JP2005218369A - 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法 - Google Patents

変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005218369A
JP2005218369A JP2004029844A JP2004029844A JP2005218369A JP 2005218369 A JP2005218369 A JP 2005218369A JP 2004029844 A JP2004029844 A JP 2004029844A JP 2004029844 A JP2004029844 A JP 2004029844A JP 2005218369 A JP2005218369 A JP 2005218369A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
peptide
protein
microorganism
gene encoding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2004029844A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4507618B2 (ja
JP2005218369A5 (ja
Inventor
Ikuo Kira
郁夫 吉良
Kenzo Yokozeki
健三 横関
Sonoko Suzuki
園子 鈴木
Yasuhiro Mihara
康博 三原
Yoshinori Hirao
吉徳 平尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP2004029844A priority Critical patent/JP4507618B2/ja
Priority to EP05001359A priority patent/EP1561810A3/en
Priority to CNB2005100079090A priority patent/CN100387702C/zh
Priority to US11/050,829 priority patent/US20050176150A1/en
Publication of JP2005218369A publication Critical patent/JP2005218369A/ja
Publication of JP2005218369A5 publication Critical patent/JP2005218369A5/ja
Priority to US12/828,772 priority patent/US20120058511A1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP4507618B2 publication Critical patent/JP4507618B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/1025Acyltransferases (2.3)
    • C12N9/104Aminoacyltransferases (2.3.2)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/48Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)
    • C12N9/50Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25)
    • C12N9/52Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from bacteria or Archaea

Abstract

【課題】効率の良いペプチドの製造方法およびそのための変異型微生物を提供することを課題とする。
【解決手段】アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物を培地中で培養し、培養された微生物および当該微生物の細胞破砕物の少なくとも一方を、カルボキシ成分およびアミン成分と混合してペプチドを合成する。
【選択図】 なし




Description

本発明は、変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法に関し、より詳しくは、ペプチド製造を効率よく行うことを可能ならしめる変異型の微生物およびこれを利用したペプチドの製造方法に関する。
ペプチドは、医薬品、食品等のさまざまな分野で利用されている。例えば、L−アラニル−L−グルタミンはL−グルタミンに比べ安定かつ水溶性も高いことから、輸液や無血清培地の成分として広く用いられている。
ペプチドの製造法としては従来から化学合成法が知られているが、その製造法は必ずしも簡便さ、効率性の点で満足のいくものではなかった。
他方、酵素を用いたペプチドの製造方法も開発されてきた。しかしながら、従来の酵素を用いたペプチドの製造方法では、ペプチド生成速度が極めて遅い、ペプチド生成収率が低いなどの点で改善の余地が残されるものであった。このような背景の下、これらペプチドの工業的にも効率の良い製造法の開発が望まれていた。
微生物を利用して効率的に目的生産物を製造する方法として、目的生産物を基質とし得る酵素遺伝子を破壊した破壊株を作製し、これを用いて目的生産物を製造するという方法がある(例えば、特許文献1)。
特開2003−189863号公報
破壊株を作製する方法という方法は、出発物質から目的生産物までの反応系に関わる酵素であって、副産物を生じさせるような因子、あるいは目的生産物を分解してしまうような因子を適切に破壊しなければ、かえって収率等を下げるなど、効率的な生産には結びつかない。しかし、微生物を用いた反応系は複雑な場合も多く、原料、目的生産物、利用する微生物の種類などの条件に応じて、破壊すべき遺伝子を適切に見出すことは容易ではない。
以上のような状況の下、本発明は、破壊株を利用した、効率の良いペプチドの製造方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を進めたところ、微生物を用いて効率よくペプチドの生産をするにあたり、破壊しておくべき遺伝子を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、下記の変異型微生物、変異型微生物の作製方法およびペプチドの製造方法を提供するものである。
〔1〕アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊された、変異型微生物。
〔2〕さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された、上記〔1〕に記載の微生物。
〔3〕エシェリヒア属に属する細菌である、上記〔1〕または〔2〕に記載の微生物。
〔4〕アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物。
〔5〕さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された、上記〔4〕に記載の微生物。
〔6〕エシェリヒア属に属する細菌である、上記〔4〕または〔5〕に記載の微生物。
〔7〕前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、エンペドバクター属またはスフィンゴバクテリウム属に属する細菌に由来するタンパク質である、上記〔4〕から〔6〕のいずれかに記載の微生物。
〔8〕前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、上記〔4〕から〔6〕のいずれかに記載の微生物。
(A)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
〔9〕前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、下記(C)または(D)に示すタンパク質である、上記〔4〕から〔6〕のいずれかに記載の微生物。
(C)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
〔10〕アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子を破壊する、微生物の作製方法。
〔11〕さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子を破壊する、上記〔10〕に記載の微生物の作製方法。
〔12〕アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子を破壊し、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換する、微生物の作製方法。
〔13〕さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子を破壊する、上記〔12〕に記載の微生物の作製方法。
〔14〕アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物を培地中で培養し、培養された微生物および当該微生物の細胞破砕物の少なくとも一方を、カルボキシ成分およびアミン成分と混合してペプチドを合成する、ペプチドの製造方法。
〔15〕前記微生物が、さらに染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された微生物である、上記〔14〕に記載のペプチドの製造方法。
本発明によれば、効率の良いペプチドの製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態についてその最良の形態と共に説明する。
なお、以下に挙げる種々の遺伝子工学的な技法については、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)、細胞工学ハンドブック、黒木登志夫ら編、羊土社(1992)、新遺伝子工学ハンドブック改訂第3版、村松ら編、羊土社(1999)など、多くの標準的な実験マニュアルがあり、これらの文献の内容は本明細書に取り込まれるものとする。
1.本発明の変異型微生物およびその作製方法
本発明の変異型微生物は、ペプチドの効率的な生産を阻害する遺伝子を破壊したものである。破壊する遺伝子としては、微生物の染色体に存在する、アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、「pepD遺伝子」ともいう)、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、「pepA遺伝子」ともいう)およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、「iadA遺伝子」ともいう)があげられる。これらの遺伝子は1種のみを破壊しても、また複数の遺伝子を破壊してもよい。また、さらに、染色体に存在する、α−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、「pepE遺伝子」ともいう)を破壊した微生物もより好ましい形態として例示される。
上記のような遺伝子群の1種または2種以上を破壊した微生物を用いることにより、これらの遺伝子が発現してしまう微生物を用いるよりも、効率的にペプチドを生産することが可能となる。このように目的とするペプチドの効率的な生産が可能となるのは、主として、生成物たるペプチドの分解活性を低下または消失させることができるためであると考えられる。
本明細書において遺伝子とは、遺伝情報を有する媒体のことであり、例えば、タンパク質をコードする塩基配列を有するポリペプチドなどが含まれる。
また、本明細書において、遺伝子を破壊するとは、タンパク質などの遺伝子産物の発現を抑制することまたは発現しないようにすることである。より具体的には、目的産物となるペプチドを分解活性を有するペプチダーゼをコードする遺伝子を突然変異させるか、あるいは、同遺伝子を欠損させるなどの手段により遺伝子を破壊することができる。遺伝子を破壊するより具体的な方法については、下記にて別途詳説する。
また、本件明細書において「ペプチド」とは、ペプチド結合を有するポリマーのことをいい、いわゆるジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドなどのポリペプチドのことをいう。
本発明の好ましい形態の一つとして、これらの遺伝子うち少なくともpepD遺伝子を破壊する形態があげられる。pepD遺伝子を破壊することにより、ペプチド生産の効率を大幅に改善することができ、特に、アスパラチルフェニルアラニンおよびアラニルグルタミンなどの生産において極めて有効である。また、さらに好ましい形態の一つとして、pepD遺伝子、pepA遺伝子、iadA遺伝子、pepE遺伝子すべてを破壊した形態があげられる。4種全てを破壊した場合、各種のペプチド生産において最も生産ペプチドの分解消失を抑制可能である蓋然性が高い。
本発明の微生物の種類は、ペプチドの生産に用いることができるものであれば特に限定されない。本明細書において、微生物とは、真核微生物、原核微生物およびウイルス等が含まれる。工業的製造に用いる観点からは取り扱い性に優れる細菌などが好ましく、より好ましくは腸内細菌(enterobacterium)、特に好ましくは大腸菌(Escherichia coli)に代表されるエシェリヒア属に属する細菌が例示される。
次に、遺伝子破壊株の調製方法を、微生物のアラニルグルタミンおよびアスパルチルフェニルアラニンの分解活性を低下または消失させる場合を一例として、より具体的に説明する。アラニルグルタミンおよびアスパルチルフェニルアラニンの分解活性を低下または消失させるには、細胞内でアラニルグルタミンおよびアスパルチルフェニルアラニン並びにその誘導体に作用するペプチダーゼの活性が低下または消失するように、各ペプチダーゼをコードする遺伝子を突然変異させるか、あるいは、同遺伝子を欠損すればよい。ペプチダーゼ遺伝子の不活性化はUV照射やニトロソグアニンジン(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)による変異処理、部位特異的変異法、相同組み換えおよび/または「Red-driven integration」とも呼ばれる挿入−欠失変異法(Datsenko K.A. and Wanner B.L.、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、 2000年, 第97巻、第12号、p6640-45)による遺伝子破壊などの一般的な方法によって行うことができる。
アラニルグルタミンおよびアスパルチルフェニルアラニン並びにその誘導体を分解するペプチダーゼとして、pepD遺伝子によってコードされているアミノアシルヒスチジンジペプチダーゼ、pepE遺伝子によってコードされているα−アスパルチルジペプチダーゼ、pepA遺伝子によってコードされているロイシルアミノペプチダーゼ、iadA遺伝子によってコードされているイソアスパルチルジペプチダーゼが挙げられる。pepD遺伝子、pepE遺伝子、pepA遺伝子、およびiadA遺伝子は、例えばエシェリヒア コリなどの微生物が保有していることが知られている(pepD遺伝子;J. Bacteriol. 172 (8), 4641-4651 (1990)、pepE遺伝子;特開2003-189863号公報、pepA遺伝子;J Mol Biol. 2000 Sep 15;302(2):411-26.、iadA遺伝子;J Biol Chem. 1995 Feb 24;270(8):4076-87。各ペプチダーゼ遺伝子欠損株は、例えば、各遺伝子の一部を含むDNA断片を、微生物の染色体上の各遺伝子との相同組換えにより染色体DNAに組み込むことによって、得ることができる。
具体的には、例えば、ペプチダーゼ遺伝子の一部を欠失し、正常に機能するペプチダーゼを産生しないように改変した欠失型ペプチダーゼ遺伝子を含むDNAでエシェリヒア コリ等の微生物を形質転換し、欠失型ペプチダーゼ遺伝子と染色体上のペプチダーゼ遺伝子との間で組換えを起こさせることにより、染色体上のペプチダーゼ遺伝子を欠損することができる。このような相同組換えによる遺伝子欠損は既に確立しており、直鎖DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法および/または「Red-driven integration」とも呼ばれる挿入−欠失変異法などによっても遺伝子欠損を行うことができる。以下に、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法およびRed-driven integration」とも呼ばれる挿入−欠失変異法を説明する。
エシェリヒア コリの各ペプチダーゼをコードpepD、pepE、pepAおよびiadA遺伝子はDDBJ/EMBL/GenBank国際塩基配列データベースに塩基配列がそれぞれAE000132, AE000475, AE000496 およびAE000503のアクセッションナンバー(accession number)で登録されている。これらの塩基配列に基づいてプライマーを合成し、エシェリヒア属細菌、例えばエシェリヒア コリW3110株等の染色体DNAを鋳型にしてポリメラーゼチェインリアクション法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al., Trends Genet., 5,185 (1989)参照)により、各遺伝子断片を取得することが可能である。
次に、取得したペプチダーゼ遺伝子を材料として、遺伝子の内部を欠失し、正常に機能するペプチダーゼを産生しないように改変した遺伝子(欠失型ペプチダーゼ遺伝子)を含むDNAを作製する。この欠失型ペプチダーゼ遺伝子を、宿主染色体上のペプチダーゼ遺伝子と置換するには以下のようにすればよい。すなわち、温度感受性複製起点と変異型ペプチダーゼ遺伝子とアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等の抗生物質に耐性を示すマーカー遺伝子とを挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAで微生物を形質転換し、温度感受性複製起点が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。
こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するペプチダーゼ遺伝子配列との組換えを起こし、染色体ペプチダーゼ遺伝子と欠失型ペプチダーゼ遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分、温度感受性複製起点および薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では正常なペプチダーゼ遺伝子が優性であるので、形質転換株はペプチダーゼを発現する。
次に、染色体DNA上に欠失型ペプチダーゼ遺伝子のみを残すために、2個のペプチダーゼ遺伝子の組換えにより1コピーのペプチダーゼ遺伝子を、ベクター部分(温度感受性複製起点および薬剤耐性マーカーを含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、正常なペプチダーゼ遺伝子が染色体DNA上に残され、欠失型ペプチダーゼ遺伝子が切り出される場合と、反対に欠失型ペプチダーゼ遺伝子が染色体DNA上に残され、正常なペプチダーゼ遺伝子が切り出される場合がある。いずれの場合も、温度感受性複製起点が機能する温度で培養すれば、切り出されたDNAはプラスミド状で細胞内に保持される。次に、温度感受性複製起点が機能しない温度で培養すると、欠失型ペプチダーゼ遺伝子が染色体DNA上に残された場合は、正常なペプチダーゼ遺伝子を含むプラスミドが細胞から脱落するためペプチダーゼ活性が低下または消失するが、正常なペプチダーゼ遺伝子が染色体DNA上に残された場合はペプチダーゼ活性を示す。候補株の染色体DNAからPCRによりペプチダーゼ遺伝子を含む断片を増幅させ、制限酵素解析等によってペプチダーゼ遺伝子が欠損されていることを確認することによって、目的の株を選択することができる。
また、目的のペプチダーゼ遺伝子は、Red-driven integration法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)によって欠失させることもできる。すなわち、文献の方法に従って、ペプチダーゼ遺伝子および鋳型プラスミドに抗生物質耐性を付与する遺伝子のそれぞれに近接する領域に、それぞれ相補的なプライマーを設計する。例えば、ペプチダーゼ遺伝子および鋳型プラスミドにクロラムフェニコール耐性を付与する遺伝子のそれぞれに近接する領域に、それぞれ相補的なプライマーを用いてプラスミドpACYC184(NBL Gene Sciences Ltd.製(英国)、 GenBank/EMBL アクセッション番号 X06403)を鋳型としてPCRを行い、欠損させるペプチダーゼ遺伝子の内部にクロラムフェニコール耐性を付与する遺伝子を挿入した遺伝子を調製する。次いで、得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、これを用いて温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリをエレクトロポレーションで形質転換する。プラスミドpKD46(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムの遺伝子(λ、β、exo遺伝子)を含むλファージの2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459, 第31088番目〜33241番目)を含む。プラスミドpKD46はPCR産物をエシェリヒア コリの染色体に組み込むために必要である。
エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製できる。すなわち、100mg/Lのアンピシリンを含んだLB培地中で30℃、一晩培養したエシェリヒア・コリを、アンピシリンとL-アラビノース(1mM)を含んだ5mLのSOB培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))で100倍希釈する。得られた希釈物を30℃で通気しながらOD600が約0.6になるまで生育させた後、100倍に濃縮し、氷冷した脱イオン水で3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できる。70μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いてエレクトロポレーションを行い、クロラムフェニコールを含むL−寒天培地上、37℃で平板培養し、クロラムフェニコール耐性組換え体を選択することで、挿入−欠失変異によってペプチダーゼ遺伝子を欠失した変異体を得ることができる。さらに、クロラムフェニコール入りのL-寒天培地上、42℃で2回継代し、アンピシリン耐性を失ったコロニーを選抜することでpKD46プラスミドを除去することができる。
このようにして得られる、クロラムフェニコール耐性遺伝子によって識別できるペプチダーゼ遺伝子の欠失を含む変異体は、候補株の染色体DNAからPCRによりペプチダーゼ遺伝子を含む断片を増幅させ、制限酵素解析等によってペプチダーゼ遺伝子が欠損されていることを確認することによって、目的とする株を確認することができる。以上のようにして遺伝子破壊株を作製することができる。
本発明の、他の好ましい一形態としては、上記のようにして作製される遺伝子破壊株に、さらにペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAを用いて形質転換された微生物があげられる。さらに好ましい形態としては、ペプチド生成活性を有するタンパク質が、エンペドバクター属に属する細菌由来またはスフィンゴバクテリウム属に属する細菌に由来するタンパク質が用いられる。より具体的には、下記(A)〜(D)のタンパク質から選ばれる1種または2種以上をを用いることが好ましい。下記(A)〜(D)のタンパク質は、ペプチド生成活性に優れたものである。また、下記(A)〜(D)のタンパク質は、アスパルチルフェニルアラニン、アラニルグルタミンなどのペプチド生成に好適である。
(A)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸残基番号23〜616のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸残基番号23〜616のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
(C)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸残基番号21〜619を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸残基番号23〜616のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
配列番号14に記載されたアミノ酸配列の全体には、リーダーペプチドと成熟タンパク質領域が含まれ、アミノ酸残基番号1〜22までがリーダーペプチドにあたり、23〜616までが成熟タンパク質領域である。
また、配列番号20に記載されたアミノ酸配列の全体には、リーダーペプチドと成熟タンパク質領域が含まれ、アミノ酸残基番号1〜20までがリーダーペプチドにあたり、21〜619までが成熟タンパク質領域である。
ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造や活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。ただし、(B)および(D)のタンパク質のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下で、変異を含まない状態でのタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。例えば、(B)の場合について説明すると、(B)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下で配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
上記(B)などに示されるようなアミノ酸の変異は、例えば部位特異的変異法によって、本酵素遺伝子の特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加されるように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変された塩基配列を有するポリペプチドは、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、(A)または(C)をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び(A)または(C)をコードするDNAを保持するエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
また、上記のような塩基の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位等には、微生物の種あるいは菌株による差等、天然に生じる変異も含まれる。上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、発現産物の本酵素活性を調べることにより、配列表の配列番号14または20に記載のタンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。
上記(A)のタンパク質が有するアミノ酸配列は、例えば配列表の配列番号13に示される塩基配列によりコードされる。配列番号13に記載の塩基番号61〜1908の塩基配列からなるDNAは、エンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株(寄託機関;独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、寄託機関住所;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、国際寄託移管日;2002年7月8日)より単離されたものである。
配列番号13に記載の塩基番号61〜1908の塩基配列からなるDNAは、コードシーケンス(CDS)部分である。塩基番号61〜1908の塩基配列には、シグナル配列領域と成熟タンパク質領域とが含まれている。シグナル配列領域は塩基番号61〜126の領域であり、成熟タンパク質領域は塩基番号127〜1908の領域である。すなわち、本発明は、シグナル配列を含むペプチド酵素タンパク質遺伝子と、成熟したタンパク質としてのペプチド酵素タンパク質遺伝子の双方を提供する。配列番号13に記載の配列に含まれるシグナル配列は、リーダー配列の類であり、リーダー配列がコードするリーダーペプチドの主たる機能は、細胞膜内から細胞膜外に分泌させることにあると推定される。塩基番号127〜1908でコードされるタンパク質、すなわちリーダーペプチドを除く部位が成熟タンパク質であり、高いペプチド生成活性を示すと推定される。
上記(C)のタンパク質が有するアミノ酸配列は、例えば配列表の配列番号19に示される塩基配列によりコードされる。配列番号19に記載の塩基番号61〜1917の塩基配列からなるDNAは、スフィンゴバクテリウム エスピー FERM BP−8124株(寄託機関;独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、寄託機関住所;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、国際寄託日;2002年7月22日)より単離されたものである。配列番号11に記載の塩基番号61〜1917の塩基配列からなるDNAは、コードシーケンス(CDS)部分である。
塩基番号61〜1917の塩基配列には、シグナル配列領域と成熟タンパク質領域とが含まれている。シグナル配列領域は塩基番号61〜120の領域であり、成熟タンパク質領域は塩基番号121〜1917の領域である。すなわち、本発明は、シグナル配列を含むペプチド酵素タンパク質遺伝子と、成熟したタンパク質としてのペプチド酵素タンパク質遺伝子の双方を提供する。配列番号19に記載の配列に含まれるシグナル配列は、リーダー配列の類であり、当該リーダー配列領域にコードされるリーダーペプチドの主たる機能は、細胞膜内から細胞膜外に分泌させることにあると推定される。塩基番号121〜1917でコードされるタンパク質、すなわちリーダーペプチドを除く部位が成熟タンパク質であり、高いペプチド生成活性を示すと推定される。
配列番号13のDNAは、エンペドバクター ブレビス、配列番号19のDNAはスフィンゴバクテリウム エスピーの、それぞれの染色体DNA、もしくはDNAライブラリーから、PCR(polymerase chain reacion、White,T.J. et al ;Trends Genet., 5, 185(1989)参照)またはハイブリダイゼーションによって取得することができる。PCRに用いるプライマーは、例えばペプチド生成活性を有する精製タンパク質に基づいて決定された内部アミノ酸配列に基づいて設計することができる。また、配列番号13および19に記載された塩基配列に基づいてプライマーまたはハイブリダイゼーション用のプローブを設計することもでき、あるいはプローブを使って単離することもできる。PCR用のプライマーとして、5'非翻訳領域及び3'非翻訳領域に対応する配列を有するプライマーを用いると、本タンパク質のコード領域全長を増幅することができる。配列番号13に記載された、リーダー配列および成熟タンパク質コード領域の双方を含む領域を増幅する場合を例にとると、具体的には、5'側プライマーとしては配列番号13において塩基番号61よりも上流の領域の塩基配列を有するプライマーが、3'側プライマーとしては塩基番号1908よりも下流の領域の塩基配列に相補的な配列を有するプライマーが挙げられる。
プライマーの合成は、例えば、Applied Biosystems社製DNA合成機 model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成できる。PCR反応は、例えばGene Amp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)及びTaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用い、各メーカーなど供給者により指定された方法に従って行うことができる。
配列表の配列番号13に示す塩基配列を有するDNAには、リーダー配列を含む場合および含まない場合のいずれにせよ、配列表の配列番号13に記載のCDSからなるDNAと実質的に同一のDNAも含まれる。すなわち、変異を有する本酵素をコードするDNAまたはこれを保持する細胞などから、配列表の配列番号13に記載のCDSと相補的な塩基配列からなるDNAもしくは同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによっても、配列表の配列番号13に記載のDNAと実質的に同一のDNAが得られる。
また、配列表の配列番号19に記載の塩基配列を有するDNAには、リーダー配列を含む場合および含まない場合のいずれにせよ、配列表の配列番号19に記載のCDSからなるDNAと実質的に同一のDNAも含まれる。すなわち、変異を有する本酵素をコードするDNAまたはこれを保持する細胞などから、配列表の配列番号19に記載のCDSと相補的な塩基配列からなるDNAもしくは同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによっても、配列表の配列番号19に記載のDNAと実質的に同一のDNAが得られる。
プローブは、例えば配列番号19に記載の塩基配列に基づいて定法により作製することができる。また、プローブを用いてこれとハイブリダイズするDNAをつり上げ、目的とするDNAを単離する方法も、定法に従って行えばよい。例えば、DNAプローブはプラスミドやファージベクターにクローニングされた塩基配列を増幅し、プローブとして用いたい塩基配列を制限酵素により切り出し、抽出して調製することができる。切り出す箇所は、目的とするDNAに応じて調節することができる。
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、市販の発現ベクターにつなぎ、適当な宿主で発現させて、発現産物の酵素活性を後述の方法で測定することによって容易に取り除くことができる。
ただし、上記のようにストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列の場合には、50℃、pH8の条件下で、元となる塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。例えば、配列番号9に記載の塩基配列のうち塩基番号127〜1908にの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列の場合について説明すると、50℃、pH8の条件下で、配列番号6に記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸残基番号23〜616のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
以下、一例として、上記(A)または(C)のタンパク質を発現するように形質転換された微生物の作製方法について説明する。上記(A)または(C)のタンパク質を発現する形質転換体は、例えば配列番号13または配列番号19に示される塩基配列を有するDNAを、適切な宿主に導入し、発現させることによってペプチド生成活性を有するタンパク質を生成することができる。
配列番号13または19の塩基配列を有するDNAにより特定されるタンパク質を発現させるための宿主としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、エンペドバクター属細菌、スフィンゴバクテリウム属細菌、フラボバクテリウム属細菌、及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)をはじめとする種々の真核細胞を用いることができる。
配列番号13または19の塩基配列を有するDNAを宿主に導入するために用いる組換えDNAは、発現させようとする宿主の種類に応じたベクターに、これらのDNAを、該DNAがコードするタンパク質が発現可能な形態で挿入することで調製可能である。タンパク質を発現させるためのプロモータとしては、エンペドバクター ブレビスなどのペプチド生成酵素遺伝子固有のプロモータが宿主細胞で機能する場合には該プロモータを使用することができる。また、必要に応じて宿主細胞で働く他のプロモータを、配列番号13または19のDNAに連結し、該プロモータ制御下で発現させるようにしてもよい。
組換えDNAを宿主細胞に導入するための形質転換法としては、D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))等が挙げられる。
タンパク質を組換えDNA技術を用いて大量生産する場合、該タンパク質を生産する形質転換体内で該タンパク質が会合し、タンパク質の封入体(inclusion body)を形成させる形態も好ましい一実施形態として挙げられる。この発現生産方法の利点は、目的のタンパク質を菌体内に存在するプロテアーゼによる消化から保護する点および目的のタンパク質を菌体破砕に続く遠心分離操作によって簡単に精製できる点等である。
このようにして得られるタンパク質封入体は、タンパク質変性剤により可溶化され、主にその変性剤を除去することによる活性再生操作を経た後、正しく折り畳まれた生理的に活性なタンパク質に変換される。例えば、ヒトインターロイキン−2の活性再生(特開昭61−257931号公報)等多くの例がある。
タンパク質封入体から活性型タンパク質を得るためには、可溶化・活性再生等の一連の操作が必要であり、直接活性型タンパク質を生産する場合よりも操作が複雑になる。しかし、菌体の生育に影響を及ぼすようなタンパク質を菌体内で大量に生産させる場合は、不活性なタンパク質封入体として菌体内に蓄積させることにより、その影響を抑えることができる。
目的タンパク質を封入体として大量生産させる方法として、強力なプロモータの制御下、目的のタンパク質を単独で発現させる方法の他、大量発現することが知られているタンパク質との融合タンパク質として発現させる方法がある。
以下、形質転換された大腸菌を作製し、これを用いてペプチド生成酵素を製造する方法を例として、より具体的に説明する。なお、大腸菌などの微生物にペプチド生成酵素を作製させる場合、タンパク質のコード配列として、リーダー配列を含む前駆タンパク質をコードするDNAを組み込こんでも、リーダー配列を含まない成熟タンパク質領域のDNAのみを組み込んでもよく、作製しようとする酵素の製造条件、形態、使用条件などにより適宜選択することができる。
ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするDNAを発現させるプロモータとしては、通常大腸菌における異種タンパク質生産に用いられるプロモータを使用することができ、例えば、T7プロモータ、lacプロモータ、trpプロモータ、trcプロモータ、tacプロモータ、ラムダファージのPRプロモータ、PLプロモータ等の強力なプロモータが挙げられる。また、ベクターとしては、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218等を用いることができる。他にもファージDNAのベクターも利用できる。さらに、プロモータを含み、挿入DNA配列を発現させることができる発現ベクターを使用することもできる。
ペプチド生成酵素を融合タンパク質封入体として生産させるためには、ペプチド生成酵素遺伝子の上流あるいは下流に、他のタンパク質、好ましくは親水性であるペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク質遺伝子とする。このような他のタンパク質をコードする遺伝子としては、融合タンパク質の蓄積量を増加させ、変性・再生工程後に融合タンパク質の溶解性を高めるものであればよく、例えば、T7gene 10、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、インターフェロンγ遺伝子、インターロイキン−2遺伝子、プロキモシン遺伝子等が候補として挙げられる。
これらの遺伝子とペプチド生成酵素をコードする遺伝子とを連結する際には、コドンの読み取りフレームが一致するようにする。適当な制限酵素部位で連結するか、あるいは適当な配列の合成DNAを利用すればよい。
また、生産量を増大させるためには、融合タンパク質遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネータを連結することが好ましい場合がある。このターミネータとしては、T7ターミネータ、fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータ等が挙げられる。
ペプチド生成活性を有するタンパク質またはペプチド生成活性を有するタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子を大腸菌に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。
また、形質転換体を選別するために、該ベクターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモータを持つ発現ベクターが市販されている(pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233-2(クローンテック製)ほか)。
プロモータ、ペプチド生成活性を有するタンパク質またはペプチド生成活性を有するタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子、場合によってはターミネータの順に連結したDNA断片と、ベクターDNAとを連結して組換えDNAを得る。
該組換えDNAを用いて大腸菌を形質転換し、この大腸菌を培養すると、ペプチド生成酵素またはペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質が発現生産される。形質転換される宿主は、異種遺伝子の発現に通常用いられる株を使用することができるが、大腸菌K12株亜種のエシェリヒア コリ JM109株が好ましい。形質転換を行う方法、および形質転換体を選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)等に記載されている。
融合タンパク質として発現させた場合、血液凝固因子Xa、カリクレインなどの、ペプチド生成酵素内に存在しない配列を認識配列とする制限プロテアーゼを用いてペプチド生成酵素を切り出せるようにしてもよい。
生産培地としては、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地を用いてもよい。また、培養条件、生産誘導条件は、用いたベクターのマーカー、プロモータ、宿主菌等の種類に応じて適宜選択する。
ペプチド生成酵素またはペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質を回収するには、以下の方法などがある。ペプチド生成酵素あるいはその融合タンパク質が菌体内に可溶化されていれば、菌体を回収した後、菌体を破砕あるいは溶菌させ、粗酵素液として使用できる。さらに、必要に応じて、通常の沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法によりペプチド生成酵素あるいはその融合タンパク質を精製して用いることも可能である。この場合、ペプチド生成酵素あるいは融合タンパク質の抗体を利用した精製法も利用できる。
タンパク質封入体が形成される場合には、変性剤でこれを可溶化する。菌体タンパク質とともに可溶化してもよいが、以降の精製操作を考慮すると、封入体を取り出して、これを可溶化するのが好ましい。封入体を菌体から回収するには、従来公知の方法で行えばよい。例えば、菌体を破壊し、遠心分離操作等によって封入体を回収する。タンパク質封入体を可溶化させる変性剤としては、グアニジン塩酸(例えば、6M、pH5〜8)や尿素(例えば8M)などが挙げられる。
これらの変性剤を透析等により除くと、活性を有するタンパク質として再生される。透析に用いる透析溶液としては、トリス塩酸緩衝液やリン酸緩衝液などを用いればよく、濃度としては20mM〜0.5M、pHとしては5〜8が挙げられる。
再生工程時のタンパク質濃度は、500μg/ml程度以下に抑えるのが好ましい。再生したペプチド生成酵素が自己架橋を行うのを抑えるために、透析温度は5℃以下であることが好ましい。また、変性剤除去の方法として、この透析法のほか、希釈法、限外濾過法などがあり、いずれを用いても活性の再生が期待できる。
pepD遺伝子、pepA遺伝子、iadA遺伝子、またはpepE遺伝子を破壊した微生物を、上記のようにして形質転換することにより、ミノ酸エステルトランスペプチダーゼを高発現し、ラニルグルタミンおよびアスパルチルフェニルアラニンの分解活性が低下または消失した微生物を構築することができる。
2.本発明のペプチドの製造方法
本発明のペプチドの製造方法は、上記本発明の微生物等を用いて、ペプチドを生成させるものである。すなわち、本発明のペプチド製造方法では、アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物を培地中で培養し、培養された微生物および当該微生物の細胞破砕物の少なくとも一方を、カルボキシ成分およびアミン成分と混合してペプチドを合成する。より好ましい一形態としては、前記微生物は、さらに染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された微生物が用いられる。
本発明に使用する微生物を、カルボキシ成分とアミン成分に作用せしめる方法としては、上記で説明した本発明の微生物および微生物の細胞破砕物を、カルボキシ成分およびアミン成分と混合すればよい。より具体的には、所定の微生物をカルボキシ成分とアミン成分を含む溶液中に添加して反応せしめる方法を用いてもよいし、目的とするペプチドを生成する能力を有する微生物を培養し、微生物中または微生物の培養液中に当該酵素を精製・蓄積せしめ、培養液中にカルボキシ成分とアミン成分を添加する方法などを用いてもよい。生成されたペプチドは、定法により回収し、必要に応じて精製することができる。
本明細書でいう微生物の破砕物とは、微生物の細胞膜を破壊して得られる微生物の細胞内容物を含む混合物のことであり、物理的に細胞膜を破砕して得られるものの他、化学的に細胞膜を溶かすなどの方法により破壊したものなども含まれる。
用いられる微生物は、所定の遺伝子破壊した本発明の微生物が用いられる。ペプチドの製造に用いる微生物は、微生物菌体に限らず、アセトン処理菌体、凍結乾燥菌体等の菌体処理物を使用してもよいし、これらを共有結合法、吸着法、包括法等によって固定化した固定化菌体、固定化菌体処理物を使用してもよい。なお、プチドの生成に関与せずに生成ペプチドを分解する酵素が存在することが多く、この場合には、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)のような金属プロテアーゼ阻害剤を添加するほうが好ましい場合がある。添加量は、0.1mMから300mM の範囲で、好ましくは1mMから100mMである。
カルボキシ成分としては、もう一つの基質であるアミン成分と縮合してペプチドを生成できるものであれば、いかなるものを使用してよい。カルボキシ成分としては、例えば、L−アミノ酸エステル、D−アミノ酸エステル、L−アミノ酸アミド、D−アミノ酸アミド、更にはアミノ基の有さない有機酸エステル等が挙げられる。また、アミノ酸エステルとしては、天然型のアミノ酸に対応するアミノ酸エステルだけでなく、非天然型のアミノ酸もしくはその誘導体に対応するアミノ酸エステルなども例示される。また、アミノ酸エステルとしては、α−アミノ酸エステルの他、アミノ基の結合位置の異なる、β−、γ−、ω−等のアミノ酸のエステルなども例示される。アミノ酸エステルの代表例としては、アミノ酸のメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、iso-プロピルエステル、n-ブチルエステル、iso-ブチルエステル、tert-ブチルエステル等が例示される。
アミン成分としては、もう一つの基質であるカルボキシ成分と縮合してペプチドを生成できるものであれば、いかなるものも使用してよい。アミン成分としては、例えば、L−アミノ酸、C保護L−アミノ酸、D−アミノ酸、C保護D−アミノ酸、アミン等が挙げられる。また、アミンとしは、天然型アミンだけでなく、非天然型のアミンもしくはその誘導体などが例示される。また、アミノ酸としては、天然型アミノ酸だけではなく非天然型アミノ酸もしくはその誘導体も例示される。α−アミノ酸の他、アミノ基の結合位置の異なる、β−、γ−、ω−等のアミノ酸なども例示される。
出発原料であるカルボキシ成分およびアミン成分の濃度は各々1mM〜10M、好ましくは0.05M〜2Mであるが、カルボキシ成分に対してアミン成分を等量以上添加したほうが好ましい場合がある。また、基質が高濃度だと反応を阻害するような場合には、反応中にこれらを阻害しない濃度にして逐次添加することができる。
反応温度は0〜60℃でペプチド合成可能であり、好ましくは5〜40℃である。また反応pHはpH6.5〜10.5でペプチド合成可能であり、好ましくはpH7.0〜10.0である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1.各ペプチダーゼ遺伝子欠損株のアスパルチルフェニルアラニン分解活性の測定
以下に示した操作で、エシェリヒア・コリATCC8739株を親株とし、この親株のアミノアシルヒスチジンジペプチダーゼ遺伝子(pepD遺伝子)、イソアスパルチルジペプチダーゼ遺伝子(iadA遺伝子)α−アスパルチルジペプチダーゼ遺伝子(pepE遺伝子)、ロイシルアミノペプチダーゼ遺伝子(pepA遺伝子)、を順に欠損させて、pepD欠損株、pepD、iadA二重欠損株、pepD、iadA、pepE三重欠損株、およびpepD、iadA、pepE、pepA四重欠損株を構築し、そのアスパルチルフェニルアラニン分解活性を測定した。
(1)アミノアシルヒスチジンジペプチダーゼ遺伝子(pepD遺伝子)の欠損
遺伝子データバンクのアミノアシルヒスチジンジペプチダーゼ遺伝子(pepD遺伝子)の配列情報(DDBJ/EMBL/GeneBank Accession No. AE000132)に基づき、5'- GATCTGGCGCACTAAAAACC(配列番号1)と5'-GGGATGGCTTTTATCGAAGG(配列番号2)のプライマーを合成した。本プライマーを用い、エシェリヒア・コリATCC8739株のゲノムDNAを鋳型として、PCR法 (94℃, 1 min, 54℃, 2 min, 72℃, 3 min, 30サイクル) により、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーする構造遺伝子領域の約1.6Kbpを増幅した。これをSureClone Ligation Kit (Amersham Pharmacia Biotech社製) を用いてpUC18(宝酒造社製)ベクターのSma Iサイトに連結し、pUC18-pepDを構築した。本プラスミドでエシェリヒア・コリJM109 competene cells(宝酒造社製)を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレート(Tryptone 1%, Yeast extract 0.5%, NaCl 0.5%, 寒天 1.5%, pH7.0)に生育させた。この形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地(Tryptone 1%, Yeast extract 0.5%, NaCl 0.5%, pH7.0)で37℃、16h培養し、集菌した形質転換体からプラスミドを調整した。次にpUC18-pepDをNru I並びにHpa I(pepD遺伝子を含む1.6Kbpの挿入断片中の制限酵素サイト)で切断し、セルフライゲーション反応を行った。このライゲーション反応液を用いて、エシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セル(competenet cells)を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体からプラスミドを調整した。これより1.4Kbpの挿入DNA断片を有するプラスミドDNA、pUCΔpepDを選択した。本プラスミドDNAに連結されたpepD遺伝子はNru I−Hpa I領域が欠損し、コードされる酵素は機能を持たなくなると予想される。
次に、pUCΔpepDをEcoRΔ並びにSal Iで切断し、欠損型pepD遺伝子を含む1.4KbpのDNA断片を調整した。このDNA断片を温度感受性複製起点 (tsori) を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997のEcoR I/Sal Iサイトに連結し、pepD遺伝子欠損用プラスミドpMANΔpepDを構築した。pMANΔpepDで形質転換された、大腸菌K12株亜種であるエシェリヒア・コリJM 109株をアンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地で30℃、16h培養し、集菌した形質転換体からpMANΔpepDを調整した。
次いで、pepD遺伝子欠損用プラスミドpMANΔpepDを用い、エレクトロポーレーション法にてエシェリヒア・コリATCC8739株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートにプレーティングし、30℃で生育させた。(なお、ATCC番号が記載されているものは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O.Box 1549 Manassas, VA 20110, the UnitedStates of America)に寄託されており、各番号を参照して分譲を受けることができる。)得られた形質転換体の複数個を、アンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地4 ml (φ1.4 cm×18 cm試験管) にて30℃、16時間培養した。この培養液を生理食塩水で希釈した後、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートにプレーティングし、42℃にて10時間培養を行い、シングルコロニーを得た。さらに、ここで得たシングルコロニーを再度、上記と同様の方法にて培養してシングルコロニーを単離し、相同組み換えによりプラスミド全体が染色体に組み込まれたクローンを選択した。さらに、アンピシリン50μg/mlを含むLB培地で培養した相同組み換え株からプラスミドの抽出操作を行い、本株がプラスミドを細胞質液中に持たないことを確認した。
次に、上記の相同組み換えによりプラスミド全体が染色体に組み込まれたクローンから、10クローンを選び、M9最少液体培地 (4 ml、1L当りNa2PO4 6.8 g, KH2PO4 3 g, NaCl 0.5 g, NH4Cl 1 g, MgSO4・7H2O 0.5 g, CaCl2・2H2O 15 mg, ThiaminHCl 2 mg, Glucose 0.2 g, pH7.0) にて30℃、24時間培養した。この培養液100μlを同培地 (4 ml) に移し、更に42℃にて24時間培養を行った。培養液を生理食塩水にて希釈後、M9最少プレートにスプレッドし、42℃にて12時間培養を行いシングルコロニーを得た。出現したコロニーをLB寒天プレートとアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートに植菌し、30℃で12時間培養した。二回組換えにより、アンピシリン感受性となりLB寒天プレートのみに生育した二回組換え株を選択した。得られた二回組換え株の染色体DNAを鋳型として配列番号1および2の配列のプライマーを用いてPCRにより、pepD断片を増幅させた。増幅されたpepD遺伝子がNru I−Hpa I領域の欠損したpepD遺伝子断片(約1.4Kbp)であることより、本株のpepD遺伝子が欠損型pepD遺伝子で置換されたことを確認し、本株をpepD欠損株とした。
(2)イソアスパルチルジペプチダーゼ遺伝子 (iadA遺伝子) 欠損株の取得
遺伝子データバンクのイソアスパルチルジペプチダーゼ遺伝子(iadA遺伝子)の配列情報(DDBJ/EMBL/GeneBank Accession No. AE000503)に基づき、5'-CAAGGAGTTACCATGATTGA (配列番号3) と5'-AACCGTTTAAGCCGTTTCAA (配列番号4) のプライマーを合成した。本プライマーを用い、エシェリヒア・コリATCC8739株のゲノムDNAを鋳型として、PCR法 (94℃, 1 min, 54℃, 2 min, 72℃, 3 min, 30サイクル) により、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーする構造遺伝子領域の約1.7Kbpを増幅した。これをSureClone Ligati on Kitを用いてpUC18ベクターのSma Iサイトに連結し、pUC18-iadAを構築した。本プラスミドで形質転換したエシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セルをアンピシリン50μg/mlを含む液体培地で37℃、16h培養し、集菌した形質転換体からプラスミドを調整した。次に、pUC18-iadAをHpa I(idaA遺伝子を含む1.7Kbpの挿入断片中の制限酵素サイト)で切断し、EcoR I-Not I-BamH Iアダプター(宝酒造社製)と連結した。これをさらにプラスミドをNot Iで切断し、セルフライゲーション反応を行った。このライゲーション反応液を用いて、エシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セルを形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体からプラスミドを調整した。これより、Not Iにて切断されるプラスミドDNA、 pUCΔiadAを選択した。本プラスミドDNAが有するiadA遺伝子はHpa Iサイトでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予想される。
次に、pUCΔiadAをEcoR I並びにSal Iで切断し、欠損型iadA遺伝子を含む1.7KbpのDNA断片を調整し、これをDNA断片を温度感受性複製起点 (tsori) を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997のEcoR I/Sal Iサイトに連結し、iadA遺伝子欠損用プラスミドpMANΔiadAを構築した。pMANΔiadAで形質転換した、エシェリヒア・コリJM 109株をアンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地で30℃、16h培養し、集菌した形質転換体からpMANΔiadAを調整した。このiadA遺伝子欠損用プラスミドを用い、エレクトロポーレーション法にて上記のエシェリヒア・コリATCC8739のpepD欠損株を形質転換した。続けて同様の操作により、iadA遺伝子が欠損型iadA遺伝子に置換され、アンピシリン感受性である二回組換え株を得た。二回組換え株の染色体DNAを鋳型として、配列番号3および4の配列のプライマーを用いてPCRによりiadA断片を増幅した。増幅されたiadA断片が、制限酵素Not Iにて切断されることから、本株のiadA遺伝子が欠損型iadA遺伝子で置換されたことを確認し、本株を、pepD、iadA二重欠損株とした。
(3)α-アスパルチルジペプチダーゼ遺伝子 (pepE遺伝子) 欠失株の取得
遺伝子データバンクのα-アスパルチルジペプチダーゼ遺伝子(pepE遺伝子)の配列情報(DDBJ/EMBL/GeneBank Accession No. AE000475)に基づき、5'-TATTTGTTATTT CCATTGGC (配列番号5) と5'-AATGTCGCTCAACCTTGAAC (配列番号6) のプライマーを合成した。本プライマーを用い、エシェリヒア・コリATCC8739株のゲノムDNAを鋳型として、PCR法 (94℃, 1 min, 54℃, 2 min, 72℃, 3 min, 30サイクル) により、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーする構造遺伝子領域の約1.4Kbpを増幅した。これをSureClone Ligation Kitを用いてpUC18ベクターのSma Iサイトに連結し、pUC18-pepEを構築した。本プラスミドで形質転換したエシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セルをアンピシリン50μg/mlを含む液体培地で37℃、16h培養し、集菌した形質転換体からプラスミドを調整した。次に、pUC18-pepEをNru I(pepE断片を含む1.4Kbpの挿入断片中の制限酵素サイト)で切断し、EcoR I-Not I-BamH Iアダプターと連結した。これをさらにプラスミドをNot Iで切断し、セルフライゲーション反応を行った。このライゲーション反応液を用いて、エシェリヒア・コリJM109 competene cellsを形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体からプラスミドを調整した。これより、Not Iにて切断されるプラスミドDNA、 pUCΔpepEを選択した。本プラスミドDNAが有するpepE遺伝子はNru Iサイトでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予想される。次に、pUCΔpepEをEcoR I並びにSal Iで切断し、欠損型pepE遺伝子を含む1.4KbpのDNA断片を調整した。DNA断片を温度感受性複製起点 (tsori) を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997のEcoR I/Sal Iサイトに連結し、pepE遺伝子欠損用プラスミドpMANΔpepEを構築した。pMANΔpepEで形質転換した、エシェリヒア・コリJM 109株をアンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地で30℃、16h培養し、集菌した形質転換体からpMANΔpepEを調整した。このpepE遺伝子欠損用プラスミドを用い、エレクトロポーレーション法にて上記のエシェリヒア・コリATCC8739のpepD、iadA二重欠損株を形質転換した。続けて同様の操作により、pepE遺伝子が欠損型pepE遺伝子に置換され、アンピシリン感受性である二回組換え株を得た。二回組換え株の染色体DNAを鋳型として、配列番号5および6の配列のプライマーを用いてPCRによりpepE断片を増幅した。増幅されたpepE断片が、制限酵素Not Iにて切断されることから、本株のpepE遺伝子が欠損型pepE遺伝子で置換されたことを確認し、本株を、pepD、iadA、pepE三重欠損株とした。
(4)アミノペプチダーゼ遺伝子 (pepA遺伝子) 欠失株の取得
遺伝子データバンクのアミノペプチダーゼ遺伝子(pepA遺伝子)の配列情報(DDBJ/EMBL/GeneBank Accession No. AE000496)に基づき、5'-ACAGCGGACATGAGTTACGA (配列番号7) と5'-CCCGCTAAATTATGCGGAAC (配列番号8) のプライマーを合成した。本プライマーを用い、エシェリヒア・コリATCC8739株のゲノムDNAを鋳型として、PCR法 (94℃, 1 min, 54℃, 2 min, 72℃, 3 min, 30サイクル) により、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーする構造遺伝子領域の約1.9Kbpを増幅した。これをSureClone Ligation Kit を用いてpUC18ベクターのSma Iサイトに連結し、pUC18-pepAを構築した。本プラスミドで形質転換したエシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セルをアンピシリン50μg/mlを含む液体培地で37℃、16h培養し、集菌した形質転換体からプラスミドを調整した。次に、pUC18-pepAをHpa I(pepA断片を含む1.9Kbpの挿入断片中の制限酵素サイト)で切断し、セルフライゲーション反応を行った。このライゲーション反応液を用いて、エシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セルを形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体からプラスミドを調整した。これよりHpa Iにて切断されるプラスミドDNA 、pUCΔpepAを選択した。本プラスミドDNAが有するpepAはHpa I−Hpa I領域が欠失し、コードされる酵素は機能を持たなくなると予想される。次に、pUCΔpepAをSac I並びSph Iで切断し、欠損型pepE遺伝子を含む1.9KbpのDNA断片を調整した。DNA断片を温度感受性複製起点 (tsori) を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997のSac I/Sph Iサイトに連結し、pepA遺伝子欠損用プラスミドpMANΔpepAを構築した。pMANΔpepAで形質転換した、エシェリヒア・コリJM 109株をアンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地で30℃、16h培養し、集菌した形質転換体からpMANΔpepAを調整した。このpepA遺伝子欠損用プラスミドを用い、エレクトロポーレーション法にて上記のエシェリヒア・コリATCC8739のpepD、iadA、pepE三重欠損株を形質転換した。続けて同様の操作により、pepA遺伝子が欠損型pepA遺伝子に置換され、アンピシリン感受性である二回組換え株を得た。二回組換え株の染色体DNAを鋳型として、配列番号7および8の配列のプライマーを用いてPCRによりpepA断片を増幅した。増幅されたpepA断片を、制限酵素Mul Iにて切断すると、849bpおよび1039bpのDNA断片が生じたことから、本株のpepA遺伝子が欠損型pepA遺伝子で置換されたことを確認し、本株を、pepD、iadA、pepE、pepA四重欠損株とした。
実施例2.各ペプチダーゼ遺伝子欠損株のアスパルチルフェニルアラニン分解活性の測定
親株並びに各遺伝子欠損株を4mlのLB培地に植菌し、30℃、16時間、振とう培養した。次に、培養液4mlを遠心分離(2200g×15 min)し、菌体沈殿物を得た。この菌体沈殿物に生理食塩水4mlを添加し、遠心分離(2200g×15 min)後、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を1mlの超音波破砕溶液(1mM DTTを含む20 mM MOPS-KOH buffer(pH7.0))に懸濁した。菌体懸濁液を超音波破砕(Bioruptor製、7.5 min)し、遠心分離(12000g×10 min)により無細胞抽出液を得た。プロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社製)を用い、Bradford法にてタンパクを定量した。Bovine serum alubmin (SIGMA製)を標準タンパクとして用いた。
無細胞抽出液100μlを100μlの基質溶液(100 mM アスパルチルフェニルアラニン、2mM MnCl2、100 mM MOPS-KOH buffer(pH7.0))に添加し、30℃、2時間反応した。反応後、反応液を95℃にて5分間加熱処理し、蒸留水にて5倍希釈した。反応希釈液10μlをアミノ酸アナライザー(L-8500、日立製作所製)で分析し、生成したアスパラギン酸およびフェニルアラニンを定量した。
親株と各遺伝子欠損株のアスパルチルフェニルアラニン分解活性を下記表1に示す。なお、30℃で1分間当たり1μモルのPheを生成する酵素量を1ユニットと定義した。親株には強いアスパルチルフェニルアラニン分解活性が検出されたが、各遺伝子を欠損するに従ってアスパルチルフェニルアラニン分解活性の低下が認められ、pepD、iadA、pepE、pepA四重欠損株では親株の約1.6%にまで分解活性が低下した。
Figure 2005218369
実施例3.各ペプチダーゼ遺伝子欠損株のアラニルグルタミン分解活性の測定
親株並びに各遺伝子欠損株を3mlのLB培地(Bacto tryptone 1.0%、Bacto yeast extract 1.0%、NaCl 1.0%、PH7.0)に植菌し、37℃、16時間、振とう培養した。次に、培養液1mlを遠心分離(2200g×15 min)し、菌体沈殿物を得た。この菌体沈殿物に生理食塩水1mlを添加し、遠心分離(2200g×15 min)後、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体に0.1mlの基質溶液(100 mM アラニルグルタミン、100 mM ホウ酸−NaOH緩衝液(pH9.0))に添加し、30℃、6時間反応した。
反応液中のアラニルグルタミンを以下の条件でHPLCにより定量し、アラニルグルタミンの分解量を求めた。カラム:Inertsil ODS-2(4.6 x 250 mm、GL science社製)、移動層:5mM sodium 1-octanesulfonate:Methanol=10:1.5 (pH 2.1 with conc.H3PO4)、流速1.0 ml/min、温度40℃、検出UV210 nm。
親株と各遺伝子欠損株のアラニルグルタミン分解活性を下表に示す。親株は6時間の反応で100mMのアラニルグルタミンを完全に分解したが、pepD遺伝子欠損株ではアラニルグルタミン分解活性が大きく低下した。pepE遺伝子、pepA遺伝子を欠損させることでアラニルグルタミン分解活性がさらに低下した。
Figure 2005218369
[参考例1]エンペドバクター ブレビス由来のペプチド生成酵素遺伝子の単離
以下、ペプチド生成酵素遺伝子の単離について述べるが、微生物はエンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株を用いた。遺伝子の単離にはエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM-109株を宿主に用い、ベクターはpUC118を用いた。
(1)決定内部アミノ酸配列に基づいたPCRプライマーの作製
前述のエンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株由来のペプチド生成酵素のリジルエンドペプチダーゼによる消化物をエドマン分解法により決定したアミノ酸配列(配列番号9及び10)をもとに、配列番号11及び12にそれぞれ示す塩基配列を有するミックスプライマーを作成した。
(2)菌体の取得
エンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株をCM2G寒天培地(50g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/l ペプトン、5g/l 塩化ナトリウム、20g/l寒天,pH7.0))上で30℃、24時間培養した。この菌体を、50mlのCM2G液体培地(上記培地より寒天を除いた培地)を張り込んだ500mlの坂口フラスコに1白金耳植菌し、30℃で振盪培養した。
(3)菌体からの染色体DNAの取得
培養液50mlを遠心分離(12,000rpm、4℃、15分間)し、集菌した。QIAGEN Genomic-tip System(Qiagen社)を用いて、説明書の方法に基づき、この菌体から染色体DNAを取得した。
(4)PCR法によるペプチド生成酵素遺伝子の一部を含むDNA断片の取得エンペドバクター ブレビスFERM BP−8113株由来のペプチド生成酵素遺伝子の一部を含むDNA断片を、LA−Taq(宝酒造社製)を用いたPCR法により取得した。エンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株から取得した染色体DNAに対し、配列番号11及び12に示す塩基配列を有するプライマーを使用してPCR反応を行った。
PCR反応は、Takara PCR Thermal Cycler PERSONAL(宝酒造製)を用いて行い、以下の条件の反応を30サイクル行った。
94℃ 30秒
52℃ 1分
72℃ 1分
反応後、反応液3μlを0.8%アガロース電気泳動に供した。その結果、約1.5kbのDNA断片が増幅されていることが確認された。
(5)遺伝子ライブラリーからのペプチド生成酵素遺伝子のクローニング
ペプチド生成酵素遺伝子全長を取得するために、まず、上記PCRにおいて増幅されたDNA断片をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーションを行った。サザンハイブリダイゼーションの操作は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)に説明されている。
上記PCRで増幅された約1.5kbDNA断片を、0.8%アガロース電気泳動により分離した。目的のバンドを切り出し、精製した。このDNA断片をDIG High Prime(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づきプローブのジゴキシニゲンによる標識を行った。
本参考例1(3)で取得したエンペドバクター ブレビスの染色体DNAを制限酵素HindIIIで37℃、16時間反応させて完全に消化した後、0.8%アガロースゲルで電気泳動した。電気泳動後のアガロースゲルからナイロンメンブレンフィルターNylon memebranes positively charged(ロシュ・ダイアグノティクス社製)にブロッティングし、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはEASY HYB(ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて行った。フィルターを50℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、上記で作製した、ジゴキシニゲンによる標識プローブを添加し、50℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。この後、フィルターを0.1%SDSを含む2×SSCで室温、20分間洗浄した。さらに0.1%SDSを含む0.1×SSCで65℃、15分間洗浄を2回行った。
プローブとハイブリダイズするバンドの検出は、DIG Nucleotide Detection Kit(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づき行った。その結果、プローブとハイブリダイズする約4kbのバンドが検出できた。
本参考例1(3)で調製した染色体DNA5μgをHindIIIで完全に消化した。0.8%アガロースゲル電気泳動により約4kbのDNAを分離し、Gene Clean II Kit(フナコシ社製)を用いてDNAを精製し、10μlのTEに溶解した。このうち4μlと、pUC118 HindIII/BAP(宝酒造製)とを混合し、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製)を用いて連結反応を行った。このライゲーション反応液5μlとEscherichia coli JM109株のコンピテント・セル(東洋紡績製)100μlとを混合して、Escherichia coliを形質転換した。これを適当な固形培地に塗布し、染色体DNAライブラリーを作製した。
ペプチド生成酵素遺伝子全長を取得するために、上記プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションによる染色体DNAライブラリーのスクリーニングを行った。コロニーハイブリダイゼーションの操作は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)に説明されている。
染色体DNAライブラリーのコロニーをナイロンメンブレンフィルターNylon Membranes for Colony and Plaque Hybridization(ロシュ・ダイアグノティクス社製)に移し、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはEASY HYB(ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて行った。フィルターを37℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、上記ジゴキシニゲンによる標識プローブを添加し、50℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。この後、フィルターを0.1%SDSを含む2×SSCで室温、20分間洗浄した。さらに0.1%SDSを含む0.1×SSCで65℃、15分間洗浄を2回行った。
標識プローブとハイブリダイズするコロニーの検出は、DIG Nucleotide Detection Kit(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づき行った。その結果、標識プローブとハイブリダイズするコロニーを2株確認できた。
(6)エンペドバクター ブレビス由来ペプチド生成酵素遺伝子の塩基配列
標識プローブとハイブリダイズしたことが確認された上記2菌株から、エシェリヒア コリ JM109株が保有するプラスミドを、Wizard Plus Minipreps DNA Purification System(プロメガ社製)を用いて調製し、プローブとハイブリダイズした近傍の塩基配列を決定した。シーケンス反応はCEQ DTCS-Quick Start Kit(ベックマン・コールター社製)を用いて、説明書に基づき行った。また、電気泳動はCEQ 2000-XL(ベックマン・コールター社製)を用いて行った。
その結果、ペプチド生成酵素の内部アミノ酸配列(配列番号1及び2)を含むタンパク質をコードするオープンリーディングフレームが存在し、ペプチド生成酵素をコードする遺伝子であることを確認した。ペプチド生成酵素遺伝子全長の塩基配列とこれに対応するアミノ酸配列を配列表配列番号13に示した。得られたオープンリーディングフレームをBLASTP.プログラムで相同性解析した結果、二つの酵素に相同性が見出され、Acetobacter pasteurianusのα−アミノ酸エステルハイドロラーゼ(Appl. Environ. Microbiol., 68(1), 211-218(2002) とは、アミノ酸配列で34%、Brevibacillus laterosporum (J. Bacteriol., 173(24), 7848-7855(1991) のグルタリル-7ACAアシラーゼとは、アミノ酸配列で26%の相同性を示した。
(7)エンペドバクター属由来のペプチド生成酵素遺伝子の大腸菌における発現
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)W3110染色体DNA上のtrpオペロンのプロモーター領域を配列番号15、16に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子領域を増幅し、得られたDNA断片をpGEM―Teasyベクター(プロメガ製)にライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109株を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からtrpプロモーターの方向がlacプロモーターと反対向きに挿入された目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをEcoO109I/EcoRIにて処理して得られるtrpプロモーターを含むDNA断片と、pUC19(Takara製)のEcoO109I/EcoRI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でエシェリヒア コリ JM109株を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをHindIII/PvuIIにて処理して得られるDNA断片と、pKK223−3(Amersham Pharmacia製)をHindIII/HincIIにて処理し、得られたrrnBターミネーターを含むDNA断片とをライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109株を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrpTと命名した。
エンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株の染色体DNAを鋳型として配列番号17、18に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を増幅した。このDNA断片をNdeI/PstIにて処理し、得られたDNA断片とpTrpTのNdeI/PstI処理物をライゲーションした。このライゲーション溶液でエシェリヒア コリ JM109株を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrpT_Gtg2と命名した。
pTrpT_Gtg2を有するエシェリヒア コリ JM109株を100mg/lアンピシリンを含むLB培地で、30℃、24時間シード培養した。得られた培養液1mlを、50mlの培地(2 g/lD−グルコース、10g/l酵母エキス、10g/lカザミノ酸、5g/l硫酸アンモニウム、3g/lリン酸二水素カリウム、1g/lリン酸水素二カリウム、0.5g/l硫酸マグネシウム七水和物、100mg/lアンピシリン)を張り込んだ500ml坂口フラスコにシードし、25℃、24時間の本培養を行った。培養液1mlあたり0.11Uのα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−β−エステル生成活性を有しており、クローニングした遺伝子がE.coliで発現したことを確認した。なお、対照としてpTrpTのみを導入した形質転換体には、活性は検出されなかった。
(シグナル配列予測)
配列表に記載の配列番号6番のアミノ酸配列をSignalP v1.1プログラム(Protein Engineering, vol12, no.1, pp.3-9, 1999)にて解析したところ、アミノ酸配列の1−22番目までがシグナルとして機能してペリプラズムに分泌すると予測され、成熟タンパクは23番目より下流であると推定された。
(分泌の確認)
pTrpT_Gtg2を有するエシェリヒア コリ JM109株を100mg/lアンピシリンを含むLB培地で、30℃、24時間シード培養した。得られた培養液1mlを、50mlの培地(2g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/lカザミノ酸、5g/l硫酸アンモニウム、3g/lリン酸二水素カリウム、1g/lリン酸水素二カリウム、0.5g/l硫酸マグネシウム七水和物、100mg/lアンピシリン)を張り込んだ500ml坂口フラスコにシードし、25℃、24時間の本培養を行い培養菌体を得た。
上記培養菌体を20g/dlのスクロース溶液を用いた浸透圧ショック法により、ペリプラズム画分とサイトプラズム画分に分画した。20g/dlのスクロース溶液に浸した菌体を5mM MgSO4水溶液に浸し、この遠心上清をペリプラズム画分(Pe)とした。また、その遠心沈殿を再懸濁し、超音波破砕したものをサイトプラズム画分(Cy)とした。サイトプラズムを分離したことを確認するために、サイトプラズムに存在することが知られているグルコース6燐酸デヒロドロゲナーゼの活性を指標とした。測定法は1mM グルコース6燐酸、0.4mM NADP、10mM MgSO4、50mM Tris-Cl(pH8)、30℃の反応溶液の中に適当量の酵素を添加し、340nmの吸光度の測定によりNADPHの生成を測定することにより行った。
別途調整した無細胞抽出液の活性を100%としたときの、サイトプラズム画分、ペリプラズム画分の酵素量を図1に示す。グルコース6燐酸デヒロドロゲナーゼ活性がペリプラズム画分に混入していないことは、サイトプラズム画分にペリプラズム画分が混入していないことを示す。α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−β−エステル(α-AMP)生成活性のうち約60%がペリプラズム画分に回収され、上記SignalP vl.1プログラムを用いてアミノ酸配列から予測されたように、α-AMP生成酵素がペリプラズムに分泌していることが確認された。
[参考例2] スフィンゴバクテリウム エスピー由来のペプチド生成酵素遺伝子の単離
以下、ペプチド生成酵素遺伝子の単離について述べるが、微生物はスフィンゴバクテリウム エスピー FERM BP−8124株を用いた。遺伝子の単離にはエシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH5αを宿主に用い、ベクターはpUC118を用いた。
(1)菌体の取得
スフィンゴバクテリウム エスピー FERM BP−8124株をCM2G寒天培地(50g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/l ペプトン、5g/l 塩化ナトリウム、20g/l寒天,pH7.0))上で25℃、24時間培養した。この菌体を、50mlのCM2G液体培地(上記培地より寒天を除いた培地)を張り込んだ500mlの坂口フラスコに1白金耳植菌し、25℃で振盪培養した。
(2)菌体からの染色体DNAの取得
培養液50mlを遠心分離(12,000rpm、4℃、15分間)し、集菌した。QIAGEN Genomic-tip System(Qiagen社)を用いて、説明書の方法に基づき、この菌体から染色体DNAを取得した。
(3)PCR法によるプローブ用DNA断片の取得
エンペドバクター ブレビス FERM BP−8113株由来のペプチド生成酵素遺伝子の一部を含むDNA断片を、LA−Taq(宝酒造社製)を用いたPCR法により取得した。エンペドバクター ブレビス FERMBP−8113株から取得した染色体DNAに対し、配列番号11及び12に示す塩基配列を有するプライマーを使用してPCR反応を行った。
PCR反応は、Takara PCR Thermal Cycler PERSONAL(宝酒造製)を用いて行い、以下の条件の反応を30サイクル行った。
94℃ 30秒
52℃ 1分
72℃ 1分
反応後、反応液3μlを0.8%アガロース電気泳動に供した。その結果、約1.5kbのDNA断片が増幅されていることが確認された。
(4)遺伝子ライブラリーからのペプチド生成酵素遺伝子のクローニング
ペプチド生成酵素遺伝子全長を取得するために、まず、上記PCRにおいて増幅されたDNA断片をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーションを行った。サザンハイブリダイゼーションの操作は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)に説明されている。
上記PCRで増幅された約1.5kbDNA断片を、0.8%アガロース電気泳動により分離した。目的のバンドを切り出し、精製した。このDNA断片をDIG High Prime(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づきプローブのジゴキシニゲンによる標識を行った。
本参考例2(2)で取得したスフィンゴバクテリウム エスピーの染色体DNAを制限酵素SacIで37℃、16時間反応させて完全に消化した後、0.8%アガロースゲルで電気泳動した。電気泳動後のアガロースゲルからナイロンメンブレンフィルターNylon memebranes positively charged(ロシュ・ダイアグノティクス社製)にブロッティングし、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはEASY HYB(ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて行った。フィルターを37℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、上記で作製した、ジゴキシニゲンによる標識プローブを添加し、37℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。この後、フィルターを0.1%SDSを含む1×SSCで60℃で洗浄を2回行った。
プローブとハイブリダイズするバンドの検出は、DIG Nucleotide Detection Kit(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づき行った。その結果、プローブとハイブリダイズする約3kbのバンドが検出できた。
本参考例2(2)で調製した染色体DNA5μgをSacIで完全に消化した。0.8%アガロースゲル電気泳動により約3kbのDNAを分離し、Gene Clean II Kit(フナコシ社製)を用いてDNAを精製し、10μlのTEに溶解した。このうち4μlと、SacIで37℃、16時間反応させて完全に消化した後、Alkaline Phosphatase(E.coli C75)で37℃、30分、50℃、30分処理したpUC118とを混合し、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製)を用いて連結反応を行った。このライゲーション反応液5μlとEscherichia coli DH5αのコンピテント・セル(宝酒造社製)100μlとを混合して、Escherichia coliを形質転換した。これを適当な固形培地に塗布し、染色体DNAライブラリーを作製した。
ペプチド生成酵素遺伝子全長を取得するために、上記プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションによる染色体DNAライブラリーのスクリーニングを行った。コロニーハイブリダイゼーションの操作は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)に説明されている。
染色体DNAライブラリーのコロニーをナイロンメンブレンフィルターNylon Membranes for Colony and Plaque Hybridization(ロシュ・ダイアグノティクス社製)に移し、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはEASY HYB(ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて行った。フィルターを37℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、上記ジゴキシニゲンによる標識プローブを添加し、37℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。この後、フィルターを0.1%SDSを含む1×SSCで60℃で洗浄を2回行った。
標識プローブとハイブリダイズするコロニーの検出は、DIG Nucleotide Detection Kit(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書に基づき行った。その結果、標識プローブとハイブリダイズするコロニーを6株確認できた。
(5)スフィンゴバクテリウム エスピー由来ペプチド生成酵素遺伝子の塩基配列
標識プローブとハイブリダイズしたことが確認された上記6菌株から、エシェリヒア コリ DH5αが保有するプラスミドを、Wizard Plus Minipreps DNA Purification System(プロメガ社製)を用いて調製し、プローブとハイブリダイズした近傍の塩基配列を決定した。シーケンス反応はCEQ DTCS-Quick Start Kit(ベックマン・コールター社製)を用いて、説明書に基づき行った。また、電気泳動はCEQ 2000−XL(ベックマン・コールター社製)を用いて行った。
その結果、ペプチド生成酵素をコードするオープンリーディングフレームが存在した。スフィンゴバクテリウム エスピー由来ペプチド生成酵素遺伝子全長の塩基配列とこれに対応するアミノ酸配列を配列表配列番号19に示した。スフィンゴバクテリウム エスピー由来ペプチド生成酵素は、エンペドバクターブレビス由来ペプチド生成酵素とアミノ酸配列で63.5%の相同性を示した(BLASTPプログラムを使用)。
(6)スフィンゴバクテリウム属由来のペプチド生成酵素遺伝子の大腸菌における発現
スフィンゴバクテリウム エスピー FERM BP−8124の染色体DNAを鋳型として配列番号21、22に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を増幅した。このDNA断片をNdeI/XbaIにて処理し、得られたDNA断片とpTrpTのNdeI/XbaI処理物をライゲーションした。このライゲーション溶液でエシェリヒア コリ JM109株を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrpT_Sm_aetと命名した。
pTrpT_Sm_aetを有するエシェリヒア コリ JM109株を3mlの培地(2g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/lカザミノ酸、5g/l硫酸アンモニウム、3g/lリン酸二水素カリウム、1g/lリン酸水素二カリウム、0.5g/l硫酸マグネシウム七水和物、100mg/lアンピシリン)を張り込んだ普通試験管に一白金耳植菌し、25℃、20時間の本培養を行った。培養液1mlあたり0.53Uのα-AMP生成活性を有しており、クローニングした遺伝子がエシェリヒア コリで発現したことを確認した。なお、対照としてpTrpTのみを導入した形質転換体には、活性は検出されなかった。
(シグナル配列予測)
配列表に記載の配列番号20番のアミノ酸配列をSignalP v1.1プログラム(Protein Engineering, vol12, no.1, pp.3-9, 1999)にて解析したところ、アミノ酸配列の1−20番目までがシグナルとして機能してペリプラズムに分泌すると予測され、成熟タンパクは21番目より下流であると推定された。
(シグナル配列の確認)
pTrpT_Sm_aetを有するエシェリヒア コリ JM109株を50mlの培地(2g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/lカザミノ酸、5g/l硫酸アンモニウム、3g/lリン酸二水素カリウム、1g/lリン酸水素二カリウム、0.5g/l硫酸マグネシウム七水和物、100mg/lアンピシリン)を張り込んだ普通試験管に一白金耳植菌し、25℃、20時間の本培養を行った。
以下、遠心分離以降の操作は氷上あるいは4℃にて行った。培養終了後、これらの培養液から菌体を遠心分離し、100mMリン酸緩衝液(pH7)にて洗浄後、同緩衝液に懸濁した。195Wにて20分間超音波破砕処理を行い、超音波破砕処理液を遠心分離(12,000rpm、30分)し、破砕菌体片を除去することにより可溶性画分を得た。得られた可溶性画分を100mMリン酸緩衝液(pH7)にて予め平衡化したCHT-IIカラム(バイオラッド製)に供し、500mMリン酸緩衝液による直線的な濃度勾配で酵素を溶出させた。活性画分と5倍量の2M硫酸アンモニウム、100mMリン酸緩衝液とを混合した溶液を、2M硫酸アンモニウム、100mMリン酸緩衝液にて予め平衡化したResource-PHEカラム(アマシャム社製)に供し、2〜0M硫酸アンモニウムによる直線的な濃度勾配で酵素を溶出させ、活性画分溶液を得た。これらの操作により、ペプチド生成酵素は電気泳動的に単一に精製されたことが確認された。
上記ペプチド生成酵素をエドマン分解法によりアミノ酸配列を決定したところ、配列番号15のアミノ酸配列を取得し、SignalP v1.1プログラムで予測されたとおり成熟タンパクは21番目より下流であることが確認された。
実施例4.各ペプチダーゼ遺伝子欠損株を宿主としたEmpedobacer aerogenes由来アミノ酸エステルトランスペプチダーゼ高発現株によるアラニルグルタミンの生産
エシェリヒア・コリJM109株および実施例1で構築したpepD、pepE二重欠損株およびpepD、pepE、pepA三重欠損株に、上記参考例1において構築したEmpedobacter brevis由来アミノ酸エステルトランスペプチダーゼ発現発現プラスミドpTrpT-aetをエレクトロポーレーション法にて導入した。各菌株をアンピシリン(100μg/mL)を含むL−寒天培地上で、20℃で48時間培養した。次に1/4プレート分の細胞を50mLのL−培地(ペプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 10g/L)に移した。シェーカー(140rpm)を用いて22℃、16時間培養した培養液 3ml分(OD610=0.15、26倍希釈)を以下に示す組成の培地300mLに植菌し、1.0Lの容量の実験室用ファーメンター内で700rpmの回転数で攪拌通気(1/1vvm)しながらバッチ培養を行った。糖切れ後の培養液 15ml分(OD610=0.60、51倍希釈)を同じ組成の培地300mlに植菌し、同様のファーメンターによるかくはん通気(1/1vvm)、20℃で糖フィード培養を行った。pHの値は気体アンモニアで自動的に7.0に調整した。
培地の組成(g/L):
Glucose 25.0
MgSO4 ・7H2O 1.0
(NH4)2SO4 5.0
H3PO4 3.5
FeSO4 ・7H2O 0.05
MnSO4 ・5H2O 0.05
Mameno (TN) 0.45
GD113 0.1
アンヒ゜シリン 0.1
グルコースと硫酸マグネシウムは別々に滅菌した。他の組成分のpHはKOHで5.0に調整した。
フィード糖液の組成(g/L)
Glucose 500.0
pH 無調
この培養液2mlを遠心分離(2200g×15 min)し、菌体沈殿物を得た。菌体沈殿物に生理食塩水2mlを添加し、遠心分離(2200g×15 min)後、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体をL-アラニン−O−メチルエステル塩酸塩 100 mM(14.0 mg/ml)、L-グルタミン200 mM(14.6 mg/ml)(0.2M)、ホウ酸-NaOH バッファーで(pH9.0) 100 mMを含む反応液10mlに添加し、pH9.0、25℃でアラニルグルタミン生産反応を行った。その結果を図1に示す。
反応の初速度はほぼ同じであったが、エシェリヒア・コリJM109株を宿主とする菌株を用いた反応では、反応時間が長くなると生成したアラニルグルタミンが分解をうけた。pepD、pepE二重欠損株およびpepD、pepE、pepA三重欠損株を宿主とする菌株を用いた反応では反応時間を伸ばしても、生成アラニルグルタミンの分解が抑制されていた。実際の生産反応においては反応の終点を確認して迅速に反応停止させることは難しいため、この結果より、アラニルグルタミン生産のための宿主としてpepD、pepE二重欠損株およびpepD、pepE、pepA三重欠損株のほうが望ましいと考えられた。
本発明は、工業的なペプチドの製造において極めて有用である。
アラニルグルタミンの生成量を示す図である。
配列番号1;PCRプライマー
配列番号2;PCRプライマー
配列番号3;PCRプライマー
配列番号4;PCRプライマー
配列番号5;PCRプライマー
配列番号6;PCRプライマー
配列番号7;PCRプライマー
配列番号8;PCRプライマー
配列番号9;エンペドバクター由来酵素をエドマン分解により決定したアミノ酸配列
配列番号10;エンペドバクター由来酵素をエドマン分解により決定したアミノ酸配列
配列番号11;Mix Primer
配列番号12;Mix Primer
配列番号13;エンペドバクター ブレビス由来のペプチド生成酵素
配列番号14;エンペドバクター ブレビス由来のペプチド生成酵素
配列番号15;pTrpT調製用プライマー
配列番号16;pTrpT調製用プライマー
配列番号17;pTrpT_Gtg2調製用プライマー
配列番号18;pTrpT_Gtg2調製用プライマー
配列番号19;スフィンゴバクテリウム エスピー由来のペプチド生成酵素
配列番号20;スフィンゴバクテリウム エスピー由来のペプチド生成酵素
配列番号21;pTrp_Sm_aet調製用プライマー
配列番号22;pTrp_Sm_aet調製用プライマー

Claims (15)

  1. アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊された、変異型微生物。
  2. さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された、請求項1に記載の微生物。
  3. エシェリヒア属に属する細菌である、請求項1または2に記載の微生物。
  4. アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物。
  5. さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された、請求項4に記載の微生物。
  6. エシェリヒア属に属する細菌である、請求項4または5に記載の微生物。
  7. 前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、エンペドバクター属またはスフィンゴバクテリウム属に属する細菌に由来するタンパク質である、請求項4から6のいずれかに記載の微生物。
  8. 前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、請求項4から6のいずれかに記載の微生物。
    (A)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
    (B)配列表の配列番号14に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
  9. 前記ペプチド生成活性を有するタンパク質が、下記(C)または(D)に示すタンパク質である、請求項4から6のいずれかに記載の微生物。
    (C)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
    (D)配列表の配列番号20に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつペプチド生成活性を有するタンパク質
  10. アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子を破壊する、微生物の作製方法。
  11. さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子を破壊する、請求項10に記載の微生物の作製方法。
  12. アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子を破壊し、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換する、微生物の作製方法。
  13. さらに、染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子を破壊する、請求項12に記載の微生物の作製方法。
  14. アミノアシルヒスチジンペプチダーゼをコードする遺伝子、ロイシルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子およびイソアスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子からなる群より選ばれる1種または2種以上の、染色体上の遺伝子が破壊されており、かつ、ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えDNAで形質転換された微生物を培地中で培養し、培養された微生物および当該微生物の細胞破砕物の少なくとも一方を、カルボキシ成分およびアミン成分と混合してペプチドを合成する、ペプチドの製造方法。
  15. 前記微生物が、さらに染色体上のα−アスパルチルジペプチダーゼをコードする遺伝子が破壊された微生物である、請求項14に記載のペプチドの製造方法。
JP2004029844A 2004-02-05 2004-02-05 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法 Expired - Fee Related JP4507618B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004029844A JP4507618B2 (ja) 2004-02-05 2004-02-05 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法
EP05001359A EP1561810A3 (en) 2004-02-05 2005-01-24 Mutant microorganism and method for producing peptide using the same
CNB2005100079090A CN100387702C (zh) 2004-02-05 2005-02-05 突变微生物和利用该类微生物合成肽的方法
US11/050,829 US20050176150A1 (en) 2004-02-05 2005-02-07 Mutant microorganism and method for producing peptide using the same
US12/828,772 US20120058511A1 (en) 2004-02-05 2010-07-01 Mutant microorganism and method for producing peptide using the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004029844A JP4507618B2 (ja) 2004-02-05 2004-02-05 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005218369A true JP2005218369A (ja) 2005-08-18
JP2005218369A5 JP2005218369A5 (ja) 2007-03-22
JP4507618B2 JP4507618B2 (ja) 2010-07-21

Family

ID=34675537

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004029844A Expired - Fee Related JP4507618B2 (ja) 2004-02-05 2004-02-05 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP1561810A3 (ja)
JP (1) JP4507618B2 (ja)
CN (1) CN100387702C (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20070087191A (ko) * 2004-12-20 2007-08-27 아지노모토 가부시키가이샤 펩타이드 생성 활성을 갖는 돌연변이형 단백질

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003010307A1 (en) * 2001-07-26 2003-02-06 Ajinomoto Co., Inc. Peptide synthase gene, peptide synthase and process for producing dipeptide
WO2004011652A1 (ja) * 2002-07-26 2004-02-05 Ajinomoto Co., Inc. トリペプチド以上のペプチドの製造方法
JP2005058212A (ja) * 2003-01-24 2005-03-10 Ajinomoto Co Inc α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−β−エステルの製造方法およびα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−α−メチルエステルの製造方法
WO2005045006A1 (ja) * 2003-11-05 2005-05-19 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ジペプチドを生産する微生物および該微生物を用いたジペプチドの製造法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU1092897A (en) * 1995-12-15 1997-07-14 Novo Nordisk A/S A funguns wherein the area, pepc and/or pepe genes have been inactivated
JP2003189863A (ja) * 2001-12-25 2003-07-08 Ajinomoto Co Inc アスパラギン酸アミド並びにその誘導体の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003010307A1 (en) * 2001-07-26 2003-02-06 Ajinomoto Co., Inc. Peptide synthase gene, peptide synthase and process for producing dipeptide
WO2004011652A1 (ja) * 2002-07-26 2004-02-05 Ajinomoto Co., Inc. トリペプチド以上のペプチドの製造方法
JP2005058212A (ja) * 2003-01-24 2005-03-10 Ajinomoto Co Inc α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−β−エステルの製造方法およびα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−α−メチルエステルの製造方法
WO2005045006A1 (ja) * 2003-11-05 2005-05-19 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ジペプチドを生産する微生物および該微生物を用いたジペプチドの製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4507618B2 (ja) 2010-07-21
CN1657603A (zh) 2005-08-24
EP1561810A2 (en) 2005-08-10
CN100387702C (zh) 2008-05-14
EP1561810A3 (en) 2005-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5641023B2 (ja) 新規ペプチド生成酵素遺伝子
JP4483579B2 (ja) トリペプチド以上のペプチドの製造方法
JP4507618B2 (ja) 変異型微生物およびこれを用いたペプチドの製造方法
JP4500978B2 (ja) α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−β−エステルの製造方法およびα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−α−メチルエステルの製造方法
US20050176150A1 (en) Mutant microorganism and method for producing peptide using the same
WO2006009255A1 (ja) α-L-アスパルチル-L-フェニルアラニン-α-エステルの製造方法
JP2005269905A (ja) ペプチド生成活性を有するタンパク質

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070201

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070201

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100119

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100316

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100413

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100426

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees