以下に、この発明の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の磁気治療装置1は、図1に示されるように、頭部ユニット2と、胴体部ユニット3と、脚部ユニット4とを備えている。各ユニット2〜4は結合されて寝台を形成する。各ユニット2〜4は、木材などの絶縁物のケース内に、寝台に仰向けに横臥される人体に磁気を照射するための複数の電磁石を備えている。
頭部ユニット2には、主として頭部領域に対する磁気照射を行うための頭部電磁石群が、胴体部ユニット3には、主として胴部領域に対する磁気照射を行うための胴部電磁石群が、脚部ユニット4には、主として脚部領域に対する磁気照射を行うための脚部電磁石群がそれぞれ含まれている。
頭部ユニット2は、図1に示されるように、頭部支持基台5上に、直方体形状の右側頭部ブロック6と、左側頭部ブロック7と、頭頂部ブロック8と、額部ブロック9とを備えている。
頭部電磁石群は、図2に示されるように、対をなす2個の磁極をそれぞれ有する3個の電磁石として、第1の電磁石11と、第2の電磁石12と、第3の電磁石13とを含んでいる。
第1の電磁石11は、頭部支持基台5に内蔵され、コの字状のコアを有している。コアは、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心である。コアは、基部14の両端に垂直に脚部15,16が形成されると共に、脚部15,16の先端にそれぞれ磁極板17,18が形成されている。コアの脚部15,16には、それぞれ巻線19,20が巻かれている。第1の電磁石11は、磁極板17,18が同一水平面に配置された磁極並置型電磁石である。磁極板17は、寝台に仰向けに横臥する人体の後頸部と対向する位置に、磁極板18は、寝台に仰向けに横臥する人体の後頭部と対向する位置に、それぞれ位置するようにして、頭部支持基台5に装着されている。第1の電磁石11は、上方に横臥される人体の後頸部と後頭部に、それぞれ磁気照射することができる。
第2の電磁石12は、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心のコアを有している。コアは、基部21の両端に垂直にL字上の脚部22,23が形成され、L字状の脚部22,23の先端にそれぞれ磁極板24,25が形成されている。第2の電磁石12は、磁極板24,25が、図2に示されるように互いに対向して配置された磁極対向型電磁石である。コアの脚部22,23には、それぞれ巻線26,27が巻かれている。第2の電磁石12は、頭部ユニット2内で、磁極板が人体の幅方向に沿って所定間隔を空けて配置され、一方の磁極板25が右側頭部ブロック6に、他方の磁極板24が左側頭部ブロック7に内蔵されている。そのため、人体を横臥させて人体頭部を右側頭部ブロック6と左側頭部ブロック7とで挟んだ状態で、人体の両側頭部に磁極板24,25から磁気照射をすることができる。
第3の電磁石13は、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心のコアを有している。コアは、図2に示されるように、基部が下側基部28と上側基部29とに上下に分割され、基部の上下両端に垂直に脚部30,31が形成されている。上側基部29に連設された上方の脚部30は、その内部から突出して下方にL字状に曲げられたL字脚部32を有している。L字脚部32には巻線33が巻かれると共に、その先端に磁極板34が下方を向いて形成されている。磁極板34は、人体が仰向けに横臥されたときの額部に対向する位置に配置される。
下側基部28に連設された下方の脚部31には、巻線35が巻かれると共に、その先端に磁極板36が形成されており、磁極板36は、人体が横臥されたときの頭頂部に対向する位置に配置されている。
第3の電磁石13は、図2に示されるように、磁極板34と磁極板36とが直角をなす磁極直交型電磁石である。第3の電磁石13は、頭頂部ブロック8と、額部ブロック9とにまたがって配設されており、頭頂部ブロック8には磁極板36が、額部ブロック9には磁極板34がそれぞれ内蔵されている。
第3の電磁石13の上側基部29は、下側基部28を支軸に、図2示の矢印θで示されるように水平方向に回動自在に形成されている。換言すると、頭頂部ブロック8が支柱を形成し、この支柱を軸に額部ブロック9が把手37を操作することにより水平方向に回動自在となっている(図1参照)。
再び、図2を参照して、第3の電磁石13のL字脚部32は、上方の脚部30に対して、水平方向に、すなわち図2示の矢印Xの向きに伸縮させることができる。すなわち、額部ブロック9が、頭頂部ブロック8を支軸とした径方向(水平方向)に伸縮自在となっている(図1参照)
また、第3の電磁石13のL字脚部32には、垂直方向の長さを可変する機構が備えられている。このため、L字脚部32に形成されている磁極板34は、図2示の矢印Yの向き(鉛直方向)に可変させることができる。
次に、胴体部ユニット3は、図3に示されるように、胴体部支持基台40に下面側胴部電磁石群が配設されており、下面側胴部電磁石群は、対をなす2個の磁極板をそれぞれ有する4個の電磁石41〜44を含んでいる。
電磁石41はコの字状のコアを有している。コアは、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心である。コアは、先端に対をなす2つの磁極板41a,41bが形成された脚部の後端部同士を結ぶ基部41cを備え、2つの脚部には、それぞれ巻線41d,41eが巻かれている。電磁石41は、磁極板41a,41bが同一水平面に配置された磁極並置型電磁石である。電磁石42〜44は、電磁石41と同様に、対をなす第1の磁極板42a〜44aおよび第2の磁極板42b〜44b、基部42c〜44c、第1の巻線42d〜44dおよび第2の巻線42e〜44eを備えた磁極並置型電磁石である。
電磁石41は、磁極板41a,41bが、寝台に仰向けに横臥する人体の背骨の中心線を挟んで対称的な位置にそれぞれ位置するように、配置されている。磁極板41a,41bは、寝台に仰向けに横臥した人体の胴体背面部に対向するように配される。電磁石42の磁極板42a,42b、電磁石43の磁極板43a,43、電磁石44の磁極板44a,44bも電磁石41と同様に配置されている。
4個の電磁石41〜44は、それぞれの磁極板が互いに水平となるように、背骨の中心線に沿って寝台に並列して埋設装着されている。従って、寝台に仰向けに人体が横臥されたときに、4個の電磁石41〜44から人体の胴体背面部に効果的に磁気照射することができる。
本願発明者が、4個の電磁石41〜44の配設間隔をできるだけ拡げて効果的な磁気照射を実現する配置を種々検討した結果、以下の知見が得られた。ここで、図4示のように、電磁石41〜44の2つの磁極板の間の距離をG、磁極板の長さをL、磁極板の幅をW、隣接した磁極板間の距離(並設された電磁石41〜44の間隔)をPとする。このとき、並設された電磁石41〜44の間隔をできるだけ拡げて治療に効果がある磁束密度の分布を得るための好適な配置条件は、隣接磁極間距離Pが、磁極幅Wの1〜1.2倍であることである。従って、本実施形態の胴体部ユニット3は、電磁石41〜44がこの条件で配置される。
また、胴体部ユニット3の電磁石41〜44の配置は、人体の背骨を中心としたツボの配置に適合するように、隣接磁極板間距離P、磁極板幅W、磁極板間距離G、および磁極板長さLを適宜定めることが効果的である。上記配置条件と合わせた具体的な数値としては、例えば、隣接磁極板間距離P=80〜90mm、磁極板幅W=80mm、磁極板間距離G=70mm、磁極板長さL=80mmとすると効果的である。
この条件で電磁石41〜44を配設したときの磁界の分布が図5に示されている。図5の横軸は、胴体部支持基台40の頭部ユニット2側端部を原点に、90mmの位置を中心に電磁石41を、250mmの位置を中心に電磁石42を、420mmの位置を中心に電磁石43を、580mmの位置を中心に電磁石44を配置した様子を表している。すなわち、電磁石41と電磁石42の間の距離Pは80mm、電磁石42と電磁石43の間の距離Pは90mm、電磁石43と電磁石44の間の距離Pは80mmとなっている。図5の縦軸は、4つの電磁石41〜44のそれぞれの2つの磁極板の中間点の垂直上方の距離を表している。寝台の長手方向(人体の身長方向)に沿って走査したときの磁界の分布は、図示されるように、寝台から高さ100mmの位置で寝台とほぼ平行な30Gの等磁位線が得られる。また、寝台から180〜200mmの高さの位置で10Gの磁束密度が得られる。このため、寝台に布団やマットレスなどを敷いて使用したとしても、寝台に横臥した人体に効果的な磁気照射を行うことができる。
この胴体部ユニット3には、図6に示されるように、胴体部支持基台40の側部に、上面側胴部電磁石群を支持する支持機構が2つ備え付けられている。上面側胴部電磁石群は、横臥した人体の胴体部を上方から覆うことが可能な胸部照射ブロック45(磁気照射ブロック)と腹部照射ブロック46(磁気照射ブロック)とに内蔵された電磁石より構成される。胸部照射ブロック45は頭部ユニット2寄りに、腹部照射ブロック46は脚部ユニット4寄りに配設されており、胸部照射ブロック45と、腹部照射ブロック46とは同一の構成である。
支持機構は、胴体部支持基台40の側部に立設された支柱47と、支柱47の上端部に軸支され、水平面内で旋回可能な第1アーム48と、第1アーム48の先端部に軸支され、水平面内で旋回可能な第2アーム49と、第2アーム49の先端に、スプリングケース50内の圧縮バネ51を介して垂下された吊り下げロッド52とから構成されている。2つの支持基講は、それぞれ吊り下げロッド52により、胸部照射ブロック45と、腹部照射ブロック46とを吊り下げ支持している。
第1アーム48および第2アーム49の旋回機構の詳細が図7に示されている。第1アーム48の一端から支柱47内部に旋回用のシャフト53が貫通して設けられている。第1アーム48の一端には、シャフト径と同じ径の貫通孔を有する固定部材54が配置されている。シャフト53は、固定部材54の貫通孔に挿入されてネジ55,56により固定部材54に固定されている。支柱47内部には、シャフト径より僅かに大きな径の貫通孔を有する軸受部材57,58が固定されており、シャフト53は軸受部材57,58の貫通孔に挿入されている。従って、第1アーム48は支柱47に対して旋回自在となっている。
図7に示されるように、第2アーム49の一端から第1アーム48の他端に旋回用のシャフト59が貫通して設けられている。第2アーム49の一端には、シャフト径と同じ径の貫通孔を有する固定部材60が配置されている。シャフト59は、固定部材60の貫通孔に挿入されてネジ61,62により固定部材60に固定されている。第1のアーム48の他端には、シャフト径より僅かに大きな径の貫通孔を有する軸受部材63が固定されており、シャフト59は軸受部材63の貫通孔に挿入されている。従って、第2アーム49は第1アーム48に対して旋回自在となっている。
スプリングケース50と吊り下げロッド52の詳細が図8に示されている。スプリングケース50内には、吊り下げロッド52が貫通した摺動部材64および固定部材65が備えられている。摺動部材64は、吊り下げロッド52の先端部に固定され、スプリングケース50内を摺動する。固定部材65はスプリングケース50下端に固定され、内部を貫通した吊り下げロッド52が摺動できるように構成されている。吊り下げロッド52の周囲には、摺動部材64と固定部材65との間に挟まれて圧縮バネ51が配置されている。吊り下げロッド52には、スプリングケース50内の位置決めのために鉛直方向に溝部66が設けられている。そして、吊り下げロッド52を上下動させたときに、所望の位置で固定できるように、固定部材65の位置で溝部66に嵌合する留めねじ67が設けられている。
吊り下げロッド52の下端には、回転用固定軸68が設けられている。回転用固定軸68に軸支された回転用部材69は、胸部照射ブロック45および腹部照射ブロック46に接続されている。そのため、胸部照射ブロック45および腹部照射ブロック46は、吊り下げロッド52に対して水平方向に回転自在となっている。
胸部照射ブロック45および腹部照射ブロック46は、使用前には、圧縮バネ51により上方に付勢されており、使用者が例えば胸部照射ブロック45を下方に引くと圧縮バネ51が圧縮し、胸部照射ブロック45は下方に移動するが、使用者が胸部照射ブロック45を手放すと圧縮バネの弾性により胸部照射ブロック45は元の位置に付勢される。そのため使用者は留めねじ67を締結することにより胸部照射ブロック45を所望の位置に固定する。
腹部照射ブロック46に内蔵された電磁石70は、コの字状のコアを有している。コアは、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心である。コアは、先端に対をなす2つの磁極板70a,70bが形成された脚部の後端部同士を結ぶ基部70cを備え、2つの脚部には、それぞれ巻線70d,70eが巻かれている。電磁石70は、磁極板70a,70bが同一水平面に配置された磁極並置型電磁石である。電磁石70は、磁極板70a,70bを寝台に対向させるように下方に向けた状態、すなわち、人体の腹部に対向するように配置されている。胸部照射ブロック45に内蔵された電磁石(図示せず)は、電磁石70と同型の磁極並置型電磁石であり、2つの磁極板を寝台に対向させるように下方に向けた状態、すなわち、人体の胸部に対向するように配置されている。
次に、脚部ユニット4は、図9および図10に示すように、脚部支持基台71と、脚部支持基台71の上に載置された第1可動台72と、第1可動台72の上に載置された第2可動台56とから構成されている。第1可動台72と第2可動台73とには、脚部電磁石群が配設されている。
脚部支持基台71には、不図示の電源部に接続されて電源スイッチを備えた制御盤74が設けられている。なお、電源スイッチは電気コード75(図1参照)を介して操作器76により操作可能であり、使用者が寝台に横臥した状態でも手元で操作することができる。
第1可動台72及び第2可動台73は、底部にキャスタ77が配設され長手方向(人体の身長方向)水平に可動できる。第1可動台72は、それぞれ電磁石の磁極が内蔵された直方体形状の腰部ブロック78と、右側膝部ブロック79と、左側膝部ブロック80とを備えている。また、第2可動台73は、電磁石が内蔵された直方体形状の足裏ブロック81を備えている。
腰部ブロック78は、第1可動台72の胴体部ユニット4寄り端部に配置され、電磁石82を内蔵している。電磁石82は、コの字状のコアを有している。コアは、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心である。コアは、先端に対をなす2つの磁極板82a,82bが形成された脚部の後端部同士を結ぶ基部82cを備え、2つの脚部には、それぞれ巻線82d,82eが巻かれている。電磁石82は、磁極板82a,82bが同一水平面に配置された磁極並置型電磁石である。電磁石82は、磁極板82a,82bが上方を向いて、上方に横臥される人体の幅方向に沿って配列している。このため、寝台に仰向けに人体を横臥したときに、人体の股関節部に磁気照射することができる。
また、右側膝部ブロック79と、左側膝部ブロック80は、寝台に横臥する人体の幅方向に所定間隔を有して配設されている。右側膝部ブロック79と、左側膝部ブロック80とには、対向する2つの磁極板を有する電磁石83が配設されている。この電磁石83は、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心のコアを有している。コアは、基部83cの両端に垂直にL字上の脚部が形成され、L字状の脚部の先端にそれぞれ磁極板83a,83bが形成されている。電磁石83は、磁極板83a,83bが、図10に示されるように互いに対向して配置された磁極対向型電磁石である。コアの脚部には、それぞれ巻線83d,83eが巻かれている。右側膝部ブロック79に巻線83dと磁極板83bとが内蔵され、左側膝部ブロック80に巻線83eと磁極板83aとが内蔵されている。そして、人体の幅方向に沿って2つの磁極板83a,83bが配列し、2つの磁極板83a,83bが間に人体の両脚側部を挟むようにして水平方向を向いている。このため、寝台に人体を横臥したときに、人体の両膝関節部に磁気照射することができる。
また、足裏ブロック81は、第2可動台73の寝台先端部寄りに配置され、電磁石84を内蔵している。電磁石84は、コの字状のコアを有している。コアは、ケイ素鋼板の小片を積層してなる成層鉄心である。コアは、先端に対をなす2つの磁極板84a,84bが形成された脚部の後端部同士を結ぶ基部84cを備え、2つの脚部には、それぞれ巻線84d,84eが巻かれている。電磁石84は、磁極板84a,84bが同一水平面に配置された磁極並置型電磁石である。この電磁石84は、磁極板84a,84bが水平方向人体側を向いて、人体の幅方向に沿って配列している。このため、寝台に人体を横臥したときに、人体の足裏に磁気照射することができる。以上が本実施形態の磁気治療装置1の構成である。
上記構成の磁気治療装置1は、所定の治療場所に運び込んだ頭部ユニット2と、胴体部ユニット3と、脚部ユニット4とを連結して寝台を組み立てて使用される。
磁気治療装置1の使用にあたっては、予め、頭部ユニット2の額部ブロック9が適切な位置に配置できるように調整しておく。すなわち、額部ブロック9の磁極板34が人体の頭部を覆って額、眼、鼻など顔の適切な場所に対向するように、額部ブロック9の水平方向および鉛直方向の位置を調節する。この際、額部ブロック9は押し引きすることにより、水平方向に摺動するので、使用者は寝台に横臥した状態で額部ブロック9の水平位置を決めることができる。なお、鉛直方向の調節は調節ねじを回すことにより行う。
額部ブロック9の配設位置が決定したならば、額部ブロック9を水平方向に回動して、額部ブロック9を人体の外側に一旦退ける。そして、使用者が寝台に横臥した状態の位置に適合させて脚部ユニット4の第1可動台72を水平方向に摺動させて、第1可動台72上の腰部ブロック78と、右側膝部ブロック79と、左側膝部ブロック80とを適所に配設する。さらに、第2可動台73を水平方向に摺動させて、足裏ブロック81を適所に配設する。このように、磁気治療装置1は、第1可動台72及び第2可動台73を移動させることにより、使用者の身長の差異によって生じる磁気照射位置のずれを解消することができる。
脚部ユニット4の第1可動台72及び第2可動台73の配置が決定したならば、胴体部ユニット3に備え付けられている胸部照射ブロック45と、腹部照射ブロック46の位置を調節する。具体的には、胸部照射ブロック45と腹部照射ブロック46とに内蔵された電磁石の磁極板が人体の胴体部上方を覆って胸部、腹部の適切な場所に対向するように、胸部照射ブロック45と腹部照射ブロック46の水平方向および鉛直方向の位置を調節する。なお、使用者は寝台に横臥した状態で胸部照射ブロック45と腹部照射ブロック46の位置を調整することができる。すなわち、横臥した使用者が胸部照射ブロック45と腹部照射ブロック46を自分の側に引っ張り、吊り下げロッド52を適切に伸長させた状態で留めねじ67を締めて鉛直方向の位置を決めることができる。
胸部照射ブロック45と腹部照射ブロック46の配置が決定したならば、頭部ユニット2の額部ブロック9を旋回させて、横臥した人体の頭部上方に移動させる。この状態で手元の操作器76を操作すると、磁気治療装置1の電源が入り、各ユニット2〜4に配置された電磁石の巻線に電流が流れ、磁極板から磁気が発生し、人体の各所が磁気雰囲気中に包含される。所定時間(例えば40分間)通電されることにより治療を効果的に行うことができる。
次に、本実施形態の磁気治療装置1に採用した磁極並置型電磁石について、図11乃至図18を参照して詳細に説明する。
図11および図12に示されるように、磁極並置型電磁石100は、それぞれ先端部が磁極となる互いに平行な第1の脚部101および第2の脚部102と、第1の脚部101および第2の脚部102の後端部同士を結ぶ基部103とを有する成層鉄心104からなるコアを備えている。第1の脚部101と第2の脚部102とは基部103から垂直に立設されている。
成層鉄心104の第1の脚部101と第2の脚部102には、それぞれ第1の巻線105と、第2の巻線106とが巻かれており、第1の巻線105と第2の巻線106とは互いに直列接続されている。
第1の脚部101と第2の脚部102の先端には、第1の磁極板107と、第2の磁極板108とが成層鉄心104の延長部として形成されている。ここで第1の磁極板107と、第2の磁極板108とは同一平面内に水平に配置されている。なお、巻線105,106の適所に導線109が接続され、巻線105,106に電流を流すことができるようになっている。
次に、図11に示される本実施形態の磁極並置型電磁石100と、従来の磁極並置型電磁石とを比較して説明する。
図13に示されるように、従来の磁極並置型電磁石110は、それぞれ先端部が磁極となる互いに平行な第1の脚部111および第2の脚部112と、第1の脚部111および第2の脚部112の後端部同士を結ぶ基部113とを有する成層鉄心114からなるコアを備えている。第1の脚部111と第2の脚部112とは基部113から垂直に立設されている。成層鉄心114の第1の脚部111と第2の脚部112には、それぞれ第1の巻線115と、第2の巻線116とが巻かれており、第1の巻線115と第2の巻線116とは互いに直列接続されている。第1の脚部111の先端(磁極117)と第2の脚部112の先端(磁極118)とは同一平面内に水平に配置されている。磁極117,118の断面と、第1、第2の脚部111,112の断面とは等しくなっている。この例では、電磁石110の磁極117,118の断面は、長さ40mm×奥行60mm(図示された磁極長さ=40mm)であり、対をなす2つの磁極117,118の間隔は140mmである。磁極117,118の両端部間の長さは220mmである。
この従来の磁極並置型電磁石110の2つの磁極117,118間を結ぶ磁極長さ方向(X−X´方向)の垂直面上の磁界分布特性曲線が図14に示されている。なお、巻線115,116は45回巻、電力は377VAを条件としている。図示されるように、等磁位線は、磁極117の中心(脚部111の中心)を山として、2つの磁極117,118間の中心を谷として形成されている。
一方、本実施形態の磁極並置型電磁石100の設計例が図15に示されている。この例では、電磁石100の磁極板107,108の断面は、長さ80mm×奥行80mm(図示された磁極板長さ=80mm)であり、対をなす2つの磁極板107,108の間隔は70mmである。磁極107,108の両端部間の長さは230mmである。本実施形態の磁極並置型電磁石100の磁極断面積は、従来の磁極並置型電磁石110の磁極断面積の8/3倍となっている。
磁極並置型電磁石100の2つの磁極板107,108間を結ぶ磁極長さ方向(X−X´方向)の垂直面上の磁界分布特性曲線が図16に示されている。なお、巻線105,106は45回巻、電力は360VAを条件としている。図示されるように、等磁位線は、脚部101の中心を山として、2つの磁極107,108間の中心を谷として形成されている。
図14と図16に示される2つの特性曲線を比較すると、図14に示されるように、従来の磁極並置型電磁石110では、200Gおよび100Gの等磁位線が同心の曲線状に形成されて、2つの磁極間で分離されている。この等磁位線の谷を解消するため、磁極117,118間の距離を縮めると、2つの磁極117,118でカバーできる磁気照射領域の長さも狭まってしまう。
一方、図16に示される等磁位線は、2つの磁極板107,108でカバーできる磁気照射領域の長さを維持しつつ、従来のものと比較して、磁極間中心で各等磁位線の落ち込みがほとんど無いまま連続して直線的な領域が広がっている。また、200Gおよび100Gの等磁位線が2つの磁極板107,108間で連続している。
従って、磁極並置型電磁石100は、磁極板107,108により、磁極面積を拡大したことにより、磁極間の領域における等磁位線の落ち込みを低減し、より均一な磁束分布を実現することができる。また、この磁極並置型電磁石100を複数配設するときに、電磁石1個当たりの磁気照射面積を拡げることができるので、敷設個数を低減できる。その結果、省電力、低コストの磁気治療装置を提供することができる。
なお、磁極板107,108を拡大すればするほど、脚部101,102の中心(巻線105,106の中心)から離れた磁極板の磁力が弱まるので、2つの磁極間の磁界を均一としつつ、10G〜30Gの等磁位線が直線状に維持される範囲を考慮して、所定範囲内で、磁極並置型電磁石100の磁極板を拡大する比率(磁極断面積の拡大比率)を決定するものとする。
磁極並置型電磁石100の成層鉄心104は、図17に示されるように、ケイ素鋼板からなる5つの長方形の板状部材201,202,203,204,205を複数組み合わせて積層されて構成されている。この板状部材201〜205の積層方法を以下に説明する。
図17(a)に示されるように、成層鉄心104の基部103に相当する部分の図中右に板状部材203を配置する。板状部材203の左に隣接し、且つ、基部103及び第1の脚部101に相当する部分に板状部材205を配置する。板状部材205に隣接し、且つ、磁極板107に相当する部分に板状部材202を配置する。板状部材203に隣接し、且つ、第2の脚部102及び磁極板108に相当する部分に板状部材204を配置する。板状部材204に隣接し、且つ、磁極板108に相当する部分に板状部材201を配置する。以上の配置で成層鉄心104の第1層が構成される。
次に、図17(b)に示されるように、図17(a)と左右対称に板状部材201〜205を配置して成層鉄心104の層を形成する。すなわち、基部103に相当する部分の図中左に板状部材203を配置する。板状部材203の右に隣接し、且つ、基部103及び第2の脚部102に相当する部分に板状部材205を配置する。なお、板状部材203,205を配置するときには、穿設された穴203A,205Aを下層に配置された穴205A,203Aに適合させる。板状部材205に隣接し、且つ、磁極板108に相当する部分に板状部材202を配置する。板状部材203に隣接し、且つ、第1の脚部101及び磁極板107に相当する部分に板状部材204を配置する。板状部材204に隣接し、且つ、磁極板107に相当する部分に板状部材201を配置する。以上の配置で成層鉄心104の第2層が構成される。
以下、同様に、図17(a)、図17(b)にそれぞれ示される左右対称の配置で交互に板状部材201〜205を配置して積層し、穴203A,205Aに不図示のボルトを通してナットで締結する。これにより、成層鉄心104の主要部が完成する。次に、この成層鉄心104の主要部の表裏両面にわたって、図17(c)に示されるように、磁極板107,108に相当する部分に板状部材202を複数積層する。以上の積層方法により、成層鉄心104は形成されている。
具体例として、図18に示されるように、板状部材201のサイズを10mm×40mm、板状部材202のサイズを10mm×80mm、板状部材203のサイズを20mm×110mm、板状部材204のサイズを40mm×70mm、板状部材205のサイズを40mm×80mm、各板状部材201〜205の板厚を0.5mmとして設計した場合には、120層積層して成層鉄心104の主要部を形成する。そして、この成層鉄心104の主要部の表裏両面に、図17(c)に示されるように、磁極板107,108に相当する部分に板状部材202を20層ずつ積層する。この結果、磁極板107,108が80mm×80mm、脚部101,102の断面が40mm×60mmのサイズの成層鉄心104を構成することができる。
次に、本発明の磁極直交型電磁石として、頭部ユニット2の頭頂部ブロック8および額部ブロック9にまたがって配置された第3の電磁石13の詳細な構成を説明する。図19に示されるように、第3の電磁石13の下側基部28および上側基部29の両側面は、下部側板301および上部側板302により支持、固定されている。第3の電磁石13の脚部30の上部には、額部支持板303が、2枚の上部側板302に挟まれて支持、固定されている。
額部支持板303は、中空であり、前方の開口304に平板305の一端が挿入されて、平板305が出入自在に構成されている。平板305は、固定部材306を介して、第3の電磁石13のL字脚部32に接続されている。L字脚部32の上部307には、磁極板34の中心軸上に、ねじ逃げ穴308が設けられている。平板305の他端側には軸部309が設けられ、軸部309は、固定部材306上固着の雌ねじ部306aに螺着されている。なお、固定部材306は、L字脚部32の上部307にねじ310により固定されている。
L字脚部32の脚部30側の一端は、2つの脚部30に挟まれて配置されている。脚部30の内側の表面には、例えば0.5mm厚の滑材が貼り付けられており、L字脚部32が摺動できるように構成されている。
上記構成の第3の電磁石13では、平板305が額部支持板303に出入自在に移動可能なので、磁極板34を水平面内で前後方向に移動させることができる。また、軸部309の上方の調節ハンドル311を回すことにより、軸部309がねじ逃げ穴308内を進行/退行するので、磁極板34を鉛直方向に移動させることができる。また、下側基部28の外側には、下部側板301に挟まれて、丸軸を有する支持板(図示しない)が設けられ、上側基部29の外側には、上部側板302に挟まれて、丸軸に嵌合する軸受支持板(図示しない)が設けられている。これにより、上側基部29は下側基部28に対して水平面内で回転し、磁極板34は水平面内で回転することができる。
次に、本発明の磁極対向型電磁石として、頭部ユニット2の右側頭部ブロック6および左側頭部ブロック7にまたがった第2の電磁石12の詳細な構成を説明する。図20に示されるように、第2の電磁石12の基部21は、固定基部320と、この固定基部320の上に配置された右可動基部321および左可動基部322とから構成されている。
固定基部320の上には、右側と左側の対称な位置にボルト323,324が立設されている。右可動基部321には、ボルト323が貫通する溝部325が設けられている。右可動基部321は、ボルト323を支軸に回動可能であると共に、固定基部320上を溝部325の長さ方向にスライドできるように構成されている。ボルト323にはハンドル326が螺着されており、ハンドル326を回してねじを締めることにより、固定基部320に右可動基部321を固定することができる。
同様に、左可動基部322は、ボルト324を支軸に回動可能であると共に、固定基部320上を溝部327の長さ方向にスライドできるように構成されている。ボルト324には、ハンドル328が螺着されており、ハンドル328を回してねじを締めることにより、固定基部320に左可動基部322を固定することができる。
上記構成の第2の電磁石12では、右可動基部321および左可動基部322をスライドさせることにより、磁極板24と磁極板25の間隔を拡げたり縮めたりすることができる。また、右可動基部321および左可動基部322を回動させることにより、磁極板24と磁極板25の方向を可変させることができる。
なお、脚部ユニット4の右側膝部ブロック79および左側膝部ブロック80にまたがって配置される電磁石83は、上述の頭部ユニット2の第2の電磁石12と同様の構成を備えており、電磁石83の磁極板83a,83bの方向および間隔を適宜調節することができるように構成されている。
以上説明したように、磁極並置型電磁石は磁極面積を従来よりも拡大したことにより、2つの磁極の間にも均質な磁気分布を作りつつ、磁力が及ぼされる範囲を広げることができる。また、磁極直交型および磁極対向型の電磁石は変形可能であり、磁極を人体表面に密接させることができる。従って、磁極並置型、磁極直交型、および磁極対向型の電磁石を適宜配置することにより、均質な磁気分布を作ることができ、人体に効果的な磁気照射を実現することができる。