JP2005263503A - W(c,n)−wb系複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加せずに、焼結温度を下げることが可能であり、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有するW(C,N)−WB系複合体及びその製造方法を得る。
【解決手段】W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備えていることを特徴とするW(C,N)−WB系複合体、及びWC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
【選択図】 図5
【解決手段】W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備えていることを特徴とするW(C,N)−WB系複合体、及びWC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
【選択図】 図5
Description
本発明は、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等を有するW(C,N)−WB系複合体及びその製造方法に関する。
硬い材料の最も代表的なものにダイヤモンドがある。ダイヤモンドを用いた切削工具として、超硬合金やサーメットの表面にダイヤモンドを埋め込んだダイヤモンド工具がある。この切削工具は高い性能を示すが、鉄を用いた複合材料(特に、鉄筋コンクリート)の切断加工には極めて適さない。これは、切削加工を行うと工具が高温になり、炭素が鉄に固溶して消耗するためである。
WCはダイヤモンドと比較すると安価で合成しやすい物質である。また、WC系の硬質材料はサーメット工具の基本物質であるTiCと比較すると、弾性率が非常に高く、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性にも優れているので加工精度の求められる切削に最適である。
WC系硬質材料の利用法としては、切削工具、研磨材、耐摩耗性の要求される部材などである。特に切削工具として用いる場合、高速化、高精度が要求される現在、硬度およびヤング率の向上が不可欠である。
硬度、ヤング率の向上は、切削工具の長寿命化をもたらし、切削工具の交換頻度を低減させる。その結果として、切削機械の高速化、高精度が実現される。
WC系硬質材料の利用法としては、切削工具、研磨材、耐摩耗性の要求される部材などである。特に切削工具として用いる場合、高速化、高精度が要求される現在、硬度およびヤング率の向上が不可欠である。
硬度、ヤング率の向上は、切削工具の長寿命化をもたらし、切削工具の交換頻度を低減させる。その結果として、切削機械の高速化、高精度が実現される。
WCはバインダーとしての役割を持つCoなどの金属を3 〜 20 wt%添加して、液相焼結を行い、試料の緻密化を行っている。しかし、この金属相は靭性を向上させる一方でWCの本来持つ高い硬度およびヤング率を低下させてしまうという問題がある。また、金属相により急激に耐食性も低下する。
現在では、Coが環境規制物質であるために、Coの添加量を削減する研究が盛んに行われている。さらに、Co無添加の高硬度WC焼結体の作製が試みられている。しかし、Co無添加の場合、緻密化焼結するために、焼結温度を上昇させる必要があり、焼結温度の上昇に伴い結晶粒径の粗大化が起こる。そのために、強度、硬度などの機械的性質を低下させてしまうという新たな問題が発生した。
現在では、Coが環境規制物質であるために、Coの添加量を削減する研究が盛んに行われている。さらに、Co無添加の高硬度WC焼結体の作製が試みられている。しかし、Co無添加の場合、緻密化焼結するために、焼結温度を上昇させる必要があり、焼結温度の上昇に伴い結晶粒径の粗大化が起こる。そのために、強度、硬度などの機械的性質を低下させてしまうという新たな問題が発生した。
最近、WCにNを置換させた物質W(C、N) により作製したW(C、N)-CoはWC-Coに比べて靱性が向上するということが分かってきた(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
一方、立方晶BN(c-BN)、Si3N4などの窒素化合物は硬質材料として期待されており、その合成方法や焼結技術は確立されてきている。
しかし、WCやWの窒化物は市販されていない。この主な理由として、常圧N2ガス中で熱処理することによって合成することができない、もしくは合成しにくいためである。
N. Asada, Y. Yamamoto, T. Igarashi, Y. Doi and K. hayashi: "Synthesis of New Carbonitride W(C,N) Powder by Heating W+C Mixed Powder in High Pressure Nitrogen Gas", J. Jpn. Soc. Powder and Powder Metallur., 46 (1999) 373-377. 浅田信昭, 須崎登雅, 山本良治, 林 宏爾: "新炭窒化物W(C,N)-10mass%Co合金の組織と諸特性", 粉体粉末冶金協会平成14年度春季大会講演概要集, 東京 (2002) 111.
一方、立方晶BN(c-BN)、Si3N4などの窒素化合物は硬質材料として期待されており、その合成方法や焼結技術は確立されてきている。
しかし、WCやWの窒化物は市販されていない。この主な理由として、常圧N2ガス中で熱処理することによって合成することができない、もしくは合成しにくいためである。
N. Asada, Y. Yamamoto, T. Igarashi, Y. Doi and K. hayashi: "Synthesis of New Carbonitride W(C,N) Powder by Heating W+C Mixed Powder in High Pressure Nitrogen Gas", J. Jpn. Soc. Powder and Powder Metallur., 46 (1999) 373-377. 浅田信昭, 須崎登雅, 山本良治, 林 宏爾: "新炭窒化物W(C,N)-10mass%Co合金の組織と諸特性", 粉体粉末冶金協会平成14年度春季大会講演概要集, 東京 (2002) 111.
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加せずに、焼結温度を下げることが可能であり、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有するW(C,N)−WB系複合体及びその製造方法を提供することにある。
以上から、次の発明を提供するものである。
1)W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備えていることを特徴とするW(C,N)−WB系複合体、2)さらに、BN相及び又はW2C相を備えていることを特徴とする1記載のW(C,N)−WB系複合体、3)WCに対するB、Nのモル比が0を超え0.25以下であることを特徴とする1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体、4)WCに対するB、Nのモル比が0.005〜0.05であることを特徴とする1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体、5)V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、6)V、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、7)平均結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、
1)W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備えていることを特徴とするW(C,N)−WB系複合体、2)さらに、BN相及び又はW2C相を備えていることを特徴とする1記載のW(C,N)−WB系複合体、3)WCに対するB、Nのモル比が0を超え0.25以下であることを特徴とする1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体、4)WCに対するB、Nのモル比が0.005〜0.05であることを特徴とする1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体、5)V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、6)V、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、7)平均結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体、
さらに、次の発明を提供する。
8)WC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することを特徴とする1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、9)W(C,N)−WB系複合体の製造に際し、WC又はWCを主成分とする原料とBN又はBNとWの固相置換反応による物質移動を利用して原料粉末の焼結を促進させることを特徴とする8記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、10)ホットプレス又は通電加圧焼結法により焼結することを特徴とする8又は9のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、11)焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結することを特徴とする8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、12)焼結温度1600〜1800°C、加圧力30MPa以上で焼結することを特徴とする8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
8)WC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することを特徴とする1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、9)W(C,N)−WB系複合体の製造に際し、WC又はWCを主成分とする原料とBN又はBNとWの固相置換反応による物質移動を利用して原料粉末の焼結を促進させることを特徴とする8記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、10)ホットプレス又は通電加圧焼結法により焼結することを特徴とする8又は9のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、11)焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結することを特徴とする8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法、12)焼結温度1600〜1800°C、加圧力30MPa以上で焼結することを特徴とする8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
WC粉末又はWCを主成分とする粉末に少量のBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することによって、硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加することなく、焼結温度を下げることが可能であり、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、広い温度範囲で、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有するW(C,N)−WB系複合体を得ることができるという著しい効果を有する。
本発明は、WC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することによってW(C,N)−WB系複合体を得ることができる。Coなどの金属添加剤を必要とせず、高温での化学反応による物質の移動を利用し、焼結むらの少ない緻密な焼結体が得られる。
この焼結によって、本発明のW(C,N)−WB系複合体は、W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備える。
本発明のW(C,N)−WB系複合体は、後述する実施例に示すように、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、広い温度範囲で、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有する。
この焼結によって、本発明のW(C,N)−WB系複合体は、W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備える。
本発明のW(C,N)−WB系複合体は、後述する実施例に示すように、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、広い温度範囲で、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有する。
W(C,N)−WB系複合体は、製造条件によって、さらにBN相及び又はW2C相を備えることもでき、同様の効果を有する。本発明のW(C,N)−WB系複合体において、WCに対するB、Nのモル比が0を超え0.25以下である。モル比が0.25を超えるとBNが緻密化を阻害し、機械的特性を低下させ、望ましくないからである。さらに、WCに対するB、Nのモル比が0.005〜0.05であることが望ましい。
本発明は、上記W(C,N)−WB系複合体に、さらに副添加元素として、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有させることができる。
これらの元素を添加することにより液相焼結することが可能となり、通常使用する温度よりもさらに100°C〜550°C程度焼結温度を下げることができる。例えば、1400〜1900°Cの低温で緻密化が可能で、強度及び破壊靭性値を大幅に上昇させることができる。
これらの元素を添加することにより液相焼結することが可能となり、通常使用する温度よりもさらに100°C〜550°C程度焼結温度を下げることができる。例えば、1400〜1900°Cの低温で緻密化が可能で、強度及び破壊靭性値を大幅に上昇させることができる。
これによって、例えば破壊靭性値を10から20MPa・m1/2程度向上させることができる。これらの副添加元素はW(C,N)−WB系複合体の相のなかで、粒間結合相のような形態として存在する。
しかし、硬度及びヤング率が低下するので上限を20wt%とするのが望ましい。また、0.001wt%未満では添加の効果がないので、上記の目的で添加する場合には、0.001wt%以上とするのが望ましい。
なお、本発明においては、あくまでW(C,N)相、W2B相及び又はWB相、さらにはBN相及び又はW2C相からなる組織を中心相とするものであり、上記添加元素は用途に応じて付加的に添加するものである。
しかし、硬度及びヤング率が低下するので上限を20wt%とするのが望ましい。また、0.001wt%未満では添加の効果がないので、上記の目的で添加する場合には、0.001wt%以上とするのが望ましい。
なお、本発明においては、あくまでW(C,N)相、W2B相及び又はWB相、さらにはBN相及び又はW2C相からなる組織を中心相とするものであり、上記添加元素は用途に応じて付加的に添加するものである。
本発明は、さらに副添加物としてV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有させることができる。
これらの副添加物は、W(C,N)−WB系複合体の相のなかで、WCや粒間結合相金属中に固溶し、あるいは分散粒子のような形態として存在する。これらは、焼結時の結晶粒の成長をさらに抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。
その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。0.001wt%未満では添加の効果が認められず、30wt%を超えると強度、硬度、破壊靭性値が低下し、好ましくないので、上限は30wt%とすることが望ましい。
これらの副添加物は、W(C,N)−WB系複合体の相のなかで、WCや粒間結合相金属中に固溶し、あるいは分散粒子のような形態として存在する。これらは、焼結時の結晶粒の成長をさらに抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。
その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。0.001wt%未満では添加の効果が認められず、30wt%を超えると強度、硬度、破壊靭性値が低下し、好ましくないので、上限は30wt%とすることが望ましい。
本発明のW(C,N)−WB系複合体の製造に際し、WC又はWCを主成分とする原料とBN又はBNとWの固相置換反応による物質移動を利用して原料粉末の焼結を促進させる。焼結は、ホットプレス又は通電加圧焼結法(放電プラズマ焼結法)を用いるのが望ましい。
特に、通電加圧焼結法は、型の中に充填した粉末に加圧しながらパルス状の電流を流して試料と型のみを加熱するものであり、炉内全部を加熱するホットプレスよりも省エネルギーであり、また急速昇温が可能であるという特徴を有している。この通電加圧焼結法によれば、極めて短時間で難焼結材料の緻密化が可能である。
特に、通電加圧焼結法は、型の中に充填した粉末に加圧しながらパルス状の電流を流して試料と型のみを加熱するものであり、炉内全部を加熱するホットプレスよりも省エネルギーであり、また急速昇温が可能であるという特徴を有している。この通電加圧焼結法によれば、極めて短時間で難焼結材料の緻密化が可能である。
必要な機械的特性を得るために、焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結する。なお、この際の焼結温度は、ホットプレス又は通電加圧焼結法で使用するグラファイト型の表面の温度である。
焼結温度1400°C未満では密度が上がらないため、機械的特性が低くなるため好ましくない。また、焼結温度2000°Cを超えると、粒成長により機械的特性が低くなるので好ましくない。したがって、上記の温度範囲とする。特に、焼結温度1600〜1800°C、加圧力30MPa以上で焼結することが望ましい。
焼結温度1400°C未満では密度が上がらないため、機械的特性が低くなるため好ましくない。また、焼結温度2000°Cを超えると、粒成長により機械的特性が低くなるので好ましくない。したがって、上記の温度範囲とする。特に、焼結温度1600〜1800°C、加圧力30MPa以上で焼結することが望ましい。
また、保持時間は1分以上好ましくは5分以上で焼結することが望ましい。通電加圧焼結法を用いると極めて短時間に高温を得ることができるので、製品を得るまでの時間を大幅に短縮できるという特長を有する。
以上の方法によって、優れた高硬度及び高ヤング率特性を有するW(C,N)相、W2B相及び又はWB相を、さらにはBN相及び又はW2C相を備えた本発明のW(C,N)−WB系複合体を製造することができる。
以上の方法によって、優れた高硬度及び高ヤング率特性を有するW(C,N)相、W2B相及び又はWB相を、さらにはBN相及び又はW2C相を備えた本発明のW(C,N)−WB系複合体を製造することができる。
焼結に際しては、同様に副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%の添加及び又はV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%の粉末を混合して焼結することができる。
次に、実施例に基づいて説明する。なお、本実施例は下記の試験等に基づいて、より好適な実施の一例を提示するものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。したがって、本発明の技術思想に含まれる変形、他の実施例又は態様は、全て本発明に含まれる。
(実施例1及び比較例)
<BNとWとWCによるW(C,N)−WBの合成>
固相置換反応を利用し、通電加圧焼結装置を用いて、BN粉末、W粉末およびWC粉末の混合粉末の焼結を行った。なお、BN粉末のみでも良いが、本件発明の代表的な例として、BN粉末、W粉末を同時使用した。
(秤量および混合)
出発原料として、BN粉末(純度99.5%、平均粒径6.0 μm)、W粉末(純度99.9%、平均粒径6.0 μm)およびWC粉末(純度99.5%、平均粒径0.75μm)を用いた。
それぞれの原料粉末を下記の反応が生じるものとして式(数1)に従い、所定の混合比になるように秤量し、アルミナ乳鉢を用いて、十分に混合した。数1に示す範囲で、xの比率を変えて試料を作製した。なお、この場合、x=0は比較例として挙げたものである。
<BNとWとWCによるW(C,N)−WBの合成>
固相置換反応を利用し、通電加圧焼結装置を用いて、BN粉末、W粉末およびWC粉末の混合粉末の焼結を行った。なお、BN粉末のみでも良いが、本件発明の代表的な例として、BN粉末、W粉末を同時使用した。
(秤量および混合)
出発原料として、BN粉末(純度99.5%、平均粒径6.0 μm)、W粉末(純度99.9%、平均粒径6.0 μm)およびWC粉末(純度99.5%、平均粒径0.75μm)を用いた。
それぞれの原料粉末を下記の反応が生じるものとして式(数1)に従い、所定の混合比になるように秤量し、アルミナ乳鉢を用いて、十分に混合した。数1に示す範囲で、xの比率を変えて試料を作製した。なお、この場合、x=0は比較例として挙げたものである。
(成形および焼結)
混合粉末をグラファイト型に充填し、50 MPaで1 min一軸加圧成形し、反応試料とした。これに断熱のためグラファイトウールを巻き、通電加圧焼結装置に設置した。
焼結時の圧力および保持時間を50 MPa、10 minの一定とし、焼結温度を変えて、真空中で焼結を行った。この時、50 MPaで加圧を行いながら、始めの5 minで600°Cまで昇温した後、目標の焼結温度まで50°Cmin-1で昇温し、10 min保持した。なお、焼結温度はグラファイト型の表面から10 mm内部の温度を光高温計で測定した値とした。以後、0≦x≦0.1の時の試料をWCNxと表記する。
混合粉末をグラファイト型に充填し、50 MPaで1 min一軸加圧成形し、反応試料とした。これに断熱のためグラファイトウールを巻き、通電加圧焼結装置に設置した。
焼結時の圧力および保持時間を50 MPa、10 minの一定とし、焼結温度を変えて、真空中で焼結を行った。この時、50 MPaで加圧を行いながら、始めの5 minで600°Cまで昇温した後、目標の焼結温度まで50°Cmin-1で昇温し、10 min保持した。なお、焼結温度はグラファイト型の表面から10 mm内部の温度を光高温計で測定した値とした。以後、0≦x≦0.1の時の試料をWCNxと表記する。
得られた焼結体の生成物(反応生成物)と組織は、X線回折装置と走査型電子顕微鏡(SEM)と電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて調べた。焼結体の密度はアルキメデス法を用いて測定した。
焼結体の機械的性質の評価は、ヤング率、ポアソン比、ビッカース硬さ、破壊靭性値の測定によって行った。なお、ヤング率は高温動弾性率測定装置、探触子5MHzを用い、超音波パルス法により縦波の音速と横波の音速を測定して求めた。硬さはビッカース硬さ計を用い、硬さは9.8N、15sの条件で測定した。
焼結体の機械的性質の評価は、ヤング率、ポアソン比、ビッカース硬さ、破壊靭性値の測定によって行った。なお、ヤング率は高温動弾性率測定装置、探触子5MHzを用い、超音波パルス法により縦波の音速と横波の音速を測定して求めた。硬さはビッカース硬さ計を用い、硬さは9.8N、15sの条件で測定した。
・破壊靭性値の算出
破壊靭性値は下記に示すEvans-Davisの式(数11)、(数12)および(数13)に基づき、IF法により求めた。ここで、Kc [Pa m1/2] は破壊靭性値、E [Pa] はヤング率、Hv[Pa] はビッカース硬さ、P [N] は押込加重、a [m] は圧痕の対角線長さの半分の平均、c [m] は圧痕の中心からクラックの先端までの長さの平均である。
破壊靭性値は下記に示すEvans-Davisの式(数11)、(数12)および(数13)に基づき、IF法により求めた。ここで、Kc [Pa m1/2] は破壊靭性値、E [Pa] はヤング率、Hv[Pa] はビッカース硬さ、P [N] は押込加重、a [m] は圧痕の対角線長さの半分の平均、c [m] は圧痕の中心からクラックの先端までの長さの平均である。
・組織観察
EPMAを用いて、焼結体の表面組織観察および各元素の分布による分析を行った。また、次式(2.14)に従い、インターセプト(コード)法により焼結体のWC相の平均粒径を求め、機械的性質に及ぼす影響を検討した。ここで、l [μm] はWC相の平均粒径、L [mm] は任意に引いた直線の長さ、Nは任意に引いた直線と粒界との交点の数、mは倍率である。
EPMAを用いて、焼結体の表面組織観察および各元素の分布による分析を行った。また、次式(2.14)に従い、インターセプト(コード)法により焼結体のWC相の平均粒径を求め、機械的性質に及ぼす影響を検討した。ここで、l [μm] はWC相の平均粒径、L [mm] は任意に引いた直線の長さ、Nは任意に引いた直線と粒界との交点の数、mは倍率である。
(実施例2)
<B4C−5W−80WCへのBNとWの添加>
(試料作製)
出発原料として、B4C粉末(純度99%、平均粒径1.05μm)、BN粉末(純度99.5%)、W粉末(純度99.9%、平均粒径6.0μm)及びWC粉末(純度99.5%、平均粒径0.75μm)を用いた。それぞれの原料粉末を下記の反応が生じるとして式(数15)、(数16)に従い、所定の混合比になるように秤量し、アルミナ乳鉢を用いて、十分に混合した。
<B4C−5W−80WCへのBNとWの添加>
(試料作製)
出発原料として、B4C粉末(純度99%、平均粒径1.05μm)、BN粉末(純度99.5%)、W粉末(純度99.9%、平均粒径6.0μm)及びWC粉末(純度99.5%、平均粒径0.75μm)を用いた。それぞれの原料粉末を下記の反応が生じるとして式(数15)、(数16)に従い、所定の混合比になるように秤量し、アルミナ乳鉢を用いて、十分に混合した。
(評価方法)
実施例2で作製した試料について、実施例1と同様の評価を行った。
実施例2で作製した試料について、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例1における、BNとW及びWCにより合成したW(C,N)−WB材料の特性>
(実施例1における生成相)
各焼結温度について、実験により得られた試料(WCNx:0≦x≦0.1)のX線回折パターン(図示せず)より、全ての試料でWC,W2Cが生成していた。また、x≧0.01では、さらにW2Bが生成していた。
これらのことは、すべての焼結温度で同じように認められた。面指数BN (002) のピークを部分的に拡大し、BNとx値との関係を調査した結果、残留したBNは、原料のBN粉末の結晶構造と同じ六方晶形のh-BNであった。
(実施例1における生成相)
各焼結温度について、実験により得られた試料(WCNx:0≦x≦0.1)のX線回折パターン(図示せず)より、全ての試料でWC,W2Cが生成していた。また、x≧0.01では、さらにW2Bが生成していた。
これらのことは、すべての焼結温度で同じように認められた。面指数BN (002) のピークを部分的に拡大し、BNとx値との関係を調査した結果、残留したBNは、原料のBN粉末の結晶構造と同じ六方晶形のh-BNであった。
x = 0.01,0.02の全ての試料および1800°C,WCN0.03の試料では、BNの残留は見られず、BNは反応し、W(C,N) およびW2Bになったと思われるが、WCとW(C,N) のピークは区別することはできなかった。
これは、W(C,N) 中のCとNの置換量が少量であったことやCとNの原子半径が近いことが原因であると考えられる。
面指数WC (100),BN (002),W2B (211),W2C (101)において、各生成物は最強ピークを示す。X線回折パターンの結果より、各生成物の最強ピーク相対強度比を算出した(図示せず)。その最強ピーク相対強度比は、各生成相の生成量比に必ずしも比例するわけではないが、大まかな尺度として用いることができる。
これは、W(C,N) 中のCとNの置換量が少量であったことやCとNの原子半径が近いことが原因であると考えられる。
面指数WC (100),BN (002),W2B (211),W2C (101)において、各生成物は最強ピークを示す。X線回折パターンの結果より、各生成物の最強ピーク相対強度比を算出した(図示せず)。その最強ピーク相対強度比は、各生成相の生成量比に必ずしも比例するわけではないが、大まかな尺度として用いることができる。
x = 0でWCとW2Cが生成した。また、全ての焼結温度で、x値の増加に伴い、WCは減少し、BN,W2B,W2Cは増加した。WCとWBの低級化合物として、それぞれW2CとW2Bが存在する。WCは若干の非化学量論組成を持ち、W過剰の状態で存在する。この過剰なWが仮定した反応式 (数1) では生成しないはずのW2BやW2Cを生成させたと考えられる。
BNの残留が見られなかった試料の内、1700°C、WCN0.01および1700°C、WCN0.02の試料について、N分析した結果、焼結前のN量と比較し、焼結後のN量は減少しており、置換量に限界があることがわかる。
また、最強ピーク相対強度比の結果、WCN0.03、1700°CではBNが残留したのに対し、1800°Cでは、BNの残留が見られなかった。このことから、置換量の限界が温度に依存していると考えられる。
BNの残留が見られなかった試料の内、1700°C、WCN0.01および1700°C、WCN0.02の試料について、N分析した結果、焼結前のN量と比較し、焼結後のN量は減少しており、置換量に限界があることがわかる。
また、最強ピーク相対強度比の結果、WCN0.03、1700°CではBNが残留したのに対し、1800°Cでは、BNの残留が見られなかった。このことから、置換量の限界が温度に依存していると考えられる。
図1に各焼結温度におけるかさ密度とx値の関係を示す。また開気孔率とx値との関係(図示せず)を調べた。それによると1600°Cでは、焼結温度が低温であるために焼結不足により開気孔率は全体的に高い値となっており、そのため、密度は低い値を示したが、x = 0.01は、気孔率はほぼ0となり、密度も比較的高い値を示した。
これは、少量のBN添加で焼結性が向上したためと思われる。1700°C、1800°Cでは、全ての試料で開気孔率はほぼ0であった。
密度はx値の増加と共に上昇していき、1800℃、WCN0.02において最大値15.72 [g cm-3] をとり、x値が0.03以上で徐々に減少した。
x≧0.03での密度の低下の原因は、生成したW(C,N) ,W2B,W2Cと比較すると、極端に密度の低いh-BNが残留したためと考えられる。
これは、少量のBN添加で焼結性が向上したためと思われる。1700°C、1800°Cでは、全ての試料で開気孔率はほぼ0であった。
密度はx値の増加と共に上昇していき、1800℃、WCN0.02において最大値15.72 [g cm-3] をとり、x値が0.03以上で徐々に減少した。
x≧0.03での密度の低下の原因は、生成したW(C,N) ,W2B,W2Cと比較すると、極端に密度の低いh-BNが残留したためと考えられる。
(実施例1における機械的性質)
図2に各焼結温度における、ヤング率とx値の関係を示す。ヤング率は、基本的にはx値の増加に伴い、減少していく傾向が見られた。また、ポアソン比及び剛性率も同様にx値の増加に伴い減少していく傾向が見られた(図示せず)。
この傾向は密度の場合と似ている。これはヤング率、剛性率は気孔率に依存し、気孔率の減少とともに増加するためであると考えられる。
ポアソン比も密度に類似した傾向を示した。この原因はx値の増加に伴い、密度が高く、ポアソン比の低いW2Cが増加し、WCが減少したためだと考えられる。1800°Cで焼結したWCN0.01では、W2C量が変化し、対応してポアソン比も急激に変化していることからも、W2C量にポアソン比は依存することがわかる。
図2に各焼結温度における、ヤング率とx値の関係を示す。ヤング率は、基本的にはx値の増加に伴い、減少していく傾向が見られた。また、ポアソン比及び剛性率も同様にx値の増加に伴い減少していく傾向が見られた(図示せず)。
この傾向は密度の場合と似ている。これはヤング率、剛性率は気孔率に依存し、気孔率の減少とともに増加するためであると考えられる。
ポアソン比も密度に類似した傾向を示した。この原因はx値の増加に伴い、密度が高く、ポアソン比の低いW2Cが増加し、WCが減少したためだと考えられる。1800°Cで焼結したWCN0.01では、W2C量が変化し、対応してポアソン比も急激に変化していることからも、W2C量にポアソン比は依存することがわかる。
W(C,N) のヤング率、剛性率の最大値はそれぞれ1800°Cで焼結したWCN0.01において、700 [MPa] 、291 [MPa] の値を示した。
硬質材料を評価する上で、強度は最も重要な要素の一つである。硬さは破壊に対する抵抗の度合いを反映しているため強度に関係する。
強度試験の一つであるビッカース硬さ試験は、簡単に信頼性の高いデータが得られることで知られている。図3に各焼結温度について、ビッカース硬さとx値の関係を示す。
ヤング率、ポアソン比、剛性率と同様の傾向を示したが、1700°C、1800°Cにおいて、無添加のWC単体より、0.01≦x≦0.05の範囲において、ビッカース硬さが上昇した。
硬質材料を評価する上で、強度は最も重要な要素の一つである。硬さは破壊に対する抵抗の度合いを反映しているため強度に関係する。
強度試験の一つであるビッカース硬さ試験は、簡単に信頼性の高いデータが得られることで知られている。図3に各焼結温度について、ビッカース硬さとx値の関係を示す。
ヤング率、ポアソン比、剛性率と同様の傾向を示したが、1700°C、1800°Cにおいて、無添加のWC単体より、0.01≦x≦0.05の範囲において、ビッカース硬さが上昇した。
これは、BNの少量の添加で固相置換反応が起こり、試料の緻密化が無添加のものよりさらに進んだためと考えられる。1600°Cで焼結したWCN0.01での急激な硬度の上昇も同様の理由からと考えられる。
全てのWCNxの試料の中で、最大値は1700°Cで焼結したWCN0.01で、26.9 [GPa] であった。x≧0.03でのヤング率、剛性率、ビッカース硬さの低下は、それらの機械的性質が低いh-BNが残留したためと考えられる。
全てのWCNxの試料の中で、最大値は1700°Cで焼結したWCN0.01で、26.9 [GPa] であった。x≧0.03でのヤング率、剛性率、ビッカース硬さの低下は、それらの機械的性質が低いh-BNが残留したためと考えられる。
破壊靭性値の測定には様々な方法がある。ビッカース硬さ測定機の圧子の押し込みによって隆起したクラックを圧痕の大きさとともに測定して求めるIF法は比較的簡単に測定が可能である。IF法の場合破壊靭性値の推測には、種々な計算式が提案されている。
一般的に、WC-Co系超硬合金には、前記ED(Evans-Davis)式(数11)、(数12)、(数13)が最適であると言われている。
本研究では、WC系の材料を作製しており、この式を適応する。図4に、各焼結温度について、ED式を用いて求めた破壊靭性値とx値の関係を示す。破壊靭性値は基本的にx値の増加に伴い、減少する。1800°Cでは、WCN0で最大値5.90 [MPa m1/2] を示した。1600°CではWCN0で急激に減少している。これは開気孔率の結果からもわかるように焼結不足が第一の原因と考えられる。
一般的に、WC-Co系超硬合金には、前記ED(Evans-Davis)式(数11)、(数12)、(数13)が最適であると言われている。
本研究では、WC系の材料を作製しており、この式を適応する。図4に、各焼結温度について、ED式を用いて求めた破壊靭性値とx値の関係を示す。破壊靭性値は基本的にx値の増加に伴い、減少する。1800°Cでは、WCN0で最大値5.90 [MPa m1/2] を示した。1600°CではWCN0で急激に減少している。これは開気孔率の結果からもわかるように焼結不足が第一の原因と考えられる。
ビッカース硬さは、BNおよびWを添加することにより上昇した。また、広範囲(1700°Cおよび1800°C、0.01≦x≦0.05)で26 [GPa] 以上の高硬度領域が存在した。
ヤング率は、x値の増加により低下するが、比較的広範囲(1700°Cおよび1800°C、0≦x≦0.03)で高ヤング率領域が存在した。硬度およびヤング率などの機械的性質は1700°C〜1800°C、0.01≦x≦0.03の範囲で高い領域が存在した。この領域は、実用材料として生産していく上で、高性能材料を安定して得るのに適している。
ヤング率は、x値の増加により低下するが、比較的広範囲(1700°Cおよび1800°C、0≦x≦0.03)で高ヤング率領域が存在した。硬度およびヤング率などの機械的性質は1700°C〜1800°C、0.01≦x≦0.03の範囲で高い領域が存在した。この領域は、実用材料として生産していく上で、高性能材料を安定して得るのに適している。
(実施例1における組織観察)
EPMAにより組織観察を行った(図示せず)。これによると非常に細かな組織のWCが観察された。また、WCN0.02では、BNの残留は見られなかった。同じ焼結温度のWCN0.1およびWCN0.02において、BN,W2B,W2C以外のWCに関する微細組織はほぼ同じであった。
次に、焼結温度の違いによるWCN0.02の変化を調査したが、焼結温度の上昇に伴うWCの異常粒成長は起きておらず、非常に微細な組織であることがわかった。
EPMAにより組織観察を行った(図示せず)。これによると非常に細かな組織のWCが観察された。また、WCN0.02では、BNの残留は見られなかった。同じ焼結温度のWCN0.1およびWCN0.02において、BN,W2B,W2C以外のWCに関する微細組織はほぼ同じであった。
次に、焼結温度の違いによるWCN0.02の変化を調査したが、焼結温度の上昇に伴うWCの異常粒成長は起きておらず、非常に微細な組織であることがわかった。
(実施例1におけるBNおよびWの添加によるWCの異常粒成長抑制効果)
添加による異常粒成長抑制効果を詳しく調査するために、WCの平均粒径をインターセプト(コード)法により求めた(図5参照)。
焼結温度の上昇と共に、平均粒径は増大しているが、WCN0.01では0.41〜0.45 μm、WCN0.1では0.50〜0.56μmの微小範囲で変化した。BNとWの添加は焼結温度の上昇に伴うWCの異常粒成長を抑制する効果があると考えられる。
焼結材料の強度は生成相の粒径に大きく依存する。硬質材料の作製を行う上で原料粉末の粒径は小さく、さらに大きさが揃っているものが好まれる。次式(ホールペッチの関係式:数21)で示されるように、材料の強度は粒径に大きく依存し、粒径が小さくなる程、強度は上昇する。
添加による異常粒成長抑制効果を詳しく調査するために、WCの平均粒径をインターセプト(コード)法により求めた(図5参照)。
焼結温度の上昇と共に、平均粒径は増大しているが、WCN0.01では0.41〜0.45 μm、WCN0.1では0.50〜0.56μmの微小範囲で変化した。BNとWの添加は焼結温度の上昇に伴うWCの異常粒成長を抑制する効果があると考えられる。
焼結材料の強度は生成相の粒径に大きく依存する。硬質材料の作製を行う上で原料粉末の粒径は小さく、さらに大きさが揃っているものが好まれる。次式(ホールペッチの関係式:数21)で示されるように、材料の強度は粒径に大きく依存し、粒径が小さくなる程、強度は上昇する。
ここで、σは破壊強度、a、bは定数、dは結晶の粒径である。焼結温度が1700℃から1800℃に上昇しても、機械的性質があまり低下しなかったのは、BNとWの添加がWCの異常粒成長を抑制したためであると考えられる。
また、WCN0.01とWCN0.1を比較すると、すべての焼結温度でWCN0.1の平均粒径は大きくなっていた。
また、WCN0.01とWCN0.1を比較すると、すべての焼結温度でWCN0.1の平均粒径は大きくなっていた。
<実施例2における、B4C−5W−80WCへのBNおよびWの添加効果について>
B4C-5W-80WCは、焼結温度が1650〜1700°Cの間でWとBの反応が急激に生じ、生成相が粒成長するために機械的性質の低下が起る。
上記の結果から、BNとWの添加がWCの異常粒成長を抑制すると考えられる。そこで、実施例2に示すように、B4C-5W-80WCにBNとWを添加して、試料を作製し、その機械的性質と粒成長抑制効果の関係について調べた。
B4C-5W-80WCは、焼結温度が1650〜1700°Cの間でWとBの反応が急激に生じ、生成相が粒成長するために機械的性質の低下が起る。
上記の結果から、BNとWの添加がWCの異常粒成長を抑制すると考えられる。そこで、実施例2に示すように、B4C-5W-80WCにBNとWを添加して、試料を作製し、その機械的性質と粒成長抑制効果の関係について調べた。
(実施例2における生成相)
WBNy(y = 0、0.01)のX線回折パターンを用いて算出した最強ピーク相対強度比と焼結温度の関係(図示せず)から、WBN0ではWC、WB、W2Bが生成した。また、焼結温度の上昇に伴い、WCは減少し、WB、W2Bは増加した。WBN0.01ではWBN0の試料で生成した相以外にも、全ての焼結温度でW2Cが生成した。1600°C、1650°CではWBは生成しなかった。また、温度上昇に伴い、WC、W2Cは減少し、WB、W2Bは増加した。
WBNy(y = 0、0.01)のX線回折パターンを用いて算出した最強ピーク相対強度比と焼結温度の関係(図示せず)から、WBN0ではWC、WB、W2Bが生成した。また、焼結温度の上昇に伴い、WCは減少し、WB、W2Bは増加した。WBN0.01ではWBN0の試料で生成した相以外にも、全ての焼結温度でW2Cが生成した。1600°C、1650°CではWBは生成しなかった。また、温度上昇に伴い、WC、W2Cは減少し、WB、W2Bは増加した。
(実施例2におけるWBNy(0≦y≦0.01)の平均粒径)
図6に、インターセプト(コード)法により求めたWBNy(0≦y≦0.01)の平均粒径を示す。WBN0の平均粒径は1650°C以下の焼結温度では、0.5μmと微細であったが、焼結温度が1650 〜1700°Cで20μmに増大し、1800°Cでは23μmになった。
一方、BNを添加したWBN0.01の平均粒径は焼結温度の上昇に伴い増大したが、いずれの焼結温度でも平均粒径は1μm以下であった。図5および図6の結果を総合すると、W-B-C系硬質材料について、BN 又はBNとWを少量添加し、反応性通電加圧焼結することにより組織制御が可能であると考えられる。
図6に、インターセプト(コード)法により求めたWBNy(0≦y≦0.01)の平均粒径を示す。WBN0の平均粒径は1650°C以下の焼結温度では、0.5μmと微細であったが、焼結温度が1650 〜1700°Cで20μmに増大し、1800°Cでは23μmになった。
一方、BNを添加したWBN0.01の平均粒径は焼結温度の上昇に伴い増大したが、いずれの焼結温度でも平均粒径は1μm以下であった。図5および図6の結果を総合すると、W-B-C系硬質材料について、BN 又はBNとWを少量添加し、反応性通電加圧焼結することにより組織制御が可能であると考えられる。
(実施例2における機械的性質)
WCの異常粒成長の抑制効果が機械的性質に及ぼす影響を調べると、開気孔率はすべて1%以下であった、密度は焼結温度の上昇に伴い上昇した。
また、WBN0とWBN0.01を比較すると、ヤング率、剛性率は全体的に低下し、ポアソン比は上昇した。これは、実施例1と同様に、ヤング率、剛性率が低く、ポアソン比の高いW2Cが生成したためと考えられる。
同様に、WBN0とWBN0.01を比較すると、ビッカース硬さ、破壊靭性値は焼結温度の上昇に伴い上昇した。粒径の増大を抑制したために、温度上昇に伴うビッカース硬さの急激な低下を防ぐことができたためと考えられる。
WBN0.01の試料はすべての焼結温度で、機械的性質は高い値を示した。つまり、1650〜1800°Cでの粒成長を抑制したために、高い機械的性質を安定して得られる焼結温度領域が増加した。
WCの異常粒成長の抑制効果が機械的性質に及ぼす影響を調べると、開気孔率はすべて1%以下であった、密度は焼結温度の上昇に伴い上昇した。
また、WBN0とWBN0.01を比較すると、ヤング率、剛性率は全体的に低下し、ポアソン比は上昇した。これは、実施例1と同様に、ヤング率、剛性率が低く、ポアソン比の高いW2Cが生成したためと考えられる。
同様に、WBN0とWBN0.01を比較すると、ビッカース硬さ、破壊靭性値は焼結温度の上昇に伴い上昇した。粒径の増大を抑制したために、温度上昇に伴うビッカース硬さの急激な低下を防ぐことができたためと考えられる。
WBN0.01の試料はすべての焼結温度で、機械的性質は高い値を示した。つまり、1650〜1800°Cでの粒成長を抑制したために、高い機械的性質を安定して得られる焼結温度領域が増加した。
以上から、実施例2で示すように、焼結温度を下げることが可能であり、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、広い温度範囲で、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の特性を向上させることができる。すなわちW(C,N)−WB系複合体に共通して言えることである。
また、特にデータとしては示さないが、副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%を添加すること、さらには、副添加物としてV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有させた場合にも、焼結時の結晶粒の成長を抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。
また、特にデータとしては示さないが、副添加元素としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%を添加すること、さらには、副添加物としてV、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有させた場合にも、焼結時の結晶粒の成長を抑制することができ、微細組織を持った焼結体を製造することができる。その結果、強度、硬度、破壊靭性値をさらに向上させることができる。
本発明は、WC粉末又はWCを主成分とする粉末に少量のBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することによって、硬度とヤング率の著しい低下を引き起こすCoを主要元素として添加することなく、焼結温度を下げることが可能であり、結晶粒径の粗大化を抑制しながら緻密化を促進することができ、これによって、広い温度範囲で、高硬度、高ヤング率特性、耐酸化性、耐摩耗性、耐溶着性等の優れた特性を有するW(C,N)−WB系複合体を得ることができ、例えば切削工具、ターゲット材、引抜きダイス、粉末冶金用金型、ノズル、メカニカルシール、軸受部品、射出成型用金型、ボールペン用ボール、電極、自動車部品などに有用である。
Claims (12)
- W(C,N)相、W2B相及び又はWB相を備えていることを特徴とするW(C,N)−WB系複合体。
- さらに、BN相及び又はW2C相を備えていることを特徴とする請求項1記載のW(C,N)−WB系複合体。
- WCに対するB、Nのモル比が0を超え0.25以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体。
- WCに対するB、Nのモル比が0.005〜0.05であることを特徴とする請求項1又は2記載のW(C,N)−WB系複合体。
- V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素を0.001〜20wt%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体。
- V、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種類以上の元素の炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物の1種類以上を0.001〜30wt%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体。
- 平均結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体。
- WC粉末又はWCを主成分とする粉末とBN粉末又はBNとWの粉末を混合して焼結することにより、結晶粒の成長を抑制することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
- W(C,N)−WB系複合体の製造に際し、WC又はWCを主成分とする原料とBN又はBNとWの固相置換反応による物質移動を利用して原料粉末の焼結を促進させることを特徴とする請求項8記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
- ホットプレス又は通電加圧焼結法により焼結することを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
- 焼結温度1400〜2000°C、加圧力20MPa以上で焼結することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
- 焼結温度1600〜1800°C、加圧力30MPa以上で焼結することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のW(C,N)−WB系複合体の製造方法。
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---|---|---|---|---|
CN113059157A (zh) * | 2021-03-09 | 2021-07-02 | 南京理工大学 | 一种sps有压烧结超细晶wc基硬质合金异形刀具的方法 |
CN116654948A (zh) * | 2023-06-07 | 2023-08-29 | 四川大学 | 一种w-b系粉体材料及制备方法 |
-
2004
- 2004-03-16 JP JP2004073709A patent/JP2005263503A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
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CN116654948A (zh) * | 2023-06-07 | 2023-08-29 | 四川大学 | 一种w-b系粉体材料及制备方法 |
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