JP2005257354A - 一体型マイクロケミカルデバイス - Google Patents
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Abstract
を提供する。
【解決手段】 検体中の1つ以上の成分を分析するための一体型マイクロケミカルデバイスであって、少なくとも(イ)検体が通過する1つ以上の流路、(ロ)該流路の少なくとも1つに接触し、かつ検体中の成分を分析することのできる多層乾式分析要素、の2つの要素を有することを特徴とするマイクロケミカルデバイス。
Description
マイクロケミカルデバイスは、例えば部材中に微小な流路(主に等価直径1mm以下)、或いは流路に接続された反応槽、電気泳動カラム、膜分離機構などの構造が適宜形成されたマイクロ流体デバイスとして使用される。このマイクロ流体デバイスは、内部に毛細管状の流路を有し、化学、生化学などの微小反応デバイス(マイクロリアクター)として、例えば、集積型DNA分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイスなどの微小分析デバイス、質量スペクトルや液体クロマトグラフィーなどの分析試料調製用微小デバイス、抽出、膜分離、透析などの物理化学的処理デバイス、マイクロアレイ製造用スポッタなどとして使用できると考えられている。
しかし、マイクロリアクター内では、通常、液体を検体として用いるマクロ反応装置とは異なる挙動が示され、それがしばしば欠点となることが明らかになってきた。
例えば、血液中の酵素の活性を測定しようとした場合、血液をマイクロリアクター内に注入し、マイクロリアクター内で該酵素の基質と酵素反応を行い、その結果を測定するためには、該酵素を含有する検体(血液)と該基質を速やかに混合する必要がある。しかし、マイクロリアクターなどの微小流路内ではレイノルズ数が低下するため、液体が層流を形成してしまい、混合が迅速には進行しないという問題が生じることがあった。また、この問題は、特に複数の反応、複数の試薬の混合を必要とする反応の場合に特に顕著に起こった。
本発明の目的は、マイクロケミカルデバイスにおいて、特に血液・体液などの液体中の微量成分を分析する際に、検体と試薬の混合が迅速に進むマイクロケミカルデバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、少量の検体から1つ以上の成分を迅速かつ簡便に分析できるマイクロケミカルデバイスを提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の構成により上記目的を達成したものである。
<1> 検体中の1つ以上の成分を分析するための一体型マイクロケミカルデバイスであって、少なくとも
(イ)検体が通過する1つ以上の流路、
(ロ)該流路の少なくとも1つに接触し、かつ検体中の成分を分析することのできる多層乾式分析要素、
の2つの要素を有することを特徴とするマイクロケミカルデバイス。
<2> 上記の流路の幅が1〜3000μmであることを特徴とする前記<1>記載のマイクロケミカルデバイス。
<3> 検体の前処理要素を有する前記<1>又は<2>記載のマイクロケミカルデバイス。
乾式分析要素は、いわゆるドライケミストリーを使用した分析要素のことである。本発明では、マイクロケミカルデバイスの検出系に、多層乾式分析要素を使用することにより、少量の検体から1つ以上の成分の分析を、迅速かつ簡便に行うことができる。これにより、マイクロケミカルデバイスにおいて検体と試薬の混合を迅速に進ませることが可能となる。これは、試薬と検体の水分を混ぜ合わせる必要が無いため、マイクロ空間における液/液混合時の問題が無くなるためと考えられる。特にマイクロケミカルデバイスにおける微小空間に、複数の試薬を組み込む場合、とりわけ複数の試薬を1層以上の層に組み込む多層分析に用いる場合に有効であり、試薬が乾燥状態で安定であること、検体の水分だけで反応が進行することによって、迅速に検出が可能となる。
本発明における、検体中の1つ以上の成分を分析するためのマイクロケミカルデバイスは、少なくとも以下の2つの要素を有する、一体型の、マイクロケミカルデバイスである。
(イ)検体が通過する1つ以上の流路、
(ロ)該流路の少なくとも1つに接触し、かつ検体中の成分を分析することのできる多層乾式分析要素。
まず、(ロ)該流路の少なくとも1つに接触し、かつ検体中の成分を分析することのできる多層乾式分析要素について、説明する。
本発明でいう多層乾式分析要素とは、血液中の非測定成分の定性・定量分析に必要な全てのまたはその一部分の試薬を1層以上の層に組み込んだ乾式分析要素のことをいう。いわゆるドライケミストリーを使用した分析要素である。具体的には、このような分析要素の例は、富士フイルム研究報告、第40号(富士写真フイルム株式会社、1995年発行)p.83や、臨床病理、臨時増刊、特集第106号、ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開(臨床病理刊行会、1997年発行)等に記載されているものをあげることができる。
このような多層乾式分析要素はすでに多数開発・商品化されており、富士ドライケム(富士写真フィルム(株)製)などはその1例である。本発明においては、このような多層乾式分析要素そのものを使用する。またはその一部分を使用することもできる。
上記多層乾式分析要素は、上記流路の少なくとも1つに接触していれば、該多層乾式分析要素と流路とがつながっている形態でも、該多層乾式分析要素が流路内に組み込まれている形態でもよく、また多層乾式分析要素を複数用いる場合には、流路でつながれた1箇所にまとめても、各分析要素を別々に配列してもよい。
多層乾式分析要素は、その最上層に血液またはその成分を水平方向に展開するいわゆる展開層を有することが多い。しかし、本発明においては、このような展開層は必ずしも必要ではない。
<マイクロケミカルデバイスおよび該マイクロケミカルデバイスが有する(イ)検体が通過する1つ以上の流路>
本発明におけるマイクロケミカルデバイスとは、等価直径1mm以下の流路(チャンネルとも称する。)を有する装置のことを意味する。
本発明でいう等価直径(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で一般的に用いられている用語である。任意断面形状の配管(本発明では流路に当たる。)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径といい、deq:等価直径は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管ではdeq=4a2/4a=a、路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる。これらの詳細は「機械工学事典」((社)日本機械学会編1997年、丸善(株))に記載されている。
また流路の長さには特に制限はないが、好ましくは1mm〜10000mmであり、特に好ましくは5mm〜100mmである。
本発明に用いられる流路の幅は、1〜3000μmであることが好ましく、より好ましくは10〜2000μmであり、さらに好ましくは50〜1000μmである。流路の幅が上記範囲であると、血液などの検体が、流路の壁から抵抗を受けて流動性が低下することが少なく、かつ、検体の量を少量にとどめることができるため、好ましい。
流路はマイクロケミカルデバイスに配置する要素の数に合わせて、1つのみでも、2つ以上に分岐していてもいずれでもよい。また、直線状、曲線状など、いずれの形態をとることも可能であるが、直線状であることが好ましい。
代表的な方法を挙げれば、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、Deep RIEによるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、およびダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法などがある。これらの技術を単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、および機械的マイクロ切削加工法である。
更に、組立に際しては高温加熱による材料の変質や大変形による流路等の微小構造体の破壊を伴わない寸法精度を保った高度に精密な接合方法が望ましく、その技術としてはシリコン直接接合、陽極接合、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF水溶液を用いた接合、Au−Si共晶接合、ボイドフリー接着などが挙げられる。
電気的駆動方式は、流体の挙動が流路断面内で、流速プロファイルがフラットな分布となることが知られている。圧力駆動方式では、流体の挙動が流路断面内で、流速プロファイルが双曲線状に、つまり流路中心部が速く、壁面部が遅い分布となることが知られている。このことからサンプルプラグなどの形状を保ったまま移動させるといった目的には、電気的駆動方式の方が、好ましい。
電気的駆動方式は、流路内が流体で満たされている必要があり、すなわち連続流動方式の形態をとる。電気的な制御によって流体の操作を行うことができるため、例えば連続的に2種類の溶液の混合比率を変化させることによって、時間的な濃度勾配をつくるといった比較的複雑な処理を行うことができる。
圧力駆動方式は、流体固有の電気的性質に影響されること無く、制御が可能である。発熱や電気分解などの副次的な効果を考慮しなくてよく、基質に対する影響がほとんどないことから、適用範囲が広い。圧力駆動方式では、外部に圧力源を用意する必要がある。
検体注入ポート1は、検体を注入することが可能であれば、いずれの形態でもよい。注入された検体は、流路2を通り、反応ポート3に導かれる。反応ポート3は、多層乾式分析要素と接触しており、試薬と反応する。
本発明が図1の範囲内におさまるものではないのはいうまでもない。
本発明のマイクロケミカルデバイスを使用して、分析することのできる検体としては、血液や、尿などの、ヒトから得られる液体成分が挙げられる。これらの液体成分から、体液中の微量成分を迅速に測定することができるため、本発明のマイクロケミカルデバイスを適用することが好ましい。血液や、尿などからは、蛋白質、酵素、DNA、ホルモン、レセプター、リガンド、その他体液中に存在する微量成分を測定することができ、検体が全血である場合には、検体となる全血を前処理要素によって、予め処理しておくことが、より迅速な測定につながり好ましい。前処理要素としては、例えば血球分離工程に用いる要素であり、このような工程としては、濾過や遠心分離などの通常当該分野で使用される分離工程のいずれもが使用できる。特に濾過が好ましく、濾過材を前処理要素として使用することが好ましい。濾過材としては、通常当該分野で濾過に使用される濾過材のいずれもが使用できる。前処理要素は、本発明のマイクロケミカルデバイスに一体化されて組込まれているのが望ましい。
また、本発明のマイクロケミカルデバイスを使用して、分析することのできる検体としては、体液だけではなく食品分析、環境分析、細胞分析など、広い範囲の検体に適用可能であることはいうまでもない。
シリコンウエファー上に厚膜フォトレジストのSU−8をスピンコートして膜厚100μmとした。90℃で1時間予備加熱した後、図1に相応する流路パターン(1)を描いてあるマスクを通してUV光を照射し、90℃1時間で光照射部分を硬化させた。未硬化部分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)により溶解除去、水洗したのち乾燥し、シリコンウエファー/SU8凸型として使用した。
この、シリコンウエファー凸型上に、PDMS(デュポンSylgard/硬化液=10/1 混合液)を流し込み、80℃で2時間硬化させた後シリコンウエファー凸型より静かに剥がしとり、図1に示すPDMS凹型を作成した。
次に、図2に相応する流路パターン(2)を描いてあるマスクについても、流路パターン(1)と同様に、シリコンウエファー/SU8凸型を作製後、図2に示すPDMS凹型を作成した。
検体注入ポート(1,2)、試薬注入ポート(5)は直径1mm、反応ポート(3,7)は直径2mm、流路(2,6)は幅200μm、深さはいずれも80μmとなるように調整した。
富士ドライケム(富士写真フイルム(株)製グルコーススライドの展開層を剥ぎ取り、この上に、図1のPDMS凹型をのせ、多層乾式分析要素チップ(1)とした。
検体注入ポート1より、100mg/d1のグルコースを注入し、37℃のドライバス上で5分間保温後、反応ポート3の発色をデジタル実体顕微鏡(キーエンス社デジタルマイクロスコープ)により測定した。
図2のPDMS凹型を180μm厚のポリエチレンテレフタレートシート(PETSheet)にのせ、比較例チップ(2)とした。
この検体注入ポート4より、100mg/d1のグルコース溶液、試薬注入ポート5よりグルコース発色試薬(グルコースCII−テストワコー 和光純薬)を注入し、37℃のドライバス上で5分間保温後、反応ポート7の発色をデジタル実体顕微鏡(キーエンス社デジタルマイクロスコープ)により測定した。
実施例1の多層乾式分析要素チップでは、反応ポート3全面で均一の発色が観測されたが、比較例2では、反応ポート7には発色ムラがみられた。また、得られたデータより、反射濃度を算出した。結果を表1に示す。
2 流路
3 反応ポート
4 検体注入ポート
5 試薬注入ポート
6 流路
7 反応ポート
Claims (3)
- 検体中の1つ以上の成分を分析するための一体型マイクロケミカルデバイスであって、
少なくとも
(イ)検体が通過する1つ以上の流路、
(ロ)該流路の少なくとも1つに接触し、かつ検体中の成分を分析することのできる多層乾式分析要素、
の2つの要素を有することを特徴とするマイクロケミカルデバイス。 - 上記の流路の幅が1〜3000μmであることを特徴とする請求項1記載のマイクロケミカルデバイス。
- 検体の前処理要素を有する請求項1又は2記載のマイクロケミカルデバイス。
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