以下、この出願の発明について、その好ましい態様を示す図面を参照しながら説明する。
図1は、血液浄化装置本体25及び交換型血液浄化デバイスユニット27によって構成される本発明の血液浄化装置を正面の右斜め方向から観察した状態を概略的に示す図である。交換型血液浄化デバイスユニット27は、想像線によって対応させている配置関係で、血液浄化装置本体25に取り付けることができる。
血液浄化装置本体25は、その正面側の上側部分に四角形の凹部を有している。この四角形形状の凹部の底面には、図示するように、左右方向については中央部分の領域であって、縦方向に整列して4つの突出部1、2、3、4が設けられている。これらの突出部は、本発明の血液浄化装置においては、各ローラ型ポンプ1、2、3、4のロータ部である。このように、血液浄化装置本体25の四角形形状の凹部の底面にはいくつかの部材が突出して設けられているので、本発明に関して、この表面を雄型表面26と称する。
血液浄化デバイスユニット27の側には、この血液浄化デバイスユニット27を血液浄化装置本体25に対して取り付けた場合に、血液浄化装置本体25の側の各ローラ型ポンプ1、2、3、4のロータ部が通り抜けることができる孔H1、H2、H3、H4が設けられている。図1では現れていないが、血液浄化デバイスユニット27の背面側を、上記の血液浄化装置本体25の雄型表面26に対応する雌型表面28と称する。血液浄化デバイスユニット27の雌型表面28を血液浄化装置本体25の雄型表面26に向けて押し込むことによって、特に図示はしないが、この技術分野において既知の案内機構及び連結機構によって、血液浄化デバイスユニット27を血液浄化装置本体25に取り付けることができる。
図2は、交換型血液浄化デバイスユニット27の正面を観察した図である。この交換型血液浄化デバイスユニット27は、上述した血液浄化装置本体25の側の各ローラ型ポンプ1、2、3、4のロータ部が入り込むことができる孔H1、H2、H3、H4をそれぞれ対応する配置で有する点が、本発明において重要である。本発明において、交換型血液浄化デバイスユニット27は、用途に応じて、種々の要素と、その要素を連絡する流路とを具備するので、ユニット27内の構成はその用途によってそれぞれ異なることになる。従って、以下、各用途に応じて、それぞれ対応する要素及び流路を有する血液浄化デバイスユニット27の構成を示す図を参照しながら説明する。尤も、これらの態様は、本発明を実施するための一例に過ぎず、本発明は特許請求の範囲に記載する発明の範囲内で、種々の変更をすることができる。
(血液透析処理)
図3は、血液透析処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニットについての構成要素及び流路について説明するための概略図である。図3の向きは図2に対応している。
図3の血液浄化デバイスユニット27において、その左右方向の中央部分の縦方向に符号1、2、3、4で示しているのは、この血液浄化デバイスユニット27の各孔H1、H2、H3、H4に挿入されている血液浄化装置本体25側の4個のローラ型ポンプである。尚、各孔H1、H2、H3、H4は、図2において示している。血液浄化デバイスユニット27は、この他、主要な構成要素として、精密濾過フィルター7、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8、メッシュフィルター9、エアトラップ17を具備しており、これらと、透析液入口部5、透析液出口部6、患者側カテーテルに接続するためのコネクタ13及びコネクタ14との間を所定の配管によって連絡されている。
また、各孔H1、H2、H3、H4の周囲には、チューブT1、T2、T3、T4が各ローラ型ポンプ1、2、3、4に係合するように配設されている。更に、各チューブT1、T2、T3、T4を包囲するように、ステータ部S1、S2、S3、S4が設けられている。従って、各ローラ型ポンプ1、2、3、4のロータ部が、それぞれ対応する各ステータ部S1、S2、S3、S4との間で、各チューブT1、T2、T3、T4を押し潰しながら回転し、各チューブT1、T2、T3、T4に対してしごき作用を適用することによって、各ローラ型ポンプ1、2、3、4は各チューブT1、T2、T3、T4内の液体を送り出すことができる。
ここで、精密濾過フィルター7は、一般的な精密濾過フィルターであって、菌体毒素であるエンドトキシンの除去を目的として設けられている。ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8は、血液中の毒素を除去するために設けられている。精密濾過フィルター7及びダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8は、中空糸型モジュールである。メッシュフィルター9は、血液中に発生したフィブリン塊を患者体内へ戻すことなく除去するために設けられている。エアトラップ17はこの血液浄化デバイスユニット27内を送られる液体中に含まれる可能性のある気泡を捕捉するために設けられている。
血液透析の具体的な操作は、以下の通りである。即ち、患者の静脈に接続されている静脈側カテーテルをコネクタ14に接続し、患者の動脈に接続されている動脈側カテーテルをコネクタ13に接続した後、ローラ型ポンプ3を図中で時計回りに回転させて、患者の血液を動脈から吸引すると、血液は、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3及びエアトラップ17を通り、点Jを右側から左側へ通り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上端部Iからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中へ送られ、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を下向き流れる際に血液透析処理が行われる。
ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を下向きに通って浄化された血液は、下端部Hからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8を出て、点Gを左側から右側へ流れ、メッシュフィルター9を通り、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4を通った後、コネクタ14へ流れ、静脈側カテーテルを介して患者静脈に戻される。尚、この際に、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4が流路を開口した状態であれば、ローラ型ポンプ4は運転してもよいし、運転しなくてもよい。
また、透析治療中には、ローラ型ポンプ1及び2は停止した状態で、透析液入口部5から精密濾過フィルター7の中へ透析液を導入する。すると、透析液は精密濾過フィルター7の下側へ出て、点Hからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8を上向きに流れる。ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8内では、半透膜の性質を有する中空糸の内側を流れる血液と、その中空糸の外側を流れる透析液との間で透析が行われ、透析液はダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上部の点Iから右側へ流れ、透析液出口部6を通ってユニットの外へ排出される。この操作において、透析液入口部5から導入される透析液の流量と、透析液出口部6を通って排出する透析液の流量とをバランスさせる必要がある。
また、この血液浄化デバイスユニット27を用いるためのプライミング操作では、まず、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通して透析液をユニット内に導入し、ローラ型ポンプ2を時計回りに回転させて透析液の流れを点Aの左側から点Aの下側へ導き、ローラ型ポンプ2を巻いている配管チューブT2を通す。この際にローラ型ポンプ1及び4を閉塞状態とすることによって、点Gに送られた透析液は、点Gの上側から点Gの左側へ流れ、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8へ送られる。ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を透析液が下端部側から上方へ満たしてゆくと、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8内に入っていた空気は、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上端部Iを通して、点Jを通過し、エアトラップ17へ押し出される。
エアトラップ17には、その上側部分に撥水性の膜を介した隠圧式の空気抜きを設けてあるので、その空気抜きから空気を流路の外部へ排出除去することができる。透析液は更に、開通状態としたローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3を通って、コネクタ13までの流路に透析液を充満することができる。また、ローラ型ポンプ1を反時計回りに回転させることによって、ローラ型ポンプ1を巻いている配管チューブT1の流路内に透析液を充填することができる。
その後、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4を開通状態とし、ローラ型ポンプ3を停止すると、透析液は点Gを上側から右側へ流れ、メッシュフィルター9を通り、コネクタ14へ送られて、流路の全体に透析液を充填することができる。また、メッシュフィルター9の上側部分にも撥水性の膜を介した隠圧式の空気抜きを設けているので、その空気抜きから空気を流路の外部へ排出除去することができる。
(血液透析濾過処理)
血液透析濾過処理も図3の交換型血液浄化デバイスユニット70を用いて行うことができる。要素及び流路に関しては血液透析処理の場合と同じものを用いる。但し、血液透析濾過処理を行う場合には、ローラ型ポンプ1及び2の少なくとも一方、場合によっては両方を運転する。ローラ型ポンプ1を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを右側へ通し、ローラ型ポンプ1を巻いている配管チューブT1を通して、点Jにおいて血液の流れに合流させる。ローラ型ポンプ2を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを下側へ通し、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3を通して、点Gにおいて血液の流れに合流させる。
この血液透析濾過処理の操作では、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8において、透析液が中空糸の外側を下側から上側へ流れ、血液が中空糸の内側を上側から下側へ流れるので、血液の透析及び濾過が行われる。この操作でも、透析液入口部5から導入される透析液の流量と、透析液出口部6を通って排出する透析液の流量とをバランスさせる必要がある。
(血液濾過処理)
血液濾過処理も図3の交換型血液浄化デバイスユニット70を用いて行うことができる。要素及び流路に関しては血液透析濾過処理の場合と同じものを用いる。但し、血液濾過処理を行う場合にも、ローラ型ポンプ1及び2の少なくとも一方、場合によっては両方を運転する。ローラ型ポンプ1を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを右側へ通し、ローラ型ポンプ1を巻いている配管チューブT1を通して、点Jにおいて血液の流れに合流させる。ローラ型ポンプ2を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを下側へ通し、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3を通して、点Gにおいて血液の流れに合流させる。
この血液濾過処理の操作では、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8において、血液及び合流させた透析液が中空糸の内側に入り、透析液入口部5から導入された透析液の流量にバランスさせた流量の濾液を中空糸の外側に濾過し、これを透析液出口部6を通してユニット70から排出する。
(高分子回収型腹膜透析処理)
図4は、高分子回収型腹膜透析処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニットの構成要素及び流路について説明するための図であって、図3に対応する構成を示す概略図である。
図4に示す血液浄化デバイスユニット27において、血液浄化デバイスユニット27の各孔H1、H2、H3、H4に挿入されている4個のローラ型ポンプ1、2、3、4の各ロータ部、並びにその主要な構成要素である精密濾過フィルター7、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8、メッシュフィルター9、エアトラップ17は、図3に示す血液浄化デバイスユニット27と同様である。微粒子除去フィルター11は0.2μm程度の孔直径を有するフィルターであって、フィブリン塊を除去するために設けられている。
但し、患者側カテーテルに接続するためのコネクタは、図の右下側のコネクタ12のみであって、行う処理が図3のユニットとは異なることから、各要素及びローラ型ポンプを巻いている配管チューブを連絡する配管の配列の仕方が図3のユニットとは異なっている。
高分子回収型腹膜透析処理における排液の具体的な操作は、以下の通りである。即ち、患者の腹腔に接続されている腹腔カテーテルをコネクタ12に接続し、ローラ型ポンプ4を反時計回りに回転させて、患者の腹腔内に滞留させていた透析液を吸引すると、その透析液は、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4及びメッシュフィルター9を通り、点Gを右側から左側へ通り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の下端部Hからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中へ上向きに送られ、上端部Iから右側へ流れ、出口部6を通してユニット内の流路から排出除去される。
これと並行して、ローラ型ポンプ2を反時計回りに回転させて、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中へ上向きに流した透析液を、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上端部Iの上方へ出して流れさせた後、点Aを上側から下側へ送り、点Bを上側から右側へ流れさせて、ローラ型ポンプ2を巻いている配管チューブT2の中を通し、エアトラップ17及びフィルター11を通して、点Fにて、吸引する透析液に加えることもできる。この操作では、ローラ型ポンプ2を通る流量を、ローラ型ポンプ4を通る流量よりも低く抑えるので、透析液出口部6からは低分子量の物質を多く含む透析液が排出される。また、この際にローラ型ポンプ1を運転して、フィルター11の中の透析液の流れを速くし、濾過による目詰まりを防ぐこともできる。ローラ型ポンプ1の運転は、右回転、左回転いずれでも目詰まりを防ぐ効果は同一である。
また、図4に示す高分子回収型腹膜透析処理における注液の具体的な操作は、以下の通りである。排液操作の終了後、ローラ型ポンプ4の運転を停止し、ローラ型ポンプ2を運転して、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通して透析液をユニット内に導入する。透析液は、エアトラップ17及びフィルター11を通り、点Fへ送られ、コネクタ12及び腹腔カテーテルを経て患者の腹腔へ送られる。その際、ローラ型ポンプ3及び4を運転して、透析液をダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8及びメッシュフィルター9へ送り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8及びメッシュフィルター9の中に滞留している透析排液を、点Iから点Aの方へ及び点Fの方へそれぞれ流れさせることもできる。また、上記排液の操作の際に行ったのと同様に、ローラ型ポンプ1によってフィルター11内の流れを速くし、濾過による目詰まりを防ぐこともできる。
この場合に、ローラ型ポンプ3を時計回りに回転させることによって、透析液を点Bから下向きへ流し、点G、点Hを経て、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を通し、点I、点A及び点Bへと循環して流れさせることもできる。その際、ローラ型ポンプ2の運転によって、点Bから右側へ流し、エアトラップ17へ導くこともできる。また、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の下端部の点Hが排液フィブリンによって目詰まりを生じた場合には、上記操作中に、ローラ型ポンプ3を反時計回りに回転させることによって、透析液を逆流させ、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の下端部の点Hにおける目詰まりを解消すると同時に、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8内に滞留した透析排液をローラ型ポンプ2の方へ導くこともできる。
(腹膜透析処理)
図5は、腹膜透析処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニットの構成要素及び流路について説明するための図であって、図3に対応する概略図である。
図5に示す血液浄化デバイスユニット27では、ローラ型ポンプ2及び4のみを使用するため、ローラ型ポンプ1及び3は示していない。
腹膜透析における排液の操作は、患者の腹腔に接続されている腹腔カテーテルをコネクタ12に接続し、ローラ型ポンプ4を反時計回りに回転させて、患者の腹腔内に滞留させていた透析液を吸引すると、その透析液は、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4を通り、点Kを下側から上側へ通り、透析液出口部6を通してユニット内の流路から排出除去される。
また、腹膜透析における注液の操作は、排液操作の終了後、ローラ型ポンプ4の運転を停止し、ローラ型ポンプ2を運転して、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通して透析液をユニット内に導入する。透析液は、ローラ型ポンプ2を巻いている配管チューブT2を通り、エアトラップ17を通り、点Fへ送られ、コネクタ12及び腹腔カテーテルを経て患者の腹腔へ送られる。
(血液吸着処理)
図6は、血液吸着処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニットの構成要素及び流路について説明するための図であって、図3に対応する概略図である。図6に示す血液浄化デバイスユニット27では、ローラ型ポンプ2、3及び4を使用するため、ローラ型ポンプ1は示していない。
血液吸着における操作は、以下の通りである。即ち、患者の静脈に接続されている静脈側カテーテルをコネクタ14に接続し、患者の動脈に接続されている動脈側カテーテルをコネクタ13に接続した後、ローラ型ポンプ3を図中で時計回りに回転させて、患者の血液を動脈から吸引する。吸引された血液は、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3及びエアトラップ17を通り、吸着筒15の上端部Iから吸着筒15の中へ送られ、吸着筒15の中を下向き流れる際に血液吸着処理が行われる。
吸着筒15の中を下向きに通って浄化された血液は、下端部から吸着筒15を出て、点Gを左側から右側へ流れ、メッシュフィルター9を通り、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4を通った後、コネクタ14へ流れ、静脈側カテーテルを介して患者静脈に戻される。尚、この際に、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4が流路を開口した状態であれば、ローラ型ポンプ4は運転してもよいし、運転しなくてもよい。
(血液透析吸着処理)
図7は、血液透析吸着処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニット27の構成要素及び流路について説明するための図であって、図3に対応する概略図である。図3の回路とは、図3ではローラ型ポンプ3を回転させて吸引した動脈血を最初にエアトラップ17に送っていたが、図7の回路ではローラ型ポンプ3を回転させて吸引した動脈血を最初に吸着筒15に通す点が異なっている。即ち、血液透析処理回路でのエアトラップ17に代えて、血液透析吸着処理回路では吸着筒15を用いる。
血液透析吸着処理の具体的な操作は、以下の通りである。即ち、患者の静脈に接続されている静脈側カテーテルをコネクタ14に接続し、患者の動脈に接続されている動脈側カテーテルをコネクタ13に接続した後、ローラ型ポンプ3を図中で時計回りに回転させて、患者の血液を動脈から吸引すると、血液は、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3及び吸着筒15を通り、点Jを右側から左側へ通り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上端部Iからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を下向きに流れる。
ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を下向きに通って透析された血液は下端部Hから出て、点Gを左側から右側へ流れ、メッシュフィルター9を通り、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4を通った後、コネクタ14へ流れ、静脈側カテーテルを介して患者静脈に戻される。
また、透析治療中には、ローラ型ポンプ1及び2は停止した状態で、透析液入口部5から精密濾過フィルター7の中へ透析液を導入する。すると、透析液は精密濾過フィルター7の下側へ出て、点Hからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8を上向きに流れる。ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8内では、半透膜の性質を有する中空糸の内側を流れる血液と、その中空糸の外側を流れる透析液との間で透析が行われ、透析液はダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上部の点Iから右側へ流れ、透析液出口部6を通ってユニットの外へ排出される。この操作において、透析液入口部5から導入される透析液の流量と、透析液出口部6を通って排出する透析液の流量とをバランスさせる必要がある。
血液透析濾過吸着処理の操作も、図7に示す血液浄化デバイスユニットを用いて行う。基本的な液体の流れは、上記の血液透析吸着処理の場合とほぼ同様であって、ユニット内に吸引した患者の動脈血を最初に吸着筒15に通す。その他の点は、血液透析濾過処理の場合と同様にする。即ち、ローラ型ポンプ1及び2の少なくとも一方、場合によっては両方を運転する。ローラ型ポンプ1を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを右側へ通し、ローラ型ポンプ1を巻いている配管チューブT1を通して、点Jにおいて血液の流れに合流させる。ローラ型ポンプ2を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを下側へ通し、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3を通して、点Gにおいて血液の流れに合流させる。
この血液透析濾過吸着処理の操作では、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8において、透析液が中空糸の外側を下側から上側へ流れ、血液が中空糸の内側を上側から下側へ流れるので、血液の透析及び濾過が行われる。この操作でも、透析液入口部5から導入される透析液の流量と、透析液出口部6を通って排出する透析液の流量とをバランスさせる必要がある。
また、血液濾過吸着処理の操作も、図7に示す血液浄化デバイスユニットを用いて行う。基本的な液体の流れは、上記の血液透析吸着処理の場合とほぼ同様であって、ユニット内に吸引した患者の動脈血を最初に吸着筒15に通す。その他の点は、血液濾過処理の場合と同様にする。即ち、ローラ型ポンプ1及び2の少なくとも一方、場合によっては両方を運転する。ローラ型ポンプ1を運転する場合は、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを右側へ通し、ローラ型ポンプ1を巻いている配管チューブT1を通して、点Jにおいて血液の流れに合流させる。ローラ型ポンプ2を運転する場合には、透析液入口部5から精密濾過フィルター7を通した透析液を点Aを下側へ通し、ローラ型ポンプ3を巻いている配管チューブT3を通して、点Gにおいて血液の流れに合流させる。この血液濾過吸着処理の操作では、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8において、血液及び合流させた透析液が中空糸の内側に入り、透析液入口部5から導入された透析液の流量にバランスさせた流量の濾液を中空糸の外側に濾過し、これを透析液出口部6を通してユニット70から排出する。
(高分子回収型腹膜透析吸着処理)
図8は、高分子回収型腹膜透析吸着処理の用途に用いる血液浄化デバイスユニットの構成要素及び流路について説明するための図であって、実質的に図4に対応する概略図である。
図8に示す血液浄化デバイスユニット27において、4個のローラ型ポンプ1、2、3、4の各ロータ部、並びにその主要な構成要素である精密濾過フィルター7、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8、メッシュフィルター9及び微粒子除去フィルター11は、図4に示す血液浄化デバイスユニット27と同様である。但し、図4に示す血液浄化デバイスユニット27で用いたエアトラップ17の替わりに、吸着筒15を用いている。
高分子回収型腹膜透析吸着処理における排液の具体的な操作は、以下の通りである。即ち、患者の腹腔に接続されている腹腔カテーテルをコネクタ12に接続し、ローラ型ポンプ4を反時計回りに回転させて、患者の腹腔内に滞留させていた透析液を吸引すると、その透析液は、ローラ型ポンプ4を巻いている配管チューブT4及びメッシュフィルター9を通り、点Gを右側から左側へ通り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の下端部Hからダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中へ上向きに送られ、上端部Iから右側へ流れ、出口部6を通してユニット内の流路から排出除去される。
これと並行して、ローラ型ポンプ2を反時計回りに回転させて、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中へ上向きに流した透析液を、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の上端部Iの上方へ出して流れさせた後、点Aを上側から下側へ送り、点Bを上側から右側へ流れさせて、ローラ型ポンプ2を巻いている配管チューブT2の中を通し、吸着筒15及びフィルター11を通して、点Fにて、吸引する透析液に加えることもできる。この操作では、ローラ型ポンプ2を通る流量を、ローラ型ポンプ4を通る流量よりも低く抑えるので、透析液出口部6からは低分子を多く含む透析液が排出される。また、この際にローラ型ポンプ1を運転して、吸着筒15およびフィルター11の中の透析液の流れを速くし、吸着を促進したり濾過による目詰まりを防ぐこともできる。
また、図8に示す高分子回収型腹膜透析吸着処理における注液の具体的な操作は、以下の通りである。排液操作の終了後、ローラ型ポンプ4の運転を停止し、ローラ型ポンプ2を運転して、透析液入口部5から透析液を精密濾過フィルター7を通してユニット内に導入する。透析液は、吸着筒15及びフィルター11を通り、点Fへ送られ、コネクタ12及び腹腔カテーテルを経て患者の腹腔へ送られる。その際、ローラ型ポンプ3及び4を運転して、透析液をダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8及びメッシュフィルター9へ送り、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8及びメッシュフィルター9の中に滞留している透析排液を、点Iから点Aの方へ及び点Fの方へそれぞれ流れさせることもできる。また、上記排液の操作の際に行ったのと同様に、ローラ型ポンプ1によってフィルター11内の流れを速くし、濾過による目詰まりを防ぐこともできる。
更にこの場合に、ローラ型ポンプ3を時計回りに回転させることによって、透析液を点Bから下向きへ流し、点G、点Hを経て、ダイアライザーあるいは血液透析濾過フィルターあるいは血液濾過フィルター8の中を通し、点I、点A及び点Bへと循環して流れさせることもできる。その後、ローラ型ポンプ2の運転によって、点Bから右側へ流し、吸着筒15へ導くこともできる。
以上説明したように、本発明の血液浄化装置では、特定の用途に対応する要素及び流路を備えた種々の血液浄化デバイスを、共通する寸法及び形状及び所定の雌型表面を有するケースに収容してユニット化し、一方、血液浄化装置本体側には各血液浄化デバイスユニットを交換して取り付けることができる対応する雄型表面を設けたので、1台の血液浄化装置本体と、種々の血液浄化用途に対応する2種又はそれ以上の種類の血液浄化デバイスユニットを備えておくことによって、種々の血液浄化処置(又は処理)に対応することができる。
尚、本発明の血液浄化装置において、特定の雌型表面を有する血液浄化デバイスユニットと特定の雄型表面を有する血液浄化装置本体とを組み合わせて、一体化の血液浄化装置として機能させるためには、ポンプを運転しない場合に、ロータ部の半径を小さくすることができ、ポンプを運転する場合に、ロータ部の半径を大きくすることができる特定の種類のローラ型ポンプを用いることが好ましい。更に、そのようなローラ型ポンプと組み合わせて用いるべきステータ部を、交換型の血液浄化デバイスユニット側に設けることが好ましい。従って、以下、そのようなローラ型ポンプについて、更に説明する。尚、以下に説明するポンプは、本発明の血液浄化装置に用いることができるローラ型ポンプの一例であって、ポンプを運転しない場合に、ロータ部の半径を小さくすることができ、ポンプを運転する場合に、ロータ部の半径を大きくすることができる構成を有するポンプであれば、本発明では、その他の種々の形態及び/又は態様のポンプを用いることができる。
図9に示す態様では、ポンプシャフト20の長軸に対して垂直な面内で、ポンプシャフトの半径方向外側へ延び、全体として円板形状を有する自転フレーム30が示されている。自転フレーム30の中央部には中央孔32が設けられており、この中央孔32にポンプシャフト20を挿入し、自転フレーム30をこのフレーム用ストッパ22に当接させることによって、自転フレーム30のポンプシャフト20上における位置を規制することができる。
自転フレーム30は、ポンプシャフトまわりにおいて回転対称な形状であれば、円板形状に限らず、楕円形形状、若しくは正多角形形状、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形又はそれ以上の多角形等の種々の多角形形状、若しくはそれら多角形形状の頂点を丸めて、全体として滑らかな外郭線を有する形状等であってもよいし、又はポンプシャフト20の外側に嵌まる寸法及び形状を有するリングからポンプシャフト20の半径方向外側へ二方、三方、四方、五方、六方、七方、八方等の回転対称な向き及び形態にて突出する複数のアームの形状であってもよい。
自転フレーム30には、ポンプシャフト20から等しい半径の位置であって、ポンプシャフト20まわりに回転対称となる位置に、アーム支持軸のための軸孔が設けられている。図9に示す態様では、3つの軸孔33、34、35が、自転フレーム30の円板を中心角120度で三等分して得られる扇形のそれぞれの境界となる半径上において、円板の中心から等しい距離の位置に設けられている。このように公転ローラは、360度を該公転ローラの数によって等分して得られる角度を中心角とする扇形をポンプシャフトの軸まわりに想定した場合の、各扇形どうしの境界となる半径上に設けることによって、ロータ部を回転対称な形状とすることが重要である。
各軸孔33、34、35にはそれぞれアーム支持軸40、41、42の一方の端部が挿入及び固定されている。アーム支持軸40、41、42を自転フレーム30に対して固定する手段は、関連する技術分野において知られている種々の手段を用いることができる。尚、図9では、図を簡潔に説明するため、アーム支持軸40のみを示しており、アーム支持軸41及び42は省略している。従って、以下のロータ部10に関する説明では、主として軸孔33に固定するアーム支持軸40及びそのアーム支持軸40に取り付けられる各部材について説明する。その場合であっても、各軸孔34、35についてもそれぞれ、軸孔33に固定するアーム支持軸40及びそのアーム支持軸40に取り付けられる各部材と同じ部材が、設けられていると理解されたい。また、本発明に関して、アーム支持軸及びそのアーム支持軸に取り付けられる各部材は、アーム支持軸を枢軸として揺動し得るので、これらについて「揺動ローラ部」という総称を用いることがある。
上述のアーム支持軸40を自転フレーム30に対して固定するための手段の例には、自転フレーム30の一端側から軸孔33の中を通って自転フレーム30の他端側に突出させたアーム支持軸40の端部に設けたネジ山と、そのネジ山に係合し得るナットの組合せであってもよいし、アーム支持軸40の端部と軸孔33との両者に相互に係止し得る係止手段、例えば、ネジ溝、キー若しくはノック軸等を設けてもよいし、又はアーム支持軸40の一端部を自転フレーム30に対して溶接等によって固定したりするなどの手段を採用することができる。別法として、アーム支持軸40を自転フレーム30に一体に形成してもよい。
アーム支持軸40は、1つのローラ支持アーム50の基端側孔51、スペーサ52、及びもう1つのローラ支持アーム53の基端側孔54の中を各部材に対して固定されることなく挿通しているので、2つのローラ支持アーム50、53はアーム支持軸40まわりで回転ないし揺動することができる。尚、スペーサ52は、2つのローラ支持アーム50及び53の相対的な距離を規定するための円筒形状の部材であって、スペーサ52の軸方向の長さは、後述するローラ支持アーム50の先端側に支持される公転ローラ70の軸方向の長さとほぼ同じ長さに設定されている。別法として、アーム支持軸40の中央部分に、スペーサ52と同じ寸法及び形状を有する張出し部分を一体に形成することもできる。
尚、アーム支持軸40の両端部は2つの自転フレーム30及び80に対して固定されるので、アーム支持軸40の両端部には2つの自転フレーム30、80に対する抜け止め手段が設けられている。そのような抜け止め手段としては、この技術分野において既知の種々の手段を採用することができる。図9に示す態様では、アーム支持軸40の両端部にネジ山を形成し、その両端部のネジ山にそれぞれ対応するナット43、44を係合させて抜け止め手段としている。
図9に示す態様では、ローラ支持アーム50はソラマメ型の平面形状を有しているが、先端側で公転ローラを支持し、基端側でアーム支持軸を枢軸として揺動し得るという機能を果たすことができる形状であれば、特にこの形状に限られる訳ではない。また、ローラ支持アーム50の先端側には先端側孔56が設けられている。図9において相対的に右側に位置する他方のローラ支持アーム53は、後述するように、相対的に左側に位置するローラ支持アーム50と共同して、公転ローラ70の回転軸を両側から均等に支持するための部材であるので、ローラ支持アーム50と実質的に同じ寸法及び形状に形成されている。従って、他方のローラ支持アーム53の先端側においても、一方のローラ支持アーム50の先端側孔56に対応する位置に、先端側孔57が設けられている。
図9に示すように、2つのローラ支持アーム50及び53の間には、公転ローラ70が配されている。公転ローラ70は全体として円筒形形状を有しており、その中心軸まわりには円筒の2つの底面の中央部どうしを連絡して貫通する中央貫通孔(図示せず)が設けられている。
一方のローラ支持アーム50の先端側孔56と、公転ローラ70の中央貫通孔と、他方のローラ支持アーム53の先端側孔57とを位置合わせした状態で、これらの中にローラ支持軸60が挿通されている。
公転ローラ70は、ローラ支持軸60に対して固定されていないので、ローラ支持軸60まわりで回転することができる。尚、ローラ支持軸60の両端部には、2つのローラ支持アーム50、53に対する抜け止め手段が設けられている。そのような抜け止め手段としては、この技術分野において既知の種々の手段を採用することができる。図9に示す態様では、ローラ支持軸60の両端部に雌ネジを形成し、その両端部の雌ネジにそれぞれ対応するビス61、63を係合させて抜け止め手段としている。
図9において、アーム支持軸40の右側端部は、向かって右側に位置するもう一方の自転フレーム80に設けられた軸孔82内を挿通して、抜け止め手段によって係止されている。自転フレーム80は、自転フレーム30と共同して、アーム支持軸40を両側から均等に支持するための部材であるので、自転フレーム30と実質的に同じ寸法及び形状を有する円板形状に形成されている。従って、自転フレーム80における軸孔82、83、84は、自転フレーム30における軸孔33、34、35と実質的に同じ寸法、形状及び配置を有するものとなっている。
自転フレーム80の中央部に設けられている中央孔81にはポンプシャフト20の先端部が挿通して、更に自転フレーム80から突出したポンプシャフト20の先端部は抜け止め手段によって係止されている。そのような抜け止め手段としては、この技術分野において既知の種々の手段を採用することができる。図9に示す態様では、ポンプシャフト20の先端部にネジ山を形成し、そのネジ山に対応するロックナット23を係合させて抜け止め手段としている。
また、図9に示す態様では、自転フレーム80の中央部付近において、円板状の自転フレーム80から向かって右側に張り出して設けられている張出部85の円筒形状の側面に一部に、中央孔81まで貫通し、内面に雌ネジを有する孔86が設けられており、この孔86に対応する雄ネジを有するセットスクリュー24をねじ込むことによって、自転フレーム80をポンプシャフト20に対して回り止め状態で取り付けている。この自転フレーム80をポンプシャフト20に対して回り止め状態で取り付けるための手段にも、その他この技術分野において既知である種々の回り止め手段を採用することができる。
上述したように、図9に示す態様では、2つの自転フレーム30及び80は実質的に同じ半径を有する円板状の形態を有しており、ポンプシャフト20がその軸まわりで回転することによって、2つの自転フレーム30及び80もポンプシャフト20と同期して回転することができる。
2つの自転フレーム30及び80の外周面にはそれぞれ対応する位置にセット孔36及び87が設けられており、セット孔36及び87の内部にはそれぞれ雌ネジが設けられている。セット孔36、87に対応して、弾性手段71における基部72の左右両端部に設けられている2つの取り付け穴73、74が位置合わせされ、図において弾性手段71の向かって左側の取り付け穴73とセット孔36とをネジ75によって係止し、弾性手段71の向かって右側の取り付け穴74とセット孔87とをネジ76によって係止することによって、弾性手段71が2つの自転フレーム30及び80に対して固定されている。
この態様では、弾性手段71はバネ弾性を有する板状部材によって形成されている。弾性手段71の基部72から、図において下向きに、2つの舌状片77及び78が突出している。弾性手段71を2つの自転フレーム30及び80に対して固定した状態では、一方の舌状片77はローラ支持アーム53に当接して、ローラ支持アーム53をポンプシャフト20側へ押しており、他方の舌状片78はローラ支持アーム50に当接して、ローラ支持アーム50をポンプシャフト20側へ押している。従って、この状態のロータ部10においては、公転ローラ70は弾性手段71に押されることによってポンプシャフト20に接触する退避姿勢をとることになる。弾性手段71はここに示したバネ弾性を有する板状部材ではなく、ゴムなどの弾性を有する部材でもよい。
次に、上述のような構成のロータ部10が組み込まれたローラ型ポンプの全体の概略的な構成を、その断面を示す図10Aを参照しながら説明する。
図10Aにおいて、向かって左側にモータ100が配されており、該モータ100から図の右側へ向かってモータシャフト101が延びており、モータシャフト101の右側端部は適当なカプリング手段102によってポンプシャフト20の左側端部に連結されている。そのポンプシャフト20に右側端部にローラ型ポンプのロータ部10が取り付けられており、そのロータ部10の上側及び下側を包囲してステータ部110が配されている。
カプリング手段102とロータ部10との間に、所定の厚みにてポンプシャフト20を包囲する、全体として円筒形状を有するスリーブ90が配されている。但し、スリーブ90は、その外側の右側端部付近に、所定の長さにわたって先細りとなるテーパ形状に形成されているテーパ面89を有している。図10Aに示す態様では、スリーブ90はロータ部10とモータ100との間に位置しており、このスリーブ90にはポンプシャフト20の長手方向(図においては左右方向)にスライドするためのスライド機構が設けられている。
図10Aにおいて、IIB−IIB’線の断面を矢印方向に観察した断面図を図10Bに示している。図10Bに示す態様では、スライド機構は、スリーブ90の外側を全体として筒状に包囲してスリーブ90の略全長にわたって延びるスライド機構フレーム91と、スライド機構フレーム91においてその長手方向に一部切り欠いて設けられた溝部92と、スリーブ90の外側表面の一部に設けられて、溝部92を通ってスライド機構フレーム91の外側表面から突出するラック93と、スライド機構フレーム91の外側表面において、前記ラック93と係合するように設けられたピニオン94と、そのピニオン94を順方向若しくは逆方向に制御して回転させるモータ95とを少なくとも有してなるラックアンドピニオン機構によって形成されている。このようなラックアンドピニオン機構には、この技術分野において既知の手段を採用することができる。また、ラックアンドピニオン機構に限らず、1つの管状部材(スライド機構フレーム91)が1つの長尺部材(スリーブ90)を収容している状態と、該1つの管状部材(スライド機構フレーム91)から該1つの長尺部材(スリーブ90)を突出させた状態との間で、該1つの管状部材と該1つの長尺部材との間の相対的な位置関係を変化させ得る種々の機構を採用することができる。
図11Aは、退避姿勢にある図10Aに示すロータ部10を拡大した図であり、図11Bは図11AにおけるIIIB−IIIB’線の断面を矢印方向に観察した断面図を示している。
以上のような構成を有する本発明に係るローラ型ポンプは、図11A及びBに示す退避姿勢において、公転ローラ70が公転する際に、その公転ローラ70の外縁部が描く円周軌跡をC1とし、ポンプシャフト20の軸からの円周軌跡C1の公転半径(公転ローラ70が公転する場合の半径)をr1とし、ポンプシャフト20の軸からステータ部110の公転ローラ70に対向する壁面111までの間隔をD1とし、ロータ部10とステータ部110との間に配されており、潰れていない状態の弾性チューブの外側直径をt1とすると、D1はr1とt1との和よりも大きい寸法に設定されている。即ち、D1からr1及びt1の和を差し引いた寸法であるG1(G1=D1−(r1+t1))が正の数値となっており、退避姿勢において公転ローラ70とステータ部110との間には、弾性チューブの外側直径t1よりも更に隙間G1だけ大きな空間が形成されている。
そのような構成のローラ型ポンプに対して、公転ローラ70とステータ部110との間に弾性チューブを配設する作業や、既に配設されている弾性チューブを公転ローラ70とステータ部110との間から取り外す作業は、公転ローラ70とステータ部110との間の空間が潰れていない状態の弾性チューブの外側直径t1よりも、更に隙間G1の寸法だけ大きな空間となっているので、非常に容易に行うことができる。特に、公転ローラ70とステータ部110との間に弾性チューブを配設する場合に、弾性チューブを指又は治具によって押し潰しながらローラとステータ部との間隙に押し込む必要がないので、弾性チューブをねじれさせたり、不均一に伸びた部分を設けたりしてポンプに取り付けることを防止できる。
この発明のローラ型ポンプでは、潰れていない状態の弾性チューブの外側直径t1と隙間G1との和の寸法の空間を弾性チューブの取り付けに利用することができるため、公転ローラ70とステータ部110との間に、弾性チューブのみを取り付けるのではなく、他のケース部材等に収容された状態の弾性チューブを取り付けることも容易に、かつ弾性チューブに無理な負荷をかけずに行うことができる。例えば、弾性チューブを特定の目的に合致するように配置して流路又は回路を形成したケース部材を、本発明のローラ型ポンプにそのケース部材ごと取り付けることによって、弾性チューブを公転ローラ70とステータ部110との間に設置するというようなことも可能となる。
図12Aは、作動姿勢に変位したロータ部10の図11Aに対応する状態を示す図であり、図12Bは図12AにおけるIVB−IVB’線の断面を矢印方向に観察した断面図を示している。
この作動姿勢は、上述のような退避姿勢において弾性チューブを取り付けた後のロータ部10の公転ローラ70とポンプシャフト20との間に、図の左側から厚みSLの寸法を有するスリーブ90を挿入した状態に対応している。この作動姿勢において公転ローラ70が公転する際に、その公転ローラ70の外縁部が描く円周軌跡をC2とし、ポンプシャフト20の軸からの円周軌跡C2の公転半径(公転ローラ70が公転する場合の半径)をr2とすると、作動姿勢における公転半径r2は、退避姿勢における公転半径r1よりも、スリーブ90の厚みSLの寸法だけ大きな寸法となっている。即ち、r2=r1+SLの関係がある。
また、ローラ70とステータ部110との間で押し潰された状態の弾性チューブの厚みをt2として、図11の場合と同様に、ポンプシャフト20の軸からステータ部110の公転ローラ70に対向する壁面111までの間隔をD1とすると、D1とr2とt2との間には、D1=(r2+t2)という関係が成立している。
このような退避姿勢と作動姿勢との間での寸法の変化は、以下のような意味を有している。即ち、退避姿勢と作動姿勢との間で、ポンプシャフト20の軸からステータ部110の壁面111までの間隔D1は同じである。公転ローラ70が公転する際に、その公転ローラ70の外縁部が描く円周軌跡の公転半径は、退避姿勢ではr1であり、作動姿勢ではそのr1にスリーブの厚みSLが加わった寸法であるr2となっている。
従って、ポンプに対して弾性チューブを取り付ける退避姿勢において、弾性チューブが挿通するための空間として、t1とG1との和の寸法の空間を確保することができる一方で、ポンプを運転するための作動姿勢においては、スリーブ90が挿入されることによって弾性チューブが挿通するための空間は、t1とG1との和の寸法からスリーブの厚みSLを差し引いて残るt2という寸法のみになる。このt2という寸法は、押し潰された状態の弾性チューブの厚みに実質的に対応する寸法であるため、作動姿勢において、本発明のポンプは一般的なローラ型ポンプと同様に、弾性チューブにしごき作用を及ぼして液体を送ることができるのである。
図12Aは、公転ローラ70とポンプシャフト20との間に、スリーブ90がそのテーパ面89の部分を越えて、略均一な半径の部分まで挿入された状態を示しているが、本発明のローラ型ポンプでは、公転ローラ70とポンプシャフト20との間にスリーブ90を挿入する程度を、スリーブ90のテーパ面89が公転ローラ70とポンプシャフト20との間に留まる程度、従って、スリーブ90のテーパ面89の一部と公転ローラ70の左側端部とが接触する状態で操作することも、操作条件の中に含んでいる。このようにスリーブ90のテーパ面89の一部と公転ローラ70の左側端部とが接触する状態でポンプを運転する場合に、チューブの圧閉度を調節することができる。
また、その場合のスリーブ90を公転ローラ70に対して挿入する程度は、本発明のローラ型ポンプの外部の個所において送液用の弾性チューブに設けられた流量計から送られてくる情報に基づいて、調節することができる。例えば、モータ側の問題によってポンプシャフト20の回転速度が固定されていたり、速度調節の範囲が狭かったり、速度を微調節することができない等の場合に、チューブの圧閉度を調節することによって、液体の流量を調節することができる。或いは、モータ側の回転数が調節できる場合には、モータの回転数を調節して、又はチューブの圧閉度の調節とモータの回転数の調節を組み合わせることによって、流量を調節することができる。
従って、作動姿勢にあるローラ型ポンプは、一般的なローラ型ポンプと同様に、ローラが、ステータ部との間で弾性チューブを押し潰しながら、ステータ部の公転ローラに対向する壁面に沿って移動するので、弾性チューブに対してしごき作用を果たすことができる。その結果、本発明のローラ型ポンプは、弾性チューブ内の液体を、正確な流量を維持して又は流量を精密に調節して、送出することができる。弾性チューブ120は、ロータ部10の外部にて、ジョイント手段121、122等によって弾性チューブ120と同種又は異なる種類のチューブに連絡しており、人工透析装置、腹膜透析装置、血漿交換装置、免疫吸着装置などの血液浄化装置や人工心肺装置、補液装置において、それぞれ対応する種々の液体を送るという所定の目的を果たすための供給源及び/又は送出先へ更に連絡することができる。
尚、公転ローラ70には、この技術分野においてローラ型ポンプのローラとして用いられている種々のプラスチック系ゴム材料を用いることができる。一方、スリーブ90の材料としては、ポンプシャフト20と公転ローラ70との間に挿入された場合に、弾性手段がローラ支持アームをポンプシャフトへ向かって押圧する力に抗してその厚みを維持することができる適切な硬度及び/又は剛性を有する材料であって、ゴム材料などと比較して、相対的に小さな表面摩擦係数を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素系樹脂等、又は種々の金属材料、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、種々のセラミック材料を用いることが好ましい。これは、ポンプの機能に関して、公転ローラ70は弾性チューブとの間では滑ることなく回転することが好ましく、一方、公転ローラ70はスリーブ90もしくはポンプシャフト20との間ですべりを生じることは、実質的にはあまり問題とはならないためである。従って、スリーブ90は、公転ローラ70およびポンプシャフト20との間に適度な滑りを生じ得るのであれば、一つの部材として形成されることは必ずしも必要ではなく、内側層と外側層、又はそれ以上の層を含む多層構造であったり、公転ローラ70と接する先端部と接しない本体部からなる構造であってもよい。
1、2、3、4…ローラ型ポンプ、 5…透析液入口部、 6…透析液出口部、 7…精密濾過フィルター、 8…血液濾過フィルター、 9…メッシュフィルター、 10…ロータ部、 11…微粒子除去フィルター、 12、13、14…コネクタ、 15…吸着筒、 17…エアトラップ、 20…ポンプシャフト、 22…フレーム用ストッパ、 23…ロックナット、 24…セットスクリュー、 25…血液浄化装置本体、 26…雄型表面、 27…血液浄化デバイスユニット、 28…雌型表面、 30…自転フレーム、 32…中央孔、 33、34、35…軸孔、 36、87…セット孔、 40、41、42…アーム支持軸、 43、44…ナット、 50、53…ローラ支持アーム、 51…基端側孔、 52…スペーサ、 53…ローラ支持アーム、 54…基端側孔、 56、57…先端側孔、 60…ローラ支持軸、 70…公転ローラ、 71…弾性手段、 72…基部、 73、74…穴、 75、76…ネジ、 77、78…舌状片、 80…自転フレーム、 81…中央孔、 82、83、84…軸孔、 85…張出部、 86…孔、 87…セット孔、 90…スリーブ、 91…スライド機構フレーム、 92…溝部、 93…ラック、 94…ピニオン、 95…モータ、100…モータ、101…モータシャフト、102…カプリング手段、110…ステータ部、111…壁面、120…弾性チューブ、121、122…ジョイント手段、H1、H2、H3、H4…孔、S1、S2、S3、S4…ステータ部、T1、T2、T3、T4…配管チューブ。