JP2005230979A - 三次元dnaネットワークの構築方法および三次元dnaネットワーク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2枚の基板間にDNAをDNA固定化因子で不溶化したDNAの分散液をしみ込ませる(S1〜S3)。さらに基板間にネットワーク連結手構成因子の溶液をしみ込ませ、その状態で所定時間放置する(S4〜S5)。これによって、三次元DNAネットワークを構築させる。
【選択図】図1
Description
本実施形態では、DNAから構成される三次元上に広がったネットワークを構築する。特に、DNAと、DNA固定化因子と、ネットワーク連結点構成因子の3要素を混合し、これを基板間において保持して、自己組織化により三次元DNAネットワークを構築させる。
(S1)2枚の基板を間隔をあけて向かい合わせに固定する
(S2)DNAにDNA固定化因子を混合して、DNAを不溶化する
(S3)不溶化したDNAの分散液を基板間にしみ込ませる
(S4)ネットワーク連結点構成因子の溶液を基板間にしみ込ませる
(S5)自己組織化による、三次元DNAネットワークの構築完了まで放置する
という、5つの工程からなっている。
上述のS1〜S5の手順について、以下に詳細に述べる。
例えば、顕微鏡のカバーガラスを2枚の基板として利用する。この場合、2枚のカバーガラスをスペーサを挟み込んで重ねる。スペーサとしては、ガラス片などが利用できる。また、単にカバーガラスを重ねておき、その間に侵入させる溶液の量で2枚のカバーガラスの間隔を調整して固定することもできる。
DNAを溶解した水溶液に対しDNA固定化因子を混合することで溶液内においてDNAを不溶化する。例えば、DNA固定化因子として多価陽イオンを含む電解質の溶液を加え、DNAを不溶化する。多価陽イオンを含む電解質としては、塩化カルシウムがあげられるが、これに限らず、各種の金属塩などが利用可能である。
DNAを不溶化した水溶液をピペットを用いて、基板(カバーガラス)間の間隙に供給し、その表面張力を利用してしみ込ませ、ここに保持させる。
基板間に不溶化したDNAの分散液が保持されている状態において、その基板間の水溶液にさらにネットワーク連結点構成因子の溶液を追加する。ネットワーク連結点構成因子としては、ヒストンタンパク質が採用される。このヒストンタンパク質としては、染色体にあるのと同様の、ヒストンH2A、H2B、H3、H4の4つ種類のタンパク質の結合した球状の構造物などが好適であるが、他のタンパク質でもDNAがからみつきやすい正常を持ち、DNAの連結点になりうる性質を有すれば採用することができる。
S4において、ネットワーク連結点構成因子の溶液が添加された後、例えば、室温で数10分間そのまま大気中で放置する。これによって、両基板表面で、二次元DNAネットワークが構築されると同時に基板と垂直方向のネットワークも構築され、これが基板表面の二次元ネットワークと連結され、三次元DNAネットワークが構築される。
このような基板は、DNA固定化因子として作用することができ、このような基板を用いた場合には、上述したようなDNA固定化因子の添加混合を省略することもできる。
例えば、多価陽イオンを含む電解質を加え、DNAを不溶化する。また、この段階で、予めDNAに色素をインターカレートしておくと、色素で染色された三次元DNAネットワークを構築することもできる。
基板上にピペットを用いて、(1)の溶液を滴下する。
ネットワーク連結点構成因子としては、例えばヒストンタンパク質がある。このヒストンタンパク質の溶液を、(2)と同様に基板上に滴下する。このとき、ネットワーク連結点構成因子の濃度を変えることにより、ネットワークの構造を制御することができる。例えば、ネットワーク連結点因子の濃度を高めるとネットワーク連結点の数が多くなるため、構築されるネットワークの網目が小さくなる。
数十分間放置する。このとき、基板表面上で二次元DNAネットワークが構築されると同時に基板と垂直方向のネットワークも構築される。
「三次元DNAネットワークの作製」
DNAとして、λDNA、DNA固定因子として塩化カルシウムCaCl2、ネットワーク連結点構成因子としてヒストンタンパク質を用いて三次元DNAネットワークをガラス基板間に構築した。
このようにして得た試料について、偏光解消板を用いて観察した結果を図3に示す。この例では、2枚のカバーガラス(Cover slip)間の間隔を102.5μmとして、カバーガラス間で複数の異なった深度で画像を得ている。すなわち、図における下側のガラス基板(位置(f):0μm)に対物レンズの焦点をあわせ、ガラス基板上に二次元DNAネットワークが構成されていることを確認した。次に、対物レンズの位置をもう上側ガラス基板の方向に徐々に移動させることで、位置(e):下から20.5μm、位置(d):下から41.0μm、位置(c):下から61.5μm、(b):下から82.0μmでの画像を得、DNAの紐が三次元に伸びていることが確認された。そして、図における上側のガラス基板(位置(a):102.5μm)に対物レンズの焦点をあわせ、上側ガラス基板上にも二次元DNAネットワークが構成されていることを確認した。これによって、一対のガラス基板上にそれぞれ形成されている二次元DNAネットワーク間がDNAの紐で連結されて、三次元DNAネットワークが形成されていることが確認された。
次に、入射光(励起光)の偏光面の角度(偏光角)を変えながら、カバーガラス間に構築されたTOTO-1色素をインターカレートした三次元DNAネットワークにおけるカバーガラス表面部分の蛍光強度像を二次元検出器(CCDカメラ)で記録した。なお、偏光角の調整は、λ/2波長板を回転させることによって行った。
ネットワーク連結点構成因子であるヒストンタンパク質の濃度を変えることにより、ネットワークの構造を制御した。具体的には、ヒストンタンパク質の濃度を上述の実施例1で用いた濃度の5倍に高めると、ネットワーク連結点の数が大きくなり、ネットワークの網目を小さくすることができた。この場合のガラス基板上のネットワークの蛍光像を図6に示す。
この実施例2では、DNAとしてλDNAを、DNA固定化因子として塩化マグネシウムMgCl2を、ネットワーク連結点構成因子としてヒストンタンパク質を用い、3次元DNAネットワークをガラス基板間で構成した。
この実施例3では、DNAとしてλDNAを、DNA固定化因子として塩化カルシウムCaCl2を、ネットワーク連結点因子としてヒストンタンパク質を用い、3次元DNAネットワークをガラス基板上で構成した。
上述のようにして得られる三次元DNAネットワークは、各種分野において利用が可能であるが、そのうちのいくつかを下に示す。
DNAは、塩基対の面がDNAの軸に垂直になっており、それぞれの塩基対は隣りの塩基対とπ電子を重なり合わせている。この重なり合ったπ電子軌道を介してDNAの軸方向の電子輸送が可能であり、DNAは半導体程度の電気伝導性を持つ。さらに、DNAに色素分子をインターカレートした場合、その色素を可視光などで電子励起するとDNAの電気伝導性が高まるという報告がある。
遺伝子に作用する環境因子捕捉器として、DNAと脂質を混合し膜状に成形したDNAフィルム、または二次元DNAネットワークを用いる方法が考案されている。これは、遺伝子に作用する環境因子がDNAに吸着、インターカレートするものが多いことを利用したものである。ここで、フィルムも二次元DNAネットワークのいずれもDNAが支持体に吸着した状態になっており、環境因子のDNA分子への接近が困難となり捕捉効率が悪くなるという欠点を有する。
DNAチップとは、一群の遺伝子をガラス基板上にスポットしたものを指す。別の細胞、例えば発ガン細胞から用意した蛍光ラベルされた一群のDNAをこのDNAチップにハイブリダイゼーションさせる。特定のDNAは決まった場所にスポットされたDNAにハイブリダイゼーションするするため、スポット全体の蛍光パターンを正常細胞のそれと比較することにより、発ガン細胞に特有に発現している遺伝子を特定できる。
まず、ある配列を持ったDNAに機能性材料、例えば触媒活性を有する金属微粒子やタンパク質などを連結させる。得られた機能性材料付きDNAを三次元DNAネットワーク上の特定配列部分にハイブリダイゼーションさせ、機能性材料を設計通りの位置に三次元的に集積することが可能である。DNA上の反応の配列特異性の利用して機能性材料を三次元空間に集積することができる。
(i)基板間に三次元DNAネットワークを構築した場合において、三次元DNAネットワークを構築した基板間に流路を形成する。この流路に反応液を流すことにより、三次元DNAネットワークに作用させる。例えば、環境因子捕捉においては、環境因子を含む溶液、DNAチップにおいては、蛍光標識した一群のDNAを含む溶液、機能性材料の三次元空間への配置においては、機能性材料付きDNAを含む溶液を流路に流す。
(i)DNA固定化因子としては、溶液中で負に帯電したDNAを電気的に中性化し、DNAを不溶化する因子が利用できる。具体的には、多価陽イオンがあり、例えばCaCl2、MgCl2、ポリアミンなどが利用できる。
(i)使用するDNAとしては、数ミクロン以上の長さを有するDNA(1本鎖でも2本鎖でもよい)が望ましい。λDNA以外には、例えば、M13mp8 single strand DNA (1本鎖)、バクテリオファージ T4GT7 DNA(2本鎖)などがあげられる。
機能性材料を順序や空間配置を設計した位置に集積する場合には、1つの配列を持ってDNAに1つの機能性材料を対応させて結合させ、機能性材料の順序や空間配列に対応した塩基配列をもつDNAの三次元ネットワークを構成する。
DNAなどにインターカレートする色素としては、TOTO-1以外に,
YOYO-1, YOYO-3, TOTO-3,yo-1,T0-1,YO-3,TO-3,SYBR GreenI, SYBR GreenII, POPO-1, POPO-3, BOBO-1, BOBO-3
などが使用することができる。
Claims (27)
- DNAと、DNA固定化因子を溶液中において混合して、DNAを不溶化し、
この不溶化されたDNAを含む溶液を2枚の基板間に支持させるとともに、溶液中にネットワーク連結点構成因子を添加し、
その状態に所定時間保持し、自己組織化させて、紐状のDNAが三次元に広がった三次元DNAネットワークを構築させる、
ことを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - DNAと、DNA固定化因子とを溶液中において混合して、DNAを不溶化し、
この不溶化されたDNAを含む溶液を1枚の基板上に支持させるとともに、溶液中にネットワーク連結点構成因子を添加し、
その状態に所定時間保持し、自己組織化させて、紐状のDNAが三次元に広がった三次元DNAネットワークを構築させる、
ことを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1または2に記載の方法において、
前記DNA固定化因子は、
溶液中で負に帯電したDNAを電気的に中性化し、DNAを不溶化する因子であることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項3に記載の方法において、
前記DNA固定化因子となる物資は、多価陽イオンを含む電解質であることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - DNAを含む溶液を、DNAを不溶化する表面を有する基板に支持させるとともに、溶液中にネットワーク連結点構成因子を添加し、
その状態に所定時間保持し、自己組織化させて、紐状のDNAが三次元に広がった三次元DNAネットワークを構築させる、
ことを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項5に記載の方法において、
前記基板の表面は、吸着する特性を有することを特徴とすることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項6に記載の方法において、
前記基板の表面は、疎水性または正電荷表面であることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法において、
前記ネットワーク連結点構成因子は、
DNAを凝縮する性質を持つ因子であることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項8に記載の方法において、
前記ネットワーク連結点構成因子は、ヒストンタンパク質であることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法において、
前記DNAとして、特定のタンパク質を吸着する配列を繰り返したDNAを採用することを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法において、
前記DNAは、λDNAであることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜9に記載の方法において、
前記DNAは、目的とする機能性材料の順序や空間配列に対応した塩基配列を持つことを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法において
前記不溶化されたDNAを含む溶液を2枚の基板間または1枚の基板上に支持させた後に、ネットワーク連結点構成因子となる物質を添加することを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法において、
前記ネットワーク連結点構成因子となる物質の添加量を変更することで、ネットワークの網目の大きさを制御することを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法において、
前記基板として単結晶材料や配向性表面を持つ材料を用いることにより、その表面の特性に基づいて構築される三次元DNAネットワークの構造を制御することを特徴とするDNAネットワークの構築方法。 - 請求項1または請求項1に従属する請求項3〜15のいずれか1つに記載の方法において、
2枚の基板間にスペーサを配置したり、溶液の表面張力と基板間に加える圧力のバランスを制御することにより基板間の間隔を制御することで、基板間に構築されるDNAネットワークのネットワーク長を制御することを特徴とするDNAネットワークの構築方法。 - 請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法において、
前記ネットワーク連結点と、紐状のDNAに色素をインターカレートすることを特徴とする三次元DNAネットワークの構築方法。 - 三次元的に広がりもって点在するネットワーク連結点構成因子と、
このネットワーク連結点構成因子を連結点として、三次元的に広がる紐状のDNAと、
を含む、
三次元DNAネットワーク。 - 請求項18記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記DNA固定化因子は、
溶液中で負に帯電したDNAを電気的に中性化し、DNAを不溶化する因子であることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項19に記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記DNA固定化因子となる物資は、多価陽イオンを含む電解質であることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜20のいずれか1つに記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記ネットワーク連結点構成因子は、
DNAを凝縮する性質を持つ因子であることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項21に記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記ネットワーク連結点構成因子は、ヒストンタンパク質であることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜22のいずれか1つに記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記DNAは、特定のタンパク質を吸着する配列を繰り返したDNAをであることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜23のいずれか1つに記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記DNAは、λDNAであることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜24のいずれか1つに記載の方法において、
前記DNAは、目的とする機能性材料の順序や空間配列に対応した塩基配列を持つことを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜25のいずれか1つに記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記ネットワークの紐状のDNAは、引き延ばされた状態になっていることを特徴とする三次元DNAネットワーク。 - 請求項18〜26のいずれか1つに記載の三次元DNAネットワークにおいて、
前記ネットワーク連結点と、紐状のDNAに色素をインターカレートしていることを特徴とする三次元DNAネットワーク。
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