JP2005183250A - 大気圧イオン源およびそれを用いた質量分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料イオン同士、あるいは試料イオンと試料分子とが、気相においてどのような反応を行なっているかを、容易に分析することができる大気圧イオン源、および、それを用いた質量分析方法を提供する。
【解決手段】霧化ガスが供給可能で、かつ高電圧が印加可能な複数本の霧化ノズルと、該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室とを備え、前記脱溶媒室は、開閉弁により密閉可能な構造になっている。
【選択図】 図5

Description

本発明は、大気圧イオン源に関し、特に、大気圧イオン源の一種であるエレクトロスプレー・イオン源と、それを用いた質量分析方法に関する。
強い電界の中に置かれた電気伝導性の液体が、電界の作用によって毛管の先端部から自然に噴霧する現象は、エレクトロスプレーと呼ばれ、古くから知られていた。1980年代前半、このエレクトロスプレーという現象が、溶液試料の質量分析に応用され、エレクトロスプレー・イオン源として広く用いられるようになった。
図1は、従来のエレクトロスプレー・イオン源を示したものである。図中、1は、液体クロマトグラフ(LC)装置や溶液溜などの溶液試料供給源である。溶液試料供給源1の溶液試料(例えばLC移動相)は、図示しないポンプなどによって、毛管状のキャピラリー2に送られる。このキャピラリー2は、金属などの導電体で作られており、内径100μm、外径200〜250μmである。キャピラリー2に送られた溶液試料は、LCポンプまたは毛管現象により駆動されて、キャピラリー2の内部に吸い上げられ、該キャピラリー2の先端部まで到達する。
キャピラリー2と質量分析装置3の対向電極4との間には、数kVの高電圧が印加されていて、強い電界が形成されている。この電界の作用で、キャピラリー2の中の溶液試料は、大気圧下、キャピラリー2と対向電極4との間の空間に静電噴霧され、荷電液滴となって、大気中に分散する。このときの溶液試料の流量は、毎分5〜10マイクロリットルである。このとき生成する荷電液滴は、試料分子の回りに溶媒分子が集まって、クラスター状になった帯電粒子なので、荷電液滴に熱を加えて、溶媒分子を気化させると、裸の試料イオンだけにすることができる。
荷電液滴から試料イオンを作る方法としては、キャピラリー2と対向電極4との間の空間に、70℃程度に加熱した窒素ガスを供給し、そこに荷電液滴を静電噴霧することによって、液滴の溶媒を気化させる方法や、質量分析装置3の対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5を、80℃程度に加熱して、その輻射熱で荷電液滴の溶媒を気化させる方法などがある。これらの方法を、イオン・エバポレーションと呼んでいる。
イオン・エバポレーションによって生成した試料イオンは、対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5から、質量分析装置3の内部に取り込まれる。大気圧下の試料イオンを真空の質量分析装置3に導入するために、差動排気壁が構成される。すなわち、サンプリング・オリフィス5とスキマー・オリフィス6で囲まれた区画は、図示しないロータリー・ポンプ(RP)で200Pa程度に排気されている。また、スキマー・オリフィス6と隔壁7で囲まれた区画は、図示しないターボ・モレキュラー・ポンプ(TMP)で1Pa程度に排気されている。そして、隔壁7の後段は、TMPによって10−3Pa程度に排気され、質量分析部8が置かれている。
また、サンプリング・オリフィス5とスキマー・オリフィス6で囲まれた低真空の区画には、試料イオンの拡散を防ぐためのリングレンズ9が置かれていて、試料イオンが正イオンの場合には正電圧、試料イオンが負イオンの場合には負電圧が、印加されるようになっている。また、スキマー・オリフィス6と隔壁7で囲まれた中真空の区画には、試料イオンを質量分析部8まで導くためのイオンガイド10が置かれ、所定の周波数の高周波電圧が印加されている。
なお、最近のエレクトロスプレー・イオン化システムでは、図2に示すように、LCの移動相など、10〜1000マイクロリットル/分の大流量の試料にも対応できるようにするために、キャピラリー2の周囲に霧化ガスを流せる霧化ノズル11を取り付け、電界力だけでは霧化しきれない10マイクロリットル以上の大流量の試料溶液を、霧化ガス12によって強制的かつ完全に霧化させ、ヒータで数百℃に加熱された円筒型ヒータのヒータ穴(脱溶媒室)内で、試料液滴を脱溶媒することも行なわれている(特許文献1)。
図2は、そのエレクトロスプレー・イオン源の一例を示したものである。このうち、(a)は全体図、(b)は主要部の拡大図である。図2(a)中、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の軸線と、質量分析計の対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5の軸線とは、お互いに直角に交差するように配置されている。キャピラリー2を含む霧化ノズル11と対向電極4の間には、数kVの高電圧が印加されていて、強い電界が形成されている。この電界の作用により、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の内部の溶液試料(例えばLC移動相)は、大気圧下、キャピラリー2を含む霧化ノズル11と対向電極4との間の空間に静電噴霧され、荷電液滴となって乾燥ガス12の中に分散される。このときの溶液試料の流量は、毎分1〜1000マイクロリットルである。このとき生成する荷電液滴は、試料分子の回りに溶媒分子が集まってクラスター状になった帯電粒子なので、熱を加えて溶媒分子を気化させると、裸の試料イオンだけにすることができる。
この帯電粒子から溶媒分子を取り除く目的で、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の先端部は、筒状ヒータ15の円筒状ヒータ穴16の中程に挿入され、ほぼ同心・同軸状に配置・固定されている。筒状ヒータ15の電位は、質量分析計の対向電極4と同電位になるように設定されているため、キャピラリー2を含む霧化ノズル11と筒状ヒータ15の内壁16との間には、強い電界が発生し、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の先端部から静電噴霧されて帯電した試料液滴は、筒状ヒータ15の内壁方向に向かって拡散される。
尚、このときの電位は、生成する帯電粒子が正の電荷を帯びている場合には、筒状ヒータ15の電位はキャピラリー2を含む霧化ノズル11の電位に対してマイナス側の電位になるように、また、生成する帯電粒子が負の電荷を帯びている場合には、筒状ヒータ15の電位はキャピラリー2を含む霧化ノズル11の電位に対してプラス側の電位になるように、それぞれ設定される。図2(a)の例は、生成する帯電粒子が正の電荷を帯びている場合を示している。
ヒータ穴16の中(霧化ノズル11の周囲)には、筒状ヒータ15によって加熱された窒素ガスなどの乾燥ガス12が、キャピラリー2を含む霧化ノズル11からの試料液滴の噴出方向とほぼ一致する方向に流れている。帯電した試料液滴は、上述したような電界の作用により、狭いヒータ穴16の空間に効率良く拡散されると共に、筒状ヒータ15からの輻射熱、およびヒータ穴16の中(霧化ノズル11の周囲)を流れる乾燥ガス12との混じり合いによって、試料液滴の乾燥(脱溶媒化)が行なわれる。そして、霧化ノズル11の回りを流れる乾燥ガス12の流れに乗って下流に向けて押し流され、筒状ヒータ15の内壁面16には直接衝突することなく、質量分析計の対向電極4まで運ばれた後、真空差圧により、サンプリング・オリフィス5から、図示しない質量分析計の真空室内に向けて取り込まれる。
このようすを図示したものが図2(b)である。帯電した試料液滴は、電界力と風力との合成力により、斜め前方方向に拡散しながら、脱溶媒化を起こし、良く乾燥されて試料イオンとなった後、質量分析計の対向電極のサンプリング・オリフィス5から質量分析装置の真空室内に取り込まれる。
このように、最近のエレクトロスプレー・イオン源では、キャピラリー2を含む霧化ノズル11と、筒状ヒータ15の内壁面16との間に発生する電界の助けにより、ヒータ穴16のような狭い空間であっても、静電噴霧された試料液滴が非常に散らばりやすく、結果的に、周囲を流れる乾燥ガス12と極めて良く混じり合うので、高効率で試料液滴の乾燥(脱溶媒化)を行なわせることができる。
その結果、試料液滴の乾燥(脱溶媒化)のために、改めて試料液滴の飛行空間を大きく取る必要がなく、キャピラリー2を含む霧化ノズル11と、対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5とを、お互いに接近させることができるので、キャピラリー2を含む霧化ノズル11と、対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5との間に印加すべき電位差の値をうまく制御することで、筒状ヒータ15を出た帯電試料を、効率良くサンプリング・オリフィス5に引き込むことができる。
こうして、効率の良いイオン・エバポレーションによって生成した試料イオンは、対向電極4に設けられたサンプリング・オリフィス5から、質量分析装置の内部に取り込まれるが、取り込まれて以降の工程は、図1で示したような、従来の質量分析方法と全く同じなので、説明を省略する。
ところで、エレクトロスプレー・イオン源の特徴は、試料分子のイオン化に際して、熱をかけたり、高エネルギー粒子を衝突させたりしない、非常にソフトなイオン化法であるという点にある。従って、ペプチド、タンパク質、核酸などの極性の強い生体高分子を、ほとんど破壊することなく、多価イオンとして、容易にイオン化することができる。また、多価イオンなので、分子量が1万以上のものでも、比較的小型な質量分析装置で測定することが可能である。
これらの有機質量分析の分野では、エレクトロスプレー・イオン源を用いて、精密質量分析ということが、しばしば行なわれる。精密質量分析とは、1mu(ミリマスユニット)程度の精度で、m/z値を測定する高精度分析のことである。予め質量の分かっている標準物質(たとえば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなど)を、質量分析したい未知試料と同時に静電噴霧し、両者を同時にイオン化することにより、標準物質由来のイオンの信号位置に基づいて、未知試料由来のイオンの信号位置を正確に決定するものである。
精密質量分析を行なうためには、質量数が分からない未知試料と、質量数が分かっている標準物質とを、同時に質量分析しなければならない。そこで、図3に示すように、標準物質用の霧化ノズル17と、未知試料用の霧化ノズル18を、予め並置し、両者を同時に静電噴霧にして、イオン化するという方法を取ることがあった(特許文献2)。
図3は、そのエレクトロスプレー・イオン源の一例を示したものである。図中17は、標準物質を通すキャピラリー19を内蔵した霧化ノズルである。霧化ノズル17には、標準物質の静電噴霧を助けるための霧化ガスが、バルブ20を介して、窒素ガスボンベなどのガス源21から供給されている。また、図中18は、未知試料を通すキャピラリー22を内蔵した霧化ノズルである。霧化ノズル18には、未知試料の静電噴霧を助けるための霧化ガスが、バルブ23を介して、窒素ガスボンベなどのガス源24から供給されている。2つのバルブ20および23は、それぞれ独立して開閉できるように、図示しないコンピュータなどの制御装置により、制御されている。
2つの霧化ノズル17および18に対向する位置には、質量分析装置の対向電極25が置かれ、霧化ノズルとの間に、数kV程度の直流高電圧が印加されている。この高電圧は、スイッチ26および27により、任意にオン/オフすることができるように構成されている。
すなわち、スイッチ26をオンにすると、霧化ノズル17と対向電極25の間に高電圧が印加されて、両者の間に強い電界が発生する。このとき、スイッチ26に同期して、バルブ20を開き、ガス源21と霧化ノズル17の間を連通させてやれば、霧化ガスが霧化ノズル17に供給され、電界力と霧化ガスの作用とによって、標準物質が静電噴霧され、生成した霧滴が電界によりイオン化されて、対向電極25に設けられたサンプリング・オリフィス28に取り込まれる。
また同様にして、スイッチ27をオンにすると、霧化ノズル18と対向電極25の間に高電圧が印加されて、両者の間に強い電界が発生する。このとき、スイッチ27に同期して、バルブ23を開き、ガス源24と霧化ノズル18の間を連通させてやれば、霧化ガスが霧化ノズル18に供給され、電界力と霧化ガスの作用とによって、未知試料が静電噴霧され、生成した霧滴が電界によりイオン化されて、対向電極25に設けられたサンプリング・オリフィス28に取り込まれる。
この方法以前の精密質量分析では、標準物質と未知試料を同時にイオン化して質量分析していたため、スイッチ26、27とバルブ20、23を、すべて同時にオン/オフしていたが、この例では、必要に応じてスイッチ26、27の内の片一方、およびそれに同期して開閉するバルブ20、23の内の片一方を任意にオン/オフできるように制御できるようにしている。これにより、それまでは、同時にイオン化していた標準物質と未知試料を、片一方の試料のみのイオン化に留めることが可能になった。
その結果、従来は、標準物質の信号と未知試料の信号とが、互いに重なり合って検出されていても、各々の信号を区別して確かめるすべがなかったが、この方法によれば、標準物質の信号、または未知試料の信号を、それぞれ単独で観測することが可能になるので、容易に標準物質由来の信号と、未知試料由来の信号との重なり合いを、判別することができる。
特開2002−15697号公報 特開2002−245962号公報
ところで、これらのエレクトロスプレー・イオン源を用いた質量分析方法には、1つの問題点があった。それは、試料のソフトなイオン化、あるいは、試料イオンの精密質量分析という点では、技術的な改良が積み重ねられてきたものの、それらの技術には、試料イオン同士、あるいは試料イオンと試料分子間で、どのような反応が起きているかを分析しようという視点が、まったく欠落していたことであった。
本発明の目的は、上述した点に鑑み、試料イオン同士、あるいは試料イオンと試料分子とが、気相において、どのような反応を行なっているかを、容易に分析することができる大気圧イオン源、および、それを用いた質量分析方法を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかる大気圧イオン源は、
複数本の霧化ノズルと、
該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室とを備え、
該脱溶媒室は、開閉弁により密閉可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室は、密閉容積や内部圧力を可変することが可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室は、内部の温度制御が可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室の温度制御範囲は、−100〜400℃であることを特徴としている。
また、前記大気圧イオン源は、エレクトロスプレー・イオン源であることを特徴としている。
また、本発明にかかる大気圧イオン源を用いた質量分析方法は、
複数本の霧化ノズルと、
該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室と
を備えた大気圧イオン源を用いた質量分析方法であって、
前記複数本の霧化ノズルの内、少なくとも1本の霧化ノズルで試料をイオン化するとともに、そのイオンを、他の霧化ノズルで霧化された試料イオン、または試料分子とともに、前記脱溶媒室内で気相反応させ、その結果、生成する生成物イオンを、質量分析装置により分析するようにしたことを特徴としている。
また、前記脱溶媒室は、開閉弁を備え、密閉可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室は、密閉容積や内部圧力を可変することが可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室は、内部の温度制御が可能な構造になっていることを特徴としている。
また、前記脱溶媒室の温度制御範囲は、−100〜400℃であることを特徴としている。
また、前記大気圧イオン源は、エレクトロスプレー・イオン源であることを特徴としている。
本発明の大気圧イオン源、および、それを用いた質量分析方法によれば、複数本の霧化ノズルと、該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室とを備えた大気圧イオン源を用いた質量分析方法であって、前記複数本の霧化ノズルの内、少なくとも1本の霧化ノズルで試料をイオン化するとともに、そのイオンを、他の霧化ノズルで霧化された試料イオン、または試料分子とともに、前記脱溶媒室内で気相反応させ、その結果、生成する生成物イオンを、質量分析装置により分析するようにしたので、試料イオン同士、あるいは試料イオンと試料分子とが、気相において、どのような反応を行なっているかを、容易に分析することができるようになった。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図4は、本発明にかかる大気圧イオン源の一実施例を表わしたものである。
図中29は、円筒型容器で構成される脱溶媒室である。脱溶媒室29は、大気圧下に置かれている。脱溶媒室29の室壁には、図示しないヒータが埋め込まれていて、室温から+400℃までの範囲で、脱溶媒室29を温度制御することができる。また、脱溶媒室29の室壁には、乾燥ガス30を供給するガスノズル31が設けられていて、窒素ガスなど不活性の乾燥ガス30が、−100〜+400℃までの範囲の、任意の温度に温度制御されて、脱溶媒室29内に吹き込まれる。
キャピラリー2を含む霧化ノズル11と脱溶媒室29との間には、図示しないが、図2の中で示されたものと同じような直流電源により、数kVの高電圧が印加されていて、強い電界が形成されている。この電界の作用により、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の内部の溶液試料(例えばLC移動相)は、大気圧下、脱溶媒室29内の内部空間に静電噴霧され、荷電液滴となって乾燥ガス30の中に分散される。このときの溶液試料の流量は、毎分1〜1000マイクロリットルである。このとき生成する荷電液滴は、試料分子の回りに溶媒分子が集まってクラスター状になった帯電粒子なので、温度制御された乾燥ガス30と混じり合わせて、溶媒分子を気化させることにより、液滴を乾燥させ、裸の試料イオンだけにすることができる。
尚、このとき、脱溶媒室29に印加される電位は、生成する帯電粒子が正の電荷を帯びている場合には、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の電位に対して、マイナス側の電位になるように、また、生成する帯電粒子が負の電荷を帯びている場合には、キャピラリー2を含む霧化ノズル11の電位に対して、プラス側の電位になるように設定される。
このような霧化ノズル11を、脱溶媒室29内に複数本(図4の例では2本)用意し、複数の霧化ノズル11から、異なる試料を同時にイオン化させる。このときの霧化ノズル11への高電圧印加と霧化ガス供給のタイミングは、図3の例で示したように、高電圧印加と霧化ガス供給とを同期させつつ、各霧化ノズル11ごとに任意のタイミングで、試料分子のイオン化が実行できるよう、コンピュータなどの図示しない制御手段により制御される。
図5は、本発明にかかるエレクトロスプレー・イオン源の脱溶媒室29の近傍を拡大したものである。脱溶媒室29には、開閉弁32が設けられていて、必要に応じ、脱溶媒室29の開口部を密閉、あるいは解放することができるような構造になっている。図5の例では、脱溶媒室29の軸方向と平行な方向に、モータ33の軸が設置され、その軸に、プレート状の開閉弁32が取り付けられている。モータ33の軸が回転することにより、プレート状の開閉弁32が、脱溶媒室29の開口部を覆ったり、あるいは開放したりすることができる。
開閉弁32の中央には、小さな導通穴34が設けられていて、開閉弁32が脱溶媒室29の開口部を覆った際に、脱溶媒室29の内部と脱溶媒室29の外部を連通している。これにより、脱溶媒室29内部に供給され続ける乾燥ガス30と霧化ガス35を、この小さな導通穴34から適宜リークさせることができ、脱溶媒室29の内部圧力が流入するガスにより異常に上昇したり、ガスが内部圧力上昇のために流入不能になったりする危険を回避させている。このように、脱溶媒室29は、密閉された状態でも、その密閉度はあまり高くないので、乾燥ガス30と霧化ガス35を常時供給し続けることが可能である。
また、複数の霧化ノズル11を保持している絶縁物製の台座37は、筒状の脱溶媒室29に嵌合しており、脱溶媒室29の室壁に沿って摺動することができる。これにより、脱溶媒室29がシリンダー、台座37がピストンの働きをして、密閉された脱溶媒室29の内部容積や内部圧力を、任意に変化させることができる。尚、台座37が絶縁物で作られている理由は、霧化ノズル11と脱溶媒室29との間に、静電噴霧用の電位差を設けることを可能にするためである。
このような構成において、霧化ノズル11からの静電噴霧時に、一時的に開閉弁32を閉じて、脱溶媒室29を密閉状態にすると、大気圧下にある脱溶媒室29内において、異なるイオン同士が互いに衝突し合って気相反応を起こし、反応が促進されて、生成物イオンが生成する。霧化ノズル11の先端部は、複数のノズル同士(図5の例では2本のノズル)の静電噴霧軸が互いに交差するように、内側に向けて曲げられているので、生成したイオン同士を効率良く衝突させることができ、気相反応を促進させることができる。乾燥ガス30を不活性ガスではなく、酸素ガスなどの活性ガスにすれば、乾燥ガス30を気相反応に関与させることもできる。
脱溶媒室29の内部は、脱溶媒室29の壁中に設けられた、任意のタイミングでオン・オフ可能なヒータ36、および低温から高温まで任意の温度に温度制御された乾燥ガス30により、−100〜+400℃の範囲で温度制御が可能なので、さまざまな温度で、気相反応を進行させることができる。また、台座37をピストン代わりに用いて、脱溶媒室の内部容積を任意に設定すると共に、乾燥ガス量と試料の静電噴霧の量を任意に制御することにより、さまざまな気相濃度と圧力とで、気相反応を進行させることもできる。
この生成物イオンを、開閉弁32を解放後、乾燥ガス30の流れに乗せて、下流に向けて押し流せば、脱溶媒室29の室壁には直接衝突させることなく、質量分析計の対向電極4まで運ばせることができ、更に、真空差圧により、サンプリング・オリフィス5からスキマー・オリフィス6を経由して、図示しない質量分析計の真空室内に向けて、取り込ませることができる。このように構成することにより、試料イオン同士が気相においてどのような反応を行なっているかを、質量分析計により、直接観測することができる。
さて、図4に示すように、サンプリング・オリフィス5から質量分析装置3の内部に取り込まれた生成物イオンは、図示しないロータリー・ポンプ(RP)で、200Pa程度に排気されたサンプリング・オリフィス5とスキマー・オリフィス6で囲まれた区画と、図示しないターボ・モレキュラー・ポンプ(TMP)で1Pa程度に排気されたスキマー・オリフィス6と図示しない隔壁で囲まれた区画とを通って、TMPによって10−3Pa程度に排気された、図示しない質量分析部に送られて、質量分析される。
サンプリング・オリフィス5とスキマー・オリフィス6で囲まれた低真空の区画には、生成物イオンの拡散を防ぐための、リングレンズ9が置かれていて、生成物イオンが正イオンの場合には正電圧、生成物イオンが負イオンの場合には負電圧が印加されるようになっている。また、スキマー・オリフィス6と図示しない隔壁とで囲まれた中真空の区画には、生成物イオンを図示しない質量分析部まで導くための、イオンガイド10が置かれ、所定の周波数の高周波電圧が印加されている。これらの点は、従来技術で説明したものとまったく同じである。
尚、本発明には、さまざまな変形例が可能である。例えば、複数本の霧化ノズル11の内、高電圧を印加するものと、高電圧を印加しないものとを設け、高電圧を印加した霧化ノズル11からは試料イオンを発生させるとともに、高電圧を印加しない霧化ノズル11からは電荷を帯びない試料分子を発生させて、イオンと分子との間の気相反応を観測できるようにしても良い。これにより、イオン同士の気相反応ばかりではなく、イオンと分子との気相反応を研究することが可能になる。
また、エレクトロスプレー・イオン源だけでなく、サーモスプレー・イオン源や大気圧化学イオン化イオン源など、他の大気圧イオン源に応用しても良いことは、言うまでもない。
大気圧イオン源に、広く利用できる。
従来のエレクトロスプレー・イオン源を示す図である。 従来のエレクトロスプレー・イオン源を示す図である。 従来のエレクトロスプレー・イオン源を示す図である。 本発明にかかるエレクトロスプレー・イオン源の一実施例を示す図である。 本発明にかかるエレクトロスプレー・イオン源の一実施例を示す図である。
符号の説明
1:溶液試料供給源、2:キャピラリー、3:質量分析装置、4:対向電極、5:サンプリング・オリフィス、6:スキマー・オリフィス、7:隔壁、8:質量分析部、9:リングレンズ、10:イオンガイド、11:霧化ノズル、12:乾燥ガス、15:筒状ヒータ、16:ヒータ穴(内壁)、17:霧化ノズル、18:霧化ノズル、19:キャピラリー、20:バルブ、21:ガス源、22:キャピラリー、23:バルブ、24:ガス源、25:対向電極、26:スイッチ、27:スイッチ、28:サンプリング・オリフィス、29:脱溶媒室、30:乾燥ガス、31:ガスノズル、32:開閉弁、33:モータ、34:導通穴:35:霧化ガス、36:ヒータ:37:台座

Claims (11)

  1. 複数本の霧化ノズルと、
    該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室とを備え、
    該脱溶媒室は、開閉弁により密閉可能な構造になっていることを特徴とする大気圧イオン源。
  2. 前記脱溶媒室は、密閉容積や内部圧力を可変することが可能な構造になっていることを特徴とする請求項1記載の大気圧イオン源。
  3. 前記脱溶媒室は、内部の温度制御が可能な構造になっていることを特徴とする請求項1または2記載の大気圧イオン源。
  4. 前記脱溶媒室の温度制御範囲は、−100〜400℃であることを特徴とする請求項3記載の大気圧イオン源。
  5. 前記大気圧イオン源は、霧化ガスが供給可能で、かつ高電圧が印加可能な霧化ノズルを備えたエレクトロスプレー・イオン源であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の大気圧イオン源。
  6. 複数本の霧化ノズルと、
    該霧化ノズルから噴霧された試料液滴を脱溶媒化する脱溶媒室と
    を備えた大気圧イオン源を用いた質量分析方法であって、
    前記複数本の霧化ノズルの内、少なくとも1本の霧化ノズルで試料をイオン化するとともに、そのイオンを、他の霧化ノズルで霧化された試料イオン、または試料分子とともに、前記脱溶媒室内で気相反応させ、その結果、生成する生成物イオンを、質量分析装置により分析するようにしたことを特徴とする大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
  7. 前記脱溶媒室は、開閉弁を備え、密閉可能な構造になっていることを特徴とする請求項6記載の大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
  8. 前記脱溶媒室は、密閉容積や内部圧力を可変することが可能な構造になっていることを特徴とする請求項7記載の大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
  9. 前記脱溶媒室は、内部の温度制御が可能な構造になっていることを特徴とする請求項6、7、または8記載の大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
  10. 前記脱溶媒室の温度制御範囲は、−100〜400℃であることを特徴とする請求項9記載の大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
  11. 前記大気圧イオン源は、霧化ガスが供給可能で、かつ高電圧が印加可能な霧化ノズルを備えたエレクトロスプレー・イオン源であることを特徴とする請求項6ないし10のいずれか1つに記載の大気圧イオン源を用いた質量分析方法。
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