JP2005169834A - プリンタ装置及びサーマルヘッドの抵抗値均一化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】非常に短い時間でしかも簡単な処理によって発熱抵抗素子の抵抗値を均一化する。
【解決手段】サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を測定し、この測定結果に基づいて目標抵抗値を設定する抵抗値測定処理S10と、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定し、この設定した通電時間にしたがって各々の発熱抵抗素子に通電するトリミング処理S20と、トリミング処理後に印刷濃度を補正する濃度補正処理S30とを行って各々お発熱抵抗素子の抵抗値を均一化する。
【選択図】図8
【解決手段】サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を測定し、この測定結果に基づいて目標抵抗値を設定する抵抗値測定処理S10と、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定し、この設定した通電時間にしたがって各々の発熱抵抗素子に通電するトリミング処理S20と、トリミング処理後に印刷濃度を補正する濃度補正処理S30とを行って各々お発熱抵抗素子の抵抗値を均一化する。
【選択図】図8
Description
本発明は、サーマルヘッドを有するプリンタ装置とサーマルヘッドの抵抗値均一化方法に関する。
熱転写型プリンタの一つである昇華型プリンタでは、複数の発熱抵抗素子をライン状に配列したサーマルヘッドを用いて印刷用紙(印画紙)に画像を印刷する。その際、各々の発熱抵抗素子の抵抗値にバラツキがあると印刷時の発熱量に差が生じ、その結果、印刷された画像中に帯状の濃度ムラなどが発生する。
そこでサーマルヘッドの製造工程においては、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を均一化するための処理(以下、抵抗値均一化処理)が行われている。抵抗値均一化処理では、抵抗値の調整が必要な発熱抵抗素子にトリミング用電圧を印加してトリミング電流を通電することにより、発熱抵抗素子の抵抗値を低下させ、これによって発熱抵抗素子の抵抗値が目標抵抗値に一致するように調整している。
しかしながら、サーマルヘッドの製造段階で発熱抵抗素子の抵抗値を均一化しても、その後、プリンタ装置を使用しているうちに発熱抵抗素子の抵抗値が変化してしまうことがある。特に、印刷速度の高速化やフル画面印刷では発熱抵抗素子の高温化による抵抗値の変化が顕著になり、印刷枚数の増加とともに濃度ムラが発生する。また、縁無し印刷などでは印刷用紙からはみ出したヘッド端部で発熱抵抗素子の温度が過度に高温状態となり易いため、抵抗値の変化がより顕著になる。その結果、プリンタ装置の使用初期には現れなかった濃度ムラが発生する。
この対策として、例えば下記特許文献1には、発熱抵抗素子に一定時間だけトリミング用電圧を印加して電流を通電する単位トリミング処理を、各々の発熱抵抗素子ごとに、予め求めた処理回数分だけ繰り返すことにより、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値(最小抵抗値)に近づけて均一化する方法が記載されている。
しかしながら上記従来の技術においては、各々の発熱抵抗素子ごとに処理回数を求め、この処理回数分だけ単位トリミング処理を繰り返すことになるため、一連の抵抗値均一化処理が非常に煩雑になるとともに、全ての発熱抵抗素子を処理し終えるまでの時間(トリミング所要時間)が長くなる。また、単位トリミング処理を繰り返し行う場合は、単位トリミング処理を1回行うごとに発熱素子の抵抗値が段階的に下がることから、単位トリミング処理を同じ条件で行うと、前回の処理と今回の処理で発熱抵抗素子の抵抗低下率(単位抵抗低下値)が変化する。そのため、発熱素子の抵抗低下率を均一にするには、単位トリミング処理を1回行うごとにトリミング電圧、電流又は時間を変える必要がある。そのため、トリミング処理がますます複雑になってしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その主たる目的は、非常に短い時間でしかも簡単な処理により、発熱抵抗素子の抵抗値を均一化することができるプリンタ装置及びサーマルヘッドの抵抗値均一化方法を提供することにある。
本発明に係るプリンタ装置は、サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定する通電時間設定手段と、この通電時間設定手段で設定された通電時間にしたがって各々の発熱抵抗素子に通電する通電手段とを備えるものである。
本発明に係るサーマルヘッドの抵抗値均一化方法は、サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定し、この設定した通電時間にしたがって各々の発熱抵抗素子に通電することにより、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を均一化するものである。
本発明に係るプリンタ装置及びサーマルヘッドの抵抗値均一化方法においては、サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定し、この設定した通電時間にしたがって各々の発熱抵抗素子に通電することにより、1回の通電によって各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げることが可能となる。
本発明のプリンタ装置及びサーマルヘッドの抵抗値均一化方法によれば、各々の発熱抵抗素子に何回も繰り返し通電を行わなくても、1回の通電によって各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げることができる。これにより、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を均一化するための処理を簡単かつ短時間で行うことが可能となる。
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明が適用されるプリンタ装置のメカ構成の一例を示す概略図である。図1においては、サーマルヘッド1とプラテンローラ2とが互いに対向しかつ圧接した状態に設けられている。サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間(圧接部分)には、インクリボン3と印刷用紙4が重ねて挿入されるようになっている。この場合、インクリボン3はリボンガイドローラ5に案内されて上記圧接部分に導かれ、印刷用紙4は用紙ガイドローラ6に案内されて上記圧接部分に導かれる。
インクリボン3は、繰り出しスプーラ7と巻き取りスプーラ8にそれぞれ巻かれている。そして、リボン送りモータM1の駆動に基づく巻き取りスプーラ8の回転にしたがってインクリボン3が繰り出しスプーラ7から繰り出されて巻き取りスプーラ8に巻き取られるようになっている。その際、繰り出しスプーラ7は、これに巻かれた未使用のインクリボン3に所定の引っ張り力が作用したときに、その引っ張り力にしたがって回転する。
印刷用紙4は、給紙スプーラ9に巻かれている。そして、一対の搬送ローラ10を回転駆動する用紙搬送モータM2の駆動により、給紙スプーラ9が印刷用紙4を繰り出しつつ回転するようになっている。給紙スプーラ9から繰り出された印刷用紙4は、これに画像を印刷した後に、一対の搬送ローラ10で下流側へと送られ、図示しないカッターで所定のサイズに切断されて外部に排出される。
また、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間では、図2に示すように、サーマルヘッド1に設けられた発熱抵抗素子列12の各部が発熱することにより、インクリボン3に塗布されたインクが昇華(気化)して印刷用紙4の一面に転写する。発熱抵抗素子列12は、ライン状に配列された複数の発熱抵抗素子からなるもので、セラミック基板13の一面に形成されたグレーズ層14上に設けられている。また、発熱抵抗素子列12は数μmの保護膜15で覆われている。
印刷用紙4に転写するインクの量は発熱抵抗素子列12の発熱量に依存(ほぼ比例)したものとなる。そのため、発熱抵抗素子列12を構成する各々の発熱抵抗素子の発熱量を個別に制御することにより、印刷用紙4に転写される画像の濃度(濃淡)を調整することができる。また、各々の発熱抵抗素子は、サーマルヘッド1のヘッド面にライン状(1列)に配列されているため、あるタイミングで印刷用紙4に転写される画像はライン状になるものの、インクリボン3と印刷用紙4は互いに同期して同一方向に送られるため、この送り方向にも画像が形成(展開)されることになる。
図3(A),(B)はサーマルヘッドの内部構成を示す図である。図示のように、複数の発熱抵抗素子R1〜R2048(添え字の数字は最端の発熱抵抗素子から順に付した識別番号)は、それぞれに対応する半導体スイッチTR1〜TR2048に1:1の関係で直列に接続されている。各々の半導体スイッチTR1〜TR2048はnpnトランジスタのエミッタ接地回路によって構成されている。また、各々の発熱抵抗素子R1〜R2048には、それぞれに対応する半導体スイッチTR1〜TR2048がオン動作することにより、所定の電圧VHが印加される構成となっている。
各々の半導体スイッチTR1〜TR2048のスイッチング動作(オンオフ動作)は、ヘッド駆動信号として制御回路(後述)からサーマルヘッド1に入力されるイネーブル信号EN、シリアルデータDT及び基準クロックCKにしたがってシフトレジスター16により制御される。その際、イネーブル信号(EN)及びシリアルデータ(DT)は、基準クロックCKに同期してシフトレジスター16に入力される。シフトレジスター16には、半導体スイッチTR1〜TR2048の個数分の出力端子Q1〜Q2048が設けられている。そして、例えば、あるタイミングにおいて、図4に示すように、基準クロックCKに同期してn番目の半導体スイッチTRn用のシリアルデータDTが立ち上がったときに、シフトレジスター16の出力端子Qnの電位レベルがハイレベルとなり、同時にイネーブル信号ELがオン状態になっていれば、半導体スイッチTRnがオン動作して発熱抵抗素子Rnに電圧VHが加わり、これに伴う通電によって発熱抵抗素子Rnが発熱する。このとき、発熱抵抗素子Rnには、これに流れる電流をInとするとIn2Rnの発熱を生じることになる。
図5は本発明の実施形態で採用した抵抗値測定回路を示す図である。図5においては、サーマルヘッド1とこれに電圧を印加する電源(不図示)との間にリレー17が接続されている。また、サーマルヘッド1とリレー17との間の接続点P1とA/D変換部の入力端P2との間は抵抗素子18とオペアンプ19が直列に接続されている。さらに、リレー17とヘッド駆動用電源(不図示)との間、及び上記接続点P1と抵抗素子18との間に、それぞれ接続点P3,P4をもって定電流源20が接続されている。
上記構成の抵抗値測定回路において、リレー17が導通状態(オン状態)のときはヘッド駆動用電源(不図示)からサーマルヘッド1に所定の電圧VHを供給して通常どおりに印刷動作を行うことができる。また、リレー17が非導通状態(オフ状態)のときは定電流源20からサーマルヘッド1に定電流を供給するとともに、この定電流を複数の発熱抵抗素子R1〜R2048に選択的に流すことにより、各々の発熱抵抗素子R1〜R2048の抵抗値を個別に測定することができる。例えば、抵抗値の特性対象となるn番目の発熱抵抗素子Rnに定電流を流すと、当該発熱抵抗素子Rnの抵抗値に依存した電位差が生じるため、このときの電位を抵抗素子18とオペアンプ19を通してA/D変換部に取り込むことにより、発熱抵抗素子Rnの抵抗値を測定することができる。
各々の発熱抵抗素子R1〜R2048の抵抗値を測定する際に、定電流源20から供給される定電流の電流値は、抵抗測定によって発熱抵抗素子の抵抗値が極力変化しないよう、印刷動作時よりも発熱抵抗素子の発熱温度が十分に低く条件で設定することが望ましい。具体的には、定電流の電流値を0.1mA〜1mAの範囲内で設定することが好ましい。これにより、リレー17を非導通状態として、制御回路(後述)からサーマルヘッド1に入力されるヘッド駆動信号(EL、DT、CK)にしたがい、定電流源20から発熱抵抗素子Rnに0.3mAの定電流を流したときに、A/D変換回路で3Vの電位が検出された場合は、発熱抵抗素子Rnの抵抗値が10kΩと測定されることになる。
図6は本発明の実施形態に係るプリンタ装置の内部構成(抵抗値測定回路を含む)を示す図である。図6において、制御回路21は、サーマルヘッド1を駆動制御するものである。制御回路21には、上述したリレー17、抵抗素子18、オペアンプ19、定電流源20の他に、CPU(Central Processing Unit)22、メモリ23、ユーザインターフェース部(UI)24、パラレル/シリアル変換部25が含まれている。CPU22は、予め設定された制御プログラムにしたがって動作するもので、A/D変換機能やD/A変換機能を有している。メモリ23は、印刷用の画像データや制御用のデータを含む各種のデータを記憶するために用いられるものである。ユーザインターフェース部24は、例えばタッチパネルやGUI(グラフィカル・ユーザインターフェース部)、或いは操作ボタンや操作スイッチを有する操作パネルなどによって構成されるものである。パラレル/シリアル変換部25は、パラレル形式の画像データをシリアル形式の画像データに変換するものである。
CPU22では、メモリ23、ユーザインターフェース部24及びパラレル/シリアル変換部25との間でそれぞれバスを介してデータの受け渡しを行うことにより、メモリ23に対してデータの読み出しや書き込みを行ったり、ユーザインターフェース部24からの入力データを取り込んだり、ユーザインターフェース部24に表示データを送信したり、パラレル/シリアル変換部25にデータ変換(パラレル→シリアル変換)を指示したりする。また、CPU22は、オペアンプ19の出力を取り込んでA/D変換することにより、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を検出したり、ヘッド駆動用電源となるスイッチングレギュレータ(SR)26に対して、そこからの供給電圧VHを可変するための可変信号をD/A変換して出力したりする。さらに、CPU22は、外部から入力されてメモリ23に記憶された画像データを印刷する際にガンマ変換処理、シャープネス処理、蓄熱補正処理などを行う。
図7は発熱抵抗素子の発熱温度による抵抗値の変化特性を示す図である。図7において、横軸は発熱抵抗素子の発熱温度、縦軸は発熱抵抗素子の抵抗値の極限変化率(発熱温度を掛け続けたときの抵抗値最大変化率)を表している。図示のように発熱抵抗素子の抵抗値は、発熱温度T1に至るまでは一定(不変)に推移するため、この変化開始温度T1までの範囲内で使用する限り、発熱抵抗素子の抵抗値は殆ど変化しない。
しかしながら、発熱温度T1を越えて使用すると、発熱抵抗素子の抵抗値は一定の割合を目途に低下し、その割合は温度が高くなるにつれて顕著になる。そして、発熱温度T2に近づくと発熱抵抗素子の抵抗値の変化が緩やかになり、やがて酸化などが原因で逆に抵抗値が急激に上昇する領域に入り、ついには破壊する。このことから、発熱抵抗素子が破壊しない温度範囲内で、発熱抵抗素子を発熱温度T1よりも高い温度Txで継続的に発熱させると、発熱抵抗素子の抵抗値を最大2%下げることができる。また、発熱抵抗素子を発熱温度Txで発熱させる時間(通電時間)を調整することにより、発熱抵抗素子の抵抗低下率を0〜2%の範囲内で任意に制御することができる。なお、温度T1,T2及び抵抗値の変化特性は、発熱抵抗素子の組成によって異なるものとなる。
通常の印刷では、発熱抵抗素子の抵抗値が変化しない領域(温度T1以下の範囲)で使用することが望ましいものの、印刷の高速化に対応するために、それ以上の温度域で使用せざるを得ないこともある。また、ハガキサイズと同じ幅の印刷用紙4を用いた縁無印刷においては、図2に示すように、印刷用紙4の幅よりも一回り大きい領域で発熱抵抗素子列12の発熱抵抗素子を発熱させるため、印刷用紙4の両縁部からはみ出した外側のヘッド部分では、発熱抵抗素子で生じた熱が印刷用紙4やプラテン2に伝わらずにこもり、他の部分(印刷用紙4にかかる内側部分)よりも高温になりやすくなる。その結果、サーマルヘッド1の両端部に近い発熱抵抗素子の抵抗値だけが大きく変化(低下)してしまう。したがって、その後、ハガキサイズよりも幅広の印刷用紙に画像を印刷したときに、ハガキサイズの印刷用紙の縁付近にあたる部分に、他の部分よりも濃度が高い帯状の濃度ムラが発生する。このような問題を解消するには、サーマルヘッド1に設けられた各々の発熱抵抗素子R1〜R2048(図3参照)の抵抗値を均一化する必要がある。
そこで、上記制御回路21においては、発熱抵抗素子の抵抗値を均一化するにあたって、図8に示す抵抗値測定処理S10、トリミング処理S20及び濃度補正処理S30を行う。以下に、各々の具体的な処理内容について説明する。
図9は抵抗値測定処理S10の手順を示すフローチャートである。先ず、リレー17を非通電状態(オフ状態)にした後、変数mの値(初期値はm=0)を1インクリメントする(ステップS101,S102)。次に、m番目の発熱抵抗素子だけを通電させるためのシリアルデータ(抵抗値測定用シリアルデータ)を作成した後、このシリアルデータをサーマルヘッド1に送信する(ステップS103,S104)。
続いて、イネーブル信号をオン状態として、オペアンプ19の出力をCPU22でA/D変換して読み取り、この読み取った値、つまりm番目の発熱抵抗素子の抵抗値を、その時点の変数mの値と対応付けてメモリ23に記憶する(ステップS105,S106)。
その後、変数mの値が、発熱抵抗素子の総数である2048に一致するか否か、つまり全ての発熱抵抗素子の抵抗値を測定し終えたかどうかを確認する(ステップS107)。そして、変数mの値が素子総数(2048)に一致しない場合は上記ステップS102に戻って同様の処理を繰り返す。また、変数mの値が素子総数に一致した場合は、それまでに測定した合計2048個の抵抗値(測定データ)のなかで、最も小さい抵抗値(最小抵抗値)をトリミング処理の目標抵抗値に設定する(ステップS108)。なお、ここでは抵抗値測定処理S10で得られた2048個の測定データ(抵抗値データ)のなかで、最小の抵抗値を目標抵抗値に設定したが、これ以外にも、最小抵抗値よりも低い抵抗値を目標抵抗値に設定してもよい。
図10はトリミング処理S20の手順を示すフローチャートである。先ず、変数mの値(初期値はm=0)を1インクリメントした後、メモリ23から変数mの値に対応して記憶されている抵抗値(測定データ)を読み出す(ステップS201,S202)。次に、メモリ23から読み出した抵抗値と目標抵抗値との差分を求めた後、この差分が予め設定された許容範囲内にあるかどうかを判断する(S203,S204)。許容範囲は、発熱抵抗素子の抵抗値のバラツキに起因した濃度ムラの許容レベルに応じて適宜設定されるものである。
メモリ23から読み出した抵抗値と目標抵抗値との差分が許容範囲を超える場合は、この差分を解消するのに必要とされる発熱抵抗素子への通電時間(m番目の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間)を、予め用意された参照テーブルにしたがって設定する(ステップS205)。参照テーブルは、発熱温度がTx(図7参照)となる条件で発熱抵抗素子にトリミング用電圧を印加してトリミング電流を通電したときの通電実行時間とそのときの発熱抵抗素子の抵抗値変化量の対応関係を示すものである。この参照テーブルは、例えば図11ようなかたちでメモリ23に格納される。図11において、縦方向に並んだ抵抗値(Ω)はメモリ23から読み出した抵抗値に該当するもので、横方向に並んだ抵抗値(Ω)は目標抵抗値に該当するものである。また、0及びT01〜T120は通電実行時間に相当するものである。この参照テーブルは、予め実験データに基づいて作成されるものである。いま、メモリ23から読み出したm番目の発熱抵抗素子の抵抗値が6930Ωで、目標抵抗値が6755Ωであったとすると、m番目の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるのに必要とされる通電実行時間はT34となる。したがって、この場合は発熱抵抗素子への通電時間がT34に設定される。
ちなみに、図11に示す参照テーブルでは、発熱抵抗素子の抵抗値のバラツキが0.5%程度であれば濃度ムラによる画質の劣化を見た目で認識することが困難であったことから、抵抗値を0.5%刻みでテーブルを構成している。また、参照テーブルに与えられる時間変数は予め実験によって求められる数値であるが、これはサーマルヘッド1の初期温度や製造ロット、抵抗体純度などによってもばらつく。しかしながら、発熱抵抗素子の抵抗値を均一化するという本来の目的からすれば、通電後の抵抗値と目標抵抗値との間に差があっても、各々の発熱抵抗素子間の抵抗値のばらつきが小さければ、特に問題となることはない。
こうして発熱抵抗素子の通電時間を設定したら、これに続いて、リレー17を導通状態(オン状態)とした後、m番目の発熱抵抗素子だけに通電させるためのシリアルデータを作成する(ステップS206,S207)。次いで、作成したシリアルデータをサーマルヘッド1に送信した後、イネーブル信号をオン状態にする(ステップS208,S209)。これにより、ヘッド駆動用の電源26からの電圧印加により、m番目の発熱抵抗素子への通電が開始される。その後、m番目の発熱抵抗素子への通電を開始してからの経過時間が、先に設定された通電時間に到達したか否かを繰り返し判定し、到達したら、その時点でリレー17を非導通状態(オフ状態)にする(ステップS210,S211)。これにより、m番目の発熱抵抗素子への通電が遮断(停止)される。このように参照テーブルにしたがって設定した通電時間分だけ発熱抵抗素子に通電することにより、1回の通電で発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げることができる。
一方、上記ステップS204において、メモリ23から読み出した抵抗値と目標抵抗値との差分が許容範囲内である場合は、ステップS205〜211の処理をパスしてステップS212に進む。ステップS212では、変数mの値が、発熱抵抗素子の総数である2048に一致するか否か、つまり全ての発熱抵抗素子のトリミングを終えたかどうかを確認する。そして、変数mの値が素子総数(2048)に一致しない場合は上記ステップS201に戻って同様の処理を繰り返す。また、変数mの値が素子総数に一致した場合は、イネーブル信号をオフ状態にして(ステップS213)、一連の処理を終了する。
なお、上記の処理例では、各々の発熱抵抗素子ごとに1回の通電でトリミングを終えるようにしたが、これ以外にも、例えば、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値により近づけるために、1回の通電を終えた段階で、通電後の発熱抵抗素子の抵抗値を測定(再測定)し、その測定値が目標抵抗値に届かない場合は、必要に応じて2回目の通電を行うようにしてもよい。この場合でも、1つの発熱抵抗素子への通電回数が最大2回までに制限され、しかも管理パラメータは通電時間だけに限定されるため、それほど処理を煩雑化しなくても、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値へと近づけることができる。
図12は濃度補正処理S30の処理手順を示すフローチャートである。この濃度補正処理S30は、トリミング処理S20による抵抗値の均一化に伴って各々の発熱抵抗素子の抵抗値を変化(低下)させたときに、この抵抗値変化によって印刷濃度(プリント濃度)が変化しないように補正するものである。
濃度補正処理S30では、先ず、スイッチングレギュレータ26からサーマルヘッド1に供給すべき印加電圧(補正電圧)VHを、下記の数1式によって求める(ステップS31)。
上記数1式において、Raveはトリミング処理前の発熱抵抗素子の抵抗値を平均化した値(平均抵抗値)、Rtriはトリミング処理後の発熱抵抗素子の抵抗値、Voはトリミング処理前に適用していた印加電圧、Vxはトリミング処理後に適用すべき印加電圧である。このうち、平均抵抗値Raveは、上述した抵抗測定処理S10でメモリ23に記憶された全ての抵抗値を加算して、この加算値を発熱抵抗素子の総数(2048)で除算することにより得られるものである。この平均抵抗値Raveについては、上述した抵抗値測定処理S10で検出(抽出)した最小抵抗値とともにメモリ23に記憶しておき、そこから必要に応じて読み出すようにすればよい。抵抗値Rtriは、上述した抵抗値測定処理S10で設定した目標抵抗値(最小抵抗値)をそのまま適用してもよいし、上述したトリミング処理S20を行った後に、再度、各々の発熱抵抗素子の抵抗値を測定し、それを平均化した値を適用してもよい。
こうして印加電圧Vxを求めたら、実際にスイッチングレギュレータ26からサーマルヘッド1に印加される電圧VHが上記印加電圧Vxに一致するように、CPU22からスイッチングレギュレータ26に電圧可変信号を出力する(ステップS302)。これにより、スイッチングレギュレータ26では、CPU22から入力された電圧可変信号にしたがって一次側の発振周波数が制御され、サーマルヘッド1に供給される印加電圧VHのレベルがVoからVxに変更(補正)される。
したがって、トリミング処理を行って発熱抵抗素子の抵抗値を変化させた場合でも、上述のようにサーマルヘッド1への印加電圧を適切に補正することにより、トリミング処理の前後で発熱抵抗素子の発熱エネルギー(発熱量)を等価にすることができる。その結果、トリミング処理による印刷濃度の変化を未然に回避することができる。
なお、濃度補正処理S30としては、サーマルヘッド1への印加電圧を補正する以外にも、サーマルヘッド1への印加電圧を変えずに通電時間を補正することにより、トリミング処理の前後で発熱抵抗素子の発熱エネルギー(発熱量)を等価にするものであってもよい。具体的には、下記の数2式によって通電時間の補正比τを求め、この補正比τにしたがって、サーマルヘッド1への通電時間を補正する。
上記数2式において、Raveはトリミング処理前の発熱抵抗素子の抵抗値を平均化した値(平均抵抗値)、Rtriはトリミング処理後の発熱抵抗素子の抵抗値、Voはトリミング処理前に適用していた印加電圧である。この場合、発熱抵抗素子の抵抗値はトリミング処理によって低下することになるため、トリミング処理前と同じ条件(印加電圧、通電時間)で発熱抵抗素子に電圧HVを印加すると、トリミング処理前よりも発熱量が大きくなって印刷濃度が高くなる。そのため、上記数2式に基づく演算によって得られる補正比τは0<τ<1の範囲内の値となる。また、こうして求められる補正比τは、メモリ23から読み出した画像データを通電時間データに変換した後に、当該通電時間データに補正比τを掛け合わせたり、ガンマ変換用のテーブルデータに補正比τを掛け合わせて新たなテーブルデータを作成したりする(ガンマ変換テーブルを補正する)ことにより、サーマルヘッド1への通電時間を補正(変更)する場合に用いられる。
また、トリミング処理S20を含む抵抗値均一化のための処理は、実際に印刷用紙4に画像を印刷しているとき(印刷実行中)以外であれば、いつでも実行可能であるが、処理中はサーマルヘッド1の発熱抵抗素子列12の一部が通常の印刷時よりも高温状態となり、処理終了までに多少の時間もかかることから、抵抗値均一化のための処理を実行すべき旨の実行指示をユーザ操作にしたがって受け付けたときに、それぞれの処理機能(抵抗値測定機能、目標抵抗値設定機能、トリミング処理機能、濃度補正機能など)を起動して、一連の抵抗値均一化処理を実行することが望ましい。ユーザ操作による実行指示は、ユーザインタフェース部21をユーザ自身が操作(ボタン操作、スイッチ操作等)したときの入力操作情報をCPU22で取り込むことにより受け付け可能である。また、ホスト装置に接続して使用されるプリンタ装置であれば、ホスト装置をユーザが操作して実行指示のコマンドを発行し、このコマンドをCPU22で取り込むことにより受け付け可能である。
また、プリンタ装置の使用中に定期的に抵抗値測定処理S10を行い、これによって得られた抵抗値のデータを用いて、最小抵抗値との差分が許容範囲を超える発熱抵抗素子の有無を確認し、有りの場合にのみ抵抗値均一化のための処理の実行可否をユーザに問い合わせ、この問い合わせに対して実行指示が出されたときに抵抗値均一化処理を実行するようにしてもよい。
1…サーマルヘッド、2…プラテン、3…インクリボン、4…印刷用紙、16…シフトレジスタ、17…リレー、18…抵抗素子、19…オペアンプ、20…定電流源、22…CPU、23…メモリ、24…ユーザインタフェース部、R1〜R2048…発熱抵抗素子、TR1〜TR2048…半導体スイッチ
Claims (7)
- サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定する通電時間設定手段と、
前記通電時間設定手段で設定された前記通電時間にしたがって前記各々の発熱抵抗素子に通電する通電手段と
を備えることを特徴とするプリンタ装置。 - 前記通電手段で前記各々の発熱抵抗素子に通電した後に印刷濃度を補正する濃度補正手段を具備する
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。 - 前記各々の発熱抵抗素子の抵抗値を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて前記目標抵抗値を設定する目標抵抗値設定手段を有する
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。 - 抵抗値均一化のための処理を実行すべき旨の実行指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段で前記実行指示を受け付けたときに前記通電時間設定手段と前記通電手段を起動させる起動手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。 - サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定する通電時間設定手段と、
前記通電時間設定手段で設定された前記通電時間にしたがって前記各々の発熱抵抗素子に通電する通電手段と、
前記通電手段で前記各々の発熱抵抗素子に通電した後に印刷濃度を補正する濃度補正手段とを備え、
前記濃度補正手段は、印刷時に前記サーマルヘッドに印加する印加電圧又は前記サーマルヘッドに通電する通電時間の変更により、前記印刷濃度を補正する
ことを特徴とするプリンタ装置。 - サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定する通電時間設定手段と、
前記通電時間設定手段で設定された前記通電時間にしたがって前記各々の発熱抵抗素子に通電する通電手段と、
前記各々の発熱抵抗素子の抵抗値を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて前記目標抵抗値を設定する目標抵抗値設定手段とを備え、
前記目標抵抗値設定手段は、前記測定手段で測定した抵抗値のなかで最小の抵抗値、又は前記最小の抵抗値よりも小さい抵抗値を、前記目標抵抗値に設定する
ことを特徴とするプリンタ装置。 - サーマルヘッドに設けられた各々の発熱抵抗素子の抵抗値を目標抵抗値まで下げるための通電時間を、通電実行時間と抵抗値変化量の対応関係を示す参照テーブルにしたがって設定し、この設定した通電時間にしたがって前記各々の発熱抵抗素子に通電することにより、前記各々の発熱抵抗素子の抵抗値を均一化する
ことを特徴とするサーマルヘッドの抵抗値均一化方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003412941A JP2005169834A (ja) | 2003-12-11 | 2003-12-11 | プリンタ装置及びサーマルヘッドの抵抗値均一化方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101992606A (zh) * | 2009-08-06 | 2011-03-30 | 精工电子有限公司 | 热头的制造方法 |
CN102529417A (zh) * | 2010-12-28 | 2012-07-04 | 理想科学工业株式会社 | 热头系统及热头的通电控制方法 |
CN104070830A (zh) * | 2013-03-25 | 2014-10-01 | 立志凯株式会社 | 印刷装置 |
-
2003
- 2003-12-11 JP JP2003412941A patent/JP2005169834A/ja active Pending
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CN102529417A (zh) * | 2010-12-28 | 2012-07-04 | 理想科学工业株式会社 | 热头系统及热头的通电控制方法 |
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