本発明は複素バンドパスフィルタ、特にLow−IF方式の受信機等に使用され、イメージ信号を抑圧すると共にチャネル選択(通過周波数選択)を行う複素バンドパスフィルタに関する。
近年では、携帯無線端末の普及に伴い、従来の受信方式であるスーパーヘテロダイン方式の代わりに、中間周波数(IF)を数MHz以下に設定するLow−IF方式が注目されている。このLow−IF方式を採用すれば、前記スーパーヘテロダイン方式で必要となっていた、外形寸法が大きな外付けIFフィルタを取り除くことができ、受信部をワンチップ化、低価格化できるという利点が得られる。
しかし、このLow−IF方式では、受信周波数(RF)と局所発振器の周波数(LO)が近いためにイメージ信号の抑圧が必須となる。このイメージ信号を抑圧する手段として、オペレーショナル・トランスコンダクタンス・アンプ(以下「OTA」と称する)を用いた複素バンドパスフィルタが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
図9には、本願出願人の出願にかかる1次の複素バンドパスフィルタ(特許文献1)の構成が示されており、このフィルタでは、直交変調された同相成分の入力信号XIが入力され、gm3aのトランスコンダクタンスを持つ第1OTA101、この第1OTA101の出力側が接続され、gm1aのトランスコンダクタンスを持つ第2OTA102が設けられており、この第2OTA102から同相成分の出力信号YIが出力されると同時に出力信号YIは第2OTA102の入力にフィードバックされている。
一方、直交変調の直交成分の入力信号XQが入力され、gm3bのトランスコンダクタンスを持つ第3OTA103、この第3OTA103の出力側が接続され、gm1bのトランスコンダクタンスを持つ第4OTA104が設けられ、この第4OTA104から直交成分の出力信号YQが出力されると同時に出力信号YQは第4OTA104の入力にフィードバックされている。
また、前記第2OTA102の出力と前記第4OTA104の出力の間に、通過帯域の中心周波数シフト機能を果たすための第5OTA105及び第6OTA106が設けられ、この第5OTA105はgm2bのトランスコンダクタンスを持ち、第6OTA106はgm2aのトランスコンダクタンスを持つ。
前記同相成分の出力信号YIは前記第6OTA106の入力と接続され、前記直交成分の出力信号YQは前記第5OTA105の入力に接続される。また、前記第5OTA105の出力は前記第2OTA102の出力と接続され、前記第6OTA106の出力は前記第4OTA104の出力に接続される。
更に、前記第1OTA101と第2OTA102の接続点Gとアースとの間に、容量Caの第1キャパシタ107と抵抗値Raの第1抵抗素子108が接続され、前記第3OTA103と第4OTA104の接続点Hとアースとの間に、容量Cbの第2キャパシタ109と抵抗値Rbの第2抵抗素子110が接続されており、この第1及び第2の抵抗素子108、110はフィルタの周波数特性(通過帯域特性)の歪を改善する目的で配置される。
そして、通常、複素バンドパスフィルタを構成する場合、前記トランスコンダクタンスにおいて、gm1a=gm1b=gm1、gm2a=gm2b=gm2、gm3a=gm3b=gm3で、またCa=Cb=C、Ra=Rb=Rとして用いられ、このとき1次の複素バンドパスフィルタの伝達関数H(s)[s:複素変数]は、gm1・R<<1及びgm2・R<<1のとき、次式(1)によって与えられる。なお、jは虚数単位で、j
2=−1である。
このような複素バンドパスフィルタによれば、入力信号XI、XQについては、トランスコンダクタンスgm3で決定されるゲインで、かつ容量Cとトランスコンダクタンスgm1で決定される通過帯域幅の出力信号YI、YQが得られる。そして、前記容量Cとトランスコンダクタンスgm2で決定される量だけ通過帯域の中心周波数が正方向ヘシフトされ、中心周波数が決定される。そして、前記第1抵抗素子Raと第2抵抗素子Rbを設けることにより、OTAの有限の周波数特性により発生する通過帯域の歪みを低減することができる。
前記1次の複素バンドパスフィルタをブロック構成図で示すと図10のようになる。直交変調された同相成分の入力信号XIは第1損失積分器111に入力され、直交成分の入力信号XQは第2損失積分器112に入力され、第1損失積分器111の出力信号は周波数シフト素子113からの信号と第1加算器114により加算され、第2損失積分器112の出力信号は周波数シフト素子113からの信号と第2加算器115により加算され、第1加算器114の出力信号は同相成分の出力信号YIになると同時に前記周波数シフト素子113へフィードバックされる。また、第2加算器115からの出力信号は直交成分の出力信号YQになると同時に前記周波数シフト素子113へとフィードバックされる。
ここで、第1損失積分器111は図9における第1OTA101と第2OTA102と第1キャパシタ107と第1抵抗素子108によって、第2損失積分器112は第3OTA103と第4OTA104と第2キャパシタ109と第2抵抗素子110によって、周波数シフト素子113は第5OTA105と第6OTA106によって、それぞれ実現される。また、第1及び第2加算器114及び115は結線によって実現できる。
図11には、角周波数ωを横軸に取った周波数特性が示されており、前記の複素バンドパスフィルタによれば、例えば−ω0から+ω0の帯域幅の周波数特性200から周波数特性201のように中心周波数をωcだけシフトさせることができ、これによって正の周波数(希望の信号)は通すが負の周波数(イメージ信号)は通さないフィルタが得られる。そして、図12に示すように、前記1次の複素バンドパスフィルタを2個縦続接続することにより、2次の複素バンドパスフィルタが形成される。116は第1損失積分器、117は第2損失積分器、118は第1周波数シフト素子、119は第1加算器、120は第2加算器、121は第3損失積分器、122は第4損失積分器、123は第2周波数シフト素子、124は第3加算器、125は第4加算器である。
図13には、図12の2次複素バンドパスフィルタの回路構成が示されており、これは、例えば中心周波数を4MHz、通過帯域幅を2MHzとしたものである。即ち、図示において、初段の第1フィルタ150のOTA126〜131は、gm1a=gm1b=6.66μS(ジーメンス)、gm2a=gm2b=31.0μS、gm3a=gm3b=9.5μSの値に設定され、またキャパシタ138、140と抵抗素子139、141は、C1a=C1b=1.5pF、R1a=R1b=1060Ωの値に設定され、次段の第2フィルタ151のOTA132〜137は、gm4a=gm4b=6.66μS、gm5a=gm5b=44.4μS、gm6a=gm6b=9.5μSの値に設定され、またキャパシタ142、144と抵抗素子143、145は、C2a=C2b=1.5pF、R2a=R2b=1060Ωの値に設定される。
図14には、図13の2次複素バンドパスフィルタの周波数特性が示されており、図示されるように、このフィルタでは、周波数4MHzを中心とし、正の周波数のみを通す帯域幅2MHzの特性が得られている。この構成の2次複素バンドパスフィルタは、極の配置を1個ずつ設定できるため様々な形のフィルタを作製できる利点がある。
しかしながら、通常、バンドパスフィルタを作製する場合、中心周波数を中心として対称な形に作製することが多く、前記図13の2次複素バンドパスフィルタの構成では、gm値の数が実際には最低でも4個(前記の例では、6.66μS、9.5μS、31.0μS、44.4μS)必要となり、高次になるほど異なるgm値の数が増え、例えば4次の複素バンドパスフィルタの場合には、gm値の数は最低でも7個必要となり、周波数を調整する場合、各OTAのgm値の調整が困難になるという問題があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なるgm値のトランスコンダクタンス素子の数を減らし、周波数の調整を容易にすることができるようにした複素バンドパスフィルタを提供することにある。
請求項1にかかる発明の複素バンドパスフィルタは、イメージ信号抑圧とチャネル選択を同時に行う複素バンドパスフィルタにおいて、直交変調の同相成分信号が入力される第1無損失積分器と、前記直交変調の直交成分信号が入力される第2無損失積分器と、通過帯域の中心周波数をシフトさせるための第1周波数シフト素子と、前記第1無損失積分器の出力と前記第1周波数シフト素子の出力とを加算する第1加算器と、前記第2無損失積分器の出力と第1周波数シフト素子の出力とを加算する第2加算器と、前記第1加算器の出力が入力される第1損失積分器と、前記第2加算器の出力が入力される第2損失積分器と、通過帯域の中心周波数をシフトさせるための第2周波数シフト素子と、前記第1損失積分器の出力と前記第2周波数シフト素子の出力とを加算する第3加算器と、前記第2損失積分器の出力と前記第2周波数シフト素子の出力とを加算する第4加算器とを備え、前記第1加算器及び第2加算器の出力が前記第1周波数シフト素子にフィードバックされ、前記第3加算器の出力が同相成分信号出力となると同時に前記第2周波数シフト素子及び前記第1無損失積分器にフィードバックされ、前記第4加算器の出力が直交成分信号出力となると同時に前記第2周波数シフト素子及び第2無損失積分器にフィードバックされるようにしたことを特徴とする。
請求項2にかかる発明の複素バンドパスフィルタは、イメージ信号抑圧とチャネル選択を同時に行う複素バンドパスフィルタにおいて、直交変調の同相成分信号が入力される第1損失積分器と、前記直交変調の直交成分信号が入力される第2損失積分器と、通過帯域の中心周波数をシフトさせるための第1周波数シフト素子と、前記第1損失積分器の出力と前記第1周波数シフト素子の出力とを加算する第1加算器と、前記第2損失積分器の出力と前記第1周波数シフト素子の出力とを加算する第2加算器と、前記第1加算器の出力が入力される第1無損失積分器と、前記第2加算器の出力が入力される第2無損失積分器と、通過帯域の中心周波数をシフトさせるための第2周波数シフト素子と、前記第1無損失積分器の出力と前記第2周波数シフト素子の出力とを加算する第3加算器と、前記第2無損失積分器の出力と前記第2周波数シフト素子の出力とを加算する第4加算器とを備え、前記第1加算器及び第2加算器の出力が前記第1周波数シフト素子にフィードバックされ、前記第3加算器の出力が同相成分信号出力となると同時に前記第2周波数シフト素子及び前記第1損失積分器にフィードバックされ、前記第4加算器の出力が直交成分信号出力となると同時に前記第2周波数シフト素子及び前記第2損失積分器にフィードバックされるようにしたことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の複素バンドパスフィルタにおいて、前記第1及び第2無損失積分器は、第1トランスコンダクタンス素子と該第1トランスコンダクタンス素子の出力信号を積分する第1キャパシタで構成し、前記第1及び第2損失積分器は、第2トランスコンダクタンス素子と該第2トランスコンダクタンス素子の出力信号を積分する第2キャパシタと該第2キャパシタに接続され出力が反転入力にフィードバックされることにより抵抗素子として作用する第3トランスコンダクタンス素子とで構成し、前記第1乃至4加算器は結線により構成した、ことを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の複素バンドパスフィルタにおいて、前記第1及び第2キャパシタにそれぞれ抵抗発生素子を接続したことを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項3又は4に記載の複素バンドパスフィルタにおいて、前記第1及び第2周波数シフト素子は、前記請求項3に記載の第1トランスコンダクタンス素子を並列に2n個(nは正の整数)接続したトランスコンダクタンス素子を用いて構成したことを特徴とする。
請求項1乃至5にかかる発明によれば、gm値の数を3個に減らすことができ、つまり使用するトランスコンダクタンス素子は3種類で済み、周波数の調整を容易にすることが可能になる。また、請求項4にかかる発明によれば、キャパシタと直列に抵抗発生素子を設けたので、使用するトランスコンダクタンス素子の有限の周波数特性により発生する通過帯域の歪みを大幅に解消することが可能になる。また、請求項5にかかる発明によれば、IF中心周波数を帯域幅のn倍に設定すれば、さらにgm値の数を2個に減らすことができ周波数の調整をさらに容易にすることが可能になる。
本発明の2次の複素バンドパスフィルタでは、第1及び第2無損失積分器、第1及び第2損失積分器、第1及び第2周波数シフト素子を使用し、第1及び第2無損失積分器の出力の間に第1周波数シフト素子を接続し、第1及び第2損失積分器の出力の間に第2周波数シフト素子を接続し、フィードバック(負帰還)をかける。以下詳しく説明する。
図1には、本発明の実施例1にかかる2次の複素バンドパスフィルタのブロック構成図が示されており、このフィルタでは、直交変調された同相成分の入力信号XIおよび直交成分の入力信号XQがそれぞれ第1無損失積分器1及び第2無損失積分器2に入力され、それぞれの出力信号は通過帯域の中心周波数シフト機能を果たす第1周波数シフト素子3からの信号と第1加算器4及び第2加算器5により加算され、第1加算器4の出力信号は次段の第1損失積分器6の入力信号となると同時に第1周波数シフト素子3にフィードバックされる。同様に、第2加算器5の出力信号は次段の第2損失積分器7の入力信号となると同時に第1周波数シフト素子3にフィードバックされる。
更に、第1損失積分器6からの出力信号は通過帯域の中心周波数シフト機能を果たす第2周波数シフト素子8からの信号と第3加算器9により加算され、第3加算器9からの出力信号は同相成分の出力信号YIになると同時に第2周波数シフト素子8と第1無損失積分器1へとフィードバックされる。また、第2損失積分器7からの出力信号は第2周波数シフト素子8からの信号と第4加算器10により加算され、第4加算器10からの出力信号は直交成分の出力信号YQになると同時に第2周波数シフト素子8と第2無損失積分器2へとフィードバックされる。
このような2次複素バンドパスフィルタをシングルエンド型OTAを用いて構成した具体的な回路を図2に示す。直交変調された同相成分の入力信号X1が入力され、gm1aのトランスコンダクタンスを持つ第1OTA11、この第1OTA11の出力側が接続され、gm2aのトランスコンダクタンスを持つ第2OTA12、この第2OTA12の出力側が接続され、gm3aのトランスコンダクタンスを持つ第3OTA13が設けられており、この第3OTA13から同相成分の出力信号YIが出力されると同時に出力信号YIは第3OTA13の入力及び第1OTA11の入力にフイードバックされる。
一方、直交変調の直交成分の入力信号XQが入力され、gm1bのトランスコンダクタンスを持つ第4OTA14、この第4OTA14の出力側が接続され、gm2bのトランスコンダクタンスを持つ第5OTA15、この第5OTA15の出力側が接続され、gm3bのトランスコンダクタンスを持つ第6OTA16が設けられ、この第6OTA16から直交成分の出力信号YQが出力されると同時に出力信号YQは第6OTA16の入力及び第4OTA14の入力にフィードバックされる。
また、前記第1OTA11と第2OTA12の接続点Aと、前記第4OTA14と第5OTA15の接続点Bとの間に、通過帯域の中心周波数シフト機能を果たすための第7OTA17及び第8OTA18が設けられ、この第7OTA17はgm4aのトランスコンダクタンスを持ち、第8OTA18はgm4bのトランスコンダクタンスを持つ。前記第1OTA11の出力は前記第8OTA18の入力に接続され、前記第4OTA14の出力は前記第7OTA17の入力に接続される。また、前記第7OTA17の出力は前記接続点Aと接続され、前記第8OTA18の出力は前記接続点Bに接続される。更に、前記接続点Aとアースとの間に、容量C1aの第1キャパシタ21と抵抗値R1aの第1抵抗素子22が接続され、前記接続点Bとアースとの間に、容量C1bの第2キャパシタ25と抵抗値R1bの第2抵抗素子26が接続されている。
更に、前記第3OTA13の出力と前記第6OTA16の出力との間に、通過帯域の中心周波数シフト機能を果たすための第9OTA19及び第10OTA20が設けられ、この第9OTA19はgm5aのトランスコンダクタンスを持ち、第10OTA20はgm5bのトランスコンダクタンスを持つ。前記同相成分の出力信号YIは前記第10OTA20の入力と接続され、前記直交成分の出力信号YQは前記第9OTA19の入力に接続される。更に、前記第2OTA12と第3OTA13の接続点Cとアースとの間に、容量C2aの第3キャパシタ23と抵抗値R2aの第3抵抗素子24が接続され、前記第5OTA15と第6OTA16の接続点Dとアースとの間に、容量C2bの第4キャパシタ27と抵抗値R2bの第4抵抗素子28が接続されている。以上の第1、第2、第3、第4の抵抗素子22、26、24、28はフィルタ通過帯域の歪を改善する目的で配置されている。
ここで、図1の第1無損失積分器1は第1OTA11と第1キャパシタ21と第1抵抗素子22によって、第2無損失積分器2は第4OTA14と第2キャパシタ25と第2抵抗素子26によって、第1周波数シフト素子3は第7OTA17と第8OTA18によって、それぞれ実現される。また、第1及び第2加算器4及び5は結線によって実現できる。更に、第1損失積分器6は第2OTA12と第3OTA13と第3キャパシタ23と第3抵抗素子24によって、第2損失積分器7は第5OTA15と第6OTA16と第4キャパシタ27と第4抵抗素子28によって、第2周波数シフト素子8は第9OTA19と第10OTA20によって、それぞれ実現される。また、第3及び第4加算器9及び10は結線によって実現できる。
そして、通常、複素バンドパスフィルタを構成する場合、前記トランスコンダクタンスにおいて、gm1a=gm1b=gm1、gm2a=gm2b=gm2、gm3a=gm3b=gm3、gm4a=gm4b=gm4、gm5a=gm5b=gm5で、またC1a=C1b=C1、R1a=R1b=R1、C2a=C2b=C2、R2a=R2b=R2として用いられ、このとき2次の複素バンドパスフィルタの伝達関数H(s)[s:複素変数]は、次式によって与えられる。ここでは、各OTAの周波数特性は無視しているためR1=R2=0である。
当該実施例1の2次複素バンドパスフィルタの中心周波数は、gm4、gm5及びC1、C2によって決定されるが、gm4=gm5=gmc及びC1=C2=Cとすることにより、中心周波数fcはfc=gmc/2πCとなる。また、帯域幅はgm1、gm2及びC1、C2によって決定されるが、gm1=gm2=gmb及びC1=C2=Cとすると帯域幅BWはBW=gmb/πCとなり、Q値はgmb/gm3となる。
図3には、図2においてgm1a=gm1b=gm1=9.4μS、gm2a=gm2b=gm2=9.4μS、gm3a=gm3b=gm3=13.5μS、gm4a=gm4b=gm4=37.7μS、gm5a=gm5b=gm5=37.7μS、C1a=C1b=C1=1.5pF、C2a=C2b=C2=1.5pF、R1=R2=0Ωの値に設定されたときの2次複素バンドパスフィルタの周波数特性が示されており、図示されるように、このフィルタでは、周波数4MHzを中心とし、正の周波数のみを通す帯域幅2MHzの特性が得られ、しかもgm値の数はgmb、gmc、gm3の3個でよい。更に、4次の複素バンドパスフィルタを構成する場合でも当該実施例1の図2の2次複素バンドパスフィルタを2個縦続接続することにより実現でき、しかも次段の2次複素バンドパスフィルタの各gm値は初段の2次複素バンドパスフィルタの各gm値と基本的に同じでよく、最低3個でよい。
図4には、当該実施例1の2次複素バンドパスフィルタを完全差動型OTAを用いて構成した具体的な回路が示されている。ここで、図1の第1無損失積分器1は第1OTA31と第2OTA32と第1キャパシタ43と第1抵抗素子44によって、第2無損失積分器2は第3OTA35と第4OTA36と第2キャパシタ47と第2抵抗素子48によって、第1周波数シフト素子3は第5OTA39と第6OTA40によって、それぞれ実現される。また、第1及び第2加算器4及び5は結線によって実現できる。更に、第1損失積分器6は第7OTA33と第8OTA34と第3キャパシタ45と第3抵抗素子46によって、第2損失積分器7は第9OTA37と第10OTA38と第4キャパシタ49と第4抵抗素子50によって、第2周波数シフト素子8は第11OTA41と第12OTA42によって、それぞれ実現される。また、第3及び第4加算器9及び10は結線によって実現できる。
図4の各OTAのトランスコンダクタンスにおいて、gina=ginb=gmin、gm1a=gm1b=gm1、gm2a=gm2b=gm2、gm3a=gm3b=gm3、gm4a=gm4b=gm4、gm5a=gm5b=gm5で、またC1a=C1b=C1、R1a=R1b=R1、C2a=C2b=C2、R2a=R2b=R2としたとき回路の伝達関数H(s)[s:複素変数]は、次式によって与えられる。ここでは、各OTAの周波数特性は無視しているためR1=R2=0である。
当該実施例1の完全差動型の2次複素バンドパスフィルタの中心周波数は、gm4、gm5及びC1、C2によって決定されるが、gm4=gm5=gmc及びC1=C2=Cとすることにより中心周波数fcはfc=gmc/2πCとなる。また、帯域幅はgmin、gm1、gm2及びC1、C2によって決定されるが、gmin=gm1=gm2=gmb及びC1=C2=Cとすると帯域幅BWはBW=gmb/πCとなり、Q値はgmb/gm3となる。すなわち、完全差動型の場合でもgm値の数はgmb、gmc、gm3の3個でよい。
更に、2m次(mは2以上の整数)の複素バンドパスフィルタを構成する場合でも、当該実施例1の図4の2次複素バンドパスフィルタをm個縦続接続することにより実現でき、しかも次段以降の2次複素バンドパスフィルタの各gm値は初段の2次複素バンドパスフィルタの各gm値と基本的に同じでよく、最低3個でよい。
図5には、当該実施例1の図4の2次複素バンドパスフィルタを2個縦続接続することにより実現した4次複素バンドパスフィルタの周波数特性を示しており、202は初段の2次複素バンドパスフィルタ出力の周波数特性、203が同じ2次複素バンドパスフィルタを2個縦続接続した4次複素バンドパスフィルタの周波数特性である。ここで、gm値はgmb=9.4μS、gmc=37.7μS、gm3=13.5μSの3個のみで構成されている。また、C1=1.5pF、C2=1.5pF、R1=R2=0Ωである。
図6には、本発明の実施例2にかかる2次の複素バンドパスフィルタのブロック構成図が示されており、このフィルタでは、直交変調された同相成分の入力信号XIおよび直交成分の入力信号XQがそれぞれ第1損失積分器51及び第2損失積分器52に入力され、それぞれの出力信号は通過帯域の中心周波数シフト機能を果たす第1周波数シフト素子53からの信号と第1加算器54及び第2加算器55により加算され、第1加算器54の出力信号は次段の第1無損失積分器56の入力信号となると同時に第1周波数シフト素子53にフィードバックされる。同様に、第2加算器55の出力信号は次段の第2無損失積分器57の入力信号となると同時に第1周波数シフト素子53にフイードバックされる。更に、第1無損失積分器56からの出力信号は通過帯域の中心周波数シフト機能を果たす第2周波数シフト素子58からの信号と第3加算器59により加算され、第3加算器59からの出力信号は同相成分の出力信号YIになると同時に第2周波数シフト素子58と第1損失積分器51へとフィードバックされる。また、第2無損失積分器57からの出力信号は第2周波数シフト素子58からの信号と第4加算器60により加算され、第4加算器60からの出力信号は直交成分の出力信号YQになると同時に第2周波数シフト素子58と第2損失積分器52へとフィードバックされる。
このような2次複素バンドパスフィルタをシングルエンド型OTAを用いて構成した具体的な回路を図7に示す。直交変調された同相成分の入力信号XIが入力され、gm1aのトランスコンダクタンスを持つ第1OTA61、この第1OTA61の出力側が接続され、gm2aのトランスコンダクタンスを持つ第2OTA62、この第2OTA62の出力側が接続され、gm3aのトランスコンダクタンスを持つ第3OTA63が設けられており、この第3OTA63から同相成分の出力信号YIが出力されると同時に出力信号YIは第1OTA61の入力にフィードバックされる。また、前記第2OTA62の出力は第2OTA62の入力にフィードバックされる。
一方、直交変調の直交成分の入力信号XQが入力され、gm1bのトランスコンダクタンスを持つ第4OTA64、この第4OTA64の出力側が接続され、gm2bのトランスコンダクタンスを持つ第5OTA65、この第5OTA65の出力側が接続され、gm3bのトランスコンダクタンスを持つ第6OTA66が設けられ、この第6OTA66から直交成分の出力信号YQが出力されると同時に出力信号YQは第4OTA64の入力にフィードバックされる。また、前記第5OTA65の出力は第5OTA65の入力にフィードバックされる。
また、前記第2OTA62と第3OTA63の接続点Eと、前記第5OTA65と第6OTA66の接続点Fとの間に、通過帯域の中心周波数シフト機能を果たすための第7OTA67及び第8OTA68が設けられ、この第7OTA67はgm4aのトランスコンダクタンスを持ち、第8OTA68はgm4bのトランスコンダクタンスを持つ。前記接続点Eと前記第8OTA68の入力が接続され、前記接続点Fと前記第7OTA67の入力が接続される。また、前記第7OTA67の出力は前記第2OTA62の出力と接続され、前記第8OTA68の出力は前記第5OTA65の出力に接続される。更に、前記第1OTA61の出力とアースとの間に、容量C1aの第1キャパシタ71と抵抗値R1aの第1抵抗素子72が接続され、前記第4OTA64の出力とアースとの間に、容量C1bの第2キャパシタ75と抵抗値R1bの第2抵抗素子76が接続されている。
更に、前記第3OTA63の出力と前記第6OTA66の出力との間に、通過帯域の中心周波数シフト機能を果たすための第9OTA69及び第10OTA70が設けられ、この第9OTA69はgm5aのトランスコンダクタンスを持ち、第10OTA70はgm5bのトランスコンダクタンスを持つ。前記同相成分の出力信号YIは前記第10OTA70の入力と接続され、前記直交成分の出力信号YQは前記第9OTA69の入力に接続される。更に、前記第3OTA63の出力とアースとの間に、容量C2aの第3キャパシタ73と抵抗値R2aの第3抵抗素子74が接続され、前記第6OTA66の出力とアースとの間に、容量C2bの第4キャパシタ77と抵抗値R2bの第4抵抗素子78が接続されている。以上の第1、第2、第3、第4の抵抗素子72、76、74、78はフィルタ通過帯域の歪を改善する目的で配置されている。
ここで、図6の第1損失積分器51は第1OTA61と第2OTA62と第1キャパシタ71と第1抵抗素子72によって、第2損失積分器52は第4OTA64と第5OTA65と第2キャパシタ75と第2抵抗素子76によって、第1周波数シフト素子53は第7OTA67と第8OTA68によって、それぞれ実現される。また、第1及び第2加算器54及び55は結線によって実現できる。更に、第1無損失積分器56は第3OTA63と第3キャパシタ73と第3抵抗素子74によって、第2無損失積分器57は第6OTA66と第4キャパシタ77と第4抵抗素子78によって、第2周波数シフト素子58は第9OTA69と第10OTA70によって、それぞれ実現される。また、第3及び第4加算器59及び60は結線によって実現できる。
そして、通常、複素バンドパスフィルタを構成する場合、図7のトランスコンダクタンスにおいて、gm1a=gm1b=gm1、gm2a=gm2b=gm2、gm3a=gm3b=gm3、gm4a=gm4b=gm4、gm5a=gm5b=gm5で、またC1a=C1b=C1、R1a=R1b=R1、C2a=C2b=C2、R2a=R2b=R2として用いられ、このとき2次の複素バンドパスフィルタの伝達関数H(s)[s:複素変数]は、次式によって与えられる。ここでは、各OTAの周波数特性は無視しているためR1=R2=0である。
当該実施例2の2次複素バンドパスフィルタの中心周波数は、gm4、gm5及びC1、C2によって決定されるが、gm4=gm5=gmc及びC1=C2=Cとすることにより、中心周波数fcはfc=gmc/2πCとなる。また、帯域幅はgm1、gm3及びC1、C2によって決定されるが、gm1=gm3=gmb及びC1=C2=Cとすると帯域幅BWはBW=gmb/πCとなり、Q値はgmb/gm2となり、gm値の数はgmb、gmc、gm2の3個でよい。また、4次の複素バンドパスフィルタを構成する場合でも当該実施例2の2次複素バンドパスフィルタを2個縦続接続することにより実現でき、しかも次段の2次複素バンドパスフィルタの各gm値は初段の2次複素バンドパスフィルタの各gm値と基本的に同じでよく、最低3個でよい。
なお、当該実施例2においてgm1a=gm1b=gm1=9.4μS、gm2a=gm2b=gm2=13.5μS、gm3a=gm3b=gm3=9.4μS、gm4a=gm4b=gm4=37.7μS、gm5a=gm5b=gm5=37.7μS、Ca1=Cb1=C1=1.5pF、Ca2=Cb2=C2=1.5pF、R1=R2=0Ωの値に設定されれば実施例1と同じ周波数特性を得ることが出来る。
図8には、当該実施例2の2次複素バンドパスフィルタを完全差動型OTAを用いて構成した具体的な回路が示されている。ここで、図6の第1損失積分器51は第1OTA81と第2OTA82と第3OTA83と第1キャパシタ93と第1抵抗素子94によって、第2損失積分器52は第4OTA85と第5OTA86と第6OTA87と第2キャパシタ97と第2抵抗素子98によって、第1周波数シフト素子53は第7OTA89と第8OTA90によって、それぞれ実現される。また、第1及び第2加算器54及び55は結線によって実現できる。更に、第1無損失積分器56は第9OTA84と第3キャパシタ95と第3抵抗素子96によって、第2無損失積分器57は第10OTA88と第4キャパシタ99と第4抵抗素子100によって、第2周波数シフト素子58は第11OTA91と第12OTA92によって、それぞれ実現される。また、第3及び第4加算器59及び60は結線によって実現できる。
図8のトランスコンダクタンスにおいて、gina=ginb=gmin、gm1a=gm1b=gm1、gm2a=gm2b=gm2、gm3a=gm3b=gm3、gm4a=gm4b=gm4、gm5a=gm5b=gm5で、またCa1=Cb1=C1、Ra1=Rb1=R1、Ca2=Cb2=C2、Ra2=Rb2=R2としたとき回路の伝達関数H(s)[s:複素変数]は、次式によって与えられる。ここでは、各OTAの周波数特性は無視しているためR1=R2=0である。
当該実施例2の完全差動型の2次複素バンドパスフィルタの中心周波数は、gm4、gm5及びC1、C2によって決定されるが、gm4=gm5=gmc及びC1=C2=Cとすることにより、中心周波数fcはfc=gmc/2πCとなる。また、帯域幅はgmin、gm1、gm3及びC1、C2によって決定されるが、gmin=gm1=gm3=gmb及びC1=C2=Cとすると帯域幅BWはBW=gmb/πCとなり、Q値はgmb/gm2となる。すなわち、完全差動型の場合でもgm値の数はgmb、gmc、gm2の3個でよい。
これまではOTAの周波数特性を無視してR1=R2=0のとしてきたが、OTAの有限の周波数特性を考慮した場合でも、例えばOTAのカットオフ周波数が100MHzの場合、前記実施例1の構成での2次複素バンドパスフィルタの周波数特性は図15の204のようになり、通過帯域に歪が生じるが、キャパシタと直列に抵抗発生素子を接続しているため、例えばその抵抗値を1060Ωに設定することにより205のように歪みを改善することができる。
また、Low−IF方式においてはIFの中心周波数は自由に設定することができ、例えばIF中心周波数fcを帯域幅BWのn倍(nは正の整数)に設定すれば、図16のように、gmbのOTAを2n個(146〜148)並列に接続することによりgmcのOTA149を実現できるためgm値の数をさらに減らすことが出来る。
本発明の実施例1にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示すブロック構成図である。
本発明の実施例1にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示すシングルエンド型OTAを用いた回路図である。
本発明の実施例1にかかる2次複素バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。
本発明の実施例1にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示す完全差動型OTAを用いた回路図である。
本発明の実施例1にかかる2次及び4次複素バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。
本発明の実施例2にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示すブロック構成図である。
本発明の実施例2にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示すシングルエンド型OTAを用いた回路図である。
本発明の実施例2にかかる2次複素バンドパスフィルタの構成を示す完全差動型OTAを用いた回路図である。
従来の1次複素バンドパスフィルタの構成を示す回路図である。
従来の1次複素バンドパスフィルタの構成を示すブロック構成図である。
複素バンドパスフィルタにおける周波数シフトの説明図である。
従来の1次複素バンドパスフィルタの構成を縦続接続した2次複素バンドパスフィルタ示すブロック構成図である。
従来の1次複素バンドパスフィルタの構成を縦続接続した2次複素バンドパスフィルタ示すシングルエンド型OTAを用いた回路図である。
図13の複素バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。
本発明の実施例1にかかる2次複素バンドパスフィルタで生じる周波数特性の歪の改善を示す図である。
gmcのOTAを2n個のgmbのOTAで構成する説明図である。