JP2005204662A - 果樹類の盛土式根圏制御栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 土地と吸水防止シート1で縁切りした防水層の上に、単位葉面積当たりの細根の表面積が地植え樹の約3倍以上となる盛土3を形成して果樹類Pを植える。
その盛土の表面は露光状態にして盛土内に細根が絡み合った密集根が形成できるようにする。
そして、予め実験で得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し、その基準給水量に約20%を加えた量を各生育ステージにおける1日の給水量として算出する。
そして、その算出された給水量を、潅水チューブ8で1日の昼間に複数回に分割して潅水による自動給水を行う。
【選択図】 図1
Description
一般に、果樹は苗木を植えつけてから結実までに数年を要し、樹の樹冠面積の広がりとともに縮間伐を実施しつつ、1本の樹を永年にわたり大きく育てていく地植え栽培が行われている。
その地植え栽培では収穫が期待される成園化までに多くの年月を要し、樹の老木化に伴い収量や品質が低下していくことが知られている。
また、地植え栽培では、樹の生育により根が土壌に深く侵入していくが、その土壌内には各種の病原菌や原因物質が存在し、それを原因とする病気の発生が避けられない。
実際に、ぶどう栽培では紋羽病の発生により生産が困難となっている果樹園も多々報告されている。
さらに老木園を改植すると連作障害により新しく植えた苗木の生育が抑制されることも知られている。
その結果、得られる果実は一本当たりでは多くの収穫とはなるが、果樹園の単位面積当たりの収穫では果樹の葉や新梢の成長に栄養が取られ、その結果、果実の方に使われる栄養が少なくなるので結実が不安定になり結実位置によっては品質にバラツキが起こる。
そのような土壌では、果樹の樹勢が旺盛で枝が徒長しやすく、果実に必要な栄養分が徒長枝に取られるため、なしの品種「幸水」では花芽着生の不安定や糖度低下が見られ、また、ぶどうの品種「巨峰」では花振るいの発生により結実が不安定となる。
しかし、その研究されてきた果樹の根域制限栽培法は、いずれもコンテナやポットなどの容器を使用した栽培方法であり、(a)潅水方法が水を一度に多量に与える散水方式であったため果樹に大きなストレスを与え果実肥大が低下することや、(b)樹勢を維持させるのが困難であること(c)、またそれに使用する容器等の設備費用が大きいことなどから現在まで普及するには至っていない。
その潅水の方法として、土壌水分センサーを利用して土壌内の湿り気をその水分センサーで感知して潅水開始点を定め、一度に多量の散水をする方法があるが、この方法では、通常潅水開始点のみを設定するものが多く、潅水が始まると指定した水量を一気に出し与えてしまった後は、しばらくは潅水が途絶えこととなり、この結果、潅水直後の過湿と潅水開始前の乾燥とが繰り返えされ、結果的に果樹に強い水分ストレスを与えてしまうこととなる。
そのため、水分センサーなどの機器を用いて自動的な潅水管理を行っても、水不足の解消や果樹の成長に適合した理想的な潅水が行えず、果実の品質にばらつきが多くなり、均一で高品質な果実を多量に得ることができなかった。
実際に、その方法をぶどうで試験してみたところ、水分不足による葉焼けなどの生理障害が発生し、品質的及び収穫量的な面での生産性が非常に不安定であった。
なお、水を多数回に小分けして与える方法、即ちドリップ栽培方法が野菜の水耕栽培では行われている(特許文献1参照)が、果樹類でのドリップ潅水による栽培は、歴史が浅く、その研究はされているとしても実際の生産現場ではまだ見られない。
その防水層上に単葉位面積当たりの細根の表面積が地植え樹の約3倍以上となる盛土を形成し、その盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし、その盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成する。
そして、予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出する。
さらに、その算出された基準給水量を、1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行うことを特徴とするものである。
その防水層上に単位葉面積当たりの細根の表面積が地植え樹の約3倍以上となる盛土を形成し、その盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし、その盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成する。
そして、予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出する。
さらに、その基準給水量に約30%を限度として加えた量を各生育ステージにおける1日の給水量として算出し、その算出された給水量を、1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行うことを特徴とするものである。
即ち、果樹の葉面積に合わせた盛土量に根域を制限して、盛土内に水分や養分を吸収する細根の分化を促進させて密集根を形成し、その果樹の葉面積に必要な水分を、その果樹の生育ステージに合わせて潅水管理を行い、樹種や生長の度合いなど個々の樹体に合わせて必要な時期に必要な水量を、不足状態を来たすことなく与えることが可能となった。
そして樹体自体もコンパクト化させることにより、密集根を形成する多量の細根から効率良く吸収された水分と栄養分がそのコンパクトな樹体全体に行き渡るようになり、均一高品質の果実を得られるようになった。
また、培土はその下の土地からの影響が殆どなくなるので、土壌病害の心配がなくなり果樹の病死や老木化が防止され、植え付け当初から均一で高品質な果実を多量に得られるようになるとともに、果樹園での単位面積当たりの収穫量も増加させることが可能となった。
また、従来の根域制限栽培法で使用されるコンテナやポットなどの容器類に植えるのではなく、不透根シ−トと吸水防止シートなどの防水層上に盛土するものなので、用いる資材は大幅に安価に押さえることができる。
本発明は、図1及び図4に示すように、盛土3を載せる面を、過剰な水が周囲に排水されるように、中央部を盛上げ面にした上に、その土地と縁切りするための吸水防止シート1を張り、さらにその上に耐久性の高い不透根シート2を重ね合わせる。
その吸水防止シート1は厚さ0.075mmの合成樹脂製シートを用いると腐らず長持ちするので好ましい。また不透根シート2は不織布を用いると、水を通し且つ細根は通さないので根圏の制御に適している。
この不透根シート2は、吸水防止シート1を成長した根が突き破るのと保護し、また盛土内の底面に溜まった水を毛細管現象で速やかに外に排出させる機能を持つ。
このような土地と縁切りをする方法は、根をその下の地面と分離して果樹を独立させて管理できるようにするものである。
この管理方法では、地植えのように自由に根を広げさせるものではなく、根域を狭く制限することが主目的であるが、このことにより水分、栄養、病気に関してもその下の土地と分離された独立系として確実に管理が行えるようになる。即ち土壌の上だけではなく、コンクリート面の上でも収穫可能となる栽培法である。
その盛土の作り方は、図2に四角錐台形の型枠11を示す台形の型枠に培土を充填する方法などがある。
盛土面を露光するのは、根は光を避ける性質があり、図7に示すように、盛土3表面の露で盛土表面に向う主根の伸長が抑制されて、盛土3の内部に分岐根16の発生が促される。
その結果、分岐根16からの細根が成長し絡み合った密集根13が形成される。
前記通気性シートとしては、タイベック(ヂュポン社の商品の商標名)を使用でき、当該シートは、0.5〜10μmのポリエチレンの連続性極細繊維に高熱を加えて結合させたシートを用いることができる。このシートは、水滴は通さないが光と水蒸気を通過させ、通気性に優れているので適している。
なお、露地を100%として、シートの日射透過率の実験をした結果、次の表1の如きデータが得られた。
その結果は、図9のグラフ図に示す通りである。
この実験で、温度の平均値を計算すると次の表2の如きである。
また、夏場の梨の木の1樹当たりの1日の吸水量を、盛土をビニールシートで覆った場合と覆わない場合とで比較したら、覆い有りの場合は17.0リットルで、覆いなしの場合は17.9リットルであった。
例えば梨の場合では、気温が高い夏場では培地温度を低く抑えるためにタイベックを用い、春には成長活動の開始するので培地温度を高く保つために透明通気シートを用いると効果的である。
しかし、通気性のない黒ビニールシートで被覆すると、日射透過率が0%なので、盛土3表面に向う主根の伸長が止まらずに外に突き出し、先端が枯れたり、また、内部の細根の呼吸を妨げるので分岐根の発生が阻害される。
例えば、その培土は、透水性が高く養分のコントロールしやすい、赤玉土とバーク堆肥を2対1の量で混合した土を使用すると良い。
なお、図4では一本の果樹の状態を示しているが、図3に示すように、果樹園では幅150cmのビニールシートのロールを広げ、その長い吸水防止シート1を並列に配置し、その上に不透根シート2を重ね、さらにその上に一定間隔で盛土をし、図1に示すように、果樹を定間隔に植える方法が採られる。
従来の地植え栽培では、植え付けた年ではその樹の生長が優先され、植えてから数年の結実成長を待たなければ収穫ができなかった。
しかし、本発明では根域が制限されて潅水が最適に行われるので、当期結実可能にまで挿木や接木により育成した苗木を植えると、水分や養分を吸収する細根の分化が促進されて短期間に多量に細根が発生するともに樹体の生殖成長が促進され、植えた年に通常の収穫が可能になる。
その盛土3の量を決める方法は、樹冠の大きさ、厳密には果樹の葉面積から導き出され、その葉面積から盛土に果樹を植る果樹Pに必要な根量から計算されて、高品質な果実を多量に安定して得るために最適なバランスとなる盛土3の量が算出される。
そこで、高品質な果実を多量に安定して得ようと最適な盛土の量を見出すためにぶどうで行った本発明の実験では、細根の分化が進み、地植え樹の約5倍の根量の増加が見られ、同じ葉面積とした場合、その樹を維持するために根が地植え樹の約4.5倍の表面積を必要とすることがわかった。
また、なし等では単位葉面積当たり細根の表面積は地植え樹の約3倍以上であり、その数値は樹種や盛土の量などにより異なるものであったが、高品質な果実を多量に安定して得るためには、地植え樹の概ね約3倍以上であることがわかり、これから必要とされる盛土3の量が決められる。
本発明では、図1に示すように、制御装置4、液肥混入器5、流量計6、電磁弁7を組み合わせた水量及び施肥量のコントロールが可能な潅水装置を使用する。
盛土培地に均等に潅水を行うために、塩ビ管等の潅水チューブ8に1個当たりの吐出量4リットル/時の調圧弁付きのドリッパーを、1樹当たり2個取り付け、1ドリッパーにつき4本のマイクロチューブ9を取り付け、その先端にアロードリッパー10を取り付ける。
なお、ドリッパーは調圧弁が付いていないと、地面の高低差や潅水チューブ8のたわみの影響を受け、水の吐出量に違いが出てくるので注意する。
潅水の回数は、昼間(この語は本発明では早朝の夜明け前から夕方日没前までの意味で使用する)1日20回に分けて、潅水間隔を30〜40分で、1回当たりの量を少なくし小分けして潅水する。
果樹からの蒸散量は葉面積の量によって増減し、各生育ステージで必要となる潅水量は大きく異なる。
例えば、ぶどうで10アール(a)当たり500本(樹冠面積2平方メートル/本)植栽する方式における収穫期における一樹あたりの総葉面積は、概ね6.4平方メートルである。このため、樹冠面積を変えると葉面積に見合った潅水量が必要になる。
また、着色期での晴天日における日中の1時間当たりの蒸散量は最大で1リットルであるため、その量に20%を加算して、早朝から1日に1.2リットルづつ10回ほどに分けて潅水するのが効率的である。
できるだけ1回当たりの量を少なくし回数を多くして小分けに潅水する方法が理想的ではあるが、それでも1日に20回ほどに分ければ充分である。
なお「潅水」の語義は、広義には広く散らす散水、掛け潅ぐ潅水、土内根元に注ぐ給水などに用いられているが、本は発明では、盛土の上に掛け潅ぐ意味で「潅水」の語を使用する。
ステージ 催芽期 新梢伸長期 開花期 果粒肥大期 着色期
日数 約20日 約25日 約10日 約45日 約60日
灌水量(L/日) 1.5 3 4 10 12
その施肥方法については、早朝第1回目に潅水と同時に施肥を行い、1日の施肥量は1樹当たりの年間施肥量を生育日数で割って決める。
例えば、催芽期から収穫期までを約150日間とすると、年間窒素施用量20gの場合では、1樹当たり1日に0.13g(20g÷150日)を施用する。
別の施肥方法については、肥効調節型肥料を施用する方法を用いることができる。
1日の潅水量は、各生育ステージ別に異なった量であり、流亡による周囲の環境負荷の軽減を考慮して、蒸散量に見合った水を果樹に大きな水分ストレスを与えることなく行う。そのためには毎日の給水量が水不足に陥らないように潅水しなければならない。
その給水量の決め方は、まず予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させ時期を分割した生育ステージを設定する。
そして、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出する。
1日の給水量は、その算出された基準給水量をそのまま実施しても良いが、盛土表面からの蒸散量をも考慮すると、その基準給水量に対して約30%を限度として加えた量を各生育ステージにおける1日の給水量として算出する。
例えば、ぶどうの場合では、その加える量は、基準給水量に対して限度内の約20%にして算出すると、各生育ステージにおける1日の給水量が適量となる。
その決められた1回の潅水量を、1日のうち日の出前から日没前までの昼間の約13時間をその複数回で割った時間毎にドリップ潅水などにより自動給水をする。
例えば、1日の(13時間での)給水量を26回に分割した場合では、決められた1回分の潅水量を30分毎に自動給水する計算になる。
盛土の量は、単位葉面積当たり細根の表面積が地植え樹の約4.5倍となる60Lで、盛土にビニールシートで覆いした場合と、覆いをしない場合とで試験し、晴天日での巨峰品種のぶどうの生育ステージ中の果粒肥大期での1回の蒸散量を測定した。
その蒸散量(単位L:リットル)は、基準給水量の算出の基礎となるデータである。
その試験の結果は、次の通りであった。
1 3.5 4.5 1.0 28.5
2 4.3 4.4 0.1 2.3
3 3.0 3.7 0.7 23.3
4 4.3 5.0 0.7 16.2
5 3.8 4.4 0.6 15.7
6 3.5 4.3 0.8 22.8
7 4.0 4.7 0.7 17.5
8 4.4 5.7 1.3 29.6
9 4.8 5.5 0.7 14.6
10 4.0 4.9 0.9 22.5
11 5.3 5.5 0.2 3.8
12 5.4 5.5 0.1 1.9
13 4.5 4.9 0.4 8.9
14 3.2 3.4 0.2 6.3
標準偏差値はプラス・ナイナス9.5であることから、概ね5.8%から24.8%の範囲であるといえる。
本発明では、この試験の最大比率が29.6%であり、水不足にならないよう標準偏差値の最低範囲より多少多めに、基準給水量に加算する吸水量は30%を限度とすることが適切な範囲であると確認できた。
生育ステージ中の果粒肥大期で、基準給水量の潅水(イ)と、基準給水量に20%加算した潅水(ロ)と、20%加算潅水の1.5倍の潅水(ハ)との比較試験を行った。
盛土の量は60Lで、培土は、赤玉土:バーク堆肥が2:1の混合土を使用した。
潅水方法は、昼間の午前4時から午後17時まで40分間隔に20回に分けたドリップ潅水を行った。
試験に供した要因は下記の通りであった。
A:潅水量 (イ) (ロ) (ハ)
B:着房数 10房/樹 13房/樹 16房/樹
(目標収量) 2.0t/10a 2.6t/10a 3.2t/10a
C:結果枝長 60cm 90cm 130cm
D:芽かき 芽かき有り 芽かき無し 芽かき無し
誘引方法 斜め誘引 斜め誘引 斜め垂直誘引
1 (イ) 10 60 芽かき有り斜め誘引
2 (イ) 10 90 芽かき無し斜め誘引
3 (イ) 10 130 芽かき無し斜め垂直誘引
4 (イ) 13 60 芽かき有り斜め誘引
5 (イ) 13 90 芽かき無し斜め誘引
6 (イ) 13 130 芽かき無し斜め垂直誘引
7 (イ) 16 60 芽かき有り斜め誘引
8 (イ) 16 90 芽かき無し斜め誘引
9 (イ) 16 130 芽かき無し斜め垂直誘引
10 (ロ) 10 60 芽かき有り斜め誘引
11 (ロ) 10 90 芽かき無し斜め誘引
12 (ロ) 10 130 芽かき無し斜め垂直誘引
13 (ロ) 13 60 芽かき有り斜め誘引
14 (ロ) 13 90 芽かき無し斜め誘引
15 (ロ) 13 130 芽かき無し斜め垂直誘引
16 (ロ) 16 60 芽かき有り斜め誘引
17 (ロ) 16 90 芽かき無し斜め誘引
18 (ロ) 16 130 芽かき無し斜め垂直誘引
19 (ハ) 10 60 芽かき有り斜め誘引
20 (ハ) 10 90 芽かき無し斜め誘引
21 (ハ) 10 130 芽かき無し斜め垂直誘引
22 (ハ) 13 60 芽かき有り斜め誘引
23 (ハ) 13 90 芽かき無し斜め誘引
24 (ハ) 13 130 芽かき無し斜め垂直誘引
25 (ハ) 16 60 芽かき有り斜め誘引
26 (ハ) 16 90 芽かき無し斜め誘引
27 (ハ) 16 130 芽かき無し斜め垂直誘引
粒数 粒数 房重 葉面積 収量 換算収量
試験区(粒/房)(粒/房)(g) (m2/樹) (kg/樹)(t/10a)
1 56 40 342 2.86 3.42 1.71
2 60 40 244 5.98 2.44 1.22
3 60 39 217 7.80 2.17 1.08
4 49 38 419 3.83 5.44 2.70
5 41 36 366 3.89 4.76 2.37
6 45 37 441 5.58 5.57 2.77
7 55 37 250 4.77 4.00 2.03
8 45 37 343 3.84 5.48 2.70
9 60 39 292 7.25 4.67 2.30
10 41 35 419 5.29 4.05 2.02
11 41 36 427 6.41 4.27 2.14
12 52 38 465 5.23 4.66 2.33
13 50 38 415 6.43 5.40 2.70
14 37 35 415 3.63 5.39 2.67
15 40 34 442 8.93 5.61 2.81
16 44 36 348 4.02 5.45 2.72
17 49 38 434 6.32 6.95 3.47
18 51 39 459 7.04 7.35 3.68
19 29 28 321 3.90 3.21 1.60
20 19 19 249 4.44 2.41 1.21
21 23 22 264 10.44 2.51 1.25
22 23 22 259 3.63 3.36 1.68
23 29 28 330 6.48 4.29 2.14
24 22 22 263 5.52 3.42 1.71
25 27 21 243 5.07 3.89 1.95
26 26 24 316 6.43 5.05 2.52
27 36 32 353 6.25 5.65 2.83
即ち、1樹当たりの収量(kg/樹)では、基準給水量に20%加算した潅水(ロ)の場合には5.45kgであるが、基準給水量の潅水(イ)と、20%加算潅水の1.5倍の潅水(ハ)の場合は4.21kg、3.75kgと少ない。また、換算収量(t/10a)は、2.73tであるが、基準給水量の潅水(イ)と、20%加算潅水の1.5倍の潅水(ハ)の場合は2.1t、1.87tと少なかった。
房重(g)でも基準給水量に20%加算した潅水(ロ)の場合には415gと他より1.5倍ほど大きく、均一に高品質のものが得られた。
このことから、基準給水量に20%加算した潅水(ロ)を基準に潅水量が少なくても多すぎても好ましくないことが確認できた。この数値は、基準給水量の加算限度30%以内である。
以上の試験により、基準給水量に加算する吸水量を、約30%を限度とすることについて有効であることが確認できた。
この年数回の変更の方法では、コンピュータ制御によって自動的に行う方法と、手動的に行う方法とが可能である。
また、各生育ステージに適合する毎日のドリップ給水は、コンピュータ制御によって通年管理で行うことができ、またタイマー制御によっても給水の管理をすることが可能である。
本発明において必要な盛土の量を、決めるための試験を行った。
そのうちの一つとして、根域制限栽培における培土量が生育及び根系に及ぼす影響を、ぶどうを例にとり、培土量を30、60、90リットルの3段階で比較試験を行った。
処理区 新梢長 1房重 1粒重 収量 着房数
(リットル)満開期 満開後30日(g/房)(g/個)(t/10a)(房/樹)
30 74.6 111.7 374 11.2 2.29 8
60 77.6 120.8 357 11.4 3.02 8.5
90 71.7 146.0 342 10.3 3.42 10.0
果実の品質、収穫量は培土60リットルまでは差がなく、90リットルでは1房重と1粒重とも品質が劣った。即ち、培土は多ければ多いほど良いというものではなく、樹種や樹体により最適量が決まることがわかる。
次に、地植えと根圏制御栽培における細根の状態の違いを調べた。
以下が培土150リットルの場合での実験の結果である。
根域制限 細根 687 45 4163 10.59
太根 853 160 1.61
地植え 細根 285 20 887 2.78
太根 1041 82 1.44
また、培土量が少ないほど地下部の割合が増加し、細根の割合が高かった。
用いた培土の範囲では、単位葉面積に対して1.4〜1.6倍の細根の表面積を必要とすることが判明した。
また、根表面積と葉面積との関係を調べたのが以下のぶどうの実験データである。
根域制限 葉 688 10.35 1.02
地植え 葉 876 12.44 0.22
しかし本発明の根圏制御栽培では、盛土量によりその果樹の根の生育できる範囲(根域)が決まり、高品質な果実を多量に安定して得ために最適な盛土の量は、果樹の葉面積から必要とされる細根の表面積から計算できる。
ぶどうで行った上記実験結果では、細根の分化が進んだ結果、1枚の葉を維持するために地植え樹の約4.63倍(1.02÷0.22)もの細根の表面積となることがわかった。
また、なし等での行った同様な実験によると、単位面積当たり細根の葉一枚に対する表面積は地植え樹の約3倍以上であった。
この数値は樹種や盛土の量などにより異なるものであったが、上記各実験によって、高品質な果実を多量に安定して得ためには、1枚の葉を維持するために細根の表面積が地植え樹の概ね約3倍以上は必要であるとの結論が得られた。
次に、根域制限栽培における土壌養水分の分布を調べた。
土壌養水分の分布は、1回当たりの潅水量が多く重力水となってたまるため培地下層部に多くなることがわかった。
また、根の活動状態の違いなどにより盛土中の水分の減少量が位置のより大きく異なり、どの位置に水分センサーを配置しても正確な水分状態が把握できないことがわかった。
次に、1日のうち吸水量がどのように変化するかについて実験を行った。
まず根域制限栽培における毛管吸水法による樹体の吸水量を測定した。
測定方法は、樹の底面全体に吸水マットを敷いて底面吸水とし、水は1日回17時に補給し、補給された量を測定した。日変化については、午前4時から1時間おきに減水量を測定した。
その結果が図5である。
この図5で、吸水量が午前4時から増加し、14時ごろをピークにその後減少し21時まで測定された。
この実験から日射量に対して2時間遅れで吸水量が変化している様子がわかる。
これまでは、通常、これまで「午前中の水遣り」といって、潅水を午前中に一回行っている根拠として、樹木は午前中にその多くを吸水するからと考えられていたが、午前中よりもむしろ午後の吸水量のほうが多いことがわかり、潅水は午後にも必要であることがわかった。
さらに、晴天時と曇雨天時など日によって吸水量がどのように異なるかを見る実験を行った。
その方法として、晴天時と曇雨天時でのぶどうの生育ステージにおける日別吸水量を測定した。
下記実験データは、ぶどうの新梢伸張期、開花期、果粒肥大期、着色の各生育ステージにおける晴天時と曇雨天時での1日の吸水量を比較した実験結果である。
晴天日
最小 1.4 2.3 3.0 2.6
平均 1.9 2.9 4.3 5.6
最大 2.5 3.6 5.9 9.6
曇雨天日
最小 2.3 1.6 0.7 0.9
平均 2.4 2.4 1.7 1.8
最大 2.5 3.0 2.6 2.5
(単位:リットル)
また、曇雨天日では平均して吸水量は少ないことが判った。
また、ぶどうで数日に渡り水分蒸散量を測定した。
測定方法は盛土を含む総重量による測定で、この測定結果は、図6のようであった。
晴天日と曇雨天日とで上記実験例6と同様に大きな差があり、この測定でも、図5に示す実験と同様に太陽の照射時刻に対して水分蒸散時刻はピークに2時間程度の遅れがあることが確認できた。
2 不透根シート
3 盛土
4 制御装置
5 液肥混入器
6 流量計
7 電磁弁
8 潅水チューブ
9 マイクロチューブ
10 アロードリッパー
11 四角錐台形の型枠
12 透明通風シート
13 密集根
14 主根
15 分岐根
P 果樹
Claims (7)
- 土地と縁切りするとともに排水機能を備えた防水層を形成し、該防水層上に単位葉面積当たりの細根の表面積が地植え樹の約3倍以上となる盛土を形成し、該盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし、該盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成し、
予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し、
その算出された基準給水量を1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行うことを特徴とする果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。 - 土地と縁切りするとともに排水機能を備えた防水層を形成し、該防水層上に単位葉面積当たりの細根の表面積が地植え樹の約3倍以上となる盛土を形成し、該盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし、該盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成し、
予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し、
その基準給水量に約30%を限度として加えた量を各生育ステージにおける1日の給水量として算出し、
その算出された給水量を、1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行うことを特徴とする果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。 - 盛土の表面を露光状態が保持できる透明乃至半透明の通気シートで被覆したことを特徴とする請求項1又は2に記載の果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。
- 潅水方法がドリップ潅水によるものである請求項項1乃至3のうちい少なくともずれか一項に記載の果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。
- 防水層の上に不透根シートを重ね敷きして成る請求項1乃至4のうち少なくともいずれか一項に記載の果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。
- 防水層が、吸水防止シートによるものである請求項1乃至5うち少なくともいずれか一項に記載の果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。
- 植える果樹類が、当年結実期まで育成した挿木又は接木した苗木である請求項1乃至6のうち少なくともいずれか一項に記載の果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。
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