JP2005243449A - イオン伝導体 - Google Patents
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Abstract
【課題】室温から高温に至るまで、電極間に沿った方向に高いイオン伝導率を示すイオン伝導体を提供する。
【解決手段】電解質と、R1−O−C6H4−C6H4−CNまたはR2−C6H4−C6H4−CNで示される少なくとも2種類の分子とを含むイオン伝導体とする。ただし、R1およびR2は、それぞれ炭素数が2以上10以下の直鎖アルキル基である。
【選択図】図1
【解決手段】電解質と、R1−O−C6H4−C6H4−CNまたはR2−C6H4−C6H4−CNで示される少なくとも2種類の分子とを含むイオン伝導体とする。ただし、R1およびR2は、それぞれ炭素数が2以上10以下の直鎖アルキル基である。
【選択図】図1
Description
本発明は、イオン伝導体に関する。具体的には、リチウムおよびリチウムイオン電池、キャパシタ、光電気化学電池、イオンセンサ、フォトクロミック素子、燃料電池等の各種デバイスに適した特性を有するイオン伝導体に関する。
従来から知られているイオン伝導体としては、無機材料を用いた無機固体電解質、有機高分子を用いた高分子固体電解質、水または非水溶媒を用いた液状電解質が挙げられる。高分子固体電解質は、液漏れのおそれがなく不揮発性であり、次世代リチウム二次電池用の電解質等として注目を集めている。しかし、高分子固体電解質は、現段階ではイオン伝導率が十分に高くはない。
イオン伝導率の向上のため、液状電解質をゲル化剤で固化させたゲル電解質も検討されている。しかし、ゲル電解質には揮発しやすい液状成分が残存しているため、デバイスの安全性を十分に確保できない。
近年、固体と液体の中間的性質を有する液晶材料を用い、液晶材料が有する配向性等の特性を利用したイオン伝導体が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
実用に供される条件を考慮すると、電極間に配置されるイオン伝導体は、室温下で、電極間の方向に相対的に高いイオン伝導率を示すことが望まれる。また、デバイスによっては、室温下とともに高温下で高いイオン伝導率を示すことが望まれる。しかし、広い温度域で電極に対して垂直方向に高いイオン伝導率を示す、液晶材料を用いたイオン伝導体は知られていない。
そこで、本発明は、電解質と、下記式(化1)または式(化2)で示される少なくとも2種類の分子とを含むイオン伝導体を提供する。
ただし、R1およびR2は、それぞれ炭素数が2以上10以下の直鎖アルキル基である。上記少なくとも2種類の分子は、式(化1)または(化2)により示される分子のみから構成されていてもよく、式(化1)で示される分子および式(化2)で示される分子の両方を含んでいてもよい。上記イオン伝導体に含まれている分子の種類の数は2に限らず、3またはそれ以上であってもよい。
上記(化1)および(化2)で示される液晶性分子は、ネマチック液晶状態で、配向膜を用いなくても電極に垂直な方向に沿って配列する傾向がある。この状態では、電解質から供給されるイオンの移動方向が電極間の方向に規制されるため、この方向に沿ったイオン伝導率が相対的に高くなる。温度が低くなるとイオンは拡散しにくくなり、液晶性分子が結晶状態となるとイオン伝導率はさらに低下する。これを考慮し、本発明では、複数種の液晶性分子を含ませることにより、液晶性分子が液晶状態と結晶状態とを転移する温度を低下させることとした。上記液晶性分子は、末端に極性基(シアノ基)を有するために電解質との相溶性にも優れている。以上により、例えば室温程度の温度から高温に至る広い温度域にわたって、電極に対して垂直方向に高いイオン伝導率を示すイオン伝導体を提供できる。
上記(化1)で示される液晶性分子は、特に炭素数が多くなると、上記(化2)で示される液晶性分子よりも高温まで液晶状態を保つ。従って、本発明のイオン伝導体は、少なくとも、R1が炭素数7以上10以下の直鎖アルキル基である式(化1)で示される分子(以下、「分子A」ということがある)を含むことが好ましい。
しかし、この分子Aは、単独では、液晶状態と結晶状態との転移温度が最も低い場合(R1が炭素数6である場合)でも54℃以上と比較的高い。分子Aを2種以上混合しても上記転移温度は低下するが、転移温度の低下には、R1の炭素数が少ない式(化1)で示される液晶性分子、あるいは式(化2)で示される液晶性分子をさらに添加することが有効である。従って、本発明のイオン伝導体は、分子Aとともに、R1が炭素数2以上6以下の直鎖アルキル基である式(化1)で示される分子および式(化2)で示される分子から選ばれる少なくとも一方の分子(以下、「分子B」ということがある)をさらに含むことが好ましい。
分子Aに対する分子Bの比(分子B/分子A)は、特に限定ないが、モル比により表示して1/9〜9/1が好適である。
上記のような液晶性分子のブレンドにより、本発明のイオン伝導体では、液晶性分子(上記少なくとも2種類の分子)が液晶状態と結晶状態とを転移する温度が、例えば−20〜80℃であってもよいが、さらには−20〜50℃、特に−20〜40℃にまで低下していることが好ましい。また、比較的高温まで液晶状態を保持して伝導率の異方性を維持するために、上記液晶性分子が液晶状態と等方性液体状態とを転移する温度を、75℃以上、さらには80℃以上としてもよい。
本発明のイオン伝導体は、等方性状態となる温度から液晶状態と結晶状態とを転移する温度未満の温度にまで急冷することにより、過冷却状態としてもよい。過冷却状態とすると、徐冷した状態と比較して、低温域(例えば室温)におけるイオン伝導率を上昇させることができる。過冷却状態とするためには、例えば10℃/分以上の冷却速度により急冷するとよい。
本発明のイオン伝導体では、電解質および液晶性分子の含有率は特に制限されないが、電解質の含有率は1〜30モル%、特に5〜20モル%、が好ましく、上記分子の含有率は70〜99モル%、特に80〜95モル%、が好ましい。電解質が1モル%未満となると伝導性の発現に必要なイオンが不足し、電解質が30モル%を超えると液晶相が発現しない場合がある。
電解質としては、アルカリ金属塩、特にリチウム塩が好適であり、具体的には、LiPF6、LiBF4、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlF4、LiGaF4、LiInF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiSiF6、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等を用いることができる。
電解質はデバイスに応じて適宜選択するとよい。リチウム塩以外の電解質としては、LiI、NaI、KI、CsI、CaI等の金属ヨウ化物、4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物を例示できる。
電解質の別の好ましい例はプロトン酸である。プロトン酸は無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、燐酸、亜燐酸、次燐酸、メタ燐酸、次亜燐酸、アミド燐酸、炭酸、重炭酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、アルミン酸、アミド硫酸、ヒドラジノ硫酸、スルファミン酸を例示できる。また、有機酸としては、イソ吉草酸、イソ酪酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、乳酸、酢酸、酪酸、クロトン酸、アゼライン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アニス酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、ナフトエ酸、テレフタル酸、ピロメリツト酸、アスパラギン、アスパラギン酸、4−アミノ酪酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、ゲルタミン酸、システイン、セリン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、ロイシン、安息香酸、安息香酸−2−燐酸、アデノシン−2’−燐酸、フェノール−3−燐酸、ガラクトース−1−燐酸、ベンゼンホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、2−ブロム−p−トリルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、t−ブチルホスフィン酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、2,4−ジニトロフェノール、o−ブロモフェノール、p−フェノールスルホン酸、p−アセチルフェノール、アスコルビン酸、レダクチン、3−ヒドロキシフェニルホウ酸、3−アミノフェニルホウ酸、β−フェニルエチルボロン酸、ヒドラジン−N,N−ジ酢酸、ヒドラジン−N,N’−ジ酢酸を例示できる。プロトン酸は、上記に限らず、例えば、スルフォニルイミド酸、その誘導体等であってもよい。
本発明のイオン伝導体は、上記液晶性分子、電解質以外に、ゲル化剤、ポリエチレンオキサイド等その他成分を含んでいてもよいが、その他成分の含有率は、20モル%以下とすることが好ましい。
本発明を適用すれば、透明導電膜付きガラス電極間に狭持して測定した室温(23℃)におけるイオン伝導率が1.0×10-6以上であり、上記電極間に狭持して測定した70℃におけるイオン伝導率が1.0×10-5以上であるイオン伝導体を提供することも可能である。また、本発明を適用すれば、上記電極間に狭持して測定した垂直方向のイオン伝導率が、少なくとも一部の温度域(例えば少なくとも23℃)において、上記垂直方向と直交する方向(水平方向)のイオン伝導率よりも高いイオン伝導体を提供できる。
本発明のイオン伝導体は、リチウムイオン電池、燃料電池等各種デバイスへの適用が可能である。例えば色素増感型太陽電池では不揮発性のイオン伝導体が求められているが、本発明のイオン伝導体は十分に要求特性を満たす。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。まず、イオン伝導率等の測定方法について説明する。
(垂直方向イオン伝導率の測定方法)
図1に、イオン伝導率の測定に用いたセルを示す。このセルを作製するために、まず、アルゴングローブボックス内にて、予め透明導電膜としてITO(indium tin oxide)膜3を形成した縦25mm、横20mmのガラス板(ITO膜付きガラス電極)4に、試料充填部1として直径(r)6mmの円を打ち抜いた厚み24μmの粘着剤付きポリイミドフィルム(図2参照)をスペーサー2として貼り付けた。次いで、試料充填部1に測定の対象とする試料(イオン伝導体)を配置して等方性液体状態となるまで加熱し、その後、もう1枚のITO膜付きガラス電極4をITO膜3が充填部1側となるように配置した。
図1に、イオン伝導率の測定に用いたセルを示す。このセルを作製するために、まず、アルゴングローブボックス内にて、予め透明導電膜としてITO(indium tin oxide)膜3を形成した縦25mm、横20mmのガラス板(ITO膜付きガラス電極)4に、試料充填部1として直径(r)6mmの円を打ち抜いた厚み24μmの粘着剤付きポリイミドフィルム(図2参照)をスペーサー2として貼り付けた。次いで、試料充填部1に測定の対象とする試料(イオン伝導体)を配置して等方性液体状態となるまで加熱し、その後、もう1枚のITO膜付きガラス電極4をITO膜3が充填部1側となるように配置した。
こうして得た伝導率測定用セルは、一旦、室温(23℃)まで冷却し、室温で、または測定温度にまで昇温してから、インピーダンス測定装置(SEIKO EG&G製263Aポテンショスタットと5210 ロックインアンプ)を用いた複素インピーダンス法により、高周波数側の円弧と低周波数側の直線との交点の実数成分インピーダンスを求め、以下の式に基づいて伝導率σv(S/cm)を算出した。
σv=d/(R×A)
d:スペーサー厚み(cm)、R:実数成分インピーダンス(Ω)、A:極板面積(cm2)
σv=d/(R×A)
d:スペーサー厚み(cm)、R:実数成分インピーダンス(Ω)、A:極板面積(cm2)
(水平方向イオン伝導率の測定方法)
図3に、水平方向イオン伝導率の測定に用いた櫛型電極を示す。この櫛型電極11は、ガラス板上に、ITOを厚み30nmとなるように蒸着し、さらにAgとAuとからなる合金を総厚みが0.8μmとなるように蒸着することにより形成した。互いに対向するように配置した櫛型電極11は、それぞれ3つの櫛部12を有し、各櫛部12の幅Wは2mm、櫛部12の間隔Dは3mm、対向する櫛部の重複幅Vは7mmとした。この櫛型電極11の櫛部12の間に、測定対象とする試料を等方性状態となるように加熱してから塗布し、この試料を覆う領域に縦10mm、横25mmのガラス板を重ねてこの領域(測定領域13)でのみ試料を保持した。
図3に、水平方向イオン伝導率の測定に用いた櫛型電極を示す。この櫛型電極11は、ガラス板上に、ITOを厚み30nmとなるように蒸着し、さらにAgとAuとからなる合金を総厚みが0.8μmとなるように蒸着することにより形成した。互いに対向するように配置した櫛型電極11は、それぞれ3つの櫛部12を有し、各櫛部12の幅Wは2mm、櫛部12の間隔Dは3mm、対向する櫛部の重複幅Vは7mmとした。この櫛型電極11の櫛部12の間に、測定対象とする試料を等方性状態となるように加熱してから塗布し、この試料を覆う領域に縦10mm、横25mmのガラス板を重ねてこの領域(測定領域13)でのみ試料を保持した。
こうして得た伝導率測定用セルについて、γ−ブチロラクトンに1mNのLiN(CF3SO2)2(キシダ化学製)を含む非水電解液を参照試料としてセル定数を求めた。参照試料の室温(23℃)におけるイオン伝導率は、電気伝導率計(東亜電波工業製「CM−20E」)および電気伝導率セル(東亜電波工業製「CG−511B」)を用いて測定したところ、3.4×10-5S/cmであった。この参照試料について、上記測定用セルを用いて測定した抵抗値Rref(Ω)と参照試料の上記伝導率κrefとから、以下の式(数1)に基づき、セル定数Kc(cm-1)を求めた。
Kc=Rref×κref (数1)
そして、このセル定数Kcと、測定対象とする試料について測定用セルにより得た抵抗値Rsol(Ω)とから、以下の式(数2)に基づき、伝導率σpを算出した。この測定には、垂直方向イオン伝導率の測定で用いたインピーダンス測定装置を用いた。
そして、このセル定数Kcと、測定対象とする試料について測定用セルにより得た抵抗値Rsol(Ω)とから、以下の式(数2)に基づき、伝導率σpを算出した。この測定には、垂直方向イオン伝導率の測定で用いたインピーダンス測定装置を用いた。
σp=Kc/Rsol (数2)
(転移温度の測定方法)
液晶状態と結晶状態との転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。DSC用サンプルパンを、ホットプレートを用いて等方性液体状態となるまで加熱し、その後、液体窒素を用い、約−50℃まで急冷した(冷却速度:約50℃/分)。こうして作製したサンプルについて、DSC装置を用い、昇温速度5℃/分の条件で結晶状態から液晶状態へと転移する温度等を測定した。
液晶状態と結晶状態との転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。DSC用サンプルパンを、ホットプレートを用いて等方性液体状態となるまで加熱し、その後、液体窒素を用い、約−50℃まで急冷した(冷却速度:約50℃/分)。こうして作製したサンプルについて、DSC装置を用い、昇温速度5℃/分の条件で結晶状態から液晶状態へと転移する温度等を測定した。
(配向状態の測定方法)
偏光顕微鏡(オリンパス製)を用い、垂直方向のイオン伝導率の測定に作製した測定用セルを観察した。配向状態は、オルソスコープ観察およびコノスコープ観察により行った。観察は、室温、30℃、および30℃から10℃ずつ昇温した温度において行った。昇温にはメトラー製ホットステージを用いた。
偏光顕微鏡(オリンパス製)を用い、垂直方向のイオン伝導率の測定に作製した測定用セルを観察した。配向状態は、オルソスコープ観察およびコノスコープ観察により行った。観察は、室温、30℃、および30℃から10℃ずつ昇温した温度において行った。昇温にはメトラー製ホットステージを用いた。
(実施例1)
まず、式(化1)においてR1の炭素数が10に相当する4’−デシルオキシビフェニル−4−カルボニトリルを合成した。4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル10g、1−ブロモデカン13.5g、炭酸カリウム13.26gを30cm3のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、90℃で5時間加熱した後、室温まで冷却した。得られた混合物をジエチルエーテルで洗浄しながら吸引ろ過した。ろ過液に水20cm3を加え、1MのNaOH水溶液、飽和NH4Cl水溶液、水の順で洗浄した。こうして得た有機層を、飽和食塩水、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮した。その後、メタノールを用いて2度の再結晶を行い、さらに50℃で12時間真空乾燥した。こうして、白色粉として、69%の収率で4’−デシルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(10OCB)を得た。
まず、式(化1)においてR1の炭素数が10に相当する4’−デシルオキシビフェニル−4−カルボニトリルを合成した。4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル10g、1−ブロモデカン13.5g、炭酸カリウム13.26gを30cm3のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、90℃で5時間加熱した後、室温まで冷却した。得られた混合物をジエチルエーテルで洗浄しながら吸引ろ過した。ろ過液に水20cm3を加え、1MのNaOH水溶液、飽和NH4Cl水溶液、水の順で洗浄した。こうして得た有機層を、飽和食塩水、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮した。その後、メタノールを用いて2度の再結晶を行い、さらに50℃で12時間真空乾燥した。こうして、白色粉として、69%の収率で4’−デシルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(10OCB)を得た。
上記で得た10OCB1.25g(3.73×10-3モル)とともに、式(化1)においてR1の炭素数が7に相当する4’−ヘプチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(7OCB,ワコーケミカル製)1.10g(3.75×10-3モル)、式(化1)においてR1の炭素数が8に相当する4’−オクチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(8OCB,ワコーケミカル製)1.15g(3.75×10-3モル)を準備した。
これらを混合し、アルゴングローブボックス内のホットプレート上で100℃に加熱して液体とし、これを室温まで自然冷却した。こうして得た液晶性分子の混合物について、上記測定法により転移温度を測定したところ、結晶状態と液晶状態との間の転移温度は39℃であった。また、偏光顕微鏡およびDSCを用いた測定により、この液晶性分子の混合物は、上記転移温度を超えた状態ではネマチック相を示し、さらに79℃で等方性液体状態となることが確認できた。
上記混合物に、リチウム塩LiN(CF3SO2)2(キシダ化学製)を濃度が1.2モル%となるように添加して100℃で溶解させ、等方性状態のイオン伝導体を得た。このイオン伝導体について、上記測定法により垂直方向のイオン伝導率を測定した。この際、測定用セルは自然冷却(冷却速度5〜10℃/分)とした。偏光顕微鏡を用いた上記測定によれば、50〜70℃において液晶性分子がガラス電極に対して垂直に配向していることが確認できた。
(実施例2)
伝導率の測定用セルを自然冷却ではなく急冷(冷却速度:約50℃/分)した以外は、実施例1と同様にして室温における垂直方向のイオン伝導率を測定した。急冷は、室温のステンレス板に押しつけることにより行った。
伝導率の測定用セルを自然冷却ではなく急冷(冷却速度:約50℃/分)した以外は、実施例1と同様にして室温における垂直方向のイオン伝導率を測定した。急冷は、室温のステンレス板に押しつけることにより行った。
(実施例3)
液晶性分子として、式(化1)においてR1の炭素数が5に相当する4’−ペンチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(5OCB,ワコーケミカル製)1.42g(5.35×10-3モル)、式(化1)においてR1の炭素数が7に相当する4’−ヘプチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(7OCB,ワコーケミカル製)1.58g(5.39×10-3モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶性分子の混合物を得た。実施例1と同様の測定により、この混合物は、21℃で結晶状態から液晶状態(ネマチック相)へと転移し、71℃で等方性液体状態となることが確認できた。
液晶性分子として、式(化1)においてR1の炭素数が5に相当する4’−ペンチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(5OCB,ワコーケミカル製)1.42g(5.35×10-3モル)、式(化1)においてR1の炭素数が7に相当する4’−ヘプチルオキシビフェニル−4−カルボニトリル(7OCB,ワコーケミカル製)1.58g(5.39×10-3モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶性分子の混合物を得た。実施例1と同様の測定により、この混合物は、21℃で結晶状態から液晶状態(ネマチック相)へと転移し、71℃で等方性液体状態となることが確認できた。
さらに実施例1と同様にリチウム塩を添加し、イオン伝導率を測定した。ただし、実施例3では、水平方向のイオン伝導率も測定した。垂直方向のイオン伝導率とともに、伝導率の温度依存性を図4に示す。
偏光顕微鏡を用いた測定により、室温および30〜60℃における観察では、液晶性分子がガラス電極に対して垂直に配向していることが確認できた。
(比較例1)
上記イオン伝導体に代えて、上記リチウム塩0.01gを4−ヒドロキシベンゼン酸−4−オクチル−フェニルエステル(東京化成製、融点70℃)0.99gに溶解させたイオン伝導体を用いた以外は、実施例1と同様にして、各特性を測定した。このイオン伝導体では、電極に対する垂直配向性は確認できなかった。
上記イオン伝導体に代えて、上記リチウム塩0.01gを4−ヒドロキシベンゼン酸−4−オクチル−フェニルエステル(東京化成製、融点70℃)0.99gに溶解させたイオン伝導体を用いた以外は、実施例1と同様にして、各特性を測定した。このイオン伝導体では、電極に対する垂直配向性は確認できなかった。
結晶状態から液晶状態への転移点、および垂直方向のイオン伝導率を表1にまとめて示す。
表1に示したように、急冷により過冷却状態とした実施例2では、転移温度以下の温度(室温)における垂直方向の伝導率が徐冷して得た状態(実施例1)よりも向上した。実施例3からは、高温域とともに室温でも高い伝導率が得られた。
本発明のイオン伝導体は、室温付近から高温に至るまで高いイオン伝導率を有するため、特に使用温度域が広いデバイスに適した特性を有する。本発明のイオン伝導体は、不揮発性であって、電極間の抵抗値増大の原因となる配向膜を要することなく配向性を発現するため、実用面で重要となる電極間の伝導率を高く維持できる。本発明のイオン伝導体は、リチウムイオン電池、燃料電池に代表される各種デバイスの材料として大きな利用価値を有する。
1 試料充填部
2 スペーサー
3 ITO膜
4 ITO膜付きガラス電極
11 櫛型電極
12 櫛部
13 測定領域
2 スペーサー
3 ITO膜
4 ITO膜付きガラス電極
11 櫛型電極
12 櫛部
13 測定領域
Claims (6)
- 電解質と、下記式(化1)または式(化2)で示される少なくとも2種類の分子とを含むイオン伝導体。
- R1が炭素数7以上10以下の直鎖アルキル基である式(化1)で示される分子を含む請求項1に記載のイオン伝導体。
- R1が炭素数2以上6以下の直鎖アルキル基である式(化1)で示される分子および式(化2)で示される分子から選ばれる少なくとも一方をさらに含む請求項2に記載のイオン伝導体。
- 前記少なくとも2種類の分子が液晶状態と結晶状態とを転移する温度が、−20〜80℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン伝導体。
- 等方性状態となる温度から液晶状態と結晶状態とを転移する温度未満の温度にまで急冷することにより、過冷却状態とした請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン伝導体。
- 前記電解質の含有率が1〜30モル%であり、前記分子の含有率が70〜99モル%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオン伝導体。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016139584A (ja) * | 2015-01-29 | 2016-08-04 | Tdk株式会社 | イオン導電性固体電解質 |
CN113299988A (zh) * | 2020-02-21 | 2021-08-24 | 广州天赐高新材料股份有限公司 | 一种原位聚合电解液及其使用方法和用途 |
CN113299982A (zh) * | 2020-02-21 | 2021-08-24 | 广州天赐高新材料股份有限公司 | 一种原位聚合电解液、采用其制备原位全固态电池的方法及原位全固态电池 |
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2004
- 2004-02-26 JP JP2004052024A patent/JP2005243449A/ja active Pending
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JP2016139584A (ja) * | 2015-01-29 | 2016-08-04 | Tdk株式会社 | イオン導電性固体電解質 |
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