JP2005249608A - 表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より適切に表面改質部材の残留応力を評価するための手段とすることが可能な表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置である。
【解決手段】表面改質部材の固有歪測定方法は、一方の面に皮膜7が形成された表面改質部材4の変形量uを測定するステップと、表面改質部材4の変形量uに基づいて皮膜4に生じた固有歪を算出するステップとを有する。
【選択図】 図6
【解決手段】表面改質部材の固有歪測定方法は、一方の面に皮膜7が形成された表面改質部材4の変形量uを測定するステップと、表面改質部材4の変形量uに基づいて皮膜4に生じた固有歪を算出するステップとを有する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、基材を皮膜でコーティングして得られる表面改質部材の残留応力を評価するための表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置に関する。
従来、発電用ガスタービンを始めとするエネルギ機器においては、作動温度の高温化が発電効率の向上に直接繋がることから、高温化を目的とする研究が継続的に進められる。エネルギ機器等の高温環境下に置かれる高温機器の多くは、耐酸化性、耐食性を有する耐熱材料によりコーティングされる。このため、コーティングにより、より高温であっても耐環境性を得ることができるような表面改質技術の研究が重要である。
高温機器の材料としては、基材を皮膜でコーティングして得られる表面改質部材が用いられる。この表面改質部材は、一般に、基材に溶融した粉末粒子を溶射した後、冷却工程を経て製造される。
しかし、一般に基材の温度よりも皮膜の温度のほうが高く、冷却過程において、基材と皮膜との温度差や熱膨張率の差による圧縮歪、すなわち固有歪が皮膜に生じる。この皮膜の固有歪が原因となって、表面改質部材には残留応力が生じる。
そこで、表面改質部材に皮膜が形成される前後における変形量を求めることにより、表面改質部材の残留応力を評価する方法や、曲げ試験により皮膜の密着性を評価する方法により表面改質部材の品質が検査される。
また、金属材料の表面の数十μm程度の深さまでX線が侵入することを利用した方法が開示されている。例えば、ショットピーニングや溶射などの表面硬化処理や切削などの表面に機械加工を施した材料の極く表面層の残留応力を測定する方法として、これらの表面に予めX線の回折角度が分かっている金属膜を付着させることにより、X線の侵入深さよりも浅い位置における残留応力を測定する方法や(例えば特許文献1参照)、多チャンネルのX線を照射し、このデータを計算機内に予め記憶されたX線の回折角度と残留応力のテーブルと比較して被照射材の残留応力を算出する方法などが開示されている(例えば特許文献2参照)。
特開2003−315171号公報
特開平03−154834号公報
従来の表面改質部材の品質評価方法は、表面改質部材に生じた残留応力の直接の要因となる皮膜の固有歪を測定するものではなく、表面改質部材の変形量を測定する方法や、曲げ試験による評価方法であり、間接的に表面改質部材の残留応力を評価する方法である。
また、皮膜の基材へのコーティングプロセス自体が複雑であるとともに、皮膜の成膜プロセスの種類は多数存在する。このため、ガスタービン等の高温機器では、表面改質部材の品質評価が十分ではなく、基材についての熱に対する設計手法に比べて、皮膜の耐熱設計手法は必ずしも十分に確立されていないのが現状である。
つまり、基材と皮膜とに生じる熱応力がより小さくなるような基材と皮膜との組合せ、すなわち基材と皮膜とのマッチング設計が適切となるように、皮膜の割れや剥離を十分に評価することができていない。
そこで、表面改質部材に生じた残留応力を適切に評価するために、皮膜の固有歪を測定することが重要となる。
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、より適切に表面改質部材の残留応力を評価するための手段とすることが可能な表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置を提供することを目的とする。
本発明に係る表面改質部材の固有歪測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の変形量を測定するステップと、前記表面改質部材の変形量に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出するステップとを有することを特徴とする方法である。
また、本発明に係る表面改質部材の固有歪測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の応力を測定するステップと、前記表面改質部材の応力に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出するステップとを有することを特徴とする方法である。
また、本発明に係る表面改質部材の固有歪測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項11に記載したように、一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の変形量を測定する変形量計測手段と、前記表面改質部材の変形量に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出する固有歪算出手段とを有することを特徴とするものである。
本発明に係る表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置においては、より適切に表面改質部材の残留応力を評価するための手段とすることができる。
本発明に係る表面改質部材の固有歪測定方法および表面改質部材の固有歪測定装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る表面改質部材の固有歪測定装置の第1の実施形態を示す構成図、図2は図1に示す固有歪測定装置1により固有歪を測定する対象となる表面改質部材の製造方法の一例を説明する断面図、図3は、図1に示す固有歪測定装置1により固有歪を測定する対象となる表面改質部材の形状を示す断面図である。
表面改質部材の固有歪測定装置1は、変形量計測手段2と固有歪算出手段3とを有する。固有歪測定装置1は、コーティングにより表面改質施工を施した表面改質部材の皮膜に生じた固有歪を測定する機能を備える。
この固有歪測定装置1により固有歪を測定する対象となる表面改質部材4は、例えば図2に示すように溶射によりコーティングされて製造される。すなわち、板状の基材5の表面に溶融した粉末粒子6を高速で衝突させる。基材5の表面に衝突した粉末粒子6は、基材5の表面で膜状に広がる。さらに、基材5の表面で膜状に広がった粉末粒子6を急冷凝固することにより基材5の表面に皮膜7が積層されて表面改質部材4が形成される。
従って、一般に基材5の温度よりも皮膜7の温度のほうが高く、冷却過程において、基材5と皮膜7との温度差や熱膨張率の差による圧縮歪、すなわち固有歪が皮膜7に生じる。さらに、皮膜7の固有歪が原因となって、表面改質部材4には残留応力が生じる。このため、表面改質部材4の弾性解析モデルを作成し、皮膜7の固有歪をパラメータとして表面改質部材4の弾性解析を行うことにより表面改質部材4の残留応力を評価することができる。
ここで、基材5に皮膜7を溶射した際、すなわちコーティング施工時の表面改質部材4の残留応力を評価するためには、コーティング施工時における皮膜7の固有歪を得ることが必要となる。皮膜7の固有歪は圧縮歪であるため、板状の基材5の片面のみに皮膜7を溶射して表面改質施工を施した場合、皮膜7と基材5との熱膨張差により収縮量に差が生じて図3に示すように皮膜7側が凹状となるように表面改質部材4に変形が生じる。
そこで、表面改質部材4の変形量を測定することにより皮膜7に生じた固有歪を求めることが可能となる。このため、変形量計測手段2には、表面改質部材4の変形量を測定する機能と、測定して得られた表面改質部材4の変形量を固有歪算出手段3に与える機能とが備えられ、固有歪算出手段3には、変形量計測手段2から表面改質部材4の変形量を受けて、表面改質部材4の変形量に基づいて皮膜7に生じた固有歪を算出する機能が備えられる。
つまり、固有歪測定装置1は、変形量計測手段2により表面改質部材4の変形量を測定し、測定して得られた表面改質部材4の変形量に基づいて固有歪算出手段3により表面改質部材4の皮膜7に生じた固有歪を算出するように構成される。
次に、固有歪算出手段3による固有歪の算出方法について説明する。
図4は、図1に示す固有歪算出手段3により表面改質部材4の変形量に基づいて皮膜7に生じた固有歪を算出する際の固有歪算出モデルの一例を示す正面図であり、図5は図4に示す固有歪算出モデルの上面図である。
表面改質部材4を一方の面に表面改質施工が施され、長さ2L、幅2W、厚さT0の矩形板状に形成されたものとする。さらに、皮膜7の厚さをt、基材5の厚さをTとする。
ここで、表面改質部材4に図3に示すように変形が生じた場合、両端部における変形が対称であると近似して、図4および図5に示すように長さL方向および幅W方向で表面改質部材4をそれぞれ2分割し、長さL、幅W、厚さT0の表面改質部材4の部分を考える。
次に、表面改質部材4を長さL方向と垂直な分割面を仮想的に固定端と過程して、表面改質部材4の厚さ方向をy軸、幅方向をx軸として設定する。このときx座標の原点Oxは、表面改質部材4の幅W方向に垂直な表面改質部材4の一側面上の点とする一方、y座標の原点Oyは、表面改質部材4に変形が生じていないと仮定したときの表面改質部材4の皮膜7が形成されていない側の面上の点とする。
図6は、図4に示す固有歪算出モデルにおいて、表面改質部材4に変形が生じたときの変形量を示す図である。
表面改質部材4の皮膜7に長さL方向の固有歪が発生すると、表面改質部材4の長さL方向に垂直な端面にはy方向に変形が生じる。
ここで、表面改質部材4の長さL方向に垂直な端面におけるy方向の変位量をu、皮膜7の固有歪をεI、皮膜7のヤング率をEC、基材5のヤング率をESとすると、材料力学によれば式(1)に示すように、表面改質部材4の変位量uを表面改質部材4の形状パラメータT、Lで無次元化した値と皮膜7の固有歪εIの逆数との積は、皮膜7と基材5のヤング率比EC/ES並びに皮膜7と基材5の厚さ比t/Tの関数でとして表わされる。
[数1]
uT/(L2・εI)=f(EC/ES、t/T) …(1)
従って、皮膜7と基材5のそれぞれの材料定数、すなわちヤング率EC、ESと、厚さt、Tが既知であれば、式(1)により表面改質部材4の端部のy方向変位量u、すなわち表面改質部材4の端部の反り変形量である変位量uを測定することで、皮膜7に生じた固有歪εIの算出が可能となる。
uT/(L2・εI)=f(EC/ES、t/T) …(1)
従って、皮膜7と基材5のそれぞれの材料定数、すなわちヤング率EC、ESと、厚さt、Tが既知であれば、式(1)により表面改質部材4の端部のy方向変位量u、すなわち表面改質部材4の端部の反り変形量である変位量uを測定することで、皮膜7に生じた固有歪εIの算出が可能となる。
尚、皮膜7に生じた固有歪を算出するにあたり基材5の機械的性質、すなわち物性値をデータベース化することができる。矩形板状の基材5に表面改質施工を施した場合の変位量uと基材5の機械的性質を示す物性値とは関数表示できるため、基材5ごとに機械的性質をデータベース化することによって固有歪εIの算出に必要な試験を実行することなく、データベース化された物性値を用いて、固有歪εIを簡便に求めることが可能となる。
ここで、表面改質部材4の幅Wの大きさが表面改質部材4の端部におけるy方向の変位量uに与える影響について考察する。
図7は、図2に示す表面改質部材4の皮膜7に圧縮固有歪εIを与えることにより、表面改質部材4の長さL方向に垂直な端部にy方向の変位量uを発生させたときの、x方向の変位量uの分布データを示す図である。
図7において、縦軸は、表面改質部材4の長さL方向に垂直な端部におけるy方向の変位量uを示し、横軸は、x座標を表面改質部材4の幅Wで無次元化した値を示す。
また、図7において、丸印は、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.2のときのx軸方向の変位量uの分布データを示し、三角印は、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5のときのx軸方向の変位量uの分布データを示す。
図7によれば、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.2のときのx軸方向の変位量uの分布データは、いずれも変位量uが0.3から0.35の間であり、同程度であることが分かる。
すなわち、表面改質部材4の幅Wが長さLに対して比較的短い場合には、x軸方向の各変位量uの差は、十分に小さいことがわかる。このため、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.2以下であれば、表面改質部材4の長さL方向に垂直な端部におけるy方向変位量uは、x座標位置、すなわち幅W方向の位置によらずほぼ一定であることが分かる。
従って、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.2以下であれば、端部の反りによる変形量uの測定誤差が小さく、より精度よく固有歪を算出できることが分かる。
一方、図7によれば、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5のときのx軸方向の変位量uの分布データは、x座標が0からWに増加するにつれて変位量uが0.3付近から0.6付近へと変化していることが分かる。
図8は、図4に示す固有歪算出モデルにおいて、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5以上の場合における表面改質部材4の形状の一例を示す上面概念図であり、図9は、図8に示す表面改質部材4のA方向からの矢視図である。
すなわち、表面改質部材4の幅Wが長さLに対して比較的長い場合には、x軸方向の各変位量uの差は、無視できない程大きい。従って、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5以上の場合には、表面改質部材4の長さL方向のみならず、幅W方向にも変形、すなわち反りが生じていることがわかる。
これは、表面改質部材4の皮膜7には、表面改質部材4の幅W方向にも固有歪が生じていることを意味する。そこで、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5以上の場合には、表面改質部材4のx座標が0およびWにおけるそれぞれのy方向変位量u、すなわち幅W方向の位置による変位量uの差を用いて、表面改質部材4の長さL方向に加えてx軸方向の2方向に生じた皮膜7の固有歪をも算出することが可能となる。
以上に示すように、表面改質部材の固有歪測定装置1は、表面改質部材4に生じた変形量uを測定し、変形量uと固有歪とを関連付けた関数により変換して固有歪を算出するものである。このため、固有歪測定装置1によれば、表面改質施工時における皮膜7の固有歪をより簡易かつ精度良く求めることができる。
尚、表面改質部材4を矩形板としたが、形状は任意であり板状であればよい。さらに、固有歪算出モデルと異なる座標系を設定してもよく、変形量uを測定する部位は、関数として固有歪と関連付けられていれば表面改質部材4の端部でなくてもよい。
図10は本発明に係る表面改質部材の固有歪測定装置の第2の実施形態を示す構成図である。
図10に示された、表面改質部材の固有歪測定装置1Aは、変形量計測手段2を応力測定手段10に置換した点が図1に示す固有歪測定装置1と相違する。
表面改質部材の固有歪測定装置1Aは、応力測定手段10と固有歪算出手段3とを有する。固有歪測定装置1Aは、図2に示す方法で製造された表面改質部材4の皮膜7に生じた固有歪を測定する機能を備える。
すなわち、応力測定手段10は、表面改質部材4に生じた応力を測定する機能と、測定して得られた表面改質部材4の応力を固有歪算出手段3に与える機能とを有する。応力測定手段10の例としては、例えば、歪ゲージやX線回析による歪測定方法が挙げられる。また、固有歪算出手段3は、応力測定手段10から表面改質部材4の応力を受けて、表面改質部材4の応力に基づいて皮膜7に生じた固有歪を算出する機能を有する。
そして、固有歪測定装置1では、応力測定手段10により表面改質部材4の応力が測定され、測定して得られた表面改質部材4の応力に基づいて固有歪算出手段3により表面改質部材4の皮膜7に生じた固有歪が算出するように構成される。
次に、応力測定手段10による応力測定箇所並びに固有歪算出手段3による固有歪の算出方法について説明する。
表面改質部材4を一方の面に表面改質施工が施され、長さ2L、幅2W、厚さT0の矩形板状に形成されたものとする。さらに、皮膜7の厚さをt、基材5の厚さをTとする。
ここで、表面改質部材4の皮膜7に表面改質部材4の表面方向に固有歪εIが生じたとすると、表面改質部材4の皮膜7および基材5には内部応力σxが生じる。この内部応力σxは、皮膜7のヤング率をEC、基材5のヤング率をESとすると、材料力学によれば式(2)で表すことができる。
[数2]
σx(1−vs)/(ES・εI)=f(EC/ES,t/T)…(2)
すなわち、表面改質部材4の内部応力σxは、皮膜7と基材5のヤング率比EC/ES並びに皮膜7と基材5の厚さ比t/Tの関数でとして表される。
[数2]
σx(1−vs)/(ES・εI)=f(EC/ES,t/T)…(2)
すなわち、表面改質部材4の内部応力σxは、皮膜7と基材5のヤング率比EC/ES並びに皮膜7と基材5の厚さ比t/Tの関数でとして表される。
図11は、表面改質部材4の内部応力σxと表面改質部材4の皮膜7と基材5との界面から表面改質部材4の厚さT0方向の距離y1との関係を示す図である。
図11において縦軸は、矩形板状の表面改質部材4の皮膜7と基材5との界面から表面改質部材4の厚さT0方向の距離y1を示し、横軸は表面改質部材4の内部、すなわち皮膜7と基材5の内部にそれぞれ生じた応力σxを示す。
尚、図11の縦軸は、皮膜7側を正方向、基材5側を負方向とした。従って、図11の第1象限および第4象限は皮膜7内の応力を示し、第2象限および第3象限は基材5内の応力を示す。
また、図11において、実線、点線、一点鎖線および二点鎖線は、皮膜7に収縮方向の固有歪εIが生じると仮定し、表面改質部材4の2次元有限要素モデルによる解析によりそれぞれ皮膜7と基材5のヤング率比EC/ESを変化させることにより得られた内部応力σxと皮膜7と基材5との界面から表面改質部材4の厚さT0方向の距離y1との関係を示すデータの一例である。
図11に示す実線、点線、一点鎖線および二点鎖線によれば、皮膜7に収縮方向の固有歪εIが生じると、表面改質部材4の皮膜7には引張残留応力が生じることが分かる。さらに、皮膜7に生じた引張残留応力は、皮膜7表面すなわち、表面改質部材4の表面から皮膜7と基材5との界面に向かって連続的に次第に増加することが分かる。
また、表面改質部材4に生じた応力の分布は、皮膜7と基材5との界面において不連続となり、界面のうち表面改質部材4の基材5側には、圧縮応力が生じることが分かる。さらに、基材5に生じた圧縮残留応力は、皮膜7と基材5との界面から表面改質部材4の皮膜7が形成されない側に向かって連続的に次第に減少し、基材5に内部において引張残留応力に変遷した後、表面改質部材4の皮膜7が形成されない側において引張応力を示すことが分かる。
すなわち、表面改質部材4の内部に生じた応力は、皮膜7と基材5との界面において不連続である一方、皮膜7内部および基材5内部においては連続的に変化し、皮膜7表面の引張残留応力、基材5の界面近傍の圧縮残留応力および皮膜7が形成されない側の基材5表面の引張残留応力が互いに釣り合っていることが分かる。
このため、表面改質部材4の皮膜7に生じた固有歪εIと皮膜7あるいは基材5に生じた応力とが図11に示すように関連付けられ、皮膜7あるいは基材5の応力が分かれば固有歪εIを算出できることが分かる。
そこで、応力測定手段10は、例えば、表面改質部材4の皮膜7が形成されない側の基材5表面の中央付近の長さL方向における応力あるいは皮膜7表面の中央付近の長さL方向における応力値を測定するように構成される一方、固有歪算出手段3は、応力測定手段10から皮膜7あるいは基材5の応力を受けて、皮膜7あるいは基材5の応力と固有歪との関係に基づいて固有歪を算出するように構成される。すなわち、固有歪測定装置1Aは、表面改質部材4に生じた残留応力に基づいて、皮膜7の固有歪εIを算出するものである。
尚、皮膜7に生じた固有歪を算出するにあたり基材5の機械的性質すなわち物性値をデータベース化することができる。矩形板状の基材5に表面改質施工を施した場合の応力と基材5の機械的性質を示す物性値とは関数表示できるため、基材5ごとに機械的性質をデータベース化することによって固有歪の算出に必要な試験を実行することなく、データベース化された物性値を用いて、固有歪を簡便に求めることが可能となる。
また、固有歪測定装置1Aの固有歪算出手段3においても、図7に示す変形量uの分布と同様に、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.2以下であれば、表面改質部材4の長さL方向の応力の幅W方向に対する分布、すなわち測定誤差は小さく、より精度よく固有歪を算出できる。
一方、表面改質部材4の幅Wと長さLとの比W/Lが0.5以上の場合には、表面改質部材4の長さL方向のみならず、幅W方向にも無視できない程度の応力が生じている。このため、表面改質部材4の長さL方向に加えて幅W方向の2方向の応力を測定して、表面改質部材4の長さL方向と幅W方向の2方向に生じた皮膜7の固有歪をも算出することができる。
ただし、応力の測定方向並びに固有歪の算出方向は、長さL方向と幅W方向の2方向に限らず、任意に設定した座標系の2方向としてもよい。
1、1A 表面改質部材の固有歪測定装置
2 変形量計測手段
3 固有歪算出手段
4 表面改質部材
5 基材
6 粉末粒子
7 皮膜
10 応力測定手段
2 変形量計測手段
3 固有歪算出手段
4 表面改質部材
5 基材
6 粉末粒子
7 皮膜
10 応力測定手段
Claims (11)
- 一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の変形量を測定するステップと、前記表面改質部材の変形量に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出するステップとを有することを特徴とする表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材の変形量を、前記表面改質部材の端部における変形量としたことを特徴とする請求項1記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、かつW/L=0.2以下としたことを特徴とする請求項1記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、W/L=0.5以上として、前記表面改質部材の2方向の変形量を測定するとともに、2方向の固有歪を算出することを特徴とする請求項1記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の応力を測定するステップと、前記表面改質部材の応力に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出するステップとを有することを特徴とする表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、かつW/L=0.2以下として、前記表面改質部材のうち前記皮膜が形成されない側の応力を測定することを特徴とする請求項5記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、かつW/L=0.2以下として、前記皮膜の応力を測定することを特徴とする請求項5記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、W/L=0.5以上として、前記表面改質部材のうち前記皮膜が形成されない側の2方向の応力を測定するとともに、2方向の固有歪を算出することを特徴とする請求項5記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 前記表面改質部材を長さ2Lで幅2Wの矩形板とし、W/L=0.5以上として、前記皮膜の2方向の応力を測定するとともに、2方向の固有歪を算出することを特徴とする請求項5記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 歪ゲージ法あるいはX線回析法で前記表面改質部材の応力を測定することを特徴とする請求項5記載の表面改質部材の固有歪測定方法。
- 一方の面に皮膜が形成された表面改質部材の変形量を測定する変形量計測手段と、前記表面改質部材の変形量に基づいて前記皮膜に生じた固有歪を算出する固有歪算出手段とを有することを特徴とする表面改質部材の固有歪測定装置。
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