JP2005164071A - 防弾部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カーブ面等を有する複雑な形状の防弾部材を低コストで提供する。
【解決手段】 セラミック粒子7を樹脂8で結合して構成した衝撃吸収層2,3と、前記衝撃吸収層2,3に対して被弾方向の反対側に配されたバッキング層4とを有することを特徴とする。衝撃吸収層2,3は、セラミック粒子7を樹脂8で結合して構成しているので、脆性破壊しにくく、マルチヒット時にも防弾能力の急激な低下が生じない。また、被弾時に破片の飛散が生じないので、二次的な被害が防止される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、人体を防護するための防護服、防弾楯や、車両、船舶、航空機等の乗物の装甲材として用いる防弾部材に関する。
従来、人体を銃弾から保護するための防弾ベスト等の防護服や、車両の装甲用等の素材として、セラミック製の板材と、積層繊維を含む裏当て材(バッキング)を積層した構造が用いられる。例えば、特許文献1に示すように、防護服用の素材として、セラミックスをタイル状に成形または加工して小面積のものとし、これを多数張り合わせて防弾面を形成したものが記載されている。また、車両の装甲構造として、アルミナ等のセラミックタイルと、高性能で高弾性のポリアラミド繊維を含むバッキング層とを積層した構造が使用されている。
このような構造の防弾部材では、銃弾は硬度の大きいセラミック材と衝突して、弾頭が拡大するように変形し、あるいは破砕される。その過程で銃弾の運動エネルギーはそれ自体の変形、破砕やセラミックスの破砕のために消費され、減速する。これにより、銃弾が小片化し、かつ減速することで、人体等に与える損害が防止され、または軽減される。バッキング層は、銃弾やセラミックスの破片が人体に到達するのを防止する役割を果たす。
バッキング層においては、繊維間に充分な強度を持ったラバーや硬化ポリマーを注入することによって、望ましい堅牢性と柔軟性が実現されている。ポリアラミド素材に代わるものとしては、ポリエチレン繊維、グラスファイバーまたは炭素繊維がある。セラミック材とバッキング層の接合技術は、防弾部材の機能にとって極めて重要であり、高性能の接着剤のみが使用される。さらにセラミックの前面には飛散防止用の覆い材が取り付けられている。
セラミック製タイルは、通常は、板状に成型し、焼結した素材から、ダイヤモンドカッターやダイヤモンドドリル等で切り出し、あるいは加工して製造されている。セラミックスには、硬さ、破砕に対する耐性、高い弾性係数、高音速性、面積当たりの軽量性等が要求される。このような条件は、ボロン・カーバイド(炭化ホウ素)、シリコン・カーバイド(炭化珪素)、シリコン・ナイトライド(窒化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミニウム・ナイトライド(窒化アルミニウム)等のセラミック素材で満たされている。アルミナは、価格/性能比が優れており、実用性が高い。ボロン・カーバイドやシリコン・カーバイドは、ヘリコプター用など特に軽量であることが求められる場合に使用される。また、これらのセラミックスの性能をさらに強化し、あるいはその欠点を補うために、繊維強化セラミックやセラミック−金属コンポジットが製造されているが、高価でもあり、その用途は限定されている。
このようなセラミック素材を防弾用に使用するには、セラミック製造技術を慎重に用いなければならない。すべての構成材に亀裂や微細孔がないことは絶対的に必要であり、タイルの欠け落ちは、縁や角にしか認められない。最高の防弾性能を発揮するには、理論上の密度の98パーセント以上の充填密度が実現されなければならない。同等に重要なのは、すべてのセラミックタイルが、寸法公差、表面の平行度、面間角度、表面の平坦さといった特性の均一性を持つことである。これらの要件がすべて満たされて初めて、タイルを密接連結させた敷き込みが可能になる。タイルどうしの間に0.3mm以上の隙間が有ると、システム全体の防弾強度という観点からは弱点となりかねない。該当する物理的特性はすべて厳守されることが求められる。
上記の要件を満たすために、製造工程においては、原材料や添加物の厳選、反復可能な調製方法での原材料の調合、成形および焼結テクノロジーに関する完全な専門技術、粉末段階から最終製品まで全製造工程を通じた品質管理などに留意することが必須である。
特表2003−519776号公報
ところで、上記のような防弾ベストを人体に着用して使用する場合、着用時の快適性に影響するフィット感を向上させるため、2次元的なあるいは3次元的な形状の複雑なカーブが必要となる。しかしながら、セラミックスを成型し、焼結する方法では、上述したような優れた特性を備え、かつ複雑な形状を有する小タイルを成型するのは難しく、充分なデザイン的要求に対応できない。また、それを達成しようとすると、多くの製造工程と時間が掛かり、コスト高となってしまう。
一方、コストの低下や大量生産のために、一体に成型したセラミック板を使用する場合がある。この場合、全体を一体に成型するために、マルチヒット(多数被弾)を受けると、防弾板全体にダメージが広がってしまい、充分な防護性能が得られない。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、その1つの目的は、カーブ面等を有する複雑な形状の防弾部材を低コストで提供することである。
この発明の他の目的は、セラミック素材の衝撃に弱い性質を補って、高い防弾性能を有する防弾部材を提供することである。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の防弾部材は、セラミック粒子を樹脂で結合して構成した衝撃吸収層と、前記衝撃吸収層に対して被弾方向の反対側に配されたバッキング層とを有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明においては、セラミック粒子を樹脂で結合して構成した衝撃吸収層において、セラミックスの粒子の間を樹脂が充填している。したがって、銃弾等が衝突した時に、樹脂中に保持されたセラミック粒子によってその衝撃が負荷され、銃弾は硬度の大きいセラミック粒子と衝突して変形し、あるいは破砕される。その過程で銃弾の運動エネルギーはそれ自体やセラミック粒子の破砕のために消費され減速する。小片化し、かつ減速した銃弾は、バッキング層によって最終的に減速し、停止させられ、人体等に与える損害を軽減する。
衝撃吸収層は、型内に、樹脂素材およびセラミック粒子を注入し、樹脂素材を固化させることにより製造される。したがって、カーブ面を有するような複雑な形状も容易に成形でき、大量生産も容易である。衝撃吸収層とバッキング層を個別に製造してから、これらを接着等によって積層してもよいし、これらを1つの型内に順次積層して一体に形成してもよい。
請求項2に記載の防弾部材は、請求項1に記載の発明において、前記衝撃吸収層は、さらに前記樹脂と結合する繊維層を有する。これにより、充填樹脂が補強され、セラミック粒子を保持する能力が向上する。したがって、銃弾が衝突した時に、セラミック粒子が逃げることがなく、銃弾の貫通を阻止する能力が向上し、セラミックタイルと同等の防弾能力を発揮する。
請求項3に記載の防弾部材は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記衝撃吸収層が複数層設けられていることを特徴とする。これにより、銃弾の運動エネルギーを段階的に減少させるので防弾機能が高められる。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明において、前記バッキング層は、繊維と充填材からなることを特徴とする。このようなバッキング層は、繊維と充填材がそれぞれに銃弾のエネルギーを吸収し、あるいは相互に補強しあうことによって銃弾を阻止する機能を高める。繊維としては、ポリアラミド繊維やポリエチレン繊維等のポリマー素材、グラスファイバーや炭素繊維等の無機素材、あるいは金属繊維等を用いることができる。充填材としては、ゴムやポリマーを用いることができる。
請求項5に記載の防弾部材は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明において、前記衝撃吸収層の被弾方向前側に配された表面層を有することを特徴とする。表面層を設けることにより、被弾により破砕したセラミック粒子や樹脂の破片が外方に飛散するのが防止される。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発明において、前記防弾部材は、防弾服として用いられることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発明において、前記防弾部材は、乗物用の装甲部材として用いられることを特徴とする。
本発明によれば、衝撃吸収層がセラミック粒子の間を樹脂が充填する構造であるので、カーブ面等を有する複雑な形状の防弾部材を樹脂成形の方法により製造することができ、したがって、低コストで提供することができる。また、硬度が高いセラミック粒子の利点と、粘弾性の高い樹脂の利点を併せ持つことにより、衝撃吸収層が全体として脆性破断することなく、連続的に銃弾を受けるマルチヒット(多数被弾)の場合でも高い防弾機能を維持することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1は、防弾部材の断面を示すもので、この防弾部材は、表面側から、表面層1、第1衝撃吸収層2、第2衝撃吸収層3、およびバッキング層4の4つの層が積層された構造となっている。表面層1は、強度の高い繊維(ケブラーやガラス繊維、バリスチックナイロン等)と樹脂からなっている。バッキング層4は、ポリアラミド繊維やポリエチレン繊維のポリマー繊維、グラスファイバーや炭素繊維等の無機繊維、金属繊維等からなる高強度の繊維9の間に、充分な強度を持ったラバーや硬化ポリマー等の充填材10を注入することにより構成されている。
第1および第2の衝撃吸収層2,3は、それぞれ、基布(繊維層)5とセラミック粒子7を樹脂8で固めた構造である。基布5は、表面層1と同様に、強度の高い繊維(ケブラーやガラス繊維、バリスチックナイロン等)からなっており、衝撃吸収層2,3中に充填された樹脂8を補強する。セラミック粒子7の素材は、ボロン・カーバイド、シリコン・カーバイド、シリコン・ナイトライド、アルミナ、アルミニウム・ナイトライド等が用いられる。アルミナは、価格/性能比が優れており、実用性が高い。セラミック粒子7の粒度は、例えば、平均粒径が0.5〜2.0mm程度である。樹脂8としては、エポキシ、フェノールのような熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂等の素材が用いられる。
衝撃吸収層2,3は、例えば以下のようにして製造される。事前に、製造する製品等の形状に適合する型を用意する。この型としては、成形空間を形成するメス型および空間を加圧するオス型を用意する。次に、メス型の底部に、型の形状に合わせてカットした基布を、必要とする強度に応じて2〜5枚程度を均等に重ねる。次に、この層状の基布5に樹脂を含ませる。その上に、粒状のセラミックを均等に敷き詰め、さらに樹脂を加える。次に、平板または球面のオス型を用いて圧力を加え、不要な樹脂を搾り出す。そして、基布5と粒状のセラミックが樹脂と一体化して固化するまで圧力を加え続け、衝撃吸収層2,3を形成する。
バッキング層4は、例えば防弾用の繊維(グラスファイバー、ケブラー繊維、アラミド、カーボン繊維、スペクトラ繊維)等の引っ張り強度の高い防弾用の繊維9に、エポキシフェノール、ポリエチレン等の樹脂10を含浸し、常温または加熱、加圧して固化することにより、製造される。
次に、複数枚の衝撃吸収層2,3(この例では2枚)と、バッキング層4を接着剤により接着し、側面や角をパテ等で滑らかに成型した後、表面保護および塗装のために、樹脂を含ませたナイロン繊維またはケブラー、グラスウール等の強度の高い繊維で包み常温または加熱、加圧して固化することにより、表面層1を形成する。更に必要に応じて仕上げ塗装を施す。これにより、図示するような防弾部材が製造される。
表面層1は、上記のように固化した後に適宜の方法で接着するようにしてもよいが、成形・固化させる際に一体に固着させてもよい。この実施の形態では、2つの衝撃吸収層2,3を積層して用い、これによって防弾機能を果たすために必要な厚さを確保しているが、1枚の衝撃吸収層で充分な厚さを確保できる場合には単層でよい。
上記のように構成された防弾部材は、所定の形状の型を用いることにより、例えば、図2に示すように形状に作製され、防弾ベストとして用いられる。それぞれの型を製造することにより、種々のデザイン的ニーズに対応するのが容易である。また、従来のようにダイヤモンドカッター等を用いて切り出したり、加工したりする手間を省くことができるので、コストを削減することができる。
図3は、上記のように構成された防弾部材が被弾したときの作用を模式的に示すものである。高速で飛来した銃弾13は、衝撃吸収層2,3に衝突し、図3(a)に示すように、樹脂中に保持されたセラミック粒子7に衝突し、これにより、図3(b)に示すように弾頭の変形と破壊が生じる。これによって断面積が拡大し、貫通力が一気に低下する。衝撃吸収層2,3においては、セラミック粒子7の間を樹脂8が充填しているので、セラミック粒子7が脆性破断しても、衝撃吸収層2,3全体としては脆性破断することがない。したがって、連続的に銃弾13を受けるマルチヒットの場合でも防弾機能を維持することができる。また、被弾時に破片の飛散が生じないので、二次的な被害が防止される。
更にセラミック粒子7と基布5の引き裂き抵抗により、銃弾13のエネルギーは拡散してさらに減速する。そして、減速し、変形あるいは破砕して小片化した銃弾13は、バッキング層4に至り、その中の高強度繊維9によってさらに運動エネルギーを吸収され、充填材10にトラップされる。これにより、銃弾13を小片化し、かつ減速させることで、人体等に与える損害を防止し、あるいは軽減することができる。
以上、この発明を実施の形態に基づいて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、上記実施の形態では、衝撃吸収層2,3に基布5を一体に設けたが、成形品が複雑な形状であって、高強度であることを必要としない場合には、基布を用いないようにしてもよい。また、特に、軽量化を要請されるような用途では、表面層1を設けずに直接塗装するようにしてもよい。また、バッキング層4として繊維と充填材からなるものを用いたが、他の素材、例えば、層化した繊維や、アルミニウムのような金属シート等を用いることができる。また、この発明の防弾部材は、防弾服のみでなく、自動車、電車等の車両、ヘリコプターやジェット機等の航空機等に適宜に用いることができる。
この発明の実施の形態の防弾部材の構造を示す断面図である。 図1の防弾部材を防弾ベストに適用した実施の形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。 (a)および(b)は、防弾部材が被弾したときの作用を模式的に示す図である。
符号の説明
1 表面層
2,3 衝撃吸収層
4 バッキング層
5 基布(繊維層)
7 セラミック粒子
8 樹脂
9 繊維
10 充填材

Claims (7)

  1. セラミック粒子を樹脂で結合して構成した衝撃吸収層と、
    前記衝撃吸収層に対して被弾方向の反対側に配されたバッキング層とを有することを特徴とする防弾部材。
  2. 前記衝撃吸収層は、さらに前記樹脂と結合する繊維層を有することを特徴とする請求項1に記載の防弾部材。
  3. 前記衝撃吸収層が複数層設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防弾部材。
  4. 前記バッキング層は、繊維と充填材からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防弾部材。
  5. 前記衝撃吸収層の被弾方向前側に配された表面層を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防弾部材。
  6. 前記防弾部材は、防弾服として用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防弾部材。
  7. 前記防弾部材は、乗物用の装甲部材として用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防弾部材。
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