JP2005192406A - デンドリマー高分子化合物を用いた細胞固定化方法、細胞培養方法および細胞評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 培養中に経時的に変化する細胞挙動を蓄積した状態で観察できる細胞評価方法を実現し、再生医療に向けた組織培養プロセスの設計に役立てる。
【解決手段】 末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種することを特徴とする細胞固定化方法とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種することを特徴とする細胞固定化方法とする。
【選択図】 図1
Description
この出願の発明は、細胞の固定化方法、細胞の培養方法および細胞の評価方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、再生医療等において有用となる細胞の固定化方法と、高次元の細胞培養方法、並びに非襲撃的な細胞の評価方法に関するものである。
近年、組織工学の飛躍的な進展により,ヒトの皮膚や軟骨等の細胞を分離・培養し、in vitroで組織の再構築を行った後、患者の患部に移植する再生医療技術が実現している。しかし、現在、培養組織作製法のほとんどは手作業によるものであり、その操作基準は作業者の経験に大きく依存しているのが実情である。
患者自身の細胞を用いた移植、すなわち自家培養移植では、まず、患者から最小必要量の組織片を採取し、目的とする細胞を酵素処理により分離する。次に、得られた細胞を小型の培養容器に播種し、初代培養を行う。このとき、培養面への接着を伴う足場依存性細胞は培養容器内において単層状に増殖する。細胞が培養容器のほぼ全面を覆うと、接触阻害により細胞分裂が停止する。そのため、酵素処理により培養面から細胞を剥離して再懸濁し、他の複数の培養容器に再播種する必要がある。再播種された細胞は、再び培養容器面に接着し単層状に増殖するが、この一連の継代培養では細胞寿命による継代の限界が存在する。さらに、これらの継代培養された細胞から組織を再構築させるために、適切な回数の継代培養を行った後、コラーゲンスポンジなどのスキャフォールド(足場)の中に細胞を包埋し、自己組織化(分化)を誘導して三次元的な組織培養を行う必要がある。そして、組織培養により目的とする組織に応じた力学的、生理的な機能を得た後、患者の患部に培養組織を移植し、治癒を目指す。
以上のような組織工学製品の製造工程では、原料は患者自身もしくはドナー由来の細胞であるが、生成物そのものが製品となるため、精製工程を経ることができないという問題がある。そのため、製品の品質向上を伴った細胞培養および組織培養を行わなければならない。したがって、再生医療における組織培養は、次のような特徴を有し、微生物培養とは多くの点で異なるといえる:(a)患者あるいは採取部位ごとに細胞の活性や寿命が変化しやすく、また採取した原料細胞も実質的には不均質である;(b)培養容器内では、気・液・固の各相が不均一である;(c)多回の回分操作のため、途中で細胞の剥離、接着、伸展増殖、多層化など複数の操作を含み、これらは細胞の状態を把握しながら実施されなければならない;(d)個々の患者に対応した生産スケジュールを立てる必要がある;(e)全ての工程でクロスコンタミネーションなどのヒューマンエラーは許されない。(非特許文献1〜3)
したがって、組織培養は、テーラーメイド的な生産プロセスであり、プロセスの安定化を実現する上では、培養中の細胞を定量的に評価し、それらの情報に基づくプロセル設計が望まれる。また、このような細胞培養中の定量的評価には、非破壊、非襲撃性の観察・評価方法が必須である。そして、このような非襲撃性の細胞評価方法を実現するためには、細胞固定方法、細胞培養方法、および細胞評価方法が統合される必要がある。
したがって、組織培養は、テーラーメイド的な生産プロセスであり、プロセスの安定化を実現する上では、培養中の細胞を定量的に評価し、それらの情報に基づくプロセル設計が望まれる。また、このような細胞培養中の定量的評価には、非破壊、非襲撃性の観察・評価方法が必須である。そして、このような非襲撃性の細胞評価方法を実現するためには、細胞固定方法、細胞培養方法、および細胞評価方法が統合される必要がある。
しかし、これまでの細胞評価方法は、いずれも破壊的、かつ襲撃的なものであった。再生医療における培養組織の生産プロセスでは、原料が細胞であるため、それを評価のために消費することは生産性を低下させることに繋がる。したがって、培養中の細胞に接触することなく細胞を観察・評価する方法、あるいは評価後の細胞を再度原料として使用することを可能とするような細胞評価方法が望まれていた。
細胞評価方法については、数多くの研究がなされており、近年では創薬発見に欠かすことのできないHigh Throughput Screening System(HTS)が実用化されている。HTSは付設された検出器の種類に応じて、プレート内で培養された細胞に評価薬物を添加し、遺伝発現、細胞増殖活性などを測定できる方法であり、自動的に薬物効果を評価できる点で有用である。特に検出器として顕微鏡を備えたHTSでは、形態変化を観察することができ、従来の観察のみの画像から、数値定量化へと情報の高度化を目指すことができる。また、最近では、スクリーニング効率を求めたHTSだけではなく、一度の実験からの情報量を重視して2次スクリーニングやターゲットバリデーションなどのプロセスに威力を発揮するHigh Content Screening(HCS)システムも注目されている。HCSは複数の蛍光色素で別々に標識された複数の細胞内ターゲットが、刺激によりどのように変化するかを顕微鏡で捉え、数値化してスクリーニングする装置であり、より高次な定量化情報を取得することができる。(非特許文献4〜6)
しかし、これら従来の細胞評価方法は、いずれも蛍光観察によるものであり、顕微鏡観察ではステージが動くため浮遊物が動き、浮遊細胞や足場依存性細胞の細胞分裂直後の観察には不向きであった。また、一般に毒性の高い蛍光色素を使用するため、細胞そのものが死滅してしまい、同一細胞の継時的な変化を追尾することが不可能であった。最近では蛍光タンパクを、遺伝子導入により目的とする細胞内器官に発現させ、細胞を自家蛍光させる技術が発展しており、これにより継時的な変化を観察することが可能となったが、細胞が全て製品に使用される組織培養プロセスのための細胞評価としては不向きであった。
しかし、これら従来の細胞評価方法は、いずれも蛍光観察によるものであり、顕微鏡観察ではステージが動くため浮遊物が動き、浮遊細胞や足場依存性細胞の細胞分裂直後の観察には不向きであった。また、一般に毒性の高い蛍光色素を使用するため、細胞そのものが死滅してしまい、同一細胞の継時的な変化を追尾することが不可能であった。最近では蛍光タンパクを、遺伝子導入により目的とする細胞内器官に発現させ、細胞を自家蛍光させる技術が発展しており、これにより継時的な変化を観察することが可能となったが、細胞が全て製品に使用される組織培養プロセスのための細胞評価としては不向きであった。
さらに、従来の細胞評価方法によって得られる情報は、ある特定の時間における観察により得られる静的評価、または細胞の動きを継時的に観察する動的評価であるが、前者では単純な細胞形態のみの観察となるため、得られるデータの次元としては低くなるという問題があり、後者では、得られるデータの次元は高くなるが、装置が複雑でかつ高価になり汎用性が低いという問題があった。
筏義人(編)「再生医工学」、化学同人、京都(2001) 大野典也、相澤益男(編)「再生医学」、エヌ・ティー・エス、東京(2002) 日本組織培養学会(編)「組織培養の技術(第3版)」、朝倉書店、東京(1996) Catherine Liptrot, Drug Discovery Today (DDT), (2001), 6(16), 832-834 Rober A. Blake, Current Opinion in Pharmacology, (2001), 1, 533-539 Taylor, D.L. et al., Current Opinion in Biotechnology, (2001) 12, 75-81 Spravchikov, N., et al.: Diabetes, 50, 1627-1635 (2001) Barrandon, Y. and Green, H.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 230-2306 (1987)
筏義人(編)「再生医工学」、化学同人、京都(2001) 大野典也、相澤益男(編)「再生医学」、エヌ・ティー・エス、東京(2002) 日本組織培養学会(編)「組織培養の技術(第3版)」、朝倉書店、東京(1996) Catherine Liptrot, Drug Discovery Today (DDT), (2001), 6(16), 832-834 Rober A. Blake, Current Opinion in Pharmacology, (2001), 1, 533-539 Taylor, D.L. et al., Current Opinion in Biotechnology, (2001) 12, 75-81 Spravchikov, N., et al.: Diabetes, 50, 1627-1635 (2001) Barrandon, Y. and Green, H.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 230-2306 (1987)
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、培養中に経時的に変化する細胞挙動を蓄積した状態で観察できる細胞評価方法を実現し、再生医療に向けた組織培養プロセスの設計に役立てることを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、培養面に細胞を固定化する方法であって、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種することを特徴とする細胞固定化方法を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、デンドリマー高分子化合物がポリイミノアミンデンドリマーである前記の細胞固定化方法を、第3には、細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質が、アミノ酸、糖、イオン、薬剤、Gタンパク結合型受容体、イオンチャンネル型受容体、チロシンキナーゼ結合型受容体、および光受容体からなる群より選択される物質である前記いずれかの細胞固定化方法を、さらに、第4には、細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質がグルコースである前記いずれかの細胞固定化方法を提供する。
この出願の発明は、第5には、前記いずれかの方法により培養面に細胞を固定化した後、細胞培養を行うことを特徴とする細胞培養方法を提供する。
さらに、この出願の発明は、第6には、細胞の細胞骨格形成能を評価するための方法であって前記いずれかの方法により培養面に細胞を固定化した後、培養し、特定時間経過後の細胞の円形度を測定することを特徴とする細胞評価方法を提供する。
第7には、この出願の発明は、物質の細胞膜への結合を阻害する薬剤をスクリーニングするための方法であって、前記いずれかの方法において、末端に結合阻害を調べたい物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種した後、スクリーニング対象薬剤の共存下で細胞培養を行い、細胞の円形度を測定して、細胞の円形度が高い場合に、該薬剤を細胞膜と物質の結合阻害剤と判定する薬剤のスクリーニング方法を提供する。
そして、この出願の発明は、第8には、培養面に細胞を固定化するためのキットであって、培養容器の内表面が末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で修飾されていることを特徴とする細胞固定化キットを提供する。
上記第1〜第4の発明の細胞固定化方法では、培養面を、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で修飾することにより、培養面に凹凸が形成され、かつ、細胞膜が認識、結合できる結合サイトが高密度で形成される。したがって、細胞膜とデンドリマー修飾面との接触面積が増え、接着点での培養面への細胞接着だけでなく、細胞膜の物質摂取による強固な細胞固定が可能となる。
デンドリマー高分子化合物は、培養面に固相合成でき、デンドロンユニットの構造や世代数を調整することにより、デンドリマー修飾面の凹凸の深さをナノメートルオーダーで制御できる。また、デンドリマー高分子化合物の世代数とともに、末端への物質導入量を調整することにより、細胞結合サイトの密度を制御することも可能になる。
さらに、デンドリマー高分子化合物の末端に結合される物質を変更することにより、該物質による細胞内シグナル伝達を精度高く評価できる。また、このような方法により固定化された細胞を用いることにより、該物質の細胞膜への結合を阻害する薬剤のスクリーニングも可能となる。中でも、細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質としてグルコースを有するデンドリマーでは、細胞構成物質以外の第3物質の導入を伴わないため、細胞への負担が少なく、固定化された細胞を剥離した後も再利用が可能となる。
上記第5の発明の細胞培養方法では、前記の方法により細胞を固定化して培養を行うことにより、再生医療における組織培養などへの応用が可能となる。このような細胞培養方法は、角化細胞、繊維芽細胞、軟骨細胞などの足場依存性細胞や、神経幹細胞、リンパ細胞などの浮遊系細胞を含むあらゆる動物細胞に適用でき、再生医療に関わる様々な細胞の培養に応用できる。
上記第6の発明の細胞評価方法では、前記の方法により固定化された細胞を培養し、特定時間経過後の細胞の円形度を測定することにより、細胞骨格形成能を定量評価することが可能となる。細胞の円形度は、光学顕微鏡による観察や画像解析等の非襲撃性の測定手段により測定できるものであるため、評価後の細胞を再利用することが可能である。再生医療においては、原料となる細胞は患者自身あるいは提供者から採取されたものであり、一般に量が限られている。また、原料細胞の継代培養によって得られる細胞量も限られているため、この発明の細胞評価方法は有用となる。
上記第7の発明のスクリーニング方法では、まず、結合阻害を調べたい物質を末端に有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種してスクリーニング対象薬剤の共存下で培養する。次いで、得られる細胞の円形度を測定することにより、細胞膜と物質の結合を阻害する物質をスクリーニングできる。細胞の円形度が高い場合には、細胞膜がデンドリマー末端の物質を摂取できず、伸張しなかったことを意味することから、このとき共存させた薬剤を結合阻害剤と判定することができる。
上記第8の発明の細胞固定化キットでは、培養容器の内面が、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で修飾されているため、培養面が凹凸および細胞膜が認識、結合できる高密度の結合サイトを有する。したがって、このようなキットを用いて細胞を播種すれば、接着点での培養面への細胞接着だけでなく、細胞膜の物質摂取による強固な細胞固定が可能となる。このようなキットは、冷蔵庫で数ヶ月間の保存が可能である。
この出願の発明者らは、再生医療における組織培養プロセスを安定化する上で求められる細胞の非襲撃的定量的評価方法を実現するために、細胞固定化方法、細胞培養方法、および細胞評価方法の統合が必要であると考えた。そして、細胞評価の指標として、細胞移動能力に注目した。
細胞は、液体培地に懸濁された状態では、一般に丸い形状をしているが、一度基質に結合点を持つと、次第に結合を強める突起物を外に出し、基質上に平らに広がることが知られている。また、細胞は、細胞先端のラメリポジウム(lamellipodium)におけるF−アクチン重合による細胞伸展と、その反対側でのF−アクチン切断による細胞退縮を繰り返すことにより移動することが知られている。F−アクチンが束状になったストレスファイバーは、細胞と培養面の接点である接着点(focal adhesion)において細胞骨格を形成する。伸展時はこの接着点が形成され、退縮時には破壊される。
細胞移動能力の評価には、継時変化の追尾が必要であり、動的評価方法が求められる。しかし、前記のとおり、動的評価には、装置が複雑でかつ高価になり汎用性が低いという問題があった。一方、細胞形態のみを観察できる静的評価は、簡便ではあるが情報量に乏しく、細胞移動評価には不向きである。
そこで、この出願の発明者らは、準動的評価を行うための培養面を設計することを試みた。すなわち、細胞の一部を培養面に強く固定化することができれば、細胞の退縮が阻止され、伸展のみが可能となり、細胞移動が時間積分され細胞形態の変化を静的評価方法で評価できると考えた。
この出願の発明の細胞固定化方法は、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物により培養面を修飾し、細胞を播種して細胞を固定化するものである。
この出願の発明の細胞固定化方法において、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物は、どのようなものであってもよく、デンドロンユニットの構造やデンドリマーの世代数はとくに限定されない。具体的には、
次式(I)
次式(I)
(ただし、nはデンドリマーの世代数を示す1以上の整数であり、xは培養面の結合性基である)
で表されるポリイミノアミンデンドリマーや、公知のポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)が例示される。
で表されるポリイミノアミンデンドリマーや、公知のポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)が例示される。
このようなデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾する方法としては、培養面にデンドリマーを直接固相合成する方法が挙げられる。例えば、培養面がガラスの場合には、ガラス表面のOH基を起点としてデンドリマーをDivergent法により成長させてもよいし、ガラス表面のOH基にConvergent法で合成したデンドリマーを結合させてもよい。さらに、ガラス表面のOH基にリンカーを結合させ、このリンカーを介してデンドリマーを固相合成してもよい。
また、デンドリマー高分子化合物の末端に結合される物質は、細胞との結合リガンドとして作用するものであり、細胞のトランスポートチャンネルを標的としたものであればよく、とくに限定されない。トランスポーターを介して取り込まれる物質、例えば、グルタミン酸に代表されるアミノ酸;グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの糖;Na+、Ca+、K+、Cl-などのイオン;OAT類やOCT類を対象とする薬剤であってもよいし、レセプターを対象とした物質、例えば、Gタンパク結合型受容体;イオンチャンネル型受容体;チロシンキナーゼ結合型受容体;光受容体であってもよい。特に,細胞の増殖に関与する上皮細胞増殖因子(EGF)、角化細胞増殖因子(KGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子などの増殖因子群に対する受容体や、インターロイキン(IL)類を含むサイトカイン群の受容体、細胞接着受容体のインテグリン、ステロイドホルモン受容体、モルヒネ受容体、免疫に関与する細胞の抗原受容体、Fc受容体、補体受容体など、神経伝達に関与するαおよびβ受容体など、また光に関してチトクロム、フィトクロム、ロドプシンなどの光受容体などが例示される。
これらの物質の中でも、とくにグルコースは、細胞表面のグルコーストランスポーターに摂取されるため、培養面への細胞の固定化が可能となる上、本来の細胞特性を利用した形であることから、デンドリマー高分子化合物の末端に結合される細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質として好ましい。
なお、これらの物質をデンドリマー高分子化合物末端に結合する方法はとくに限定されず、通常の化学反応により結合させる方法を採用すればよい。
この出願の発明の細胞固定化方法において使用されるデンドリマー高分子化合物は、1種類に限定されず、目的に応じて複数種類を段階的に培養面に固相合成してもよい。つまり、一つの培養面に複数種のデンドリマーが修飾されていてもよい。また、デンドリマー高分子化合物の末端に結合される物質も、1種類に限定されず、1つのデンドリマーの末端に複数種の物質を個別に結合したり、デンドリマー毎に異なる物質を結合させたりしてもよい。
図1に示されるように、このようにして得られたデンドリマー修飾面(1)では、多数の凹凸が形成される。すなわち、培養面(2)にデンドリマー高分子化合物(11)が存在することによる凹凸が存在するようになる。このような凹凸の深さは、デンドリマー高分子化合物におけるデンドロンユニットの構造や世代数を調整することにより、ナノメートルオーダーで制御することができる。例えば、前記のポリイミノアミンデンドリマーでは、第4世代のデンドリマーで深さ約4.5 nmの凹凸が形成される。
一方、デンドリマー末端に結合された物質(12)は、細胞膜が認識、結合できる結合サイトとして作用するが、デンドリマー修飾面(1)に高密度で存在することになる。このような結合サイトの密度は、デンドリマー高分子化合物(11)の世代数とともに、末端への物質(12)導入量を調整することにより制御することができる。
細胞接着は、細胞膜貫通型の接着タンパクであるインテグリンが、培養面上に吸着しているフィブロネクチンなどの接着タンパクに接することにより生じることが知られている。また、細胞が培養面に接着するとき、細胞の下側の表面は培養面に一様に接するのではなく、ちりばめられたような独立した部位、すなわち、接着点付近でのみ培養面に接しており、その他のところでは細胞と培養面の間に数十nmほど隙間が存在することが知られている。
この出願の発明の細胞固定化方法では、前記のとおりデンドリマー修飾面(1)に凹凸が存在するため、細胞(3)が播種された際には、細胞膜(31)とデンドリマー修飾面(1)との接触面積が増え、接着点(32)での培養面(2)への細胞接着だけでなく、細胞膜(31)の高密度な物質(12)摂取による強固な細胞固定が可能となる。
このようにトランスポートチャンネルを標的にした物質を細胞に摂取させ、固定化する方法は、細胞構成物質による固定化方法でありながら適度な細胞固定を実現でき、細胞の再利用を必須とする組織培養プロセスでの細胞評価に向けた細胞固定化方法として有用である。
この出願の発明では、また、以上のとおりの方法により固定化された細胞を培養する方法が提供される。このような細胞培養方法では、前記のデンドリマー修飾面(1)に細胞(3)を播種し、適当な培養液中で培養を行うものであり、培養液の種類、培養温度、時間、雰囲気等については、対象となる細胞に応じて適宜変更できる。このような細胞培養方法は、角化細胞、繊維芽細胞、軟骨細胞などの足場依存性細胞や、神経幹細胞、リンパ細胞などの浮遊系細胞を含むあらゆる動物細胞に適用でき、再生医療に関わる様々な細胞の培養に応用できるものである。
さらに、この出願の発明では、細胞の細胞骨格形成能を評価するための方法が提供される。このような評価方法では、前記いずれかの方法により培養面に細胞を固定化した後、培養し、特定時間経過後の細胞の円形度を測定する。細胞の円形度は、後述の実施例にも示されるように、光学顕微鏡写真を撮影し、画像解析により細胞の面積と外周を求めることにより計算できる。このような測定方法は、非襲撃的であるため、評価後の細胞を再利用することも可能となる。したがって、原料細胞の量が限られている再生医療における組織培養プロセスなどでは、このような細胞評価方法は有用といえる。
さらに、この出願の発明では、物質の細胞膜への結合を阻害する薬剤をスクリーニングするための方法が提供される。このようなスクリーニング方法では、デンドリマー高分子化合物の末端に、結合阻害を調べたい物質を結合させ、このデンドリマー修飾面に細胞を播種した後、スクリーニング対象薬剤の共存下で細胞培養を行い、細胞の円形度を測定する。細胞の円形度は、細胞がデンドリマー修飾面に強く固定化されて伸張した場合に低く、細胞膜がデンドリマー末端の物質を摂取できずに伸張しなかった場合に高い。したがって、高い円形度が得られた場合に使用された薬剤が、細胞膜と物質の結合阻害剤として有効なものと判定される。
従来のHCS実験のように、液相中に物質を投入して共存させた場合、物質をよほど高濃度にしない限り、物質が細胞膜に摂取される頻度が低くなる恐れがある。一方、細胞の培養面にあらかじめ物質を固定化する方法では、細胞表面での物質の局所濃度を高めた状態といえるため、効率的な刺激伝達が期待される。しかし、従来のように、培養面に平坦に物質を固定化し、その上に細胞を播種した場合には、前記の細胞接着の特性により、細胞に摂取される物質は接着点付近に存在するもののみとなる。一方、この出願の発明のスクリーニング方法では、細胞が凹凸を有する培養面、すなわち、結合阻害を調べたい物質により高密度に覆われたデンドリマー修飾面に固定化されているため、細胞膜と物質の接触頻度が向上し、物質による刺激伝達がより効率的に行われるようになる。
この出願の発明では、また、前記の細胞固定化方法において使用される内表面が末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で修飾された培養容器を、細胞固定化キットとして提供する。この出願の発明者らの研究によれば、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で被覆された状態の培養容器は、冷蔵庫で数ヶ月間の保存が可能である。したがって、このようなキットを使用して細胞を播種すれば、接着点での培養面への細胞接着と細胞膜の物質摂取により強固に細胞を固定でき、細胞培養や細胞評価への適用が可能となる。
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
<参考例1> デンドリマーの固相合成
(a) 75μmolのカリウムt-ブトキシド(以下t-BuOKとする)を25 cm2のT−フラスコ(Nunclon Delta Flask; Nunc, Roskilde, Denmark)に添加し、室温で1時間静置した後、t-BuOK溶液を取り除いた。
(a) 75μmolのカリウムt-ブトキシド(以下t-BuOKとする)を25 cm2のT−フラスコ(Nunclon Delta Flask; Nunc, Roskilde, Denmark)に添加し、室温で1時間静置した後、t-BuOK溶液を取り除いた。
(b) 次いで、360 μmolのグルタルアルデヒド水溶液を各フラスコに添加し、室温で1時間静置した。グルタルアルデヒド溶液を取り除き、滅菌水でフラスコ内を3回洗浄した。
(c) さらに、360μmolのトリス(2−アミノエチル)アミンの溶液(1 N NaOHによりpH 9.0に調整)(18.0 ml)を各々フラスコに添加し、室温で1時間静置した後、フラスコ内を滅菌水にて2回洗浄した。
これら(b)および(c)の工程を繰り返すことにより、デンドリマーの世代数を高めた。さらに、得られたデンドリマーの末端にグルコース(細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質としてのリガンド分子)を、次の手順により結合させた。
(d) 各フラスコに100 nmolのグルコース溶液を添加し、次いで各フラスコに500 nmolの水素化ホウ素ナトリウムを添加した。さらに、フラスコ内を滅菌水で3回洗浄した。
<実施例1> デンドリマーを用いた細胞の固定化および培養
(1)培養方法
テロメラーゼにより不死化させたヒト角化細胞(hTERT-HME1)を凍結細胞としてClontec Laboratories, Inc.(CA, USA)より購入した。バイアル中の細胞は、販売者の指示に従い解凍し、末端にグルコースを有するデンドリマーで修飾した25 cm2のT−フラスコ(Nunclon Delta Flask; Nunc, Roskilde, Denmark)を用いて、無血清培養液(HuMedia-KG2; クラボウ株式会社)中、5 % CO2下、37℃で培養した。
<実施例1> デンドリマーを用いた細胞の固定化および培養
(1)培養方法
テロメラーゼにより不死化させたヒト角化細胞(hTERT-HME1)を凍結細胞としてClontec Laboratories, Inc.(CA, USA)より購入した。バイアル中の細胞は、販売者の指示に従い解凍し、末端にグルコースを有するデンドリマーで修飾した25 cm2のT−フラスコ(Nunclon Delta Flask; Nunc, Roskilde, Denmark)を用いて、無血清培養液(HuMedia-KG2; クラボウ株式会社)中、5 % CO2下、37℃で培養した。
トリパンブルー染色により染色生細胞の数を数え、生存細胞の培養サイズをX0 = 0.5×104 cells/cm2に設定した。
フラスコにおける培養液の深さが約4 mmに保持されるようにし、使用後の培養液は72時間毎に全量交換した。フラスコ底面における細胞が80 % confluentとなったところで0.1 %トリプシン1:250と0.02 % EDTA(Sigma Aldrich, St. Louis, MO, U.S.A.)で処理し、遠心分離(200 g, 25℃)により回収した。
以上の操作を繰り返し、継代培養を行った。
(2)デンドリマー世代数と細胞の伸張度
角化細胞を、末端にグルコースを有する世代数1〜5のデンドリマーを介してフラスコ内表面に固定化し、デンドリマー世代数と細胞の伸張の関係を調べたところ、世代数3のデンドリマーを介した場合に、細胞伸張の割合が大きくなることが確認された。
(2)デンドリマー世代数と細胞の伸張度
角化細胞を、末端にグルコースを有する世代数1〜5のデンドリマーを介してフラスコ内表面に固定化し、デンドリマー世代数と細胞の伸張の関係を調べたところ、世代数3のデンドリマーを介した場合に、細胞伸張の割合が大きくなることが確認された。
そこで、以下の実施例では、世代数4のデンドリマーを用いて細胞の固定化および培養を行った。
<実施例2>
実施例1の方法により培養されたヒト角化細胞を、フラスコ底面の3箇所で、光学顕微鏡に配設された8ビットCCDカメラ(東京電子工業株式会社;品番CS8330)により撮影した。細胞濃度を記録し、増殖速度を概算した。
<実施例2>
実施例1の方法により培養されたヒト角化細胞を、フラスコ底面の3箇所で、光学顕微鏡に配設された8ビットCCDカメラ(東京電子工業株式会社;品番CS8330)により撮影した。細胞濃度を記録し、増殖速度を概算した。
また、投影面積(Ac)および各細胞の外周(Lp)を、IMAQ Vision Builder(National Instruments, Austin, TX, U.S.A.)の線−描画ツールを用いて求め、個別細胞の細胞形態を円形度として次式
により計算した。
円形度は、識別可能なすべての細胞(30〜138 cells)について測定した。
同様に、表面をデンドリマーで修飾していないT−フラスコを用いた以外は実施例1と同様の方法で培養したヒト角化細胞、および末端グルコースを有さないデンドリマーで修飾したT−フラスコを用いた以外は実施例1と同様の方法で培養したヒト角化細胞についても、個別細胞の円形度を測定した。
図2に、各系における円形度の経時変化を示した。また、図3に、時間毎に撮影された個別細胞の写真を示した。
末端グルコースを有するデンドリマー修飾面に固定化、培養された細胞は、時間の経過に伴い円形度が低下し、細胞形態が長く引き延ばされた状態になることが観察された(図3c)。このように円形度の小さい細胞では、細胞運動の活発な細胞がグルコースを認識、摂取し、細胞膜がデンドリマーに結合したために見かけの細胞形態が長く引き延ばされたものとなったと考えられる。
一方、デンドリマー未修飾面では、引き延ばされたような細胞形態はほとんど観察されず(図3a)、経時的な円形度変化も0.7付近で推移した(図2a)。
そこで、細胞接種1日後における各培養面での円形度頻度分布を図4に示した。
末端グルコースを有さないデンドリマー修飾面に固定化された細胞に比べ、末端グルコースを有するデンドリマー修飾面に固定化された細胞では、円形度の小さい細胞の頻度が増加していた(p = 0.72)。一方、デンドリマー修飾されていないフラスコ底面および末端グルコースを有さないデンドリマーで修飾したフラスコ底面では、円形度の小さい細胞の頻度が増加していた(p = 0.00)。
以上の結果より、末端にリガンドを有するデンドリマーを介して固定化、培養された細胞は、培養容器に接着し、広がることが明らかになった。
<実施例3>
Spravchikovらは、角化細胞の細胞膜にインスリン依存性のグルコーストランスポーターが存在することを報告している(非特許文献7)。そこで、実施例1同様に、フラスコ内表面に末端にグルコースを有するデンドリマーを固相合成し、培地としてインスリンを除去した培地を用いて、細胞のグルコース摂取を阻害した条件での培養を行った。
<実施例3>
Spravchikovらは、角化細胞の細胞膜にインスリン依存性のグルコーストランスポーターが存在することを報告している(非特許文献7)。そこで、実施例1同様に、フラスコ内表面に末端にグルコースを有するデンドリマーを固相合成し、培地としてインスリンを除去した培地を用いて、細胞のグルコース摂取を阻害した条件での培養を行った。
実施例2の方法と同様に、培養された個別細胞の細胞形態を円形度として求めた。
その結果、円形度の平均値は、通常培地で0.43であったものの、インスリン除去培地では0.59であった(p = 0.00)。すなわち、同じように末端グルコースを有するデンドリマーを介して細胞を固定化、培養した場合でも、インスリンを除去した培地で培養された細胞では、円形度の小さな細胞が減少していた。
これは、インスリンが存在しないことにより細胞膜上のグルコーストランスポーターの発現が減少し、細胞がグルコースを摂取できなくなったために細胞の接着および広がりが阻害されたためと考えられる。
<実施例4>
実施例1と同様の操作により、ポリスチレン製マイクロビーズ(FluoSpheres;Molecular Probes, Inc., Eugene, U.S.A.)の表面にデンドリマーを固相合成し、末端にグルコースを結合した。
<実施例4>
実施例1と同様の操作により、ポリスチレン製マイクロビーズ(FluoSpheres;Molecular Probes, Inc., Eugene, U.S.A.)の表面にデンドリマーを固相合成し、末端にグルコースを結合した。
実施例1と同様の細胞培養を、デンドリマー未修飾のT−フラスコ内で行い、細胞接種と同時に、前記のマイクロビーズを添加し、1日後の1細胞あたりに結合しているマイクロビーズ量をカウントした。
同様の操作を、表面をデンドリマーで修飾されていないマイクロビーズを用いても行い、両者を比較した。
その結果、図5に示されるように、表面を末端グルコース有するデンドリマーで固相合成されたマイクロビーズの方が細胞に多く吸着していることが明らかとなった。これより、細胞がデンドリマー末端のグルコースを認識、摂取することで細胞膜とデンドリマーが結合していることが明らかとなった。
<実施例5>
培養中の角化細胞は培養面上を移動しながら培地中の栄養源を摂取し、増殖することが知られている。
<実施例5>
培養中の角化細胞は培養面上を移動しながら培地中の栄養源を摂取し、増殖することが知られている。
前記の実施例では、細胞を末端にグルコースを有するデンドリマー修飾面で培養することにより、細胞運動の活発な細胞ほど培養面のグルコースを認識し、摂取し、結果的に細胞膜と培養面が結合し、円形度が減少したと考えられる。
アクチンを画像化するために、細胞を室温下、3.7 %ホルムアルデヒド/PBS溶液で10分間処理し、PBSで2回洗浄した後、0.1 % Triton X-100のPBS溶液により5分間透過処理し、再度洗浄した。
これらの細胞をfluorescein phalloidin(Molecular Probes, Inc., Eugene, U.S.A.)溶液中、室温下で20分間インキュベーションした。PBSで2回洗浄した後、傾向顕微鏡により細胞を観察した。
図6にデンドリマーで培養した細胞のアクチン染画像を示した。末端にグルコースを有するデンドリマー修飾面で培養され、長く伸びた形態に変化した細胞は、その引き伸ばされた細胞部分においてもはっきりとアクチンの発達が確認できた(図6a)。
そこで、細胞接着や細胞運動の推進力であるアクチン重合を阻害するサイトカラシンD(COSMO BIO., Ltd., Tokyo, Japan)を、接種直後の培養液に5および10μM添加し、1日間培養した後、細胞の円形度を測定した。
図6−2に示されるとおり、サイトカラシンDを添加した細胞では、F−アクチン重合が阻害された。また、サイトカラシンDの濃度によって円形度の頻度分布が大きく異なることが明らかとなった(図7)。
通常のフラスコにおける培養では、サイトカラシンDの濃度に関係なく細胞の円形度分布は同様の傾向を示した。一方、末端グルコースを有するデンドリマー修飾面で培養された細胞の円形度分布は、サイトカラシンD濃度の増加に伴い、分布幅が小さくなり、円形度の大きい細胞頻度が増加した。これより、骨格形成能の低下した細胞は細胞運動が阻害され、末端にリガンドとしてのグルコースを有するデンドリマー修飾面で培養しても、その円形度が減少されないことが明らかとなった。
したがって、末端にグルコースを有するデンドリマー修飾面で培養した細胞の円形度は、細胞骨格形成能を反映することが示唆された。
そこで、円形度に基づく評価パラメータを策定した。デンドリマー修飾のない培養面での平均円形度を閾値としてデンドリマー修飾面での円形度分布のうち閾値以上の割合を評価パラメータとした。
<実施例6>
デンドリマー修飾面にて1週間培養した細胞を剥離し、通常のフラスコにて培養を行ったところ、その増殖活性が低下しないことが確認された。
<実施例6>
デンドリマー修飾面にて1週間培養した細胞を剥離し、通常のフラスコにて培養を行ったところ、その増殖活性が低下しないことが確認された。
そこで、新生児細胞の継代培養における細胞骨格形成能の評価を試みた。ヒトケラチノサイト(新生児包皮由来)初代培養細胞(品番No.9C0708)を凍結細胞としてクラボウ株式会社より入手し、実施例1のテロメラーゼ不死化ヒトケラチノサイトと同様の方法で培養した。各継代培養の細胞接種時に通常フラスコと末端グルコースを有するデンドリマーで修飾されたフラスコで培養し、それぞれの培養面での個別細胞の円形度を測定して、評価パラメータの算出を行った。
結果を表1に示した。
Greenらは、角化細胞の培養において細胞が3つのタイプに分類され、この3つのタイプのうち細胞分化によって分裂期が制限される過程にあるParaclone細胞があることを報告している(非特許文献8)。
この出願の発明における継代回数の増加による緩やかな細胞骨格形成能の低下は、細胞分裂の阻害をもたらすことから、Paraclone細胞での現象を評価できたといえる。
したがって、この出願の発明の細胞固定化方法、細胞培養方法および細胞評価方法によって、細胞寿命による細胞骨格形成能の低下を把握することが可能となった。
1 デンドリマー修飾面
11 デンドリマー高分子化合物
12 物質
2 培養面
3 細胞
31 細胞膜
32 接着点
11 デンドリマー高分子化合物
12 物質
2 培養面
3 細胞
31 細胞膜
32 接着点
Claims (8)
- 培養面に細胞を固定化する方法であって、末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種することを特徴とする細胞固定化方法。
- デンドリマー高分子化合物は、ポリイミノアミンデンドリマーとする請求項1の細胞固定化方法。
- 細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質は、アミノ酸、糖、イオン、薬剤、Gタンパク結合型受容体、イオンチャンネル型受容体、チロシンキナーゼ結合型受容体、および光受容体からなる群より選択される物質とする請求項1または2のいずれかの細胞固定化方法。
- 細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質をグルコースとする請求項1または2のいずれかの細胞固定化方法。
- 請求項1ないし4のいずれかの方法により培養面に細胞を固定化した後、細胞培養を行うことを特徴とする細胞培養方法。
- 細胞の細胞骨格形成能を評価するための方法であって、請求項1ないし4のいずれかの方法により培養面に細胞を固定化した後、培養し、特定時間経過後の細胞の円形度を測定することを特徴とする細胞評価方法。
- 物質の細胞膜への結合を阻害する薬剤をスクリーニングするための方法であって、請求項1ないし4のいずれかの方法において、末端に結合阻害を調べたい物質を有するデンドリマー高分子化合物で培養面を修飾し、細胞を播種した後、スクリーニング対象薬剤の共存下で細胞培養を行い、細胞の円形度を測定して、細胞の円形度が高い場合に、該薬剤を細胞膜と物質の結合阻害剤と判定する薬剤のスクリーニング方法。
- 培養面に細胞を固定化するためのキットであって、培養容器の内表面が末端に細胞のトランスポートチャンネルを標的とした物質を有するデンドリマー高分子化合物で修飾されていることを特徴とする細胞固定化キット。
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JP2014073092A (ja) * | 2012-10-03 | 2014-04-24 | Hitachi High-Technologies Corp | 細胞回収用デバイス、装置及び方法 |
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-
2003
- 2003-12-26 JP JP2003434962A patent/JP2005192406A/ja active Pending
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