JP2005247740A - 脂質代謝改善蛋白質 - Google Patents

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Abstract

【解決課題】 肪細胞分化過程におけるBMAL1発現調節機構の検討と共に、BMAL1の脂肪細胞分化における役割を明らかにすること、本発明は脂質代謝を制御しているBMAL1を阻害して生活習慣病(肥満など)を予防・治療可能な薬剤を提供すること。
【解決手段】 脂肪酸代謝遺伝子の調整機能を有する蛋白質BMAL1及び前記BMAL1の阻害作用を持つ、脂質代謝改善用薬剤である。さらに、前記薬剤がチアゾリジン系化合物である。さらに、前記チアゾリジン系薬剤を生体に投与してBMAL1を阻害する方法である。




Description

本発明は、生体内の周期の制御関連因子であるBMAL1に係わる。
近年、ライフスタイルの欧米化に伴い、糖尿病、高血圧および高脂血症といった、いわゆる生活習慣病の患者数が急増している1) 。肥満はこれらの疾患の主因であり、その患者数を考慮すれば肥満の成立を解明し、適切な予防法や新たな薬剤の開発が社会的要請であることは明らかである。
肥満、すなわち脂肪組織の過剰状態はその主要構成成分である脂肪細胞の増殖や分化機構と密接に関係していると考えられる。脂肪細胞への分化の始動は自発的に決定されるのではなく、食物の摂取や運動などから派生する環境因子によって、正あるいは負に遺伝子発現レベルでコントロールされている2-8)
そこで発明者のグループでは脂肪細胞分化を制御する転写因子を検討したところ、ダイオキシンレセプターとして知られるAryl hydrocarbon Receptor(AhR)が脂肪細胞分化の負の制御に関わることを明らかにした9) 。AhRはその構造内にbHLH/PAS構造を有し、他のいくつかの転写因子とファミリーを形成している。このbHLH/PASファミリーはダイオキシン類への応答をはじめ、低酸素への適応あるいは生体内時計の調節等、環境変化への適応に関与する転写因子群であることが考えられている10-15)
本発明者は脂肪細胞分化に伴う他のbHLH/PAS型転写因子群の発現を検討したところ、Brain and Muscle Arnt-Like Protein 1(BMAL1)の発現が脂肪細胞分化とともに増加することを見いだした。また、ヒト間葉系幹細胞を脂肪、軟骨芽および骨芽細胞へと分化誘導した際においても、BMAL1の発現量は脂肪細胞分化において特異的に観察された16)。これらの結果は脂肪細胞分化におけるBMAL1の発現量の増加が、特定の株化細胞においてのみ起こる現象ではなく、脂肪細胞分化の本質に関与していることを示唆している。
BMAL1は生体内リズムを司る転写因子の1つであり、同じくbHLH/PAS型転写因子であるCLOCKとヘテロ二量体を形成し、同じく生物内時計調節因子であるPeriod(PER)やCryptochrome (CRY)の発現を誘導する17) 。誘導されたPERやCRYは細胞質より核内に入り、CLOCK/BMAL1による転写促進を阻害する18,19)
一般に概日時計の約24時間周期の振動現象(サーカディアンリズム)は、このようなネガティブフィードバックループによって引き起こされていると考えられている(図1)。さらにサーカディアン・ネガティブフィードバックループによる遺伝子の転写、増幅によるリズム発振はほぼ完璧な形で行動リズム、ホルモン分泌リズムなどに反映される20)。その一例として近年、飽食因子であるレプチンの血中濃度やコレステロール合成が夜間に増加する日周性をもつことが示された21,22)。これらのことは脂肪組織において脂質代謝の活性に日内変動が存在することを想像させ、またBMAL1の発現が日周性をもつこと23)、さらには上述したような脂肪細胞分化とともにBMAL1発現量が増加することを考え合わせると、脂肪細胞分化の制御においてBMAL1が重要な役割を演じていることが推察される。
特開2002−238567号公報には、光入力経路及び出力経路を含む時計発振機構において重要である新規時計タンパク質BMAL2(Brain-Muscle-Arnt-Like protein 2)、それらをコードする新規時計遺伝子、及びそれらを利用したプロモーター転写活性の促進又は抑制物質のスクリーニング方法等を提供することヲ目的として、サーカディアン時計研究に適した材料であるニワトリ松果体を用いて、cCLOCK、cPER2、cBMAL1 の遺伝子を単離し、さらに、cBMAL1 と相同性を示す新規の時計タンパク質cBMAL2をコードするcDNAを単離し、配列を決定し、また、ヒト、マウス、ラットにおけるBMAL2のcDNAについても、ヒト胚腎臓細胞株、マウス中脳、ラット初期繊維芽細胞からそれぞれ単離し、配列を決定し、BMAL2は、CLOCKやBMAL1 等とヘテロ2量体を形成し、またホモ2量体を形成すること、が開示されている。しかしながら、脂肪細胞分化過程における発現調節機構については何等言及されていない。
特開2002−238567号公報
そこで、本願発明は、脂肪細胞分化過程におけるBMAL1発現調節機構の検討と共に、BMAL1の脂肪細胞分化における役割を明らかにすること、を目的とするものである。さらに、本発明は脂質代謝を制御しているBMAL1を阻害して生活習慣病(肥満など)を予防・治療可能な薬剤を提供することを目的とするものである。
脂肪細胞分化への過程は多面的に制御されており、本発明者は、時計遺伝子BMAL1に着目し、脂肪細胞分化における役割を検討した。脂肪細胞分化におけるBMAL1の関与を推察させる理由として、脂肪細胞分化に伴うBMAL1 mRNAの発現量は脂肪細胞分化により顕著な増加が認められたこと(図2)。次いで、ヒト間葉系幹細胞を脂肪、軟骨芽および骨芽細胞へと分化させたところ、脂肪細胞への分化時にのみ、BMAL1の発現量の増加が認められたこと16) 、さらに、血中レプチン濃度やコレステロール合成が夜間に亢進することから予想される夜間の脂肪組織においての脂質代謝亢進に対し21,22)、夜間に発現量が増加する日周性をもつ時計遺伝子BMAL1の関与が推察されることがあげられる。
そこで、脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の発現調節機序を検討した。その結果、脂肪細胞分化の制御に関わる転写因子のなかで、C/EBPαおよびδがBMAL1の発現に強い正の
影響を与えることが示された(図4)。しかし、C/EBPδを誘導する分化誘導剤のひとつで
あるDexのみで細胞を処理した際にはBMAL1 mRNA発現量の上昇は認められなかった。また、分化誘導剤のいずれか単独処理に比較して2種類以上の誘導剤処理によりBMAL1 mRNA発現量の増加が認められた(図3)。以上の結果より、脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の発現量の増加は、C/EBPファミリーを中心に、PPARγおよびその他の転写因子の協調的な作
用によることが示唆された。
次いで、このBMAL1が脂肪細胞分化誘導能を有しているか否かを、脂肪細胞への分化能を有しないNIH3T3細胞にBMAL1を過剰発現させた“gain of function study”により検討した。その結果、BMAL1を過剰発現させたNIH3T3細胞では形態 (図5)ならびに脂肪細胞分化マーカー遺伝子の発現(図6)のいずれにおいても脂肪細胞への分化が認められ、BMAL1が脂肪細胞分化における正の調節因子であることが示された。さらに、このBMAL1過剰発現による脂肪細胞分化能の獲得をマスターレギュレーターであるPPARγ2との関連から検
討した。その結果、BMAL1はPPARγ2の発現を直接的に制御するものではないことが示さ
れた(図7)。
そこで、BMAL1の脂肪細胞分化過程における役割を3T3-L1前駆脂肪細胞に転写活性能を欠くBMAL1ΔCを過剰発現させた“loss of function study”により検討した。その結果、分化誘導5日目において、BMAL1ΔCを過剰発現させたBΔC細胞の脂肪滴の蓄積の程度はコントロール(VおよびWT)細胞と比較して著しく低いものであったが(図12上段)、検討した脂肪細胞関連遺伝子の発現はいずれもBΔC細胞においてコントロール細胞と同程度であった (図11)。また、このBΔC細胞における形態的な分化能の低下はPPARγのリガンドであるpioglitazone処理によっても回復が認められなかった (図12下段)
。一方、アデノウイルスベクターを用いてBMAL1を3T3-L1前駆脂肪細胞に過剰発現させたところ、多くの脂肪代謝酵素遺伝子の発現量が増加することを明らかにした16)。以上の結果より脂肪細胞分化においてBMAL1は脂質代謝酵素遺伝子群の発現調節ならびにその結果おこる脂肪の蓄積に関与していることが示唆された。
本発明は、生活習慣病の主因である脂肪細胞の分化制御の一端を転写因子であるBMAL1の機能解析を通じて明らかにしたものであり、得られた知見は生活習慣病の予防ならびに治療に関して、時間薬理学の観点から医薬品の適正使用および創薬の開発に分子基盤を与えるものであると考えられる。
すなわち、体内時計の調節を司る転写因子であるBMAL1の発現が脂肪細胞分化とともに増加すること、BMAL1が脂質代謝関連転写因子群の発現の誘導を制御することにより脂肪細胞分化の促進ならびに脂肪細部機能維持に関与していることがあきらかとなった。脂肪細胞は生活習慣病の発症と強く関連していることから、脂肪組織における体内時計関連因子の発現変化とその薬物応用が実現される。そこで、脂肪細胞分化の制御に関与する転写因子であるPPARγのアゴニストであるチアゾリジン系薬剤に注目し、BMALの
阻害作用があることを確認した。脂肪組織においてPPARγの発現に日内変動が示されるこ
とから、チアゾリジン系薬剤にはこの日内変動に対応した至適投与時間帯が存在する。この時間帯としては就寝前が好適であるが、薬剤に徐放性を付与することにより就寝前から就寝後短時間に有効血中濃度を維持できる機能を薬剤に与えることができる。
この発明におけるチアゾリジン系薬物の一般構造式は下記のとおりである。
Figure 2005247740
徐放性付与は、公知の技術によって、例えば徐放出性被覆を薬剤に適用することによって可能である。例えば、フタル酸エステルなどが徐放出被膜として一般に用いられる。
チアゾリジン系化合物の効果を確認する具体的な手法及び効果は実施形態において説明する。
マウス前駆脂肪細胞である3T3-L1細胞はデキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチン、インスリンおよびFBSの刺激により、脂肪滴を含んだ脂肪細胞へと分化する。まずこの3T3-L1細胞をモデルとして脂肪細胞分化における時計遺伝子BMAL1の発現量の変化をRT-PCR法により検討した。次いで、脂肪細胞分化におけるBMAL1の発現に関与する調節因子をBMAL1プロモーター解析と分化誘導剤のシグナル伝達の点から検討した。さらには分化能を有しない線維芽細胞であるNIH3T3細胞にBMAL1を過剰発現させ、BMAL1の脂肪細胞分化能を検討した。
実験材料および方法
細胞の培養
マウス胚由来3T3-L1細胞((財)ヒューマンサイエンス振興財団)ならびにマウス胎児由来NIH3T3細胞((財)ヒューマンサイエンス振興財団)は10%仔牛血清(Cell Culture Technologies)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、日水製薬(株))に、2mM グルタミン(和光純薬工業(株))、1μg/mL アンホテリシンB(ICN Biomedicals)、1%抗生物質混
合溶液を添加し10%NaHCO3によりpH7.4に調整した培地を用いて、37℃、飽湿、5%CO2条件下で培養した。ヒト胎児腎由来HEK293細胞((財)ヒューマンサイエンス振興財団)は10%ウシ胎児血清(FBS, Cell Culture Technologies)を含むイーグルMEM(日水製薬(株))に上記の添加物を加え、同様の条件下で培養した。抗生物質混合溶液は400μg/mL 硫酸カ
ナマイシン(明治製菓(株))、400μg/mL 硫酸ストレプトマイシン(明治製菓(株))、
200μg/mL ビクシリン(アンピシリンナトリウム、明治製菓(株))、20μg/mL ビクリ
ン(硫酸アミカシン、ブリストル・マイヤーズスクイブ)をPBSに溶解し、ろ過滅菌したものを使用した。
脂肪細胞への分化誘導
3T3-L1細胞を60mm組織培養用ディッシュに撒き、接触阻害の状態まで培養した。その後、10%FBS、10μg/mL インスリン・ウシ膵臓製(シグマ アルドリッチ(株))、5μg/mL
トランスフェリン(和光純薬工業(株))、20pMトリヨードチロニン(ナカライテスク(株))、0.18mMアデニン(Merck)、3mM グルタミン、1μg/mL アンホテリシンB、1%抗生
物質混合溶液を含むDMEM:Ham's F-12培地(大日本製薬(株))=3:1混合培地(以下、分化用培地)中に、分化誘導剤である0.25μM デキサメタゾン(Dex、和光純薬工業(株))、50
0μM イソブチルメチルキサンチン(IBMX、和光純薬工業(株))を添加し、分化誘導用培
地として3日間培養した。その後、分化用培地に交換し培養を続け、さらに数日間培養を続けた。NIH3T3細胞に関しては上記の分化用培地にさらに5μM pioglitazone(武田薬品
工業より分与)あるいは50μM 5,8,11,14-eicosatetraynoic acid(ETYA,Cayman Chmical)
を加え、同様の条件下で培養を行った。
Total RNAの抽出
細胞をPBSで洗い、TRI REAGENT(商標)試薬(シグマ アルドリッチ(株))を用いて添付のプロトコールに従いtotal RNAを抽出した。混入したDNAによる影響を除くため、total RNA 10μgをDNase(RT grade、和光純薬工業(株))2unitsにより37℃、15分間の処理
を行った。その後、フェノール抽出処理、ならびにクロロホルム抽出処理を行い、エタノール沈殿によりtotal RNAを精製した。精製されたtotal RNAを適当量のH2Oにより溶解し、以下の実施例に使用した。
RT-PCR法によるmRNAの検出
DNase処理をしたtotal RNA 1μgを0.8μM オリゴdTプライマー((株)ベックス)お
よび1mM dNTPs(インビトロジェン(株))を含むReaction buffer中で 60℃、5分間、次いで37℃、10分間反応させた。その後、Reverse Transcriptase(和光純薬工業(株))200unitsを加えて37℃、60分間、次いで95℃、15分間の反応を行った。
得られたcDNA 1μLをPCR用 Reaction buffer(プロメガ(株))、2.5mM MgCl2 (プロ
メガ(株))、0.4mM dNTPs、75KBq [α−32P]dCTP(HAS)、0.2μM各種プライマー、及
び2.5units Taq DNA polymerase(プロメガ(株))を含む反応液中において、以下の条件下でPCRを行った。
Figure 2005247740
PCR後の反応液について10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離を行い、オートラジオグラフィーによりバンドを確認した。使用したプライマーの配列を次に示す。
Figure 2005247740
BMAL1遺伝子のプロモーター領域を含むリポーター遺伝子の作成
下記に示すプライマーを用いて3T3-L1細胞より抽出したゲノムDNAからPCRによりBMAL1遺伝子のプロモーター領域を増幅した。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動により精製した後、QIAquick Extraction Kit ((株)キアゲン)を用いてアガロースゲルより抽出した。得られた精製DNAをKpnI(New England Biolabs Inc.)およびXhoI(New E
ngland Biolabs Inc.)で消化した。次いで同様にKpnIとXhoIで消化したpGL3 basic v
ector(プロメガ(株))中にこのDNAをサブクローニングした。得られたリポーター遺伝子を用いて1-1-6に準じてRepotrer Gene Assayを行った。
Figure 2005247740
Reporter Gene Assay
50~70% confluentの状態のHEK293細胞に、リポーター遺伝子、発現ベクターおよび内部標準ベクターであるウミシイタケルシフェラーゼコントロールレポーターベクター (プロメガ(株))をFugene6 Transfection Reagent (ロッシュ・ダイアグノスティックス(株))を用いてリポソーム法により導入した。導入48時間後、PBSを用いて細胞を洗い、Passive Lysis Buffer(プロメガ(株))により細胞を溶解した。次いで検体中のルシフェラーゼ活性は、Dual-Luciferase Reporter Assay Kit(プロメガ(株))を用いて測定した。
全長BMAL1発現ベクターの作成
全長BMAL1 cDNAを鋳型として、以下のプライマーを用いて、PCRを行った。得られたDNA断片をアガロース電気泳動により精製した後、QIAquick Extraction Kit を用いてアガロースゲルより抽出した。得られた精製DNAをEcoRI(New England Biolabs Inc.)および
XbaI(New England Biolabs Inc.)で消化した。次いで同様にEcoRIとXbaIで消化した
p3XFLAG-CMVTM -14発現ベクター(シグマ アルドリッチ(株))中にこのDNAをサブクローニングした。
Figure 2005247740
全長BMAL1遺伝子を構成的に導入したNIH3T3細胞のクローニング
1-1-7に従い作成した全長BMAL1発現ベクターあるいは、
p3XFLAG-CMVTM -14発現ベクターをFugene6 Transfection Reagentを用いてリポソーム法によりNIH3T3細胞に導入した。遺伝子導入細胞を100mm組織培養用ディシュに希釈して培養し、ネオマイシン(Calbiochem)耐性(405μg/mL)を指標に2週間、細胞のセレクション
を行った。形成されたコロニーをクローニングシリンダー(旭テクノグラス(株))を用いて回収し、得られたクローンを継代的に培養した。BMAL1の発現量はWestern Blot法により確認した。
核タンパク質の調製
細胞を0.25%トリプシン(インビトロジェン(株))を用いてディシュより剥離した。細胞を冷PBSで洗浄した後、Buffer A中に懸濁し、ボルテックスにより細胞を破壊した。その後5000rpm、1分間遠心して上清を除き、再びBuffer Aを加えて5000rpm、1分間遠心した。得られた沈殿をBuffer C中に懸濁し、4℃で30分間ローテーションを行った。その後、15,000rpmで15分間遠心し、上清を核タンパク質抽出液とした。
抽出液中のタンパク質量は、4倍量のプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク(株))を加えて発色させた後、その595nmの吸光度を測定し、ウシ血清アルブミン(和光純薬工業(株))を標品として作成した検量線より算出した。
Buffer A;10mM N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(HEPES, 同仁化学(株))-KOH(pH7.8)、10mM KCl (和光純薬工業(株))、1%Nonidet P40 (BDH Laboratory)、0.1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA,pH8.0、和光純薬工業(株))、1mM(±)−ジチオトレイトール(DTT, 和光純薬工業(株))、0.5mM フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF, 和光純薬工業(株))、2μg/mL ロイペプチン(和光純薬工業(株))。
Buffer C;10mM HEPES-KOH(pH7.8)、10mM KCl、0.1mM EDTA(pH8.0)、5mM MgCl2(和光純薬工業(株))、20%グリセロール(関東化学(株))、1mM(±)-DTT、0.5mM PMSF、2μg/mL
ロイペプチン。
Western Blot法によるBMAL1タンパク質の検出
調製した核タンパク質(10μg)をLammeli buffer中において100℃、3分間処理し、10
%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。その後、セミドライ法を用いてゲル中のタンパク質をポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜(日本エイドー(株))上に転写した。核タンパク質を転写したPVDF膜を3%スキムミルク(和光純薬工業(株))中においてブロッキングした後、抗FLAG抗体(シグマ アルドリッチ(株))、次いでアルカリフォスターゼを結合させた抗マウスIgG抗体(プロメガ(株))と反応させた。その後、アルカリフォスターゼの発色基質である5-bromo-4-chloro-3-indolyl-1-phosphate(プロメガ(株))、およびnitro-bluetetrazolium(プロメガ(株))を用いて染色し、FLAG融合BMAL1タンパク質を検出した。
Oil Red O染色
分化11日後の細胞を冷4%ホルマリン(和光純薬工業(株))/PBSを用いて固定した。固定した後にホルマリンを除き、2~3回蒸留水で洗い、室温にてよく乾燥させた。その後、2-プロパノール(和光純薬工業(株))を用いて調製した0.5% Oil Red O溶液と蒸留水との3:2混合液をWhatman No.1フィルターでろ過し、ろ液を細胞に加えて1時間染色した。染色後、70%エタノールならびに蒸留水で洗浄し、その後風乾させた。
3T3-L1細胞の脂肪細胞分化過程におけるBMAL1発現量の変化
前駆脂肪細胞である3T3-L1細胞の脂肪細胞分化に伴うBMAL1 mRNAの発現量の変化をRT-PCR法により検討した(図2)。その際、脂肪細胞分化に伴い増加することが知られているPPARγ8)ならびにaP28)のmRNA発現量を測定し、脂肪細胞への分化の程度を確認した。また
、内部標準としてGAPDH mRNAの発現量を測定した。その結果、BMAL1 mRNAの発現量は脂肪細胞分化に伴い増加することが示された(図2)。
脂肪細胞分化におけるBMAL1の発現量を制御する因子の検討
BMAL1の発現量を調節している因子の解明を試みた。まず、3T3-L1細胞の分化誘導剤であるIBMX、DEXおよびインスリンを様々な組み合わせで添加し、72時間培養した。その後RNAを抽出し、各分化誘導剤処理によるBMAL1 mRNAの発現量の変化をRT-PCR法により検討した(図3)。その結果、各分化誘導剤による単独処理に比較して2種類以上の分化誘導剤の組み合わせによりBMAL1の発現がより強く誘導された。しかしながら2種類以上の分化誘導剤におけるいずれの組み合わせにおいてもBMAL1の発現量に差異は見られなかった。
次に脂肪細胞分化の制御に関与する転写因子であるPPARγならびにC/EBPファミリーの
BMAL1プロモーター活性に与える影響をReporter Gene Assayにより検討した。その結果、C/EBPγあるいはC/EBPδの存在によりBMAL1プロモーター活性はコントロールの約4
倍の活性を示した。またPPARγ1はRXR共存下においてBMAL1プロモーター活性をコント
ロールの約2倍に上昇させた(図4)。
BMAL1の脂肪細胞への分化誘導能の検討
前述したように脂肪細胞分化に伴い、BMAL1の発現量が増加することが明らかになり、この増加はC/EBPαおよびδが転写レベルで直接的に強い影響を与えていることが示され
た。これらのことはBMAL1が脂肪細胞分化において重要な役割を演じていることを示唆している。そこで通常の条件下では脂肪細胞分化能を有しないNIH3T3細胞を用いてBMAL1の脂肪細胞分化誘導能を検討した。NIH3T3細胞に全長BMAL1発現ベクターあるいは空のベクターを導入し、これらを恒常的に発現する細胞、すなわちBMAL1過剰発現細胞(B細胞)ならびにベクター遺伝子過剰発現細胞(V細胞)をクローニングした。それら細胞内でのBMAL1の発現はWestern Blot法により確認した(図5A)。次にIBMX、Dex、FBS、インスリンおよびpioglitazoneあるいはETYAを添加し、これら細胞クローンに対する分化誘導を試みた。Oil Red O染色ならびに検鏡により脂肪細胞への分化能を検討したところ、B細胞はpioglitazoneあるいはETYAのいずれのリガンド添加によっても脂肪滴の蓄積、すなわち脂肪細胞への分化が確認された(図5BおよびC)。その一方でコントロール(VならびにWT) 細胞においては脂肪滴の存在は認められなかった(図5BおよびC)。
BMAL1過剰発現NIH3T3細胞における脂肪細胞関連遺伝子の発現量の検討
B細胞、V細胞ならびにNIH3T3細胞野生株(WT)をpioglitazone存在下でIBMX、Dex、FBSおよびインスリン添加により、脂肪細胞へと分化誘導した。分化0日目および11日目の細胞からRNAを抽出して脂肪細胞関連遺伝子の発現量をRT-PCR法により検討した。その結果、分化誘導後11日目のB細胞において、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPAR、脂肪細胞のマーカー遺伝子であるaP2ならびに脂肪細胞特異的糖輸送担体である
Glut4の発現量の顕著な増加が確認された。それに対してコントロール(VおよびWT)細胞ではその増加はわずかであった (図6)。
PPARγ2遺伝子プロモーター活性に及ぼすBMAL1の影響
前節において、通常の分化誘導では脂肪細胞へと分化しないNIH3T3細胞がBMAL1の過剰発現により形態ならびに遺伝子発現においても脂肪細胞分化能を獲得することが明らかとなった(図5および6)。そこで脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ2の
発現が直接BMAL1によって制御されているか否かを、PPARγ2遺伝子のプロモーター領域
を挿入したリポーター遺伝子を用いて検討した。その際にC/EBPδをポジティブコントロ
ールとして用いた。C/EBPδはPPARγ2のプロモーター領域に結合し、その活性を増加す
ることが知られている24,25)。本実験においてもC/EBPδはPPARγ2プロモーター活性を
約8倍増加させた(図7)。その一方でBMAL1/CLOCKはPPARγ2プロモーター活性には影響
を与えなかった(図7)。
以上により、脂肪細胞への分化に伴いBMAL1 mRNAの発現量は、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターのPPARγや脂肪細胞マーカー遺伝子であるaP2と同様に顕著に増加するこ
とが確認された(図2)。また、ヒト間葉系幹細胞を脂肪、軟骨芽および骨芽細胞へと分化させたところ脂肪細胞への分化時にのみBMAL1の発現上昇が確認された16)。これらの結果より脂肪細胞分化時におけるBMAL1発現量の増加は特定の株化細胞において起こる現象ではなく、脂肪細胞分化の本質に密接に関連したものであることが示唆された。
次に脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の発現調節機序を分化誘導剤のシグナル伝達の観点と脂肪細胞分化の制御に関する転写因子による直接的な転写制御の観点から検討した。その結果、BMAL1の発現においてC/EBPαおよびδが直接的に強い正の影響を与えること
が示された(図4)。また、脂肪細胞分化誘導シグナル伝達機構ではC/EBPδはグルココ
ルチコイドレセプターによって発現誘導されることが知られている26)。このグルココルチコイドレセプターのリガンドであるDexのみで処理を行った細胞では有意なBMAL1 mRNAの発現量の増加は見られなかった(図3)。脂肪細胞分化過程においてC/EBPδは単独では
分化誘導作用が認められずC/EBPδと協調することで分化に相加的に作用することが知ら
れている27,28)。これらのことより、脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の発現量の増加はC/EBPα、δの直接的な強い影響を受けているが、いずれか単独の因子による作用ではな
くC/EBPファミリー、PPARγ1およびγ2、あるいはその他の脂肪細胞分化の経過と共に
発現してくる転写因子の協調的な影響である可能性が示された。
次にBMAL1が脂肪細胞分化誘導能を有しているか否かを脂肪細胞への分化能を有しないNIH3T3細胞を用いて検討した。NIH3T3細胞中にBMAL1を過剰に発現させ、分化誘導剤により処理したところ、その細胞は形態的(図5)ならびに脂肪細胞分化マーカー遺伝子の発現(図6)のいずれにおいても脂肪細胞への分化が認められ、BMAL1が脂肪細胞分化における正の調節因子であることが示された。前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化はマスターレギュレーターのPPARγ2により強く制御されていることが知られている29,30)。そこで脂肪
細胞分化の進行におけるBMAL1の役割を明らかにする目的でPPARγ2の発現に対する影響
を検討した。PPARγ2遺伝子のプロモーター活性に対するBMAL1の影響を検討したところ
、BMAL1はその活性に影響を与えなかった(図7)。
以上の結果よりBMAL1はPPARγ2の発現に直接的な影響を与えることなく脂肪細胞分化を
促進することが示された。
BMAL1の機能抑制による脂肪細胞分化への影響
次に、3T3-L1細胞に転写活性能を欠いたBMAL1を過剰発現させ、そのドミナントネガティブ効果による脂肪細胞分化への影響ならびに脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の機能解析を行った。
実験材料および方法
C末端欠損BMAL1発現ベクターの作製
転写活性部位を欠損したBMAL1(以下BMAL1ΔC) cDNAは、全長BMAL1 cDNAを鋳型として以下のプライマーを用いてPCR法により調製した。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動により精製した後、QIAquick Extraction Kitを用いてアガロースゲルより抽出した。得られた精製DNAをEcoRIおよびXbaIで消化した。次いで同様にEcoRIとXbaIで
消化したp3XFLAG-CMVTM -14発現ベクター中にBMAL1ΔC cDNAをサブクローニングした。また、作成したBMAL1ΔC発現ベクターのドミナントネガティブ効果をReporter Gene Assayにより確認した。
Figure 2005247740
BMAL1ΔC遺伝子を構成的に導入した3T3-L1細胞のクローニング
BMAL1ΔC発現ベクターあるいはp3XFLAG-CMVTM -14発現ベクターをFugene6 Transfection Reagentを用いてリポソーム法により3T3-L1細胞に導入した。その後BMAL1ΔC過剰発現細胞(BΔC細胞)ならびにベクター遺伝子過剰発現細胞(V細胞)をクローニングした。
BMAL1ΔC過剰発現3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化能の検討
クローニングしたBΔC細胞、V細胞ならびに3T3-L1細胞野生株(WT)を脂肪細胞へと分化誘導した。脂肪細胞への分化の程度はOil Red O染色により確認した。また脂肪細胞関連遺伝子の発現を検討した。その際に新たに使用したプライマーを以下に示す。
Figure 2005247740
転写活性化部位を欠損させたBMAL1 (BMAL1ΔC) のドミナントネガティブ効果の検討
転写活性領域を欠いたBMAL1ΔC(図8)がドミナントネガティブ効果を示すか否かをReporter Gene Assayにより検討した。全長BMAL1、BMAL1ΔC、ならびにCLOCKの発現ベクターをBMAL1の結合部位であるE-boxを含んだリポーター遺伝子(MLP-Luc)とともにHEK293細胞に一過性に導入した。その結果、加えたBMAL1ΔCの用量に依存してルシフェラーゼ活性は抑制された (図9)。
BMAL1ΔCによる3T3-L1細胞の脂肪細胞分化に対する影響
BMAL1ΔC発現ベクターならびに空の発現ベクターを3T3-L1細胞に導入し、これらの遺伝子を恒常的に発現する細胞クローン(BΔC細胞およびV細胞)を確立した。得られた BΔC細胞ならびにV細胞におけるBMAL1ΔCタンパク質の発現をWestern Blot法により検討した。その結果、BMAL1ΔCタンパク質の発現はBΔC細胞においてのみ確認された(図10A)。次いで、BΔC細胞およびV細胞を常法に従い脂肪細胞へと分化誘導した。その結果、V細胞は成熟脂肪細胞へと分化したものの、BΔC細胞の脂肪細胞への分化の程度は著しく低いものであった(図10B)。
BMAL1ΔC過剰発現3T3-L1細胞における脂肪細胞関連遺伝子発現量の検討
BΔC細胞、V細胞ならびに3T3-L1細胞野生株(WT)を常法に従い、脂肪細胞へと分化誘導した。分化誘導前(0日目)のBΔC細胞において、脂肪細胞マーカー遺伝子であるaP2の発現低下ならびにコレステロール合成の制御を司る転写因子であるSREBP1の発現増加が認められた。分化誘導5日目においてBMAL1ΔCの発現に伴う上記の変化は観察されなかった。その一方で脂肪細胞分化の制御に関与する転写因子であるC/EBPδがBΔC細胞に
おいて顕著な発現増加を示し、また脂質代謝の調節に関与する転写因子であるPPARγ1の
発現は、コントロール(VおよびWT)細胞に比較して明らかに低いものであった。これらに対して脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ2、脂肪滴の構成タンパク質
であるADRPおよびperilipin、ならびに脂肪細胞特異的糖輸送担体であるGlut4の発現に関しては、分化誘導前後のいずれにおいてもBΔC細胞ならびにコントロール(VおよびWT)細胞の間で、明らかな差異は認められなかった。
PPARγ2のリガンド添加によるBMAL1ΔC過剰発現3T3-L1細胞の分化能に対する影響
BΔC細胞、V細胞ならびに3T3-L1細胞野生株(WT)を常法に従い分化誘導し、Oil Red Oを用いた脂肪滴の染色により分化の程度を検討した。その結果、BΔC細胞の分化の程度は先に示したように著しく低いものであった (図12上段)。さらに、BMAL1ΔC細胞の分化能はPPARγ2のリガンドであるpioglitazone存在下において分化誘導を行っても、
コントロール(VおよびWT)細胞と比較して分化能の回復は認められなかった(図12下段)。
BMAL1は脂肪細胞分化能を有する脂肪細胞分化の正の制御因子であることが示された。変異BMAL1を3T3-L1細胞に過剰発現させ、そのドミナントネガティブ効果より脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の機能解析を試みた。
まず、転写活性能を欠いたBMAL1ΔCを過剰発現させた3T3-L1細胞(BΔC細胞)をクローニングし、その分化能を検討した。分化誘導5日目において、BΔC細胞における脂肪滴の蓄積はコントロール(V)細胞と比較して極めてわずかであったにも関わらず(図12上段)、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ2、脂肪細胞分化に重要な役割を果たすSREBP1ならびにC/EBPδ等の転写因子、さらには脂肪細胞特異的に発現する
aP2あるいはGlut4はいずれもBΔC細胞において発現されており、その程度はV細胞におけるそれと顕著な違いは見られなかった(図11)。このことからBMAL1はこれらの脂肪細胞関連因子の発現においては影響を与えることなく、細胞内の脂肪の蓄積に関与することが示唆された。細胞内における脂肪の蓄積を考える上でBΔC細胞におけるPPARγ1
の発現量の低下は興味深い(図11)。PPARγ1シグナル下流には多くの脂肪合成酵素遺
伝子があることが報告されている31)。さらにはBΔC細胞の形態的な分化能の低下はPPARγのリガンドであるpioglitazone処理によっても回復しなかったことより(図12)、脂肪細胞分化過程におけるBMAL1の主な作用はPPARより下流の脂肪酸合成ならびに蓄積
に至る経路であることが推察される。アデノウイルスベクターを用いてBMAL1を3T3-L1前駆脂肪細胞に過剰発現させたところ、多くの脂質代謝酵素遺伝子の発現量が増加することを明らかにした16)。一方、脂肪滴の構成タンパク質であるADRPならびにperilipinはBMAL1ΔCの影響を受けていないことより(図11)、BMAL1は脂肪滴の構成に対しても影響を与えないことが示唆された。以上の結果より、脂肪細胞分化においてBMAL1は脂質代謝酵素群の発現調節ならびにその結果におこる脂肪の蓄積に関与することが示唆された。
BMAL1に対するチアゾリジン系化合物の阻害作用の検討
生後10週齢のC57BL/6マウスにロシグリタゾン(10mg/kg体重)を経口より20日間投与した。その後、脂肪組織を摘出し、RNAを抽出した。BMAL1 mRNAの発現をRT-PCRにより確認した。結果を図13に示す。
この結果よりロシグリタゾンをはじめとするチアゾリジン誘導体がBMAL1の発現を抑制し、結果としてBMAL1の阻害剤として作用することが示唆された。
さらにPPARg2およびチアゾリジン誘導体の BMAL1プロモーター活性に与える影響をReporter Gene Assayにより検討した。その結果、図14に示すように、BMAL1プロモーター活性はPPARg2ならびにロシグリタゾンによりコントロールの約75%にまで減少した。
C57BL/6Jマウス(雄性・6週齢)に高脂肪食を28日間与えることで肥満を誘発させた。高脂肪食継続下で作製した肥満マウスに0.25%カルボキシメチルセルロース(vehicle)およびロシグリタゾン(10mg/kg体重)をZT06(明期)あるいはZT18(暗期)において15日間連続で経口投与を行った。24時間の絶食の後、血液を採取した。得られた血液中のトリグリセライド(TG)ならびに遊離脂肪酸量(NEFA)量をトリグリセライドE-テストワコーおよびNEFA C-テストワコーを用いて測定した。その結果、図15に示すように、ロシグリタゾンを夜間に投与した群では昼間投与した群に比較して、より顕著に血中トリグリセリド量ならびに遊離脂肪酸量が低下した。すなわちPPARgの発現時期を考慮することにより、より有効な薬効が得られた。
略語一覧

BMAL1 Brain and Muscle Arnt-Like Protein 1
PPARγ Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ
C/EBP CCAAT/Enhancer Binding Protein
aP2 Adipocyte fatty acid binding Protein 2
DBP Albumin gene D-site Binding Protein
Glut Glucose Transporter
IR Insulin Receptor
IRS Insulin Receptor Substrate
RORα Retinoid-like Orphan Receptor α
GAPDH Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase
ADRP Adipose Differentiation-Related Protein
SREBP1 Sterol Regulatory Element-Binding Protein-1
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哺乳動物のリーカディアン・ネガティブフィードバックループを示す図。 脂肪細胞分化過程におけるBMAL1発現量の変化を示したものである。 分化誘導剤IBMX,Dex及びインスリン刺激によるBMAL1発現量の変化である。 BMAL1プロモータ活性に及ぼす脂肪酸関連転写因子の影響。 BMAL1過剰発現NH3T3細胞の構築並びに脂肪酸分化能を説明する図である。 BMAL1過剰発現NIHT3T細胞における脂肪酸関連遺伝子の発現を示す図である。 PRARγ2プロモータ活性に及ぼすBMAL1の影響を示す図である。 BMAL1ΔCの構造を示す図である。 E−boxリポータ遺伝子活性に及ぼすBMAL1ΔCドミナントネガティブ効果を示す図である。 BMAL1ドミナントネガティブ体発現及び分化能を示す図である。 BMAL1ΔCの脂肪細胞関連遺伝子に及ぼす影響を示す図である。 BΔC細胞の脂肪細胞分化能に対するpioglitazone処理の影響を示す図である。 BMAL1 mRNAの発現をRT-PCRにより確認した結果を示す図。 PARg2およびチアゾリジン誘導体の BMAL1プロモーター活性に与える影響をReporter Gene Assayの結果を示す図。 シグリタゾンを夜間に投与した群では昼間投与した群に比較して、より顕著に血中トリグリセリド量ならびに遊離脂肪酸量を示す特性図である。

Claims (7)

  1. 脂肪酸代謝遺伝子の調整機能を有する蛋白質BMAL1。
  2. 前記BMAL1の阻害作用を持つ、脂質代謝改善用薬剤。
  3. 前記薬剤がチアゾリジン系化合物である、請求項2記載の薬剤。
  4. 前記チアゾリジン系薬剤を生体に投与してBMAL1を阻害する方法。
  5. 就寝前に投与される請求項2又3記載の前記薬剤。
  6. BMAL1の阻害能を指標として検査対象薬剤の脂質代謝改善作用をスクリーニングする方法。
  7. 徐放性処理がされた請求項2記載の薬剤。


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