JP2005247872A - 抗il−6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 抗インターロイキン-6(IL-6)レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク質の漏出を減少させるためあるいは抗DNA 抗体又は抗核抗体を減少させるための予防および/または治療剤。
【選択図】 図1
Description
もう一つは、非リガンド結合性のシグナル伝達に係わる分子量約130kD の膜蛋白質gp130 である。IL-6とIL-6レセプターはIL-6/IL-6レセプター複合体を形成し、次いでgp130 と結合することにより、IL-6の生物学的活性が細胞内に伝達される(Taga, T. et al., J. Exp. Med. (1987) 166, 967 )。
また、使用されたMRL-lpr/lpr マウスの病態は組織学的には全身性エリテマトーデスに似てはいるが、病態の発症機序にはFas 抗原の異常が関係している。一方、ヒトの全身性エリテマトーデスではFas 抗原の異常は認められていない(Watanabe-Fukunaga, R. et al., Nature. (1992) 356, 314-317 )。
また、 Kiberd, J. の示したデータには抗IL-6レセプター抗体投与群とコントロールIgG 投与群の間に統計学的有意差がないため、抗IL-6レセプター抗体が治療効果を有するとはいえないと考えられる。したがって、上記Kiberd, J.の文献から抗IL-6レセプター抗体の全身性エリテマトーデスに対する効果は予測されなかった。
しかしながら、抗IL-6抗体を投与すると、7ヶ月齢から腎炎を発症するマウスが増加しており、データに示されていない9ヶ月齢以降も増加する可能性が十分に考えられる。したがって、抗IL-6抗体の全身性エリテマトーデスに対する効果は十分ではないことが示唆される。
現在、全身性エリテマトーデスの治療にはステロイド剤や免疫抑制剤が使用されているが、対症療法であり、しかも長期間の投与が必要とされ、副作用が問題となっている。
本発明はまた、抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける自己免疫性腎炎の予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおけるループス腎炎の予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、抗ヒトIL-6レセプター抗体を有効成分として含有する上記全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL-6レセプターモノクローナル抗体を有効成分として含有する上記全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、PM-1抗体を有効成分として含有する上記全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、ヒト抗体定常領域を有する抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、IL-6レセプターに対するキメラ抗体またはヒト型化抗体を有効成分として含有する上記全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤を提供する。
本発明はまた、抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける抗DNA 抗体または抗核抗体を減少させるための予防および/または治療剤を提供する。
本発明はさらに、抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク漏出を減少させるための予防および/または治療剤を提供する。
本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体は、全身性エリテマトーデスの治療効果、全身性エリテマトーデスにおける抗DNA 抗体の減少効果、または全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク漏出の減少効果を示すものであれば、その由来、種類および形状を問わない。
本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体は、IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を阻害する抗体である。したがって、本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体は、IL-6の生物学的活性を中和する抗体が好ましい。
哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものが挙げられる。
なお、PM-1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、PM-1として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成2 年7 月10日に、FERM BP-2998としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
感作抗原であるIL-6レセプターは、基本的には公知技術を使用して作製できる。
具体的には、IL-6レセプターを作製するには次のようにすればよい。例えば、ヒトIL-6レセプターは、欧州特許出願公開番号EP 325474 に、マウスIL-6レセプターは日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL-6レセプター遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。抗体取得の感作抗原として使用されるIL-6レセプターは、ヒトIL-6レセプターが好ましい。
ヒトIL-6レセプターをコードするcDNAを含むプラスミドpIBIBSF2R を含有する大腸菌(E.coli)は、HB101-pIBIBSF2R として、平成元年(1989年)1 月9 日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に、受託番号FERM BP-2232としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的に公知技術を使用して、以下のように作製できる。すなわち、IL-6レセプターを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞、例えばリンパ節細胞や脾細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG 溶液、例えば平均分子量1000-6000 程度のPEG 溶液を通常、30〜60%(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
ハイブリドーマを作製して抗体を産生させる他に、所望の抗体を産生する免疫細胞、例えば感作リンパ球等を癌遺伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いて抗体を得てもよい。
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子を抗体産生細胞、例えばハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー/プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region )をヒト抗体のCDR へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用される。好ましいヒト抗体C 領域としては、C γが挙げられ、例えば、C γ1 、C γ2 、C γ3 、C γ4 を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化PM-1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab 、F(ab')2 、FvまたはシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。scFvは H鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させた構造を有する。
また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、抗体を取得することができる。哺乳類細胞を使用する場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO96-30394、日本特許出願公告特公平7-93879 を参照)。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
宿主への発現ベクターの導入方法としては、公知の方法、例えばリン酸カルシウム法(Virology (1973) 52, 456-467 )やエレクトロポレーション法(EMBO J. (1982) 1, 841-845 )等が用いられる。
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。
これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
得られた抗体の濃度測定は、吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBS で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定する。例えば、ヒト抗体の場合、1 mg/ml を1.35 OD として算出すればよい。
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100ml を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベートの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
また、抗体の濃度測定には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体の抗原結合活性、結合阻害活性、中和活性の評価は、通常知られた方法を使用することができる。例えば、IL-6反応性細胞、例えばMH60.BSF2 を培養したプレートにIL-6を添加する。ついで抗IL-6レセプター抗体を共存させることによりIL-6反応性細胞の3H標識チミジン取込みを指標として評価すればよい。
また、IL-6レセプター発現細胞、例えばU266を培養したプレートに抗IL-6レセプター抗体と125I標識IL-6を加える。そして、IL-6レセプター発現細胞に結合した125I標識IL-6を測定することにより評価すればよい(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
例えば、ELISA を用いる場合、IL-6レセプター抗体に対する抗体、例えばそのC 領域に対する抗体を固相化した96穴プレートにIL-6レセプターを添加し、次いで目的の抗IL-6レセプター抗体を含む試料、例えば抗IL-6レセプター抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。
本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常のCell ELISA、あるいはリガンドレセプター結合アッセイを用いることができる。
プレートをインキュベートおよび洗浄した後、放射活性を測定することでIL-6レセプターに結合したIL-6量を測定でき、抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を評価することができる。
上記抗体の活性評価には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
本発明の予防および/または治療剤の治療対象疾患は、全身性エリテマトーデスである。本発明により達成される効果を確認するには、抗IL-6レセプター抗体を、ヒトの全身性エリテマトーデスの病態を呈するモデル動物に投与することにより効果を確認することができる。
使用されるモデル動物としては、ヒトの全身性エリテマトーデスの病態を最もよくあらわすモデル動物が用いられる。ヒトの全身性エリテマトーデスの病態を最もよくあらわすモデル動物は、NZB/WF1 マウスである。 NZB/WF1マウスはすでに知られており、入手可能なモデル動物である。
したがって、本発明の予防および/または治療剤は、全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤として有用である。また、本発明の予防および/または治療剤は、全身性エリテマトーデスにおける抗DNA 抗体を減少させるための予防および/または治療剤および全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク漏出を減少させるための予防および/または治療剤として有用である。
本発明の予防および/または治療剤は、経口的あるいは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。非経口的投与投与としては、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。
投与時期は、全身性エリテマトーデスが生じてから投与してもよいし、あるいは全身性エリテマトーデスの発症が予測される時に発症時の症状緩和のために予防的に投与してもよい。
また、投与期間は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。
参考例1. ヒト可溶性IL-6レセプターの調製
Yamasakiらの方法(Science (1988) 241, 825-828 )に従い得られたIL-6レセプターをコードするcDNAを含むプラスミドpBSF2R.236を用いて、PCR 法により可溶性IL-6レセプターを作成した。プラスミドpBSF2R.236を制限酵素Sph I で消化して、IL-6レセプターcDNAを得、これをmp18(Amersham製)に挿入した。IL-6レセプターcDNAにストップコドンを導入するようにデザインした合成オリゴプライマーを用いて、インビトロミュータジェネシスシステム(Amersham製)により、PCR 法でIL-6レセプターcDNAに変異を導入した。この操作によりストップコドンがアミノ酸345 の位置に導入され、可溶性IL-6レセプターをコードするcDNAが得られた。
10μg のプラスミドpECEdhfr344 をdhfr-CHO細胞株DXB-11(Urland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)へカルシウムフォスフェイト沈降法(Chen et al., Mol. Cell. Biol. (1987) 7, 2745-2751 )により、トランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO 細胞を1mM グルタミン、10% 透析FCS 、100U/ml のペニシリンおよび100 μ/ml のストレプトマイシンを含むヌクレオシド不含αMEM 選択培養液で3 週間培養した。
Hirataらの方法(J. Immunol., 143:2900-2906, 1989)により作成した抗IL-6抗体MT18をCNBrにより活性化させたセファロース4B(Pharmacia Fine Chemicals製, Piscataway, NJ)と添付の処方にしたがって結合させ、IL-6レセプター(Science (1988) 241, 825-828 )を精製した。ヒトミエローマ細胞株U266を1%ジギトニン(Wako Chemicals製),10mMトリエタノールアミン(pH 7.8)および0.15M NaClを含む1mM p-パラアミノフェニルメタンスルフォニルフルオライドハイドロクロリド(Wako Chemicals製)(ジギトニン緩衝液)で可溶化し、セファロース4Bビーズと結合させたMT18抗体と混合した。その後、ビーズをジギトニン緩衝液で6 回洗浄し、免疫するための部分精製IL-6レセプターとした。
その結果、ハイブリドーマPM-1が産生する抗体は、IL-6のIL-6レセプターに対する結合を阻害することが明らかとなった。
Saito, et al., J. Immunol. (1993) 147, 168-173に記載の方法により、マウスIL-6レセプターに対するモノクローナル抗体を調製した。
マウス可溶性IL-6レセプターを産生するCHO 細胞を10%FCSを含むIMDM培養液で培養し、その培養上清からマウス可溶性IL-6レセプターRS12(上記Saito, et al参照)とAffigel 10ゲル(Biorad製)に固定したアフィニティーカラムを用いてマウス可溶性IL-6レセプターを精製した。
したがって、ハイブリドーマMR16-1が産生する抗体は、IL-6のIL-6レセプターに対する結合を阻害することが明らかとなった。
ヒト型化PM-1抗体を国際特許出願公開番号WO92-19759に記載の方法により得た。参考例2で作成されたハイブリドーマPM-1から常法により全RNA を調製し、これより一本鎖cDNAの合成を行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によりマウスPM-1抗体の可変領域(V領域)をコードするDNA を増幅した。PCR 法には、Jones, S.T.et al., Bio/Tcchnology(1991)9, 88-89 に記載されたプライマーを使用した。
MR16-1およびKH-5(抗DNP-KLH 抗体)はラットのIgG であり、マウスに連続投与するとラットIgG に対する抗体の産生やショック症状を引き起こす可能性がある。そこで、MR16-1やKH-5の投与を開始する前に、これら抗体に対する免疫寛容をFinck, B. K. et al., J. Clin. Invest. (1994) 94, 585-591に記載の方法を用いて誘導した。
すなわち、ビヒクル投与群では28週齢から、KH-5投与群では38週齢から尿タンパクの排泄がみられ、実験終了の64週齢ではビヒクル投与群では全例のマウスが、また、KH-5投与群では90% のマウスが陽性となったのに対して、MR16-1投与群では尿タンパクの出現時期が著明に延長され、発症率も著明に抑制された。
以上の成績から、抗IL-6レセプター抗体は全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤として有用であることが明らかになった。
本発明において抗IL-6レセプター抗体を使用した場合、1例のマウスを除いて腎炎の発症は全く見られなかったのに対して、 Finck, B. K. et al., J. Clin. Invest. (1994) 94, 585-591 の実験では抗IL-6抗体を使用したことにより、7ヶ月齢から腎炎を発症するマウスが増加しており、9ヶ月齢以降も増加する可能性が考えられる。このことから、抗IL-6抗体は抗IL-6レセプター抗体に比べて効果が不十分であると推測される。
本発明において、抗IL-6レセプター抗体を投与したマウスの血中のIL-6濃度を測定したところ、測定限界以下であった。したがって、抗IL-6レセプター抗体を投与しても、血中のIL-6は上昇しない可能性が示唆された。この事実から考えて、抗IL-6抗体より抗IL-6レセプター抗体の方が優れていると考えられる。
本発明により、抗IL-6レセプター抗体が全身性エリテマトーデスの治療効果を有することが示された。したがって、抗IL-6レセプター抗体は全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤として有用である。
また、抗IL-6レセプター抗体は全身性エリテマトーデスにおける抗DNA 抗体を減少させるための予防および/または治療剤および全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク漏出を減少させるための予防および/または治療剤として有用である。
Claims (9)
- 抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける尿タンパク漏出を減少させるための予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスにおける抗DNA 抗体または抗核抗体を減少させるための予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体が抗ヒトIL-6レセプター抗体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体が抗IL-6レセプターモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体が組換型抗IL-6レセプター抗体であることを特徴とする請求項1 〜4 のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体がPM-1抗体であることを特徴とする請求項1 〜5 のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体がヒト抗体定常領域を有する抗体であることを特徴とする請求項1 〜6 のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体がIL-6レセプターに対するキメラ抗体またはヒト型化抗体であることを特徴とする請求項1 〜7 のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
- 抗IL-6レセプター抗体がヒト型化PM-1抗体であることを特徴とする請求項1 〜8 のいずれか1 項に記載の予防および/または治療剤。
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JP2005157995A Pending JP2005247872A (ja) | 1997-08-15 | 2005-05-30 | 抗il−6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2005247872A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009185073A (ja) * | 1997-08-15 | 2009-08-20 | Chugai Pharmaceut Co Ltd | 抗il−6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤 |
CN103169966A (zh) * | 2013-04-09 | 2013-06-26 | 中国人民解放军军事医学科学院基础医学研究所 | 一种治疗系统性红斑狼疮的药物组合物 |
JP2016208934A (ja) * | 2015-05-12 | 2016-12-15 | 学校法人日本大学 | 抗イヌインターロイキン−6受容体モノクローナル抗体又は抗体フラグメント及びその利用 |
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2005
- 2005-05-30 JP JP2005157995A patent/JP2005247872A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009185073A (ja) * | 1997-08-15 | 2009-08-20 | Chugai Pharmaceut Co Ltd | 抗il−6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤 |
CN103169966A (zh) * | 2013-04-09 | 2013-06-26 | 中国人民解放军军事医学科学院基础医学研究所 | 一种治疗系统性红斑狼疮的药物组合物 |
CN103169966B (zh) * | 2013-04-09 | 2015-04-01 | 中国人民解放军军事医学科学院基础医学研究所 | 一种治疗系统性红斑狼疮的药物组合物 |
JP2016208934A (ja) * | 2015-05-12 | 2016-12-15 | 学校法人日本大学 | 抗イヌインターロイキン−6受容体モノクローナル抗体又は抗体フラグメント及びその利用 |
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