JP2005186321A - 超音波成形用ダイ及びこれを用いた押出成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 押出成形装置に用いられ、超音波振動する振動体2を備え、振動部21aが、樹脂流路13を流れる樹脂に、直接接触しない状態で設けられ、かつ、振動面26から樹脂流路13への最短距離Lが、印加される超音波の波長の1/8より短い構成としてある。さらに、振動面26が、被振動部18と分離可能な状態で、被振動部18に超音波振動を伝達する。
【選択図】 図2
Description
また、押出成形においては、ダイにおける温度分布の発生により溶融樹脂の温度分布が不均一となり、成形品の表面粗さが悪化するといった不具合や、あるいは、添加剤等の異物が樹脂流路内面へ付着することによって、ダイライン(すじ)が発生するといった品質上の不具合があった。さらに、この不具合を解決する目的で樹脂の流速を遅くすると、表面粗さは改善されるものの生産性が低下するといった問題があった。
このため、従来、生産性を低下させずに成形品の品質を向上させる押出成形装置及び押出成形方法が様々開発されてきた。
この技術によれば、超音波振動をダイに効果的に作用させることにより振動を効率よく伝達し、かつ共振の腹部を利用して、成形材料、特に流動性の悪い材料のダイ内における流動性を良好ならしめ、メルトフラクチャーの発生を低減し、押出成形の生産性を飛躍的に向上させることができる。
この技術によれば、溶融樹脂の流速が遅いマニホールド先端において、側板の振動により該側板と溶融樹脂との摩擦抵抗が軽減され、この部分における溶融樹脂の滞留による熱分解が解消されるので、長時間安定してフィルムやシートなどを製造することができる。
この技術によれば、金型の幅全体にわったて均一な超音波振動を与えることができ、押出成形時に出口付近で発生する微少凹凸(不要な縞模様として現れる)を除くことができる。
なお、これらの基本的な対策によって、満足できるレベルではないものの、ある程度までは成形品の表面粗さを向上させたり、ダイラインの発生を防止することができた。
また、特許文献2に記載された押出成形品の製造方法も、フラットダイ全体を振動させるので、設備が大掛かりなものとなってしまい、設備費及びメンテナンス費用を削減できないといった問題があった。
このようにすると、樹脂流路に露出した振動部に起因するダイラインや平滑性乱れを防止でき、また、異物が樹脂流路に付着するのを防ぐことができる。
このようにすると、振動部は、被振動部に超音波振動を伝達するとともに、超音波振動のサイクルで断続的に被振動部と衝突して摩擦熱を発生させる。この摩擦熱によって超音波成形用ダイの温度分布を制御でき、成形品の温度分布をより均一化できるので、成形品表面の平滑性を向上させることができる。
なお、本発明の、前記振動部と被振動部の間に隙間を設けた、とは、振動していないときは、振動部と被振動部の間に隙間がなく、振動しているときは、隙間ができるような構成も含むものとする。この隙間が印加する超音波振動の振幅より小さければ、被振動部に超音波振動を伝達することができる。
また、振動部と被振動部が連結されている場合には、上記摩擦熱が発生しないので、被振動部を加熱することはできない。
このようにすると、樹脂流路への異物付着を効果的に防止することができ、たとえば、複雑な形状の成形品であっても、成形品表面の平滑性を向上させることができる。ここで、金型の継ぎ目とは、ダイを構成する部品間の継ぎ目を意味する。商業生産用のダイ、特に押出成形用ダイの中でもTダイは、全幅が3〜5m程度のものがあり、そのような大型ダイは、複数の金型構成部品からなり、樹脂流路部にも継ぎ目があることもある。
このようにすると、異物付着箇所が振動部から遠い場合であっても、異物付着を防止でき、また、ダイから出た直後の成形品を安定させることができる。
このように、本発明は、超音波成形用ダイを用いた押出成形方法としても有効であり、異物が樹脂流路面に付着するのを防ぎ、ダイラインや平滑性乱れを防止することができる。
図1は、本発明にかかる超音波成形用ダイの概略斜視図を示している。
同図において、超音波成形用ダイであるTダイ1は、押出成形により単層フィルム(図示せず)を成形するためのダイであり、供給口11,マニホールド12,樹脂流路13及びリップ部14を備え、正面の中央部に振動体2を設けた構成としてある。
なお、Tダイ1の両端面には、側板(図示せず)が取り付けられ、また、Tダイ1を加熱するヒータは、理解しやすいように省略してある。
同図において、振動体2は、ランジュバン型振動子であり、円筒状のホーン(振動部)21,ホーン21の樹脂流路流路13側の端部に連結された矩形棒状の振動部21a(図1参照),ピエゾ素子22,フランジ23,カバー24及び連結ボルト25とからなっており、ピエゾ素子22に交流電圧を印加することにより、ホーン21の先端部に連結された振動部21aの振動面26が軸方向に高速振動する。
超音波発信機の出力を考慮すると、約10KHz〜100KHzの周波数の超音波が通常使用される。また、押出成形するときの振幅は、通常、約1μm〜約100μmであるが、振動体2の材料の疲労強度を考慮して設定される。
また、波長(λ)は、通常、ダイが金属素材の場合は、約50〜500mm、好ましくは、約100〜400mmである。
また、上記摩擦熱は、振動体2の振動数を調整することにより、容易に制御することができる。
この理由は、振動体2が樹脂に直接接触すると、樹脂流路面に微小な継ぎ目ができ、これが原因で添加剤,樹脂そのもの,高温高圧により樹脂が変性したもの等の異物(図示せず)が付着し、ダイラインの発生や平滑性乱れの原因となるからである。また、最短距離Lが、超音波の波長λの約1/8以上の長さになると、ホーン21が、振動部21aの振動面26と樹脂流路13に挟まれた部分を含む被振動部18に超音波振動を伝達することができなくなり、樹脂流路13の内面への異物付着や、異物溜りによるダイラインの発生や平滑性乱れを防止できなくなるからである。さらに、被振動部18の厚さを超音波の波長λの約1/8より薄くすることにより、被振動部18に超音波振動を効率よく伝達することができる。
さらに、本実施形態のTダイ1によれば、ダイラインの発生や平滑性乱れを防止できることから、特に、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤,硫酸バリウム,マイカ,タルク,炭酸カルシウム等の無機フィラー,可塑剤等の添加剤を多く含む樹脂組成物を原料とする押出成形に有益である。たとえば、無機系難燃剤や無機フィラーを約10wt%以上、好ましくは、約15〜70wt%含む樹脂組成物や、可塑剤等の添加剤を約10wt%以上、好ましくは、約20〜50wt%含む樹脂組成物である。
このように原因がつかめない不具合に対しては、一般的に、Tダイ1を含めた押出成形装置を変えずに、成形材料や押出成形条件を変更するといった簡易かつ条件を元に戻しやすい対策がとられる。そして、このような対策のなかで最も有効な対策の一つとして、振動体2の位置を変更する対策がある。
このような事態を想定して、好ましくは、振動部21aの断面積M(振動面26の面積)を、樹脂流路13の断面積の約5%〜約40%とするとよく、このようにすると、樹脂流路13のほぼ全域において異物付着を防止することができる。この理由は、断面積Mが、樹脂流路13の断面積の約5%未満の場合、樹脂流路13に付着した異物、特に、その異物付着箇所が振動面26から離れているとき、異物が取れにくいからである。また、断面積Mが、樹脂流路13の断面積の約40%を超えると、特に、ダイの流路面積が大きい場合で、一つの振動部から超音波振動をダイに加える場合は、安定した超音波振動を加えることが難しく、効率よく樹脂流路に超音波振動を加えることが難しい場合があるからである。
なお、振動体2を樹脂流路13の両側に設けても、Tダイ1の取扱い性が低下しない場合には、樹脂流路13の両側に振動体2を配設するとよく、これにより、品質を向上させるとともに安定させることができる。
また、多層フィルムを押出成形するTダイ1aは、一般的に、図3に示す樹脂流路13a,13bが、それぞれ曲り部19a,19bと、樹脂流路13,13a,13bの合流部19cを有し、さらに、合流部19cの下流に継ぎ目19dを有している。
このようなTダイ1aは、振動体2aの振動面26aから曲り部19a付近の樹脂流路13aまでの最短距離La,及び,振動体2bの振動面26bから曲り部19b付近の樹脂流路13bまでの最短距離Lbが、0より大きく、かつ、印加される超音波の波長λの約1/8より短くなる位置に、振動体2a,2bを配設するとよい。このようにすると、異物が溜まりやすい曲り部19a,19b付近の樹脂流路13a,13bに、異物が付着することを防止でき、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
なお、その他の構成は、上記Tダイ1とほぼ同様としてある。
また、上記Tダイ1において、上記最短距離Lの条件を満足する位置に振動体2を設け、かつ、振動面26の平面形状を、超音波振動が伝達されるホーン(振動部)21の断面より大きな任意の形状(たとえば、異物が付着しやすい樹脂流路に応じた形状)に成形してもよい。
さらに、振動体2の使用数を低減でき、複雑な形状のダイに対応することが可能となる。
また、本発明は、超音波成形用ダイを用いた押出成形方法としても有効であり、本発明にかかる押出成形方法は、上記Tダイ1を使用して、振動部21と樹脂流路13に挟まれた部分を含む被振動部18を超音波振動させながら、押出成形する押出成形方法としてある。
この押出成形方法によれば、振動体2の振動面26を超音波振動させることによって、被振動部18を局所的に加熱して樹脂の温度分布をより均一化し、また、超音波振動により添加剤等の異物の付着を防止することができ、製品表面の平滑性を向上させることのできるとともに、ダイラインの発生を防止することができる。
Tダイ1を用いてポリカーボネートからなるフィルムを成形し、フィルムの表面粗さを評価した。
Tダイ1は、ダイの中央部に振動体2が設けてあり、振動体2の振動部21aの断面積Mを、樹脂流路13の断面積の約15%とした。また、成形温度は、約280℃とした。
超音波振動装置は、精電舎電子工業(株)製のSONOPET1200Bを使用し、超音波の波長λを1波長240mmとし、最短距離Lを25mmとした。また、中心周波数を約19KHzとし、振幅を約10μmとした。さらに、超音波は、フランジ部に節がくるように、図2に示すように加えた。
ポリカーボネートは、出光石油化学(株)製のタフロンIB2500(MI=1g/10分、300℃―1.2kg荷重)を使用した。
実験結果としては、押出成形を約1時間連続して行ない、成形開始から約1時間後に製造したフィルムのRa(算術平均粗さ)を測定したところ、約0.2μmであった。さらに、8時間連続成形しても、ダイラインは発生しなかった。
上記実施例1において、超音波振動を付与しないでフィルムを成形し、フィルムの表面粗さを評価した。
実験結果としては、押出成形を約1時間連続して行ない、成形開始から約1時間後に製造したフィルムのRa(算術平均粗さ)を測定したところ、約0.4μmであった。
上記実施例1及び比較例1より、本発明にかかるTダイ1を使用して押出成形を行なうことによって、表面平滑性を向上できた。
例えば、押出成形品は、フィルムに限定されるものではなく、たとえば、チューブ形状,中空形,インサート入り等の成形品に適用することができる。
また、本発明の超音波成形用ダイは、Tダイに限定されるものではなく、たとえば、フィッシュテイルダイ,コートハンガーダイ,スクリューダイ,サーキュラダイ等の各種ダイに適用することができる。
2,2a,2b 振動体
11 供給口
12 マニホールド
13,13a,13b 樹脂流路
14 リップ部
15 取付孔
16 底面
17 ボルト
18 被振動部
19a,19b 曲り部
19c 合流部
19d 継ぎ目
21 ホーン
21a 振動部
22 ピエゾ素子
23 フランジ
24 カバー
25 連結ボルト
26,26a,26b 振動面
26c,26d,26e,26f 振動面
Claims (5)
- 押出成形装置に用いられ、超音波振動する振動体を備えた超音波成形用ダイであって、
前記振動体の振動部が、前記超音波成形用ダイの樹脂流路を流れる樹脂に、直接接触しない状態で設けられ、かつ、前記振動部から前記樹脂流路への最短距離が、印加される超音波の波長の1/8より短いことを特徴とする超音波成形用ダイ。 - 前記振動部と、該振動部から振動を伝えられる被振動部の間に挟隙を設けたことを特徴とする請求項1記載の超音波成形用ダイ。
- 前記樹脂流路が、曲り部,金型の継ぎ目,リップから選ばれる少なくとも一つのポイントを有する場合に、前記振動部から前記ポイントへの最短距離が、印加される超音波の波長の1/8より短いことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波成形用ダイ。
- 前記振動部の振動面の面積を、前記樹脂流路の断面積の5%〜40%としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波成形用ダイ。
- 上記請求項1〜4のいずれかに記載の超音波成形用ダイを使用して、前記振動部と前記樹脂流路に挟まれた部分を含む被振動部を超音波振動させながら、押出成形することを特徴とした超音波成形用ダイを用いた押出成形方法。
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