JP2005169425A - 圧延用複合ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐事故性に優れた、および外層と内層との境界近傍の機械的性質に優れた圧延用複合ロールを提供することである。
【解決手段】 化学成分が質量%で、MgまたはCaの1種または2種を0.005〜0.5%含有するFe基合金からなり、その金属組織に面積%で0.5〜5.0%の黒鉛と、0.1〜10.0%のMC系炭化物と、10.0〜45.0%のセメンタイトを有する外層と、片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄および黒鉛鋼のいずれかからなる内層との間に、金属組織に黒鉛を有する中間層を設けたことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐事故性に優れた圧延用複合ロールに関する。特に熱間薄板圧延機の仕上列の後段に用いるワークロールとして好適なものである。
従来、熱間薄板圧延機の仕上列の後段にはグレン系鋳鉄材を外層とするロールが使われていた。一般にグレン系ロールは耐焼付性に優れ、絞り圧延事故に遭遇した際でも、被圧延材の焼付きが少なく、その際のクラックの発生進展も少ない利点がある。
しかしながら、Cr、Mo、V、Wなどの合金を多量に含有させ、非常に硬いMC系炭化物を晶析出させたハイス系材を外層とするロールに比べて耐摩耗性はかなり劣っている。
そこで、ロールの耐摩耗性を向上させる手段としては、MC系、M2C系等の硬質炭化物を晶出あるいは析出させる方法が知られている。また、耐焼付性を向上させる手段としては、固体潤滑剤である黒鉛を晶出させる方法が知られている。しかしながら、硬質炭化物を構成する元素であるV、Mo、Wは白銑化元素であり、黒鉛と共存させることは困難であった。また、V等を含有したグレン系ロールを遠心力鋳造法で製造した場合、晶出炭化物と溶湯との比重差により、例えばMC系炭化物は内面側に偏析するという問題があった。
このような問題を解決するために種々の発明がなされ、本出願人も既に特許文献1を提案した。すなわち、特許文献1には、化学成分が質量%で、C:2.0〜4.0%、Si:0.5〜4.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:2.0〜6.0%、Cr:1.0〜7.0%、V:2.0〜8.0%、残部Feおよび不純物元素からなり、基地組織と、面積%で0.5〜5.0%の黒鉛と、0.2〜10.0%のMC系炭化物と、10.0〜40.0%のセメンタイトとからなる金属組織を有する耐摩耗耐焼付性熱間圧延用ロールが記載されている。
特開平6−335712号公報
前記特許文献1の熱間圧延用ロールは、硬質のMC系炭化物を晶析出させて、耐摩耗性を向上させたものである。しかしながら、単に合金を高濃度に含有させると、MC系炭化物が不均一に晶析出しやすいため、ロールの摩耗形態が不均一となり、耐摩耗性や耐肌荒れ性が未だ十分でなかった。また、硬質炭化物の形状が切り欠き係数の低い微細な粒状になりにくく耐事故性も十分でないという問題があった。
さらに、従来の外層と内層が金属接合された複合ロールでは、外層から合金成分が内層に混入して、外層と内層の間の境界部に欠陥や炭化物濃化層が発生し、境界部近傍の強度や靭性等の機械的性質が劣化しやすいという問題もあった。
したがって、本発明の目的は、これらの問題を解消し、耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐事故性に優れた、および外層と内層との境界近傍の機械的性質に優れた圧延用複合ロールを提供することである。
本発明者は、耐焼付性に優れた特許文献1のロール外層に対して改良を図り、特にMgまたはCaを含有させることにより、MC系炭化物の形状を微細な粒状にするとともに、金属組織中に均一に分散できることを見いだし、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐事故性を向上させ得た。
さらに、外層と内層の間に金属組織に黒鉛を有する中間層を設けることで、外層から内層への合金成分の混入を抑制することを見出し、外層と内層の境界部近傍の機械的性質を向上させ得た。
すねわち、本発明の圧延用複合ロールは、化学成分が質量%で、MgまたはCaの1種または2種を0.005〜0.5%含有するFe基合金からなり、その金属組織に面積%で0.5〜5.0%の黒鉛と、0.1〜10.0%のMC系炭化物と、10.0〜45.0%のセメンタイトを有する外層と、片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄および黒鉛鋼のいずれかからなる内層との間に、金属組織に黒鉛を有する中間層を設けたことを特徴とする。
また、前記外層が質量%で、C:3.0%を超えて4.0%以下、Si:3.0%以下、Ni:2.3〜5.5%、Cr:0.1〜2.0%、V:0.3〜10.0%を含有し、さらに、希土類元素(REM)を0.005〜0.5%含有することを特徴とする。また、前記外層に質量%で、Mn:0.3〜2.0%、Mo:0.2〜3.0%、W:0.1〜3.0%、Nb:0.3〜10.0%、Co:0.1〜10.0%、Ti:0.01〜2.0%、B:0.002〜0.2%、Cu:0.02〜1.0%の1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、前記中間層中の黒鉛を面積%で、0.1〜10.0%有することを特徴とし、前記中間層は質量%で、C:3.0〜4.0%、Si:4.0%以下、Ni:1.0〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、V:0.1〜8.0%を含有し、残部Feおよび不純物元素からなり、中間層のロール半径方向の厚みが10mm以上であることを特徴とする。さらに、本発明の圧延用複合ロールを熱間薄板圧延機の仕上列の後段用ワークロールに用いたことを特徴とする。
本発明の圧延用複合ロールの外層はその金属組織に黒鉛を有し、耐事故性を確保するために必要な優れた耐焼付性、破壊靭性値は黒鉛量に応じて向上する。黒鉛量が面積%で0.5%未満では耐焼付性の効果が十分でない。また、黒鉛量が5.0%を超えると耐焼付き性、破壊靭性値の向上の効果は飽和し、耐摩耗性が低下する。このため、必要とされる黒鉛量は0.5〜5%である。より好ましい黒鉛量は1.0〜3.0%である。
耐摩耗性を向上させるためには、硬質な炭化物を分散させる必要がある。特に硬質な炭化物であるMC系炭化物は面積%で0.1〜10.0%含有する必要がある。硬質炭化物の面積%が0.1%未満では耐摩耗性が十分でない。また黒鉛との共存関係により、10.0%を超えて硬質炭化物を含有させるのは製造上困難である。より好ましいMC系炭化物の面積%は0.5〜6.0%である。
セメンタイトはMC系炭化物に比べ軟質であるものの、高価な合金を使用することなく容易に晶出できる。また多量に晶出させることにより、軟質な基地の粒径を微細にし、かつ基地面積率を減少させ、耐摩耗性を向上させることができる。セメンタイトの晶出量は10.0%未満では黒鉛の晶出が困難になり、45.0%を超えると靭性が低下する。より好ましいセメンタイトの面積%は15.0〜40.0%である。
また、外層の基地組織は、実質的にマルテンサイト、ベイナイトまたはパーライトからなるのが好ましい。
本発明の圧延用複合ロールの外層は、その金属組織に所定量の黒鉛と、MC系炭化物と、セメンタイトを有し、かつMgまたはCaを含有させることにより、MC系炭化物の形状を微細な粒状にするとともに、金属組織中に均一に分散できる。本発明の外層の金属組織を達成するためには、外層の各化学成分の含有範囲(質量%)は以下が望ましい。
C:3.0%を超えて4.0%以下
Cは、Fe、Cr、Vなどと結合してセメンタイトやMC、M2C、M6C、M73系炭化物などの硬質炭化物を生成し耐摩耗性を高めるとともに、黒鉛を晶出して耐焼付性を付与するのに必要な元素である。Cが3.0%以下では炭化物量が不足するとともに黒鉛の晶出量も不足する。4.0%を超えると、セメンタイトや硬質炭化物が多くなりすぎ靭性が低下する。Cの含有量は、好ましくは3.0%を超えて3.4%以下である。
Si:3.0%以下
Siは、黒鉛化促進元素である。外層中の全Si量が3.0%を超えると、基地が脆化し靭性が低下する。また黒鉛を晶出させるためには、全Si量のうち0.03%以上を接種で添加する必要がある。接種するSi量は、好ましくは全Si量の0.1〜0.5%とする。外層中の全Si量は、好ましくは0.8〜3.0%であり、より好ましくは1.0〜2.0%である。
Ni:2.3〜5.5%
Niは、黒鉛の晶出および基地組織の焼入れ性を向上させるため有効である。本発明の外層は鋳造後の焼入れを特に必要としないため、2.3%以上含有すればよい。5.5%を超えるとオーステナイトが安定しすぎて、ベイナイトあるいはマルテンサイトに変態しにくくなる。Niの含有量は、好ましくは3.0〜5.0%であり、より好ましくは、4.0〜5.0%である。
Cr:0.1〜2.0%
Crは、基地組織をベイナイトあるいはマルテンサイトにして硬さを確保し、耐摩耗性を維持するのに有効な元素であり、0.1%以上必要である。Crが2.0%を超えると、黒鉛の晶出を阻害したり基地組織の靭性を低下させる。また、Cr系炭化物(M73系、M236系)を形成し、この炭化物はMC系、M6C系炭化物に比べて硬さが低いため耐摩耗性向上効果が期待できず、かつ脆くなる。このためCrの上限は2.0%とする。Crの含有量は、より好ましくは1.0〜1.8%である。
V:0.3〜10.0%
VはCと結合してMC系炭化物を生成する。このMC系炭化物の硬さはHv2500〜3000であり、炭化物の中でも非常に硬質である。このため、Vは耐摩耗性の向上に最も効果のある必須元素の1つである。晶出炭化物だけでなく、基地中の微細な析出炭化物として耐摩耗性の向上に寄与する。しかし、過剰に含有させると黒鉛の晶出を阻害し、靭性が低下する。それとともに、MC系炭化物が粗大化し耐肌荒れ性が低下するので好ましくない。Vの含有量は、好ましくは2.0〜5.0%である。
Mg、Ca:0.005〜0.5%
MgおよびCaは本発明のロール外層において最も特徴とする元素である。これらは脱酸や脱硫作用の強い元素であり、酸化物や硫化物を形成する。詳細な現象は不明であるが、これらが溶湯中に懸濁されて核となり、MC系炭化物を微細均一に晶出させる。また、球状黒鉛鋳鉄の黒鉛がMgなどの添加によって球状化されるのと同様に、晶出するMC系炭化物が粒状となると推測される。MC系炭化物の形状を微細な粒状にするとともに、金属組織中に均一に分散させるためには、MgおよびCaの1種または2種を0.005%以上必要である。一方、0.5%を超えるとその効果が飽和し、また大量の添加は溶湯との反応が激しく作業的に困難になる。
本発明の外層の基本化学成分は上記のとおりであるが、ロールの用途、使用特性などにより以下の種々の化学成分を選択的に添加することができる。
希土類元素(REM):0.005〜0.5%
本発明の外層において、希土類元素(REM)を0.005〜0.5%添加してもよい。詳細は未だ明らかでないが、希土類元素(REM)は、MgおよびCaと同様にMC系炭化物を粒状にするとともに、黒鉛を球状化する作用を有する。
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定し、0.3%以上含有で効果がある。Mnが2.0%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり安定して硬さを維持できない。Mnの含有量は、好ましくは0.4〜1.5%であり、より好ましくは0.4〜1.0%である。
Mo:0.2〜3.0%
Moは、Cと結合して硬質のM6C系、M2C系炭化物を生成し、かつ基地組織中に固溶して基地組織を強化するので耐摩耗性の向上に有効であり、0.2%以上含有で効果がある。3.0%を超えると、黒鉛の晶出を阻害するので好ましくない。Moの含有量は、好ましくは0.2〜1.0%である。
W:0.1〜3.0%
WはMoと同様、Cと結合して硬質のM6C系、M2C系炭化物を生成し、かつ基地組織中に固溶して基地組織を強化するので耐摩耗性の向上に有効であり、0.1%以上含有で効果がある。3.0%を超えると、黒鉛の晶出を阻害するので好ましくない。Wの含有量は、好ましくは0.2〜2.0%である。
Nb:0.3〜10.0%
Nbは、Vと同様にCと結合してMC系炭化物を生成する。ロールの外層を遠心力鋳造法で形成させる場合、NbはMC系炭化物の偏析を少なからず軽減させる効果を有する。遠心力鋳造する際のVの添加量に応じて、Nbの添加の要否を選択すればよい。
Co:0.1〜10.0%
Coは、基地組織の強化に有効な元素であるが、過剰になると靭性を低下させる。そのため、Coの含有量は0.1〜10.0%とする。また、Coにはセメンタイトを不安定化し、黒鉛を晶出しやすくする効果もある。Coの含有量は、好ましくは3.0〜7.0%である。
Ti:0.01〜2.0%
Tiは、黒鉛化阻害元素であるNおよびOと結合して酸窒化物を形成する。Tiは0.01%未満では効果を期待できず、また含まれているNおよびOの量からTiは2.0%で十分である。Tiの含有量は、好ましくは0.05〜0.5%である。
B:0.002〜0.2%
Bは、炭化物を微細化する効果があり、0.002%未満ではその効果が十分に発揮されず、0.2%を超えると、炭化物が不安定になる。Bの含有量は、好ましくは0.01〜0.05%である。
Cu:0.02〜1.0%
CuはCoと同様、セメンタイトを不安定化し、黒鉛を晶出しやすくする効果がある。0.02%未満ではその効果が十分でなく、1.0%を超えると靭性を低下させる。Cuの含有量は、好ましくは0.1〜0.5%である。
上記元素以外は、不純物を除いて残部は実質的にFeである。不純物として主な元素はPおよびSである。靭性の低下を防止するため、Pの含有量は0.1%以下、Sの含有量は0.08%以下が好ましい。
本発明の複合ロールの内層は、靭性に優れるものが好ましく、具体的には、片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄および黒鉛鋼のいずれかからなるものが好ましい。
また、前記本発明の外層と内層との間に、金属組織に黒鉛を有する中間層を設ける。中間層の望ましい成分範囲は、質量%でC:3.0〜4.0%、Si:4.0%以下、Ni:1.0〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、V:0.1〜8.0%を含有し、残部Feおよび不純物元素からなる。
この中間層を設けることにより、外層から内層への合金成分の混入を抑制することができ、外層と内層の境界部近傍の強度や靭性等の機械的性質を向上させることができる。また、中間層に黒鉛を面積率で0.1〜10.0%晶出させることにより、境界近傍の伸びが向上し、一層強度および靭性が強化される。金属組織中の黒鉛の面積率が0.1%未満ではその効果が発揮されず、10.0%を超えると境界部に黒鉛が密集し境界強度が劣化する。さらに、好ましい黒鉛の面積率0.2〜6.0%である。
また、該中間層の効果を十分に発揮するには、中間層の厚みはロール中径方向で10mm以上必要である。より好ましい中間層の厚みは15mm以上である。
本発明の圧延用複合ロールは、遠心力鋳造法により形成することが好ましい。鋳造に際しては、Si含有接種剤を用いて接種する必要がある。
表1に示す化学成分(供試材No.1〜No.25)の外層用溶湯に、取鍋にてFe−Si接種剤、Ni−Mg接種剤、Ca−Si接種剤を添加することで、Si、Mg、Caの添加を行い、該外層用溶湯を回転する遠心力鋳造用金型に注湯して遠心力鋳造した。溶湯円筒状の外層がほぼ完全に凝固した後、続いて、前述の本発明の化学成分からなる中間層用の溶湯を遠心力鋳造し、外層の内面に中間層を溶着させた。外層と中間層がほぼ完全に凝固した後、金型の回転を止め、この金型を垂直に立てて、両端に上型および下型をセットして、金型の内部に内層として球状黒鉛鋳鉄を鋳込んだ。そして中間層と内層を完全に溶着させた。このようにして複合ロールが完全に冷却した後、金型から取り出し、本発明のロールを製造した。
図3に本発明の複合ロール胴体部の概略断面図を示す。図3において本発明のロールは外層21と内層23の間に、中間層22を設けて構成される。なお、中間層は、一層のみでなく二層以上設けてもよい。さらに、内層は中実状のみならず、中空スリーブ状であってもよい。
表1に示す供試材No.1〜No.7は本発明例、供試材No.21〜No.25は比較例である。なお、供試材No.31は従来のグレン系材、供試材No.32は従来のハイス系材である。
これらの得られたロール外層から試験片を採取し、画像解析装置により組織構成要素の面積%を測定し、また破壊靭性値および引張強度を測定した。また、圧延摩耗試験機で摩耗試験を、摩擦熱衝撃試験機で焼付試験を行った。表2にそれぞれの試験結果を示す。
図1は圧延摩耗試験機の概略図を示す。図1において、圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延材Sを余熱する加熱炉4と、圧延材Sを冷却する冷却水槽5と、圧延材Sの巻取り機6とテンションコントローラ7とから構成される。圧延機1には試験用ロール2、3が組み込まれる。試験用ロールは前記の供試材から作製し、外径60mm、内径40mm、幅40mmの小型スリーブロールを用いた。圧延摩耗試験機に試験用ロールを組み込み、試験条件が、圧延材料:SUS304、圧下率:25%、圧延速度:150m/min、圧延温度:900℃、圧延距離:300m/回、ロール冷却:水冷、ロール数:4重式にて試験を行った。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さを触針式表面粗さ計により測定した。
図2は摩擦熱衝撃試験機の概略図を示す。図2において、摩擦熱衝撃試験機は、ラック8に重り9を落下させることによりピニオン10を回動させ、供試材11に噛み込み材12を強く接触させるものである。
表2から本発明例のロール外層は、MgまたはCaを含有させることにより、MC系炭化物の形状を微細な粒状にするとともに、金属組織中に均一に分散させたので、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐事故性とも良好な結果が得られた。
本発明例に比べて、比較例21は破壊靭性値に劣る。比較例22は摩耗量が多く耐摩耗性に劣る。比較例23は焼付面積率が大きく耐焼付性に劣る。比較例24は摩耗量が多く耐摩耗性に劣る。比較例25は焼付面積率が大きく、また肌粗さも大きいので耐焼付性、耐肌荒れ性に劣ることが確認できた。
また、外層として本発明例の供試材No.1、内層として球状黒鉛鋳鉄を用いて、金属組織に黒鉛を有する中間層(質量%でC:3.2%、Si:1.1%、Mn:0.5%、Ni:3.9%、Cr:1.4%、Mo:0.3%、V:1.8%、残部Feおよび不純物元素)を設けた本発明の複合ロールにおいて、外層と中間層との境界部、中間層と内層の境界部の引張強度を測定した。その結果、それぞれの境界部の引張強度は、58.3kg/mm、61.5kg/mmであった。
また、前記本発明例は、中間層中に黒鉛を3.2面積%を有するものであり、境界部の引張強度および伸びも十分であることを確認できた。
また、外層として本発明例の供試材No.1、内層として球状黒鉛鋳鉄を用いた複合ロール、すなわち中間層を有しない比較例のロールにおいて、前記同様に外層と内層の境界部の引張強度を測定した。その結果、境界部の引張強度は50.7kg/mmであった。つまり、本発明の圧延用複合ロールは中間層を設けたため、外層から内層への合金混入が抑制され、境界部の強度が十分であることが判った。
以上述べたように、本発明の圧延用複合ロールの外層は黒鉛と硬質炭化物の共存により、耐摩耗性と耐事故性を併せ持つ。また硬質炭化物を微細均一に分散させ、形状を粒状にすることで、さらに耐摩耗性および耐事故性を向上させることができる。また、金属組織に黒鉛を有する中間層を設けることにより、外層と内層との境界部近傍の機械的性質を向上させることができる。本発明の圧延用ロールの外層は熱間圧延用ワークロール全般で、特に熱間薄板圧延機の仕上列後段において優れた性能を発揮し、圧延工場における生産性の向上に寄与する。
実施の形態で用いた圧延摩耗試験機の概略図である。 実施の形態で用いた摩擦熱衝撃試験機の概略図である。 本発明の複合ロール胴体部の概略断面図である。
符号の説明
1 圧延摩耗試験機、 2 試験用ロール、 3 試験用ロール、 4 加熱炉、
5 冷却水槽、 6 巻取り機、 7 テンションコントローラ、 S 圧延材、
8 ラック、 9 重り、 10 ピニオン、 11 供試材、
12 噛み込み材、 21 外層、 22 中間層、 23 内層

Claims (8)

  1. 化学成分が質量%で、MgまたはCaの1種または2種を0.005〜0.5%含有するFe基合金からなり、その金属組織に面積%で0.5〜5.0%の黒鉛と、0.1〜10.0%のMC系炭化物と、10.0〜45.0%のセメンタイトを有する外層と、片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄および黒鉛鋼のいずれかからなる内層との間に、金属組織に黒鉛を有する中間層を設けたことを特徴とする圧延用複合ロール。
  2. 前記外層が質量%で、C:3.0%を超えて4.0%以下、Si:3.0%以下、Ni:2.3〜5.5%、Cr:0.1〜2.0%、V:0.3〜10.0%を含有することを特徴とする請求項1に記載の圧延用複合ロール。
  3. さらに質量%で、希土類元素(REM)を0.005〜0.5%含有することを特徴とする請求項2に記載の圧延用複合ロール。
  4. 前記外層がさらに、質量%で、Mn:0.3〜2.0%、Mo:0.2〜3.0%、W:0.1〜3.0%、Nb:0.3〜10.0%、Co:0.1〜10.0%、Ti:0.01〜2.0%、B:0.002〜0.2%、Cu:0.02〜1.0%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の圧延用複合ロール。
  5. 前記中間層中の黒鉛を面積%で、0.1〜10.0%有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
  6. 前記中間層は質量%で、C:3.0〜4.0%、Si:4.0%以下、Ni:1.0〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、V:0.1〜8.0%を含有し、残部Feおよび不純物元素からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
  7. 前記中間層のロール半径方向の厚みが10mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
  8. 熱間薄板圧延機の仕上列の後段用ワークロールに用いたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005169426A (ja) * 2003-12-09 2005-06-30 Hitachi Metals Ltd 圧延用複合ロール
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