JP2005192436A - 食品中のアクリルアミドの低減方法 - Google Patents

食品中のアクリルアミドの低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】食品中のアクリルアミドの低減方法及びその製品を提供する。
【解決手段】食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの発生を抑制することにより食品中のアクリルアミドを低減する方法であって、食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させることを特徴とするアクリルアミドの低減方法、上記方法を使用した低アクリルアミド食品の製造方法、及びその製品。
【選択図】なし

Description

本発明は、食品中のアクリルアミドの低減方法に関するものであり、更に詳しくは、食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を微生物菌体を利用して抑制することにより食品中に含まれるアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品の製造方法に関するものである。
本発明は、例えば、100℃以上の高温で加熱される加工食品の工業的製造の技術分野において、該食品中に含まれる可能性のあるアクリルアミドをその生成段階で低減させることで、アクリルアミドを含まない低アクリルアミド食品を製造することを可能とする新規食品製造技術及びその製品を提供するものとして有用である。
従来、食品製造の技術分野において、例えば、加熱加工食品にアクリルアミドが含まれる可能性のあることが指摘されている。そのとき、アクリルアミドの生成機構は、未解明であったが、アクリルアミドの生成は、糖とアミノ酸によるメイラード反応との類似点があるのでないかと推測されていた。その後、雑誌Natureの2002年10月3日号に、英国のレディングレ大学のMottramら(非特許文献1参照)とスイスのネスレのStadlerら(非特許文献2参照)は、アミノ酸のアスパラギンとグルコースなどの糖が高温で加熱されるとアクリルアミドができることを同時に発表した。
上記先行技術文献では、アクリルアミドの分析法に関して、GC−MS法及びLC−MS/MS法が記載されており、それらの測定法に基づいて市販食品中のアクリルアミド含有量を調べたところ、ポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなどで大変高い濃度が検出されたこと、また、生や茄でた食品中ではあまり検出されないことから、炭水化物を主成分とする食材を高温で揚げたり焼いたりしたときに生成するものと推定されたこと、更に、アクリルアミドが生成されるには、100℃以上の加熱が必要であること、等が示唆されている(非特許文献1)。
また、上記先行技術文献では、アミノ酸のアスパラギンとグルコースなどの糖が高温で加熱されるとアクリルアミドが生成すること、構造類似のグルタミンやアスパラギン酸では痕跡量のアクリルアミドしか生成しなかったこと、ポテトチップスの原材料であるジャガイモでは、遊離アミノ酸の40%はアスパラギンが占めていること、また、アクリルアミドが生成されるには、100℃以上の加熱が好ましいこと、等が示唆されている(非特許文献2)。また、上記先行技術文献には、アミノ酸のアスパラギンと糖のグルコース、フラクトース、乳糖、ショ糖などが高温で加熱されるとアクリルアミドが生成すること、等が記載されている。すなわち、単純系においては、アクリルアミドは、アスパラギンとグルコース、フラクトース及びショ糖などと100℃以上で加熱したときに生成することが上記文献によって公知となっている。しかし、上述の知見は、あくまでも、アクリルアミドの原因を示唆したに止まり、例えば、各種成分が含まれる食品原料等の複雑系では、アクリルアミド生成のメカニズムは未解明である。このように、食品におけるアクリルアミドの生成が明らかになったが、現在までに、食品中のアクリルアミドを低減する方法の報告例はなく、また、食品中のアクリルアミドを低減する技術は開発されていない。
D.S.Mottram et aI,Nature,Vol.419,p448−449(2002) R.H.StadIer et a1,Nature,Vol.419,p449−450(2002)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、安全で、かつ、安価な方法で食品中のアクリルアミドを低減する技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、食品素材が高温で加熱される前に、特定の微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解することにより、食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を抑制することができることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、微生物菌体を用いて、各種食品素材の製造、加工、調理時においてアクリルアミドの生成を抑制することによって、食品中のアクリルアミドを低減する方法及びその製品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術手段から構成される。
(1)食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を抑制することにより食品中のアクリルアミドを低減する方法であって、食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させることを特徴とするアクリルアミドの低減方法。
(2)食品素材が、ジャガイモ、グリーンアスパラガス、サヤエンドウ、サヤインゲン、ショウガ、オクラ、及びゴボウの群から選択される1種以上である、前記(1)に記載の方法。
(3)食品が、ポテトスナック、フライドポテト、ビスケットである、前記(1)に記載の方法。
(4)微生物菌体が、酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母、及び乳酸菌の群から選択される1種以上である、前記(1)に記載の方法。
(5)食品素材に微生物菌体を添加し、分解反応が可能な状態で、10〜50℃で、0.5〜2時間反応させる、前記(1)に記載の方法。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の方法を使用してアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品を製造する方法であって、
1)食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させる、
2)上記食品素材を用いて、常法により、高温で加熱して加工食品とする、
3)上記1)〜2)により、アクリルアミドの生成が抑制された食品を製造する、ことを特徴とするアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品の製造方法。
(7)前記(6)に記載の方法で作製された、食品の製造過程で微生物菌体によりアクリルアミド前駆体を分解させてアクリルアミドを低減させたことを特徴とする低アクリルアミド食品。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、各種食品原料中に含まれるアクリルアミド前駆体を、食品原料が高温で加熱される前に,予め微生物菌体を用いて、食品素材の特性を損なうことなく特異的に分解し、それらを減少させ、食品素材を加熱した場合に生成するアクリルアミド含量を抑制することを特徴とするものである。本発明の方法で使用する微生物菌体としては、好適には、例えば、酢酸菌(例えば、Gluconobacter oxydans NBRC 12528)、パン酵母(市販品;ドライイースト)、ワイン酵母(市販品)、ビール酵母(市販品)、乳酸菌(Bacillus coagulance)が例示される。これらの微生物菌体は、古来から食品製造に利用される菌であり、安全性の面で問題がなく、また、変異原性でも問題がないものを選択基準として選択されたものである。
本発明は、上記基準を基に多くの微生物菌体の中から単純系及び複雑系による実験を探り返すことによって選択した酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母及び乳酸菌を、食品素材を加熱する前に予め各種食品素材(例えば、ポテトスナック原料)に作用させると、アクリルアミドの生成を抑制し得るといった、今までに全く知られていなかった新規知見に基づいて完成されたものである。本発明で、対象となる食品素材としては、多くの食品素材が対象となり、特に、ジャガイモ、グリーンアスパラ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ショウガ、オクラやゴボウなどが好適である。本発明では、食品素材、及び食品の種類等は、特に制限されないが、本発明で対象とされる食品は、食品の製造過程で、100℃以上の高温に加熱調理され、その過程で、アクリルアミドを生成する可能性のある食品を意味するものである。
次に、本発明で使用される微生物菌体について説明する。ここで、一例として、酢酸菌の培養方法の一例を説明すると、例えば、グリセリン0.5g、L−グルタミン酸ナトリウム0.5g、D−グルコース0.1g、酵母エキス0.1g、KHPO0.05g、KHPO0.05gを加え、水道水で100mlにしたものを500ml容坂口フラスコに入れ、酢酸菌(Gluconobacter oxydans NBRC 12528)を接種し、30℃で振とうしながら24時間前培養を行なう。次に、グリセリン2.5g、L−グルタミン酸ナトリウム2.5g、D−グルコース0.5g、酵母エキス0.5g、KHPO0.25g、KHPO0.25gを加え、水道水で500mlにする。それと前培養液全量を、21容三角フラスコに入れ、30℃で振とうしながら24時間本培養を行なう。その後、当該培養液を15000rpmで10分間遠心分離して菌体を採取し、冷蒸留水で良く洗浄して、15000rpmで10分間遠心分離して湿菌体を得る。
次に、乳酸菌の培養方法の一例を説明すると、例えば、グルコース0.5gと酵母エキス0.5gを加え、蒸留水で100mlにしたものを500ml容坂口フラスコに入れ、乳酸菌(Bacillus coagulance)を摂取し、50℃で振とうしながら15時間培養を行なう。その後、当該培養液を10000rpmで10分間遠心分離して菌体を採取し、冷蒸留水で良く洗浄して、15000rpmで10分間遠心分離して湿菌体を得る。しかし、本発明では、微生物菌体の培養方法、培養条件等は、任意に設定することが可能であり、特に制限されない。次に、菌体の形状は、湿菌体、顆粒状、凍結乾燥菌体が例示される。また、菌体の使用形態は、菌体を水に分散させて懸濁した状態で使用してもよいし、また、粉体で使用しでもよいが、食品素材に菌体を均一に分散させるには、懸濁状態で使用した方が好ましい。菌体を水に懸濁させて使用する場合の加水量としては、例えば、成形ポテトスナックのような場合、加水量は30%〜65%、好ましくは50%〜60%である。
菌体と食品を接触させる形態としては、成形ポテトスナックのような場合は、微生物菌体を懸濁させた水をポテトフレークに加え、混合したドウ状態、シート状態が好ましい。
スライスポテトやスチック状のポテトのような場合は、微生物菌体を水に分散させた懸濁液にスライスポテトやフライドポテトなとを浸漬する。次に、作用条件については、パン酵母の場合、反応温度は10℃〜50℃、好ましくは40℃、反応時間は0.5〜2.0時間、好ましくは2.0時間、菌体重は2〜20mg、好ましくは5〜10mg(ポテトフレーク2gを使用の場合)が例示される。しかし、本発明では、作用条件は、食品素材の種類、形態等に応じて、任意に設定することができる。
次に、微生物菌体による作用について考察すると、酢酸菌によるアクリルアミド低減作用は、膜結合型のグルコース脱水素酵素(GDH)やショ糖などの分解に関与する酵素によるものと考えられ、また、パン酵母や乳酸菌によるアクリルアミド低減作用は、ショ糖、グルコースやフラクトースなどの糖類の分解に関与する酵素やアスパラギンを分解する酵素によるものと考えられるが、単純系ではなく、各種成分が含まれる食品素材の系で、しかも、実際の食品製造プロセスにおける微生物菌体によるアクリルアミド低減の作用機構は未知の部分がある。本発明で、アクリルアミド前駆体とは、食品素材中に存在し、食品素材を100℃以上の高温に加熱調理した際に、アクリルアミドを生成する原因物質を意味する。単純系では、例えば、アクリルアミドは、アスパラギンとグルコース、フラクトース及びショ糖などと100℃以上で加熱したときに生成することが知られているが、各種成分が含まれる複雑系の食品素材では、これらに制限されるものではなく、アクリルアミド生成の原因物質の全てを意味する。
従来、アクリルアミドは、アスパラギンをグルコース、フラクトース及びショ糖などと加熱したときに生成することは知られているが、実際に、各種成分が含まれている食品素材の系において、特定の微生物菌体を利用して、アクリルアミドの生成を抑制し得ることを実証した例はこれまでなく、本発明によって、はじめて、確認されたものである。
本発明により、(1)食品中のアクリルアミドを低減できる、(2)安全性の面で全く問題のない方法を提供できる、(3)食品素材の特性を損なうことなく、アクリルアミド生成の原因物質を分解できる、(4)食品における発ガン性の可能性があるアクリルアミドの生成を抑制する方法を提供できる、(5)100℃以上に加熱された食品であっても、アクリルアミドの心配のない低アクリルアミド食品を製造し、提供できる、という格別の効果が奏される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)によるアクリルアミド含量の分析
アクリルアミドの測定にガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を使用した。この方法は、水−メタノール溶液で抽出したアクリルアミドを臭素で2,3−ジブロモプロピルアミドにジブロモ化し、酢酸エチルに転溶、濃縮後,トリエチルアミンで2−ブロモプロピルアミドにモノブロモ化にして、GC−MSで検出するものである。分析精度を上げるため、抽出時に1,2,3−13アクリルアミドを内部標準として加えた。
(2)抽出法
10ml容の蓋付スピッツ管に粉砕機で粉砕した試料2gを採取し、20%メタノール6mlと20mg/l内部標準0.1mlを加えた。室温で10分間振とう抽出したのち、遠心分離(3000rpm×10分)した。上澄み液をNo.5Bのろ紙でろ過した。次に、残査に20%メタノール6mlを加え、同様に振とう抽出した。遠心分離したのち、上澄み液をNo.5Bのろ紙でろ過した。得られた各々の上澄み液を合わせた。
次に、上澄み液を25%硫酸を加えてpH1以下にしたのち、臭化カリウム1gを加え、完全に溶かした。0.2mol/l臭素酸カリウム水溶液0.2mlを加え、混合後、5℃冷蔵庫で60分間放置した。その後、上記の溶液に1mol/lチオ硫酸ナトリウム水溶液を黄褐色が消失するまで加えた。水層に酢酸エチル4mlを加え、1 0分間振り混ぜたのち、遠心分離(3000rpm×5分)した。得られた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムをのせたろ紙に通過させ、100ml容のナス型フラスコにとった。同様の操作をもう一回繰り返した。酢酸エチル溶液をエバポレータで約0.5mlまで濃縮(乾固させない)したのち、トリエチルアミン40μlを加えた。その溶液を0.45μmのフィルターを付けたシリンジでろ過したのち、1mlに定容し、GC−MSに供した。
(3)GC−MS分析条件
GC−MS AutoMass System II(日本電子製)
カラム;DB−5 長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm(J&W製)
注入口;220℃
注入量;1μl
注入法;スプリットレス、パージオン2分、オフ0分
オーブン温度:50℃1分 → 10℃/分 → 260℃5分
イオン化法;EI
イオン源温度;210℃、インターフェース温度240℃
走査;SIM m/z 149、151、152、154
(4)アクリルアミドの定量
標準溶液の濃度に対して、標準溶液と内部標準溶液のピーク面積比からなる検量線を作成し、試料中のアクリルアミド濃度(ng/g)を求めた。
標準 m/z149〔12NO79Br〕又はm/z151〔12NO81Br〕
内部標準 m/z152〔13NO79Br〕又はm/z154〔13NO81Br〕
(5)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による糖類の分析
試料に含まれる蛋白質や多糖やオリゴ糖を、エタノールを用いて除去した。更に、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を通して金属イオンや塩類を除いた。このようにして精製された検液を高速液体クロマトグラフ(示差屈折検出器)で測定し、標準液を用いて検量線を作成し、濃度を求めた。
(6)抽出法
試料2gをトリオブレンダー粉砕器(トリオサイエンス製)のカップに採取し、精秤した。60%エタノール100mlを加えて30秒間磨砕した。その後、200ml容メスフラスコに移し、定容した。室温で15分間静置したのち、No.5Bろ紙でろ過し、得られたろ液20mlを受器にとり、エバポレータで約3mlまで濃縮した。次に、イオン交換樹脂アーバンライトIR120B(H)−HG(オレガノ製)、アーバンライトIRA−67(オレガノ製)を詰めたカラムに試料をのせた。溶出液は全て受器に受け、更に、イオン交換水50mlをカラムに流した。溶出液をエバポレータで濃縮し、乾固させた。蒸留水2mlを加えて溶解させ、0.45μmのフイルターを通し、HPLCに供した。
(7)HPLCの分析条件
HPLC東ソー8020シリーズ
カラム;Asahipak NH2P−50(250mm×4.6mm)(昭和電工製)
オーブン温度;35℃
カラム流量;0.8ml/min
移動相:75%(v/v)アセトニトリル水
注入量;10μl
(8)定量
グルコース、フラクトース及びショ糖の各々標準溶液の濃度に対して、ピーク面積からなる検量線を作成し、試料中の各種の糖類の濃度(mmol/試料100g)を求めた。
(9)アクリルアミド低減試験
スピッツ管にアスパラギン1.76×10−4molとグルコース1.76×10−4molを採取し、少量の蒸留水に溶かした。それに、酢酸菌湿菌体(gluconobacter oxydans NBRC 12528)を20,50,100mg加えたのち、蒸留水で総量2.0mlにした。直ちに40℃で2時間反応させた。その後、磁性皿に移したのち、セライト545(ナカライ製)を2g添加して全体に広げ、蒲板状にした。その後、140℃で15分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験として、スピッツ管にアスパラギン1.76×10−4molとグルコース1.76×10−4molを採取し、蒸留水2.0mlに溶かした。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。また、比較実験としては、スピッツ管にアスパラギンとグルコースを同量採取し、更に、100℃10分間加熱失活させた酢酸菌湿菌体100mgを加え、蒸留水で総量2.0mlにした。以後の操作は同様に行った。
上記の実験結果を表1に示した。酢酸菌を作用させることにより、アクリルアミドが低減されることが分かった。
Figure 2005192436
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、酢酸菌湿菌体を20,50,100mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、40℃で2時間反応させた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を表2に示した。酢酸菌を作用させることにより、ポテトフレークにおけるアクリルアミドが低減することが分かった。
Figure 2005192436
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、パン酵母(ドライイースト)(日清フーズ(株))を2,5mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、40℃で2時間反応させた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を表3に示した。パン酵母を作用させることにより、ポテトフレークにおけるアクリルアミドが低減することが分かった。
Figure 2005192436
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、乳酸菌湿菌体(通商産業省工業技術生命工学工業技術研究所に平成9年6月3日付けでFERM BP−5958として寄託した)を20,50mgを含んた蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、40℃で2時間反応させた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を表3に示した。乳酸菌を作用させることにより、ポテトフレークにおけるアクリルアミドが低減することが分かった。
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、ワイン酵母(輸入元;(株)モザイク)5mgやビール酵母(輸入元;(株)モザイク)5mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、40℃で2時間反応させた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては 磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を表4に示した。ワイン酵母やビール酵母を作用させることにより、ポテトフレークにおけるアクリルアミドが低減することが分かった。
Figure 2005192436
本実施例では、微生物菌体を用いた新しいアクリルアミドの低減化方法を確立するために、菌体の調達のし易さやハンドリンクなとの点で優位なパン酵母に絞り、アクリルアミドを低減化するための最適条件(反応温度、反応時間、菌体重)を求めた。
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、パン酵母(ドライイースト)5mgを含んた蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、アクリルアミドの低減化に及ぼす温度の影響を調べるために、シート状のものを20、30、40及び50℃で2時間反応させた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を図1に示した。
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、パン酵母(ドライイースト)5mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、反応温度を40℃に設定し、反応時間を0,0.5,1.0,1.5,2.0時間に変えて、アクリルアミドの低減化に及ぼす反応時間の違いによる影響を調べた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を図2に示した。
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、パン酵母(ドライイースト)0、2、5、10及び20mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、40℃で2時間反応させ、アクリルアミドの低減化に及ぼす菌体重の違いの影響を調べた。その後、140℃で25分間加熱したのち、アクリルアミド含量を測定した。
対照実験としては、磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、蒸留水2.0mlを加えて混合した。直ちに40℃で2時間反応させ、以後の操作は同様に行なった。
上記の実験結果を図3に示した。
本実施例では、微生物菌体、ここではパン酵母を用いることによるポテトフレーク中のアクリルアミドの低減化に関して、パン酵母がどのように作用してアクリルアミドを低減しているのかについて検討した。そこで、アクリルアミドの生成に影響を及ぼす各種原料中に含まれるグルコース、フラクトース及びショ糖の挙動について調べた。
磁性皿にポテトフレーク2gを採取し、パン酵母(ドライイースト)5mgを含んだ蒸留水2.0mlを加えて混合した。パスタマシンでシート状に成形したのち、反応条件として40℃で0,0.5,1.0,1.5,2.0時間作用させ、経時的にその間の糖含量を測定した。
上記の実験結果を図4に示した。
以上詳述したように、本発明は、食品中のアクリルアミドの低減方法に係るものであり、本発明により、各種原料中に含まれるアクリルアミド前駆体を、食品素材が高温で加熱される前に、予め微生物菌体を用いて分解して、それらが減少することで、食品素材を100℃以上の高温で加熱した場合でも生成するアクリルアミド含量を抑制できる。使用する微生物は、酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母、乳酸菌であり、古来から食酢製造、製パン、ワイン・ビール醸造及び乳酸発酵などに利用されており安全性が高い。これらの微生物菌体を用いてアクリルアミドを低減する本発明の方法は、食品素材の特性を損なうことなく、安価で大量処理するのに好適な方法である。本発明により、低アクリルアミド食品が提供される。
パン酵母5mgを用いたときの反応温度の違いによるアクリルアミドの低減効果を示す。 パン酵母5mgを用いたときの反応時間の違いによるアクリルアミドの低減効果(反応温度;40℃)を示す。 パン酵母5mgを用いたときの菌体量の違いによるアクリルアミドの低減効果(反応温度;40℃、反応時間;2時間)を示す。 パン酵母5mgをポテトフレークに作用させた時の各種糖類の経時変化(反応温度;40℃)を示す。

Claims (7)

  1. 食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を抑制することにより食品中のアクリルアミドを低減する方法であって、食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させることを特徴とするアクリルアミドの低減方法。
  2. 食品素材が、ジャガイモ、グリーンアスパラガス、サヤエンドウ、サヤインゲン、ショウガ、オクラ、及びゴボウの群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 食品が、ポテトスナック、フライドポテト、ビスケットである、請求項1に記載の方法。
  4. 微生物菌体が、酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母、及び乳酸菌の群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
  5. 食品素材に微生物菌体を添加し、分解反応が可能な状態で、10〜50℃で、0.5〜2時間反応させる、請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の方法を使用してアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品を製造する方法であって、
    (1)食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させる、
    (2)上記食品素材を用いて、常法により、高温で加熱して加工食品とする、
    (3)上記(1)〜(2)により、アクリルアミドの生成が抑制された食品を製造する、ことを特徴とするアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品の製造方法。
  7. 請求項6に記載の方法で作製された、食品の製造過程で微生物菌体によりアクリルアミド前駆体を分解させてアクリルアミドを低減させたことを特徴とする低アクリルアミド食品。
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