JP2005218340A - 抗mKirre抗体 - Google Patents
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Abstract
造血幹細胞をその機能を保ったまま生体外にて増幅させることができるようにするために必要とされるストローマ細胞のシグナル伝達に関連するタンパク質を特異的に検出・同定できる物質の提供。
【解決手段】
本発明は、mKirreの細胞外領域のアミノ酸配列であって、シグナル配列(1−17番目)及び免疫グロブリン様領域以外の部分の部分配列からなるペプチドを抗原として使用することを特徴とする抗mKirreモノクローナル抗体、より詳細には、抗原として使用するペプチドが、GYMAKDKFRRMNEGQVYのアミノ酸配列を含有するものである抗mKirreモノクローナル抗体、及びその製造方法に関する。
【選択図】 なし
Description
これまで生体外にて造血幹細胞を増幅する試みが数多くなされ、一定の成果を挙げつつある。骨髄造血組織においては、骨髄ストローマ細胞が造血微小環境(ニッチ:niche)を形成し造血因子・接着因子を介して造血前駆細胞の増殖・分化を制御していると考えられている。ストローマ細胞の産生する造血因子として、IL−3,IL−6などのサイトカイン、SCF、Flt−3 各種のリガンドなどの受容体型チロシンキナーゼリガンド(非特許文献1参照)、分化抑制因子であるノッチ(Notch)リガンドのjagged−1(非特許文献2参照)が報告されている。
しかしながら、造血に重要な膜結合型因子・接着分子に関してはまだ多くが未同定であり、現在までの技術では造血幹細胞をその機能を保ったまま生体外にて増幅させることはできず、ストローマ細胞の伝達するシグナルについて、より深い知見が必要と考えられ、これらの物質の探索が行われている。
mKirreは、生体内においては脳と骨髄、骨髄内においては骨髄ストローマ細胞に限局して発現しており、mKirreのシグナルはストローマ細胞の造血幹細胞支持能において重要な役割を果たしている。このmKirreは、細胞外領域、膜貫通領域、及び細胞内領域を有する膜タンパク質であるが、一部のmKirreは細胞外領域が切断され分泌される可能性のあることが知られている。
また、多くの白血病細胞はインビトロ(in vitro)での増殖には限界があるにも関わらず、骨髄内では効率よく無制限に増殖できる事が知られている。これは、白血病細胞が正常な造血幹・前駆細胞の性質を一部保持しており、造血微小環境を占拠することで正常の造血を抑制すると同時にストローマ細胞からのシグナルを受けて増殖しているためと考えられている。mKirreのシグナルはストローマ細胞の造血幹細胞支持能において重要であることから、mKirreを介して伝達されるシグナルを阻害することにより、白血病など骨髄内で増殖する悪性腫瘍に対する抗腫瘍剤を開発できる可能性がある。
即ち、本発明は、ストローマ細胞の造血幹細胞支持能に重要な役割を果たしているタンパク質を同定し、このタンパク質に対する抗体、より詳細にはモノクローナル抗体を提供する。
mKirreはI型タイプAの膜タンパク質(アミノ基末端側より、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞内領域という順の構造)を有しており、生細胞に発現されるmKirreを認識する抗体を作製することにしたが、Kirreは骨髄内に発現しているタンパク質であり、普段から免疫担当細胞に暴露しているため、一般的に抗原性が低く抗体が出来にくく、さらに、Kirreの配列は現在までのところ配列の判明しているマウス、ヒトで比較すると細胞外領域においてアミノ酸レベルにて98%以上の相同性を有しており、ウサギ、ラットなどの免疫動物にても高い相同性が予想され、さらに免疫動物においても抗原性が低く、Kirreの細胞外領域を認識する抗体の作製は困難であった。
しかしながら、本発明者らは、各種の試行錯誤を繰り返した後に、マウスのKirre(mKirre)の特定の部分を抗原としてラットの感作させることにより、極めて優れたモノクローナル抗体を得ることができることを見出した。
一般に、抗体を作成する際の抗原としては、抗原となるタンパク質の細胞外領域を全領域に渡って哺乳類細胞株に発現させて作製したリコンビナントタンパク質が、生体内の当該タンパク質の立体構造や糖鎖修飾を含めてより近い構造を有しているために、これを抗原とした方が結果として得られる抗体が、天然のタンパク質をよりよく認識できる可能性が高く、抗原として有利であると考えられている。
mKirreは、配列表の配列番号1に示される様に、766個のアミノ酸からなるタンパク質である。このうち、1−523番目までが細胞外領域であると考えられる。そこで、mKirreのシグナル配列を除くアミノ酸番号18−523の細胞外領域のタンパク質とヒト免疫グロブリンFc領域との融合タンパク質(SDHF−4−ΔTM−Fc)を用いて、ラットに3日毎に3回フットパット免疫して細胞融合法によりモノクローナル抗体の作製を試みたところ、抗原反応が陽性の5クローン、即ち、1A3、1H9、2B1、2F1、及び2H8が得られた。得られた5クローンの抗体をELIZA法により、mKirre−ヒトFc及びヒトIgG(ネガティブコントロール)と、それぞれ交叉反応された。結果を次の表1に示す。
この結果、同時に作製したGST−SDHF−5の免疫効果と比べてGST−mKirreでは抗体価の上昇が悪いことがわかる。このように、SDHF−5に対する抗体に比べて抗体価の極めて悪いものしか作成することができなかったが、一応mKirreを認識するポリクローナル抗体を作製することができる可能性があることはわかった。
この結果、抗FLAG抗体にてmKirre−FLAGの発現が確認されるが、抗mKirre抗体にてはバックグラウンドが高くmKirre−FLAGの発現は確認できなかった。ウェスタン解析の結果から、この方法による抗体は、極めてバックグラウンドの高い、質の悪い抗体でしかないことがわかる。
そこで、免疫グロブリン様領域を避け、抗原性の高いペプチド配列部分を想定する方法を検討した。免疫グロブリン様領域を避け、抗原性の高いペプチド配列部分を想定するためにコンピュータソフトウェアを用いた。用いたソフトウェアはマックベクター(MacVector)、ペプツール(Peptool)、及びスキャンプロサイト(Scan Procite)の3種類である。その結果、最終的にタンパク質から切り離されるシグナル配列(1−17)、及び免疫グロブリン様領域を除外した細胞外領域においては、アミノ酸配列で32−48番目の(GYMAKDKFRRMNEGQVY)領域を想定することができた。この領域の平均疎水性値は−13.3で、電荷密度(Charge Density)は0.53であった。この値は、検討した配列の中で最良の結果を示すものであった。
このアミノ酸配列をヒトの配列と比較すると、100%一致していたが、免疫動物であるラットと比較するとアミノ酸配列32−33において異なっており(マウスGY、ラットAT)、抗原としても有利であると考えられた。
これら陽性細胞集団から最終的に単クローンにて抗原ペプチドとの反応性を示すモノクローナル抗体を安定的に産生するハイブリドーマを3クローン(1A8、4A8、及び4B10)樹立することができた。これらのクローンは、それぞれFERM P−19632、FERM P−19633、及びFERM P−19634として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された。
得られたモノクローナル抗体の各クローンについて抗原とした合成ペプチドによるELISA反応を測定した。結果を次の表2に示す。
また、抗原として用いたペプチド配列(GYMAKDKFRRMNEGQVY マウスmKirreのアミノ酸配列の32−48番目)は、ヒトホモログであるKIAA1867のアミノ酸配列32−48と完全に一致しており、本発明のモノクローナル抗体は、マウス由来ではあるが、ヒトのKirreをも認識することができるものである。
本発明のmKirreに対するモノクローナル抗体は、mKirreの細胞外領域のアミノ酸配列であって、シグナル配列(1−17番目)及び免疫グロブリン様領域以外の部分の部分配列からなるペプチドを抗原として使用することを特徴とするものである。本発明の抗原として使用するペプチドとしては、mKirreの細胞外領域のアミノ酸配列であって、シグナル配列(1−17番目)及び免疫グロブリン様領域以外の部分の部分配列からなるペプチドであって、アミノ酸数で15〜50個、15〜30個、15〜20個程度のものが好ましい。アミノ酸数が少ないと抗原としての認識が十分できないし、長すぎると特異性が小さくなることから、アミノ酸数が20個程度のペプチドを抗原とするのが好ましい。本発明の抗mKirreモノクローナル抗体を製造するに使用される好ましいペプチドとしては、mKirreの32−48番目のアミノ酸配列(GYMAKDKFRRMNEGQVY)を有するペプチドが挙げられるが、これに限定されるものではなく、このペプチドにさらに1〜5個、好ましくは1〜3個程度のアミノ酸がさらに付加したペプチド、1〜5個、好ましくは1〜3個程度のアミノ酸が欠失もしくは置換されたペプチド、又は、これらの付加、欠失、置換が組み合わされてなるペプチドであって、mKirreを特異的に認識することができるモノクローナル抗体を製造することができるアミノ酸配列を有するペプチドであってもよい。
本発明の抗mKirreモノクローナル抗体は、通常のモノクローナル抗体と同様に使用することができるが、mKirreを検出、同定する際の試薬や診断薬として使用されるだけでなく、mKirreを発現する細胞、例えばストローマ細胞を濃縮・純化する際のマーカーとして、また、血病など骨髄内で増殖する悪性腫瘍に対する抗腫瘍剤として使用することができる。本発明のモノクローナル抗体を使用する際には、これをこのまま使用することができるが、必要により、製薬上許容される担体や、試薬に適した担体などと共に組成物として使用することもできる。
初回免疫後9日目にラットの鼠経リンパ節を採取し、ステンレスメッシュにて充分ほぐしてリンパ球を採取し、これをマウスミエローマ細胞株P3U1とPEG法にて細胞融合させて融合細胞を製造した。細胞比はリンパ球:ミエローマ細胞=5:1とした。得られた融合細胞をHAT培地中で培養し、ハイブリドーマを選択した。
得られたハイブリドーマを小数の細胞集団ごとに分割して、それらの上清に産生される抗体と、抗原ペプチドをコーティングした96穴プレートと反応させ、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(H+L)によるELISA反応にて陽性細胞集団を選択した。
これら陽性細胞集団を、限界希釈法にてさらに細かい細胞集団に分けていった。最終的に単クローンにて抗原ペプチドとの反応性を示すモノクローナル抗体を安定的に産生するハイブリドーマを3クローン(1A8、4A8、及び4B10)樹立した。
抗原とした合成ペプチドを用いて、ELISA反応を行った。結果を表2に示す。
また、本発明の抗mKirreモノクローナル抗体は造血支持細胞を分離・純化し、それらと造血幹細胞を共培養することでインビトロで造血幹細胞を増幅することを可能にするものである。さらに、多くの白血病細胞はインビトロでの増殖には限界があるにも関わらず、骨髄内では効率よく無制限に増殖できる事が知られている。これは、白血病細胞が正常の造血幹・前駆細胞の性質を一部保持しており、造血微小環境を占拠することで正常の造血を抑制すると同時にストローマ細胞からのシグナルを受けて増殖しているためと考えられている。mKirreのシグナルはストローマ細胞の造血幹細胞支持能において重要であることから、本発明の抗mKirreモノクローナル抗体がmKirreを介して伝達されるシグナルを阻害し、白血病など骨髄内で増殖する悪性腫瘍に対する抗腫瘍剤としても有用な可能性もある。
配列番号2:mKirreの32−48番目のアミノ酸配列
Claims (5)
- mKirreの細胞外領域のアミノ酸配列であって、シグナル配列(1−17番目)及び免疫グロブリン様領域以外の部分の部分配列からなるペプチドを抗原として使用することを特徴とする抗mKirreモノクローナル抗体。
- 抗原として使用するペプチドが、15〜50個のアミノ酸を有するペプチドである請求項1に記載の抗mKirreモノクローナル抗体。
- 抗原として使用するペプチドが、GYMAKDKFRRMNEGQVYのアミノ酸配列を含有するものである請求項1又は2に記載の抗mKirreモノクローナル抗体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された抗原ペプチドを動物に感作させ、当該動物の免疫細胞との融合細胞を製造し、これをスクリーニングすることからなる請求項1〜3のいずれかに記載の抗mKirreモノクローナル抗体の製造方法。
- 感作させる動物が、ラットである請求項4に記載の製造方法。
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