JP2005238081A - スクラバ - Google Patents

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重之 秋山
Kyoji Hirano
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Abstract

【課題】 スクラバ物質の状態やその適切な交換時期を正確かつ容易に把握することができるスクラバを提供すること。
【解決手段】 ケース12内に不揮発性酸を含むスクラバ物質40を設けてなるスクラバ8において、前記ケース12の全部または一部を透明または半透明に形成するとともに、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤と、還元剤とをスクラバ物質40に含ませてある。
【選択図】 図1

Description

この発明は、例えば、ボイラなどから排出される燃焼排ガスの一部をサンプルガスとして採取してガス分析計に供給する際に、サンプルガスの採取点等、ガス分析計の上流側に配置されて用いられるスクラバに関する。
一般に、各種燃焼プラントの排ガスの一部をガス分析計に供給し、排ガス中の特定成分濃度等を測定する場合、排ガス中のダスト等の妨害物質や干渉成分を予め除去するように、測定対象に応じた種々の前処理装置がガス分析計の上流側に設けられる。
ところで、例えば、ゴミ焼却炉排ガスやガラス溶融炉排ガスなどの排ガスには、妨害物質として、ハロゲンガス(塩素、臭素等)やハロゲン化合物(主に、塩化水素や臭素水素などのハロゲン化水素等)などの腐食性成分が含まれている。そして、これらのような排ガスを測定する場合、前処理を施さないと、上記腐食性成分がガス分析計の測定セルや配管、金属部品を腐食させ、その結果、ガス流路の閉塞、測定セルの汚れによるゼロドリフト、各部の材質変化等、ガス分析計に不具合を生じさせる。
そこで、腐食性成分を含む排ガスの測定には、例えば特許文献1に示すような前処理装置が用いられる。この前処理装置は腐食性ガス除去剤を備え、この腐食性ガス除去剤は、腐食性成分と反応して不溶性又は難溶性の塩を形成する金属と不揮発性酸とで形成される塩と、不揮発性酸との混合物を、粘結性の強い多孔質物質に含浸乾燥させることにより形成されている。
上記前処理装置によれば、腐食性ガス除去剤によってサンプルガス中の腐食性成分を吸着除去することができ、従って、ガス分析計を長期にわたって安定に作動させることができる。また、上記前処理装置は不揮発性酸を使用しているので、サンプルガス中の測定対象物質(例えば、SO2 、NOX 、CO2 、CO、O2 等)の吸着、反応による損失が少なく、後段のガス分析計の測定精度が向上する。
特公昭61−37580号公報
ところで、前記腐食性ガス除去剤は、多孔質物質に含浸された前記塩および不揮発性酸との混合物が消費され、必要とされる機能が十分に発揮されなくなれば、新しいものと交換しなければならない。この場合、腐食性ガス除去剤の交換が早すぎると、それだけコストや資源が無駄になり、また、産業廃棄物の発生量の増加にもつながるので、腐食性ガス除去剤の適切な交換時期を正確に把握した上でその交換を行うことが重要になる。
そのために、サンプルガスに含まれる腐食性成分の濃度とサンプルガスの吸引流量との積算値から腐食性ガス除去剤のおおよその寿命を算出して、交換することが考えられるが、実際には腐食性成分の濃度が大きく変動することなどがあり、算出した腐食性ガス除去剤の寿命が正確さに欠けるという問題がある。
また、管内に採取したガス中に所定成分が含まれているかどうかを検知するガス検知管法により、スクラバカラムを経たサンプルガス中に腐食性成分が含まれているかどうかを検知することも考えられるが、ガス検知管法による検知は、共存ガスの影響を大きく受けると共に、サンプルガス中に水分が多く、ガス検知管の取り扱いが難しいので、熟練した技術を要するという問題がある。
さらに、前記腐食性ガス除去剤に、吸湿量に応じてピンクあるいはレッドに変色するブルーのシリカゲルを混合しておき、このシリカゲルの色変化を腐食性ガス除去剤の劣化判定に用いることも考えられる。前記ブルーのシリカゲルは、一般的に乾燥剤の吸湿性能の劣化を判定するインジケータとして用いられており、シリカゲルに塩化コバルトあるいは有機色素を含浸させたものである。しかし、ブルーのシリカゲルは、上記排ガス中に含まれるSO2 やNO2 などの測定対象成分をも吸着・除去する欠点をもっており、ガス分析計の前処理装置に使用することは全く適していない。
この発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、スクラバ物質の状態やその適切な交換時期を正確かつ容易に把握することができるスクラバを提供することである。
上記目的を達成するために、この発明のスクラバは、ケース内に不揮発性酸を含むスクラバ物質を設けてなるスクラバにおいて、前記ケースの全部または一部を透明または半透明に形成するとともに、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤と、還元剤とをスクラバ物質に含ませてあることを特徴としている(請求項1)。
また、上記目的を達成するために、この発明のスクラバは、ケース内に不揮発性酸を含むスクラバ物質を設けてなるスクラバにおいて、前記ケースの全部または一部を透明または半透明に形成するとともに、前記スクラバ物質として、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤を含むものと、還元剤を含むものとが用いられていることを特徴としている(請求項2)。
そして、上記スクラバにおいて、ケース内で生じた凝縮液が下流側へ流出するのを防止する流出防止機構をケースに内蔵させていることが好ましい(請求項3)。
具体的には、着色剤は、炭酸銀、硝酸銀、りん酸銀などの銀塩であり(請求項4)、還元剤は、CuまたはSnを主成分としている(請求項5)。
さらに、上記いずれのスクラバにおいても、スクラバ物質全体の還元剤の含有比率を大きくし、還元剤と反応する成分を多く含むサンプルガスから腐食性成分を除去するように構成してあってもよい(請求項6)。
請求項1および2に係る発明では、スクラバ物質に含まれる着色剤とサンプルガス中の腐食性成分とが反応するに伴い、有色の塩がスクラバ物質の表面に析出し、その析出量に比例するように、スクラバ物質の表面が変色する。従って、全部または一部が透明または半透明に形成されたケースを通してその内部に設けられたスクラバ物質の表面の色を目視し、その色を目安とすることにより、スクラバ物質の劣化の進行度合いを的確に判定することができ、スクラバ物質の状態や適切な交換時期を正確かつ容易に把握することができる。
そのため、サンプルガス中の干渉成分を除去するという機能を十分に発揮しなくなった状態のスクラバが使用されるということが防止され、それに伴い、スクラバを前処理装置として備えたガス分析計による分析結果の信頼性が大いに向上する。その上、スクラバの早過ぎる交換をなくすことができ、それだけコストや資源を無駄にせず有効に利用することができ、また、産業廃棄物の発生量が可及的に低く抑えられ、ひいては自然環境への負荷影響を軽減することができる。
また、NH3 ガス検知管やその他特別で大掛かりな構成を必要としないので、非常に低コストでかつ簡易に製造することができる。
さらに、請求項3に係る発明によれば、流出防止機構を設けたことによって以下のような効果が得られる。すなわち、スクラバのケース内にはスクラバ物質が設けられ、スクラバ物質にサンプルガスが接触することにより、サンプルガス中の腐食性成分が除去されるが、例えば、サンプルガス中に水分が多く含まれていると、サンプルガスがスクラバ物質に接触することによって生成される種々の不純物がサンプルガス中の水分に溶けたところの凝縮液が生じる。そして、この凝縮液がスクラバの後段にある加熱配管に流入すると、加熱配管の内壁に凝縮液中の不純物が堆積してしまい、ひいては配管の詰まりが生じ、前記加熱配管の下流側にあるガス分析計へのサンプルガスの供給に支障をきたして、測定が不可能になるというおそれがある。
そこで、スクラバの下流側に、凝縮液が加熱配管に流入するのを防止するためのドレンポットを設けることが考えられるが、この場合、ドレンポットを設置するためのスペースが必要となって装置全体が大型化し、また、その製造コストも著しく上昇するという問題が新たに生じる。
しかし、請求項3に係る発明によれば、流出防止機構を設けているので、ケース内で生じた凝縮液が下流側に流出することが確実に防止される。従って、ケース後段の配管内での詰まりを防止することができるとともに、ケース内で生じた種々の生成物が溶けた凝縮液をケース内に確実に留めておくことができ、ケースひいてはスクラバ全体の取り扱いにおける安全性が大いに向上する。また、流出防止機構をケースに内蔵させるので、構成全体がコンパクトになる。
また、請求項4に係る発明では、例えば市販の銀塩を着色剤として用いることができ、同じく、請求項5に係る発明では、例えば市販の還元剤を用いることができる。従って、それぞれの発明によれば、簡単かつ安価に製造することができるスクラバが得られる。
さらに、請求項6に係る発明では、ケース内に存在する還元剤の量が増え、これにより、還元剤との反応比率が高い酸化性腐食ガスなどのサンプルガス中の腐食性成分の除去能力を高めることができる。
図1〜図3は、この発明の第1実施例を示す。
まず、図1は、この発明に係るスクラバを組み込んだガス分析システムの一例を示す図である。この図において、1は、ボイラなどから排出された排ガスGが内部を流れる煙道で、この煙道1に、ガス採取部としての耐腐食性素材よりなるガスサンプリング用のプローブ管2が挿入され、プローブ管2により、排ガスGの一部がサンプルガスSとして採取される。
そして、プローブ管2の下流側には、プローブ管2によって採取したサンプルガスSからダストを除去するためのフィルタ3が設けられている。このフィルタ3は、耐腐食性素材よりなるケース4と、このケース4内に収容され、サンプルガスS中のダストを捕集するフィルタエレメント5と、ケース4内を適宜の温度(例えば150〜200℃)に加熱するための例えば適宜の加熱用ヒータよりなる加熱手段(図示していない)とを備えている。また、このフィルタ3は、その内部においてサンプルガスS中の水分が結露することを防止するために、例えば断熱カバーによりなる防滴ケース6によって覆われている。
さらに、フィルタ3の下流には、流路7を介してスクラバ(詳細は後述する)8が接続され、このスクラバ8の下流側に、流路9を介してガス分析計10が接続されている。このガス分析計10は、サンプルガスS中の例えばSO2 、NOX 、CO2 、CO、O2 を測定対象成分として測定するように構成されており、流路9中には、ガス分析計10における分析に支障をきたす妨害物質や干渉成分がサンプルガスS中に含まれている場合にそれらを除去するスクラバ(図示していない)が設けられている。
また、前記流路7、9は、例えば、加熱配管よりなり、それぞれ内部の温度が110〜120℃程度になるように構成されている一方、プローブ管2からガス分析計10までの間に形成されるガスサンプリング流路11の適所またはガス分析計10の下流側には、サンプルガスSを常に一定量吸引することができる吸引ポンプ(図示していない)が設けられている。さらに、サンプルガスS中に水分が多量に含まれる場合には、流路7とガスサンプリング流路11の間にドレン分離器や電子冷却器等の水分除去機構を設置して水分を予め除去する構成も考えられる(図示していない)。
そして、この実施例のガス分析システムは、スクラバ8の構成に特徴を有している。以下、図2および図3を参照しながら、スクラバ8の特徴的構成について説明する。
図2および図3において、12は、スクラバカラムとしてのケースであり、このケース12は、透明または半透明な耐熱性の樹脂(例えば、ポリプロピレンなど)によって形成され、上下方向において対称な構造を有している。
詳しくは、ケース12は、ほぼ円筒状の本体部13の上下両端にそれぞれ径縮小部分14,15を介して上端部16および下端部17が連設されている筒体18と、この筒体18の上下両端部16,17に着脱自在に取り付けられる同一構造のキャップ19,20とを備えている。
すなわち、筒体18の上下両端部16,17の外周面に雄ねじ部21,22が設けられており、各雄ねじ部21,22に螺合する雌ねじ部23,24がキャップ19,20の内周面に設けられている。また、各雌ねじ部23,24にはそれぞれ、径縮小部分25,26を介して管部27,28が連設されているとともに、キャップ19,20の外周面には、筒体18へのキャップ19,20の螺着作業の際に滑り止めとなる突条29,30が複数設けられている。
さらに、ケース12内の下部には、ケース12内で生じた凝縮液LとサンプルガスSとを分離する縦断面視がほぼエの字形状の分離部材31が配置され、この分離部材31を設けることにより、ケース12の下部に凝縮液Lが溜まる液溜め部32が形成されるとともに、ケース12内で生じた凝縮液Lが下流側へ流出するのを防止する流出防止機構33をケース12に内蔵させている。なお、前記流出防止機構33は、ケース12の下流部と分離部材31とからなる。
すなわち、分離部材31は、内部にガス通路34が設けられ、サンプルガスSを内部に導入するためのガス導入口35が側壁上部に複数形成されたほぼ円筒状の筒部36を備えている。37はこの筒部36の上側端部を閉塞する閉塞部、38は筒部36の下部周縁に連設されたフランジ部である。
また、筒部36の下側端部は開放されており、それに伴って、筒部36の内部に設けられたガス通路34は、キャップ20の管部28内へと続くように構成されており、さらに、ガス導入口35は、筒部36の側壁において、液溜め部32よりも上方となる位置(換言すれば液溜め部32に溜められる凝縮液Lの水位よりも上側となる位置)に設けられている。
ここで、閉塞部37は、その外径が筒部36の外径よりも大きく、筒体18の下端部17の内径よりも小さくなるように形成されている。また、フランジ部38は、筒部36の下端部に設けられ、その外径が筒体18の下端部17(雄ねじ部22)の内径より大きく、下端部17の外径あるいはキャップ20の雌ねじ部24の内径よりも小さくなるように形成されている。
さらに、フランジ部38は、接着剤の塗布など適宜の手段により、筒体18の下端にその上面が接着され、キャップ20の径縮小部分26の上面にその下面が接着される。そして、このようにケース12の下部に密着固定されるフランジ部38は、筒体18の内壁(詳しくは筒体18の下端部17の内壁)とによって前記液溜め部32を形成する。
そして、図2に示すように、スクラバ物質40が、筒体18の本体部13内に、本体部13内部の上、下に設けられる二つの網状の押さえ部材39a,39bによって挟まれた状態で保持されている。この場合、下側の押さえ部材39bは、分離部材31の閉塞部37の上面に当接した状態となっている。また、筒体18内におけるスクラバ物質40を収容するための空間(二つの押さえ部材39a,39bの間の空間)の体積に対する分離部材31を収容するための空間(下側の押さえ部材39bより下側の空間)の体積の比が、おおよそ5〜10%となるように構成してある。
前記スクラバ物質40は、サンプルガスSが接触すると、サンプルガスS中に含まれる測定対象成分(SO2 、NOX 、CO2 、CO、O2 )には影響を与えず、腐食性成分を吸着・捕集するように構成されている。詳しくは、粘結性の強い不活性で多孔質の無機担体(詳細は後述する)に、不揮発性酸と、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤と、還元剤との混合物を含浸(分散)乾燥させてスクラバ物質40を形成し、本体部13内に収容している。
この実施例では、無機担体として、単位質量当たりの表面積が14.0cm2 /g以上、単位質量当たりの細孔容積が0.7mL/g以上である白色のシラス系天然軽石(例えば、大江化学工業製の商品名パミスターの直径1〜6mmの各種粒度のもの)が使用されている。なお、無機担体は、色が薄く、粒度がほぼ均一となっていることが望ましい。
また、不揮発性酸として、濃度が2〜20重量%の希りん酸液(H3 PO4 )が用いられている。さらに、着色剤として炭酸銀が、還元剤としてCu2 Oがそれぞれ用いられている。
次に、上記構成のガス分析システムの作動について説明する。
まず、ボイラの煙道1を構成する壁体にプローブ管2を取り付けた状態で吸引ポンプを作動させると、煙道1を流れる排ガスGの一部がプローブ管2によってサンプリングされ、サンプルガスSとなってプローブ管2内を下流側に進み、フィルタ3内に入る。このフィルタ3内に入ったサンプルガスSは、フィルタ3内のフィルタエレメント5を通過し、この通過の際、サンプルガスS中のダストがフィルタエレメント5に捕集され、サンプルガスSからダストが除去される。
続いて、ダストが除去されたサンプルガスSは、流路7を経てスクラバ8のケース12内に入る。このケース12内に入ったサンプルガスSは、スクラバ物質40と接触しながら下流側へ進む。このとき、サンプルガスS中の測定対象成分であるSO2 、NOX 、CO2 、CO、O2 は、反応したり吸着されたりすることなくケース12内を通過するが、サンプルガスS中の腐食性成分は、スクラバ物質40に吸着される。
詳しくは、腐食性成分は、ハロゲンガスと、ハロゲン化合物と、硫化水素とに分けられ、そのうち、ハロゲンガスは、スクラバ物質40に含まれる還元剤と下記(1)式に示すように反応するとともにスクラバ物質40に吸着される。なお、この(1)式に示す反応は、酸化性ガスであるハロゲンガスの還元反応によるものである。
2 +Re→2X- +OX …(1)
ここで、Xはハロゲン、Reは還元体物質、OX は酸化体物質を示す。
また、ハロゲン化合物および(1)式に示すように還元されたハロゲンガスは、スクラバ物質40に含まれる着色剤としての炭酸銀と下記(2)式に示すように反応する一方、硫化水素は、前記炭酸銀と下記(3)式に示すように反応する。
- +Ag+ →AgX↓ …(2)
2 S+2Ag+ →Ag2 S↓+2H+ …(3)
上記(2)式および(3)式に示す反応は、沈殿反応に基づくもので、(2)式に示す反応によって生成されたハロゲン化銀(AgX)である銀塩は、光により分解され、銀が遊離することで黒色を呈するようになり、また、(3)式に示す反応によって生成された銀塩(Ag2 S)はもとより黒色である。
さらに、スクラバ物質40に、吸湿性をもった不揮発性酸である希りん酸液が含まれており、この希りん酸液によりケース12内にて凝縮液Lが生成されるが、生成された凝縮液Lは流出防止機構33によりトラップされ、液溜め部32に溜められる。このことは、サンプルガスS中の水分量が多い場合にケース12内で生じる凝縮液Lについても同様である。
上記のように、ケース12内を通過し、腐食性成分が除去されたサンプルガスSは、流路9を通り、この流路9中に設けられたスクラバによって、上記スクラバ8では除去されなかったNH3 やSO3 塩ミスト(SO3 と金属とのミスト状反応生成物)などの干渉成分等が除去され、その後、ガス分析計10に供給され、サンプルガスS中の測定対象成分が測定される。なお、ガス分析計10を経たサンプルガスSは、適宜に処理される。
上記構成からなるガス分析システムでは、以下のような効果が得られる。すなわち、ケース12内で生成される二種の銀塩(ハロゲン化銀およびAg2 S)は、中性雰囲気では、測定対象成分であるSO2 ガスやNOX ガスなどと反応して亜硫酸銀、亜硝酸銀を生成し、このように測定対象成分が反応したりスクラバ物質40に吸着されたりすると、測定誤差や応答遅れが生じることになる。しかし、この実施例では、スクラバ物質40に不揮発性酸である希りん酸液を含ませて、ケース12内を酸性雰囲気とし、測定対象成分の反応や吸着、溶解による損失を可及的に低く抑えているので、上記のような測定誤差や応答遅れが生じない。
また、スクラバ8内のスクラバ物質40に含まれる着色剤とサンプルガスS中の腐食性成分とが反応するに伴い、黒色を呈する上記2種の銀塩がスクラバ物質40の表面に析出し、その析出量に比例するように、初期状態では薄い色(この実施例では白色)を呈するスクラバ物質40の表面が着色され、ほぼ灰色となった後、さらに黒色に近づく。従って、透明または半透明なケース12を通してその内部に設けられたスクラバ物質40の表面の色を見て、その色を目安とすることにより、スクラバ物質40の劣化の進行度合いを目視によって把握することができ、判定することができる。
ところで、通常、スクラバ8のケース12内に設けられたスクラバ物質40は、その全体が一様に劣化するのではなく、上流側にあるものから徐々に劣化し、それに伴って、スクラバ物質40の表面の変色も上流側から始まるので、そのことを考慮して、スクラバ物質40の表面の色からその寿命などを判断すればよく、例えば、下流側(押さえ部材39b側)の端部から上流側(押さえ部材39a側)に向けて全体の約1/3の範囲にあるスクラバ物質40が灰色になれば寿命と判断して新たなスクラバ8に取り替えるなどの処理を行うことができる。
さらに、スクラバ物質40と腐食性成分との反応は常温で行われ、ケース12内を加熱する必要がない。そのため、例えば、ケース12の周囲にヒータなどの加熱手段を配置したことにより、ケース12内部を目視することが困難になるというようなおそれがなく、その上、スクラバ8の構成を極めてシンプルにすることができる。
また、スクラバ物質40に用いた希りん酸は不揮発性酸であり、サンプルガスS中の水分を吸湿し、その吸水量が多いほど腐食性ガス成分の吸着及び反応速度を早める作用がある。
ここで、この発明のスクラバの性能評価を行うための実験およびその結果について説明する。
まず、スクラバ物質40の形成方法について説明すると、5〜30重量%の濃度の希りん酸(不揮発性酸)と炭酸銀(着色剤)とCu2 O(還元剤)との混合物の中に無機担体を浸漬して30分静置し、その後85℃の環境下に5時間以上置いて乾燥させる。これにより、スクラバ物質40が形成される。そして、このスクラバ物質40の他に、スクラバ物質40と比べて炭酸銀(着色剤)を含まない点で異なるスクラバ物質(以下、還元用スクラバ物質という)と、Cu2 O(還元剤)を含まない点で異なるスクラバ物質(以下、着色用スクラバ物質という)とを形成する。すなわち、5〜30重量%の濃度の希りん酸(不揮発性酸)とCu2 O(還元剤)との混合物の中に無機担体を浸漬して30分静置し、その後85℃の環境下に5時間以上置いて乾燥させることにより、還元用スクラバ物質を形成する。また、5〜10重量%の濃度の希りん酸(不揮発性酸)と炭酸銀(着色剤)との混合物の中に無機担体を浸漬して30分静置し、その後85℃の環境下に5時間以上置いて乾燥させることにより、着色用スクラバ物質を形成する。
そして、上記3種のスクラバ物質を図2に示すようにケース12内に充填し、その状態で、スクラバ8内に、塩化水素、塩素、臭化水素、臭素を含む200ppmの各試験ガスを0.5L/minの割合で20分間通過させ、その後、スクラバ8を通過したガスを、酸性になると赤色を呈するウエットpH試験紙に受けるとともにSO2 分析計に供給し、そのガス中における酸性ガスの有無とSO2 の吸着とについて調べた。すなわち、スクラバ8に、還元用スクラバ物質のみを充填した場合(1)と、着色用スクラバ物質のみを充填した場合(2)と、スクラバ物質40のみを充填した場合(3)に設定した。その結果を下記表1に示す。
Figure 2005238081
上記表1から明らかなように、スクラバ8の性能は、還元剤を含み着色剤を含まない還元用スクラバ物質を用いた場合には、ハロゲンガスである塩素および臭素の吸着反応が良好となり、着色剤を含み還元剤を含まない着色用スクラバ物質を用いた場合には、ハロゲン化合物である塩化水素および臭化水素の吸着反応が良好となり、還元剤および着色剤の両方を含むスクラバ物質40を用いた場合には、塩化水素および塩素の吸着反応が良好で、臭化水素および臭素の吸着反応は普通となった。また、いずれの場合にも、SO2 の吸着はほとんど認められなかった。又、これらのハロゲン化合物と還元剤、着色剤との反応は水分の共存によってより早められるので、水分濃度の高い方が有利である。
上述の実施例では、無機担体に、不揮発性酸と着色剤と還元剤との混合物を含浸乾燥させたスクラバ物質40を用いているが、本発明は、このような構成に限られず、例えば、スクラバ物質として、無機担体に、不揮発性酸と着色剤との混合物を含浸乾燥させたスクラバ物質と、無機担体に、不揮発性酸と、還元剤との混合物を含浸乾燥させたスクラバ物質との2種類を用意し、本体部13内に上記2種類のスクラバ物質を分け隔てた状態で設けるようにしてもよい。そのように構成されたスクラバ41について、図4を参照しながら以下に説明する。
すなわち、図4はこの発明の第2実施例を示すもので、この図において、40aは第1スクラバ物質で、無機担体(詳細は後述する)に、不揮発性酸と、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤との混合物を含浸(分散)乾燥させて形成されている。また、40bは第2スクラバ物質で、無機担体に、不揮発性酸と還元剤との混合物を含浸(分散)乾燥させて形成されている。
また、42、43はそれぞれ、筒体18内の二つの押さえ部材39a,39bの間に適宜の間隔をおいて配置された網状の仕切り部材であり、押さえ部材39a、39b間に充填されるスクラバ物質40a,40bは、仕切り部材42、43によって、筒体18内に、上側から順に、第1層44、第2層45および第3層46に分け隔てられた状態で収容されている。
そして、第1層44および第3層46は第1スクラバ物質40aにより構成され、また、第2層45は第2スクラバ物質40bにより構成されている。ここで、第1層44の長さD1は20mm、第2層45の長さD2は70mm、第3層46の長さD3は35mmとなっており、各層44〜46にはそれぞれの長さに対応した量のスクラバ物質40a,40bが充填される。因みに、液溜め部32の鉛直方向の長さdは15mmとなっている。なお、上記図4において、図1〜図3に示した符号と同一符号は同一物を示している。
上記スクラバ41では、最も上流側に位置する第1層44に着色剤を含む第1スクラバ物質40aを設けているので、サンプルガスS中に含まれるハロゲン化合物や硫化水素の存在を早期に検知・発見することができる。また、最も下流側に位置する第3層46にも着色剤を含む第1スクラバ物質40aを設けているので、第3層46の第1スクラバ物質40aの色を目視によって確認するだけでスクラバ41の寿命や劣化進行を判定することができる。
以上、本体部13内に3層44〜46に分けてスクラバ物質40a,40bを設けたスクラバ41の構成について述べたが、本体部13内に4層に分けてスクラバ物質40a,40bを設けてもよい。そのように構成されたスクラバ47について、図5を参照しながら以下に説明する。
すなわち、図5は、この発明の第3実施例を示すもので、この図において、48は網状の仕切り部材であり、押さえ部材39a、39b間に充填されるスクラバ物質40a,40bは、仕切り部材42、43、48によって、筒体18内に、上側から順に、第1層44、第2層45、第3層46および第4層49に分け隔てられた状態で収容されている。
そして、第1層44および第3層46は第1スクラバ物質40aにより構成され、また、第2層45および第4層49は第2スクラバ物質40bにより構成されている。ここで、第1層44の長さD1は15mm、第2層45の長さD2は50mm、第3層46の長さD3は35mm、第3層49の長さD4は25mmとなっており、各層44〜46、49にはそれぞれの長さに対応した量のスクラバ物質40a,40bが充填される。因みに、液溜め部32の鉛直方向の長さdは15mmとなっている。なお、上記図5において、図1〜図4に示した符号と同一符号は同一物を示している。
この発明は、上述の各実施例に限られるものではなく、種々に変形して実施することができる。例えば、図1に示すように、スクラバ8は、鉛直方向、すなわち傾斜角度αがほぼ90°となるように配置することが好ましいが、ガス導入口35内に凝縮液Lが進入しない範囲でスクラバ8を傾斜させてあってもよい。例えば、スクラバ8の傾斜角度αを45°〜90°として設定することができる。このことは、図4および図5に示したスクラバ41、47についても同様である。
また、各実施例において、無機担体として、上述のシラス系天然軽石以外に、活性炭、モレキュラーシーブ等を用いることができ、不揮発性酸として、H3 PO4 に代えてH2 SO4 等を用いることができる。また、着色剤として、炭酸銀の他、硝酸銀、りん酸銀などの銀塩を用いることができ、還元剤として、Cu2 Oの他のCuを主成分とする銅ウール(線径80μm又は200μm)状のものや、SnOなどSnを主成分とする銅線にSnメッキを施したものなどを用いることができる。
また、図2、図4および図5に示した実施例では、ケース12の全体が透明または半透明としているが、このような構成に限られず、例えば、ケース12が、側壁の適宜の箇所にのみ透明または半透明の部分を有するものでもよい。もちろん、この場合、透明または半透明の部分は、その透明または半透明の部分を通してケース12内部に設けられたスクラバ物質40(40a,40b)の表面の色を見たときに、スクラバ物質の劣化の進行度合いを把握・判定することができる位置に設けておかなければならないことはいうまでもない。
さらに、図2に示したスクラバ8の本体部13内に、図4および図5に示した2種類のスクラバ物質40a,40bを適宜の割合(例えば、第1スクラバ40a:第2スクラバ物質40b=1:1〜1:5となる割合)で混合した状態で設けてもよい。
一方、図4および図5に示す実施例では、第2スクラバ物質40bを用いているが、この第2スクラバ物質40bに変えて、りん酸処理した銅ウールや錫線材などを用いてもよく、この場合にも、第2スクラバ物質40bを用いた場合と同様の効果が得られる。
さらに、図4および図5に示す実施例において、第1スクラバ物質40aまたは第2スクラバ物質40bのいずれか一方に代えて、前記スクラバ物質40を用いてもよい。
また、例えば、サンプルガスS中に還元剤との反応比率が高い腐食性成分が含まれているなど、サンプルガスS中に還元剤と反応する成分が多く含まれていると予想される場合などには、図1〜図3に示す実施例において、スクラバ物質40の還元剤の含有比率を大きくしたり、あるいは図4および図5に示す実施例において、第2スクラバ物質40bよりなる層を厚くし、ケース12内に存在する還元剤と着色剤との比率を例えば1:1〜9:1の範囲で適宜に調整することが好ましい。
この発明の第1実施例に係るガス分析システムの構成を概略的に示す説明図である。 上記実施例におけるスクラバの構成を概略的に示す説明図である。 上記実施例におけるスクラバの構成を概略的に示す分解斜視図である。 この発明の第2実施例に係るガス分析システムの要部の構成を概略的に示す説明図である。 この発明の第3実施例に係るガス分析システムの要部の構成を概略的に示す説明図である。
符号の説明
8 スクラバ
12 ケース
33 流出防止機構
40 スクラバ物質
40a 第1スクラバ物質
40b 第2スクラバ物質
L 凝縮液
S サンプルガス

Claims (6)

  1. ケース内に不揮発性酸を含むスクラバ物質を設けてなるスクラバにおいて、前記ケースの全部または一部を透明または半透明に形成するとともに、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤と、還元剤とをスクラバ物質に含ませてあることを特徴とするスクラバ。
  2. ケース内に不揮発性酸を含むスクラバ物質を設けてなるスクラバにおいて、前記ケースの全部または一部を透明または半透明に形成するとともに、前記スクラバ物質として、腐食性成分と反応して有色の塩を形成する着色剤を含むものと、還元剤を含むものとが用いられていることを特徴とするスクラバ。
  3. ケース内で生じた凝縮液が下流側へ流出するのを防止する流出防止機構をケースに内蔵させてある請求項1または2に記載のスクラバ。
  4. 着色剤は、炭酸銀、硝酸銀、りん酸銀などの銀塩である請求項1〜3のいずれかに記載のスクラバ。
  5. 還元剤は、CuまたはSnを主成分としている請求項1〜4のいずれかに記載のスクラバ。
  6. スクラバ物質全体の還元剤の含有比率を大きくし、還元剤と反応する成分を多く含むサンプルガスから腐食性成分を除去するように構成してある請求項1〜5のいずれかに記載のスクラバ。
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