JP2005205719A - アルミニウム板表面に凹凸を形成する方法および平版印刷版用支持体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に3μm〜15μm厚さのクロムめっき層を有し、ロール表面の平均表面粗さRaが、0.3μm〜1.0μmであり、凹凸の基準長さにおける平均間隔Smが30μm〜150μmである鋼製のロールを用いて、アルミニウム板を圧延して、アルミニウム板表面に凹凸を形成する方法。
【選択図】なし
Description
また、これらの従来技術のロールでは、ロールを用いて凹凸加工されたアルミニウム板を、平版印刷版用アルミニウム支持体、とくにCTPプレート(レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術)用アルミニウム支持体としたときの印刷性能、とくに印刷枚数と感度に優れ、汚れにくさに優れたアルミニウム支持体を得ることが難しかった。
(1)表面に3μm〜15μm厚さのクロムめっき層を有し、ロール表面の平均表面粗さRaが、0.3μm〜1.0μmであり、凹凸の基準長さにおける平均間隔Smが30μm〜150μmである鋼製のロールを用いて、アルミニウム板を圧延して、アルミニウム板表面に凹凸を形成する方法。
(2)上記(1)に記載のロールが、クロムめっき前に、機械的または電気化学的にロール表面に凹凸を形成されたロールである上記(1)に記載のアルミニウム板表面に凹凸を形成する方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の方法で得られる表面に凹凸を形成されたアルミニウム板に、化学的エッチング処理、および電気化学的粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体。
(4)上記(3)に記載の平版印刷版用支持体上に記録層を有する平版印刷版原版。
本発明の方法で得られた凹凸を形成されたアルミニウム板は、平版印刷版用支持体に用いることが好ましい。最も好ましいのはCTP用平版印刷板用支持体として用いることである。この方法で凹凸を形成されたアルミニウム板には、角度が急峻でかつ深い凹部が生成しにくいため、感度がよい支持体が得られるからである。
本発明の方法は、表面に3〜15μm厚さのクロムめっき層を有し、ロール表面の平均表面粗さRaが、0.3〜1.0μmで、凹凸の基準長さにおける平均間隔Smは、30μm〜150μmである鋼製の転写ロールを用いて、アルミニウム板を圧延して、アルミニウム板表面に凹凸を形成する。
本発明のアルミニウム板表面に凹凸を形成する方法に用いる転写ロールは、表面に3〜15μm厚さのクロムめっき層を有し、ロール表面の平均表面粗さRaが、0.3〜1.0μmで、凹凸の基準長さにおける平均間隔Smは、30μm〜150μmである。
ロール表面の平均表面粗さRaは、0.5μm以上が好ましく、0.6μm以上がより好ましい。また、0.9μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。この理由は、平版印刷版を製造する際にシャイニーと感度とを両立できる優れた凹凸を有する平版印刷版用支持体を製造するうえで好ましい範囲だからである。
Smは、35μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また、145μm以下であるのが好ましく、100μm以下がより好ましい。この理由は、Smが大きいと表面積が小さくなり充分な耐刷性が得られないからである。
このような転写ロールの製造方法は限定されないが、好ましくは以下の製造方法が例示できる。
[1]転写ロールの材質と前処理
ロールは鋼製、特に鍛鋼製のものが使用される。本発明に用いるロール材質は、特にこだわるものではなく普通鋼、一般的に圧延用ロールとして用いられる工具鋼(SKD)、ハイス鋼(SKH)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ)、炭素とクロムとモリブデンとバナジウムの合金元素を含む鍛造鋼など、いずれでも良い。ロール寿命を延長するためにクロム10〜20質量%程度含有させた高クロム合金鋳鉄を用いてもよい。
(1)機械的にロール表面に凹凸を形成する工程
1)バフ研磨法
円盤状の布や皮等、外側面に研磨材を接着剤で固定するか、麻等の繊維を布に織り込んだものを高速で回転させ、これに鋼製のロール表面を当てて研磨する方法である。バフは使用する材料によって、ポリッシングホイール(エメリーバフまたは鉄バフとも言う)やばらバフ、サイザルバフ等と呼ばれる。
2)ブラスト加工
研掃材(研磨材)を鋼製のロールの表面にたたきつけて研磨する方法であり、使用する研掃材の種類や、研掃材をたたきつける方法から種々の名前が付けられている。
遠心投射式(ブラスト)、エアー加速式(ブラスト)、水噴射式(ブラスト)等は方法による分類で、サンドブラスト、グリッドブラスト等は研掃材からの分類である。
アルミナ粒子の平均粒径は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜100μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのが更に好ましい。上記範囲であると、転写ロールとして十分な大きさの表面粗さが得られるため、この転写ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面粗さが十分に大きくなる。また、ピット数も十分に多くすることができる。
ロール表面は電解液中でロールを陽極として硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸水溶液中で電解処理して粗面化するのが好ましい。この電解液中には粗面化しようとするロールに含まれる金属イオンが含まれていることが好ましい。必要な場合は、ロールに含まれる金属イオンを金属塩の形で添加することが好ましい。
電源波形は、交流または直流を用いることができるが、直流を用いることが特に好ましい。
交流を用いるときは、正弦波、矩形波、台形波、三角波を用いることができ、その周波数は0.1〜120Hzから選択できる。また、陽極反応をおこなう電気量の総和QFと陰極反応をおこなう電気量の総和QRの比 QR/QFは0.1〜1の範囲から選択できる。
直流電流を用いるときは、平滑直流、三相全波整流した直流、単相全波整流した直流などを用いることができるが、そのリップル率は5%以下の直流を用いることが特に好ましい。
同じRaを得るための電気量は、ロール材質、ロールの熱処理条件、用いる電解液種類、電解条件によって異なるため、これらの諸条件を考慮して調整する必要がある。
また、液温が60℃より高いと水の蒸発が多くなりすぎ、濃度管理、液量管理を頻繁におこなわなくてはならないため好ましくない。
硫酸濃度は、100〜500g/Lが好ましく、200〜400g/Lが特に好ましい。100g/Lよりも低いと均一な粗面化をおこなうことが難しくなり、500g/Lよりも高いと液の腐食性が高くなるために化学的な溶解量が増えて、表面形状のコントロールが難しくなる。
硫酸を主体とする水溶液中には、ロールから溶出する金属を予め溶解しておくことが、粗面化形状を再現よく得る上で好ましい。とくに鉄イオンを硫酸鉄として添加し、鉄イオン濃度を0.5〜5g/Lとしておくことが好ましい。
ロールの対極となる電極表面には溶出した鉄分を始めとする物質の水酸化物が生成しやすく、この水酸化物が生成すると電解電圧が高くなるため、硫酸を主体とする水溶液中には硫酸ナトリウムを10〜100g/L添加することがとくに好ましい。
硝酸濃度は50〜200g/Lが好ましく、80〜150g/Lが特に好ましい。50g/Lよりも低いと均一な粗面化をおこなうことが難しくなり、200g/Lよりも高いと液の腐食性が高くなるために化学的な溶解量が増えて、表面形状のコントロールが難しくなる。
硝酸を主体とする水溶液中には、ロールから溶出する金属を予め溶解しておくことが、粗面化形状を再現よく得る上で好ましい。とくに鉄イオンを硝酸鉄として添加し、鉄イオン濃度を0.5〜5g/Lとしておくことが好ましい。
ロールの対極となる電極表面には溶出した鉄分を始めとする物質の水酸化物が生成しやすく、この水酸化物が生成すると電解電圧が高くなるため、硝酸を主体とする水溶液中には硝酸ナトリウムを10〜100g/L添加することがとくに好ましい。
塩酸濃度は1〜150g/Lが好ましく、30〜80g/Lが特に好ましい。1g/Lよりも低いと均一な粗面化をおこなうことが難しくなり、100g/Lよりも高いと液の腐食性が高くなるために化学的な溶解量が増えて、表面形状のコントロールが難しくなる。
塩酸を主体とする水溶液中には、ロールから溶出する金属を予め溶解しておくことが、粗面化形状を再現よく得る上で好ましい。塩酸を主体とする電解液を建浴する上では、塩化第二鉄を用いてFe3+イオンが10〜150g/Lとなるように建浴することが特に好ましい。
ロールの対極となる電極表面には溶出した鉄分を始めとする物質の水酸化物が生成しやすく、この水酸化物が生成すると電解電圧が高くなるため、塩酸を主体とする水溶液中には塩化ナトリウムを10〜100g/L添加することがとくに好ましい。
リン酸濃度は、1〜500g/Lが好ましく、30〜400g/Lが特に好ましい。
1g/Lよりも低いと均一な粗面化をおこなうことが難しくなり、500g/Lよりも高いと液の腐食性が高くなるために化学的な溶解量が増えて、表面形状のコントロールが難しくなる。
リン酸は他の酸と混合して用いてもよく、リン酸、硫酸およびクロム酸の混合物、リン酸、硫酸および硝酸の混合物が例示できる。
リン酸を主体とする水溶液中には、ロールから溶出する金属を予め溶解しておくことが、粗面化形状を再現よく得る上で好ましい。とくに鉄イオンをリン酸鉄として添加し、鉄イオン濃度を0.5〜150g/Lとしておくことが好ましい。
ロールの対極となる電極表面には溶出した鉄分を始めとする物質の水酸化物が生成しやすく、この水酸化物が生成すると電解電圧が高くなるため、硫酸を主体とする水溶液中にはリン酸ナトリウムを10〜100g/L添加することがとくに好ましい。
クロム酸濃度は150〜400g/Lが好ましく、200〜350g/Lが特に好ましい。150g/Lよりも低いと均一な粗面化をおこなうことが難しくなり、400g/Lよりも高いと液の腐食性が高くなるために化学的な溶解量が増えて、表面形状のコントロールが難しくなる。
クロム酸を主体とする水溶液中には硫酸1〜5g/L、好ましくは2〜4g/Lが入っていることが更に好ましい。
クロム酸を主体とする水溶液中には、ロールから溶出する金属を予め溶解しておくことが、粗面化形状を再現よく得る上で好ましく、鉄が10g/L以下、とくに0.01〜5g/Lであることが好ましい。
上記の硝酸、塩酸、硫酸、リン酸およびクロム酸は、それぞれ単独で用いてもよいし2以上の酸を混合して用いてもよい。
Raが0.5μm未満では充分な凹凸をアルミニウム板に転写することができず、このアルミニウム板を用いて平版印刷版用アルミニウム支持体を製造したときはシャイニーが劣る平版印刷版となってしまう。Raが2.0μmを超えるロール表面を電解処理で作ったときは凸部の高さが揃わないため、このアルミニウム板を用いて平版印刷版用アルミニウム支持体を製造したときは感度が劣る平版印刷版となってしまう。Smが10μm未満のローラでは圧延後のアルミニウム板に充分なRaを得ることが難しく、Smが200μmを超えると、平版印刷板用アルミニウム支持体を製造したときに充分な印刷枚数が得られない。
電解処理後のロール表面のRyは5〜25μm(とくに7〜15μm)であることが好ましく、Δaは5〜25度(とくに8〜20度)であることが好ましい。
クロムめっき浴としては無水クロム酸(3酸化クロム)を用い、これに少量の硫酸、ふっ化物、珪ふっか物などの触媒を添加した浴が用いられ、陽極には不溶性陽極として鉛合金が例示される。めっき液中には電解反応でめっき液中に生成する3価のクロム酸が含まれ、3価のクロム酸には最適値が存在し、1〜7g/Lであることが好ましい。3価のクロムは多すぎても少なすぎても電流効率が減少する。3価のクロムはめっき電解反応でも生成するが、3価のクロムを生成させるために、ブドウ糖、酒石酸、炭酸クロム、蓚酸などの還元剤を添加することもおこなわれており、還元剤としては炭酸クロムが特に好ましい。
具体的な浴組成としては、クロム酸濃度は、150〜400g/L、好ましくは200〜350g/L。硫酸濃度は、1〜5g/L、好ましくは2〜4g/L。鉄濃度は7g/L以下、好ましくは0.01〜5g/L、が、例示され、一般的にハードクロムめっき浴として用いる無水クロム酸と硫酸からなるサージェント浴と呼ばれるものを用いることが最も好ましい。
耐摩耗性からロール表面の硬度はHvで700〜1000が好ましい。また、ハードクロムめっき後の硬度は、Hvで800〜1200であることが好ましい。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその圧延工程等において、本発明の転写ロールを用いてプレス圧延、転写等により凹凸を形成させる。
中でも、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延とともに、凹凸面をアルミニウム板に圧接させて凹凸形状を転写し、アルミニウム板の表面に凹凸パターンを形成させる方法が好ましい。最後の冷間圧延と共にアルミニウム表面に凹凸をつけ、工程を簡単化することにより、大きなコストダウンを可能にできる。このような方法として、具体的には、特開平6−262203号公報に記載されている方法を用いることができる。
<アルミニウム板>
本発明において平版印刷版用支持体の基板として用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属、即ち、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。 純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いることもできる。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。0.5℃/秒未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱化処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が120MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
また、アルミニウム板は、引張強度が160±15N/mm2 、0.2%耐力が140±15MPa、JIS Z2241およびZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのがより好ましい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
凹凸を転写されたアルミニウム板は、その後、化学的エッチング処理および電気化学的粗面化処理され、平版印刷版用アルミニウム支持体が製造され、感光層等の記録層を塗布されて平版印刷版原版が製造される。機械的粗面化、化学的粗面化、電気化学的粗面化処理、陽極酸化処理、親水化処理、封孔処理を行ってもよい。
1)表面処理実施態様1
アルミニウム板を順に、
(1)化学的にエッチング処理し
(2)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(3)化学的にエッチング処理し
(4)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(5)化学的にエッチング処理し
(6)陽極酸化処理する方法。
アルミニウム板を順に、
(1)化学的にエッチング処理し
(2)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(3)化学的にエッチング処理し
(4)陽極酸化処理する方法。
アルミニウム板を順に、
(1)化学的にエッチング処理し
(2)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(3)化学的にエッチング処理し
(4)陽極酸化処理する方法。
アルミニウム板を順に、
(1)化学的にエッチング処理し
(2)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(3)化学的にエッチング処理し
(4)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(5)化学的にエッチング処理し
(6)陽極酸化処理する方法。
アルミニウム板を順に、
(1)化学的にエッチング処理し
(2)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(3)化学的にエッチング処理し
(4)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し
(5)化学的にエッチング処理し
(6)陽極酸化処理する方法。
化学的なエッチング処理の後には酸性水溶液中でデスマット処理することが好ましい。
本発明の製造方法では、上述の表面に凹凸パターンを有するアルミニウム板に、以下で説明する回転するブラシと研磨材とを用いた機械的粗面化処理を行わなくても、行ってもよい。
ブラシと研磨材とを用いた機械的粗面化処理を行うと、転写による凹凸パターンで表面積が少ない場合でも後のブラシグレイン処理で表面積を大きくとることができ、適切な保水性とすることができる。一方、従来ブラシと研磨材とでのみ行っていた場合に、とがった凹凸が形成されて、残膜が残り易く、エッジのところに汚れが残り易いという問題点も解決することができる。また、後のアルカリエッチング量を少なくできコスト的にも有利である。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨材を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ナイロンブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上がより好ましく、4本以上が特に好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の波長成分を調整できる。
研磨材のメジアン径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、2〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。研磨材のメジアン径を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、上述した表面に凹凸パターンが形成されたアルミニウム板に、化学的エッチング処理および電気化学的粗面化処理(本発明において、両者を合わせて化学的表面処理という。)を施して平版印刷版用支持体を得る。
粗面化処理は、粗面化処理実施態様1〜5の処理を行うのが好ましく、例えば、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第一)、酸性水溶液中でのデスマット処理(第一)、硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第二)、酸性水溶液中でのデスマット処理(第二)、塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第三)および酸性水溶液中でのデスマット処理(第三)、陽極酸化処理をこの順に施すのが例示できる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、上記以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
アルカリエッチング処理は、上述したアルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
第一アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、8g/m2以下であるのがより好ましく、5g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量の下限が上記範囲にあると、第一電解処理において均一なピットを生成でき、更に処理ムラの発生を防止できる。エッチング量の上限が上記範囲にあると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第一アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
即ち、カセイソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加する。そして、カセイソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加するカセイソーダとしては、工業用の40〜60質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
装置100においては、給水タンク104に給水筒106から水102が供給され、水102が給水タンク104からオーバーフローする際に、整流部108により整流され、自由落下カーテン状の液膜がアルミニウム板1に供給される。装置100を用いる場合、液量は10〜100L/minであるのが好ましい。また、装置100とアルミニウム1との間の水102が自由落下カーテン状の液膜として存在する距離Lは、20〜50mmであるのが好ましい。また、アルミニウム板の角度αは、水平方向に対して30〜80°であるのが好ましい。
自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する具体的な装置としては、例えば、特開2003−96584号公報に記載されている装置が好適に挙げられる。
第一アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第一デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム板を酸性溶液に接触させることにより行う。
なお、第一アルカリエッチング処理の後に行われる第一デスマット処理においては、第一電解処理として引き続き硝酸電解が行われる場合には、硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いるのが好ましい。
中でも、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
なお、第一デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を行わず、アルミニウム板の表面が乾かないように、必要に応じて適宜デスマット処理液をスプレーしながら、硝酸電解工程までアルミニウム板をハンドリングするのが好ましい。
第一電解処理は、最初に行われる硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理である。
粗面化処理実施態様1,4,5で示すように第一電解処理、第二電解処理を行うと、均一性の高い凹凸構造を重畳した砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させることができ、耐汚れ性および耐刷性を優れたものにすることができる。
なお、第一電解処理後のアルミニウム板表面の平均粗さは0.45〜0.85μmであるのが好ましい。
粗面化処理実施態様2、3においては硝酸または塩酸を用いた電解粗面化がそれぞれ行われる。粗面化処理実施態様4では塩酸電解の後に硝酸電解が行われ、粗面化処理実施態様5では塩酸電解が2回行われる。以下では主として粗面化処理実施態様1について説明するが、これ以外の実施態様では、それぞれの条件をそれぞれの実施態様の特徴に応じて変えることができる。
硝酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理(硝酸電解)により、好適な凹凸構造をアルミニウム板の表面に形成させることができる。本発明において、アルミニウム板がCuを比較的多量に含有している場合には、硝酸電解において、比較的大きく、かつ、均一な凹部が形成される。その結果、本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、耐刷性が優れたものになる。
具体的には、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、150C/dm2以上であるのが好ましく、170C/dm2以上であるのがより好ましく、また、600C/dm2以下であるのが好ましく、500C/dm2以下であるのがより好ましい。この際の電流密度は、交流を用いる場合には電流のピーク値で20〜100A/dm2であるのが好ましく、直流を用いる場合には20〜100A/dm2であるのが好ましい。
プレ電解は、硝酸電解時のピット形成の起点を形成させる工程である。アルミニウム板の材質の影響を受けにくく、非常に腐食性の高い塩酸を用いてわずかに電解を行うことにより、表面に均一に起点となるピットを形成させることができる。
プレ電解において、塩酸濃度は1〜15g/Lであるのが好ましく、また、陽極時の電気量は30〜70C/m2であるのが好ましい。
プレ電解の後は、スマット除去のためにアルカリエッチングを行うのが好ましい。アルカリエッチングにおけるアルミニウム溶解量は、0.2〜0.6g/m2であるのが好ましい。
塩酸を含有する水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜30g/L、好ましくは2〜10g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、上記した銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を含有する水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
更に、電気量を増やしていくと平均開口径0.01〜0.4μmのピットを表面に有する平均開口径1〜15μmのピットが生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2 以上であるのがより好ましく、さらには100C/dm2以上であるのが好ましい。また、2000C/dm2以下であるのが好ましく、600C/dm2以下であるのがより好ましい。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
即ち、硝酸濃度または塩酸濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるように硝酸または塩酸と水とを添加する。そして、硝酸または塩酸と水とを添加することによって増加した電解液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加する硝酸としては、工業用の30〜70質量%のものを用いることができる。添加する塩酸としては、工業用の30〜40質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
液組成の測定に用いるために電解液から採取されたサンプルは、電解液とは別の熱交換機を用いて、一定温度(例えば、40±0.5℃)に制御した後に、測定に用いるのが、測定の精度が高くなる点で好ましい。
台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.5〜3msecであるのが好ましい。TPが3msecを超えると、特に硝酸を含有する水溶液を用いると、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
直流を用いた電気化学的粗面化処理は、回分法、半連続法および連続法のいずれでも行うことができるが、連続法で行うのが好ましい。
例えば、図6に示される一つの電解槽を有する装置が挙げられる。図6において、アルミニウム板61は、電解液64で満たされた電解槽65を通過する。電解槽65に交互に配置された陽極62と陰極63との間には、直流電圧が印加されている。電解槽65においては、電解液64が供液ノズル66から供給され、排液管67を通じて排出される。
また、図7に示される陽極62の槽と陰極63の槽とが別個の電解槽である装置も挙げられる。図7において、アルミニウム板61は、電解液64で満たされた複数の電解槽65を通過する。各電解槽65には、陽極62または陰極63が、交互になるように配置されている。交互に配置された陽極62と陰極63との間には、直流電圧が印加されている。各電解槽65においては、電解液64が供液管68から供給され、排液管67を通じて排出される。
陽極としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ等のバルブ金属に白金族系の金属をめっきし、またはクラッドしたもの;バルブ金属に白金族系の金属の酸化物を塗布し、または焼結させたもの;アルミニウム;ステンレスが挙げられる。中でも、バルブ金属に白金をクラッドしたものが好ましい。電極の内部に水を通して水冷化するなどの方法により、陽極の寿命を更に長くすることができる。
陰極としては、例えば、ブールベイダイヤグラムから、電極電位を負としたときに溶解しない金属等を選択して用いることができる。中でも、カーボンが好ましい。
また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。
水洗処理は、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
第一電解処理と第二電解処理との間に行われる第二アルカリエッチング処理は、第一電解処理で生成したスマットを溶解させること、および、第一電解処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。これにより、第一電解処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキを該エッジ部分にひっかかりにくくするため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第二アルカリエッチング処理は、基本的に第一アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。
第二アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第二デスマット処理)を行うのが好ましい。第二デスマット処理は、第一デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
第二デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を0.1〜5g/Lとなるように調整した液を用いることができる。また、後述する陽極酸化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いることもできる。
第二デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
第二デスマット処理においては、酸水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
例えば粗面化処理実施態様1、5では、第二電解処理は、塩酸を含有する水溶液中での交流または直流を用いた電気化学的粗面化処理である。本発明においては、上述した第一電解処理と、この第二電解処理とを組み合わせることにより、複雑な凹凸構造をアルミニウム板の表面に形成させることができ、ひいては、耐刷性を優れたものにすることができる。また、第二電解処理は、第二アルカリエッチングで滑らかにしたアルミニウム表面に平均直径0.01〜0.4μmの凹部を生成させる。それによって、耐刷性を高めることができる。
第二塩酸電解における塩酸を含有する水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量の総和は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜200C/dm2の範囲から選択でき、10〜100C/dm2が好ましく、50〜80C/dm2が特に好ましい。
第二電解処理の後に行われる第三アルカリエッチング処理は、第二電解処理で生成したスマットを溶解させること、および、第二電解処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。第三アルカリエッチング処理は、基本的に第一アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、3g/L以上であるのがより好ましく、また、50g/L以下であるのが好ましく、8g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第三アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
第三アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第三デスマット処理)を行うのが好ましい。第三デスマット処理は、基本的に第一デスマット処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第三デスマット処理においては、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液(例えば、硫酸)と同じ種類の液を用いるのが、第三デスマット処理と陽極酸化処理との間の水洗工程を省略することができる点で好ましい。
第三デスマット処理においては、5〜400g/Lの酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を1〜5g/Lとなるように調整した液が好ましい。
第三デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
第三デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
具体的には、直流電源の電流配分を、下流側の直流電源の電流が上流側の直流電源の電流以上にするのが好ましい。このような電流配分とすることにより、いわゆる焼けが生じにくくなり、その結果、高速での陽極酸化処理が可能となる。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。
アルミニウム板416と陰極430の間隔は50〜200mmであるのが好ましい。陰極430としてはアルミニウムが用いられる。陰極430としては、アノード反応により発生する水素ガスが系から抜けやすくなるようにするために、広い面積を有する電極でなく、アルミニウム板416の進行方向に複数個に分割した電極であるのが好ましい。
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。陽極酸化処理の後に封孔処理をおこなうことで、更に現像性(感度)の良い平版印刷版用原板とすることができる。
封孔率=100×(未封孔の表面積−封孔後の表面積)÷(未封孔の表面積)
上記表面積は、簡易BET方式であるQUANTASORB(カンタソーブ、湯浅アイオニクス(株)製)を使って測定した値である。
陽極酸化処理したアルミニウム板は、その後、封孔処理、親水化処理されることでさらに好ましい平版印刷版用アルミニウム支持体となる。
前記フッ化ジルコン酸塩の水溶液には、リン酸二水素ナトリウムを添加することがさらに好ましい。そのときの好ましい濃度は0.01〜3質量%であり、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。
前記封孔処理の好ましい処理時間(水溶液中への浸漬時間)は、1〜20秒が好ましく、5〜15秒がより好ましい。
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
上述したようにして平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
本発明においては、上述した表面処理に用いられる各種の処理液の組成を、特開2001−121837号公報に記載されている方法で管理するのが好ましい。あらかじめ、種々の濃度の多数の処理液サンプルを調製し、それぞれ二つの液温における超音波の伝搬速度を測定し、マトリクス状のデータテーブルを作成しておき、処理中に、液温および超音波の伝搬速度をリアルタイムに測定し、それに基づいて濃度の制御を行うのが好ましい。特に、デスマット処理において、硫酸濃度250g/L以上の電解液を用いる場合においては、上述する方法により、濃度の制御を行うのが好ましい。
なお、電解粗面化処理および陽極酸化処理に用いられる各電解液は、Cu濃度が100ppm以下であるのが好ましい。Cu濃度が高すぎると、ラインを停止するとアルミニウム板上にCuが析出し、ラインを再度稼動した際に析出したCuがパスロールに転写されて、処理ムラの原因となる場合がある。
封孔処理の後には公知の親水化処理をおこなうことが、更に好ましい。
本発明により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
(実施例1)
表面をバフ研磨したSKD11の成分のロールを焼き入れし、Hsが85としたものを脱脂、水洗し、その後以下の手順で粗面化を行った。
(1)硫酸水溶液中での粗面化
硫酸300g/L(硫酸鉄として添加した鉄イオン0.5g/L含む)50℃の液中で、リップル率3%の直流を加えてロールを陽極とし、電流密度80A/dm2、電気量800C/dm2で粗面化を行った。
対極はカーボンを用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状にカーボン電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
電解終了後、硫酸電解液中に40秒間浸せきしてデスマット処理を行った。その後、水洗処理、乾燥処理を行った。
このロール表面の平均表面粗さRaは、0.6μmであった。
(2)硬質クロムめっき処理
クロム酸300g/L(3価のクロム1g/L含む)、硫酸3g/L、鉄2g/Lを含む液温50℃の電解液中でめっき処理を行った。
表面を活性化し、めっきが均一に生成しやすくするための逆電解処理を行った。連続直流電流を加え、ロールを陽極として電流密度30A/dm2でロールを陽極にした電解処理を10秒間行った。電流波形は、3相全波整流したリップル率が1%の直流を用いた。対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
(めっき処理)
前記電解液中で、電源の極性を逆にしてめっき処理を行った。
連続直流電流を加え、ロールを陽極として電流密度60A/dm2でロールを陰極にして、めっき厚が7μmになるまでめっき処理を行った。電流波形は、3相全波整流したリップル率が1%の直流を用いた。対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
めっき後のロール表面の平均表面粗さRaは0.5μmであった。
表面をバフ研磨したSKD11の成分のロールを焼き入れし、Hsが85としたものを脱脂、水洗し、その後以下の手順で粗面化を行った。
(1)硝酸水溶液中での粗面化
硝酸100g/Lを含む水溶液中に、硝酸ナトリウム100g/Lを添加した(硝酸鉄として添加した鉄イオン0.1g/L含む)50℃の液中で、リップル率3%の直流を加えてロールを陽極とし、電流密度80A/dm2、電気量6000C/dm2で粗面化を行った。
対極はカーボンを用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状にカーボン電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
電解終了後、水洗、乾燥し、その後、硫酸電解液中に40秒間浸せきしてデスマット処理を行った。
その後、水洗処理、乾燥処理を行った。
このロール表面の平均表面粗さRaは0.9μmであった。
(2)硬質クロムめっき処理
クロム酸300g/L(3価のクロム3g/L含む)、硫酸2g/L、鉄1g/Lを含む液温50℃の電解液を用い、めっき厚さを5μmとした以外は、実施例1の逆電解処理、めっき処理と同様の工程を行った。
めっき後のロール表面の平均表面粗さRaは0.8μmであった。
表面をバフ研磨したSKD11の成分のロールを焼き入れし、Hsが85としたものを脱脂、水洗し、その後以下の手順で粗面化を行った。
(1)塩酸水溶液中での粗面化
塩化鉄80g/Lの50℃の液中で、リップル率3%の直流を加えてロールを陽極とし、電流密度50A/dm2、電気量1000C/dm2で粗面化を行った。
対極はカーボンを用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状にカーボン電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
電解終了後、水洗、乾燥し、その後、硫酸電解液中に40秒間浸せきしてデスマット処理を行った。その後、水洗処理、乾燥処理を行った。
このロール表面の平均表面粗さRaは 0.7μmであった。
(2)硬質クロムめっき処理
クロム酸250g/L(3価のクロム 5g/L含む)、硫酸2.5g/L、鉄0.5g/Lを含む液温50℃の電解液を用い、めっき厚さを10μmとした以外は、実施例1の逆電解処理、めっき処理と同様の工程を行った。
めっき後のロール表面の平均表面粗さRaは0.6μmであった。
表面をバフ研磨したSKD11の成分のロールを焼き入れし、Hsが85としたものを脱脂、水洗し、その後以下の手順で粗面化を行った。
(1)クロム酸水溶液中での粗面化
クロム酸280g/L、硫酸2g/L、鉄1g/Lの50℃の液中で、連続直流電流を加え、ロールを陽極として電流密度30A/dm2でロールを陽極にした電解処理をおこなった。電流波形は、3相全波整流したリップル率1%の直流を用いた。電気量は8000C/dm2であった。対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理をおこなった。
電解終了後、水洗、乾燥し、その後、硫酸電解液中に40秒間浸せきしてデスマット処理を行った。その後、水洗処理、乾燥処理を行った。
このロール表面の平均表面粗さRaは0.7μmであった。
(2)硬質クロムめっき処理
クロム酸300g/L(3価のクロム 5g/L含む)、硫酸2g/L、鉄1g/Lを含む液温50℃の電解液中で、連続直流電流を加え、ロールを陰極として電流密度60A/dm2でめっき処理をおこなった。めっきに用いる電流波形は、3相全波整流したリップル率1%の直流を用いた。めっき厚は1μm(比較例4−1)、6μm(実施例4−2)、8μm(実施例4−3)、20μm(比較例4−4)となるようにめっき処理時間を設定した。 対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分にはめっき処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理をおこなった。めっき後のロール表面の平均表面粗さRaは0.8(比較例4−1)、0.7(実施例4−2)、0.6(実施例4−3)、0.4(比較例4−4)μmであった。
実施例1〜3で製造したロールと比較例4−1,4−4および実施例4−2,4−3で製造したロールを用いて表1に示す組成のアルミニウム板を圧延(転写)処理し、アルミニウム板表面に凹凸を付与した。 圧下率は2%とした。
なお、実施例・比較例の測定は、触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている算術平均粗さRaを5回測定し、その平均値を平均粗さRaとした。凹凸の平均間隔(基準長さ中での間隔の平均値)Smも同様にして測定した。
<測定条件>
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm。
<表面処理>
<1>アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板に、NaOH370g/L、アルミニウムイオン100g/Lを含有する水溶液、60℃をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は3g/m2 であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りを行った。この水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理した。
次に、デスマット処理を行った
次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて5秒間デスマット処理を行った。その後、ニップローラで液切りをおこなわず、次の工程まではアルミニウム板に硝酸が付着している状態でハンドリングした。デスマット処理槽を通過後、硝酸が付着している状態でのハンドリング時間は25秒であった。
液温35℃、硝酸濃度10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。
電気化学的な粗面化処理をおこなう直前に、アルミニウム板に電気化学的な粗面化処理に用いる硝酸電解液と同じ組成と温度の電解液を吹き付けた。
交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交流電流の周波数は60Hz、電流のゼロからピークに達するまでの時間Tpは1.2msecであった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時で60A/dm2であった。アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で215 C/dm2であった。
電解処理槽は図3に示すラジアル型のものを2槽用いた。アルミニウム板と電解液の相対速度は、電解槽内の平均で1.5m/sec(1〜2m/sec)であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理した。更にニップローラで液切りを行った。
アルミニウム板に、NaOH 370g/L、アルミニウムイオン 100g/L含有する水溶液、64℃をスプレー管より吹き付けて、7秒間処理し、アルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は3g/m2 であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りを行った。この水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理した。更にニップローラで液切りを行った。
次に、デスマット処理を行った。硫酸300g/L水溶液中にアルミニウムイオン 2g/L溶解して用い、液温35℃で10秒間デスマット処理を行った。
その後、ニップローラで液切りし、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理した。更にニップローラで液切りを行った。
液温35℃、塩酸濃度5g/Lの水溶液に、塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lに調整した電解液を用いた。
台形波交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交流電流の周波数は60Hz、交流のゼロからピークに達するまでの時間Tpは0.8であった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時50A/dm2であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で65C/dm2であった。
電解処理槽は図3に示すラジアル型のものを1槽用いた。
アルミニウム板と電解液の相対速度は、電解槽内の平均で1.5m/secであった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りを行った。
アルミニウム板に、NaOH50g/L、アルミニウムイオン5g/L含有する水溶液、35℃をスプレー管より吹き付けて、アルミニウム板を0.2g/m2 溶解するエッチング処理を行った。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りを行った。
この水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理した。更にニップローラで液切りを行った。
次に、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、次工程の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温35℃で5秒間デスマット処理を行った。
その後、ニップローラで液切りした。液切り後、陽極酸化するまでの間では水洗処理はおこなわなかった。
次に、この板を、次の条件で陽極酸化処理した。
硫酸170g/Lに硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lとしたを電解液、33℃を用いて、電解処理槽内のアルミニウム板に加わる電流密度が、アルミニウム板がアノード反応する間の平均電流密度で15A/dm2となるような条件で2.4g/m2の直流陽極酸化被膜を設けた。
珪酸ソーダ1.0質量%含む水溶液20℃に10秒間浸せきする親水化処理を行った。このアルミニウム板の表面のSi量を蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム表面のSi量は3.5mg/m2 であった。その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りを行った。
その後、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥した。
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を塗布・乾燥し、平版印刷版原版を作製して印刷した。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
得られた平版印刷版は、感度、印刷枚数(耐刷)、汚れにくさで優れた良好な印刷版であった。
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、質量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.90g
・メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸共重合体(モル比35/35/30) 0.10g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−780F、大日本インキ化学工業社製、固形分30質量%) 0.0045g(固形分換算)
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−781F、大日本インキ化学工業社製、固形分100質量%) 0.035g
・メチルエチルケトン 12g
別に、実施例5−1、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−5、実施例5−6に記載したと同様のアルミニウム板に同様の処理を行い、ただし<9>の陽極酸化処理の後に、フッ化ジルコン酸ナトリウム0.5質量%、液温70℃の液中に10秒間浸せきする封孔処理をおこなった。ニップロールで液切りし、その後、水洗処理をおこない、更にニップロールで液切りした。
その後、実施例5−1、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−5、実施例5−6に記載の<10>の親水化処理をおこなった。その後、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥した。
このアルミニウム板に実施例5と同様の感光層を塗布・乾燥し、印刷版原版を作成して印刷した。実施例5と同様のロール寿命、耐刷(印刷枚数)、汚れにくさを示す良好な印刷性能を示す印刷版であったが、現像性(感度)が実施例5で作成した平版印刷版用原板よりも優れていた。
また、別に、実施例5ー1、実施例5ー2、実施例5−3、実施例5−5、実施例5−6に記載したと同様のアルミニウム板に同様の処理を行い、ただし<9>の陽極酸化処理の後に、フッ化ジルコン酸ナトリウム0.2質量%、リン酸2水素ナトリウム0.2質量%、液温75℃の液中に10秒間浸せきする封孔処理をおこなった。ニップロールで液切りし、その後、水洗処理をおこない、更にニップロールで液切りした。
その後、実施例5−1、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−5、実施例5−6に記載の<10>の親水化処理をおこなった。その後、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥した。
このアルミニウム板に実施例5と同様の感光層を塗布・乾燥し、印刷版原版を作成して印刷した。実施例5と同様のロール寿命、耐刷(印刷枚数)、汚れにくさを示す良好な印刷性能を示す印刷版であったが、現像性(感度)が実施例5で作成した平版印刷版用原板よりも優れていた。
表面をバフ研磨したSKD11の成分のロールを焼き入れし、Hsが85としたものを脱脂、水洗し、その後以下の手順で粗面化をおこなった。
(1)エアーブラスト法による粗面化
粒径#100メッシュのアルミナをグリッド材に用いたエアーブラスト法により、エアー圧力1kg/cm2(実施例8−1)、2kg/cm2(実施例8−2)、3kg/cm2(実施例8−3)で、吹き付けてロール表面の粗面化をおこなった。その後、#2000のエメリーペーパーで不均一な凸部を削り取る加工をおこなった。このロール表面の平均表面粗さは0.5μm(実施例8−1)、0.8μm(実施例8−2)、0.9μm(実施例8−3)であった。
(2)硬質クロムめっき処理
クロム酸300g/L(3価のクロム、3g/L含む)硫酸、2g/L、鉄1g/Lを含む液温50℃の電解液中でめっき処理を行った。
(逆電解処理)
表面を活性化し、めっきが均一に生成しやすくするための逆電解処理を行った。連続直流電流を加え、ロールを陽極として電流密度30A/dm2でロールを陽極にした電解処理を10秒間行った。電流波形は、3相全波整流したリップル率が1%の直流を用いた。対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
(めっき処理)
前記電解液中で、電源の極性を逆にしてめっき処理を行った。
連続直流電流を加え、ロールを陽極として電流密度60A/dm2でロールを陰極にして、めっき厚が5μmになるまでめっき処理を行った。電流波形は、3相全波整流したリップル率が1%の直流を用いた。対極は鉛を用いた。ロールは電解液中に縦置きとし、その周囲を囲むように円筒状に鉛電極を配置した。ロールのシャフト部分には電解処理がおこなわれないように塩化ビニル樹脂でマスキング処理を行った。
めっき後のロール表面の平均表面粗さRaは0.5μm(実施例8−1)、0.7μm(実施例8−2)、0.8μm(実施例8−3)であった。
実施例8−1、実施例8−2、実施例8−3で製造したロールを用いて表3に示す組成のアルミニウム板を圧延(転写)処理し、アルミニウム板表面に凹凸を付与した。圧下率は2%とした。
<1>アルカリ水溶液中でのエッチング処理
<2>酸性水溶液中でのデスマット
<3>硝酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理
ただし、アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で250C/dm2であった。
<4>アルカリ水溶液中でのエッチング処理
ただし、後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は4g/m2であった。
<5>酸性水溶液中でのデスマット
<6>塩酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理
<7>アルカリ水溶液中でのエッチング処理
ただし、エッチング処理は、アルミニウム板を0.2g/m2溶解するエッチング処理を行った。
<8>酸性水溶液中でのデスマット処理
<9>陽極酸化処理
<10>親水化処理
得られた平版印刷版は、感度、印刷枚数(耐刷)で優れた良好な印刷版であった。
結果を、ロール寿命の評価と共に表4に示す。
実施例4−3のロール粗面化の電気量を400 C/dm2として、クロムめっき後のRaが0.2μmのロールを制作し、アルミニウム板に凹凸を形成した以外は実施例5−6と同様に印刷版を作成して印刷した。印刷枚数が原版No.6(実施例5−6)よりも劣っていた。
実施例4−3のロール粗面化の電気量を50000 C/dm2として、クロムめっき後のRaが2μmのロールを制作し、アルミニウム板に凹凸を形成した以外は実施例5−6と同様に印刷版を作成して印刷した。印刷枚数が原版No.6(実施例5−6)よりも劣っていた。
平版印刷版の耐刷性および耐汚れ性を下記の方法で評価し、結果を表2および4に示す。
(1)耐刷性(印刷枚数)
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(質量平均分子量1,000) 0.5 質量%
・水 96.15質量%
◎:印刷枚数が、4万枚以上
○:印刷枚数が、3万枚以上、4万枚未満
△:印刷枚数が、2万枚以上、3万枚未満
×:印刷枚数が、2万枚未満
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nm、ビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザを装備したCREO社製TrendSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2で像様露光した。感度の評価のためには、版面エネルギー量を45〜180mJ/cm2まで5mJ/cm2おきに変えて露光を行ったサンプルを準備した。
現像処理は、下記組成の現像液Bを満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。版面エネルギー量を変化させたサンプルから、現像処理後画像形成できた最低露光量を感度とした。
◎:エネルギー量(mJ/cm2)、50mJ/cm2未満であり
○:エネルギー量100mJ/cm2未満、50mJ/cm2以上
△:エネルギー量150mJ/cm2未満、100mJ/cm2以上
×:エネルギー量150mJ/cm2以上
上記(1)耐刷性の評価と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
A:ブランケットがほとんど汚れていないもの
B:ブランケットが少し汚れていたもの
B−C:ブランケットが汚れているものの許容できる範囲にあるもの
C:ブランケットが汚れており印刷物が明らかに汚れているもの
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
61 アルミニウム板
62 陽極
63 陰極
64 電解液
65 電解槽
66 供液ノズル
67 排液管
68 供液管
100 自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置
102 水
104 貯水タンク
106 給水筒
108 整流部
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
413 中間槽
414 陽極酸化処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 陽極
422、428 パスローラ
424 ニップローラ
430 陰極
434 直流電源
436、438 給液ノズル
440 しゃへい板
442 排液口
Claims (4)
- 表面に3μm〜15μm厚さのクロムめっき層を有し、ロール表面の平均表面粗さRaが、0.3μm〜1.0μmであり、凹凸の基準長さにおける平均間隔Smが30μm〜150μmである鋼製のロールを用いて、アルミニウム板を圧延して、アルミニウム板表面に凹凸を形成する方法。
- 前記ロールが、クロムめっき前に、機械的または電気化学的にロール表面に凹凸を形成されたロールである請求項1に記載のアルミニウム板表面に凹凸を形成する方法。
- 請求項1または2に記載の方法で得られる表面に凹凸を形成されたアルミニウム板に、化学的エッチング処理、および電気化学的粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体。
- 請求項3に記載の平版印刷版用支持体上に記録層を有する平版印刷版原版。
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