JP2005200769A - 平板印刷版用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Fe:0.1〜0.5%、Si:0.01〜0.15%、Cu:5〜180ppmを含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金を鋳造した後、均質化処理を施さずに、500℃以下で均熱、500℃以下で熱間圧延を行い、さらに冷間圧延を施す。アルミニウム合金板表層部が準安定相のAlFe系金属間化合物粒子が分散した準安定相分散層からなり、該分散層では、面方向で0.1μm以上の金属間化合物粒子が5000個/mm2以上分散し、該粒子のうち、0.1〜1.0μmの大きさの粒子が20%以上占める。電解エッチングにおいて未エッチング部が少なく、均一にピットが形成された粗面が得られる。
【選択図】 なし
Description
このPS版は、上記アルミニウム合金を用いて所定の製造工程を経て製造されるものであるが、上記感光剤の塗布に先立っては表面処理が施されている。この表面処理は、電解エッチングによって印刷版表面を粗面化処理した後、陽極酸化皮膜処理するものであり、また粗面化処理前には、脱脂等を目的として苛性処理等の洗浄がなされる。
しかし、従来の粗面化処理では、粗面化表面に未エッチング部があったり、粗面化により形成されるピットの分布が不均一だったりして少なからず印刷版としての性能に悪影響が生じており、この粗面状態を改善することが求められている。
従来、上記観点から材料面での改善が試みられており、その一方法として材料に特殊元素を添加する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、所定量のNiを添加することによってピットの形成を促進してエッチング性を向上させる方法が開示されており、特許文献2では、Sn、In、Gaを添加して微細ピットを形成してエッチング性を向上させる方法が開示されている。
また、金属間化合物の大きさ、密度に着目し、これらを制御することによって特殊元素を添加することなくエッチング性を向上させる方法も提案されている(特開平11−151870号等)。この方法では、該金属間化合物がエッチングの起点になって微細なピットが均一に形成されるものとしている。しかし、この方法によっても十分にエッチング性を向上させることはできず、前記要望を満足させるには至っていない。
Al量/Fe量≦1.6 …A
Al量/Fe量>1.6 …B
b/a≧0.05 …C
Fe:0.1〜0.5%
FeはAlFe系晶析出物(金属間化合物)を形成するのに不可欠な元素であり、適量の金属間化合物粒子を得るためには0.1%以上の含有が必要である。この含有量が0.1%未満であると晶析出物の形成が不十分となり、所望のエッチング性が得られない。一方、含有量が0.5%を越えると巨大晶析出物の形成により電解エッチングピットを不均一化するので、Fe含有量は0.1〜0.5%の範囲に定める。なお、同様の理由で下限を0.2%、上限を0.4%に定めるのが望ましい。
Siは0.15%を越えて含有するとAlFeSi系晶析出物を形成し、AlFe系準安定相の生成を阻害する。また、Si系の巨大晶析出物が形成されて電解エッチングピットを不均一化する。このためSiの含有量の上限を0.15%に定める。一方、Siの含有量を0.01%未満にまで低下させると高純度地金の使用によりコストが増し、工業性の点で問題が発生する。このため、Si含有量は0.01〜0.15%の範囲に定める。なお、同様の理由で下限を0.04%、上限を0.08%に定めるのが望ましい。
Cuは、適量の含有によりピットを形成しやすくして均一なピット形成を可能にする元素であり、上記準安定相金属間化合物粒子との併存によってエッチング性を顕著に向上させる。ただし、5ppm未満の含有では粗面化に際し形成されるピットが浅いか、ピットが形成され難くなるので、5ppm以上の含有が必要である。一方、Cu含有量が180ppmを越えると、ピット深さは増すが局部的に電解エッチングされるようになり、大きなピットが不均一に形成されるとともに、準安定相の安定相への相変化を促進する。したがって、Cuの含有量を5〜180ppmに限定する。なお、同様の理由で下限を20ppm、上限を80ppmとするのが望ましい。
従来、平板印刷版用アルミニウム合金板では、安定相のAlFe系金属間化合物(Al3Fe)が分散しており、準安定相の分散層は見られない。本発明では、従来のものと異なり、表層部に準安定相のAlFe系金属間化合物が分散した分散層を有している。この準安定相は、量比でAl4Fe,Al5Fe,Al6FeまたはAlmFe(4<m<6)で示される。これらは単独または混相として存在する。また、準安定相粒子は、通常は、この準安定相の金属間化合物のみで構成されるが、安定相の金属間化合物が混ざったものであってもよい。
上記した準安定相金属間化合物粒子は、安定相の金属間化合物粒子に比して、ピットの起点になりやすく、ピットの分散性を高めて未エッチング部の発生を効果的に防止する。また、AlmFeのmは6に近い方が効果的である。
上記した分散層は、表面から2〜50μmに至る深さで形成されているのが望ましい。これは、平板印刷版用アルミニウム合金板の製造において、圧延後、電解エッチング前に、苛性洗浄による脱脂、酸エッチングや機械研磨等により表面層除去が行われており、一般的に、化学的前処理では2〜5μm程度、機械研磨では5〜10μm程度が除去されることから、分散層の深さは2μm以上が望ましいことになる。したがって、ここで述べる分散層の深さは、表層除去前、圧延後の状態を示している。一方、分散層の深さは50μmを越えても電解エッチングの改善には殆ど関与しないので、分散層深さは50μmあれば十分である。
分散層では、ピットの起点として優れている準安定相の金属間化合物粒子が、ある程度の比率以上で分散している。
この場合、安定相のAlFe系金属間化合物粒子100に対し、準安定相のAlFe系金属間化合物粒子が、5以上の比率で分散しているのが望ましい。この比率が5未満であると、準安定相粒子の比率が低くて十分な改善効果が得られない。なお、同様の理由で、準安定相のAlFe系金属間化合物粒子が15以上の比率で分散しているのが一層望ましい。
上記比率は各粒子における(Al量/Fe量)で示すことができ、これが1.6以下のもの(Al量/Fe量≦1.6…A式)を安定相粒子、1.6を越えるもの(Al量/Fe量>1.6…B式)を準安定相粒子とみなすことができる。
従って、A式を満たす粒子個数をa個、B式を満たす粒子個数をb個とした場合、その比率(b/a)が0.05以上となることによって準安定相粒子の分散による改善効果が得られる。また、該比率は0.15以上であるのが一層望ましい。
なお、準安定相粒子の比率の上限は特に定める必要はないが、製造方法の制約等によって、通常は安定相粒子を1とすれば、9程度が上限である。
金属間化合物粒子は、エッチングピットの起点になることから、上記した分散層における該粒子の大きさは、その後に成長するピットの性状に影響する。この粒子径が小さくて(円相当径0.1μm未満)、粒子が微細すぎるとエッチングピットの起点として十分に作用せず、一方、粒子径が大きすぎる(円相当径1.0μm超)とピットの均一性を低下させる。したがって、ピットの形成に好適に影響を与える金属間化合物粒子は、円相当径で0.1μm〜1.0μmのものである。したがって面方向において、金属間化合物粒子のなかで、この大きさの範囲にある粒子の比率が高いほど良好なエッチング性が得られる。面方向とは、分散層の任意の深さ位置での表面と平行する面方向を意味する。なお、0.1μm未満の金属間化合物粒子は、ピットの起点という観点からは殆ど無視できる存在であるから、0.1μm以上の金属間化合物粒子にのみ着目して、上記範囲内の粒子の比率を規定することができる。
すなわち、上記大きさ範囲内の金属間化合物粒子の個数比率が、0.1μm以上の粒子総個数に対し、20%以上であるのが望ましい。該比率が20%未満であると、晶析出物の大きいものが多く、全体的に大きなピットが生じて不均一な粗面となる。なお、同様の理由で該比率が30%以上であるのが一層望ましい。なお、ここでいう金属間化合物粒子は、安定相であるか準安定相あるかは問わない。
通常の製造方法では、合金を溶製した後、成分の偏析等をなくす目的で均質化処理を行っており、この段階で既に準安定相は殆ど残存しない。本発明では、この均質化処理を省略する。
熱間圧延間の均熱処理の過程で十分に加熱されることによっても僅かに残存している準安定相が消失する。均熱温度が高くなると粒子は大きくなる傾向にある。そこで、該均熱処理の温度を500℃以下とする。
熱延温度が高くなると粒子は大きくなる傾向にある。そこで、熱間圧延温度を500℃以下とする。
上記効果により、感光層を形成する際に感光剤が密着して固着され、印刷版として優れた性能を発揮する。
また、金属間化合物粒子の分散は、同様に均質化処理や均熱処理の温度及び時間、更には熱間圧延の温度を制御することによって行うことができる。
先ず、本発明の合金板の材料となるアルミニウム合金は、常法により溶製することができ、例えば前記成分範囲内になるように成分調整し、鋳造することにより得ることができる。その後、従来法では550℃以上で均質化処理を行って成分の均質化等を図っている。ただし、本発明の合金板を得る工程では、前記した準安定相分散層を得るために、この均質化処理を省略する。所定の成分を有するアルミニウム合金は、熱間圧延→冷間圧延の工程を経てアルミニウム合金薄板とする。上記工程を経ることにより得られるアルミニウム合金薄板は、アルミニウム合金板として用いられる。
なお、鋳造速度が遅くなると、また、均質化温度が500℃を越えて高くなると、更に均熱温度及び熱延温度が高くなると粒子は大きくなる傾向にあり、これらを適正な温度条件(具体的には500℃以下を目標とし)で行うことにより粒子の大きさ、密度を制御する。
本発明の材料は、電解エッチング性に優れており、該エッチングによって、未エッチング部が少なく、均一なピットが形成された粗面が得られる。
表1に示す組成でアルミニウム合金を溶解鋳造し、得られたスラブの表面を面削した。ついで、熱間圧延、冷間圧延を経て0.3mm厚のアルミニウム合金板を得た。ついで、前処理に相当する表面層の除去処理として、0.3μm粒子径のアルミナ粒子を用いた湿式バフ研磨により所定深さまで表面層を除去した(一部供試材では表面層の除去を省略)。
表面層除去後の該合金板の表面面方向の0.01mm2の面における金属間化合物粒子をEPMAによって観察し、分散個数密度、円相当の粒子径(0.1μm以上を対象)、各粒子におけるAl量、Fe量を求め、さらに各粒子のAl量/Fe量比を求めて、該比が1.6以上のものをa個、1.6未満のものb個としてその個数比b/aを求めた。
上記観察結果は、それぞれ表1に示した。
すなわち、
2%塩酸、25℃、50Hz、60A/dm2、40sの電解エッチング処理を行った後、表面をSEM(500倍)観察し、未エッチング部について、面積率が30%越えるものを×、20〜30%のものを△、20%未満のものを○で評価した。
また、電解エッチング処理後表面に、円相当径が15μmを越える大きなピットが全ピットに対して面積率で20%以上あるものを×、20%未満のものを○としてピットの均一性について評価した。
これら評価も同様に表1に示した。
Claims (4)
- 質量比で、Fe:0.1〜0.5%、Si:0.01〜0.15%、Cu:5〜180ppmを含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を鋳造した後、均質化処理を施さずに、500℃以下で均熱して500℃以下の温度で熱間圧延を行い、さらに冷間圧延を施して、表層部が準安定相のAlFe系金属間化合物粒子が分散した準安定相分散層からなり、該分散層では、面方向において、円相当径で0.1μm以上の金属間化合物粒子が5000個/mm2以上の密度で分散しており、さらに0.1μm径以上の該金属間化合物粒子のうち、粒子径が0.1〜1.0μmの範囲内にある粒子が個数比で20%以上であるアルミニウム合金板を得ることを特徴とする平板印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記分散層では、面方向において、準安定相のAlFe系金属間化合物粒子が、安定相のAlFe系金属間化合物粒子に対し、個数比で5/100以上含まれていることを特徴とする請求項1記載の平板印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記分散層では、面方向において、金属間化合物粒子のうち、下記A式を満たす粒子(個数a)と、下記B式を満たす粒子(個数b)とが、下記C式を満たす関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載の平板印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
Al量/Fe量≦1.6 …A
Al量/Fe量>1.6 …B
b/a≧0.05 …C - 前記分散層は、表面から2μm〜50μmの深さを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平板印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
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