JP2005172825A - ポリマーの分子量を決定する装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリマーの分子量を決定する装置
【解決手段】本発明は、被分析物エレクトロスプレーから発生した電荷減少気相被分析物を使用し、飛行時間型質量分析計(TOF−MS)と連結した、ポリマーを含む分子および巨大分子の直接質量分析のための装置および方法に関する。本発明に従い分析されるポリマーを含む分子および巨大分子には、1キロダルトン(kD)から500,000kDの間の重量平均分子量を有する水溶性および水不溶性ポリマー双方が含まれる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、被分析物エレクトロスプレーから発生した電荷減少気相被分析物を使用し、飛行時間型質量分析計(TOF−MS)と連結した、ポリマーを含む分子および巨大分子の直接質量分析のための装置および方法に関する。本発明に従い分析されるポリマーを含む分子および巨大分子には、1キロダルトン(kD)から500,000kDの間の重量平均分子量を有する水溶性および水不溶性ポリマー双方が含まれる。
【選択図】なし
Description
本発明は、分子および巨大分子の分子量を決定するための装置および直接方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリマーエレクトロスプレーから発生した電荷の減少したポリマーイオンを使用して、飛行時間型質量分析計(TOF−MS)と連結させたポリマーの直接的質量分析を目的とする。
ポリマーの分子量分布の決定は、ポリマーの特性評価の重要な側面である。ポリマーの分子量分布(MWD)を決定する慣用方法は、MWDが正確に決定されているある種のスタンダードポリマーと対応させるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の使用である。しかしながら、多くのポリマーについての分子量分布は、GPCを使用しては測定することができない。GPCを使用したMWDの測定が成功するためには、GPCカラム充填物質に適合し、カラムとの吸着相互作用を避ける溶媒にポリマーを溶解させなければならない。質量分析法(MS)は、ポリマーのMWDを決定する他の方法である。しかしながら、質量分析検出が多岐にわたる分子を同定するための有効な手段を提供する一方で、高分子量化合物を分析するためのその使用は、与えられた被分析物(analyte)による気相イオンを生成させることに関する問題により、現在は妨げられている。特に、重要な生体化合物および工業用ポリマーの混合物の組成物を測定するための質量分光分析の利用は、蒸発およびイオン化プロセスの過程での低い試料揮発性および不可避のフラグメンテーションに関する実験的困難により、厳しく制限されている。これらの制限の結果として、生体巨大分子およびポリマーを含有する試料の質量分析による定量分析の可能性は、大部分未解決のままである。加えて、ポリマーイオンは、ある範囲の荷電状態(z)を有して生成される場合がある。この範囲を伴ってMWDの広いポリマーを分析する場合、イオンがそれらのm/z比に従って分離されるので、結果的に深刻なスペクトルの重複となる。かかる重複は、いったん平均分子量が約10,000ダルトンを超えると、ポリマーの正確なMWDの決定をしばしば不可能にする。
質量分光分析のための現在利用可能なシステムおよび方法に関連する典型的な制限は、米国特許第6,649,907B2号に記載されている事項であり、この文献はペプチド、ヌクレオチド、糖タンパク質、タンパク質、DNAおよび脂質をはじめとする生体化合物の質量分光分析に使用するための電荷減少イオン化イオン源について開示しており、それらの測定された質量範囲は18000amuまでである。残念ながら、水溶性ポリマーの混合物である、それぞれ2,000ダルトンおよび10,000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)の混合物についての質量分析を遂行する試みは、その質量分解能が、多重荷電およびコロナ放電イオン化源の結果として、いかに劣ったものであるか(ピークブロード化)を示している。また、生体分子については、スペクトル重複問題は実際には存在せず、その質量が質量分析器の範囲を超えるがm/zは多重荷電によりその範囲を超えない粒子については、多重荷電は妨害であることよりむしろ、しばしば優位に使用される。水溶性ポリマーに加えて、工業的に重要かつ商業的に入手可能な多くのポリマーは水溶性ではなく、かかるポリマーのエレクトロスプレーを調製するための実際的かつ有効な方法を有し、および安定なポリマーエレクトロスプレーを生成する際に有効なエレクトロスプレー発生器を飛行時間型質量分析器(TOF−MS)と連結して、かかるポリマーの質量分析を直接遂行する装置を有することが望ましい。その方法についての一つの利点は、測定されたポリマーデータの分子量軸が絶対的であることである。それ故、1〜100ナノメートル(nm)の範囲のポリマー粒径について、ポリマーの分子量分布を高分解能で測定する直接法を提供することが望ましい。また、各エレクトロスプレー液滴においてクラスター化されている1以上のポリマー分子を含むエレクトロスプレーポリマークラスター(ユニマー n=1、ダイマー n=2、ヘキサマー n=6およびより高位のクラスター)を生じさせることが望ましい。かかる装置および方法は、それらの分子量が数千ダルトン(1〜3nmのポリマー粒径に相当)から数億ダルトン(15〜100nmのポリマー粒径に相当)の範囲にわたる工業用ポリマー;GPCを含む従来の方法および従来のエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)を使用しては分析することができない分子量分布を有するポリマーの先例の無い直接質量分析を提供する。
従って、本発明は、慣用の質量分光分析器の質量範囲を超える分子量を有する巨大分子の直接質量分析のための装置を提供する。本発明者らは、高誘電率を有する溶媒を使用して水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマー双方の電荷減少エレクトロスプレーを発生させることによりポリマーの直接質量分析のための装置および方法を見出した。エレクトロスプレー中に形成されるポリマーイオンは、それらの長さ、即ちそれらの質量に比例したレベルの電荷を運搬する。生じたポリマーイオンの電荷の数は、放射性源またはコロナ放電源を使用して単一体(unity)に接近する値まで減少される。発生したポリマーエレクトロスプレーは、直接質量分析するため飛行時間型質量分析計(TOF−MS)に供給される。本発明者らは、また、ポリマーの1からn分子までを含む各エレクトロスプレー液滴中のポリマーイオンのクラスターがエレクトロスプレー液滴中のポリマー濃度を変えることにより発生することを見出した。
本発明は、分子および巨大分子の直接質量分析のための装置であって:分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを生成するためのエレクトロスプレー発生器を含み、そのエレクトロスプレー発生器は、気相被分析物イオンの電荷減少のためのイオン化源を含み、被分析物の直接質量分析のための飛行時間型質量分析計と連結している直接質量分析のための装置を提供する。
本発明は、また、分子および巨大分子の分子量分布を決定する直接法であって、(a)分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを発生させる工程;ならびに
(b)被分析物の電荷が減少したエレクトロスプレーを飛行時間型質量分析計に導くことにより被分析物の質量比を測定する工程
を含む直接法を提供する。
(b)被分析物の電荷が減少したエレクトロスプレーを飛行時間型質量分析計に導くことにより被分析物の質量比を測定する工程
を含む直接法を提供する。
本明細書において、1ダルトンは、炭素の最も豊富な同位元素である、12の原子質量を有する(12C)の1/12に等しい原子質量単位(1ダルトン=1原子質量単位(amu))である。本発明に従い分析されるポリマーには、1キロダルトン(kD)から500,000kDの間の重量平均分子量を有する水溶性および水不溶性ポリマー双方が含まれる。本明細書において、用語「水溶性」は、ポリマーに適用される場合、ポリマーが水100グラムあたり少なくとも1グラム、好ましくは水100グラムあたり少なくとも10グラム、より好ましくは水100グラムあたり少なくとも約50グラムの溶解度を有することを意味する。用語「水不溶性」は、ポリマーに適用される場合、水100グラムあたり1グラム未満の低いまたは非常に低い水溶解度を有するポリマーを意味する。用語、巨大分子は、10,000ダルトンより大きい分子量を有するポリマーを含む大きな分子を意味する。
本明細書において、用語「クラスターイオン」は、1(ユニマー)からn(たとえば、n=6はヘキサマーを意味する)分子の基本対照ポリマー質量スタンダードを含む基本対照ポリマー質量スタンダードから発生する一連の内部依存性質量を意味する。クラスターイオンの数は、液滴中のポリマー濃度に伴い変化する。クラスターイオンを発生させる利点は、それが質量範囲を因数n(m)によって拡張することである。たとえば、50kDポリエチレングリコール(PEG)ユニマーは、12kD PEG テトラマー(すなわち4×12kD=48kD、n=4)と等価の測定された移動度、質量および密度を有する。
本発明に従い、水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーのエレクトロスプレーは、エレクトロスプレー器(米国特許第5,873,523号)およびエレクトロスプレー液滴発生器(米国特許出願公開第2003/0136680 A1号)として参照されるエレクトロスプレー源(ES)を使用して生成される。任意の慣用のまたは商業的に入手可能なエレクトロスプレー源または発生器が本発明に従い有用に使用される。本発明において使用されるエレクトロスプレー器は、Analytical Chem.、第68巻、1895〜1904頁(1996年)におけるKaufmanらにより記載された装置に設計的に類似のものである。同様のエレクトロスプレー液滴発生器は、TSIモデル3480エレクトロスプレーエアロゾル発生器(TSI Inc.、米国、ミネソタ州、セントポール)として商業的に入手可能である。代替的なエレクトロスプレー器は、米国特許第5,873,523号に記載されている。
ESは、被分析物としての水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーを含む導電性溶液から、均一なナノメートルサイズのエレクトロスプレー(また、液滴およびエアロゾルとも称される)を生成する。用語「エレクトロスプレー」は、よく限定された粒度分布を有する液滴(およびエアロゾル)を意味し、これはキャピラリーから特定の距離(センチメートル、cm〜ミリメートル、mm)離れて位置する基準電極に対して数キロボルト(kV)の電位を維持しながら、キャピラリーを通して充分に導電性の液体を供給することによって発生する。用語エアロゾルは、液滴形態で空気中に懸濁された、被分析物のディスパーションおよびサスペンションを含む、ナノメートル(nm)サイズの溶液を意味する。本発明のエレクトロスプレーは、大きな印加電位の下でESから溶媒液滴とし生成され、溶媒液滴は、溶解したポリマーを含有するよく限定された粒度分布を有する。用語被分析物は、溶液を生じる溶媒中に溶解された固体被分析物(ポリマー)を意味する。用語、溶解ポリマーおよびポリマー溶液は、ポリマーの懸濁液および分散液、典型的にはポリマーの微細懸濁液および分散液を包含するものとして本文中において理解される。被分析物の微細懸濁液および分散液のエレクトロスプレーは、溶媒または液体キャリヤーを使用して生成される。懸濁液および分散液は、溶媒または液体キャリヤー中の被分析物の均質なまたは不均質な混合物を含む。
本発明のESは、液体を噴出するための出口を有するキャピラリーを含み、前記液体は高電圧電力供給によって高電位に荷電される。キャピラリーの典型的な例は、シリカキャピラリーである。代替的なキャピラリーは、導電性材料から製造される。基準電極はキャピラリーから特定の距離(cm)を離れて位置する。気体源が使用され、キャピラリー出口の領域において、直ちに気体領域を確立する。典型的な気体源としては、たとえば、空気および二酸化炭素が挙げられる。キャピラリー出口およびES中の電極との間の電位差は、双方とも高度に均一な粒径の液滴を含有するエレクトロスプレーを確立するのに充分なものである。
ポリマー被分析物を含む液滴は層流ガスフローにより運搬され、そこで迅速に脱溶媒和し、乾燥して、中性および荷電されたポリマー粒子を形成する。これはイオン化源(たとえば、アルファ放射放射線源)に曝露され、液滴が蒸発するにつれて単一体に接近する値まで粒子の電荷を減少させる。アルファ線放射源(たとえば、典型的には5ミリキュリーの210Po)への曝露レベルは、金属箔でその活性領域を覆うことで制御される。それは、ポリマー被分析物が多重荷電種に関連したピークを表わさないように調節される。液滴には、乾燥ポリマー粒子が電荷減少する前に蒸発するのに充分な時間が与えられる。
ポリマー粒子は、最初にエレクトロスプレーされた液滴が運搬した同一の電荷量を運搬する。アルファ−放射源電荷減少プロセスは、荷電されたポリマー粒子の良く特徴付けられた確かな流れを生み出す。本明細書において、良く特徴付けられたとは、単一的に荷電されたポリマー粒子の画分は粒径に依存するが、粒径と単一電荷を運搬するポリマー粒子の画分との間の関係が充分確立されていることを意味する。代替法は、荷電されたポリマー粒子の流入流れが単一電荷を超えない電荷を有する粒子でもって出て行くことを確実にするように使用され、たとえばアルファ放射線源と同一の電荷状態減少を有する第二次電子を生じさせる交流コロナを含む。
本方法の一態様によれば、エレクトロスプレーは、かなり低いポリマー被分析物濃度を使用する必要なしに、被分析物として一つだけのポリマー分子を含むような粒度分布を有して発生する。水溶性ポリマー(たとえば、PEG)の場合において、水が溶媒として使用され、これは少量の1以上の電解質(たとえば、10mMの酢酸アンモニウム)を同時に含む。水不溶性ポリマー(たとえば、ポリスチレン、PS)の場合において、高誘電率を有する溶媒(たとえば、N−メチル−2−ピロリジノン、NMP)が使用され、これは少量の1以上の電解質(たとえば、10mMのトリフルオロ酢酸、TFA)を同時に含む。与えられた液滴径およびポリマー分子量については、液滴あたり一ポリマー鎖を提供するのに対応するポリマー濃度が計算される。たとえば、50nmの初期液滴径を有する100kDのPEGは、2538ppmの濃度において単一PEG鎖を提供する。100nm、500nm、2μmおよび10μmの初期液滴径を有する同一ポリマーは、それぞれ317ppm、2.5ppm、0.04ppmおよび0.0003ppmの濃度において単一のPEG鎖を提供する。従ってシグナルを最大化するために、液滴径は最小にされ、エレクトロスプレー化は挟い粒度分布を有する液滴を発生する。液滴中のポリマー濃度を増加することによって、複数ポリマー分子(鎖)を提供し、同一乾燥ポリマー粒子における、クラスターイオンと称する、分子のクラスターが提供される。クラスターイオンの数、n、が使用されて、より高い分子量mの単一分子(鎖)ポリマーについて合理的な概算がなされ、それにより因数n(m)により分子量範囲が拡張される。たとえば、120kDのPEGのヘキサマーは、単一鎖(分子)720kDのPEG(6×120kD=720kD)と等価である。
ES装置は、質量分析器に電荷減少ポリマー粒子を送り、ポリマーエレクトロスプレーから発生した気相ポリマーイオンの荷電に対するその質量比(m/z)を決定する。例示的な態様に従えば、質量分析器は、10,000ダルトンより大きい分子質量を有する化合物についてのm/z比率の正確な測定を提供するために適した検出システムを装備した飛行時間型質量分析計(TOF−MS)である。1キロダルトン(kD)から500,000kDの間の重量平均分子量を有するポリマーを含む分子および巨大分子の質量分析には、該装置を直接使用し、当該使用では、慣用のESI−MSおよびマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS)の場合のような固有の制限に苦しむことはなく、すなわち、多数の異なる電荷状態のそれぞれの複数質量からのスペクトルの密集に苦しむことはない。後者の二つの装置は、工業用ポリマーの質量分布を決定するには不満足であったが、一方で本発明の装置は工業用ポリマーの質量分布を含む正確な、直接質量分析を提供する。
本発明は、また、
(a)分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを発生させる工程;および
(b)被分析物の電荷減少したエレクトロスプレーを飛行時間型質量分析計に導くことにより被分析物の質量比を測定する工程
を含む分子および巨大分子の分子量分布を決定する直接法を提供する。
(a)分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを発生させる工程;および
(b)被分析物の電荷減少したエレクトロスプレーを飛行時間型質量分析計に導くことにより被分析物の質量比を測定する工程
を含む分子および巨大分子の分子量分布を決定する直接法を提供する。
別の例示的な態様に従えば、代替の質量分析器としては、これらに限定されないが、たとえば、微分型電気移動度測定器(DMA)、四重極型質量分析計、タンデム質量分析計、イオントラップおよびそれらの質量分析器の組み合わせが挙げられる。
DMA態様に従えば、ES装置は電荷減少ポリマー粒子を微分型電気移動度測定器(DMA)に送り、そこで荷電ポリマー粒子の粒径が測定される。イオン電気移動度は、イオンの物理的特性であり、それが電場に付される場合にイオンが獲得する速度に相関する。電気移動度Zは、数学的関係式Z=V/Eから定義され、式中Vは終端速度およびEは電場である。粒子直径は、次の項を代入することによりZ=neCc/3πηdの関係より決定される、式中nは粒子についての電荷の数(n=1)であり、e=1.6×10−19クーロン/電荷、Ccは粒子サイズ依存性滑り補正係数、ηは気体粘度およびdは粒子直径である。粒子直径は既知のパラメーターの関数として、粒子直径についての直接の関係を提供する関係式:d=[neCc/3πη][E/V]から導かれる。Eを変えることにより、荷電ポリマー粒子の異なる粒子直径が得られる。本発明は高分解能DMAを使用してポリマーイオン電気移動度を測定し、測定されたポリマーイオン移動度をポリマー質量に関係付ける正確な検量方法を開発する方法を提供する。
DMAは、流れ場と電場を組み合わせて、時間ではなく空間においてイオンを分離する。本発明において使用されるDMAは、T.Eichlerにより、Fachhochschule Offenburg、ドイツ(1997年5月)に提出された「イオンおよびナノ粒子についての微分型電気移動度測定器:高レイノルズ数における層流」と題された論文において記載され、その改良である大型層流化入り口を有する小型ウイーン型DMAが、Herrmann等によりミシシッピー州セントルイスにおいてAAARの年次総会、2000年、10月6〜10日において記載された。実際には、典型的なDMAは、2nmより小さな粒子の粒度分布を測定することができない。しかしながら、それらはMw>10kDを有するポリマーを測定する本発明において容易に使用される。高分解能DMAは、1nm未満の粒子の粒度分布を測定できるよう設計および製作された。米国特許出願第2003/0116708A1号に記載された該高分解能DMAにおいて、層流は異例に高く、層流を維持している間の分析部分における平均速度および円筒状電極間隔(0.5センチメートル)から計算して、10,000〜30,000以上のレイノルズ数(Re)に相当する。用語「レイノルズ数」は、流体の密度、流体の速度および固有の長さの積全てを、流体の粘性係数で割ったものに等しい無次元の数である。小さなMwを有する有機分子についてのイオン移動度を測定するのに、該高Re数が要求されるのに対し、1kDより大きいMwを有するポリマーについてのイオン移動度を正確に測定するには該高Re数が必要とされない。一利点は、ポリマー質量を正確に決定するための方法が、層流を維持しながら2000未満(Re<2000)のレイノルズ数においてDMAを作動することを要求するということである。
電荷減少ポリマーイオンは、DMAを通して注入され、DMAはそれらの直径および移動度に従い荷電ポリマーイオンを分離する。移動度で選択されたポリマー粒子を感知する検出器は、約1秒の応答時間および約10−16アンペアのノイズレベルを有するLazcano Inc.から商業的に供給される電位計である。最大ピーク高さにおける全幅(FWHM)が2.7%より優れた移動度分解能を有するDMAが、典型的である。分解能は、DMAを改変することにより1.8%FWHMまで改良することができる。
ポリマーの測定された移動度分布は、下記の方法でそれぞれのポリマー質量に相関する。ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマーのエレクトロスプレーは、それらが単一または複数ポリマー鎖から構成されているか否かにかかわらずガラスまたは結晶状態に相当する嵩密度を有する球状ポリマー粒子を生成する。該ポリマー粒子は、球状であり、気体平均自由行程よりずっと小さいので、移動度Zおよび質量mはお互い相関し得る。何故ならmおよびZ双方は、Journal of Aerosol Science、第26巻、459〜475頁(1995年)においてH.TammetによりおよびTrends in Analytical Chemistry 第17巻、328〜339頁(1998年)においてde la Moraらに従い粒子直径dと関連するからである。:
式中、ρは球状粒子の密度であり、qはその電荷であり、pは圧力であり、Tは温度であり、mgは懸濁化気体の分子質量であり、kはボルツマン定数、dgは気体粒子衝突の有効直径であり、およびαは相当する適応係数である。
用語αは弾性衝突については0および完全非弾性衝突については1である。空気中の小粒子の多様な測定は、α=0.91である場合の式(2)に一致し、これはS.Friedlanderによる「Dust,Smoke and Haze」、J Wiley and Sons、第2版、2000年において報告されており、dgが0.53nmであるとも報告されている。式(1)および(2)から結果的に、m1/3およびZ−1/2の量は双方ともdに関して線形的であり、それぞれがそれぞれに対しプロットされたとき直線の関係を生じる:
式中、定数AおよびBは上記により与えられた情報から推定されるだけでなく、キャリブレーションから得られる。より大きなポリマー粒子(d>10nm)についての一般的な手順としては、関係Z(d)を逆数にして、移動度直径d(Z)に関して、測定された移動度を表す。これはd(Z)対m1/3のプロットが、対象である工業的ポリマーについての質量の全範囲内で直線となるよう、メガダルトン範囲を含むよう代数的になされる。
移動度Zおよび移動度の逆数1/Zは、下記のMillikan関係式から決定することができる。式中Knudsen数Knはキャリヤーガスの平均自由行程の2倍と粒子直径dとの間の比率である:
式中、μは気体の速度係数であり、およびρgは気体密度である。これはZの関数としてのdを生じ、それによりZ−1/2の代わりにdを使用することが可能になり、式(5)に示されるようにdおよびm1/3との間に直線関係を生じさせる。
従って、本発明は、
(a)ポリマーおよび1以上の対照ポリマーをエレクトロスプレーする工程;
(b)高分解能微分型電気移動度測定器を使用してポリマーおよび1以上の対照ポリマーについてのイオン移動度の分布を測定する工程;および
(c)相当する測定されたポリマーイオン移動度からポリマー質量を計算することにより1以上の対照ポリマーと比較してそのポリマーの分子量を得る工程
を含むポリマーの分子量分布を決定する方法を提供する。
(a)ポリマーおよび1以上の対照ポリマーをエレクトロスプレーする工程;
(b)高分解能微分型電気移動度測定器を使用してポリマーおよび1以上の対照ポリマーについてのイオン移動度の分布を測定する工程;および
(c)相当する測定されたポリマーイオン移動度からポリマー質量を計算することにより1以上の対照ポリマーと比較してそのポリマーの分子量を得る工程
を含むポリマーの分子量分布を決定する方法を提供する。
水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーについて高分解能質量(分子量)分布決定のための電荷減少エレクトロスプレー移動度分析の有効性が、本発明の方法を使用して実証された。水溶性ポリマーの代表例はPEGである。一例において、与えられた液滴中に唯一のPEG分子(鎖)を含有する希釈ポリマー濃度および与えられた液滴中にPEG分子のクラスターが存在する増加したポリマー濃度におけるエレクトロスプレーから、12.6kDのPEG試料についてのイオン移動度スペクトルが測定された。低ポリマー濃度において、単一鎖PEG分子(ユニマー、n=1)に相当する移動度ピークが観察された。クラスターイオンでは漸次的な外観が見られ、ユニマーからデカマー(n=10)の移動度のピークが、ポリマー濃度が1×10−6から1×10−6Mに増加する間に観察された。この例から、プローブされるポリマー質量の範囲は、単一ポリマー試料およびクラスター形成物を使用して、因数10によって単一の126kDのPEG鎖に等しい値まで拡張される。更に、120kDのPEG試料のエレクトロスプレー移動度分析は、本発明の方法を使用するユニマーからヘキサマーまでに相当する移動度ピークから、720kDにまで拡張させることができる。本方法においてなされる仮定の一つは、(特にクラスターの場合において)乾燥ポリマー粒子は球状であり、それらの密度は直径、即ち、分子量とは無関係であるとすることである。その仮定の正当性は、PEGポリマーの二組の実験結果、つまり直線関係がポリマーイオン移動度の逆数の平方根対ポリマー質量(分子量)の立方根との間で得られたという実験結果を使用して実証された。本方法の一つの利点は、上記した様に一連の質量は内部的に依存しており、一貫性がありおよび直線をなすことである。移動度対MWの関係を使用して、1.001の多分散性が5%FWHMのイオン移動度ピークを与えることが算出される。従って、慣用のDMAの分解能は、合成、半合成および自然発生ポリマーを含む多分散性ポリマーの分子量分布を測定する場合に観察し得るピークのブロード化をほとんどまたは全く与えない。二つの例は、ポリマーについてのエレクトロスプレー移動度分析クラスターデータが、2桁の規模範囲を超えるポリマーの高分解分子量分布をもって正確に決定する能力を提供し、分解能はGPCよりかなり優れており、典型的にMALDI−MSスペクトルに見られる範囲を超える範囲を有していることを示している。
水不溶性ポリマーのエレクトロスプレー移動度分析は、本発明の方法を使用して同様の方法で遂行される。代表的な水不溶性ポリマーは、ポリスチレン(PS)である。一例において、与えられた液滴中で唯一のPS分子(鎖)を含有する希釈ポリマー濃度および与えられた液滴中にPS分子のクラスターが存在する増加したポリマー濃度におけるエレクトロスプレーから、170kDのPS試料についてのイオン移動度スペクトルが測定された。ユニマー(n=1)のイオン移動度ピークは、2×10−6Mにおいて観察された。クラスターイオンでは漸次的な外観が見られ、ユニマーからトリマー(n=3)までの移動度ピークが、ポリマー濃度が1.7×10−5Mまで増加する間に観察され、分子量範囲は510kDまで拡張される。
分子量が未知の任意のポリマーは、1以上の対照ポリマーを使用してエレクトロスプレー移動度分析により決定される。対照ポリマーは、GPCまたはMS等の任意の慣用技術を使用してその分子量が正確に決定されているポリマーである。PEGスタンダードは、本発明の方法を使用する水溶性ポリマーについての対照ポリマーとして有用である。PSスタンダードは、本発明の方法を使用する水不溶性ポリマーについての対照ポリマーとして有用である。任意の好適な水溶性ポリマーまたは水不溶性ポリマーを、その分子量が正確に決定されていることを条件として、対照として使用することができる。エレクトロスプレー移動度分析におけるクラスターの一つの利点は、クラスターイオンが、一連の内部対照をも提供することである。分子量が未知のポリマーについての移動度分布は、1以上の対照ポリマーのイオン移動度分布と比較して本発明の方法を使用して決定される。
ポリマー質量に対してポリマーの移動度分布をキャリブレーションする方法は
(a)異なる分子質量を有する1以上の対照ポリマーを得る工程;
(b)微分型電気移動度測定器を使用して各対照ポリマーについてのイオン移動度を測定する工程;
(c)測定された移動度分布から対照ポリマーイオンの粒子直径を算出する工程;および(d)ポリマー粒子直径d(Z)またはポリマー粒子移動度(Z−1/2)対ポリマー質量(m)1/3の、確定されている質量範囲にわたるプロットを得る工程
を含む。
(a)異なる分子質量を有する1以上の対照ポリマーを得る工程;
(b)微分型電気移動度測定器を使用して各対照ポリマーについてのイオン移動度を測定する工程;
(c)測定された移動度分布から対照ポリマーイオンの粒子直径を算出する工程;および(d)ポリマー粒子直径d(Z)またはポリマー粒子移動度(Z−1/2)対ポリマー質量(m)1/3の、確定されている質量範囲にわたるプロットを得る工程
を含む。
本発明は、また、対応するポリマー質量を有するポリマーのイオン移動度をキャリブレーションし、ポリマー質量範囲を拡張する方法であって
(a)挟い分子量分布を有する対照ポリマーを得る工程;
(b)一連のn個のクラスターイオンを対照ポリマーから発生させ、さらに微分型電気移動度測定器を使用して各クラスターイオンについてのイオン移動度を測定する工程;
(c)測定された移動度分布から対照ポリマーおよび対応するクラスターイオンの粒子直径を算出する工程;および
(d)ポリマー粒子直径d(Z)またはポリマー粒子移動度(Z−1/2)対ポリマー質量(m)1/3の拡張された質量範囲にわたるプロットを得る工程
を含む方法を提供する。この方法の一利点は、その一連の対照質量は上記したように内部的に依存し、一貫性がありおよび直線をなすことである。
(a)挟い分子量分布を有する対照ポリマーを得る工程;
(b)一連のn個のクラスターイオンを対照ポリマーから発生させ、さらに微分型電気移動度測定器を使用して各クラスターイオンについてのイオン移動度を測定する工程;
(c)測定された移動度分布から対照ポリマーおよび対応するクラスターイオンの粒子直径を算出する工程;および
(d)ポリマー粒子直径d(Z)またはポリマー粒子移動度(Z−1/2)対ポリマー質量(m)1/3の拡張された質量範囲にわたるプロットを得る工程
を含む方法を提供する。この方法の一利点は、その一連の対照質量は上記したように内部的に依存し、一貫性がありおよび直線をなすことである。
上記したように、水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマー双方の質量分析は、本発明の方法を使用して遂行される。水溶性ポリマーは、水と好適な塩を含む緩衝溶液からエレクトロスプレーされ、必要とされる液滴を生成する。好適な水溶性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、たとえばポリアルキレンオキシド、たとえばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、ポリクロトン酸およびその塩、ポリマレイン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸の誘導体およびその塩、ポリアミンおよびそのアンモニウム塩、ポリアミノアクリレートおよびそのアンモニウム塩が挙げられる。他の好適な水溶性ポリマーとしては、全ての高分子電解質、たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸コポリマーおよびその塩、無水マレイン酸コポリマー、多糖類およびその塩、多糖類誘導体およびその塩、ポリエチレンイミンおよびその塩、ポリアミドアミンおよびその塩、イオネン(ionenes)およびその塩、カチオン性アクリル酸エステルのホモ−およびコポリマー、ゼラチンおよび核酸が挙げられる。全ての水溶性ポリマーの分子量分布を、本方法の方法を使用して決定することができると考えられる。
水不溶性ポリマーの質量分析は、高誘電率を有する溶媒中のポリマーのエレクトロスプレーから決定される。用語「誘電率」は、溶媒を含む液体媒体の極性を意味し、式F=QQ’/εr2におけるεにより定義され、ここでFは媒体において距離rで分離される二つの電荷QおよびQ’間の引力である。高誘電性溶媒は、ポリマーを溶解し/分散する働きをし、必要とされる導電性を有し、および本発明の方法を使用する質量分析のための汚染されていないポリマーイオンを生じさせるために不純物を含まない。全ての水不溶性ポリマーの分子量分布を、それらがイオン化のために充分高い誘電率を有する1以上の好適な溶媒中に溶解され、懸濁されまたは分散され得ることを条件に、本発明の方法を使用して決定することができると考えられる。
高誘電率を有する溶媒の好適な例としては、これらに限定されないが、誘電率ε>2.0を有する溶媒が挙げられる。好適な例としては、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、アセトアミド、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、アリルアルコール、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、5−メチル−2−ピロリジノン、2−メチル−1−ブタノール、無水酢酸、アミルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノン、グリコールニトリル、シアン化水素(低温において超臨界または凝縮相である)、二酸化硫黄(低温において超臨界または凝縮相である)、シアン化水素酸、イソブチロニトリル、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、N−メチルピリジンおよびリン酸トリブチルが挙げられる。
広範囲の水不溶性の工業用ポリマーの質量(分子量)分析は、本発明の方法を使用して決定される。好適なポリマーの例として、これらに限定されないが、ビニルポリマー、たとえばポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、ポリビニルアミド、ポリビニルエーテル;縮合ポリマー、たとえばポリエステルおよびポリウレタン;ポリエチレン性不飽和ポリマー、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメタアクリレートコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミドおよびポリ(メタ)アクリルアミドコポリマー;ポリウレタンおよびポリエステルが挙げられる。他の好適な例の水不溶性ポリマーには、掲げられたポリマーの架橋ポリマーが含まれる。
本発明に有用な水不溶性アクリルポリマーは、溶液、サスペンションおよびエマルション重合を含む慣用の重合技術により調製される。たとえば、ラテックスポリマー粒子のディスパーションは、米国特許第4,427,836号;第4,469,825号;第4,594,363号;第4,677,003号;第4,920,160号;および第4,970,241号に開示されたものを含むプロセスに従って調製される。ラテックスポリマー粒子は、また、たとえば欧州特許公開番号第EP0267726号;EP0331421号;EP0915108号および米国特許第4,910,229号;第5,157,084号;第5,663,213号および第6,384,104号に開示された重合技術によっても調製することができる。
本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、対応するアクリルまたはメタクリル酸および誘導体のいずれかを意味し;同様に用語「アルキル(メタ)アクリレート」は、対応するアクリレートまたはメタクリレートエステルのいずれかを意味する。
移動度測定によるポリマーの質量分析は、いくつかの重要な利点を提供する。それは、GPCを使用しては決定され得ないまたは慣用のMS装置を使用しては直接決定され得ないポリマーの質量(分子量)分析を可能にする。当該質量分析は、迅速規模で遂行される。ポリマーイオンの移動度は、第一原理からポリマー粒径および形状まで相関させることができる。
本発明に従い分析されるポリマーは、1キロダルトン(kD)から500,000kDの間の重量平均分子量を有する水溶性および水不溶性ポリマー双方を含む。
本方法は、また、多種類の工業的ポリマーの分子量決定に一般的に適用可能である。本発明の一態様によれば、移動度対質量の関係は分析される各ポリマーについて決定される。別の態様に従い、移動度対質量の関係は、使用される一つのポリマーについて得られる関係を他のポリマーに変換することにより決定される。実験データは、単一鎖粒子の密度はバルクポリマーの密度と同様であることを示しており、嵩密度は測定されるか推定される。
本発明のいくつかの態様は、次の実施例により詳細に記載される。
実施例1 水溶性ポリマーの質量分析
10ミリモラー(mM)酢酸アンモニウムバッファー中のポリエチレングリコール(PEG)の水溶液が、エレクトロスプレーされた。バッファーは、10mM酢酸アンモニウムと共に50/50(v/v)水メタノール溶液を含んでいた。二酸化炭素は、エレクトロスプレー用の気体として使用された。商業的に入手可能なPEG試料が、入手された(ポリマーラボラトリーズ、米国、マサチューセッツ州、アムハースト01003)。分子量は、製造者によってGPCおよび光散乱測定を使用して独立に決定され、表1に掲げられている。
10ミリモラー(mM)酢酸アンモニウムバッファー中のポリエチレングリコール(PEG)の水溶液が、エレクトロスプレーされた。バッファーは、10mM酢酸アンモニウムと共に50/50(v/v)水メタノール溶液を含んでいた。二酸化炭素は、エレクトロスプレー用の気体として使用された。商業的に入手可能なPEG試料が、入手された(ポリマーラボラトリーズ、米国、マサチューセッツ州、アムハースト01003)。分子量は、製造者によってGPCおよび光散乱測定を使用して独立に決定され、表1に掲げられている。
形成されるポリマーイオンの移動度分布は、高分解能DMAを使用して空気中で測定され、対応するマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法(MS)データと比較された。移動度スペクトルは、各PEG試料について得られた。結果は、本発明の方法を使用してもたらされたいかなるピークの広域化も、最も狭い入手可能なPEG試料についての算出されたMWDに深刻な影響を及ぼさないことを確認した。ポリマーイオンの移動度とその質量との間の関係は、狭いMWDを有するPEG質量スタンダードと比較して決定された。PEG試料は、液滴あたり1を超えないポリマー鎖を生じさせるに充分な低濃度(表1)においてエレクトロスプレーされた。PEGスタンダードから入手され得る情報を最大化するために、より濃縮された溶液が、またエレクトロスプレーされ、DMAにより分析された。1PEG分子から6分子(ヘキサマー)までを含むクラスターイオンの漸次的な出現が1×10−6〜1×10−4モル/リットル(M)まで濃度を増加するにつれて観察された。クラスター化プロセスは、因数n(m)により入手可能な質量スタンダードの有効数を拡張するという利点を有する。
ポリマーイオン移動度およびポリマー質量との間の信頼性ある関係は、商業的に入手可能なPEGスタンダードを使用して得られた。その結果により、PEG粒子はそれらが単一または複数のポリマー鎖から構成されるか否かとは無関係に、ガラスまたは結晶状態に相当する嵩密度を伴って球状をしていることが確認された。形成される粒子についての一定の形状および密度は、測定された移動度から質量を正確に決定するのに有用である、何故ならZは断面積の関数であり、それは形状および容積に依存し、言い換えれば密度に依存するからである。
PEGの嵩密度についての報告された値は、298KにおいてMw=3,400g/モルにおいて1.204g/cm3であり、およびMw=6,000g/モルにおいて1.21g/cm3である。式(1)〜(5)を使用して、d(Z)対m1/3の直線プロットがPEGスタンダードについて得られた。式(5)を使用してデータを適合させ、dg=0.453nmおよびBM=0.1364nm(g/モル)1/3を得る。線BMの勾配から、1.25g/cm3の粒子密度は、PEGの嵩密度と一致して得られる。
実施例2
水不溶性ポリマーの質量分析
狭い質量分布および9kD<Mn<170kDの範囲の平均分子量を有するポリスチレンポリマーは、5容積%のトリフルオロ酢酸でシードされたNMP中のそれらの溶液からエレクトロスプレーされた。ポリスチレン質量スタンダードは、商業的に得られ、表2において要約されている。
水不溶性ポリマーの質量分析
狭い質量分布および9kD<Mn<170kDの範囲の平均分子量を有するポリスチレンポリマーは、5容積%のトリフルオロ酢酸でシードされたNMP中のそれらの溶液からエレクトロスプレーされた。ポリスチレン質量スタンダードは、商業的に得られ、表2において要約されている。
形成されるポリマーイオンの移動度分布は、高分解能DMAを使用して空気中で測定された。移動度スペクトルは、各ポリスチレン試料について得られた。1×10−4モル/リットルに近似の濃度において使用されるポリスチレン質量スタンダードは、1から6(ヘキサマー)までのポリスチレン分子を含有する粒子の形成に関連するいくつかのよく限定された移動度ピークを生む。
ポリマーイオン移動度およびポリマー質量との間の信頼性ある関係は、商業的に入手可能なポリスチレンスタンダードを使用して得られた。その結果により、ポリスチレン粒子はそれらが単一または複数のポリマー鎖から構成されるか否かとは無関係にガラスまたは結晶状態に相当する嵩密度を伴って球状をしていることが確認された。4ポリスチレン質量スタンダード(Mn(kD)9.2、45、68および170)の使用は、9kD〜170kDの(Z−1/2)対m1/3の直線関係を確立する15の質量対移動度データを与える。球状ポリマー粒子は、エレクトロスプレーおよびポリスチレンの測定された嵩密度に一致する移動度分析から確認された。式(1)〜(5)を使用して、(Z−1/2)対m1/3の直線プロットがPEGスタンダードについて得られた。式(5)を使用してデーターを適合させ、線BMの勾配から、1.067g/cm3の粒子密度がPSの嵩密度と一致して得られる。PSの嵩密度は、1.040〜1.080g/cm3の範囲である。最高分子量PS試料は、6%以内で一貫性があった。
Claims (10)
- 分子および巨大分子の直接質量分析のための装置であって、分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを生成するためのエレクトロスプレー発生器を含み、該エレクトロスプレー発生器は、気相被分析物イオンの電荷減少のためのイオン化源を含み、被分析物の直接質量分析のための飛行時間型質量分析計と連結している、直接質量分析のための装置。
- 該被分析物の分子量が1キロダルトン(kD)から500,000kDの間である請求項1に記載の装置。
- 該被分析物が水溶性または水不溶性ポリマーである請求項1に記載の装置。
- 該水不溶性ポリマーが少なくとも2.0の誘電率を有する溶媒または液体キャリヤーを使用してエレクトロスプレーされる請求項3に記載の装置。
- 該溶媒または液体キャリヤーが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、アセトアミド、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、アリルアルコール、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、5−メチル−2−ピロリジノン、2−メチル−1−ブタノール、無水酢酸、アミルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノン、グリコールニトリル、シアン化水素、シアン化水素酸、イソブチロニトリル、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、N−メチルピリジンおよびリン酸トリブチルからなる群から選択される請求項4に記載の装置。
- 分子および巨大分子の分子量を直接決定する方法であって、
(a)分子および巨大分子を含む被分析物のエレクトロスプレーを発生させる工程;および
(b)被分析物の電荷減少したエレクトロスプレーを飛行時間型質量分析計に導くことにより被分析物の質量比を測定する工程
を含む方法。 - 該被分析物の分子量が1キロダルトン(kD)から500,000kDの間である請求項6に記載の方法。
- 該被分析物が水溶性または水不溶性ポリマーである請求項6に記載の方法。
- 該水不溶性ポリマーが少なくとも2.0の誘電率を有する溶媒または液体キャリヤーを使用してエレクトロスプレーされる請求項8に記載の方法。
- 該溶媒または液体キャリヤーが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、アセトアミド、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、アリルアルコール、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、5−メチル−2−ピロリジノン、2−メチル−1−ブタノール、無水酢酸、アミルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノン、グリコールニトリル、シアン化水素、シアン化水素酸、イソブチロニトリル、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルシクロヘキサノン、N−メチルピリジンおよびリン酸トリブチルからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
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