以下、本発明の実施の形態を、図1を参照して詳細に説明する。
まず、2層より成るコア基板を作製する。コア基板を作製する場合、図1(a)に示すようなプリプレグ1の両側に金属箔2を有する積層板を用いる方法が安価で好ましい。
プリプレグは樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるものであり、基材としては各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質の例としては、Eガラス,Dガラス,Sガラス又はQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル又はテトラフルオロエチレン等の有機繊維、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され必要により単独もしくは2種類以上の材質及び形状からの使用が可能である。基材の厚みには特に制限はないが、通常0.03〜0.5mm程度のものを使用し、シランカップリング剤等で表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものは耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁材料として用いられる公知慣例の樹脂組成物を用いることができる。通常、耐熱性、耐薬品性の良好な熱硬化性樹脂がベースとして用いられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂などが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱硬化性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂は耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れ、比較的安価であることから、絶縁樹脂として広く用いられており特に重要である。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などが例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、このエポキシ樹脂とともに用いる硬化剤はエポキシ樹脂を硬化させるものであれば、限定することなく使用でき、例えば、多官能フェノール類、多官能アルコール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物などがある。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
シアネートエステル樹脂は、加熱によりトリアジン環を繰り返し単位とする硬化物を生成する樹脂であり、硬化物は誘電特性に優れるため、特に高周波特性が要求される場合などに用いられることが多い。シアネートエステル樹脂としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノールノボラック及びアルキルフェノールノボラックのシアネートエステル化物等が挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンは硬化物の誘電特性と硬化性のバランスが特に良好であり、コスト的にも安価であるため好ましい。またシアネートエステル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、ここで用いられるシアネートエステル化合物は予め一部が三量体や五量体にオリゴマー化されていても構わない。さらに、シアネート樹脂に対して硬化触媒や硬化促進剤を入れても良い。硬化触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩等の有機金属塩及びアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。硬化促進剤としてはフェノール類を使用することが好ましく、ノニルフェノール、パラクミルフェノールなどの単官能フェノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの二官能フェノールあるいはフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多官能フェノールなどを用いることができる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物には、誘電特性、耐衝撃性、フィルム加工性などを考慮して、熱可塑性樹脂がブレンドされてあっても良い。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエンなどが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルを配合すると、硬化物の誘電特性が向上するので有用である。ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−無水マレイン酸コポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリアミドのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマのアロイ化ポリマなどが挙げられる。また、ポリフェニレンエーテルに反応性、重合性を付与するために、ポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したり、ポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したりしてもよい。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐湿性に優れることに加え、金属に対する接着性が良好であるので有用である。ポリアミドイミドの原料のうち、酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロライド、アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが例示されるが、これに限定されるわけではない。乾燥性を向上させるためにシロキサン変性としても良く、この場合、アミノ成分にシロキサンジアミンが用いられる。フィルム加工性を考慮すると、分子量は5万以上のものを用いるのが好ましい。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物には、無機フィラーが混合されてあっても良い。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーンなどが挙げられる。これら無機フィラーは単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物は、有機溶媒を含有しても良い。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒;テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノールのようなエーテルアルコール系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒などを、適宜、併用しても良い。プリプレグを作製する場合におけるワニス中の溶媒量は40〜80重量%の範囲とするのが好ましく、また、ワニスの粘度は20〜100cPの範囲とするのが好ましい。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物は難燃剤を含有しても良い。難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、トリブロモフェノールなどの臭素化合物、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどのリン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、赤リン及びその変性物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、メラミン、シアヌール酸、シアヌール酸メラミンなどのトリアジン化合物など公知慣例の難燃剤を用いることができる。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物に対して、さらに必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、紫外線不透過剤、酸化防止剤、還元剤などの各種添加剤や充填剤を加えて調合する。
通常、基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で20〜90重量%となるように基材に含浸又は塗工した後、通常100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化状態(Bステージ状態)のプリプレグを得る。このプリプレグを通常1〜20枚重ね、その両面に金属箔を配置した構成で加熱加圧する。成形条件としては通常の積層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、通常、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形したり、真空ラミネート装置などを用いてラミネート条件50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で減圧下又は大気圧の条件で行う。絶縁層となるプリプレグ層の厚みは用途によって異なるが、通常0.1〜5.0mmの厚みのものが良い。
本発明に用いる金属箔の表面粗さはJISB0601に示す10点平均粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることが好ましい。金属箔には銅箔、ニッケル箔、アルミ箔などを用いることができるが、通常は銅箔を使用する。銅箔の製造条件は、硫酸銅浴の場合、硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dm2の条件、ピロリン酸銅浴の場合、ピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dm2の条件が一般的によく用いられ、銅の物性や平滑性を考慮して各種添加剤をいれる場合もある。銅箔は通常粗し処理とよばれる粗面化処理を行うが、本発明では実質的な粗し処理を行わず、銅箔が足を有さないこと、すなわち、銅箔の凹凸が少ないことを特徴とする。これにより、エッチングの際に、樹脂上の回路がない部分に銅箔残さが残らない。
銅箔と接する絶縁層の十点平均粗さ(Rz)も2.0μm以下が好ましい。
さらに好ましくは、厚みが3.0μm以下のピーラブルタイプであり、かつ十点平均粗さRzが両面とも2.0μm以下である金属箔を用いる。ここで、ピーラブルタイプの金属箔とは、キャリアを有する金属箔であり、キャリアが引き剥がし可能な金属箔である。例えば、ピーラブルタイプの極薄銅箔の場合、厚み10〜50μmのキャリア箔上に剥離層となる金属酸化物或いは有機物層を形成し、その上に硫酸銅浴であれば硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dm2の条件、ピロリン酸銅浴であればピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dm2の条件で厚み0.3〜3.0μmの金属箔を形成し、製造される。このような箔を給電層に用いた場合、後述するように配線形成性が良好である。尚、ピーラブルタイプの代わりにアルミキャリアやニッケルキャリアを有するエッチャブルタイプの銅箔を用いることもできる。
金属箔の樹脂接着面に行う防錆処理は、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトのいずれか、若しくはそれらの合金を用いて行うことができる。これらはスパッタや電気めっき、無電解めっきにより金属箔上に薄膜形成を行うものであるが、コストの面から電気めっきが好ましい。具体的にはめっき層にニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトの内一種類以上の金属塩を含むめっき層を用いてめっきを行う。金属イオンの析出を容易にするためにクエン酸塩、酒石酸塩、スルファミン酸等の錯化剤を必要量添加することも出来る。めっき液は通常酸性領域で用い、室温〜80℃の温度で行う。めっきは通常電流密度0.1〜10A/dm2、通電時間1〜60秒、好ましくは1〜30秒の範囲から適宜選択する。防錆処理金属の量は、金属の種類によって異なるが、合計で10〜2000μg/dm2が好適である。防錆処理が厚すぎるとエッチング阻害と電気特性の低下を引き起こし、薄すぎると樹脂とのピール強度低下の要因となりうる。
さらに、防錆処理上にクロメート処理層が形成されていると樹脂とのピール強度低下を抑制できるため有用である。具体的には六価クロムイオンを含む水溶液を用いて行われる。クロメート処理は単純な浸漬処理でも可能であるが、好ましくは陰極処理で行う。重クロム酸ナトリウム0.1〜50g/L、pH1〜13、浴温0〜60℃、電流密度0.1〜5A/dm2、電解時間0.1〜100秒の条件で行うのが良い。重クロム酸ナトリウムの代わりにクロム酸或いは重クロム酸カリウムを用いて行うことも出来る。
本発明においては、金属箔の最外層にさらにシランカップリング剤が吸着していることが好ましい。シランカップリング剤としては例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランなどが用いられる。これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。これらのカップリング剤は、水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させて室温〜50℃の温度で金属箔に塗布したり、電着させたりして吸着させる。これらのシランカップリング剤は金属箔表面の防錆金属の水酸基と縮合結合することで皮膜を形成する。シランカップリング処理後は加熱、紫外線照射等によって安定的結合を形成する。加熱であれば100〜200℃の温度で2〜60秒乾燥させる。紫外線照射であれば200〜400nm、200〜2500mJ/cm2の範囲で行う。
樹脂組成物とシランカップリング剤の組み合わせは、加熱により樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応するように選択することが好ましい。例えば、樹脂組成物中にエポキシ基が含まれる場合、シランカップリング剤としてアミノ官能性シランを選択すると効果がより顕著に発現される。これは、熱によりエポキシ基とアミノ基が容易に強固な化学結合を形成し、この結合が熱や水分に対して極めて安定であることに起因する。このように化学結合を形成する組み合わせとして、エポキシ基−アミノ基、エポキシ基−エポキシ基、エポキシ基−メルカプト基、エポキシ基−水酸基、エポキシ基−カルボキシル基、エポキシ基−シアナト基、アミノ基−水酸基、アミノ基−カルボキシル基、アミノ基−シアナト基などが例示される。
樹脂組成物中に常温で液状のエポキシ樹脂を含む場合、溶融時の粘度が大幅に低下するため、接着界面における濡れ性が向上し、エポキシ樹脂とカップリング剤の化学反応が起こりやすくなり、その結果、強固なピール強度が得られる。具体的にはエポキシ当量200程度のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂組成物に硬化剤を含む場合、硬化剤としては、特に加熱硬化型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。すなわち、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応する場合は、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応温度が熱硬化性樹脂の硬化反応が開始される温度より低くなるように硬化剤を選択することが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応を優先的、選択的に行うことができるため、金属箔と樹脂組成物の密着性がより高くなる。エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に対する熱硬化型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、アミン−エポキシアダクトなどの固体分散−加熱溶解型硬化剤や尿素化合物、オニウム塩類、ボロントリクロライド・アミン塩類、ブロックカルボン酸化合物などの反応性基ブロック型硬化剤が挙げられる。
また、樹脂組成物硬化後1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下である樹脂組成物を用いると、配線における誘電体損失の低減が可能となり、より一層伝送損失の小さい回路形成が可能となる。このような誘電特性に優れる樹脂としてはポリフェニレンエーテルやシアネートエステルが例示される。ポリフェニレンエーテルを配線板材料に用いる場合は、耐熱性や耐薬品性を向上させるために熱硬化性を付与する必要があるが、この一例として、ポリフェニレンエーテルにエポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂をブレンドする方法、ポリフェニレンエーテルの分子鎖中に二重結合やエポキシ基などの重合性官能基を導入する方法がある。
樹脂組成物中にシアネート樹脂を含む場合は、金属箔の防錆処理はニッケルを主成分として用いるのが好ましい。この組み合わせにおいては、耐熱劣化試験や耐湿劣化試験におけるピール強度の低下が少なく有用である。
以上のような樹脂組成物と表面が粗し処理されていない金属箔とは従来公知の方法により積層一体化され、図1(a)に示す積層板を得ることができる。
次に上記積層体に層間接続用の貫通スルーホール3を形成する(図1(b))。スルーホール径が100μm以上であればドリルによる加工が適しており、スルーホール径が100μm以下であればCO2やCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーが適している。スルーホール径が100μmの場合はどちらでもよい。
次いで金属箔上及びスルーホール内部に触媒核を付与する。触媒核の付与には、パラジウムイオン触媒であるアクチベーターネオガント(アトテック・ジャパン株式会社製、商品名)やパラジウムコロイド触媒であるHS201B(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用する。パラジウム触媒を付与する場合、CLC-201(日立化成工業株式会社製、商品名)のようなコンディショニング処理を事前に行う。
次に図1(c)に示すように触媒核を付与した金属箔上及びスルーホール内部に薄付けの無電解めっき層4を形成する。この無電解めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。めっきの厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μm程度で十分である。尚、層間接続が必要ない場合は、無電解銅めっきを省略することができる。
次に図1(d)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト5を形成する。めっきレジストの厚さは、その後めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジストに使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3025(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しない。
次に図1(e)に示すように電気めっきにより回路パターン6を形成する。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
次に図1(f)に示すようにアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行い、パターン部以外の銅をエッチング除去する。この場合高圧スプレー等によりエッチングを行うのが一般的であるが、配線の微細な部分はどうしても液の交換が悪くなる。従って銅とエッチング液の反応は拡散律速ではなく、反応律速であることが望ましい。銅とエッチング液の反応が反応律速であれば、拡散をそれ以上強めたとしてもエッチング速度は変わらない。即ち液交換の良い場所と悪い場所でのエッチング速度差があまり生じない。具体的には過酸化水素とハロゲン元素を含まない酸とを主成分とするエッチング液を用いるのが良い。酸化剤に過酸化水素を用いると、過酸化水素濃度を管理することで厳密なエッチング速度制御が可能になる。尚、エッチング液にハロゲン元素が混入すると、溶解反応が拡散律速になりやすい。ハロゲンを含まない酸としては、硝酸、硫酸、有機酸等が使用できるが、硫酸であることが安価で好ましい。更に硫酸と過酸化水素が主成分である場合には、それぞれの濃度を5〜300g/L,5〜200g/Lとする事がエッチング速度、液の安定性の面から好ましい。
以上パターン電気めっき法で基板を作製する方法を示したが、サブトラクティブ法であっても構わない。
以上示した方法により2層より成るコア基板が完成する。さらに4層板を作製する場合は、コア基板の表面の内層導体回路を粗面化し、この銅パターンの上に形成される層間樹脂絶縁層との密着性を向上させる。具体的にはコア基板の上に針状の無電解めっきを形成する方法や内層銅パターンを酸化(黒化)―還元処理する方法、内層銅パターンをエッチングする方法等がある。
次にコア基板の上に、図1(g)に示す様に片面金属箔付樹脂をラミネートとする。絶縁層7の厚みは10から100μm程度、望ましくは20から60μmがよく、金属箔8の厚みは0.3から3μmが好適である。片面金属箔付樹脂の作製に用いる樹脂、銅箔は積層板の時と同様のものを用い、樹脂ワニスを金属箔にキスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて塗布するか或いはフィルム状の樹脂を金属箔にラミネートして行う。樹脂ワニスを金属箔に塗布する場合は、その後、加熱ならびに乾燥させるが、条件は100〜200℃の温度で1〜30分とするのが適当であり、加熱、乾燥後の樹脂組成物中における残留溶剤量は、0.2〜10%程度が適当である。フィルム状の樹脂を金属箔にラミネートする場合は、50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で真空或いは大気圧の条件が適当である。また、コア基板とプリプレグ、銅箔を積層プレスする方法もある。
次いで図1(h)に示す様に金属箔の上から層間樹脂絶縁層にIVH9を形成する。IVHを形成する方法としては、レーザーを用いるのが好適である。ここで用いることが出来るレーザーとしては、CO2やCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーがある。CO2レーザーが容易に大出力を得られる事からφ50μm以上のIVHの加工に適している。φ50μm以下の微細なIVHを加工する場合は、より短波長で集光性のよいYAGレーザーが適している。
次いで過マンガン酸塩、クロム酸塩、クロム酸のような酸化剤を用いてIVH内部の樹脂残さの除去を行い、次いで金属箔上及びIVH内部に触媒核を付与する。
次に図1(i)に示すように触媒核を付与した金属箔上及びIVH内部に薄付けの無電解めっき層10を形成する。この無電解めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。めっきの厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μm程度で十分である。
次に図1(j)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト11を形成する。めっきレジストの厚さは、その後めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジストに使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3025(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しない。
次に図1(k)に示すように電気めっきにより回路パターン12を形成する。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。また、回路導体の最小ピッチを80μm以下にしてもよい。
次にアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行う。
次にパターン部以外の銅を好ましくは10〜300g/Lの硫酸及び10〜200g/Lの過酸化水素を主成分とするエッチング液を用いて除去することで回路形成が終了する(図1(l))。
さらに回路上に無電解金めっきを行う(図1(m))。金めっきの方法としては、SA―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような活性化処理液で導体界面の活性化処理を行い、NIPS―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解ニッケルめっきを1〜10μm程度行い、HGS―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような置換金めっきを0.01〜0.1μm程度行った後にHGS−2000(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解金めっきを0.1〜1μm程度行う。また特開平11−140659にあるように無電解ニッケルめっきと無電解金めっきの間に無電解パラジウムめっきを行うと、接続信頼性が更に向上する。無電解パラジウムめっきはパレット(小島化学薬品株式会社製、商品名)等を0.01〜1μm程度行う。電気特性を考慮した場合、無電解ニッケルめっきを省略することもできる。これらの組み合わせは製品用途によって異なり、コスト、電気特性、接続信頼性を考慮した上で決まる。本発明はいずれの手法を用いた場合でも有効である。
以下、本発明の実施の形態を図2を用いて説明する。
(実施例1)
下記に示す通り、金属箔Aを作製した。
幅510mm、厚み35μmの電解銅箔(キャリア銅箔)の光択面に下記の条件でクロムめっきを連続的に行って1.0mg/dm2の厚さのクロムめっき層(剥離層)を形成した。クロムめっき形成後の表面粗度Rz=0.5μmであった。なお、表面粗さはJIS−B−0601に基づき測定した。
クロムめっき条件は以下の通りであった。
・液組成:三酸化クロム250g/L、硫酸2.5g/L
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度20A/dm2
次に下記に示す光択めっき条件で、クロムめっき層上に厚さ2.0μmの電気銅めっきを行った。電気銅めっき終了後の金属箔表面粗さRz=0.6μmであった。
硫酸銅めっき条件は以下の通りであった。
液組成:硫酸銅5水和物100g/L、硫酸150g/L、塩化物イオン30ppm
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度:10A/dm2
次に下記に示すように、銅めっき層上に電気めっきにより亜鉛防錆処理を行った。
・液組成:亜鉛20g/L,硫酸70g/L
・浴温:40℃
・アノード:鉛
・電流密度:15A/dm2
・電解時間:10秒
次に引き続き下記に示すクロメート処理を、亜鉛めっき層上に行った。
・液組成:クロム酸5.0g/L
・pH11.5
・浴温:55℃
・アノード:鉛
・浸漬時間:5秒
次に下記に示すシランカップリング処理を、クロメート処理層上に行った。
・液組成:3-アミノプロピルトリメトキシシラン5.0g/L
・液温25℃
・浸漬時間10秒
シランカップリング処理後、金属箔を120℃で乾燥してカップリング剤を金属箔表面に吸着させた。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
下記に示す樹脂組成物Bを作成した。
ポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社製商品名)20重量%、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社製商品名)40重量%、リン含有フェノール化合物(HCA-HQ、三光化学株式会社製商品名)8重量%、ナフテン酸マンガン(Mn含有量=6重量%、日本化学産業株式会社製)0.1重量%、2,2-ビス(4-グリシジルフェニル)プロパン(DER331L、ダウケミカル日本株式会社製商品名)32重量%をトルエンに80℃で加熱溶解させ、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂組成物ワニスを作製して樹脂組成物Bとした。
樹脂組成物Bを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m2)に含浸し120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔Aを積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような絶縁層14と金属箔15よりなる銅張積層板を製造した。
図2(b)に示すように、金属箔上から炭酸ガスインパクトレーザー穴あけ機L−500(住友重機械工業株式会社製、商品名)により、直径80μmの貫通スルーホール16をあけ、過マンガン酸カリウム65g/リットルと水酸化ナトリウム40g/リットルの混合水溶液に、液温70℃で20分間浸漬し、スミアの除去を行なった。
その後、パラジウム触媒であるHS-201B(日立化成工業株式会社製、商品名)を付与した後、CUST−201(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用し、液温25℃、30分の条件で無電解銅めっきを行ない、図2(c)に示すように厚さ0.5μmの無電解銅めっき層17を形成した。パラジウム触媒の付与条件を表1に示す。
図2(d)に示すように、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3025(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解めっき層17の表面にラミネートし、電解銅めっきを行なう箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジスト18を形成した。
図2(e)に示すように、硫酸銅浴を用いて、液温25℃、電流密度1.0A/dm2の条件で、電解銅めっきを20μmほど行い、最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=23/17μmとなるように回路パターン19を形成した。
次に図2(f)に示すように、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った後にH2SO4100g/L、H2O210g/Lの組成のエッチング液を用いてパターン部以外の銅をエッチング除去した。エッチング後の最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=20/20μmであった。
次に図2(g)に示すように最外層に無電解金めっき20を行い、基板を完成させた。無電解金めっきの条件を表2に示す。
注) Z-200(株式会社ワールドメタル製、商品名)
SA-100(日立化成工業株式会社製、商品名)
NIPS-100(日立化成工業株式会社製、商品名)
トップケミアロイ66(奥野薬品工業株式会社製、商品名)
パレット(小島化学薬品株式会社製、商品名)
HGS-100(日立化成工業株式会社製、商品名)
HGS-2000(日立化成工業株式会社製、商品名)
(比較例1)
金属箔1の変わりに3.0μmのマイクロシン箔(三井金属株式会社製、商品名)をもちいた他は実施例1と同様に基板を作製した。マイクロシン箔の表面粗さはRz=3.5μmであった。又、エッチング後の最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=15/25μmであった。
(測定条件)
(1)配線仕上がり
回路導体幅/回路導体間隔(L/S)を光学顕微鏡の画像処理により確認した。光学顕微鏡にはOLYMPUS MX50(オリンパス光学工業株式会社製、商品名)を、画像処理にはMCP-550(株式会社モリテックス製、商品名)を用いた。測定は目標仕上がりL/S=50/50、40/40、30/30、25/25、20/20μmの個所で行った。結果を表3に示す。
(2)樹脂上への金めっき析出量評価
ニッケル/金めっき降りは回路間全てで発生するとは限らず、図3のように回路からすそをひくような形状で発生することが多い。そこで、回路間のトップ(St)とボトム(Sb)の差を2で割った値(St-Sb)/2を樹脂上への金めっき析出量として定量化した。金めっき析出量は光学顕微鏡の画像処理により確認した。結果は各20点を測定し、その平均値で算出した。測定は目標仕上がりL/S=50/50、40/40、30/30、25/25、20/20μmの個所で行った。結果を表3に示す。
実施例1で作製した基板は、エッチングの際に銅箔の足残りが発生しにくいため、回路形成性が良好で目標仕上がり値通りに配線が仕上がった上に、樹脂上への金めっき析出がなかった。一方、比較例1で作製した基板は、エッチングの際に銅箔の足をエッチングする必要があるため、配線トップ幅(L)が細くなってしまった。更に配線が微細になるに従って樹脂上への金めっき析出量が増えることが分かった。これは配線が微細になるに従って液あたりが悪くなり、エッチング残りが発生したためであると考えられる。