JP2005185271A - 膜透過性ペプチド核酸 - Google Patents
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Abstract
【課題】
細胞膜透過性を有しているペプチドオリゴマーによる前駆体の構成、及びPNAオリゴマーの構成を提供すること。
【解決手段】
下記の一般式によって表されるPNAオリゴマーによる化合物。
記
【化20】
(式中、Bは、互いに独立し、同一又は異なった関係であるアデニン、グアニン、シトシン又はチミンの何れかであり、Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたことによるアルギニン残基であり、R1、R2は、水素原子又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、a〜hは0〜10の整数であり、x1〜x3、y1、y2およびz1〜z5はいずれも0以上の整数であり、x1+x2+x3≧1であり、y1+y2≧1であり、z1+z2+z3+z4+z5≧0であり、mは1以上の整数であり、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5である。)
細胞膜透過性を有しているペプチドオリゴマーによる前駆体の構成、及びPNAオリゴマーの構成を提供すること。
【解決手段】
下記の一般式によって表されるPNAオリゴマーによる化合物。
記
【化20】
(式中、Bは、互いに独立し、同一又は異なった関係であるアデニン、グアニン、シトシン又はチミンの何れかであり、Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたことによるアルギニン残基であり、R1、R2は、水素原子又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、a〜hは0〜10の整数であり、x1〜x3、y1、y2およびz1〜z5はいずれも0以上の整数であり、x1+x2+x3≧1であり、y1+y2≧1であり、z1+z2+z3+z4+z5≧0であり、mは1以上の整数であり、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5である。)
Description
本発明は、細胞膜透過性を有する化合物、及び当該化合物によるペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid:以下「PNA」と略称する。)、および当該PNAの使用方法、およびその製造方法に関するものである。
従来遺伝子工学や分子生物学の分野においてDNAに対する切断機能を有している制限酵素は、一般に4〜6塩基対の特異的な配列を認識して切断することを基本原理しているが、DNA中の特定遺伝子について解析するためには、少なくとも13塩基対を認識することを不可欠としている。
このような制限酵素としては、主に遷移金属と錯体を形成し、そこから発生する活性酸素種によるデオキシリボースから水素の引き抜きによる破壊的切断を行うブレオマイシンやビラジカルを形成してデオキシリボースから水素を引き抜いて破壊的切断を行うエンジイン系抗生物質、或いはプリン塩基のアルキル化後の熱処理や化学的処理によってデオキシリボースを破壊的切断するデュオカルマイシンなどが存在する。
しかしながら、これらの制限酵素による切断の基本原理は、デオキシリボースの酸化的破壊による切断であり、天然の制限酵素がリン酸ジエステル結合を加水分解の態様によって切断することによる反応方式とは相違しており、また、リガーゼによる再結合が不可能であった。そのため、人工制限酵素の開発要件として、天然の制限酵素と同様にリン酸ジエステル結合に対する加水分解を行う方式が要請されていた。
PNAは、図1に示すように、核酸の構成要素として塩基配列を基礎付けるチミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)を有した各構成単位の結合によって分子を形成しており、特に図2に示すように、前記塩基配列における相補性に基づき、特定の塩基配列を有しているDNAを構成している一部の配列部分と結合することによって、該当するDNAを認識する機能を有している。
前記認識機能に基づき、PNAは、DNAの一重鎖と高い親和性・特異性を伴って二重鎖を形成したり、DNA二重鎖との結合によってDNAの化学上の性格を変化させるなど、特色のある機能を持つため、遺伝子工学用の機能性素材として注目を集めている。
出願人は、前記PNAオリゴマーとして、多種多様な機能性分子を容易に導入できるようなPNAオリゴマーの製造方法およびその構成に関する出願を行った(特願2002−121667号、以下「先願発明」と略称する。)。
先願発明においては、機能性分子として、細胞膜透過性を有している機能分子誘導体をも含むことを提唱しており、そのために、前記機能分子誘導体における機能性分子として、アルギニン、リジン、およびセリンなどの水溶性アミノ酸が適切である旨の例示を行っている(先願発明における特許明細書[0064])。
しかしながら、前記細胞膜透過性を有している機能性分子誘導体による前駆体、および当該前駆体を含むPNAオリゴマーに関する具体的な構成については、先願発明において必ずしも明らかにしている訳ではない。
特開2003−171396号公報
本発明は、細胞膜透過性を有しているアミノ酸誘導体に基づく前駆体の構成、更には当該前駆体を構成要素とすることによって、細胞膜透過性を有しているPNAオリゴマーによる化合物の構成を具体的に提唱することを課題とするものである。
前記課題を解決するため、本発明の構成は、
(1).下記の一般式(1)によって表されるペプチドオリゴマーによる前駆体、
記
(Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたアルギニン残基であり、m、xは、1以上の整数であり、かつm×x≧5である。)
(2).下記一般式(2)によって表されるPNAオリゴマーによる化合物、
(式中、Bは、互いに独立し、同一又は異なった関係であるアデニン、グアニン、シトシン又はチミンの何れかであり、Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたことによるアルギニン残基であり、R1、R2は、水素原子又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、a〜hは0〜10の整数であり、x1〜x3、y1、y2およびz1〜z5はいずれも0以上の整数であり、x1+x2+x3≧1であり、y1+y2≧1であり、z1+z2+z3+z4+z5≧0であり、mは1以上の整数であり、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5である。)
からなる。
(1).下記の一般式(1)によって表されるペプチドオリゴマーによる前駆体、
記
(Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたアルギニン残基であり、m、xは、1以上の整数であり、かつm×x≧5である。)
(2).下記一般式(2)によって表されるPNAオリゴマーによる化合物、
(式中、Bは、互いに独立し、同一又は異なった関係であるアデニン、グアニン、シトシン又はチミンの何れかであり、Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたことによるアルギニン残基であり、R1、R2は、水素原子又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、a〜hは0〜10の整数であり、x1〜x3、y1、y2およびz1〜z5はいずれも0以上の整数であり、x1+x2+x3≧1であり、y1+y2≧1であり、z1+z2+z3+z4+z5≧0であり、mは1以上の整数であり、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5である。)
からなる。
前記(1)の前駆体は、それ自体、細胞膜透過性を有していることから、両末端において、試薬としての機能を有している他の誘導体と化学結合を行うことによって、細胞膜内において、当該試薬に基づき様々な試験を行うことを可能とすると共に、前記(2)のPNAオリゴマーによる化合物の構成要素とすることができる。
前記(2)の化合物は、細胞膜透過性を有するPNAオリゴマーであることから、細胞内において、DNAとの相互作用、就中、DNAに対する切断を行うことによって、細胞内におけるDNA分析に多大な寄与を行うことができる。
前記(1)の前駆体は、細胞膜透過性を有する単一の構成単位であるのに対し、前記(2)の化合物は、前記(1)の前駆体による構成単位を化合物を形成する要素としているPNAオリゴマーを構成単位としている。
前記(1)の前駆体による構成単位が細胞膜透過性を有していることは、前記(2)のPNAオリゴマーの結合構成から、前記(1)の化合物の結合を除外したことによる化合物(前記(2)において、x1、x2、x3の全てが0である場合の化合物、但しこのような化合物は、前記(2)の構成には含まれていない。)においては、何ら細胞膜透過性を有していないことによって判明する。
前記(1)の前駆体、(2)の各化合物の製造法は、先願発明の明細書に記載されている機能性PNAオリゴマーの製造工程と基本原理は同一である。
即ち、当初Fmoc−ωーアミノ酸−BocPNA−OH(以下「アミノ酸−PNA基本単位」と略称する。)を形成したうえで、当該アミノ酸PNA構成単位の相互の結合によるオリゴマーを形成し、かつ末端において、安定剤としての機能を有している化合物(MBHA:4−Methylbenzhydrylamineによる樹脂)を結合させたうえで、機能性分子との結合予定部分において、当初第2級アミノ基によるMHFmocから第1級アミノ基である−NH2に変化させ、更には当該第1級アミノ基と機能分子との結合によって、第2級アミノ基を介した機能分子との結合基(−NHR)を実現したうえで、アルギニン残基(R)の多重結合(−NHRm)を順次形成している。
前記(1)の前駆体を構成要素としている化合物の具体的な製造工程は、以下の通りである。
前記工程によって得られた化合物は、末端において第1アミノ基(−NH)及び安定剤による化合物(MBHA)と結合した状態として存在しているが、前記末端の第1級アミノ基(−NH2)は、必要に応じて水素原子をアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体(前記(2)の化合物を構成しているR1)と置換し、前記末端の安定剤としての機能を有している化合物(MBHA)については、当該安定剤中の第1級アミノ基(−NH2)を摘出したうえで、必要に応じて、当該アミノ基の内の水素原子を上記の場合と同じようにアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体(前記(2)の化合物を構成しているR2)と置換することによって、前記(1)の前駆体は、以下のような一般式として、独立した化合物として存在させることが可能である。
上記化合物自体は、既に細胞透過性を有しているが、両末端の結合基−R1、及び−NHR2が除去されている前記(1)の前駆体は、試薬としての機能を有している他の化合物と結合することによって、細胞膜内に透過し、細胞内において、当該試薬としての機能を発揮させることが可能となる。
前記(1A)から(1B)へのFmoc基の脱保護とする際には、20分〜40分程度のピペリジン処理を行っており、前記(1B)から(1C)へのアルギニン残基との置換においては、アルギニンが有しているカルボン酸とアミノ基が有している水素原子との加水分解反応によって実現されている。
前記加水分解反応の触媒としては、HATU、HBTUおよびBOPなどの縮合剤が採用されることが多い。
前記(1C)から(1D)によるアミノ酸残基(R)の多重構造である(R)mを得るためには、下記の結合基の内のアルギニン残基R’とFmocとの結合部に対する加水分解を行い、アルギニン残基R’をアルギニン残基Rに変化させ、順次多重結合構造とすれば良い。
記
−(R)m−1R’Fmoc
(但し、mは、1以上の整数であり、R’は、アルギニンから水酸基(−OH)、及び水素原子(H)をそれぞれ除外したアルギニン残基である。)
記
−(R)m−1R’Fmoc
(但し、mは、1以上の整数であり、R’は、アルギニンから水酸基(−OH)、及び水素原子(H)をそれぞれ除外したアルギニン残基である。)
前記(2)の化合物の具体的な製造工程は、以下の通りであり、前記(1)の前駆体の製造工程と基本的原理は同一である。
z基(N−ベンジルオキシカルボン酸)などで保護されているアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)を有する既存のPNAオリゴマーとの結合によって、下記のようなオリゴマーを得る(下記の化合物において、cbzは、前記z基を表わす。)。
記
Bocの除去に伴い、末端BocをR1に置換する(但し、R1は、アミノ酸誘導体又は機能性カルボン酸誘導体を表す。)。
記
Bocの除去に伴い、末端BocをR1に置換する(但し、R1は、アミノ酸誘導体又は機能性カルボン酸誘導体を表す。)。
前記(1d)式において、末端のMBHAの内から第1級アミノ基(−NH2)を摘出し、必要に応じて1個の水素原子をR2に置換することによって(但し、R2は、アミノ酸誘導体又は機能性カルボン酸誘導体を表す。)、前記(2)式の化合物を製造することができる。
前記(1a)から(1b)への反応は、前記(1A)から(1B)への反応と同様であり、(1b)から(1c)への反応は、前記(1B)から(1C)への反応と同様であり、前記(1c)から(1d)への反応は、前記(1C)から(1D)への反応と同様である。
尚、前記(1c)から(1d)への反応においては、アルギニン残基(R)の多重結合(R)mを形成する工程とZ基の脱保護を行う工程とを同時に表現しているが、実際には双方の反応工程は、それぞれ独立して行われている。
そして、前記Z基の脱保護を行う場合には、例えば、TFA/TFMSA/p−Cresol/Thioanisole=60/25/10/10のような一般的な条件において好適に行われる。
以下、前記(2)の化合物について、細胞膜透過性に関する具体的な実験に即して説明する。
サルから摘出した細胞として、m−RNAの内、特に
GGAUGAGUGGGAUGC
の配列を有しているmRNAをターゲットとして、前記(2)の化合物の内、z1=z2=1とし、z3=z4=z5=0とし、y1=15とし、y2=0とし、z2=z3=0としたうえで、y1=15とした場合の前記Bの組み合わせとして、前記m RNAの核酸配列と相補性の関係にある
GCATCCCACTCATCC
の配列を選択し、m、x1の数値として、以下の組み合わせを選択したうえで、前記(2)のPNAオリゴマーをそれぞれ製造した。
m=1、x1=5、7、9
m=2、x2=3、5、7
m=3、x1=3,5
m=4、x1=3
GGAUGAGUGGGAUGC
の配列を有しているmRNAをターゲットとして、前記(2)の化合物の内、z1=z2=1とし、z3=z4=z5=0とし、y1=15とし、y2=0とし、z2=z3=0としたうえで、y1=15とした場合の前記Bの組み合わせとして、前記m RNAの核酸配列と相補性の関係にある
GCATCCCACTCATCC
の配列を選択し、m、x1の数値として、以下の組み合わせを選択したうえで、前記(2)のPNAオリゴマーをそれぞれ製造した。
m=1、x1=5、7、9
m=2、x2=3、5、7
m=3、x1=3,5
m=4、x1=3
前記mおよびx1の組み合わせによる前記(2)の化合物であるPNAオリゴマーについて、1、3、10Mによる各濃度としたうえで、蛍光標識化合物として、FITCを混入することによって、プローブ液を作成したうえで、8ウェル型チェンバーに各ウェル毎に1.0×104(セルス)となるように400μl細胞懸濁液に対し、150mlのプローブ液をそれぞれ添加し、37℃の保温状態にて静置した。
各細胞に対しては、細胞核に対し、Hoechstによって、青色の核染色を施したところ、何れの場合においてもプローブ液を添加してから1時間後に、細胞核の位置(予めヘキスト《Hoechst》試薬によって青色に着色されている。)に概略相当する位置、又はその周囲にFITCによる黄緑の着色状態を検出することができた。
細胞核の位置に略相当する位置における着色は、前記(2)の化合物によるプローブ液が、細胞核の内側に侵入したことを意味しており、細胞核による着色の位置の周囲における着色は、細胞膜内に透過するも、細胞核の内側に侵入していないことを意味しているが、前記各プローブ液のサンプルの内、
m=1、x1=7
m=2、x1=3、5
m=3、x1=3
の場合は、図4(a)に示すように、細胞核による着色状態と概略同一位置にまで侵入したことを意味しており、
m=1、x1=9
m=2、x1=7
m=3、x1=5
m=4、x1=3
の場合は、図4(b)に示すように、細胞核内に侵入せずに、その周囲に留まっていることを示していた(尚、図4(a)、(b)において、点線によって示す領域部分は、細胞膜内におけるFITCによる着色状態を示しており、白丸によって示す領域は、細胞核の位置におけるHoechstによる着色状態を示している。)。
m=1、x1=7
m=2、x1=3、5
m=3、x1=3
の場合は、図4(a)に示すように、細胞核による着色状態と概略同一位置にまで侵入したことを意味しており、
m=1、x1=9
m=2、x1=7
m=3、x1=5
m=4、x1=3
の場合は、図4(b)に示すように、細胞核内に侵入せずに、その周囲に留まっていることを示していた(尚、図4(a)、(b)において、点線によって示す領域部分は、細胞膜内におけるFITCによる着色状態を示しており、白丸によって示す領域は、細胞核の位置におけるHoechstによる着色状態を示している。)。
前記の検出結果から、アルギニン残基を有しているPNAの結合の数が多いほど(前記(2)の構成において、x1、x2、x3の数が大きいほど)、更には、アルギニン残基による重畳結合の数が大きいほど(前記(2)の化合物においてmが大きいほど)、細胞膜内に浸透し易く、更には細胞核内に浸透し易いことが判明した。
尚、前記(2)の化合物においては、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5であることを要件としているが、当該要件は、前記試験と同時にm×x≧5が成立しない場合、即ち、4以下である場合について行われた試験において、前記の場合と同一条件のプローブ液の濃度、蛍光標識化合物の添加量、細胞懸濁液の量を設定したことによる着色試験を行っても、プローブ液が細胞膜内に透過する機能が極めて弱いという試験結果が得られていることに由来している。
以下、実施例に従って説明する。
実施例1は、(2)の化合物において、R1、R2の一方又は双方として、下記の結合基を選択したことを特徴としている。
記
記
出願人は、下記の化合物の構成を提唱し、かつ特許出願を既に行っている(特願2003−324380)。
記
(式中Bは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの何れかを表し、nは、2以上の整数を示し、mは、1以上の整数を示す。)。
記
(式中Bは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの何れかを表し、nは、2以上の整数を示し、mは、1以上の整数を示す。)。
前記(3)の化合物は、前記(2)において、R1として、前記(4)の結合基を選択し、かつR2として、水素原子を選択したうえで、x1=x2=x3=0、z1=z2=z3=0とした場合に該当しているが、当該化合物は、DNAと反応溶液内に共存させた場合には、前記(3)の化合物が有している塩基性配列と相補関係にあるDNAの配列部分に対し、デオキシリボースの酸化的破壊を伴わずに、所望の配列単位によるDNAをリン酸ジエステル結合に対する加水分解を伴って切断することが可能となる。
このようなDNAの結合部分を切断し得ることは、切断部位において、リン酸ジエステル結合に対する加水分解が行われ、しかも前記各化合物が当該加水分解に対する触媒機能を発揮していることを意味している。
このような切断機能は、前記(2)の化合物において、R1として水素原子を選択し、R2として前記(4)の結合基を選択したうえで、x1=x2=x3=0、z1=z2=z3=x4=z5=0としたことによる化合物、即ち、
によっても実現可能である。
によっても実現可能である。
前記(3)、(3)’のようなデオキシリボースの酸化的破壊を伴わずに、切断機能を有しているPNAオリゴマーの構成に着目し、前記(2)の化合物において特にR1、R2の一方又は双方として、前記(4)の結合基を選択している。
このような切断機能を有している前記(2)の化合物の場合には、細胞膜内に透過した後に、細胞内のDNAに対し、デオキシリボースの酸化的破壊を伴わずに、相補関係にあるDNAを切断したので、個別のDNAの組み合わせなどに基づいて、DNAが有している個別の遺伝子機能の解明などに十分資することができる。
実施例2は、ランタノイド金属と、実施例1による化合物とによって錯体を形成していることを特徴としている。
前記特願2003−324380号明細書に記載したように、一般にランタノイド金属がDNAのリン酸ジエステル結合に対し、加水分解機能を有していることが既に判明しており、特にセリウム(Ce)の場合に、そのような作用が顕著であることが判明している。
実施例2においては、実施例1の構成を前提としたうえで、実施例1を構成しているアミノ酸誘導体の末端において、図3に示すように、ランタノイド金属との間にて錯体による化合物を得ることによって、実施例1の化合物が有しているデオキシリボースの破壊を伴わない切断機能を更に一層増長させている。
前記ランタノイド金属とによる錯体は、実施例1による化合物溶液に対し、ランタノイド金属を添加することによって容易に精製することができる。
膜透過性の評価
本発明のPNAプローブの膜透過性を評価するために、下記の実験を行った。
1.細胞の播種
1.0×104個のCOS−7細胞(培養液:DMEM)を培養容器(8穴チャンバー)に播種し、37℃で24時間インキュベーションした。
2.プローブ液処理
培養液を除去し、細胞培養液用いて濃度を1、3及び10μMに調整したプローブ液150μLを加え、COS−7細胞をさらに24時間インキュベーションした。
3.余剰プローブの洗浄
プローブ液を除去し、細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
4.細胞の固定
常法により(4%パラホルムアルデヒド/PBS(−))細胞を固定した。
5.観察
固定液を除去し、PBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)したのち、封入液で細胞を封入し、共焦点蛍光顕微鏡を用いてシグナル分子(蛍光分子)の局在を観察した。
本発明のPNAプローブの膜透過性を評価するために、下記の実験を行った。
1.細胞の播種
1.0×104個のCOS−7細胞(培養液:DMEM)を培養容器(8穴チャンバー)に播種し、37℃で24時間インキュベーションした。
2.プローブ液処理
培養液を除去し、細胞培養液用いて濃度を1、3及び10μMに調整したプローブ液150μLを加え、COS−7細胞をさらに24時間インキュベーションした。
3.余剰プローブの洗浄
プローブ液を除去し、細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
4.細胞の固定
常法により(4%パラホルムアルデヒド/PBS(−))細胞を固定した。
5.観察
固定液を除去し、PBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)したのち、封入液で細胞を封入し、共焦点蛍光顕微鏡を用いてシグナル分子(蛍光分子)の局在を観察した。
場合により、上記工程3および4の間に、細胞の位置を明瞭にする核染色工程や免疫染色工程を加えた。
核染色工程は、PBS(−)を除去し、Hoechst液(PBS(−)で1000倍に希釈した1mg/mlのHoechst 33342液)100μLを加えて室温で5分間、静置した。Hoechst液を除去して、再び細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
核染色工程は、PBS(−)を除去し、Hoechst液(PBS(−)で1000倍に希釈した1mg/mlのHoechst 33342液)100μLを加えて室温で5分間、静置した。Hoechst液を除去して、再び細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
核および免疫染色工程は、細胞表面をPBS(−)で洗浄(2分×2回)し、3% BSAを含むPBS(−)400μLで15分間ブロッキングし、次に、1%BSAを含むPBS(−)で1/200に希釈した一次抗体 200μLで、37℃、2時間インキュベーションした。
細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
PBS(−)を除去し、1% BSAを含むPBS(−)で1/500に希釈した二次抗体 200μLを加え、37℃で1時間インキュベーションした。その後、PBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
続いて、PBS(−)を除去し、Hoechst液(Hoechst33258液(1mg/mL)をPBS(−)で1000倍希釈したもの)100μLを加えて室温で5分間、放置した。Hoechst液を除去して、再び細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2)した。
細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
PBS(−)を除去し、1% BSAを含むPBS(−)で1/500に希釈した二次抗体 200μLを加え、37℃で1時間インキュベーションした。その後、PBS(−)200μLで洗浄(2分×2回)した。
続いて、PBS(−)を除去し、Hoechst液(Hoechst33258液(1mg/mL)をPBS(−)で1000倍希釈したもの)100μLを加えて室温で5分間、放置した。Hoechst液を除去して、再び細胞表面をPBS(−)200μLで洗浄(2分×2)した。
その結果、ブラシ型(m=1の場合、図5のR1×n)では、図5のNo1:R1×5に比べて図5のNo.3:R1×9の方が細胞膜を透過したプローブ数が多く、アルギニン数の増加に伴い、プローブの細胞膜透過性が向上した。また、樹木型(m≧2の場合、図5のR2×n、R3×n、R4×n)でも、No.4:R2×3に比べてNo.6:R2×7やNo.8:R3×5そしてNo.9:R4×3とアルギニン結合数が増加するに伴い、プローブの細胞内蓄積量が増加した。
プローブの細胞膜透過性については、ブラシ型と樹木型との間に有意な差は認められなかった。
上記の結果より、プローブの細胞膜透過性は、ブラシ型と樹木型のいずれの場合においても、アルギニン数の増加に依存することが明らかとなった。
プローブの細胞膜透過性については、ブラシ型と樹木型との間に有意な差は認められなかった。
上記の結果より、プローブの細胞膜透過性は、ブラシ型と樹木型のいずれの場合においても、アルギニン数の増加に依存することが明らかとなった。
細胞内局在に関する最適化実験
プローブ液10μMで24時間処理により、効果的に細胞内へ導入することが確認できた新規プローブの局在変化を観察するために、濃度およびプローブ処理時間を変化させて実験を行った。プローブには、ブラシ型結合プローブ(図5のNo.3:R1×9)と樹木型結合プローブ(図5のNo.6:R2×7)そしてコントロールとして膜透過性促進分子を結合してない従来型プローブを用いた。
プローブの処理濃度および処理時間を変更(24時間処理を1時間処理または、10μM処理を1μM処理へ変更)した以外は、実施例3の手順に従った。
実施例3の操作3と4の間に核を染色する特殊試薬(蛍光分子2:Hoechst33258)を用いた染色処理を施した。これらの性質の異なる蛍光分子1(FITC)と蛍光分子2の局在を観察した。
その結果を図異なる染色方法で、プローブの位置および細胞の位置を確認した。A〜Iは、プローブの局在を示し、また、A’〜I’は、細胞の位置(特に核)を示す。
図5中の矢印は、同一の位置を示しており、したがって、矢印が指し示している位置がともに発色を示している場合は、細胞(特に核)にプローブが存在していることが確認できる。また、細胞の構造は大きく分けて細胞膜に包まれた細胞質と、その中に核からなっている。したがって、蛍光分子2で染められた核周辺は、細胞質であることが容易に推測できるので、この方法で核だけでなく細胞質に存在するプローブの確認にも用いることが可能である。
その結果、10μM、24時間の処理では、新規プローブは細胞質および核へ効果的な集積傾向があることが示唆された(パネル(E)(F))。
また、PNAプローブの濃度を10μMとし、処理時間を1時間に変更しても細胞質および核への集積傾向は確認された(パネル(B)(C))。
さらに、処理時間を24時間とし、PNAプローブの濃度を1μMへ変更をしたところ、新規プローブは核へ集積せず、細胞質に蓄積することが確認された(パネル(H)(I))。
また、実験に用いた新規プローブの中でも、図5に示すNo.6(R2×7)が最も効率よく細胞質に局在化することが確認された。
上記の結果より、細胞質及び核内の局在化は、PNAプローブの濃度、アルギニンの個数及びインキュベーション時間に依存することが明らかとなった。したがって、今回設計した新規プローブは、濃度および処理時間を調整することで、核および細胞質への局在化コントロールが可能であり、分子生物学的ツールとして極めて有用な新規プローブであるといえる。
プローブ液10μMで24時間処理により、効果的に細胞内へ導入することが確認できた新規プローブの局在変化を観察するために、濃度およびプローブ処理時間を変化させて実験を行った。プローブには、ブラシ型結合プローブ(図5のNo.3:R1×9)と樹木型結合プローブ(図5のNo.6:R2×7)そしてコントロールとして膜透過性促進分子を結合してない従来型プローブを用いた。
プローブの処理濃度および処理時間を変更(24時間処理を1時間処理または、10μM処理を1μM処理へ変更)した以外は、実施例3の手順に従った。
実施例3の操作3と4の間に核を染色する特殊試薬(蛍光分子2:Hoechst33258)を用いた染色処理を施した。これらの性質の異なる蛍光分子1(FITC)と蛍光分子2の局在を観察した。
その結果を図異なる染色方法で、プローブの位置および細胞の位置を確認した。A〜Iは、プローブの局在を示し、また、A’〜I’は、細胞の位置(特に核)を示す。
図5中の矢印は、同一の位置を示しており、したがって、矢印が指し示している位置がともに発色を示している場合は、細胞(特に核)にプローブが存在していることが確認できる。また、細胞の構造は大きく分けて細胞膜に包まれた細胞質と、その中に核からなっている。したがって、蛍光分子2で染められた核周辺は、細胞質であることが容易に推測できるので、この方法で核だけでなく細胞質に存在するプローブの確認にも用いることが可能である。
その結果、10μM、24時間の処理では、新規プローブは細胞質および核へ効果的な集積傾向があることが示唆された(パネル(E)(F))。
また、PNAプローブの濃度を10μMとし、処理時間を1時間に変更しても細胞質および核への集積傾向は確認された(パネル(B)(C))。
さらに、処理時間を24時間とし、PNAプローブの濃度を1μMへ変更をしたところ、新規プローブは核へ集積せず、細胞質に蓄積することが確認された(パネル(H)(I))。
また、実験に用いた新規プローブの中でも、図5に示すNo.6(R2×7)が最も効率よく細胞質に局在化することが確認された。
上記の結果より、細胞質及び核内の局在化は、PNAプローブの濃度、アルギニンの個数及びインキュベーション時間に依存することが明らかとなった。したがって、今回設計した新規プローブは、濃度および処理時間を調整することで、核および細胞質への局在化コントロールが可能であり、分子生物学的ツールとして極めて有用な新規プローブであるといえる。
細胞外排出能に関する評価
工程3と4の間に以下の二つの操作を加えた以外は、実施例3と同様の操作を行った。
プローブを含まない通常の培養液で、細胞を6時間(3時間を2回)培養した。核を染色する特殊試薬(蛍光分子2:Hoechst33258)を用いて染色処理を施した。
実験結果を図7に示した。
その結果、細胞内、特に核へ蓄積が確認されていたブラシ型結合プローブおよび樹木型結合プローブは、10μM、1時間の処理後に、通常の培養液で培養することで、核外へ排出された。余剰の新規プローブが細胞から排出されることから、生細胞を用いた場合でも、未結合プローブを完全に除去することが可能である。
この結果から、今回設計した新規プローブは、これまで不可能であった多細胞系を用いた染色技術の開発に有用である。
工程3と4の間に以下の二つの操作を加えた以外は、実施例3と同様の操作を行った。
プローブを含まない通常の培養液で、細胞を6時間(3時間を2回)培養した。核を染色する特殊試薬(蛍光分子2:Hoechst33258)を用いて染色処理を施した。
実験結果を図7に示した。
その結果、細胞内、特に核へ蓄積が確認されていたブラシ型結合プローブおよび樹木型結合プローブは、10μM、1時間の処理後に、通常の培養液で培養することで、核外へ排出された。余剰の新規プローブが細胞から排出されることから、生細胞を用いた場合でも、未結合プローブを完全に除去することが可能である。
この結果から、今回設計した新規プローブは、これまで不可能であった多細胞系を用いた染色技術の開発に有用である。
本発明は、細胞膜内に試薬を透過することによって、細胞内部を探索する分子生物工学分野、医療分野、更には細胞内部のDNAとの相互作用、就中切断機能などに基づく遺伝子解明などに関する遺伝子工学分野に利用することができる。
Claims (8)
- 下記の一般式(1)によって表されるペプチドオリゴマーによる前駆体。
記
(Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたアルギニン残基であり、R1は、水素原子、又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、m、xは、1以上の整数であり、かつm×x≧5である。) - 下記一般式(2)によって表されるPNAオリゴマーによる化合物。
(式中、Bは、互いに独立し、同一又は異なった関係であるアデニン、グアニン、シトシン又はチミンの何れかであり、Rは、アルギニンから水酸基(−OH)が除外されたことによるアルギニン残基であり、R1、R2は、水素原子又はアミノ酸誘導体、又は機能性カルボン酸誘導体であり、a〜hは0〜10の整数であり、x1〜x3、y1、y2およびz1〜z5はいずれも0以上の整数であり、x1+x2+x3≧1であり、y1+y2≧1であり、z1+z2+z3+z4+z5≧0であり、mは1以上の整数であり、0ではないx1、x2、x3においては、m×x1≧5、m×x2≧5、m×x3≧5である。) - R1、R2の一方又は双方として、下記の結合基を選択したことを特徴とする請求項2記載の化合物。
記
(尚、nは2以上の整数を示す。) - ランタノイド金属と、請求項3の結合基とによって形成された錯体による化合物。
- ランタノイド金属として、ツリウム(Tm)を選択したことを特徴とする請求項4記載の錯体による化合物。
- 請求項1の前駆体、同2、同3、同4、および同5の化合物の製造工程において、下記の結合基において、アルギニン残基R’とFmocとを加水分解することによって、アルギニン残基の多重結合体(R)mを順次形成する方法。
記
−(R)m−1R’Fmoc
(但し、mは、1以上の整数であり、R’は、アルギニンから水酸基(−OH)、及び水素原子(H)をそれぞれ除外したアルギニン残基である。) - 請求項2、同3、同4、および同5記載の化合物の水溶液に、蛍光標識化合物を配合したことによる細胞透過性プローブ液。
- 蛍光標識化合物として、FITCを選択したことを特徴とする請求項7記載の細胞透過性プローブ液。
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JP2004027788A JP2005185271A (ja) | 2003-12-03 | 2004-02-04 | 膜透過性ペプチド核酸 |
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RU2548807C2 (ru) * | 2009-05-20 | 2015-04-20 | Торэй Индастриз, Инк. | Пептиды, проникающие в клетку |
-
2004
- 2004-02-04 JP JP2004027788A patent/JP2005185271A/ja not_active Withdrawn
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