JP2005228701A - Nb−Ti超電導線 - Google Patents

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Abstract

【課題】交流損失を低減させると共に安定性も確保可能で、パルス超電導マグネット用途に適したNb−Ti超電導線を提供する。
【解決手段】安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、Cu−2wt%Niからなる第1の被覆層23、フィラメント領域25、Cu−2wt%Niからなる第2の被覆層27、及び安定化銅からなる外皮9を被覆し、フィラメント領域25は、Nb−Tiからなるフィラメント51の周囲をりん脱酸銅からなる第3の被覆層63で被覆したものを複数、安定化銅からなるマトリックス層65内に配した構造とした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、変動磁界を発生させるパルス磁界発生用超電導マグネットに好適に使用できるNb−Ti超電導線に関するものである。
通常の超電導マグネットは医療用MRI、分析用NMR(核磁気共鳴装置)に代表されるように直流磁界(静磁界)で使用されるため、超電導線から発生する損失はほとんどゼロで無視できる。このような直流用超電導マグネットに要求されるのは、マグネット小型化のための高い電流密度と安定にマグネットを運転できる安定性である。よって、使用される超電導線には高純度の銅やアルミが安定化材として複合化されており、超電導フィラメント部に対する安定化銅部の比率(銅比)は要求される電流密度や安定性により決定される。
一方、実用化が期待されているSMES(超電導電力貯蔵)は充・放電を繰り返すので変動磁界を発生させる。このようなパルス磁界発生用超電導マグネットでは超電導線から交流損失が発生し、損失は熱となって冷媒である液体ヘリウムが蒸発する。蒸発したヘリウムガスを再度液化するためには液化機が必要となるが、液化機の構造上、液化効率が0.2%と非常に低いため、例えば1Wの熱量で蒸発したヘリウムガスを再度液化するには液化機で500Wを消費することになり、液化機を含めた超電導マグネットシステム全体の効率が大幅に低下してしまうため、超電導線には交流損失低減対策が必要となる。
また、あまりに交流損失が大きい場合やエポキシ含浸等で冷却性が悪い場合には、損失発生による熱により超電導状態が破れてしまう(クエンチ)可能性もある。
超電導線から発生する交流損失は以下の3つに大別される。
(1)超電導フィラメントの磁化に起因するヒステリシス損失;Wh(W/m)
(2)有限の抵抗を有するマトリックスを介して超電導フィラメント間を流れる結合電流により発生する結合損失;Wc(W/m)
(3)銅などの低抵抗金属から発生する渦電流損失;We(w/m)
上記3つの損失のなかで、まず(1)のヒステリシス損失(Wh)は磁界変動率(磁界周波数f)とフィラメント径(d)に比例して増加するため(Wh∝f・d)、その低減対策としてフィラメント径を小さくすることが必要となる。
(2)の結合損失Wcは磁界変動率(磁界周波数)と超電導線のツイストピッチ(Lp)の2乗に比例して増加し、超電導線に複合化している安定化銅等の等価電気抵抗率ρに反比例して(等価電気伝導率σに比例して)増加する(Wc∝(f・Lp)/ρ)。そのため、低減対策としてツイストピッチを短くし、複合化するマトリックス金属に安定化銅の他にCuNi合金等の高抵抗金属を用いて結合電流を速やかに減衰させて損失を低減させる。
(3)の渦電流損失Weは磁界変動率(磁界周波数)と超電導線に複合化された安定化銅等の寸法(r)の2乗に比例して増加し、安定化銅等の電気抵抗率ρに反比例して増加する(We∝(f・r)/ρ)。そのため、低減対策として安定化銅の寸法rをCuNi等で分割して小さくすることが必要となる。
このように、パルス用途のNb−Ti超電導線では、交流損失を低減させるためにNb−Tiフィラメント径を細くし、ツイストピッチを短くし、複合金属として安定化銅の他にCuNi合金を使用するのが一般的である。かかる交流損失低減対策を施したNb−Ti超電導線において、上記3つの交流損失のなかで最も高い比率を占めるのは一般的に(2)の結合損失である。このため、最終的に結合損失を低減することが重要課題となるケースが多い。
前述のように結合損失低減のポイントは、ツイストピッチの短縮とCuNi等の高抵抗金属の使用の2点であり、一般的に使用される高抵抗金属としてはCu−10wt%Niがある(例えば、特許文献1参照)。その抵抗率ρは液体ヘリウム中(4.2K)において安定化銅のρに比較して約3桁高い。
図7(a)に、一般的なパルス用Nb−Ti超電導線の断面構成図を示す。
このNb−Ti超電導線は、安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、Cu−10wt%Niからなる第1の被覆層3、フィラメント領域5、Cu−10wt%Niからなる第2の被覆層7、及び安定化銅からなる外皮9が被覆されている。また、フィラメント領域5は、Nb−Tiからなるフィラメント51の周囲を安定化銅からなる第3の被覆層53で被覆したものが、Cu−10wt%Niからなる複数マトリックス層55内に配された構造となっている。結合損失の原因となる結合電流の経路は図7(b)に示すように、フィラメント領域5内部(A)、中央部1の安定化銅部(B)、外皮9の安定化銅部(C)の3つである。
特開平05−290647号公報
しかしながら、Cu−10wt%Niは、上述のように液体ヘリウム中(4.2K)での抵抗率ρが安定化銅(高純度銅)に比較して約3桁高く、安定性の観点からは不利となる。結局、交流損失低減と安定性向上は二律背反の関係にあり、運転条件(磁界変動率やマグネットの負荷率等)に応じて両者のバランスをとることが要求される。
一般的に超電導マグネットの運転電流は、超電導線の限界性能である臨界電流特性とマグネットの負荷特性の関係から決定される。一般に超電導マグネットは負荷率50〜70%付近で使用されることが多く、負荷率が高くなるほど安定性が低下する。このため、図7に示すNb−Ti超電導線において、線材のマトリックス比(安定化銅:Cu−Ni:Nb−Ti)や断面構成が安定性確保の重要な因子となる。
パルス用途のNb−Ti超電導線は、使用されるマグネットの運転条件によっては交流損失低減よりも安定性やマグネットの小型化(高電流密度化)が重視されるケースがある。例えば瞬時電圧低下対策用SMESの場合、落雷等による電力系統の瞬時電圧低下は、年に数回程度であり、1回の充放電が数秒間だけで使用頻度が低い。普段は直流磁界を発生しているだけの待機状態であり、長期的に見た場合交流損失によるシステム効率低下は無視でき、交流損失により発生する熱により超電導が破れる(クエンチする)ほど大きな交流損失でない限り、ある程度までの交流損失は許容できる。損失低減よりも高負荷率運転によりマグネットを小型化することが重要になる場合である。
このような一部のパルス用途Nb−Ti超電導線にCu−10wt%Niのような高抵抗金属を必要以上に使用すると過剰な交流損失低減対策が原因でマグネットの安定性が低下し、特に高負荷率運転が要求されるマグネットほど安定性に注意が必要となる。例えば、あるパルス用超電導線材の場合、要求される交流損失許容値を満足するには図7中の第2の被服層7に配置するCu−10wt%Ni層の厚さが1μm以下の薄い高抵抗層で十分な場合でも製造上の制約から層の厚さが10μm以上となってしまう場合もある。その結果、Cu−10wt%Niの比率が増加する分だけ安定化銅の比率が低下していき、安定性が低くなってしまう。
従って、本発明の目的は、交流損失を低減させると共に安定性も確保可能で、パルス超電導マグネット用途に適したNb−Ti超電導線を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のNb−Ti超電導線は、安定化銅からなる中央部の外周に、順に、第1の被覆層、フィラメント領域、第2の被覆層、及び安定化銅からなる外皮が被覆され、前記フィラメント領域は第3の被覆層が形成された複数のNb−Tiフィラメントとこれらを覆うように形成されたマトリックス層とを有するNb−Ti超電導線において、前記マトリックス層が安定化銅からなり、前記第3の被覆層が、温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有する銅あるいは銅合金からなることを特徴とする。
前記第1及び第2の被覆層も温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有する銅あるいは銅合金とすることが好ましい。
前記第3の被覆層の厚さxと前記Nb−Tiフィラメントの半径yとの比率(x/y)は0.1以下であることが好ましい。
前記Nb−Tiフィラメント径は30μm以下であることが好ましい。
超電導線の断面形状において、前記Nb−Tiフィラメントに対する前記第3の被覆層の占有率比Xが0.1〜0.8、前記安定化銅の占有比Yが1.5〜3であることが好ましい。
本発明のNb−Ti超電導線は交流損失と安定性のバランスが優れているため、本発明のNb−Ti超電導線を用いたパルス磁界発生用超電導マグネットは、交流損失を低く抑えた状態で高い安定性を確保でき、高負荷率のパルス運転が可能となる。
以下、本発明に係るNb−Ti超電導線の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るNb−Ti超電導線の断面構成図を示すものである。
このNb−Ti超電導線は、安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、Cu−2wt%Niからなる第1の被覆層23、フィラメント領域25、Cu−2wt%Niからなり20μmの厚さを有する第2の被覆層27、及び安定化銅からなる外皮9が被覆され、全体として直径1mmに形成されている。
フィラメント領域25は、直径16μmのNb−Tiからなるフィラメント51の周囲を厚さ0.5μmのりん脱酸銅からなる第3の被覆層63で被覆したものが複数、安定化銅からなるマトリックス層65内に配された構造となっている。
第1の被覆層23及び第2の被覆層27を構成するCu−2wt%Niの導電率は、従来用いられているCu−10wt%Niの約5倍に相当する。また、第3の被覆層63の形成材料であるりん脱酸銅は、温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有するものである。なお、Nb−Tiに対する高純度安定化銅の比率(銅比)は2.25に形成されている。
第3の被覆層63は、上記りん脱酸銅の他に、りん入り無酸素銅(P20−OFC)、Cu−2wt%Ni、Cu−Si合金、Cu−Fe合金、Cu−Zr合金等の温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有する銅あるいは銅合金とすることができる。この理由については後述する。
次に、Nb−Tiからなるフィラメント51の周囲に配置した第3の被覆層63の厚さxとNb−Tiフィラメント51の半径yの比率(x/y)は0.1以下であることが好ましい。これは、0.1を超えると、抵抗層としての第3の被覆層63の占有率がフィラメント面積に対して22%に到達し、フィラメント領域25全体に対する超電導フィラメント51と第3の被覆層63の占積率をλとすると、λ=0.6(60%)の場合、Nb−Ti占積率が38%まで低下してしまい、電流密度が低下するからである。また、フィラメント周囲の安定化銅の占積率が減少するため安定性が低下するからである。
また、超電導線の断面形状において、Nb−Tiからなるフィラメント51に対する第3の被覆層63の占有比Xが0.1〜0.8、安定化銅(本明細書では10K以下の温度における電気抵抗率が5×10−10Ω・m以下の高純度銅を指す)の占有比Yが1.5〜3であること(銅あるいは銅合金:安定化銅:Nb−Ti=X:Y:1、X=0.1〜0.8、Y=1.5〜3)が好ましい。これは、超電導線の安定化銅比は使用される条件によって大きく異なるが、パルスマグネット用として使用する場合、マグネットを安定に運転するためには概ね安定化銅比1.5以上は必要となる。一方、安定化銅比を高くし過ぎると安定性は向上するが、Nb−Tiの占有率が低下して電流密度が減少し、マグネットが大型化してしまう。加えて、交流損失も増加するため安定化銅比の上限は3.0とする。また、交流損失を低減するために用いる第3の被覆層63の占有比Xについては、Nb−Tiに対して0.1未満の場合、その損失低減効果は小さく、従来の直流用Nb−Ti線材(安定化銅とNb−Tiのみから構成される線)の交流損失に対して20%以下の低減効果しか期待できない。一方、占有率を0.8が超えると交流損失は直流用線材に比較して90%以上の大幅な低減効果が期待できるが、Nb−Ti占有率が低下するため、電流密度が低下してしまう。加えて、安定性の低下も無視できなくなる。
更に、個々のNb−Tiからなるフィラメント51の径は30μm以下とすることが望ましい。これは、磁界条件等により変化するが、フィラメント径が30μmを超えると、交流損失の主成分は結合損失成分からヒステリシス損失成分に変わり、パルス用として無視できないほど交流損失が大きくなってしまうからである。
次に、前述した、第3の被覆層として電気抵抗率が1×10−9Ω・m以上、3×10−8Ω・m以下の抵抗を有する銅あるいは銅合金を使用する理由について詳述する。
図2に示すような断面構造のモデルの超電導線の結合損失Wc(J/m)は次式で示される。
Figure 2005228701
但し、A;超電導線の形状因子に起因する係数、r;超電導線の半径、r;フィラメント領域外周部の半径、H;磁界振幅、ω;2πf
ここで、τeffは結合等価時定数で以下の式で示される。
Figure 2005228701
但し、L;線のツイストピッチ、σeff;マトリックスの等価導電率で以下の式で示される。
Figure 2005228701
但し、σ;フィラメント領域の等価導電率、σo1〜σc2;図2中の各部分の導電率、m,n,o,p;超電導断面構造の幾何学的寸法に依存する定数。
ここで、σはフィラメント領域が図3のようにNb−Tiフィラメント151の周囲に導電率の異なる金属b層152とc層154の2層構造となっている場合、以下の式で表される。
Figure 2005228701
但し、λ;フィラメント領域全体に対する超電導フィラメント部とb層部の占積率でc層の等価半径をcとするとλ=(b/c)となる。
σ;c層部の導電率。σ;b層部の導電率。αf;b層の厚さtをaで表現した場合の係数でt=b−a=αfa、よってαf=(b−a)/aとなり、tがフィラメント半径aに比較して薄い場合はαf<<1となる。
以下にb層とc層の導電率が異なる2つのケースについて示す。
i)b層が安定化銅(高導電率層)、c層がCu−Ni等の低導電率層の場合
(4)式中のσはCuNi合金の導電率σCuNiとなり、σが安定化銅の導電率σCuとなる。よって(σ/αf)>>σが成り立つため、(4)式は近似的に、
Figure 2005228701
ii)b層がCu−Ni等の低導電率層、c層が安定化銅(高導電率層)の場合
(4)式中のσは安定化銅の導電率σcuとなり、σがCu−Niの導電率σCuNiとなる。よって(σ/αf)<<σが成り立つため、(4)式は近似的に、
Figure 2005228701
また、通常の直流用Nb−Ti線材のように安定化銅とNb−Tiのみで構成されている場合は(4)式にあてはめるとσ=σ=σCuとなり、λはNb−Tiの占積率λとすると(5)式と同じ形になり、αf<<1より、
Figure 2005228701
ここで(6)式と(7)式を比較すると、λ=λ=0.6の場合、(6)式ではσ=0.25σCu、(7)式ではσ=4σCuとなり、マトリックスのほとんどが安定化銅にもかかわらず、分母と分子が逆になることでσが16倍も異なることがわかる。よって、Nb−Tiフィラメント周囲に薄い高抵抗層を配置することで、(6)式に示すように等価的な導電率σが減少し、結果的に交流損失が低減可能となる。ただし高抵抗層としてCu−10wt%Ni合金を選択した場合、確かにσは低減可能であるが、安定化銅より3桁も高い金属を超電導フィラメントの外周に直接配置するのは安定性を低下させる原因となる。
そこで、安定化銅とCu−10wt%Niの中間の電気抵抗率を有する金属あるいは合金をNb−Tiフィラメント周囲に薄く被覆した構造とすることで、σは(6)式と(7)式の中間の値をとることになり、交流損失と安定性のバランスの取れたNb−Ti線材を実現可能になる。
σは(6)式と(7)式の中間の値とするためには(4)式中のσとαfを調整することが重要となる。
いま、λ=0.6、σ=σCu=7×10(1/Ω・m)、σ=10(1/Ω・m)としてαfを0.01〜0.2まで変化させた場合(ケース1)、σ=5×10(1/Ω・m)としてαfを0.01〜0.2まで変化させた場合(ケース2)、σ=3.3×10(1/Ω・m)としてαfを0.01〜0.2まで変化させた場合(ケース3)のσの変化を図4に示す。
図4において、高抵抗層がない全て安定化銅の場合、σ=2.8×1010(1/Ω・m)となるが、ケース1よりσ=10(1/Ω・m)、αf=0.03の場合でもσ=1.6×1010(1/Ω・m)となり、安定化銅より7倍高い抵抗層をNb−Tiフィラメント半径に対して3%の厚さだけフィラメント外周に配置しただけでσは約43%低減させることができる。
ケース2のσ=5×10(1/Ω・m)は一般的にエアコン用の銅管等に使用されている工業用純銅(りん脱酸銅)の4.2Kにおける導電率に相当する値で、超電導安定化材用の高純度無酸素銅に比較すると4.2Kの極低温では1/10以下の導電率である。このように、Nb−Tiフィラメント周囲に薄いりん脱酸銅の層を設けることで半分以下にσを低減可能なことがわかる。
ケース3のσ=3.3×10(1/Ω・m)はCu−2.5wt%Niの4.2Kにおける導電率に相当する値で、Nb−Tiフィラメント周囲にフィラメント半径の1/100程度の薄いCu−2.5wt%Niの層を設けることでσを約1/6まで低減可能なことがわかる。
以上の理由により交流損失と安定性のバランスの観点からσをコントロールするために、Nb−Tiフィラメント周囲に配置する金属の導電率σは10〜3.3×10(1/Ω・m)が妥当な値であり、導電率σを抵抗率ρに変換するとρ=10−9〜3×10−8Ω・mの範囲となる。
実施例として図1に示した構造を有するNb−Ti超電導線、比較例として図5及び図6に示したNb−Ti超電導線を用意した。これら3種類のNb−Ti超電導線の線材の諸元を表1に示す。
Figure 2005228701
各線材に複合化した高抵抗金属と交流損失および安定性の関連性を調査するため、線径、フィラメント径、ツイストピッチ、およびNb−Tiの占積率は統一した。
実施例の超電導線は、図1に示すように、安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、Cu−2wt%Niからなる第1の被覆層23、フィラメント領域25、Cu−2wt%Niからなり20μmの厚さを有する第2の被覆層27、及び安定化銅からなる外皮9が被覆されている。また、フィラメント領域25は、直径16μmのNb−Tiからなるフィラメント51の周囲を厚さ0.5μmのりん脱酸銅からなる第3の被覆層63で被覆したものが1394本、安定化銅からなるマトリックス層65内に配された構造となっている。なお、Nb−Tiに対する高純度安定化銅(りん脱酸銅を含む)の比率(銅比)は2.25に形成されている。
比較例1の超電導線は、図5に示すように、安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、Cu−10wt%Niからなる第1の被覆層33、フィラメント領域35、Cu−10wt%Niからなり20μmの厚さを有する第2の被覆層37、及び安定化銅からなる外皮9が被覆されている。また、フィラメント領域35は、直径16μmのNb−Tiからなるフィラメント51の周囲を厚さ0.5μmの安定化銅からなる第3の被覆層73で被覆したものが1394本、Cu−10wt%Niからなるマトリックス層75内に配された構造となっている。なお、Nb−Tiに対する安定化銅の比率(銅比)は2.1に形成されている。
比較例2の超電導線は、CuNi等を含まない直流用のCu/Nb−Ti構造であり、図6に示すように、安定化銅からなる中央部1の外周に、順に、フィラメント領域45、及び安定化銅からなる外皮9が被覆されている。フィラメント領域45は、直径16μmのNb−Tiからなる1394本のフィラメント51が、安定化銅からなるマトリックス層85内に配された構造となっている。なお、Nb−Tiに対する安定化銅の比率(銅比)は2.5に形成されている。
3種類の線材の外部磁界5Tにおける臨界電流を4端子法により測定した。測定は長さ約1mの短尺サンプルをFRP製の円筒状ホルダーに張力をかけて巻線し、両端を電流端子へ半田付けし、電圧端子間距離400mmとしてホルダーを超電導マグネット内にセットし、外部から5Tの磁界を加えて測定した。臨界電流の定義は電圧基準0.1μV/cmとした。
交流損失は、表面をカプトンテープで電気絶縁した線材を、内径75mm、高さ70mmの55ターン・1層コイル状サンプルとし、そのコイル状サンプルを磁化測定用ピックアップコイルにセットし、外部からB=2±0.5Tの3角波交流磁界(直流バイアス磁界2T、3角波交流磁界振幅0.5T、f=1Hz)を加えてコイル状サンプルの磁化を測定し、得られた磁化曲線から交流損失を求めた。
安定性を定量的に評価する試験としてMQE(最小クエンチエネルギー;超電導線をクエンチさせるのに必要な最小熱エネルギー量で、MQEが大きいほど熱的安定性が高い)の測定を行った。長さ1mの短尺超電導線の中心部に直径0.2mmの絶縁皮膜付きマンガニン線ヒーターを長さ10mmにわたって巻線し、その上からエポキシ樹脂を塗布してヒーターの熱の大半が超電導線に伝わるようにした。上述の臨界電流測定用円筒状ホルダーに超電導線を巻き付け、外部から5Tの磁界を加えた状態で線材に臨界電流値の約55%に相当する一定電流(350A)を通電保持し、マンガニン線ヒーターに幅20msのパルス電流を通電して線材を加熱した。線材がクエンチするまでパルス電流波高値を徐々に高くしていき、クエンチが発生したときの電流値とヒーター抵抗値から入熱量を計算し、その値をMQE(最小クエンチエネルギー)とした。
表2に前述の3種類(実施例、比較例1,2)のNb−Ti線材の臨界電流、交流損失、MQEの値を示す。
Figure 2005228701
臨界電流値は3つのサンプルともほぼ同じ値となった。
交流損失は比較例1、実施例、比較例2のサンプルの順で小さく、安定化銅に比較して3桁電気抵抗率の高いCu−10wt%Niを複合化した線材が最も低かった。高抵抗層を含まない直流用である比較例2のサンプルは他の2つのサンプルに比較して極端に交流損失が大きくなった。比較例2のサンプルの大きな交流損失の90%以上は結合損失成分である。MQE値は、比較例2、実施例、比較例1のサンプルの順で大きく、Cu/Nb−Ti構成の比較例2が最も高く、実施例のサンプルも比較例2のサンプルに近い安定性を示した。
以上の結果から、交流損失を極力低減したい場合には、比較例1のサンプルが最適であるが、交流損失が低い一方で安定性が低く(MQE値が低く)、高い負荷率で運転するマグネット用としては不向きであることがわかる。一方、実施例のサンプルは交流損失が比較例1のサンプルの1.94倍と高いものの、MQE値はCu/Nb−Ti構造の比較例2のサンプルに近い値を示し、比較例1のサンプルの2.35倍の安定性があることがわかる。以上より、実施例のサンプルは交流損失を低減しつつ安定性を保持していることが確認できた。
本発明の一実施形態に係るNb−Ti超電導線の断面図である。 一般的なパルス用Nb−Ti超電導線の構成と寸法を示す断面図である。 Nb−Tiフィラメント周囲が2層構造(b層とc層)になっている場合の断面図である。 等価導電率σとαf(高抵抗層の厚さ/Nb−Tiフィラメント半径)の関係を示すグラフである。 比較例1のNb−Ti超電導線の断面図である。 比較例2のNb−Ti超電導線の断面図である。 一般的なパルス用Nb−Ti超電導線の断面図である。
符号の説明
1 中央部
3,23,33 第1の被覆層
5,25,35,45 フィラメント領域
7,27,37 第2の被覆層
9 外皮
51 フィラメント
53,63,73 第3の被覆層
55,65,75,85 マトリックス層

Claims (5)

  1. 安定化銅からなる中央部の外周に、順に、第1の被覆層、フィラメント領域、第2の被覆層、及び安定化銅からなる外皮が被覆され、前記フィラメント領域は第3の被覆層が形成された複数のNb−Tiフィラメントとこれらを覆うように形成されたマトリックス層とを有するNb−Ti超電導線において、前記マトリックス層が安定化銅からなり、前記第3の被覆層が、温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有する銅あるいは銅合金からなることを特徴とするNb−Ti超電導線。
  2. 前記第1及び第2の被覆層も温度10K以下における電気抵抗率が1×10−9〜3×10−8Ω・mの範囲の抵抗を有する銅あるいは銅合金からなることを特徴とする請求項1記載のNb−Ti超電導線。
  3. 前記第3の被覆層の厚さxと前記Nb−Tiフィラメントの半径yとの比率(x/y)が0.1以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のNb−Ti超電導線。
  4. 前記Nb−Tiフィラメント径が30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のNb−Ti超電導線。
  5. 超電導線の断面形状において、前記Nb−Tiフィラメントに対する前記第3の被覆層の占有率比Xが0.1〜0.8、前記安定化銅の占有比Yが1.5〜3であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のNb−Ti超電導線。
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