JP2005221658A - 音響調整システムおよび音響調整装置 - Google Patents

音響調整システムおよび音響調整装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 音響空間に発せられる音をより適切に調整する。
【解決手段】 音響調整卓2は、入力用マイクMCeから得られる音信号の特性を調整者からの指示に応じて変化させて出力する。この音信号は音響空間RhのスピーカSPhと信号処理装置3とに供給される。信号処理装置3は、音響空間Rhの音響特性を示す音響特性データを記憶する記憶部571と、音響調整卓2から供給される音信号に対して音響特性データが示す音響特性を付与する特性処理部6とを有する。調整用空間Rmには、特性処理部6から供給される音信号に基づいて調整用空間Rmに放音するスピーカSPmが設けられている。調整者Uは、スピーカSPmから発せられる音を聴取しながら音響調整卓2を操作することにより、音響空間RhのスピーカSPhから発せられる音の特性を調整する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ホールなどの音響空間において発せられる音の特性を調整するための技術に関する。
コンサートや催事が行なわれるホールなどの音響空間内に出力される音は、その空間の音響特性に合わせて特性が調整される。具体的には、音響空間の天井や壁面に設置されたマイクロホン(以下「モニタマイク」という)で音響空間内の音を収音し、その収音された音を調整室と呼ばれる部屋で聴きながら、音響空間に設置されたスピーカから出力される音の特性を適宜に調整する方法が一般的である(例えば特許文献1参照)。
特開2001−125578号公報(第1図および第2図)
しかしながら、このようなモニタマイクを使用した場合には、客席の位置において実際に受聴されるべき音の特性を調整室において確認することができず、必ずしも適切な調整を行なうことができないという問題がある。もちろん、この問題は、客席の位置にモニタマイクを設置すれば解決可能ではあるが、そのためにはモニタマイクを設置するために客席の一部を空席にしなければならないから、現実的な解決手法とは言えない。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、音響空間に発せられる音をより適切に調整することを可能にした仕組みを提供することを目的としている。
上述した課題を解決するために、本発明に係る音響調整システムは、供給された音信号に基づいて音響空間内に放音する第1の放音手段と、音響空間の音響特性を示す音響特性データを記憶した第1の記憶手段と、供給された音信号に対し、第1の記憶手段に記憶された音響特性データが示す音響特性を付与する特性処理手段と、特性処理手段による処理後の音信号に基づいて調整用空間内に放音する第2の放音手段と、音源から得られた音信号の特性を変化させて第1の放音手段および特性処理手段に供給する調整手段とを具備することを特徴としている。
この発明においては、音源から調整手段を介して出力された音信号に対して音響空間の音響特性を付与した音が第2の放音手段から調整用空間に出力される一方、音信号の特性が調整手段によって適宜に変化させられる。この構成によれば、音信号の調整を行なう調整者は、音響空間の音響特性が付与された音を調整用空間において受聴しながら音信号の特性を適宜に調整することができる。したがって、音響空間の天井や壁面に設置されたモニタマイクから得られる音に基づいて音信号を調整する場合と比較して、より適切に音信号の特性を調整することができる。しかも、音信号には音響特性データに基づいて音響空間の音響特性が付与されるから、音響空間に発せられて受聴者に至るべき音を収音するためのモニタマイクを音響空間内に設置する必要はない。したがって、例えばホールなどの音響空間において、客席の一部をモニタマイクの設置のために確保する必要はない。
なお、本発明における音響特性データの典型的な例は、音響空間のインパルス応答を示すデータである。このインパルス応答は、音響空間内における実測やシミュレーションによって予め取得される。音響特性データがインパルス応答のデータである場合、音信号に対して音響特性データが示す音響特性を付与する処理は、音信号に対してインパルス応答を用いた畳み込み演算を行なう処理となる。また、調整手段は、例えば利用者による入力手段への入力に応じて音信号の特性を変化させる。
本発明における第2の放音手段としてはスピーカやヘッドホンが採用され得る。第2の放音手段としてスピーカが採用される場合、調整用空間内において調整者が受聴する音は、第2の放音手段から出力された音に調整用空間の音響特性が反映されたものとなる。そこで、本発明の好ましい態様においては、第2の放音手段に供給される音信号から調整用空間の音響特性の逆特性が付与される。より具体的には、この態様においては、調整用空間の音響特性(音響特性の逆特性を含む)を示す調整用空間データを記憶した第2の記憶手段が設けられる一方、特性処理手段は、第2の記憶手段に記憶された調整用空間データに基づいて調整用空間の逆特性を音信号に付与する処理をさらに行なう。この望ましい態様によれば、第2の放音手段から発せられて調整者に到達する音を、音源からの音に音響空間の音響特性を付与した音(すなわち調整用空間の音響特性が付与されていない音)に一致または近似させることができるから、調整用空間内に再現される音場を音響空間の音場により近づけることができる。ここで、調整用空間データに基づいて調整用空間の逆特性を音信号に付与する処理は、例えば、調整用空間のインパルス応答から算出された逆特性のインパルス応答を用いた畳み込み演算を音信号に施す処理である。
一方、モニタマイクを音響空間内に設置する従来の技術のもとでは、モニタマイクの数が少ない場合に、調整用空間内において音響空間内の極めて限られた地点での音場を確認することしかできないという問題が生じ得る。一方、音響空間におけるより多くの地点において音響特性を確認するために多数のモニタマイクを音響空間に設置しようとすれば、モニタマイクを設置するために多数の客席を空席にしなければならない。そこで、本発明の好ましい態様において、第1の記憶手段は、各々が音響空間内の異なる位置の音響特性を示す複数の音響特性データを記憶する一方、特性処理手段は、複数の音響特性データのうちいずれかの音響特性データ(例えば利用者により選択された音響特性データ)が示す音響特性を音信号に付与する。この態様によれば、音響空間内の異なる位置に対応する音響特性データのうち利用者により指示されたデータに基づいて音信号に音響特性が付与されるから、音響空間内の所望の位置における音場が調整用空間内に再現される。
また、音響空間の音響特性は、その空間への人員の収容率や空間内の温度といった種々の環境に応じて変化することが知られている。そこで、本発明の望ましい態様においては、音響空間の環境に応じた音響特性を各々が示す複数の環境特性データを記憶した第3の記憶手段と、第3の記憶手段に記憶された環境特性データに基づいて音響空間の環境に応じた音響特性を第2の放音手段に供給される音信号に付与するための補正手段とが設けられる。この態様によれば、第2の放音手段に供給される音信号に対して環境特性データを用いた補正が施されるから、音響空間の環境の変化を補償した忠実な音場が調整用空間に再現されることとなる。したがって、調整者は、より適切に音信号の調整を行なうことができる。
なお、この態様においては、補正手段が、それぞれ異なる環境に対応する2つの環境特性データに基づいて補正係数を算定し、第1の記憶手段に記憶された音響特性データを補正係数に基づいて補正する一方、特性処理手段が、補正手段による補正後の音響特性データが示す音響特性を音信号に付与する構成としてもよい。こうすれば、2つの環境特性データさえ取得されれば音響空間の環境の変化を補償することができる。もっとも、音響空間の環境に応じて多数の環境特性データを予め取得しておき、このうちのいずれかを用いて音信号を補正する構成としてもよい。
また、本発明の別の態様においては、頭部伝達関数(例えば調整者の頭部伝達関数やこれに類似する頭部伝達関数)を記憶する第4の記憶手段が設けられる一方、特性処理手段は、第4の記憶手段に記憶された頭部伝達関数に基づいて音信号を補正する処理をさらに行なう。例えば、特性処理手段は、第4の記憶手段に記憶された頭部伝達関数が示す特性を音信号に付与する補正処理を行なう。この態様によれば、第2の放音手段から調整用空間内に出力される音は調整者の頭部伝達関数を反映させたものとなるから、調整用空間内に再現される音場を音響空間内の受聴者が知覚する音場により近づけることができる。
なお、本発明は、音響調整システムに用いられる音響調整装置(後述する実施の形態における音響調整卓と信号処理装置とを備えた装置)としても特定される。すなわち、この装置は、音響空間の音響特性を示す音響特性データを記憶した記憶手段と、供給された音信号に対して記憶手段に記憶された音響特性データが示す音響特性を付与し、これにより得られた音信号を、調整用空間内に放音する第2の放音手段に出力する特性処理手段と、音源から得られた音信号の特性を変化させ、これにより得られた音信号を、音響空間内に放音する第1の放音手段と特性処理手段とに供給する調整手段とを具備する。この装置によっても、本発明に係る音響調整システムと同様の効果が得られる。なお、この音響調整装置は、単一の装置として総ての要素が一体に構成されている必要は必ずしもなく、その一部の要素と他の要素とが別体の装置として構成されていてもよい。
また、本発明は、音響空間に発せられる音の特性を調整するための方法としても特定され得る。すなわち、この方法は、音源から得られる音信号を調整し、これにより得られた音信号に応じた音を第1の放音手段に供給して音響空間に放音させる一方、調整後の音信号に対して音響空間の音響特性を付与したうえで第2の放音手段に供給して調整用空間に放音させることを特徴とする。この方法によっても、本発明に係る音響調整システムと同様の効果が得られる。さらに、本発明は、コンピュータを音響調整装置として機能させるためのプログラムとしても特定され得る。このプログラムは、コンピュータを、音響空間の音響特性を示す音響特性データを記憶した記憶手段と、供給された音信号に対して前記記憶手段に記憶された音響特性データが示す音響特性を付与し、これにより得られた音信号を、調整用空間内に放音する第2の放音手段に出力する特性処理手段と、音源から得られた音信号の特性を利用者からの指示に応じて変化させ、これにより得られた音信号を、前記音響空間内に放音する第1の放音手段と前記特性処理手段とに供給する調整手段として機能させることを特徴とする。このプログラムは、ネットワークを介した配信によってコンピュータに提供されるものであってもよいし、光ディスクに代表される各種の記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされるものであってもよい。
以上説明したように、本発明によれば、音響空間の音場が音響特性データに基づいて調整用空間に再現されるから、音響空間に発せられる音をより適切に調整することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<A:音響調整システムの構成>
まず、図1を参照して、本発明に係る音響調整システムの構成を説明する。同図に示すように、この音響調整システム100は、音響空間Rhと調整用空間Rmとにわたって配置される。このうち音響空間Rhは、音響調整の対象となる空間であり、例えばコンサートや催事が行なわれるホールである。本実施形態における音響空間Rhは、楽音や音声などの音を発する実演者が位置すべきステージ(舞台)STと、この演者による演奏、歌唱、講演または演劇といった実演を鑑賞する鑑賞者が位置すべき客席SEとを有する。一方、調整用空間Rmは、音響空間Rhに発せられる音の特性を調整者Uが調整するための空間(調整室)であり、音響空間Rhに近接して設けられている。
音響調整システム100は、4つのスピーカSPh(SPh1,SPh2,SPh3,SPh4)を有する。これらのスピーカSPhの各々は、供給された音信号に基づいて音響空間Rh内に放音する手段である。各スピーカSPhの前段には、音信号を増幅してスピーカSPhに供給するアンプ73と、音信号の特性を変化させる信号処理部74とが設けられている。このうち信号処理部74は、音信号のうち特定の周波数成分の信号レベルを増減させるイコライザや音信号を遅延させる遅延回路などを含んでいる。この信号処理部74によるイコライジング処理や遅延処理の内容は、音響空間Rhの音響特性に応じて予め固定的に設定されている。なお、図1におけるスピーカSPh2は、放音面を下方に向けた状態で音響空間Rhの天井面に設置されている。
また、音響調整システム100は、入力用マイクMCeとモニタマイクMCaとを有する。これらのマイクMCeおよびMCaは、音響空間Rhにおける周囲の音に応じた信号(以下「音信号」という)を生成する手段である。このうち入力用マイクMCeは、音響空間RhのステージST上に設置され、このステージST上に居る実演者が発した音に応じた音信号を出力する。一方、モニタマイクMCaは、音響空間Rhの客席SEに配置され、スピーカSPhから発せられて客席SEに到達した音に応じた音信号を出力する。
さらに、音響調整システム100は、音響調整卓2と信号処理装置3と7つのスピーカSPm(SPm1,SPm2,SPm3,SPm4,SPm5,SPm6,SPm7)とを有する。スピーカSPmは、それぞれアンプ71を介して信号処理装置3に接続されている。各スピーカSPmは、信号処理装置3から出力されてアンプ71により増幅された音信号に基づいて調整用空間Rm内に放音する手段である。7つのスピーカSPm1〜SPm7は、調整用空間Rmの中央に位置する調整者Uを囲むように当該調整用空間Rmの壁面に設置される。具体的には、スピーカSPm1は調整者Uの正面に位置し、スピーカSPm2は調整者Uの正面左側に位置し、スピーカSPm3は調整者Uの正面右側に位置する。また、スピーカSPm4は調整者Uの左側に位置し、スピーカSPm5は調整者Uの右側に位置する。さらに、スピーカSPm6は調整者Uの後方左側に位置し、スピーカSPm7は調整者Uの後方右側に位置する。
一方、音響調整卓2(いわゆるミキシングコンソール)は、調整用空間Rm内に設置され、音響空間Rh内の入力用マイクMCeから供給される音信号の特性を調整者Uからの指示に応じて変化させるための装置である。図2に示すように、この音響調整卓2は、入力用マイクMCeから供給されたアナログの音信号をデジタルの音信号に変換するためのA/D変換器21と、A/D変換器21から出力された音信号の特性を調整する4つの調整ユニット231を備える調整装置23と、各調整ユニット231から出力されたデジタルデータをアナログの音信号に変換するためのD/A変換器25と、調整者Uによる操作を受け付ける入力装置27とを有する。このうち入力装置27は、スイッチやフェーダといった各種の操作子を備え、これらの操作子に対する操作の内容に応じた信号を調整装置23に出力する。
一方、A/D変換器21から出力された音信号は、音響空間RhにおけるスピーカSPh1〜SPh4の数に相当する4チャネル分の音信号に分岐させられ、その各々が異なる調整ユニット231に供給される。各調整ユニット231は、A/D変換器21から供給された各チャネルの音信号のレベルを特定の周波数帯域ごとに調整するイコライザ231aと、イコライザ231aから出力された音信号を遅延させる遅延回路231bと、遅延回路231bから出力された音信号のレベルを調整するアンプ231cとを有する。イコライザ231aによるレベル増減の対象となる周波数帯域やその増減量、遅延回路231bによる遅延時間、およびアンプ231cのによるレベルの増減量といった音信号の調整に関わるパラメータは、入力装置27に与えられた操作に応じて調整ユニット231ごとに適宜に選定される。各調整ユニット231による調整を経て後段のD/A変換器25から出力された音信号は、それぞれ信号処理部74およびアンプ73を介してスピーカSPh1〜SPh4に供給されるとともに信号処理装置3にも供給される。以上の構成のもと、調整者Uは、入力装置27の操作子を適宜に操作することによって、入力用マイクMCeから供給されてスピーカSPh1〜SPh4および信号処理装置3に供給される音信号の特性を任意に調整することができる。
次に、図1に示した信号処理装置3は、音響調整卓2やモニタマイクMCaから供給される音信号に対して各種の処理を施してスピーカSPm1〜SPm7に出力するための装置であり、調整用空間Rm内に設置されている。図3に示すように、この信号処理装置3は、スイッチや摘みなどの操作子を備えた入力装置37を有する。調整者Uは、この入力装置37の操作子を適宜に操作することによって、モニタモード、音場再現モードおよびサンプルモードのいずれかを信号処理装置3の動作モードとして任意に選択することができる。一方、図3に示したモニタ処理部31、音場再現処理部32およびサンプル処理部33は、各動作モードに応じた処理を行なう手段である。すなわち、モニタ処理部31はモニタモードが選択された場合に動作し、音場再現処理部32は音場再現モードが選択された場合に動作し、サンプル処理部33はサンプルモードが選択された場合に動作する。一方、図3に示す切換部35には、上述した7つのスピーカSPm1〜SPm7とヘッドホン(図示略)とが接続されている。この切換部35は、入力装置37に対する操作の内容に基づいて、スピーカSPm1〜SPm7とヘッドホンとのいずれか一方を、モニタ処理部31、音場再現処理部32またはサンプル処理部33から出力された音信号の出力先として選択する。なお、図3に示したモニタ処理部31、音場再現処理部32、サンプル処理部33および切換部35は、DSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアのみによって実現されてもよいし、CPUなどのハードウェアと当該CPUが実行するプログラムとの協働によって実現されてもよい。
図3に示したモニタ処理部31は、音響空間Rhに配置されたモニタマイクMCaから供給される音信号を切換部35に出力する。したがって、モニタモードが選択されている場合には、スピーカSPh1〜SPh4からモニタマイクMCaに到達した音がスピーカSPm1〜SPm7またはヘッドホンから出力される。調整者Uは、この音を受聴しながら音響調整卓2を適宜に操作することにより、スピーカSPh1〜SPh4を介して出力される音の特性を従来の技術と同様の手順にて調整することができる。一方、サンプル処理部33は、音響調整卓2から供給される4チャネル分の音信号のいずれかを選択的に出力する。したがって、サンプルモードが選択されている場合には、音響空間Rhに配置された4つのスピーカSPh1〜SPh4のいずれかによって出力されるべき音が選択的にスピーカSPm1〜SPm7またはヘッドホンから出力される。調整者Uは、この音を受聴しながら音響調整卓2を適宜に操作することにより、各スピーカSPhから出力される音の特性を任意に調整することができる。
次に、音場再現処理部32は、音響調整卓2から供給される音信号に対し、音響空間Rhの音場を調整用空間Rmに再現するための処理を施して出力する手段である。図4は、音場再現処理部32の構成を機能的に示すブロック図である。同図に示すように、音場再現処理部32は、音響調整卓2からA/D変換器51を介して供給される音信号に特定の音響特性を付与するための特性処理部6を有する。特性処理部6による処理後の音信号は、D/A変換器52によりアナログの音信号に変換された後に切換部35からスピーカSPm1〜SPm7またはヘッドホンに供給される。特性処理部6は、フィルタ処理部61と逆フィルタ処理部62とを含む。このうちフィルタ処理部61は、音響調整卓2から供給される音信号に対して音響空間Rhの音響特性を付与する手段である。一方、逆フィルタ処理部62は、フィルタ処理部61から出力された音信号に対して調整用空間Rmの音響特性に基づく逆フィルタ処理を施す手段である。
音場再現処理部32は3つの記憶部571、572および573を有する。これらの記憶部は、ひとつの記憶装置に画定された複数の記憶領域によって実現されてもよいし、各々が別個の記憶装置によって実現されてもよい。
このうち記憶部571は、音響空間Rhの音響特性を示すデータ(以下「音響特性データ」という)を記憶している。本実施形態における音響特性データは、音響空間Rhのインパルス応答を示すデータである。このインパルス応答は、音響空間Rhの特性を用いたシミュレーションによって演算されたものであってもよいが、本実施形態においては音響空間Rhにおいて実際に測定されたものを用いる。より具体的には、総ての客席SEが空席とされた音響空間Rh内に各スピーカSPhから発せられたインパルス音をマイクロホンアレイによって収音してインパルス応答が測定される。図5に示すように、このインパルス応答の測定に用いられるマイクロホンアレイ90は、各々が異なる方向d1〜d7に向けられた7つの指向性マイク(超指向性マイク)を有する。この指向性マイクの方向d1〜d7は、調整用空間Rmにおける調整者Uに対するスピーカSPm1〜SPm7の向きと一致している。また、図6に示すように、インパルス応答の測定は音響空間Rh内の複数の地点(以下「対象地点」という)Pにおいて実行される。この対象地点Pには、客席SE近傍の地点だけでなく、ステージST上の実演者が所在すべき地点(図6に示す地点Pst)も含まれている。このような測定によれば、各スピーカSPhにより発せられて方向d1〜d7から各対象地点Pに到達した音のインパルス応答が得られる。そして、記憶部571は、図7に示すように、以上の測定によって得られたインパルス応答が音響特性データとして含められたテーブルTBL1を各対象地点P(Pa、Pb、Pc、…)ごとに記憶している。ひとつの対象地点Pに対応するテーブルにおいては、インパルス応答を示す各音響特性データが、そのインパルス応答に対応するインパルス音を発生したスピーカSPhi(iは1から4までの整数)の識別情報と、そのインパルス応答が測定された方向dj(jは1から7までの整数)とに対応付けられている。例えば図7において、音響特性データが示すインパルス応答IRa11は、スピーカSPh1から発せられて方向d1から対象地点Paに到達した音のインパルス応答を示している。以下では、スピーカSPhiから発せられて方向djから対象地点Px(xは各対象地点に割り当てられた符号)に到達した音のインパルス応答を「インパルス応答IRxij」と表記する。
図4に示す選択部54は、テーブルTBL1に含まれる音響特性データのうち特定の対象地点Pに対応する音響特性データを選択的に読み出して出力する手段である。調整者Uは、入力装置37を適宜に操作することにより、図6に示した複数の対象地点Pのいずれかを任意に選択することができる。選択部54は、こうして選択された対象地点Pに対応する音響特性データを記憶部571から読み出すのである。
ところで、音響空間Rhの音響特性は音響空間Rhの環境に応じて異なることが知られている。例えば、音響空間Rhの総ての客席SEに鑑賞者が着席している環境と音響空間Rh内に鑑賞者が存在しない環境とでは音響特性は異なる。そこで、図4に示すように、本実施形態における音場再現処理部32は、選択部54によって読み出された音響特性データに対して、音場再現の対象となる音響空間Rhの環境に応じた補正を施す補正部56を備えている。一方、音場再現の対象となる音響空間Rhの環境は、調整者Uが入力装置37を操作することによって任意に指定される。本実施形態においては、音響空間Rhに対する鑑賞者の収容の程度(以下「収容率」という)が調整者Uによって入力され、この入力された収容率に応じた補正が音響特性データに対して施される。
記憶部573は、音響空間Rhの環境に応じた音響特性を示すデータ(以下「環境特性データ」という)を記憶している。この環境特性データは、補正部56による補正に用いられる係数(以下「補正係数Dc」という)を算定するためのデータである。本実施形態における環境特性データは、音響空間Rhの収容率に応じた音響特性を示す。より具体的には、音響空間Rh内に鑑賞者が存在しない場合(収容率0%)の減衰特性を示す環境特性データと、音響空間Rhの総ての客席SEに鑑賞者が着席している場合(収容率100%)の減衰特性を示す環境特性データとが記憶部573に記憶されている。これらの環境特性データは、図8に示すように、音響空間Rh内に発せられた音の減衰特性を近似した指数曲線P0およびP100をそれぞれ示している。すなわち、総ての客席SEに鑑賞者を着席させた状態で音響空間Rh内の幾つかの代表的な地点(例えば4箇所ないし6箇所)においてインパルス応答をそれぞれ測定し、これらの測定結果から求められる減衰特性の平均値から近似される指数曲線P100が収容率100%に対応した環境特性データとして用いられる。一方、音響空間Rhから総ての鑑賞者を排除した状態で同地点においてインパルス応答を測定し、これらの測定結果から求められる減衰特性の平均値から近似される指数曲線P0が収容率0%に対応した環境特性データとして用いられる。
次に、図4に示す補正係数算定部55は、記憶部573に記憶された2つの環境特性データと調整者Uによって入力された収容率とに基づいて、補正部56による補正に用いられる補正係数Dcを算定する手段である。すなわち、図8を例にとると、0%と100%との間の収容率(例えば50%)が調整者Uによって指定された場合、補正係数算定部55は、収容率0%の指数曲線P0と収容率100%の指数曲線P100との間に位置する指数曲線Pxを示す補正係数Dcを算定して出力する。この指数曲線Pxは、調整者Uによって指定された収容率が高いほど収容率100%の指数曲線に近づき、指定された収容率が低いほど収容率0%の指数曲線に近づく。
より具体的には、補正係数Dcは以下の手順にて算定される。
減衰曲線Pに対して減衰率a(t)を、
a(t)=20log10(P)
とすると、収容率0%のときの減衰曲線P0、および収容率100%のときの減衰曲線P100は、
P0=10^(a0(t)/20)
P100=10^(a100(t)/20)
と表される。ただし、上式におけるa0(t)は収容率0%のときの減衰率であり、a100(t)は収容率100%のときの減衰率である。また、「^」はべき乗を表す演算子である。
このとき、調整者Uによって指定された収容率Audiに応じた補正係数Dc(図8の指数曲線Px)は、
Dc=10^((a100(t)−a0(t))×Audi/20)
と表される。補正係数算定部55は、この数式と環境特性データと利用者により指定された収容率とに基づいて補正係数Dcを算定するのである。
補正部56は、選択部54から出力される音響特性データが示すインパルス応答に対し、補正係数算定部55によって算定された補正係数Dcを乗算し、これにより得られた新たな音響特性データをフィルタ処理部61に出力する。フィルタ処理部61は、A/D変換器51から出力される音信号に対し、補正部56から供給される音響特性データのインパルス応答を用いた畳み込み演算を施す。
ここで、音信号の出力先としてスピーカSPm1〜SPm7が選択されている場合、これらのスピーカSPm1〜SPm7から出力された音は音響空間Rh内を経て調整者Uに受聴される。このため、調整者Uが実際に受聴する音は、音場再現処理部32からスピーカSPm1〜SPm7に供給された音信号に対して調整用空間Rmの音響特性が付与されたものとなる。しかしながら、調整者Uが知覚する音場は音響空間Rhの音場にできる限り近いことが望ましい。そこで、本実施形態においては、フィルタ処理部61から出力された音信号に対し、調整用空間Rmの音響特性の逆特性を付与するためのフィルタ処理が施される。この構成によれば、スピーカSPm1〜SPm7から発せられて調整者Uに到達する音の特性を、フィルタ処理部61から出力された音信号の特性と一致または近似させることができる。すなわち、調整者Uに到達する音から調整用空間Rmの音響特性をキャンセルすることができるのである。ただし、逆フィルタ処理部62は、音信号の出力先としてスピーカSPm1〜SPm7が選択されている場合に限って逆フィルタ処理を実行し、音信号の出力先としてヘッドホンが選択されている場合には逆フィルタ処理を停止する。
この逆フィルタ処理を実現するために、記憶部572は、調整用空間Rmの音響特性を示すデータ(以下「調整用特性データ」という)を記憶している。本実施形態における調整用特性データは、調整用空間Rmにて予め取得されたインパルス応答を示すデータである。このインパルス応答は、調整用空間Rmの特性を用いたシミュレーションによって演算されたものであってもよいが、本実施形態においては調整用空間Rmにおいて実際に測定されたものを用いる。すなわち、スピーカSPm1〜SPm7の各々から出力されたインパルス音を、調整用空間Rmのうち調整者Uが所在すべき地点に配置されたマイクロホンによって収音してインパルス応答が測定される。記憶部572は、図9に示すように、各スピーカSPmの識別情報と、そのスピーカSPmからのインパルス音により測定されたインパルス応答を示す調整用特性データとが対応付けられたテーブルTBL2を記憶している。例えば図9において、調整用特性データが示すインパルス応答IR1は、スピーカSPm1から発せられた音のインパルス応答を示している。以下では、スピーカSPmjから調整者Uに到達する音のインパルス応答を「インパルス応答IRj」と表記する。図4に示した逆フィルタ処理部62は、フィルタ処理部61から出力された音信号に対し、記憶部572に記憶された調整用特性データを用いた逆フィルタ処理を施す。
次に、図10は、特性処理部6の具体的な構成を示すブロック図である。同図に示す伝送ライン29は、音響調整卓2から音響空間RhのスピーカSPhに至る4チャネル分の伝送ラインである。なお、図10においては、図面が煩雑になるのを防止するためにA/D変換器51の図示が省略されている。
図10に示すように、調整用空間Rmに設けられたスピーカSPmごとに、4本の伝送ライン29の各々から分岐した4チャネル分の伝送ライン66の組が設けられている。各伝送ライン66上には、フィルタ処理部61を構成するフィルタ611と、逆フィルタ処理部62を構成するフィルタ621とが直列に配置されている。ひとつの組に属する4本の伝送ライン66は加算器64に接続されている。この加算器64は、ひとつの組に属する4本の伝送ライン66のフィルタ621から出力された音信号を加算する手段である。加算器64から出力された音信号はD/A変換器52およびアンプ71を介してスピーカSPmに供給される。
スピーカSPhiへの伝送ライン29から分岐してスピーカSPmjに至る伝送ライン66のフィルタ611には、インパルス応答IRxijを示す音響特性データが補正部56から供給される。一方、スピーカSPmjに至る伝送ライン66のフィルタ621には、インパルス応答IRjを示す調整用特性データが記憶部572から供給される。例えば、スピーカSPh4に至る伝送ライン66から分岐してスピーカSPm1に至る伝送ライン66に着目し、対象地点Paが調整者Uによって指定された場合を想定すると、この伝送ライン66上のフィルタ611にはインパルス応答IRa41が供給され、フィルタ621にはインパルス応答IR1が供給される。したがって、この構成のもとで各スピーカSPmjに供給される音信号Rjは以下の式にて表現される。
Figure 2005221658
なお、この式における「Si」は、音響調整卓2からスピーカSPhiに供給される音信号を示している。
次に、本実施形態の動作を説明する。なお、以下では、調整者Uによって音場再現モードが選択され、調整用空間Rmにおける音信号の出力先としてスピーカSPm1〜SPm7が指定されている場合を想定する。
まず、ステージST上の実演者による実演に伴なって入力用マイクMCeから音信号が出力される。この音信号は、入力用マイクMCeから音響調整卓2を介してスピーカSPh1〜SPh4と信号処理装置3とに供給される。スピーカSPh1〜SPh4は、この音信号に基づいて音響空間Rh内に放音する。一方、調整用空間Rm内の調整者Uは、入力装置37を適宜に操作することによって、音響空間Rhのうち音場を再現すべき対象地点Pとその音響空間Rhの収容率とを指定する。音場再現処理部32の選択部54は、記憶部571に記憶された多数の音響特性データのうち調整者Uによって指定された対象地点Pに対応するインパルス応答の音響特性データを読み出す。一方、補正係数算定部55は、記憶部573に記憶された環境特性データに基づいて、調整者Uにより指定された収容率に対応する補正係数Dcを算定する。そして、補正部56は、この補正係数Dcを選択部54により読み出された音響特性データに乗算して出力する。
次いで、特性処理部6のフィルタ処理部61は、音響調整卓2からA/D変換器51を介して供給される音信号に対し、補正部56による補正後の音響特性データが示すインパルス応答を用いた畳み込み演算を施す。このフィルタ処理により、音信号に対して音響空間Rhの音響特性が付与される。一方、特性処理部6の逆フィルタ処理部62は、フィルタ処理部61から出力された音信号に対し、記憶部572に記憶された調整用空間Rmデータを用いた逆畳み込み演算を施す。この逆フィルタ処理部62から出力された音信号は、D/A変換器52を介してアナログ信号に変換されたうえで各スピーカSPmの前段のアンプ71に供給される。スピーカSPmは、アンプ71により増幅された音信号に基づいて調整用空間Rm内に放音する。調整者Uは、この音を受聴しながら音響調整卓2を適宜に操作し、スピーカSPh1〜SPh4から音響空間Rhに発せられる音が所望の特性となるように調整する。スピーカSPm1〜SPm7から発せられる音は逆フィルタ処理を経た音信号に基づくものであるから、調整者Uは、調整用空間Rmの音響特性が相殺された音を受聴することとなる。
このように、本実施形態においては、音響空間Rhの各対象地点Pにおける音場が調整用空間Rmに再現されるから、音響空間Rhに発せられる音の特性をより適切に行なうことが可能となる。また、音響空間Rhにおける複数の対象地点Pのいずれかを調整者Uが任意に選定できるようになっているから、音響空間Rhの広い領域にわたって音響特性を適切に調整することができる。しかも、本実施形態においては、調整用空間Rmの音響特性に応じた逆フィルタ処理が音信号に対して施されるようになっている。したがって、調整用空間Rmに再現される音場を音響空間Rhの音場により近づけることができる。一方、音響空間Rhの客席SEにモニタマイクを設置することは原理的に不要である。したがって、音響空間Rhの客席SEをモニタマイクの設置のために空席とする必要はない。
また、本実施形態においては、調整用空間Rmに再現される音場に音響空間Rhの環境の違いを反映させることができる。したがって、例えば鑑賞者が収容される前に行なわれるリハーサルの段階においても、収容率を適宜に選定することによって、鑑賞者が収容された状況を想定したうえで音場の調整を行なうことができる。特に、本実施形態においては、ステージST上の実演者が所在すべき地点のインパルス応答が音響特性データとして予め用意されている。歌唱者や楽器の演奏者などの実演者にとっては、自分がどのような環境のもとで実演を行なうことになるのかが重要な関心事となる。本実施形態によれば、実演者が所在すべき地点の音場が調整用空間Rmに再現され、しかも音響空間Rhの環境を任意に指定することができる(例えば鑑賞者が収容された環境を指定することができる)から、実演者は、自分が実演を行なうことになる音場を事前に確認し、必要に応じてその音場を調整することができる。一方、音響調整卓2から出力された音信号はスピーカSPh1〜SPh4および信号処理装置3の双方に供給されるから、音響空間Rhに鑑賞者が収容されて実演が行なわれている時であっても音響空間Rhの音場を調整することができる。
さらに、本実施形態においては、音場再現処理部32によって調整用空間Rmに音響空間Rhの音場を再現する音場再現モードのほか、客席SEに配置されたモニタマイクMCaにより収音された音を調整用空間Rmに出力するモニタモードを選択することができる。したがって、従来の技術のように客席SEにて鑑賞者に受聴される音そのものを調整用空間Rmにおける調整のために受聴することも可能である。一方、従来と同様のモニタモードを選択できると言っても、音場再現モードによる音場の調整ができる以上は、モニタモードによる音場の調整のみが可能である従来の技術と比較すれば、モニタマイクMCaの個数を大幅に削減することができるという利点がある。
<B:変形例>
以上に説明した形態は本発明の一例に過ぎず、この形態には本発明の趣旨の範囲内において種々の変形を施すことが可能である。具体的には、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態においては、音響空間Rhの音響特性と調整用空間Rmの音響特性とを音信号に反映させる構成を例示したが、さらに頭部伝達関数を音信号に反映させてもよい。いま、音響空間Rhに設置されたダミーヘッドを用いて2チャネル分のインパルス応答を測定しておき、このインパルス応答を音響特性データとして用いて2チャネルのスピーカSPm1およびSPm2から出力する場合を想定する。この場合には、図11に示すように、スピーカSPm1およびSPm2に対応した頭部伝達関数(調整者Uの頭部伝達関数またはこれに類似した頭部伝達関数)を記憶した記憶部574と、畳み込み演算などのフィルタ処理を行なうフィルタ処理部63とを逆フィルタ処理部62の後段に設けてもよい。この構成のもと、フィルタ処理部63は、逆フィルタ処理部62から供給される音信号に対して頭部伝達関数を用いたフィルタ処理を行ない、この処理後の音信号を、調整者Uの左右に配置された2チャネルのスピーカSPm1およびSPm2から出力する。この構成によれば、スピーカSPm1およびSPm2によるクロストークが補正されるから、調整用空間Rmに再現される音場をより音響空間Rhの音場に近づけることができる。この場合には、調整用空間Rmに配置されるスピーカは2個で足りる。なお、調整用空間Rmの音出力にヘッドホンが使用される場合には、逆フィルタ処理部62による逆フィルタ処理や頭部伝達関数を用いたフィルタ処理は不要である。
(2)上記実施形態においては調整用空間Rmが音響空間Rhに近接して設けられた構成を例示したが、調整用空間Rmと音響空間Rhとが遠隔に設けられた構成としてもよい。さらに、複数の音響空間Rhの音響特性をひとつの調整用空間Rmにおいて統一的に調整する構成としてもよい。図12は、本変形例に係る音響調整システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、このシステム100aは、複数の音響空間Rhの各々に設けられた音響ユニット91を有する。各音響ユニット91は、上記実施形態に示した入力用マイクMCeおよび複数のスピーカSPhに加えて、インターネットなどのネットワーク90に接続された通信部911を有する。入力用マイクMCeおよび複数のスピーカSPhは通信部911に接続されている。
また、音響調整システム100aは、各音響空間Rhから離間した位置にある調整用空間Rmに配置された調整用ユニット93を有する。この調整用ユニット93は、上記実施形態に示した音響調整卓2、信号処理装置3およびスピーカSPm(SPm1〜SPm7)に加えて、ネットワーク90に接続された通信部931を有する。この通信部931は、音響調整卓2と他の機器との間でネットワーク90を介した情報の授受を中継する手段である。また、信号処理装置3の記憶部571には各音響空間Rhについて得られた音響特性データが音響空間Rhごとに記憶されている。同様に、信号処理装置3の記憶部573には、各音響空間Rhについて得られた環境特性データが音響空間Rhごとに記憶されている。
この構成のもと、複数の音響空間Rhのうちいずれかの音響空間Rh(以下「対象音響空間Rh」という)が音場調整の対象として選択されると、以下の動作が実行される。まず、対象音響空間Rhの入力用マイクMCeから出力された音信号が通信部911からネットワーク90に送信される。この音信号は、ネットワーク90から調整用ユニット93の通信部931を介して音響調整卓2に供給される。音響調整卓2による調整を経て出力された音信号は、通信部931からネットワーク90を介して対象音響空間Rhの音響ユニット91に送信されるとともに調整用ユニット93の信号処理装置3にも出力される。対象音響空間RhのスピーカSPhは、調整用ユニット93から通信部911を介して受信した音信号に基づいて対象音響空間Rh内に放音する。一方、信号処理装置3に出力された音信号は、上記実施形態と同様のフィルタ処理および逆フィルタ処理を経た後にスピーカSPm1〜SPm7から音として出力される。調整者Uは、この音を聴きながら音響調整卓2を適宜に操作することによって対象音響空間Rhの音場を調整する。
この構成によっても上記実施形態と同様の効果が得られる。しかも、本変形例によれば音響空間Rhごとに調整用空間Rmを設ける必要がないから、音響施設の製造コストが低減される。また、複数の音響空間Rhの音響特性がひとつの調整用空間Rmにおいて調整されるから、各音響空間Rhごとに調整者Uを配置する必要はない。
(3)上記実施形態においては、2つの環境特性データに基づいて任意の環境(収容率)に対応する補正係数Dcを算定する構成を例示したが、異なる環境に対応する複数の補正係数を予め用意しておく構成としてもよい。例えば、上記実施形態においては、収容率0%と収容率100%のときの環境特性データのみを記憶部573に記憶させる構成としたが、これに加えて、その他の収容率に対応する環境特性データを予め取得して記憶部573に記憶させてもよい。
(4)上記実施形態においては、音響空間Rhの再生チャネル数を「4」とし、調整用空間Rmの再生チャネル数を「7」とした場合を想定したが、これらのチャネル数は任意に変更され得る。例えば、調整用空間Rmの再生チャネル数を単数とした場合やさらに多数とした場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、上記実施形態においては音響調整卓2と信号処理装置3とが別体の装置を構成する場合を例示したが、これらの構成要素は一体の装置として構成されていてもよい。
本発明の実施形態に係る音響調整システムの構成を示す図である。 音響調整卓の構成を示すブロック図である。 信号処理装置の構成を示すブロック図である。 信号処理装置のうち音場再現処理部の構成を示すブロック図である。 インパルス応答の測定に用いられるマイクロホンアレイについて説明するための図である。 インパルス応答を測定するための対象地点について説明するための図である。 音場再現処理部において用いられる音響特性データのテーブルの内容を示す図である。 音場再現処理部において用いられる環境特性データの内容を説明するための図である。 音場再現処理部において用いられる調整用特性データのテーブルの内容を示す図である。 音場再現処理部のうち特性処理部の構成を示すブロック図である。 変形例に係る特性処理部の構成を示すブロック図である。 変形例に係る音響調整システムの構成を示すブロック図である。
符号の説明
100,100a……音響調整システム、Rh……音響空間、Rm……調整用空間、MCe……入力用マイク(音源)、SPh(SPh1,SPh2,SPh3,SPh4)……スピーカ(第1の放音手段)、SPm(SPm1,SPm2,SPm3,SPm4,SPm5,SPm6,SPm7)……スピーカ(第2の放音手段)、U……調整者、2……音響調整卓、23……調整装置(調整手段)、27……入力装置、3……信号処理装置、32……音場再現処理部、37……入力装置、6……特性処理部(特性処理手段)、61,64……フィルタ処理部、62……逆フィルタ処理部、55……補正係数算定部、56……補正部(補正手段)、571……記憶部(第1の記憶手段)、572……記憶部(第2の記憶手段)、573……記憶部(第3の記憶手段)、574……記憶部(第4の記憶手段)。

Claims (8)

  1. 供給された音信号に基づいて音響空間内に放音する第1の放音手段と、
    前記音響空間の音響特性を示す音響特性データを記憶した第1の記憶手段と、
    供給された音信号に対し、前記第1の記憶手段に記憶された音響特性データが示す音響特性を付与する特性処理手段と、
    前記特性処理手段による処理後の音信号に基づいて調整用空間内に放音する第2の放音手段と、
    音源から得られた音信号の特性を変化させて前記第1の放音手段および前記特性処理手段に供給する調整手段と
    を具備する音響調整システム。
  2. 前記調整用空間の音響特性を示す調整用空間データを記憶した第2の記憶手段を具備し、
    前記特性処理手段は、前記第2の記憶手段に記憶された調整用空間データに基づいて前記調整用空間の逆特性を音信号に付与する処理をさらに行なう
    請求項1に記載の音響調整システム。
  3. 前記第1の記憶手段は、各々が前記音響空間内の異なる位置における音響特性を示す複数の音響特性データを記憶する一方、
    前記特性処理手段は、前記複数の音響特性データのうちいずれかの音響特性データが示す音響特性を音信号に付与する
    請求項1または2に記載の音響調整システム。
  4. 前記音響空間の環境に応じた音響特性を示す複数の環境特性データを記憶した第3の記憶手段と、
    前記第3の記憶手段に記憶された環境特性データに基づいて前記音響空間の環境に応じた音響特性を前記第2の放音手段に供給される音信号に付与するための補正手段と、
    を具備する請求項1から3のいずれかに記載の音響調整システム。
  5. 前記第3の記憶手段に記憶された複数の環境特性データの各々は、前記音響空間に対する人員の収容率に応じた音響特性を示す
    請求項4に記載の音響調整システム。
  6. 前記補正手段は、それぞれ内容が異なる2つの環境特性データに基づいて補正係数を算定し、前記第1の記憶手段に記憶された音響特性データを前記補正係数に基づいて補正する一方、
    前記特性処理手段は、前記補正手段による補正後の音響特性データが示す音響特性を音信号に付与する
    請求項4または5に記載の音響調整システム。
  7. 頭部伝達関数を記憶した第4の記憶手段を具備し、
    前記特性処理手段は、前記第4の記憶手段に記憶された頭部伝達関数に基づいて音信号を補正する処理をさらに行なう
    請求項1から6のいずれかに記載の音響調整システム。
  8. 音響空間の音響特性を示す音響特性データを記憶した記憶手段と、
    供給された音信号に対して前記記憶手段に記憶された音響特性データが示す音響特性を付与し、これにより得られた音信号を、調整用空間内に放音する第2の放音手段に出力する特性処理手段と、
    音源から得られた音信号の特性を変化させ、これにより得られた音信号を、前記音響空間内に放音する第1の放音手段と前記特性処理手段とに供給する調整手段と
    を具備する音響調整装置。
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