JP2005169162A - 有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤、および浄化方法 - Google Patents

有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤、および浄化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】洗浄処理によって有機ヒ素化合物を汚染土壌から効率よく抽出除去することにより、有機ヒ素化合物による環境リスクを大幅に低減して、土地の健全な利用を可能ならしめる浄化方法を提供する。
【解決手段】有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤は、水酸化ナトリウムを含有する水溶液、リン酸もしくはその塩を含有する水溶液、硫酸を含有する水溶液、塩酸を含有する水溶液、酒石酸もしくはその塩を含有する水溶液、クエン酸もしくはその塩を含有する水溶液、またはシュウ酸もしくはその塩を含有する水溶液、のいずれかにより構成される。本発明の浄化方法は、有機ヒ素化合物汚染土壌を上記洗浄剤で処理することにより、有機ヒ素化合物を除去する。
【選択図】図3

Description

本発明は、不適切に処分された旧式の化学兵器等に由来する有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化に関するものであり、更に詳しくは、有機ヒ素化合物で汚染された土壌から有機ヒ素化合物を高効率で抽出除去することにより、有機ヒ素化合物による環境リスクを大幅に減らして、土地の健全な利用を可能にする汚染土壌の洗浄剤および浄化方法に関する。
2002年8月に茨城県神栖町の住民の間に、有機ヒ素化合物で汚染された井戸水の継続的摂取による健康被害が発生していることが判明した(非特許文献1)。土壌及び井戸水からは、有機ヒ素化合物であるジフェニルアルシン酸、ビスジフェニルアルシンオキサイド、フェニルアルソン酸が検出された。これらの化合物は、いずれもヒ素原子(As)にフェニル基(C−)が結合したものであり、ヒ酸(HAsO)、亜ヒ酸(HAsO)などの無機ヒ素化合物とは性質を全く異にするものである。以下に代表的な有機ヒ素化合物および無機ヒ素化合物の構造式を記載する。
Figure 2005169162
[ここで、(I)はジフェニルアルシン酸、(II)はビスジフェニルアルシンオキサイド、(III)はフェニルアルソン酸、(IV)はヒ酸、(V)は亜ヒ酸を示す]
有機ヒ素化合物は、親油性を有し、無機ヒ素化合物は親水性を示す。汚染原因となった有機ヒ素化合物はくしゃみ作用や嘔吐作用を催す旧式の化学兵器に由来するものとされている。つまり、第二次世界大戦終結時に不適切に埋立て処分された化学剤が地中で加水分解、酸化などの反応を経て生成したものと考えられている。
こうした有機ヒ素化合物に係る問題を根本的に解決するためには、埋立てられた化学剤を掘り出して二次汚染を引き起こさないよう適宜処分するとともに、有機ヒ素化合物で汚染された土壌を確実に浄化する必要がある。
ヒ素で汚染された土壌の浄化には、これまでにいくつかの方法が提案されているが(例えば、特許文献1〜3)、それらは全て無機ヒ素化合物を対象としたものであり、有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化技術はこれまでに開発されていない。
このため、化学兵器由来の有機ヒ素化合物そのものの処理を目的として加熱法が提案されている(非特許文献2)。これは、有機ヒ素化合物を酸化分解して無機ヒ素化することにより、土壌から除去しようとするものである。しかし、後述するように、有機ヒ素で汚染された土壌を単に加熱しても大部分のヒ素は土壌中に残留したままであり、汚染土壌を浄化することは困難である。即ち、有機ヒ素による土壌汚染問題を解決するため、加熱法に替わる技術が求められている。
特開平11−156338号公報 特開2001−225052号公報 特許第3407039号公報 「第11回ヒ素シンポジウム講演要旨集」[(2003年10月)石井一弘、玉岡晃、大塚藤男;ジフェニルアルシン酸等による井戸水汚染と健康影響] 内閣府ホームページ[http://www8.cao.go.jp/ikikagaku/index.html]
本発明は、洗浄処理によって有機ヒ素化合物を汚染土壌から効率よく抽出除去することにより、有機ヒ素化合物による環境リスクを大幅に低減して、土地の健全な利用を可能ならしめる浄化技術を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を達成するために、まず、有機ヒ素化合物と各種土壌または粘土試料との相互作用を解析し、その結果に基づいて模擬汚染土壌を調製した。模擬汚染土壌では、モデル有機ヒ素化合物としてフェニルアルソン酸を用い、モデル土壌としてフェニルアルソン酸との吸着性が高い黄褐色森林土を用いた。
以上のように調製した模擬汚染土壌を用いて、数多くの薬剤による洗浄処理の有効性について、試行錯誤を繰返した結果、意外にも水酸化ナトリウム、リン酸またはその塩、硫酸、塩酸、酒石酸またはその塩、クエン酸またはその塩、シュウ酸またはその塩のいずれか1種以上を含有する水溶液は、有機ヒ素化合物に対して特異的な洗浄作用を持つことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の態様は、水酸化ナトリウムを含有する水溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
本発明の第2の態様は、リン酸もしくはその塩、硫酸、塩酸、酒石酸、クエン酸もしくはその塩、またはシュウ酸もしくはその塩のいずれか1種以上の成分を含有する水溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、有機ヒ素化合物が、フェニルアルソン酸、ジフェニルアルシン酸またはビスジフェニルアルシンオキサイドであることを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1の態様の洗浄剤で汚染土壌を洗浄処理することを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法である。
本発明の第5の態様は、有機ヒ素化合物で汚染された土壌を採取する土壌採取工程と、採取された汚染土壌に、水酸化ナトリウムを含有する水溶液、リン酸もしくはその塩を含有する水溶液、硫酸を含有する水溶液、塩酸を含有する水溶液、酒石酸もしくはその塩を含有する水溶液、クエン酸もしくはその塩を含有する水溶液、またはシュウ酸もしくはその塩を含有する水溶液、のいずれかを混合することにより、土壌中の有機ヒ素化合物を水溶液中に移行させる抽出工程と、前記有機ヒ素化合物を含む水溶液と土壌とを分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法である。
本発明によれば、有機ヒ素化合物で汚染された土壌から、有機ヒ素化合物を短期間で簡単に、かつ高い効率で抽出除去できる。
<洗浄剤>
本発明の洗浄剤は、その好ましい態様において、水酸化ナトリウムを含有する水溶液、リン酸もしくはその塩を含有する水溶液、硫酸を含有する水溶液、塩酸を含有する水溶液、酒石酸もしくはその塩を含有する水溶液、クエン酸もしくはその塩を含有する水溶液、またはシュウ酸もしくはその塩を含有する水溶液、のいずれかにより構成される。
本発明の処理対象としては、有機ヒ素化合物で汚染された土壌であれば、特に制限はない。後述するように、土壌の種類によって、有機ヒ素化合物の吸着性が大きく相違するが、本発明の洗浄剤は、どのような種類の土壌にも有効である。勿論、汚染土壌の種類に応じて、洗浄液の有効成分を選択することもできる。なお、土壌の物理的もしくは化学的性質は浄化効率に影響を与えると考えられるため、洗浄効果を高める目的で、必要に応じて、例えば粉砕、分級、脱水、pH調整などの前処理操作を土壌に施すことができる。
汚染物質である有機ヒ素化合物としては、前記したジフェニルアルシン酸、ビスジフェニルアルシンオキサイド、フェニルアルソン酸が例示される。これらの物質は、いずれも親油性であり、自然状態では長期間に渡って土壌中に残留し続ける。
本発明の洗浄剤の有効成分は、水酸化ナトリウム、リン酸もしくはその塩、硫酸、塩酸、酒石酸もしくはその塩、クエン酸もしくはその塩、またはシュウ酸もしくはその塩である。ここで、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が例示され、リン酸の塩としてはリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム(リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム)等、酒石酸の塩としては酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等、クエン酸の塩としてはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等、シュウ酸の塩としてはシュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等を挙げることができる。
本発明では、上記有効成分を単独で含む水溶液だけでなく、例えば2種以上の酸を組み合わせて含有する水溶液を調製して洗浄剤とすることもできる。
洗浄剤における有効成分の種類や濃度は、土壌の種類やその状態(含水率、pH、粒径など)、有機ヒ素化合物の種類や汚染濃度などに応じて適宜選定することができる。特に、水溶液中の有効成分濃度は限定されるものではなく、一般に濃度が高いほどヒ素除去作用も高まると考えられるが、経済的観点からは、除去作用を奏する範囲で出来るだけ濃度を低くすることが好ましい。例えば、水酸化ナトリウムを含有する水溶液における水酸化ナトリウムの濃度は、1N以下が好ましく、0.05N〜0.5N程度がより好ましい。また、リン酸もしくはその塩を含有する水溶液におけるリン酸もしくはその塩の濃度は、10%以下が好ましく、0.5〜5%程度がより好ましい。硫酸を含有する水溶液における硫酸の濃度は、10%以下が好ましく、1〜5%程度がより好ましい。塩酸を含有する水溶液における塩酸の濃度は、10%以下が好ましく、1〜5%程度がより好ましい。酒石酸もしくはその塩における酒石酸もしくはその塩の濃度は、20%以下が好ましく、5〜15%程度がより好ましい。クエン酸もしくはその塩を含有する水溶液におけるクエン酸もしくはその塩の濃度は20%以下が好ましく、5〜15%程度がより好ましい。シュウ酸もしくはその塩を含有する水溶液におけるシュウ酸もしくはその塩の濃度は、10%以下が好ましく、1〜5%程度がより好ましい。以上に例示したように、本発明では、比較的低濃度のアルカリまたは酸水溶液により浄化が可能なため、薬品の使用量や排水処理の負担が少なく、経済性も高い。
また、洗浄剤としての上記水溶液中には、有機ヒ素化合物に対する洗浄作用を損なわない範囲で、例えば界面活性剤等を添加することができる。界面活性剤の添加により、洗浄剤が稠密土壌層にも浸透して、土壌中の有機ヒ素化合物の溶出が促進される場合がある。
<有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法>
本発明に係る浄化方法は、有機ヒ素化合物汚染土壌を前記洗浄剤で処理することにより実施される。洗浄剤による処理の一例として、例えば、有機ヒ素化合物で汚染された土壌を採取し(土壌採取工程)、採取された汚染土壌に、前記洗浄剤を混合することにより、土壌中の有機ヒ素化合物を水溶液中に移行させ(抽出工程)、次いで有機ヒ素化合物を含む水溶液と土壌とを分離すること(固液分離工程)により実施される。
より具体的には、有機ヒ素化合物汚染土壌を掘削などの手段で地中から採取し、所定の洗浄装置に搬入した後、水溶液を適量添加して、攪拌機などにより混合攪拌を行った後、水溶液と土壌を遠心分離、濾別、静置分離などの方法で固液分離する方法を挙げることができる。有機ヒ素化合物の抽出に際しては、混合攪拌を行うことによって、土壌粒塊中の有機ヒ素化合物の溶出を促し、有機ヒ素化合物を水溶液中に効率よく移行させることができる。また、固液分離に際しては、必要に応じてカチオン性ポリマーなどの凝集剤を添加して土壌成分を凝集沈降させてもよい。
また、浄化方法の別の態様として、汚染土壌をカラムに充填し、カラム上部または底部から洗浄液を通液する方法で実施することもできる。更に別の態様として、汚染土壌を容器に取り、これに洗浄液を加えて所定時間浸漬した後、洗浄液を容器底部から排出する方法で実施することも可能である。
以上の処理過程では、予め常温〜90℃程度までの温度に加温した水溶液を使用したり、加温しながら抽出操作を実施したりすることにより、抽出効率を向上させ得る場合がある。また、洗浄剤として用いる水溶液の量は特に制限されず、汚染土壌の容量に対して過剰に使用することを妨げないが、有機ヒ素化合物抽出後の排水処理を考慮すると、汚染土壌に対する体積比で1/2〜10倍程度の範囲で適用することが好ましい。
以上のように土壌を処理することによって、抽出されたヒ素を含む洗浄液が回収される。この回収洗浄液は、排水として処理することもできるが、ヒ素濃度及び溶解土壌成分の濃度が所定値に達するまで洗浄剤として循環使用することも可能である。
また、汚染土壌の浄化処理においては、単一の洗浄剤だけでなく、有効成分やその濃度が異なる二以上の洗浄剤(例えば、リン酸と塩酸、1%リン酸と3%リン酸など)を用いて、多段階の洗浄処理を順次実施してもよい。
<作用>
前記化学構造式の相違から理解されるように、有機ヒ素化合物は、従来土壌汚染の原因となっていた無機ヒ素化合物とは化学的性質が大きく異なる。有機ヒ素化合物は親油性であるため、酸やアルカリの水溶液では十分に抽出できないことが予測された。このため、本発明者らは、当初メタノール、エタノールなどのアルコール類を使用して抽出を試みたが、後記比較例に示すように好ましい結果は得られなった。
土壌中の有機ヒ素化合物は、ヒ素原子が酸素原子を介して土壌中に含まれる水酸化鉄中の鉄原子や、水酸化アルミニウム中のアルミニウム原子と化学吸着しているため、親和性の高い溶媒でも簡単には溶出しないと考えられる。また、加熱法も試みたが、後記比較例に示すように揮散・分解温度以上でも充分な除去効果は得られなかった。
しかし、試行錯誤の結果、前記予測に反して、特定のアルカリや酸の水溶液を用いることにより、アルコール類による洗浄や加熱処理に比較して顕著な抽出、洗浄効果が得られることが実験的に確認された。土壌中の有機ヒ素化合物に対して、特定の酸水溶液やアルカリ水溶液による抽出が有効であること(換言すれば、特定の酸やアルカリの水溶液が土壌中の有機ヒ素化合物を除去する作用を有すること)は、本発明者らによって初めて見出された知見である。
以下、実施例、比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。なお、実施例等において、模擬汚染土壌の調製、加熱処理実験、および洗浄実験は以下に示す手順によって行った。
<模擬汚染土壌の調製>
3リットル容のポリエチレンビン中で初期濃度462ppm(ヒ素として)、初期pH2.93のフェニルアルソン酸水溶液2リットルを調製した。これに約1kgの黄褐色森林土(茨城県つくば市で採取)を添加し、室温下で振とう器にて横方向(振幅10cm)に5日間振とうした。上澄み液を除去し、約1リットルの脱イオン水を加え洗浄した。この操作を3回繰り返した。
得られたスラリーを定性ろ紙を用いてろ過し、ろ過ケーキを風乾した後、更に減圧下で乾燥し、密閉ポリエチレンビン中で保存した。この擬似汚染土壌のヒ素含有量は897mg/kgであった。
<加熱処理実験手順>
上記模擬汚染土壌4gを磁性ボート(幅17mm×長さ100mm×深さ12mm)にとり、筒状電気炉中に設置した石英管(内径18mm×長さ1000mm)に挿入した。キャリヤーガスとして空気または窒素ガスを流速250ml/minで通気すると共に、電気炉に通電して試料温度を200℃、400℃、600℃として30分間保持した。
石英管から出てきたキャリヤーガスは、2本のガス洗浄ビンに通して、気相中のヒ素を捕集した。一番目のガス洗浄ビンにはメタノールを、二番目には1N水酸化ナトリウム溶液を、それぞれ200ml入れた。
得られたメタノール及び水酸化ナトリウム溶液中のヒ素濃度をグラファイトファーネス原子吸光光度法で測定した。また、加熱処理後の土壌試料は、EPA 3050B(米国環境保護庁が定めた試料分解法:method 3050B)の方法に従って、硝酸及び過酸化水素で分解した後、ICP発光分光法でヒ素濃度を測定し、土壌中に残留したヒ素の量を求めた。
<洗浄実験手順>
35ml容ポリカーボネート製遠心沈殿管に模擬汚染土壌1gと洗浄剤水溶液25mlを入れ、20℃に保持した恒温槽中で振とう器にて横方向(振幅10cm)に所定時間振とうした。ついで、冷凍機付き高速遠心機を用いて9,000rpmで20分間遠心分離し、分離した上澄液を孔径0.2μmのメンブレンフィルタでろ過した。得られたろ液について、ヒ素濃度をICP発光分析法またはグラファイトファーネス原子吸光光度法により、またアルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、シリカ濃度をICP発光分析法により測定した。
参考例1
有機ヒ素化合物と土壌との相互作用の解析:
土壌試料として、擬似グライ化黄褐色森林土、黄褐色森林土(1)、黄褐色森林土(2)、硫酸酸性質グライ土、鹿沼土、黒ボク土、黒ボク質グライ土、湿性腐植型ポドゾル土、赤黄色土(1)、赤黄色土(2)および火山灰、また、粘土試料としてカオリナイト(Kaolinite)#1101、ディッカイト(Dickite)#1301、パイロフィライト(Pyrophyllite)#2101、モンモリロナイト(Montmorillonite)#3101、モンモリロナイト(Montmorillonite)#3102、セリサイト(Sericite)#5101、へき開セリサイト(Cleavage Sericite)#5102および頁岩粘土、の合計19種類のサンプルについてフェニルアルソン酸吸着試験を行った。
それぞれのサンプル約0.25gを35ml容ポリカーボネート製遠心沈殿管にとり、初濃度14.1ppm(ヒ素として)、初期pH4.00のフェニルアルソン酸水溶液25mlを添加した。この遠心沈澱管を、20℃に保持した恒温槽中で振とう器にて横方向(振幅10cm)に所定時間振とうした。ついで、冷凍機付き高速遠心機を用いて9,000rpmで20分間遠心分離し、分離した上澄液を孔径0.45μmのメンブレンフィルタでろ過した。得られたろ液について、ヒ素濃度をグラファイトファーネス原子吸光光度法で測定した。その結果を図1に示す。
図1より、フェニルアルソン酸は、カオリナイト及び頁岩粘土を除く粘土試料にはほとんど吸着されなかった。土壌試料では、土壌の種類によってフェニルアルソン酸の吸着率が大きく変化した。土壌試料の中でも、擬似グライ化黄褐色森林土、黄褐色森林土(1)、硫酸酸性質グライ土は高い吸着率を示した。この試験により、有機ヒ素化合物の土壌への吸着性は、土壌成分の種類によって大きな差があることが示された。
比較例1
加熱法による浄化試験:
前記加熱処理実験手順に従って、模擬汚染土壌を空気または窒素ガス雰囲気下で200℃、400℃または600℃で加熱した。いずれの場合も、ガス洗浄ビン中のメタノール及び水酸化ナトリウム溶液中のヒ素濃度は微量であり、加熱処理によってヒ素はほとんど揮散しないことが認められた。
一方、図2に示すように、加熱処理後の土壌には、加熱前を基準にして80〜118%のヒ素が残留していることが認められた。このことから、フェニルアルソン酸で汚染された土壌を単に加熱するだけでは、土壌から除去することは困難であることが示された。
フェニルアルソン酸の融点は158〜162℃であり、融解は分解を伴って起ることから、200℃以上の加熱温度であれば完全に分解・気化すると予測された。しかし、実験結果のように200℃以上に加熱してもヒ素は除去できなかった。ヒ素が揮散しなかった理由として、後述するように、土壌成分にフェニルアルソン酸が化学的に強く捕捉されていることが推測される。また、400℃以上でも土壌中のヒ素が揮散しなかったのは、フェニルアルソン酸が三酸化二ヒ素に酸化分解されるだけで、土壌中に留まるためと考えられる。
実施例1〜11および比較例2〜14
洗浄法:
前記洗浄実験手順に従い、模擬汚染土壌を表1に示す洗浄剤で処理した。
Figure 2005169162
得られた結果を図3に示す。土壌中のフェニルアルソン酸は水やアルコール類ではほとんど溶出してこなかったが、実施例1〜11の特定の酸またはアルカリ水溶液(本発明洗浄剤)では顕著な溶出が確認された。特に、0.1N水酸化ナトリウムや、3.4%リン酸、1.1%リン酸、2重量%リン酸二水素カリウム、3.8%硫酸、1.3%硫酸などの鉱酸及びその塩で非常に高いヒ素除去率が得られた。また、10重量%酒石酸、10重量%クエン酸、2重量%シュウ酸ナトリウムなどの有機酸及びその塩でも50%以上の高いヒ素除去率が得られた。
フェニルアルソン酸は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールにある程度可溶であるものの、模擬汚染土壌中のフェニルアルソン酸をこれらの溶媒で洗浄処理してもほとんど溶出しなかった。これは、フェニルアルソン酸のヒ素原子が酸素原子を介して土壌中の水酸化鉄中の鉄原子や、水酸化アルミニウム中のアルミニウム原子に化学吸着して捕捉された状態にあるためと考えられる。
なお、以上の実験はフェニルアルソン酸を用いて実施したが、フェニルアルソン酸とジフェニルアルシン酸とは類似性が高いため、本発明の洗浄剤はジフェニルアルシン酸で汚染された土壌の浄化にも有効なことは自明であり、ビスジフェニルアルシンオキサイドなど他の有機ヒ素化合物に対する除去効果も類推可能な範囲内である。
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
本発明は、有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化、再生に利用可能である。
土壌種によるフェニルアルソン酸の吸着特性を示すグラフ図面。 加熱処理した模擬汚染土壌におけるヒ素残留量を示すグラフ図面。 各種洗浄剤による模擬汚染土壌からの有機ヒ素化合物の除去率を示すグラフ図面。

Claims (5)

  1. 水酸化ナトリウムを含有する水溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  2. リン酸もしくはその塩、硫酸、塩酸、酒石酸、クエン酸もしくはその塩、またはシュウ酸もしくはその塩のいずれか1種以上の成分を含有する水溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  3. 請求項1または2において、有機ヒ素化合物が、フェニルアルソン酸、ジフェニルアルシン酸またはビスジフェニルアルシンオキサイドであることを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄剤で汚染土壌を洗浄処理することを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法。
  5. 有機ヒ素化合物で汚染された土壌を採取する土壌採取工程と、
    採取された汚染土壌に、水酸化ナトリウムを含有する水溶液、リン酸もしくはその塩を含有する水溶液、硫酸を含有する水溶液、塩酸を含有する水溶液、酒石酸もしくはその塩を含有する水溶液、クエン酸もしくはその塩を含有する水溶液、またはシュウ酸もしくはその塩を含有する水溶液、のいずれかを混合することにより、土壌中の有機ヒ素化合物を水溶液中に移行させる抽出工程と、
    前記有機ヒ素化合物を含む水溶液と土壌とを分離する固液分離工程と、
    を含むことを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法。
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