率によって注入される電子の量が変化するので、適切な注入が得られるように混合量を調整することが好ましい。殊に、有機シラン化合物と他の電子輸送物質とが、互いに異なるエネルギー準位及び電子に対する移動度を有する場合、化合物を選択し、最適な混合比率を見つけ出すことで、発光素子の構造に最適な電子の濃度を調節することが望ましい。電子輸送層に有機シラン化合物が含有されない場合の電子輸送層は上記他の電子輸送物質から構成されていればよい。
発光層に有機シラン化合物が含有される場合、発光層は陽極と化学結合を介して結合される。そのような場合の発光層構成材料は上記構成(1)の発光層と同様である。発光層に有機シラン化合物が含有されない場合の発光層は上記構成(1)の他の発光物質から構成されていればよい。
また例えば、有機EL素子が上記構成(4)を有する場合、図1に示すように、陽極1上に正孔輸送層2、発光層3、電子輸送層4および陰極5を順次、積層してなっている。なお、製造効率の観点から、陽極1は通常、基板6上に予め形成されている。この場合、有機シラン化合物は正孔輸送層、電子輸送層または発光層のうちの少なくとも1の層、好ましくは正孔輸送層または電子輸送層の一方の層、特に電子輸送層のみに含有される。
電子輸送層に有機シラン化合物が含有される場合、電子輸送層は発光層と化学結合を介して結合される。そのような場合の電子輸送層構成材料は上記構成(3)の電子輸送層と同様である。電子輸送層に有機シラン化合物が含有されない場合の電子輸送層は上記構成(3)の他の電子輸送物質から構成されていればよい。
正孔輸送層に有機シラン化合物が含有される場合、正孔輸送層は陽極と化学結合を介して結合される。そのような場合の正孔輸送層構成材料は上記構成(2)の正孔輸送層と同様である。正孔輸送層に有機シラン化合物が含有されない場合の正孔輸送層は上記構成(2)の他の正孔輸送物質から構成されていればよい。
発光層に有機シラン化合物が含有される場合、発光層は正孔輸送層と化学結合を介して結合される。そのような場合の発光層は上記構成(1)の発光層と同様である。発光層に有機シラン化合物が含有されない場合の発光層は上記構成(1)の他の発光物質から構成されていればよい。
(有機シラン化合物)
本発明の有機EL素子に含有される有機シラン化合物について説明する。
本発明において有機シラン化合物は多環式縮合芳香族炭化水素骨格(以下、単に多環骨格という)に機能性基および特定のシリル基を有してなるものである。機能性基およびシリル基はそれぞれ後述の一般式(I)で表される有機シラン化合物が有し得る機能性基およびシリル基と同様である。
有機シラン化合物は多環骨格に特定のシリル基を有するため、当該シリル基と、有機シラン化合物含有層が表面に形成されるべき層との間で反応が起こり、結果として有機シラン化合物含有層と当該層が形成されるべき層とが化学結合によって強固に結合される。また有機シラン化合物は多環骨格と機能性基を有するため、優れた導電性を確保しながらも、隣接分子間の相互作用が低減されて非晶質とすることができ、結果として導電性が向上する。さらに加水分解によって水酸基を有するシリル基と、比較的疎水性の高い機能性基との存在によって、有機シラン化合物の界面活性が向上するため、膜形成時において当該化合物分子が同方向に適度に規則的に効率よく並ぶ。よって、有機シラン化合物の導電性がより一層向上し、膜形成時間を短縮することができる。また機能性基の疎水性が比較的高い場合には、有機シラン化合物の有機溶剤への溶解性が高められ、有機溶剤を用いた当該化合物の適用が可能となり、汎用性が向上する。
有機シラン化合物が含有する多環骨格はπ電子共役系分子構造を有するものであれば特に制限されず、導電性の観点からは対称性、特に線対称性を有するものが好ましい。そのような好ましい骨格の具体例として、例えば一直線縮合環系であるアセン(−acene)骨格、翼状縮合環系であるアフェン(−aphene)骨格、2個の同じ環が並んだ縮合環系であるアレン(−alene)骨格、1個の環を中心にベンゼン環が集中した縮合環系であるフェニレン(−phenylene)骨格がある。しかし、キャリア移動度を考慮すると、特にベンゼン環が直線状に結合されてなるアセン骨格あるいはフェニレン骨格が好ましい。アセン骨格の具体例としては例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、オクタセン等が挙げられる。また、フェニレン骨格としては例えばフェナレン、ペリレン、コロネン、オバレン等が挙げられる。以下、有機シラン化合物がアセン骨格を有する場合と、フェニレン骨格を有する場合とに分けて詳しく説明するが、他の骨格を有する場合についての説明は以下の説明に準じるものとする。
アセン骨格を有する本発明の有機シラン化合物は一般式(I);
Figure 2005268100
によって表される。以下、当該化合物を有機シラン化合物(I)という。
式(I)中、mは0〜10の整数であり、収率の観点から2〜8、特に2〜4の整数が好ましい。
〜R10のうち少なくとも1個の基、好ましくは1または2個、特に2個の基は一般式(i);
−SiX (i)
で表されるシリル基(以下、単にシリル基という)であり、少なくとも1個の基は機能性基であり、他の基は水素原子である。mが2以上のとき、全てのRおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(i)中、シリル基が有するX〜Xの基のうち少なくとも1個の基は加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子であり、他の基は隣接分子と反応することのない基である。このようにシリル基は加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子を1個以上有するため、化合物と当該化合物を含有する層が形成される層との強固な結合(化学結合)が達成され、キャリアの注入効率が向上する。
加水分解により水酸基を与える基としては、例えば、炭素数1〜4、好ましくは1〜3、特に1〜2のアルコキシ基が挙げられ、直鎖状のものが好ましい。具体例として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は一部の水素がさらに別の置換基、例えば、トリアルキルシリル基(アルキル基は炭素数1〜4)、アルコキシ基(炭素数1〜4)などで置換されていてもよい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子などが挙げられるが、反応性を考慮すると、好ましくは塩素原子である。
シリル基が加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子を2以上有する場合、それらの基は一部または全部が同一でも異なっていてもよい。
シリル基が有し得る隣接分子と反応することのない基としては、例えば、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、もしくはジまたはトリアリールアルキル基等が挙げられる。好ましくは置換または無置換のアルキル基である。隣接分子と反応することのない基は、分子間相互作用を低減する観点から、有機シラン化合物と当該化合物を含有する層が表面に形成される層との結合を阻害しない範囲内で分子体積が比較的大きいものが好ましく、より好ましくは放射状に広がったものである。隣接分子間の分子間相互作用を低減すると、有機薄膜としたときに非晶質となり、有機ELの発光効率がさらに向上するためである。
アルキル基は炭素数1〜10、特に1〜4のものが好ましく、分枝状のものがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びsec−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。炭素数1〜4までのアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基及びsec−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
シクロアルキル基は炭素数4〜8、特に5〜7のものが好ましく、具体例としてシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基が挙げられる。
アリール基は、炭素数5〜18、特に炭素数6の芳香族環が1個から3個にて構成された基であることが好ましい。ヘテロ原子として、硫黄原子が含まれていても良い。またアリール基は少なくとも1個の炭素数1〜4のアルキル基をo−位、m−位またはp−位のいずれかに有していても良い。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、sec−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。アリール基の具体例として、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、テルフェニリル(terphenylyl)、p−(tert−ブチル)フェニル基、m−ジエチルフェニル基、p−プロピルビフェニリル基等があげられる。テルフェニリルはテルフェニルから水素1原子を除いた残基である。
ジアリールアミノ基は、2個の水素原子がアリール基で置換されてなるアミノ基であり、含まれるアリール基は上記と同様である。ジアリールアミノ基の具体例として、例えば、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(ビフェニリル)アミノ基、N,N−ジ(テルフェニリル)アミノ基、N−フェニルN−ビフェニリルアミノ基、N−フェニルN−テルフェニリルアミノ基、N−ビフェニリルN−テルフェニリルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N−フェニルN−ナフチルアミノ基、N−ビフェニリルN−ナフチルアミノ基、N−テルフェニリルN−ナフチルアミノ基、N−メチルフェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−メチルフェニル−N−ナフチルアミノ基、N−メチルフェニル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジ(メチルフェニル)アミノ基等が挙げられる。
ジまたはトリアリールアルキル基は、2または3個の水素原子がアリール基で置換されてなる炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましく、含まれるアリール基は上記と同様である。炭素数1〜4の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル、n−ブチル基が挙げられ、これらの基のいずれの部位にアリール基を有していてもよいが、立体効果を考慮すると末端に有することが好ましい。ジアリールアルキル基の具体例として、例えば、ジメチルメチル基、ジフェニルメチル基、ジ(ビフェニリル)メチル基、ジ(テルフェニリル)メチル基、フェニルビフェニリルメチル基、フェニルテルフェニリルメチル基、ビフェニリルテルフェニリルメチル基、ジナフチルメチル基、フェニルナフチルメチル基、ビフェニリルナフチルメチル基、テルフェニリルナフチルメチル基、メチルフェニル−ビフェニリルメチル基、メチルフェニル−ナフチルメチル基、メチルフェニル−フェニルメチル基、ジ(メチルフェニル)メチル基、ジフェニルエチル基、ジ(ビフェニリル)エチル基、ジ(テルフェニリル)エチル基、フェニルビフェニリルエチル基、フェニルテルフェニリルエチル基、ビフェニリルテルフェニリルエチル基、ジナフチルエチル基、フェニルナフチルエチル基、ビフェニリルナフチルエチル基、テルフェニリルナフチルエチル基、メチルフェニル−ビフェニリルエチル基、メチルフェニル−ナフチルエチル基、メチルフェニル−フェニルエチル基、ジ(メチルフェニル)エチル基、ジフェニルプロピル基、ジ(ビフェニリル)プロピル基、ジ(テルフェニリル)プロピル基、フェニルビフェニリルプロピル基、フェニルテルフェニリルプロピル基、ビフェニリルテルフェニリルプロピル基、ジナフチルプロピル基、フェニルナフチルプロピル基、ビフェニリルナフチルプロピル基、テルフェニリルナフチルプロピル基、メチルフェニル−ビフェニリルプロピル基、メチルフェニル−ナフチルプロピル基、メチルフェニル−フェニルプロピル基、ジ(メチルフェニル)プロピル基、ジフェニルブチル基、ジ(ビフェニリル)ブチル基、ジ(テルフェニリル)ブチル基、フェニルビフェニリルブチル基、フェニルテルフェニリルブチル基、ビフェニリルテルフェニリルブチル基、ジナフチルブチル基、フェニルナフチルブチル基、ビフェニリルナフチルブチル基、テルフェニリルナフチルブチル基、メチルフェニル−ビフェニリルブチル基、メチルフェニル−ナフチルブチル基、メチルフェニル−フェニルブチル基、ジ(メチルフェニル)ブチル基等が挙げられる。トリアリールアルキル基の具体例としては、例えば、トリメチルメチル基、トリフェニルメチル基、トリ(ビフェニリル)メチル基、トリ(テルフェニリル)メチル基、フェニル−ジ(ビフェニリル)メチル基、ジ(フェニル)テルフェニリルメチル基、フェニルジ(テルフェニリル)メチル基、トリナフチルメチル基、フェニルジ(ナフチル)メチル基、ジ(フェニル)ナフチルメチル基、ジ(テルフェニリル)ナフチルメチル基、メチルフェニル−ジ(フェニル)メチル基、メチルフェニル−ジ(ナフチル)メチル基、メチルフェニル−ジ(ビフェニリル)メチル基、トリ(メチルフェニル)メチル基、トリフェニルエチル基、トリ(ビフェニリル)エチル基、トリ(テルフェニリル)エチル基、フェニル−ジ(ビフェニリル)エチル基、ジ(フェニル)テルフェニリルエチル基、フェニルジ(テルフェニリル)エチル基、トリナフチルエチル基、フェニルジ(ナフチル)エチル基、ジ(フェニル)ナフチルエチル基、ジ(テルフェニリル)ナフチルエチル基、メチルフェニル−ジ(フェニル)エチル基、メチルフェニル−ジ(ナフチル)エチル基、メチルフェニル−ジ(ビフェニリル)エチル基、トリ(メチルフェニル)エチル基等が挙げられる。
シリル基が上記隣接分子と反応することのない基を2つ有する場合、それらの基は同一でも異なっていてもよい。
有機シラン化合物(I)は、R〜R10のうち少なくとも1個の基がシリル基である限り、いずれの基がシリル基であってもよいが、導電性を考慮すると好ましくはR〜Rのうち少なくとも1個の基がシリル基であることが好ましい。
本発明の有機シラン化合物(I)が上記シリル基を2以上有する場合、それらの基は一部または全部が同一でも異なっていてもよい。
本発明の有機シラン化合物(I)が有し得る機能性基は、有機溶剤への溶解性を向上させる作用、有機薄膜を形成するときに分子間相互作用を低減して非晶質膜が形成されるようにする作用、および化合物のHOMOレベルの不安定化あるいはLUMOレベルの安定化を達成する作用を担う基である。このとき、機能性基は、反応制御の観点から、隣接分子と反応することのない基であることが好ましい。有機溶剤への溶解性を向上させる作用の観点からは、機能性基は疎水性を有することが好ましい。非晶質膜を形成する作用の観点からは、機能性基は当該基の分子体積が大きいものが好ましい。化合物のHOMOレベルの不安定化あるいはLUMOレベルの安定化を達成する作用の観点からは、機能性基は、電子供与性あるいは電子吸引性を有する基であることが好ましい。機能性基はこれらいずれの作用の条件も満たしているものが最も好ましいが、機能性基は疎水性を有するものに制限されるものではない。機能性基が電子吸引性を有する場合、当該電子吸引性基は親水性のものが多いが、そのような親水性を有する電子吸引性基を機能性基として有する本発明の化合物(電子輸送物質)であっても、有機溶剤に対する溶解性は十分に確保できるためである。
好ましい機能性基の例としては、例えば、置換または無置換のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、ジまたはトリアリールアルキル基、アルコキシ基、オキシアリール基、ニトリル基、ニトロ基、エステル基等が挙げられる。機能性基の安定性を考慮すると、ニトリル基もしくはニトロ基がより好ましい。
機能性基としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、ジまたはトリアリールアルキル基はそれぞれ、シリル基が有し得る「隣接分子と反応することのない基」としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、ジまたはトリアリールアルキル基と同様である。
アルコキシ基は炭素数1〜6、特に3〜4のものが好ましく、直鎖状または分枝状いずれのものでもよいが、より好ましくは分枝状のものである。好ましい具体例として2−プロピルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基などが挙げられる。
オキシアリール基は、水酸基の水素原子がアリール基で置換されてなる基であり、含まれるアリール基は、シリル基が有し得る「隣接分子と反応することのない基」としてのアリール基と同様である。オキシアリール基の具体例として、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基は炭素数1〜10、特に1〜4のものが好ましく、具体例としてモノクロロエチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロエチル基等が挙げられる。
エステル基は−COOR'あるいは−OCOR’(R'はアルキル基またはアリール基であり、それらはそれぞれ「隣接分子と反応することのない基」としてのアルキル基またはアリール基と同様である)で表される基である。具体例として、例えば、−COOCH、−COOCHCH、−COO(CHCH、−COOCH(CH、−COO(CHCH、−COOCH(CH)CHCH、−COOC(CH、−COOPh、−COO(Ph)、−COO(Ph)、−OCOCH、−OCOCHCH、−OCO(CHCH、−OCOCH(CH、−OCO(CHCH、−OCOCH(CH)CHCH、−OCOC(CH、−OCOPh、−OCO(Ph)、−OCO(Ph)、(Phはフェニル基)等が挙げられる。
有機シラン化合物(I)は、R〜R10のうち少なくとも1個の基が機能性基である限り、いずれの基が機能性基であってもよいが、化合物の合成方法や収率を考慮すると好ましくはR〜R10のうち1〜6個、特に1〜4個の基が機能性基であることである。すなわち、機能性基を有しないと、当該化合物の有機溶剤への溶解度が著しく低い。一方、機能性基の数が6よりも多いと、機能性基の立体効果により、そのような数の機能性基を多環骨格に導入することが困難である。
本発明の有機シラン化合物(I)が上記機能性基を2以上有する場合、それらの基は一部または全部が同一でも異なっていてもよい。
例えば、有機シラン化合物(I)を発光層に含有させる場合、有機シラン化合物(I)は上記範囲内のものであれば特に制限されないが、機能性基が上記のうち置換または無置換のアルキル基、ジアリールアミノ基、またはジまたはトリアリールアルキル基であるものを使用することが好ましい。このとき、シリル基は特に制限されず、前記と同様であればよい。例えば、一般式(I)においてmが上記範囲内の有機シラン化合物をAlq3と混合し、有機薄膜を形成すると、それぞれ、m=4(575nm)、m=5(620nm)、m=6(625nm)、m=7(630nm)、m=8(635nm)の発光が可能である。
また例えば、有機シラン化合物(I)を電子輸送層に含有させる場合、有機シラン化合物(I)は、機能性基が上記のうち電子供与性を有する基(Hammett則に基づく置換基定数sが0以上のもの)、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、ジまたはトリアリールアルキル基、アルコキシ基、オキシアリール基等であるものが使用される。このとき、シリル基は特に制限されず、前記と同様であればよい。
また例えば、有機シラン化合物(I)を正孔輸送層に含有させる場合、有機シラン化合物(I)は、機能性基が上記のうち電子吸引性を有する基(Hammett則に基づく置換基定数sが0以下のもの)、例えば、ハロゲン化アルキル基、ニトリル基、ニトロ基、エステル基等であるものが使用される。このとき、シリル基は特に制限されず、前記と同様であればよい。
有機シラン化合物(I)を発光層、電子輸送層または正孔輸送層のいずれの層に含有させる場合においても、発光効率や結晶性制御を考慮すると、当該化合物の構造が対称性、特に線対称性を有することが好ましい。すなわち、一般式(I)において、RはRと、RはRと、RはRと、RはRと、RはR10と、それぞれ同一の置換基であることが好ましい。特にRはRと、RはRと、RはRと、RはR10と、それぞれ同一の置換基であることが好ましい。
本発明の有機シラン化合物(I)の具体例を以下に示す。
Figure 2005268100
Figure 2005268100
上記とは別のアセン骨格を有する本発明の有機シラン化合物は一般式(II):
Figure 2005268100
及び一般式(III):
Figure 2005268100
によって表される。以下、一般式(II)の化合物を有機シラン化合物(II)、一般式(III)の化合物を有機シラン化合物(III)という。有機シラン化合物(II)及び(III)が有する骨格は、いずれもベンゼン環がジグザグに結合されてなるアセン骨格である。便宜上、ベンゼン環のユニット数を上記一般式中に示す形で指定する。また、置換基の結合位置および種類をRn−mとして指定する。本発明の有機シラン化合物(II)および(III)のいずれにおいても、ベンゼン環の総ユニット数nは3〜7のものが好ましい。
一般式(II)のアセン骨格の好ましい具体例として、例えば、フェナントレン骨格、クリセン骨格、ピセン骨格等が挙げられる。
一般式(III)のアセン骨格の好ましい具体例として、例えば、ピレン骨格、アントアントレン骨格等が挙げられる。
式(II)および(III)中、Rn−mにて示される全ての基のうち、少なくとも1個の基はシリル基であり、少なくとも1個、好ましくは1〜4個の基は機能性基であり、他の基はすべて水素原子である。シリル基および機能性基はそれぞれ式(I)におけるシリル基および機能性基と同様である。
ペリレン骨格を有する本発明の有機シラン化合物は一般式(IV);
Figure 2005268100
によって表される。以下、当該化合物を有機シラン化合物(IV)という。
式(IV)中、R11〜R22のうち少なくとも1個の基、好ましくは1〜2個の基はシリル基であり、少なくとも1個の基、好ましくは1〜4個の基は機能性基であり、他の基は水素原子である。式(IV)においてシリル基および機能性基はそれぞれ式(I)におけるシリル基および機能性基と同様である。
本発明の有機シラン化合物(IV)がシリル基を2以上有する場合、それらの基は一部または全部が同一でも異なっていてもよい。
本発明の有機シラン化合物(IV)が機能性基を2以上有する場合、それらの基は一部または全部が同一でも異なっていてもよい。
また、有機シラン化合物(IV)を有機EL用材料として使用する場合、発光効率を考慮すると、当該化合物の構造が対称性、特に点対称性を有することが好ましい。すなわち、一般式(IV)において、R11はR17と、R12はR18と、R13はR19と、R14はR20と、R15はR21と、R16はR22と、それぞれ同一の置換基であることが好ましい。
本発明の有機シラン化合物(IV)の具体例を以下に示す。
Figure 2005268100
(合成方法)
本発明の有機シラン化合物は、例えば、多環骨格含有分子に機能性基およびシリル基を導入することによって合成可能である。
多環骨格含有分子は市販品として入手可能であるが、例えば、(A)原料の所定位置にトリフラート基を挿入後、フラン誘導体と反応させ、続いて酸化させる手法(ルートA1〜A5参照)、および(B)原料の所定位置にアセチレン誘導体を付与した後に、アセチレン基同士を閉環反応させる手法(ルートB1〜B5参照)等によって合成可能である。特に、上記手法(A)を採用する場合、フラン誘導体または原料に予め機能性基を導入しておくことにより、多環骨格含有分子を合成すると同時に機能性基を導入することができる(ルートA1〜A5参照)。また、上記手法(B)を採用する場合、原料に予め機能性基を導入しておくことにより、多環骨格含有分子を合成すると同時に機能性基を導入することができる(ルートB1参照)。これらの手法を用いた多環骨格含有分子の合成ルートの一例を以下に示す。
Figure 2005268100
Figure 2005268100
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して前記機能性基と同様である)
Figure 2005268100
Figure 2005268100
Figure 2005268100
Figure 2005268100
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して前記機能性基と同様である)
機能性基は、所望により多環骨格の所定部位をハロゲン化させ、機能性基含有化合物と反応させることによって導入可能である。機能性基が既に導入されている場合にはその必要はない。
機能性基含有化合物は、多環骨格含有分子のハロゲン化部位との反応によって当該部位に機能性基を導入し得るものである。
具体的には、例えば、機能性基がアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジまたはトリアリールアルキル基の場合には当該機能性基を有するグリニャール試薬が使用可能である。また例えば、機能性基がジアリールアミノ基の場合にはジアリールアミンが使用可能である。また例えば、機能性基がアルコキシ基、オキシアリール基の場合にはそれらの基を有するアルコールが使用可能である。また例えば、機能性基がハロゲン化アルキル基の場合にも、当該機能性基を有するグリニャール試薬が使用可能である。また例えば、機能性基がニトリル基、ニトロ基、エステル基の場合には、原料化合物からの合成過程にて付与し、かつ、その後の反応経路を穏やかなルートにする手法が使用可能である。なお、穏やかな反応経路を選択できない場合には、その反応の前後に、保護/脱保護反応を利用することができる。保護/脱保護反応に用いる保護基とは、たとえばトリメトキシシリル基があげられる。
機能性基導入時の反応条件としては機能性基を導入できる限り特に制限されず、通常は反応に影響のない有機溶媒中で1〜48時間還流すればよい。反応に影響のない有機溶媒としては後述と同様の有機溶媒が使用可能である。
シリル基は、所望により多環骨格の所定部位をハロゲン化させ、一般式;
−SiX
(式中、X〜Xは前記と同様である;Xは水素原子またはハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは水素原子または塩素原子である)で表されるシラン誘導体(以下、単にシラン誘導体という)と反応させることによって導入可能である。所定部位が既にハロゲン化されているにはハロゲン化の必要はない。
好ましいシラン誘導体の具体例として、例えば、トリエトキシシラン、ジ(t−ブチル)モノメトキシシラン、テトラクロロシランが挙げられる。
シリル基導入時の反応条件としてはシリル基を導入できる限り特に制限されない。具体的には、反応温度は、例えば、−100〜150℃であり、好ましくは−20〜100℃である。反応時間は、例えば、0.1〜48時間程度である。反応は、通常、反応に影響のない有機溶媒中で行われる。反応に影響のない有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系炭化水素類などが挙げられる。これらは単独で又は混合液として用いることが出来る。中でも、エーテル類、塩素系炭化水素類、芳香族炭化水素類が好適であり、特に、THF、ジエチルエーテル、クロロホルム、ニトロベンゼン、トルエンが好適である。反応は、任意に触媒を用いてもよい。触媒としては公知のものを用いることができ、例えば、銅触媒、白金触媒、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。
多環骨格の所定部位にトリメチルシリル基等の残基が存在し、ハロゲン化が起こり難いときは、以下に示すような反応に基づいてシリル基を導入すればよい。下記反応の出発物質はルートA1により合成された多環骨格含有分子である。
Figure 2005268100
機能性基およびシリル基の導入ルートの一例を以下に示す。
Figure 2005268100
Figure 2005268100
このような方法で得られる本発明の有機シラン化合物は、公知の手段、例えば転溶、濃縮、溶媒抽出、分留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどにより反応溶液から単離、精製することができる。
(有機EL素子の製造方法)
本発明の有機EL素子は通常、基板上に陽極、各有機薄膜層および陰極を順次積層してなっている。
基板材料については特に制限はないが、基板側から発光光を取り出すことを考慮すると、透明あるいは半透明材料が好ましい。したがって、例えば、非晶質の性質を有するガラスまたはプラスチック使用することが好ましく、用途によっては金属またはウェハー(wafer)のように適切な機械強度及び表面平坦度を有する基板を使用することができる。
陽極および陰極は、真空蒸着法、分子線蒸着法等の蒸着法や、RFスパッタ法等のスパッタ法等の気相法を採用することによって形成可能である。陽極および陰極の厚みは特に制限されず、通常はそれぞれ独立して50〜500nmであればよい。
有機シラン化合物を含有しない有機薄膜層は、発光層、電子輸送層または正孔輸送層のいずれの層であっても、所定の物質を用いて、陽極および陰極の形成方法と同様の方法を採用することによって形成可能である。
有機シラン化合物を含有するか否かにかかわらず、発光層、電子輸送層および正孔輸送層の厚みは特に制限されず、通常はそれぞれ独立して1〜500nmであればよい。
有機シラン化合物を含有する有機薄膜層は、所定の物質を用いて、以下に示す方法によって形成可能である。
(有機シラン化合物を含有する有機薄膜層およびその形成方法)
有機シラン化合物を含有する有機薄膜層は、発光層、電子輸送層または正孔輸送層のいずれの層であっても、溶液プロセスを含む方法によって、被形成層上に化学結合を介して結合されながら、非晶質膜として形成可能である。被形成層とは有機シラン化合物含有層が形成されるべき層を意味するものとする。例えば、前記構成(1)において発光層に有機シラン化合物を含有させる場合は被形成層は陽極を指す。また例えば、前記構成(2)において正孔輸送層に有機シラン化合物を含有させる場合は被形成層は陽極を指す。また例えば、前記構成(3)および(4)において電子輸送層に有機シラン化合物を含有させる場合は被形成層は発光層を指す。
溶液プロセスを含む薄膜形成方法として、例えば、化学的吸着法、LB法(Langmuir Blodget法)、ディッピング法、スピンコート法、キャスト法等の公知の方法が採用可能である。以下、有機シラン化合物を用いて有機薄膜を形成したときの薄膜構成およびその形成方法について述べる。
図2は、有機シラン化合物を用いて形成された有機薄膜の概略構成図の一例である。図2においては、例えば、前記一般式(I)においてR〜Rの一方がシリル基であり、かつR〜RおよびR〜R10のうち少なくとも1個の基が機能性基13である有機シラン化合物を使用すると、被形成層11上に多環骨格12がシラノール結合(−Si−O−)を介して結合されながら非晶質薄膜10が形成されることが示されている。すなわち、シリル基が有するアルコキシ基もしくはハロゲン原子が結果としてエーテル結合(−O−)に変換され、該エーテル結合によって有機シラン化合物、ひいては当該化合物を含有する有機薄膜層10が被形成層11上に結合される。また機能性基13の立体障害によって隣接分子間の分子間距離が大きくなるので、隣接分子間の分子間相互作用(ファンデルワールス相互作用)が小さくなる。そのため、化合物分子は図2に示したように、規則的に並びつつも結晶化することなく、適度にランダムに配向し、導電性に優れた非晶質膜10を得ることができる。
図2において薄膜は単分子層構造を有しているが、そのような構造は例えば、化学吸着法により形成することができる。詳しくは、有機シラン化合物を有機溶剤に溶解する。得られた溶液中に、表面に水酸基を有する被形成層を含む基体を一定時間浸漬させることにより有機シラン化合物を被形成層と結合させる。このときのメカニズムの詳細は一般的に、以下に示す機構A1およびB1が複合的に関与しているものと考えられる。
機構A1;有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子は有機溶剤中にわずかに含まれる水分子によって加水分解されて水酸基に変換され、当該水酸基と被形成層の水酸基との間で脱水反応が起こる。
機構B1;有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子と被形成層の水酸基との間でそれぞれ、脱アルコール反応あるいは脱ハロゲン化水素反応が起こる。
それらの結果としてシリル基のケイ素原子と被形成層とはエーテル結合(−O−)を介して化学的に結合されると考えられる。
このような機構による成膜は化学吸着法のみならず、スピンコート法、ディッピング法等、他の溶液プロセスによっても容易に達成できる。
また、図2における単分子層構造はLB法によっても容易に形成可能である。詳しくは、有機シラン化合物を有機溶剤に溶解する。得られた溶液を水面上に滴下し、水面上に薄膜を形成する。その状態で水面上に圧力を加え、水酸基を表面に有する被形成層を含む基体を引き上げることによって有機シラン化合物を被形成層と結合させる。このときのメカニズムの詳細は一般的に、以下に示す機構C1ならびに上記機構A1およびB1が複合的に関与しているものと考えられる。
機構C1;有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子は、溶液が滴下される水によって加水分解されて水酸基に変換され、当該水酸基と被形成層の水酸基との間で脱水反応が起こる。
それらの結果としてシリル基のケイ素原子と基板とはエーテル結合(−O−)を介して化学的に結合されると考えられる。
別の結合形態として、例えば、被形成層が表面にカルボキシル基を有する場合、そのメカニズムの詳細は一般的に以下に示す機構A2、B2およびC2が複合的に関与し得るものと考えられる。
機構A2;有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子は有機溶剤中にわずかに含まれる水分子によって加水分解されて水酸基に変換され、当該水酸基と被形成層のカルボキシル基との間で脱水反応が起こる。
機構B2;有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子と被形成層のカルボキシル基との間でそれぞれ、脱アルコール反応あるいは脱ハロゲン化水素反応が起こる。
機構C2(LB法による場合);有機シラン化合物(シリル基)が有するアルコキシ基あるいはハロゲン原子は、溶液が滴下される水によって加水分解されて水酸基に変換され、当該水酸基と被形成層のカルボキシル基との間で脱水反応が起こる。
それらの結果としてシリル基のケイ素原子と被形成層とはエステル結合[ケイ素原子側:−O−C(=O)−:基板側]を介して化学的に結合されると考えられる。なお、エステル結合には構造上、エーテル結合(−O−)が含まれるため、本発明において、有機シラン化合物がエーテル結合を介して被形成層と結合するとは、エステル結合を介して結合する場合も包含されるものとする。
被形成層が表面に水酸基やカルボキシル基等の活性水素含有基を有していない場合は、親水化処理によって当該層の表面に活性水素含有基を付与できる。親水化処理は、例えば、過酸化水素と濃硫酸との混合溶液中に被形成層を浸漬すること等によって行うことができる。
本発明において有機シラン化合物含有層と被形成層との間では上記のような各種形態の結合が複合的に起こってもよい。
図3は、有機シラン化合物を用いて形成された有機薄膜の概略構成図の別の一例である。図3においては、例えば、前記一般式(I)においてR〜Rの一方がシリル基であり、かつR〜RおよびR〜R10のうち少なくとも1個の基が窒素原子あるいは酸素原子を有する機能性基16(例えば、ジアリールアミノ基、アルコキシ基またはオキシアリール基等)である有機シラン化合物を使用すると、被形成層14上に多環骨格15がシラノール結合を介して強固に結合されるだけでなく、当該機能性基16とシラノール基との相互作用(水素結合)(図3中、点線で示す)によって、非晶質有機薄膜20を多分子層構造にできることが示されている。すなわち、被形成層14との界面においてシリル基が有するアルコキシ基又はハロゲン原子が結果としてエーテル結合(−O−)に変換され、該エーテル結合を介して有機シラン化合物、ひいては当該化合物を含有する有機薄膜層20が被形成層14上に結合される。一方、エーテル結合を介して被形成層14に結合されている有機シラン化合物はその上部の機能性基16において、別の有機シラン化合物が有するシリル基の水酸基と相互的に作用し、多分子層構造をなしている。このとき、シリル基におけるXまたはXの少なくとも一方が隣接分子と反応することのない置換基であれば、シリル基間の立体障害の効果はさらに大きくなり、より良質な非晶質膜を得ることができるが、当該置換基の分子体積が大きすぎると、被形成層との反応性が低下することを考慮すると、主骨格の多環骨格15の分子体積よりも小さい置換基である方が好ましい。
さらに、このとき、シリル基におけるXまたはXの少なくとも一方がアルコキシ基あるいはハロゲン原子であって、結果としてシリル基がシラノール基を2〜3個有すると、1の化合物分子における基板との結合部分が2〜3ヶ所となり、被形成層との密着性をさらに高めることができる。この場合、被形成層との結合部分を2〜3ヶ所にすることによって、多環骨格が被形成層に対して垂直に立った構造を多く含ませることが可能である。このように、多環骨格が適度にランダムに配向する中で、多環骨格が被形成層に対して垂直に立った構造を持たせることによって、隣接分子のπ−π相互作用が適度に強くなるため、有機薄膜の導電性を一層高めることができる。したがって、有機薄膜の導電性がさらに大きくなり、結果として効率的に正孔あるいは電子を輸送することができる有機薄膜を持った高いデバイス特性を実現することができる。
図3に示すような多分子層構造を有する有機薄膜は、例えば、ディッピング法、スピンコート法、キャスト法等によって容易に形成可能である。
詳しくは、有機シラン化合物を有機溶剤に溶解する。得られた溶液中に、水酸基あるいはカルボキシル基を表面に有する被形成層を含む基体を浸漬して、引き上げる。あるいは、得られた溶液を被形成層表面に塗布する。その後、有機溶剤で洗浄し、水洗し、放置するか加熱することにより乾燥して、薄膜を定着させる。この薄膜にはさらに電解重合等の処理を施してもよい。
有機薄膜を形成するに際して有機シラン化合物を溶解可能な有機溶剤としては、当該化合物が有する機能性基およびシリル基等によっても異なるが、例えば、ヘキサン、n−ヘキサデカン、メタノール、エタノール、IPA、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、THF、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、DMSO、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの非水系有機溶剤が挙げられる。
本発明は、有機シラン化合物含有層の形成方法として従来から採用されている真空蒸着法、分子線蒸着法、スパッタリング法等の方法を採用することを妨げるものではない。
<有機シラン化合物の合成>
(準備例1)
合成例1及び合成例4で用いる2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンはルートA4あるいはルートA5の第1反応式に従い、以下の方法により合成した。
詳細には、まず、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた200mlガラスフラスコに、マグネシウム0.4M、HMPT(Hexamethyl phosphorous triamide)100mL、THF20mL及びI(触媒)、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン(例えばキシダ化学より純度99%で購入できる)0.1Mを加えた後、温度80℃にて、クロロトリメチルシラン0.4Mを滴下し、30分間攪拌した後、130℃にて4日間還流させることにより、1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンを合成した。続いて、200mLナスフラスコに、i−PrNH20mM、PhI(OAc)[(ジアセトキシヨード)ベンゼン((diacetoxyiodo)benzene)]50mM、ジクロロメタン50mLを加えた後、0℃にてCFCOH(TOH)50mMを滴下し、2時間攪拌した。続いて前記1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼン50mMを含むジクロロメタン溶液10mLを0℃にて滴下し、室温にて2時間攪拌することにより、フェニル[2,4,5−トリス(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウム トリフレート(phenyl[2,4,5−tris(trimethylsilyl)phenyl]iodonium Triflateを)合成した。さらに続いて、50mLナスフラスコに、Bu4NF2.0MのTHF溶液を仕込み、前記フェニル[2,4,5−トリス(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウム トリフレート5mM及び3,4−ジ(トリメチルシリル)フラン10mMを含むジクロロメタン溶液10mLを0℃にて滴下し、30分間攪拌することで反応を進行させた。反応終了後、ジクロロメタン及び水にて抽出を行ない、カラムクロマトグラフにて精製を行うことで、1,4−ジヒドロ−1,4−エポキシナフタレン誘導体を合成した。その後、前記1,4−ジヒドロ−1,4−エポキシナフタレン誘導体をヨウ化リチウム1mM,DBU(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)10mMを含むTHF溶液10mLを、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた50mlガラスフラスコに仕込み、前記1,4−ジヒドロ−1,4−エポキシナフタレン誘導体1mMを加えた後、窒素雰囲気下にて3時間還流させることで、反応を進行させた。反応終了後、抽出及びMgSOによる水分除去を行うことで、標記の2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンを合成した。
(合成例1)
3−トリエトキシシリル−6,8,9,11−テトラ−t−ブチルテトラセンの合成
3−トリエトキシシリル−6,8,9,11−テトラ−t−ブチルテトラセンはルートA4に従い、2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(tert−ブチル)−アントラセンを合成し、次いで、前記ルートC2に従って、トリメチルシリル基を4級アンモニウムを用いて脱保護させ、シラン化合物と反応させることによって、合成した。
より詳細には以下の手法により合成した。まず、前記準備例1で合成した2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンを出発原料として使用し、合成手法は、3,4−ジ(トリメチルシリル)フランの代わりに、2,5−(tert−ブチル)−3,4−ジ(トリメチルシリル)フランを使用することを除き、準備例1の、1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンから2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンを合成する手法と同様の手法にて2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(tert−ブチル)−アントラセンを合成した。さらに、2,5−(tert−ブチル)−3,4−ジ(トリメチルシリル)フランの代わりに、3,4−(tert−ブチル)フランを使用することを除き、本合成例の2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンから2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(tert−ブチル)−アントラセンを合成する手法と同様の手法を適用することより、下記構造式(A)にて表される2,3−ジ(トリメチルシリル)−6,8,9,11−テトラ(tert−ブチル)テトラセンを合成した。
Figure 2005268100
続いて、前記2,3−ジ(トリメチルシリル)−6,8,9,11−テトラ(tert−ブチル)テトラセン1mMを少量の水及びPhNMeFを含むTHF溶媒に溶解させた後、攪拌することで、6,8,9,11−テトラ(tert−ブチル)テトラセンを合成した。さらに、窒素雰囲気下にて、200mlナスフラスコに乾燥THF5ml、前記6,8,9,11−テトラ(tert−ブチル)テトラセンを5mM、マグネシウムを加えた後、1時間攪拌することにより、グリニヤール試薬を形成したのち、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた100mlナスフラスコにクロロトリエトキシシラン5mM、THF30mlを仕込み、氷冷したのち、前記グリニヤール試薬を加え、30℃にて1時間成熟を行った。次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除いた後、ろ液からTHF及び未反応のクロロトリエトキシシランをストリップすることにより標記化合物を15%の収率で得た。
得られた化合物について、赤外吸収測定を行ったところ、波長1035cm−1にSi−O−Cの吸収が見られた。このことより、得られた化合物にシリル基が含まれることが確認された。化合物を含むクロロホルム溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長493nmに吸収が観測された。この吸収は、分子に含まれるテトラセン骨格のπ→π*遷移に起因しており、化合物がテトラセン骨格を含むことが確認できた。
さらに、化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。
(8.0ppm〜7.3ppm)(m)(7H;テトラセン骨格由来)
(3.9ppm〜3.7ppm)(m)(6H;シリル基のエチル基由来)
(1.6ppm〜1.1ppm)(m)
(45H;t−ブチル基及びシリル基のメチル基由来)
これらの結果から、この化合物が3−トリエトキシシリル−6,8,9,11−テトラ−t−ブチルテトラセンであることを確認した。
(合成例2)
3−ジ−t−ブチルメトキシシリル−9−ジフェニルメチルペンタセンの合成
3−ジ−t−ブチルメトキシシリル−9−ジフェニルメチルペンタセンは前記ルートD2の手法により合成した。即ち、クロロジフェニルメタンを当量のマグネシウムと反応させることによって、グリニヤール試薬を形成した後に、ブロモペンタセンを含むニトロベンゼン中に前記グリニヤール試薬を徐々に添加することによって、9−ジフェニルメチルペンタセンを合成した。続いて、NBSを用いて3−ブロモ−9−ジフェニルメチルペンタセンを形成させたのちにニトロベンゼン中に溶解させたH−Si(C(CHOCHと反応させることによって、3−ジ−t−ブチルメトキシシリル−9−ジフェニルメチルペンタセンを合成した。
より詳細には、まず、所定量のクロロジフェニルメタンを含む、例えばクロロホルム溶液中に、マグネシウムを加えることによって、グリニヤール試薬を形成させた。続いて、9−ブロモペンタセンのクロロホルム溶液をゆっくりと加えることによって、9−ジフェニルメチルペンタセンを形成した。つづいて、例えばNBSを用いて前記9−ジフェニルメチルペンタセンをブロモ化した後に、3位以外がブロモ化された化合物を抽出により除去することによって、3−ブロモ−9−ジフェニルメチルペンタセンを得た。更に、クロロジ(tert−ブチル)メトキシシランをクロロホルム中に溶解させ、その溶液を、前記3−ブロモ−9−ジフェニルメチルペンタセンを含むクロロホルム溶液に加えることによって反応させ、標記化合物を合成した(収率10%)。
得られた化合物について、赤外吸収測定を行ったところ、波長1020cm−1にSi−O−Cの吸収が見られた。化合物を含むクロロホルム溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長605nmに吸収が観測された。
さらに、化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。
(8.4ppm〜8.2ppm)(m)(2H:ペンタセン骨格由来)
(7.9ppm〜7.5ppm)(m)
(20H:ペンタセン骨格及びジアリールアルキル基のベンゼン環由来)
(5.4ppm〜5.3ppm)(m)(1H:ジフェニルエチル基のエチル基由来)
(3.6ppm〜3.5ppm)(m)(3H:シリル基のメチル基由来)
(1.5ppm〜1.2ppm)(m)(18H:シリル基のt−Bu基由来)
これらの結果から、この化合物が3−ジ−t−ブチルメトキシシリル−9−ジフェニルメチルペンタセンであることを確認した。
(合成例3)
1,4,8,11−テトラニトロ−2−ジ−t−ブチルエトキシシリル−ペンタセンは以下の手法により合成した。すなわち、まず、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンから、2,3−ジ(トリクロロシリル)6,7−ジニトロナフタレンを合成し、例えばトリメチルシリル基のような保護基をニトロ基に反応させた後、順次アセン骨格数を増加させ、その後保護基を脱保護させることにより標記の化合物を合成した。
詳細には、まず、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた200mlガラスフラスコに、マグネシウム0.4M、HMPT(Hexamethyl phosphorous triamide)100mL、THF20mL及びI(触媒)、1,2,4,5−テトラベンゼン(例えばキシダ化学より純度99%で購入できる)0.1Mを加えた後、温度80℃にて、クロロトリメチルシラン0.4Mを滴下し、30分間攪拌した後、130℃にて4日間還流させることにより、1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンを合成した。続いて、200mLナスフラスコに、i−PrNH20mM、PhI(OAc)((diacetoxyiodo)benzene)50mM、ジクロロメタン50mLを加えた後、0℃にてCFCOH(TOH)50mMを滴下し、2時間攪拌した。続いて前記1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼン50mMを含むジクロロメタン溶液10mLを0℃にて滴下し、室温にて2時間攪拌することにより、phenyl[2,4,5−tris(trimethylsilyl)phenyl]iodonium Triflateを合成した。さらに続いて、50mLナスフラスコに、BuNF2.0MのTHF溶液を仕込み、前記phenyl[2,4,5−tris(trimethylsilyl)phenyl]iodonium Triflate5mM及び3,4−ジニトロフラン10mMを含むジクロロメタン溶液10mLを0℃にて滴下し、30分間攪拌することで反応を進行させた。反応終了後、ジクロロメタン及び水にて抽出を行ない、カラムクロマトグラフにて精製を行うことで、1,4−dihydro−1,4−epoxynaphthalene誘導体を合成した。その後、前記1,4−dihydro−1,4−epoxynaphthalene誘導体をヨウ化リチウム1mM,DBU(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)10mMを含むTHF溶液10mLを、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた50mlガラスフラスコに仕込み、前記1,4−dihydro−1,4−epoxynaphthalene誘導体1mMを加えた後、窒素雰囲気下にて3時間還流させることで、反応を進行させた。反応終了後、抽出及びMgSOによる水分除去を行うことで、2,3−ジ(トリクロロシリル)6,7−ジニトロナフタレンを合成した。続いて、3,4−ジニトロフランを使用する変わりに、3,4−ジ(トリメチルシリル)フランを使用することを除き、上記の1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンから2,3−ジ(トリメチルシリル)6,7−ジニトロナフタレンを合成する手法と同様の手法を2回適用することによって、2,3−(トリメチルシリル)7,10−ジニトロテトラセンを合成した。さらに続いて、3,4−ジニトロフランを使用する変わりに、3−(トリメチルシリル)4−(オキシトリメチルシリル)フランを使用することを除き、上記の1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンから2,3−ジ(トリメチルシリル)6,7−ジニトロナフタレンを合成する手法と同様の手法を1回適用し、2−(オキシトリメチルシリル)3−(トリメチルシリル)1,4,8,11−テトラニトロペンタセンを合成した後、前記2−(オキシトリメチルシリル)3−(トリメチルシリル)1,4,8,11−テトラニトロペンタセン1mMを少量の水及びPhNMeFを含むTHF溶媒に溶解させた後、攪拌することで、2−ヒドロキシ1,4,8,11−テトラニトロペンタセンを合成した。さらに、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた100mlナスフラスコに窒素雰囲気下にて、水素化ジ(tert−ブチル)エトキシシラン5mM、THF30mlを仕込み、氷冷したのち、乾燥THF5ml、前記2−ヒドロキシ1,4,8,11−テトラニトロペンタセン5mMを加え、30℃にて1時間成熟を行うことによって、標記の1,4,8,11−テトラニトロ−2−ジ−t−ブチルエトキシシリル−ペンタセンを合成した。
得られた化合物について、赤外吸収測定を行ったところ、波長1035cm−1にSi−O−Cの吸収が見られた。化合物を含むクロロホルム溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長605nmに吸収が観測された。
さらに、化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。
(8.1ppm〜8.0ppm)(s)(1H:ペンタセン由来)
(7.9ppm〜7.8ppm)(m)(8H:ペンタセン由来)
(3.6ppm〜3.5ppm)(m)(6H:シリル基のエチル由来)
(1.4ppm〜1.3ppm)(m)
(27H:シリル基のt−Bu基およびメチル基由来)
これらの結果から、この化合物が1,4,8,11−テトラニトロ−2−ジ−t−ブチルエトキシシリル−ペンタセンであることを確認した。
(合成例4)
2,3−ジ(ジ−t−ブチルメトキシシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンの合成
2,3−ジ(ジ−t−ブチルメトキシシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンは、以下の手法により合成した。まず、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンを出発原料として用いて前記ルートA5に従って中間体Bを合成した。
Figure 2005268100
次いで、前記ルートC3に従って、トリメチルシリル基を4級アンモニウムを用いて脱保護させ、シラン化合物と反応させることによって、2,3−ジ(ジ−t−ブチルメトキシシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンを形成した。
より詳細には、合成例1と同様に以下の手法により合成した。まず、前記準備例1で合成した2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンを出発原料として使用し、合成手法は、3,4−ジ(トリメチルシリル)フランの代わりに、2,5−(N,N−ジフェニルアミノ)−3,4−ジ(トリメチルシリル)フランを使用することを除き、準備例1の、1,2,4,5−テトラ(トリメチルシリル)ベンゼンから2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンを合成する手法と同様の手法にて2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(N,N−ジフェニルアミノ)−アントラセンを合成した。さらに、2,5−(N,N−ジフェニルアミノ)−3,4−ジ(トリメチルシリル)フランの代わりに、フランを使用することを除き、本合成例の2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンから2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(N,N−ジフェニルアミノ)−アントラセンを合成する手法と同様の手法を適用することで、2,3−ジ(トリメチルシリル)ー6,11−(N,N−ジフェニルアミノ)テトラセンを合成した後、さらに、本合成例の2,3,6,7−テトラ(トリメチルシリル)ナフタレンから2,3,7,8−テトラ(トリメチルシリル)−6,9−(N,N−ジフェニルアミノ)−アントラセンを合成する手法と同様の手法を再度適用することより、上記構造式(B)にて表される2,3,9.10ーテトラ(トリメチルシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンを合成した。続いて、前記2,3,9.10ーテトラ(トリメチルシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセン1mMを少量の水及びPhNMeFを含むTHF溶媒に溶解させた後、攪拌することで、6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンを合成した。さらに、窒素雰囲気下にて、200mlナスフラスコに乾燥THF5ml、前記6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンを5mM、マグネシウムを加えた後、1時間攪拌することにより、グリニヤール試薬を形成したのち、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを備えた100mlナスフラスコにクロロ−ジ(tert−ブチル)メトキシシラン5mM、THF30mlを仕込み、氷冷したのち、前記グリニヤール試薬を加え、30℃にて1時間成熟を行った。次いで、反応液を減圧にてろ過し、塩化マグネシウムを除いた後、ろ液からTHF及び未反応のクロロジ(tert−ブチル)メトキシシランをストリップすることにより標記化合物を10%の収率で得た。
得られた化合物について、赤外吸収測定を行ったところ、波長1025cm−1にSi−O−Cの吸収が見られた。化合物を含むクロロホルム溶液の紫外−可視吸収スペクトル測定を行ったところ、波長615nmに吸収が観測された。
さらに、化合物の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。
(8.2ppm)(s)(2H:ペンタセン由来)
(8.0ppm〜7.9ppm)(m)(6H:ペンタセン由来)
(7.2ppm〜7.0ppm)(m)(16H:ジフェニルアミノ基由来)
(6.8ppm〜6.3ppm)(m)(24H:ジフェニルアミノ基由来)
(3.6ppm〜3.5ppm)(m)(6H:シリル基のメトキシ基由来)
(1.4ppm〜1.3ppm)(m)(36H:シリル基のt−Bu基由来)
これらの結果から、この化合物が2,3−ジ(ジ−t−ブチルメトキシシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンであることを確認した。
<有機EL素子の製造>
(実施例1)
まず、ガラス基板を有機溶媒(例えばアセトンやイソプロピルアルコール)中にて超音波洗浄した後、100W、5分間プラズマアッシングを行った。続いて、この基板上にRFスパッタ法にてITO透明電極薄膜を150nmの厚さに成膜し、パターニングした。この状態にて、真空蒸着装置に導入し、槽内を5.0×10-6Torrまで減圧した後、正孔輸送層としてTPDを50nm厚でITO透明電極上に蒸着し、さらに発光層としてAlq3を50nm厚で正孔輸送層上に蒸着した。続いて、過酸化水素:硫酸=1:4の溶液中に、前記基板を15分間浸漬し、表面を親水化処理した。一方、合成例2で得られた3−ジ−t−ブチルメトキシシリル−9−ジフェニルメチルペンタセンをクロロホルム溶媒に溶解させ、2mMの試料溶液を作成しておき、続いてトラフ中の水面上に、試料溶液を所定量(100μl)滴下し、水面上に前記化合物の単分子膜(L膜)を形成させた。この状態で水面上に圧力を加え、所定の表面圧(30mN/cm)とした後に、予めセットしておいた前記発光層まで積層した基板を一定速度で引き上げることによって、発光層上に電子輸送層を形成した。さらに、陰極としてMgAgを200nm厚で電子輸送層上に蒸着することによって、有機EL素子を製造した。
このようにして構築した有機EL素子は、特に発光層と電子輸送層との界面が化学結合を介して強固に結合されているため、電子輸送効率が高く、したがって駆動電圧を小さくすることが可能である。構築した有機EL素子は3500cd/mの最大放出が11.5Vの印加電圧にて確認された。
(実施例2)
まず、ガラス基板を有機溶媒(例えばアセトンやイソプロピルアルコール)中にて超音波洗浄した後、100W、5分間プラズマアッシングを行った。続いて、この基板上にRFスパッタ法にてITO透明電極薄膜を150nmの厚さに成膜し、パターニングした。続いて、過酸化水素:硫酸=7:3の溶液中に、前記基板を15分間浸漬し、表面を親水化処理した。一方、合成例3で得られた1,4,8,11−テトラニトロ−2−ジ−t−ブチルエトキシシリル−ペンタセンをクロロホルム溶媒に溶解させることによって、2mMの試料溶液を調製し、前記陽極まで積層した基板を浸漬することによって、陽極上に正孔輸送層を形成した。この状態にて、真空蒸着装置に導入し、槽内を7.0×10-6Torrまで減圧した後、発光層としてAlq3を50nm厚で正孔輸送層上に蒸着した。さらに、陰極としてMgAgを200nm厚で正孔輸送層上に蒸着することによって、有機EL素子を製造した。
このようにして構築した有機EL素子は、特に陽極と正孔輸送層との界面が化学結合を介して強固に結合されているため、正孔輸送効率あるいは電子輸送効率が高く、したがって駆動電圧を小さくすることが可能である。構築した有機EL素子は3300cd/mの最大放出が12.0Vの印加電圧にて確認された。
(実施例3)
まず、ガラス基板を有機溶媒(例えばアセトンやイソプロピルアルコール)中にて超音波洗浄した後、100W、5分間プラズマアッシングを行った。続いて、この基板上にRFスパッタ法にてITO透明電極薄膜を100nmの厚さに成膜し、パターニングした。この状態にて、真空蒸着装置に導入し、槽内を5.0×10-6Torrまで減圧した後、正孔輸送層としてTPDを50nm厚でITO透明電極上に蒸着し、さらに発光層としてAlq3を50nm厚で正孔輸送層上に蒸着した。続いて、過酸化水素:硫酸=1:4の溶液中に、前記基板を15分間浸漬し、表面を親水化処理した。一方、合成例4で得られた2,3−ジ(ジ−t−ブチルメトキシシリル)−6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンをクロロホルム溶媒に溶解させ、2mMの試料溶液を作成しておき、続いてトラフ中の水面上に、試料溶液を所定量(100μl)滴下し、水面上に前記化合物単分子膜(L膜)を形成させた。この状態で水面上に圧力を加え、所定の表面圧(25mN/cm)とした後に、予めセットしておいた前記発光層まで積層した基板を一定速度で引き上げることによって、発光層上に電子輸送層を形成した。さらに、陰極としてMgAgを100nm厚で電子輸送層上に蒸着することによって、有機EL素子を製造した。
このようにして構築した有機EL素子は、特に発光層と電子輸送層との界面が化学結合を介して強固に結合されているため、電子輸送効率が高く、したがって駆動電圧を小さくすることが可能である。構築した有機EL素子は4500cd/mの最大放出が10.5Vの印加電圧にて確認された。
(比較例1)
まず、ガラス基板を有機溶媒(例えばアセトンやイソプロピルアルコール)中にて超音波洗浄した後、100W、5分間プラズマアッシングを行った。続いて、この基板上にRFスパッタ法にてITO透明電極薄膜を100nmの厚さに成膜し、パターニングした。この状態にて、真空蒸着装置に導入し、槽内を5.0×10−6Torrまで減圧した後、正孔輸送層としてTPDを50nm厚でITO透明電極上に蒸着し、さらに発光層としてAlq3を50nm厚で正孔輸送層上に蒸着した。続いて、合成例4の中間体である6,8,11,13−テトラ(N,N−ジフェニルアミノ)ペンタセンを、真空蒸着法により、発光層上に電子輸送層として10nm形成した。さらに、陰極としてMgAgを100nm厚で電子輸送層上に蒸着することによって、有機EL素子を製造した。
このようにして構築した有機EL素子は15.0Vの印加電圧までの範囲にて、1000Cd以上の発光が確認できなかった。
本比較例では、発光層及び電子輸送層の間が物理吸着を介した結合であり、電子移動が非効率的であることが原因である。つまり、本発明の有機EL素子のように、層間で化学結合を介すると、低い印加電圧にて高い発光効率が得られることが確認できた。
本発明の有機EL素子の一例を示す概略構成図である。 本発明の有機EL素子に使用される有機シラン化合物含有層の分子レベルの概念図である。 本発明の有機EL素子に使用される有機シラン化合物含有層の分子レベルの概念図である。
符号の説明
1:陽極、2:正孔輸送層、3:発光層、4:電子輸送層、5:陰極、6:基板、11:14:被形成層(有機シラン化合物含有層が形成されるべき層)、12:15:多環式縮合芳香族炭化水素骨格(多環骨格)、13:機能性基、16:機能性基(窒素原子あるいは酸素原子を含むもの)。

Claims (7)

  1. 陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有し、少なくとも1の有機薄膜層が化学結合を介して陽極、陰極または他の有機薄膜層と結合していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有する構成が、陽極−発光層−電子輸送層−陰極の構成または陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極の構成であり、電子輸送層が化学結合を介して発光層と結合していることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 陽極と陰極との間に1またはそれ以上の有機薄膜層を有する構成が、陽極−正孔輸送層−発光層−陰極の構成または陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極の構成であり、正孔輸送層が化学結合を介して陽極と結合していることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 化学結合を介して結合する有機薄膜層が、多環式縮合芳香族炭化水素骨格に一般式;
    −SiX
    (式中、X〜Xのうち少なくとも1個の基は加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子であり、他の基は隣接分子と反応することのない基である)
    で表されるシリル基と機能性基を有する有機シラン化合物を含んでなり、
    該有機シラン化合物が、シリル基の有する加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子が変換されてなるエーテル結合を介して、陽極、陰極または他の有機薄膜層と結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 有機シラン化合物が、一般式(I);
    Figure 2005268100
    (式中、mは0〜10である;R〜R10のうち少なくとも1個の基は一般式−SiX(X〜Xのうち少なくとも1個の基は加水分解により水酸基を与える基もしくはハロゲン原子であり、他の基は隣接分子と反応することのない基である)で表されるシリル基であり、少なくとも1個の基は電子供与性または電子吸引性の機能性基であり、他の基は水素原子である)
    で表される有機シラン化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス。
  6. シリル基が有し得る隣接分子と反応することのない基が、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ジアリールアミノ基、もしくはジまたはトリアリールアルキル基であることを特徴とする請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス。
  7. またはRのうちの少なくとも一方の基がシリル基であり、RはRと、RはRと、RはRと、RはR10と、それぞれ同一の基であることを特徴とする請求項5または6に記載の有機エレクトロルミネッセンス。
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