JP2005200332A - アリルカテコール系化合物を有効成分とする抗マラリア組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】アリルカテコール系化合物、特にアリルピロカテコールを有効成分とする新規な抗マラリア組成物の提供。
【解決手段】 一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を示し;R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基または低級アルキルカルバモイル基を示し;R6及びR7は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し;R8及びR9は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基、またはハロゲン原子を示す。)で示されるアリルカテコール系化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗マラリア組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を示し;R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基または低級アルキルカルバモイル基を示し;R6及びR7は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し;R8及びR9は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基、またはハロゲン原子を示す。)で示されるアリルカテコール系化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗マラリア組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抗マラリア組成物(医薬組成物)に関する。より詳細には、本発明はアリルカテコール系化合物を有効成分とする抗マラリア組成物(医薬組成物)に関する。
マラリアは、現在、世界中で約3億人の人が感染し、年間200万人もの人が死亡する人類最大の寄生原虫感染症であり、WHOは、2010年には患者数、死亡者数とも倍増すると推計している。しかも、多剤耐性原虫が広範囲に渡って伝播していることやワクチンの開発が困難を極めていること等から、マラリアは、エイズとともに地球規模で最も脅威になっている疾病と位置づけられている。このため、現在、マラリアの新規化学療法剤の開発は人類にとって緊急を要する重要な課題であると考えられる。
従来よりマラリアの治療に用いられている薬物は、1)南米起源のキナ樹皮由来のキニーネをシーズ化合物として開発されたクロロキンに代表される一連のアミノキノリン系化合物、2)中国起源の漢薬 "青蒿" から開発されたアルテミニシン(artemisinin)などのパーオキサイド化合物、及び3)ジヒドロ葉酸還元酵素を標的とする葉酸代謝拮抗薬、の3種類に大別される。しかしながら、現在、これら3種の抗マラリア薬のすべてに対して耐性な原虫が患者から確認されている感染地域も出現しており、また、マラリアの感染を媒介するハマダラ蚊も多種の殺虫剤に対して耐性を獲得していることから、耐性原虫の伝播を制御する有効な手段がない現状況において、多剤耐性原虫が全感染地域に拡散するのも時間の問題であると警鐘が鳴らされている。
特に、上記の既存抗マラリア薬のなかで、アミノキノリン系化合物および葉酸代謝拮抗薬は、ほとんどの感染地域で耐性が確認されており、これらの薬物を用いて、マラリアを治療することは今ではほぼ困難とされている。また、アルテミシニンは、血流中のマラリア原虫が完全に消失してから数週間後に新たに血流中に原虫が出現する、「再燃」という現象が観測される。これが、アルテミシニンの最大の問題点である。このため、アルテミシニンは、現在、主として治療初期に体内のマラリア原虫濃度を低下させるために利用されるに留まり、マラリアを根治する療法として、注射薬としてのみ効果を示すキニーネの静注が実施されている。
このように、上記従来の抗マラリア薬とは異なる構造を有する新規な抗マラリア活性成分の発見、並びに新規抗マラリア治療剤の開発が急務とされている。
こうした目的から、従来より、多くの薬用植物の中から抗マラリア活性成分を探索する試みが広く行われている。例えば、特許文献1にはアノーナ・セネガレンシスから得られるタンニン及びキニンを含有する抽出物がマラリアの治療に有効であること、特許文献2には天然または合成によって得られるアクリジン誘導体が抗マラリア剤の有効成分として有効であること、特許文献3には桂皮、地黄、芍薬、川きゅう、当帰、人参、及び甘草などの混合生薬やその抽出物が抗マラリア剤として有効であること、特許文献4にはAncistrocladus属の植物から得られるコルペンサミン及びコルペンサミン誘導体が抗マラリア活性成分として有効であること、特許文献5にはペシーラ属の植物のアルカロイド成分であるボーカミンに優れた抗マラリア活性があること、非特許文献1にはケニアで抗マラリア用に使用されている薬用植物Ajuga remotaに含まれるajugarin-1及びergosterol-5,8-endoperoxideに抗マラリア活性(in vitro)があること、並びに非特許文献2には、薬用植物Cassia occidentalis、Morinda morindoides、及びPhyllanthus niruriに抗マラリア活性があることが記載されている。
特開昭60−54323号公報
特開平02−101015号公報
特開平07−82165号公報
特表平10−501518号公報
特表2002−507570号公報
Kimani A. M. Kuria et al., "The Antiplasmodial Activity of Isolates from Ajuga remota", Journal of Natural Products, 2002, Vol.65, No.5, pp.789-793
Tona L et al., "In-vivo antimalarial activity of Cassia occidentalis, Morinda morindoides and Phyllanthus niruri" ANNALS OF TROPICAL MEDICINE AND PARASITOLOGY, 95(1), 47-57 (2001).
本発明は、アリルカテコール系化合物を有効成分とする新規な抗マラリア組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記アリルカテコール系化合物の調製方法、並びに当該化合物を有効成分とする抗マラリア組成物の調製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、薬用植物Piper betleから単離されたアリルカテコール系化合物が、in vitroでマラリア原虫の増殖抑制作用を示し、しかもマラリア疾患モデル動物に対しても経口投与で抗マラリア効果を発揮することを新たに見いだし、当該アリルカテコール系化合物が、新規抗マラリア組成物(医薬組成物)の有効成分として有用であることを確信した。本発明は、かかる知見に基づいて、完成したものである。
すなわち、本発明は下記に関するものである。
項1. 一般式(1):
項1. 一般式(1):
で示されるアリルカテコール系化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗マラリア組成物。
項2. アリルカテコール系化合物が、下式(2):
項3. Piper betleの溶媒抽出物を吸着処理する工程を含む、下式(2):
項3−1.下記工程を有する項3記載のアリルピロカテコールの調製方法:
(1) Piper betleの葉を低級アルコールで抽出する工程、及び
(2) (1)で得られる低級アルコール抽出物またはその処理物を吸着処理に供して、アリルピロカテコールを含む画分を取得する工程
(3) アリルピロカテコールを含む画分からアリルピロカテコールを単離する工程。
項4. 一般式(1):
で示されるアリルカテコール系化合物またはその薬学的に許容される塩に、薬学的に許容される担体または添加剤を配合する工程を有する、抗マラリア組成物の調製方法。
項5. 一般式(2):
項6. 上記Piper betleの溶媒抽出処理画分が、
(1) Piper betleの葉を低級アルコールで抽出する工程、及び
(2) (1)で得られる低級アルコール抽出物またはその処理物を吸着処理に供して、アリルピロカテコールを含む画分を取得する工程
を経て得られる画分である、項5に記載する抗マラリア組成物。
以下、本発明を説明する。
(1)抗マラリア組成物
本発明は、下記の一般式(1):
(1)抗マラリア組成物
本発明は、下記の一般式(1):
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗マラリア組成物に関する。
なお、上記一般式(1)で示される化合物は、カテコール核とアリル基を有するアリルカテコール及びその誘導体であることから、本発明では、「アリルカテコール系化合物」と総称する。
上記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8またはR9で示される低級アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基を意味する。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、第三級ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、及びn−ヘキシル基を挙げることができる。好ましくは、メチル基、及びエチル基である。特にR6及びR7の低級アルキル基はメチル基であることが好ましい。
R4またはR5で示される低級アルコキシカルボニル基または低級アルキルカルバモイル基において用いられる低級アルキル基としても上記のものを挙げることができる。
低級アルコキシカルボニル基として、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、イソペントキシカルボニル基、及びn−ヘキソシキカルボニル基を挙げることができる。好ましくはメチトキシカルボニル基、及びエトキシカルボニル基である。
低級アルキルカルバモイル基として、具体的にはメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、sec−ブチルカルバモイル基、n−ペンチルカルバモイル基、イソペンチルカルバモイル基、及びn−ヘキシルカルバモイル基を挙げることができる。好ましくはメチルカルバモイル基、及びエチルカルバモイル基である。
R1、R2、R3、R6、R7、R8またはR9で示されるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができる。好ましくはフッ素原子、及び塩素原子である。特にR6及びR7のハロゲン原子はフッ素原子であることが好ましい。
R1、R2及びR3は好ましくは、同一または異なって、水素原子、フッ素原子、または塩素原子、より好ましくは水素原子であり;R4及びR5は好ましくは、同一または異なって、水素原子、またはメチル基、より好ましくは水素原子であり;R6及びR7は好ましくは、同一または異なって、水素原子、またはフッ素原子、より好ましくは水素原子であり;並びにR8及びR9は好ましくは、同一または異なって、水素原子、またはメチル基、より好ましくは水素原子である。
上記アリルカテコール系化合物(1)の中でも好ましくは、R1、R2及びR3;R4及びR5;R6及びR7;並びにR8及びR9がそれぞれ水素原子である場合の、下式(2)で示されるアリルピロカテコール(allylpyrocatechol)である:
式(2)で示されるアリルピロカテコールは、化学的に合成することもできるが、植物、具体的には東南アジアの薬用植物であるPiper betleを原料として抽出単離することによって調製することもできる。
Piper betleの葉(Betel leaf)は、古くからインドを中心とする東南アジアでお茶や噛みタバコ(Betel quid chewing)の原料として使用されており、また、医薬用途としては感染症や胃障害の治療薬として、並びに催淫剤及び強壮剤としても用いられている(http://www.shaman-australis.com/Website/subcat105.htm)。Piper betleの葉(Betel leaf)には、主成分としてカビコール(chavicol、4-hydroxyallulbenzene)のほか、オイゲノール(eugenol)、イソオイゲノール(isoeugenol)、サフロール(safrole)、アネトール(anethole)等が含まれており、殺菌作用(防腐作用、防カビ作用)や防虫作用を示すことが知られている(A.D.solsoloy, et al., "Insecticide and Fungicide Effects of Betel, Piper belte L. Volatile Oil on Selected Cotton Pests", Manuscripts for PJS Volume 130, No.1, June 2001.; Ramji, N. et al.,“Phenolic antibacterials from Piper bltle in the prevention of halitosis", Journal of Ethnopharmacology, Nov.2002)。また、伝承的にはPiper betle の葉にビンロウジヤシとメキシコライムをくるんだものが、寄生虫(マラリアを含む)の予防によいと知られているものの、具体的にはどの成分が抗寄生虫作用(抗マラリア作用)を発揮するのかについては一切知られていなかった。
Piper betleからアリルピロカテコール(2)を単離調製する場合、原料として使用するPiper betleは、全草であってもまたその一部であってもよい。好ましくは葉または葉を含む部分である。
当該アリルピロカテコール(2)の調製は、制限はされないが、例えば、(1) Piper betleの全草またはその一部(好ましくは葉または葉を含む部分)を、有機溶媒を含む溶媒で抽出処理する工程、及び(2)当該工程で得られる抽出画分を吸着処理する工程を経て行うことができる。
Piper betleの抽出処理は、抽出溶媒中に、生または乾燥処理したPiper betleの全草またはその一部(好ましくは、葉)の粗末又は細切物を、低温、加温または煮沸条件下で浸漬する方法;低温、加温または煮沸条件下で攪拌しながら抽出を行う方法;またはパーコレーション法等によって行うことができる。かかる抽出に用いられる抽出溶媒としては、特に制限されないが、水、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。好ましくは低級アルコールである。ここで低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。好ましくはメタノールまたはエタノールである。
なお、抽出処理は、上記方法によって得られた抽出物について、さらに同一または異なる抽出溶媒を用いて、1回若しくは複数回繰り返し行うこともできる。
得られた抽出画分は、必要に応じて濾過、共沈または遠心分離によって固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮して、次の処理工程に供することができる。
吸着処理は、当業界における常法に従って行うことができる。例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS-861(商標「Duolite」, U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS-862、デュオライトS-863又はデュオライトS-866;芳香族系のセパビーズSP70(商標「セパビーズ」、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、セパビーズSP825;ダイアイオンHP10(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイアイオンHP20、ダイアイオンHP21、ダイアイオンHP40、及びダイアイオンHP50;あるいはアンバーライトXAD-4(商標「アンバーライト」、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD-7、アンバーライトXAD-2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着樹脂処理を挙げることができる。
かかる吸着処理において、Piper betleの抽出物またはその処理物を吸着担体(吸着剤)に供して、夾雑物を当該担体に吸着させて、アリルピロカテコール(2)を含む画分を溶出取得するか、またはアリルピロカテコール(2)を担体に吸着させた後に、担体を洗浄して夾雑物を除去し、次いで適当な溶出液でアリルピロカテコール(2)を担体から脱離溶出させる方法を採用することができる。なお、吸着処理は、上記いずれかの方法によって得られた処理物について、さらに同一または異なる吸着担体(吸着剤)を用いて、1回若しくは複数回繰り返して行うこともできる。
また、HPLC等を用いてアリルピロカテコール(2)のピーク画分を取得する方法も採用できる。さらに、必要に応じてイオン交換処理や晶析処理などを行うこともできる。なお、アリルピロカテコール(2)の調製方法の詳細は、後述する実施例の記載を例示として参照することができる。
また、アリルピロカテコール(2)は、下式で示すように、カテコールとハロゲン化アリル(例えば、塩化アリル)との反応からも調製することができる。
斯くして得られる、アリルピロカテコール(2)は、後述する実施例で示すように、抗マラリア活性を有し、また細胞毒性が低いため、抗マラリア組成物(医薬組成物)の有効成分として有効に利用することができる。なお、本発明の抗マラリア組成物の有効成分であるアリルピロカテコールには、上記化学式(2)で包括的に示される構造異性体のいずれもが包含される。
式(1)で包括的に示される、上記アリルピロカテコール(2)以外の本発明のアリルカテコール系化合物は、上記アリルピロカテコール(2)を出発原料として、当業界の技術常識に従って調製することができる。
一例として、アリルピロカテコール(2)を出発原料として、一般式(1)中、R1、R2、R3、R6、R7、R8、及びR9が水素原子であり、R4及びR5に各種の官能基を有するアリルカテコール系化合物((3)〜(5))を合成する方法を、下記反応式に例示する。
ここで、アリルピロカテコール(2)を出発原料として、下記の反応(a)〜(c)を行うことにより、それぞれ3,4-カーボネート体(3)、3,4-カーバメート体(4)、及び3,4-アルコキシ体(5)を合成することができる。
(a)アリルピロカテコール(2)をピリジンに溶解し、i-Pr2NEt(ジイソプロピルエチルアミン)及びROCOCl(Rは低級アルキル基)を加えて、室温で30分間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、アリルピロカテコールの3,4-カーボネート体(3)を得る。
(b)アリルピロカテコール(2)をピリジンに溶解し、塩化銅及びイソシアネート(R-C=N=O、Rは低級アルキル基)を加えて、室温で30分間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、アリルピロカテコールの3,4-カーバメート体(4)を得る。
(c)アリルピロカテコール(2)をジクロロメタンに溶解し、NaHを加え、0℃で30分間攪拌した後、RBr(Rは低級アルキル基)を加えて室温で1時間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、アリルピロカテコールの3,4-アルコキシ体(5)を得る。
(b)アリルピロカテコール(2)をピリジンに溶解し、塩化銅及びイソシアネート(R-C=N=O、Rは低級アルキル基)を加えて、室温で30分間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、アリルピロカテコールの3,4-カーバメート体(4)を得る。
(c)アリルピロカテコール(2)をジクロロメタンに溶解し、NaHを加え、0℃で30分間攪拌した後、RBr(Rは低級アルキル基)を加えて室温で1時間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、アリルピロカテコールの3,4-アルコキシ体(5)を得る。
この場合、出発原料として、アリルピロカテコール(2)に代えて、下式:
で示される化合物を用いることにより、一般式(1)中、R6、R7、R8、及びR9が水素原子、並びにR1、R2、及びR3が同一又は異なって低級アルキルまたはハロゲン原子であり、R4及びR5に各種の官能基を有するアリルカテコール系化合物(1)を合成することができる。
なお、上記式で示される化合物のうち、R1、R2及びR3が塩素、臭素またはヨウ素原子である化合物は、アリルピロカテコール(2)をジクロロメタンに溶解し、N-クロロスクシンイミド(N-ブロモスクシンイミド、またはN-ヨードスクシンイミド)を加えて室温で20分間放置し、斯くして得られる反応液を水にあけて抽出操作を行うことによって調製することができ、またR1、R2及びR3がフッ素原子である化合物は、アリルピロカテコール(2)をジクロロエタンに溶解し、N-フルオロピリジニウムトリフレートを加えて加熱還流下10時間攪拌し、斯くして得られる反応液を室温まで冷却後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加え、抽出操作を行うことにより調製することができる。
また、R1、R2及びR3に低級アルキル基を有する化合物は、低級アルキル基を導入する位置にブロモ基を有する化合物をテトラヒドロフランに溶解させ、n-ブチルリチウムで-78℃で10分攪拌した後、低級アルキルブロマイドを添加し室温で1時間攪拌し、斯くして得られる反応液を水にあけて抽出操作を行うことによって調製することができる。また、R1、R2またはR3に低級アルキル基とハロゲン原子を有する化合物は、先に上記のようにして低級アルキル基を導入した後に、他の部位に上記の方法でハロゲン原子を導入することによって調製することができる。
また、カテコールを出発原料として、一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、及びR5が水素原子であり、R6、R7、R8、及びR9に各種の官能基を有するアリルカテコール系化合物((7)または(8))を合成する方法を、下記反応式に例示する。
具体的には、カテコール(6)を出発原料として、下記の反応(d)または(e)を行うことにより、それぞれ式(7)で示されるカテコールのアリル化体、及び式(8)で示されるカテコールのアリル化体を合成することができる。
(d)カテコール(6)を水に溶解し、塩化銅、炭酸ナトリウム及び1,1-2置換-2-クロロ-1-プロペン(R8及びR9は前述の通り)を加えて、35℃で1間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、カテコールのアリル化体(7)を得る。
(e)カテコール(6)を水に溶解し、塩化銅、炭酸ナトリウム及び1,1-2置換-1-クロロ-2-プロペン(R6及びR7は前述の通り)を加えて、35℃で1時間攪拌する。次いで反応液から抽出操作により、カテコールのアリル化体(8)を得る。
この場合、出発原料として、上記カテコール(6)に代えて、下式:
で示される化合物を用いることにより、下記の反応式からアリルカテコール系化合物((10)及び(11))を合成することができる。
なお、上記化合物(9)のうち、R1、R2及びR3が塩素、臭素またはヨウ素原子である化合物は、カテコールをジクロロメタンに溶解し、N-クロロスクシンイミド(N-ブロモスクシンイミド、またはN-ヨードスクシンイミド)を加えて室温で20分間放置し、斯くして得られる反応液を水にあけて抽出操作を行うことによって調製することができ、またR1、R2及びR3がフッ素原子である化合物は、カテコールをジクロロエタンに溶解し、N-フルオロピリジニウムトリフレートを加えて加熱還流下10時間攪拌し、斯くして得られる反応液を室温まで冷却後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加え、抽出操作を行うことにより調製することができる。
また、R1、R2及びR3に低級アルキル基を有する化合物は、低級アルキル基を導入する位置にブロモ基を有する化合物をテトラヒドロフランに溶解させ、n-ブチルリチウムに-78℃で10分攪拌した後、低級アルキルブロマイドを添加し室温で1時間攪拌し、斯くして得られる反応液を水にあけて抽出操作を行うことによって調製することができる。また、R1、R2及びR3に低級アルキル基とハロゲン原子を有する化合物は、先に上記のようにして低級アルキル基を導入した後に、他の部位に上記の方法でハロゲン原子を導入することによって調製することができる。
なお、一般式(1)に含まれるその他のアリルカテコール系化合物も、上記方法に準じて合成することができる。
本発明の抗マラリア組成物は、上記一般式(1)で示される一連のアリルカテコール系化合物、特にアリルピロカテコール(2)の他、これらの薬学的に許容される塩を有効成分とすることもできる。ここで薬学的に許容される塩としては、特に制限されないが、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩などのように、カテコール核のフェノール性水酸基との塩を挙げることができる。
なお、本発明の抗マラリア組成物は、本発明の効果を損なわない限り、配合する有効成分の精製度を特に問うものではない。従って、上記一般式(1)で示される一連のアリルカテコール系化合物、特にアリルピロカテコール(2)、またはこれらの薬学的に許容される塩を粗精製物として含むものであってもよい。かかる粗精製物としては、前述するPiper betleの全草またはその一部(好ましくは葉または葉を含む部分)から調製される、アリルピロカテコール(2)を含む溶媒抽出処理画分を挙げることができる。
また、本発明の抗マラリア組成物には、本発明の効果を損なわない限り、他の公知または将来開発される抗マラリア薬を組み合わせて配合することも特に制限されない。
本発明の抗マラリア組成物は、上記有効成分に加えて、薬学的に許容される担体または添加剤が配合されていてもよく、上記有効成分をそのまま又は上記担体若しくは添加剤とともに、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、エマルジョンまたはシロップ剤等の経口剤の形態;注射剤、点滴剤、坐剤などの非経口剤の形態に調製することができる。かかる経口剤は、通常、有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を適宜組み合わせて配合した後、常法に従って、上記各種形態に調製することができる。
また、注射剤や点滴剤などを調製する場合は、有効成分に必要に応じて、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添加して、必要ならば凍結乾燥を行って、常法により皮下、筋肉、静脈内・腹腔内用注射剤、点滴剤として調製することができる。
さらに、これらの製剤には、上記成分の他に香料、界面活性剤、無痛化剤、安定剤などの成分を配合することもできる。
本発明の抗マラリア組成物の投与量は、症状の程度や患者の体重や年齢などによっても異なるが、例えば経口用製剤として人に投与する場合、アリルカテコール系化合物の量として10〜20mg/kgを1日1回〜数回にわけて投与することができる。
以下に、本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、製造例、実施例、比較例及び実験例を記載する。但し、本発明は、これらの実施例等に何ら影響されるものではない。
実施例1
A.検体の調製
(1)メタノール抽出
乾燥したPiper betleの葉部の粉砕物10gにメタノール200mLを加えて、室温で12時間抽出した。その後、これを濾過して濾液を回収した。一方、得られた残査にメタノール200mLを加え加熱還流下で2時間抽出し、その後濾過して濾液を採取した。この加熱還流抽出を、ここで得られた残渣に対して再度行い、回収した全ての濾液を集めて濃縮して固形物(以下「メタノール抽出物」と呼ぶ)を得た。
A.検体の調製
(1)メタノール抽出
乾燥したPiper betleの葉部の粉砕物10gにメタノール200mLを加えて、室温で12時間抽出した。その後、これを濾過して濾液を回収した。一方、得られた残査にメタノール200mLを加え加熱還流下で2時間抽出し、その後濾過して濾液を採取した。この加熱還流抽出を、ここで得られた残渣に対して再度行い、回収した全ての濾液を集めて濃縮して固形物(以下「メタノール抽出物」と呼ぶ)を得た。
(2)吸着処理
(1)で得られたメタノール抽出物をMeOHに溶解した後、充填する吸着樹脂(DIAION HP-20,三菱化学(株)製)の10分の1量に均一に分散させ溶媒を減圧下で留去した。さらに、抽出物を分散させた吸着樹脂を、吸着樹脂を充填したガラスカラム(充填溶媒:H2O)に加え、溶出溶媒を、水、50容量%メタノール水溶液、メタノール、及びアセトンの順で順次変えて、各溶出画分(水溶出画分、50% aq.MeOH溶出画分、MeOH溶出画分、及びアセトン溶出画分)を取得した。
(1)で得られたメタノール抽出物をMeOHに溶解した後、充填する吸着樹脂(DIAION HP-20,三菱化学(株)製)の10分の1量に均一に分散させ溶媒を減圧下で留去した。さらに、抽出物を分散させた吸着樹脂を、吸着樹脂を充填したガラスカラム(充填溶媒:H2O)に加え、溶出溶媒を、水、50容量%メタノール水溶液、メタノール、及びアセトンの順で順次変えて、各溶出画分(水溶出画分、50% aq.MeOH溶出画分、MeOH溶出画分、及びアセトン溶出画分)を取得した。
B.各検体の抗マラリア活性の測定
上記で得られた各溶出画分(検体)の抗マラリア活性を評価するために、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)FCR3株〔Department of Microbiology、Dartmouth Medical School、Lebanon, NH03756, USAから入手〕を用いて、マラリア原虫の生育阻害率を測定した。
上記で得られた各溶出画分(検体)の抗マラリア活性を評価するために、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)FCR3株〔Department of Microbiology、Dartmouth Medical School、Lebanon, NH03756, USAから入手〕を用いて、マラリア原虫の生育阻害率を測定した。
培地は、RPMI1640(GIBCOBRL)粉末10.4gを蒸留水1Lに溶解し、炭酸水素ナトリウム2gを加え、2〜3時間攪拌後、pHを7.4に調整し、吸引濾過後、HEPES緩衝液25mL及び10mg/ml濃度のゲンタマイシン溶液1mLを加え、更に無菌ヒトA型血清100mLを加えて作成した。液体窒素より取り出したマラリア原虫はDiggsら(Diggs,C.L. et al., Am. J. Trop.Med. Hyg., 24, 760-766 (1975))の方法に従って回収し、10%ヒトA型血清添加RPMI1640 5mLでヘマトクリット3%となるように、新鮮赤血球添加後、シャーレ(5mL)中で培養した。培養条件は、酸素5%、二酸化炭素5%、及び窒素90%の雰囲気下、37℃のインキュベーター内で培養した。
マラリア原虫の生育阻害率を測定する前に、マラリア原虫をring期に同調させるために、LambrosとVandenbergらの方法(Lambros,C., Vandenberg,J.P., J. Parasitol., 65, 418-420 (1979))に従って、上記マラリア原虫を細胞ペレット容積の5倍容積の5%ソルビトールに10分間暴露した。その後、RPMI1640で洗浄し、上記培地を用いて再培養した。このマラリア原虫の培養液を50μL 96穴のプレートに注入した。この培養液のヘマトクリット値は2%であり、感染率は0.5%である。
マラリア原虫の生育阻害率の測定は、具体的には下記のようにして行った。
各検体(上記溶出画分)を濃縮乾固後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、上記培地を用いて適切な濃度に希釈して被験試料とした(DMSO最終濃度1%)。この被験試料50 μLを、先にマラリア原虫の培養液(50 μL)を添加しておいた96穴プレートに添加した(合計100 μL)。混合液中のDMSOの終濃度は1%である。これを37℃で、48時間培養した。その後、スライドグラス上でスメアフィルムを作成し、これをGiemsa染色液で染色して、顕微鏡下で10000個の赤血球のうち感染した赤血球数を求めた。上記被験試料に代えてDMSOと培地で調整した溶液(50 μL、DMSO最終濃度1%)を添加して同様に試験した場合のマラリア原虫の感染率(対照感染率)と、検体存在下でのマラリア原虫の感染率(検体存在下での感染率)から、下式に従ってマラリア原虫の生育阻害率を算出した。なお、陽性対照薬としてはキニーネを使用した。なお、被験試料は最終濃度として5μg/mL、0.5μg/mLとなるように希釈して使用した。
各検体(上記溶出画分)を濃縮乾固後、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、上記培地を用いて適切な濃度に希釈して被験試料とした(DMSO最終濃度1%)。この被験試料50 μLを、先にマラリア原虫の培養液(50 μL)を添加しておいた96穴プレートに添加した(合計100 μL)。混合液中のDMSOの終濃度は1%である。これを37℃で、48時間培養した。その後、スライドグラス上でスメアフィルムを作成し、これをGiemsa染色液で染色して、顕微鏡下で10000個の赤血球のうち感染した赤血球数を求めた。上記被験試料に代えてDMSOと培地で調整した溶液(50 μL、DMSO最終濃度1%)を添加して同様に試験した場合のマラリア原虫の感染率(対照感染率)と、検体存在下でのマラリア原虫の感染率(検体存在下での感染率)から、下式に従ってマラリア原虫の生育阻害率を算出した。なお、陽性対照薬としてはキニーネを使用した。なお、被験試料は最終濃度として5μg/mL、0.5μg/mLとなるように希釈して使用した。
マラリア原虫の生育阻害率(%)
=(対照感染率 − 検体存在下での感染率)/対照感染率 × 100。
=(対照感染率 − 検体存在下での感染率)/対照感染率 × 100。
C.各検体(各溶出画分)の毒性評価
上記Aで調製した各検体(各溶出画分)について、細胞毒性を評価するために、MTT法(M.C.Alley,et al.,"Feasibility of Drug Screening with Panels of Human Tumor Cell Lines Using a Microculture Tetrazolium Assay", Cancer Res., 48, 589 (1988))に従って、ヒトのガン細胞KB3-1の生育阻害率%を測定した。
上記Aで調製した各検体(各溶出画分)について、細胞毒性を評価するために、MTT法(M.C.Alley,et al.,"Feasibility of Drug Screening with Panels of Human Tumor Cell Lines Using a Microculture Tetrazolium Assay", Cancer Res., 48, 589 (1988))に従って、ヒトのガン細胞KB3-1の生育阻害率%を測定した。
まず、上記検体(上記溶出画分)を濃縮乾固後、DMSOに溶解し、培地(10% fetal bovine serum含有RPMI1640培地)を用いて適切な濃度(5μg/mL、50μg/mL)に希釈して被験試料とした(DMSO最終濃度1%)。この被験試料100μLを、KB3-1細胞の浮遊液100μL (2 x 104個/mL)に添加して、5%CO2下、37℃の条件下で培養した。
培養72時間後、MTT試薬(3-(4,5)-dimethylthiazo-2,5-dimethyltetrazolium bromide)25μLを添加し、さらに3時間培養した。次いで、培地のみを吸引除去し、DMSO 200μLを加えて、生成したMTT folmazanを抽出し、その色素量を比色定量法(540 nm)によって定量した。生成した色素量から生存細胞数を算出した。被験試料(100 μL)に代えてDMSOと培地から調製した溶液(100μL、DMSO最終濃度1%)を添加して試験した場合の生成色素量(対照色素生成量)と、検体存在下での生成色素量(検体存在下色素量)から、下式に従って被験試料存在下での生育阻害率%を求めて、各検体(溶出画分)の細胞毒性を評価した。なお、陽性対照としてコルヒチンを用いた:
生育阻害率(%)=(対照色素量−検体存在下色素量)/対照色素量 x 100。
生育阻害率(%)=(対照色素量−検体存在下色素量)/対照色素量 x 100。
各溶出画分について抗マラリア活性と毒性を調べた結果を表1に示す。
なお、陽性対照試験として行ったキニーネのマラリア原虫に対する生育阻害率 (%)は、0.1μg/mLで78.2%、0.033μg/mLで40.2%であった。陽性対照試験として行ったコルヒチンのKB3-1細胞に対する生育阻害率 (%)は、5 ng/mLで60.1%であった。
実施例2
(1)精製画分の取得
実施例1A(2)で得られたPiper betle(葉部)のメタノール溶出画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分別精製した。具体的には、メタノール溶出画分の濃縮乾固物をn-hexane:EtOAc=90:10に溶解し、これをSiO2 (30g)を充填し、予め溶媒(n-hexane:EtOAc=90:10)で平衡化しておいたガラスカラム(内径30mm、長さ10cm)に通液して吸着させた。次いで、溶出溶媒として、まずn-hexaneと酢酸エチルとの混合液(n-hexane:EtOAc=90:10)を100mL通導し、順次、n-hexane:EtOAc=70:30混合液(100mL)、及びn-hexane:EtOAc=50:50混合液(100mL)に変えて通導し、各溶出画分を採取回収した。
(1)精製画分の取得
実施例1A(2)で得られたPiper betle(葉部)のメタノール溶出画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分別精製した。具体的には、メタノール溶出画分の濃縮乾固物をn-hexane:EtOAc=90:10に溶解し、これをSiO2 (30g)を充填し、予め溶媒(n-hexane:EtOAc=90:10)で平衡化しておいたガラスカラム(内径30mm、長さ10cm)に通液して吸着させた。次いで、溶出溶媒として、まずn-hexaneと酢酸エチルとの混合液(n-hexane:EtOAc=90:10)を100mL通導し、順次、n-hexane:EtOAc=70:30混合液(100mL)、及びn-hexane:EtOAc=50:50混合液(100mL)に変えて通導し、各溶出画分を採取回収した。
(2)溶出画分の抗マラリア活性と毒性
上記各溶出画分の抗マラリア活性と毒性を、実施例1と同様の方法に従って、マラリア原虫の生育阻害率(%)及びKB3-1細胞の生育阻害率(%)に基づいて評価した。その結果、各溶出画分のマラリア原虫の生育阻害率 (%)の結果から、n-hexane:EtOAc=70:30の溶出画分に高い抗マラリア活性があることがわかった。
上記各溶出画分の抗マラリア活性と毒性を、実施例1と同様の方法に従って、マラリア原虫の生育阻害率(%)及びKB3-1細胞の生育阻害率(%)に基づいて評価した。その結果、各溶出画分のマラリア原虫の生育阻害率 (%)の結果から、n-hexane:EtOAc=70:30の溶出画分に高い抗マラリア活性があることがわかった。
実施例3 n-hexane:EtOAc=70:30溶出画分に含まれる活性化合物の同定
実施例2で得られたn-hexane:EtOAc=70:30溶出画分に含まれる活性化合物について1H-NMR、13C-NMRおよびFAB-MSの測定を行い、当該化合物を同定した。活性化合物について得られた1H-NMR、13C-NMRおよびFAB-MSのデータ結果を下記に示す。
実施例2で得られたn-hexane:EtOAc=70:30溶出画分に含まれる活性化合物について1H-NMR、13C-NMRおよびFAB-MSの測定を行い、当該化合物を同定した。活性化合物について得られた1H-NMR、13C-NMRおよびFAB-MSのデータ結果を下記に示す。
・1H NMR (500 MHz, CDCl3): 6.80 (1H, d, J=8.1 Hz), 6.72 (1H, d, J=1.9 Hz), 6.63 (1H, dd, J=8.1, 1.9 Hz), 5.93 (1H, m), 5.07 (2H, m), 3.28 (2H, d, J=6.8 Hz).
・13C NMR (125 MHz, CDCl3) dc: 143.4, 141.8, 137.8, 133.1, 120.7, 115.6, 115.4, 115.3, 39.5.
・FAB-MS: 149 (M-H)- 。
・13C NMR (125 MHz, CDCl3) dc: 143.4, 141.8, 137.8, 133.1, 120.7, 115.6, 115.4, 115.3, 39.5.
・FAB-MS: 149 (M-H)- 。
この結果と文献報告値{Biosci. Biotech. Biocherm. 57, 1572-1574 (1993)}とを比較して、活性化合物は次の構造を有するアリルピロカテコールであると判定した。
(1)in vitro抗マラリア活性及び細胞毒性
実施例3で同定された活性化合物(アリルピロカテコール)について抗マラリア活性及び毒性を、実施例1B及びCに記載する方法に従って測定評価した。具体的には、抗マラリア活性は、実施例2で単離取得したアリルピロカテコールについて各種濃度の試料を作成し、実施例1Bに記載する方法に従って熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)FCR3株の生育阻害率を測定し、マラリア原虫の50%が致死する試料濃度をIC50として求めた。毒性は、実施例2で単離取得した活性化合物(アリルピロカテコール)を150μM濃度に調整し、実施例1Cに記載する方法(MTT法)に従って、当該試料のヒトガン細胞KB3-1の生育阻害率%を測定し、ヒトガン細胞KB3-1の50%が致死する試料濃度をIC50として求めた。さらに、ヒトガン細胞KB3-1に対する50%致死量(IC50[KB3-1])とマラリア原虫に対する50%致死量(IC50[P. falciparum])との比(IC50[KB3-1]/IC50[P. falciparum])から、選択毒性を評価した。結果を表2に示す。
以上の結果から、活性化合物(アリルピロカテコール)は高い抗マラリア活性を備えているとともに、毒性が低く比較的安全な化合物であることがわかる。すなわち、当該化合物は、毒性の低い比較的安全な抗マラリア剤の有効成分となりえることがわかる。
さらに、本発明のアリルカテコール系化合物に属するオイゲノールについて、上記方法に従って抗マラリア活性を測定したところ、マラリア原虫FCR3株に対するIC50値が60μMと、弱いものの抗マラリア作用があることが確認された。
(2)in vivo 抗マラリア活性
マラリア感染モデル動物としてPlasmodium berghei(ANKA)感染マウス(5週齢の雌性ddyマウス、体重22-25 g)を作成し、これに4日間、上記活性化合物を投与(腹腔内投与、経口投与)することにより、in vivoにおける上記活性化合物の抗マラリア活性を調べた。なお、上記モデル動物の作成には、4週齢の雌性ddyマウスを25℃で12時間周期の明暗条件下で飼育したものを用いた。
マラリア感染モデル動物としてPlasmodium berghei(ANKA)感染マウス(5週齢の雌性ddyマウス、体重22-25 g)を作成し、これに4日間、上記活性化合物を投与(腹腔内投与、経口投与)することにより、in vivoにおける上記活性化合物の抗マラリア活性を調べた。なお、上記モデル動物の作成には、4週齢の雌性ddyマウスを25℃で12時間周期の明暗条件下で飼育したものを用いた。
なお、Plasmodium berghei(ANKA)感染マウスは、下記のようにして作成した。
まず、凍結保存したPlasmodium berghei(ANKA)(自治医大・感染・免疫学講座・医動物学部門、松岡先生から入手)を室温に戻し、この保存液を0.1mLをマウスに腹腔内投与する。感染率が50 %程度まで上昇したマウス(ddy, 雄)より心臓穿刺により血液を0.5 mL採取し、これに0.07mLの3.2%クエン酸三ナトリウム水溶液を加え、リン酸バッファーで200倍に希釈した懸濁液のうち0.2 mLを、更にマウス(ddy, 雄)に腹腔内注射することで継代をおこなう。一方、ドナーマウス(ddy, 雌)については、試験開始日(=day0)から遡って4日目に上記継代方法と同様にして感染させる。こうすると、試験開始日(=day0)には約20%の感染率を有するマウス(ドナーマウス)が調製できる。
まず、凍結保存したPlasmodium berghei(ANKA)(自治医大・感染・免疫学講座・医動物学部門、松岡先生から入手)を室温に戻し、この保存液を0.1mLをマウスに腹腔内投与する。感染率が50 %程度まで上昇したマウス(ddy, 雄)より心臓穿刺により血液を0.5 mL採取し、これに0.07mLの3.2%クエン酸三ナトリウム水溶液を加え、リン酸バッファーで200倍に希釈した懸濁液のうち0.2 mLを、更にマウス(ddy, 雄)に腹腔内注射することで継代をおこなう。一方、ドナーマウス(ddy, 雌)については、試験開始日(=day0)から遡って4日目に上記継代方法と同様にして感染させる。こうすると、試験開始日(=day0)には約20%の感染率を有するマウス(ドナーマウス)が調製できる。
感染率が20%まで上昇したドナーマウスからヘパリン処理したシリンジで心臓採血を行いマラリア原虫を含む血液を採取した。採取した血液を、この血液の感染血球の最終濃度が0.2mLあたり1x106個になるように、0.9%食塩水で希釈した。次いで試験する活性化合物(アリルピロカテコール)をDMSOに溶解し、各種濃度のアリルピロカテコール含有ジメチルスルホキシド溶液を調製した。また、同様に、試験する活性化合物(アリルピロカテコール)を0.5%カルボキシメチルセルロース溶液に溶解し、各種濃度のアリルピロカテコール含有カルボキシメチルセルロース溶液を調製した。
次いで、雌性ddyマウス(1群5匹、12群)に上記感染赤血球を尾静脈より投与した。なお、この12群を腹腔内投与グループ(4群)、経口投与グループ(4群)、比較試験グループ(2群)及び対照試験グループ(2群)の4グループに分けた。感染赤血球投与から2時間後に、腹腔内投与グループのマウス(4群)に上記にて調製したアリルピロカテコール含有ジメチルスルホキシド溶液を、12.5 mg/kg体重、25 mg/kg体重、50 mg/kg体重、及び100 mg/kg体重の割合で腹腔内投与した。また、同様に感染赤血球投与から2時間後に、経口投与グループのマウス(4群)に上記で調製したアリルピロカテコール含有カルボキシメチルセルロース溶液を、25 mg/kg体重、50 mg/kg体重、100 mg/kg体重、及び200 mg/kg体重の割合で経口投与した。比較試験グループ(2群)のうち、腹腔内投与用の比較群(1群)には、感染赤血球投与から2時間後に、公知の抗マラリア薬であるアルテミシニン(artemisinin)含有ジメチルスルホキシド溶液を5 mg/kg体重の割合で腹腔内投与した。また、経口投与の比較群には、アルテミシニン含有0.5%カルボキシメチルセルロース溶液を15 mg/kg体重の割合で経口投与した。さらに、対照実験として、上記対照試験グループのマウス(2群)に、腹腔内投与用の対照群(1群)にはジメチルスルホキシドだけを、経口投与用の対照群(1群)には0.5%カルボキシメチルセルロース溶液を、それぞれ経口投与した。
この投与時点を0日目として3日目まで毎日投与し、4日目にマラリア感染率を調べた。感染率は、各マウスの尾から採血して塗末標本を作製し、顕微鏡を用いて感染赤血球を計数することにより求めた。また、求められた感染率から、活性化合物投与によるマラリア原虫の生育抑制率%を次式により求めた:
生育抑制率(%)
=(1−活性化合物を投与したマウスの平均感染率/対照マウスの平均感染率)×100。
生育抑制率(%)
=(1−活性化合物を投与したマウスの平均感染率/対照マウスの平均感染率)×100。
結果を表3及び表4に示す。
製剤例1
活性化合物(アリルピロカテコール)200mg、乳糖3g、とうもろこし澱粉1.28g、ヒドロキシプロピルセルロース200mg、ステアリン酸マグネシウム20mgを、よく混合して造粒した後、打錠して、1錠あたり100mgの錠剤形態の、抗マラリア組成物とする。
活性化合物(アリルピロカテコール)200mg、乳糖3g、とうもろこし澱粉1.28g、ヒドロキシプロピルセルロース200mg、ステアリン酸マグネシウム20mgを、よく混合して造粒した後、打錠して、1錠あたり100mgの錠剤形態の、抗マラリア組成物とする。
製剤例2
実施例2で調製したn-hexane:EtOAc=70:30の溶出画分1000 mg、乳糖2.5g、馬鈴薯澱粉1.75g、結晶セルロース240mg、及びステアリン酸マグネシウム10mgをよく混合し、この混合物をカプセルに充填し、1カプセル中メタノール溶出画分を1000 mgの割合で含む錠剤形態の、抗マラリア組成物とする。
実施例2で調製したn-hexane:EtOAc=70:30の溶出画分1000 mg、乳糖2.5g、馬鈴薯澱粉1.75g、結晶セルロース240mg、及びステアリン酸マグネシウム10mgをよく混合し、この混合物をカプセルに充填し、1カプセル中メタノール溶出画分を1000 mgの割合で含む錠剤形態の、抗マラリア組成物とする。
本発明は、アリルピロカテコールを始めとするアリルカテコール系化合物(1)を有効成分とした新規な抗マラリア組成物を提供することができる。
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