JP2005163112A - 重合金シート、塗装重合金シート及び重合金シートの製造方法 - Google Patents

重合金シート、塗装重合金シート及び重合金シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
厚みが10〜300μmで、比重11〜18.7の、高い放射線遮蔽能が確保されているタングステン重合金シート、このような重合金シートに塗装を施した塗装重合金シート、これらを用いた放射線遮蔽材料、及び、このような重合金シートを簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】
タングステン及び少なくとも1種類のその他の金属からなるタングステン重合金シートであって、上記タングステンの含有量が70〜95質量%であり、上記その他の金属の含有量が5〜30質量%であり、厚さ10〜300μmで、比重11〜18.7であるタングステン重合金シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、重合金シート、塗装重合金シート及び重合金シートの製造方法に関する。
X線及びγ線等を遮蔽する放射線遮蔽用材料としては、高比重で、柔軟性を備えた金属材料が必要とされており、このような金属材料としては、鉛が最も一般的に使用されてきた。しかしながら、鉛には毒性があり、しかも、皮膚から人間の体内に侵入した鉛は骨に沈着すると極めて排出されにくく、人間の体内に蓄積されることとなる。万一人間の体内に鉛が蓄積されると、鉛中毒を起こすおそれがあるので、できるだけ鉛を使用しないことが望まれている。
タングステンは、19.3という実用金属中最大の比重を有するため、このようなX線及びγ線等を遮蔽する放射線遮蔽用材料としての使用されている。
タングステンを用いた放射線遮蔽材料としては、粉末又は顆粒のタングステンを樹脂マトリックス中に分散させた組成物からなる放射線遮蔽材料が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような放射線遮蔽材料は、樹脂を含有するため比重が低下し、省スペースや取り扱いの容易性を考慮して薄い肉厚のシートを成形した場合、充分な放射線遮蔽効果を確保することが困難となる恐れがあった。
一方、純金属のタングステンは、非常に延性に乏しく、伸びが小さいために、薄いシート状に塑性加工(圧延加工)することは困難である。このため、薄いシート状の純金属のタングステンは非常に高コストであった。
タングステンに対して、5〜30質量%のニッケルと、更に、鉄、コバルト及び銅からなる群から少なくとも1つ金属とを加えることにより、純タングステンの焼結温度を大きく低下させ、同時に塑性加工性を改善したタングステン重合金は、よく知られている。タングステン重合金は、純金属タングステンの比重19.3には劣るが比重11〜18.7であり、放射線遮蔽材料としては充分な比重を持っている。
タングステン重合金の薄板の製造としては、粉末圧延プレス法(例えば、特許文献2参照。)の他、プレス成形法、押し出し成形法及びドクターブレード法が開示されている。しかしながら、300μm程度の厚さになると、ローラー中での粉末の分布が不均一となり、充填不足の箇所が発生し、成形体が破損する場合が多かった。そのため従来成型法による成形体の厚さは、最小0.5mm程度となり、焼結体の厚さも、最小0.4mm程度であった。また金属ではシート製造時一般に圧延法を用いるが、このタングステン重合金の圧延時の加工率は5〜10%程度である。そのため0.5mmの焼結体を300μm程度の薄いシートに圧延するには、6回〜10回の圧延パス数とその間の焼鈍が必要であり、その結果高コストとなり、タングステン重合金の10〜300μm程度の薄いシートは実用化されていなかった。
特開平6−180389号公報(第1頁〜第5頁) 特開平9−235641号公報(特許請求の範囲、請求項2)
本発明は、上記に鑑み、厚みが10〜300μmで、比重11〜18.7の、高い放射線遮蔽能が確保されているタングステン重合金シート、このような重合金シートに塗装を施した塗装重合金シート、これらを用いた放射線遮蔽材料、及び、このような重合金シートを簡便に製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、タングステン及び少なくとも1種類のその他の金属からなるタングステン重合金シートであって、上記タングステンの含有量が70〜95質量%であり上記その他の金属の含有量が5〜30質量%であって、厚さ10〜300μmで、比重11〜18.7であることを特徴とするタングステン重合金シートである。
上記その他の金属は、ニッケルを必須として、更に、鉄、コバルト及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでなることが好ましい。
上記ニッケルと、鉄、コバルト及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1つとの質量比は、1:1〜4:1であることが好ましい。
本発明は、上記タングステン重合金シートを用いた放射線遮蔽材料でもある。
本発明は、上記タングステン重合金シートの表面に、電着塗料組成物によって形成された電着塗膜層を有してなることを特徴とする塗装重合金シートでもある。
本発明は、上記塗装重合金シートを用いた放射線遮蔽材料でもある。
本発明は、上記タングステン重合金シートを製造するための重合金シートの製造方法であって、タングステン粉末と、少なくとも1種類のその他の金属粉末とを混合する工程(1)、工程(1)により得られた混合金属粉末と樹脂とを混練する工程(2)、工程(2)により得られた混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形する工程(3)、工程(3)により得られたシート形状の成形物を脱脂する工程(4)、工程(4)により得られたシート形状の脱脂物を還元性雰囲気中、1300℃〜1600℃で焼結する工程(5)及び工程(5)により得られたシート形状の焼結体を圧延する工程(6)からなることを特徴とするタングステン重合金シートの製造方法でもある。
上記その他の金属粉末は、ニッケル粉末を必須として、鉄粉末、コバルト粉末及び銅粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属粉末を含んでなることが好ましい。
上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のタングステン重合金シートは、厚みが、下限10μm、上限300μmの範囲内であるシート形状を有するものである。上記タングステン重合金シートは、放射線を遮蔽しようとする個所に貼付することによって、簡便に放射線を遮蔽することができる形状を有している。また、上記厚みが薄いものであるため、取り扱い、貼付作業、運搬等の点において優れた性質を有している。上記厚みは、一定の範囲での厚みムラを有する場合もあるが、おおよそ、合金シートのほぼ全面が上記範囲内であるものである。上記厚みの下限は、15μmであることがより好ましい。上記厚みの上限は、200μmであることがより好ましい。
上記重合金シートは、放射線遮蔽効果の観点から、比重が下限11、上限18.7の範囲内である。上記下限は、14がより好ましく、上記上限は、18.5であることがより好ましい。上記範囲内の比重を有することにより、優れた放射線遮蔽能を発揮することができる。なお、鉛の単体比重は11.34である。
本発明のタングステン重合金シートは、下限70質量%、上限95質量%の範囲内のタングステンを有するものである。70質量%未満であると、重合金シートの比重が低下するために放射性遮蔽効果が充分に得られないおそれがあり、95質量%を超えると重合金シートの塑性加工が困難になり、重合金シートの圧延性が低下するためである。上記下限は、83質量%であることがより好ましい。上記上限は、92質量%であることがより好ましい。
更に、本発明のタングステンの重合金シートは、少なくとも1種類のその他の金属を下限5質量%、上限30質量%の範囲内で含んでいるものである。5質量%未満であると重合金シートの塑性加工が困難になり、重合金シートの圧延性が低下するためであり、30質量%を超えると、重合金シートの比重が低下するために放射性遮蔽効果が充分に得られないおそれがある。上記下限は、8質量%であることがより好ましい。上記上限は、17質量%であることがより好ましい。
上記その他の金属としては特に限定されないが、タングステンの焼結を促進する効果の点から、ニッケルを必須として、更に、鉄、コバルト及び銅からなる群から選択される少なくとも一つからなることが好ましい。
上記ニッケルは、その溶融によって生成する液相がタングステン粒子を容易に濡らす効果を有し、また、この液相中へタングステンを容易に溶解する効果を有するため、液相焼結により、得られる重合金のほぼ完全な緻密化を達成することができる。また、鉄は、ニッケルを主体とした液相へのタングステンの溶解量を制限する働きがあり、合金の脆化の原因となるNiWからなる金属間化合物相を生成することを防ぐ効果を有する。
更に、銅及びコバルトの効果も鉄と同様である。更に、銅は、それ自身比較的低融点であるため、ニッケル主体相の液相発生温度を低下させる効果を有する。焼結後に生成するタングステンと、ニッケルと、その他の金属とからなる相は、延性に優れるため純タングステンに比べ圧延加工に適する。
本発明のタングステン重合金シートにおいて、ニッケルと、上記その他の金属の合計との質量比は、4:1〜1:1であることが好ましく、7:3〜2:1であることがより好ましい。質量比が4:1より大きいと過剰のタングステンがニッケルを主とする相中に溶解し、金属間化合物相を生成し、得られる合金が脆くなる。また、1:1より小さいとタングステンの溶解量が不足し、得られる合金の緻密化が不十分となるおそれがある。
本発明のタングステン重合金シートは、物性に影響を及ぼさない範囲で、更に、上記タングステン、ニッケル、上記その他の金属以外の金属を含有するものであってもよい。このような金属としては特に限定されず、例えば、モリブデン、パラジウム等を挙げることができる。なお、モリブデンは、タングステンの一部を上記重合金シートの比重条件を逸脱しない範囲で置換することもできる。パラジウムは、鉄又はコバルトの一部又は全量を置換することもできるが、高コストとなる。
本発明は、上記タングステン重合金シートを用いた放射線遮蔽材料でもある。
本発明のタングステン重合金シートを製造するための重合金シートの製造方法は、タングステン粉末と、少なくとも1種類のその他の金属粉末とを混合する工程(1)、上記工程(1)により得られた混合金属粉末と樹脂とを混練する工程(2)、上記工程(2)により得られた混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形する工程(3)、上記工程(3)により得られたシート形状の成形物を脱脂する工程(4)、上記工程(4)により得られたシート形状の脱脂物を還元性雰囲気中、1300℃〜1600℃で焼結する工程(5)及び上記工程(5)により得られたシート形状の焼結体を圧延する工程(6)からなるものである。
上記方法は、バインダーとして機能する樹脂と混合金属粉末とからなる、シート成形が容易な混合金属粉末含有樹脂組成物を、通常の樹脂成形機を用いてシート状に成形し、このようにして得られたシート状の形状を有する成形物を加熱することによって樹脂を除去する。脱脂後、再昇温し、金属粉末成分を焼結させ、焼結体を得る。得られた焼結体は、うねりがあるため、平坦化及び厚み調整のため圧延し、平坦で所定の厚さを有するシートを形成するものである。上記方法で成形することによって、通常の樹脂成形機及び加熱装置のみによって成形することができ、得られた重合金シートは、厚みの均一性、平滑性にも優れる点で好ましい。
上記タングステン粉末の粒径は、平均粒子径が、下限0.5μm、上限20μmの範囲内であることが好ましい。0.5μm未満であると、粉末の製造が困難であり、得られた粉末は、樹脂との混練時に酸化しやすく、また二次凝集を生じやすいため樹脂と均一に混合することが困難になり、均一な重合金シートを得ることが困難になる場合がある。20μmより大きいと、粉末の製造が比較的困難である。上記下限は、0.8μmであることがより好ましい。上記上限は、10μmであることがより好ましい。
本発明のタングステン重合金シートの製造方法は、工程(1)として、タングステン粉末と、その他の金属粉末とを混合する工程である。この工程によって混合金属粉末を得る。混合する方法としては特に限定されず、例えば、タングステン粉末と、上記その他の金属粉末とを、有機溶媒とともに混合分散機にて混合撹拌する方法等、当業者によってよく知られている方法を挙げることができる。具体的には、アトライターミルやボールミルを用いて、上記粉末をエチルアルコール等の有機溶媒とともに、アトライーミルの場合4時間、ボールミルの場合12時間程度混合する。
上記その他の金属粉末は、ニッケル粉末を必須として、更に、鉄粉末、コバルト粉末及び銅粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属粉末を含んでなることが好ましい。上記ニッケル粉末としては特に限定されず、例えば、市販のカルボニルニッケル粉、アトマイズニッケル粉、還元ニッケル粉、電解ニッケル等を挙げることができるが、なかでも、平均粒度が3μmから30μmであるカルボニルニッケル粉が好適に用いられる。
上記鉄粉末としては特に限定されず、例えば、市販のカルボニル鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等を挙げることができるが、なかでも、平均粒度が5μmから30μmであるカルボニル鉄粉が好適に用いられる。
上記コバルト粉末としては特に限定されず、例えば、還元コバルト粉、電解コバルト粉等を挙げることができるが、なかでも、平均粒度が0.8μmから3μmの範囲内である還元コバルト粉が好適に用いられる。
上記銅粉末としては特に限定されず、例えば、還元銅粉、電解銅粉、アトマイズ銅粉等を挙げることができるが、なかでも、平均粒度が5μmから30μmの範囲内である還元銅粉が好適に用いられる。
上記工程(1)で混合した後、用いた有機溶媒を揮発乾燥させて所定混合比の混合金属粉末を得ることができる。上記タングステン粉末、及び、上記その他の金属の上記混合金属粉末における配合割合は、製造しようとする合金シートにおいて必要とされる割合で使用するものである。すなわち、原料として使用した金属粉末の使用割合が、得られる重合金シートの合金の割合になる。
本発明のタングステン重合金シートの製造方法における工程(2)は、上記工程(1)により得られた混合金属粉末と樹脂とを混練する工程である。この工程によって混合金属粉末含有樹脂組成物を得ることができるものである。
上記樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、シート状に成形する際の成形が容易であることから、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、焼成の際に有毒ガスが発生する等の問題を生じないことが好ましいため、炭素、水素、酸素のみからなる熱可塑性樹脂であることが好ましい。上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ウレタン樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸等のアクリル樹脂;ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;スチレン、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂等を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂は、熱分解温度が400℃以下の熱安定性が低い樹脂であることが好ましい。熱分解温度が高い樹脂を使用した場合、脱脂温度を高温にする必要が生じ、これによって樹脂の分解により生じる炭化水素によりタングステン粉末が炭化され、焼結が阻害されるおそれがある。上記熱分解温度は、350℃以下であることがより好ましい。
また、上記混合金属粉末含有樹脂組成物中の樹脂に対する上記混合金属粉末の合計量の割合(金属/樹脂)は、体積比で20/80〜70/30の範囲内が好ましい。20/80未満であると、金属成分が少ないため、焼成の際の金属粉末同士の結着が充分に生じない場合があり、得られた重合金シートに、ピンホール、厚みムラ等を生じるおそれがあるため、好ましくない。上記比率が、70/30を超えると、上記混合金属粉末含有樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、成形性が低下し、シート状に成形することが困難になり、厚みムラ等の原因となるおそれがあるため好ましくない。
上記混合金属粉末含有樹脂組成物は、粉末原料と樹脂との親和性を高め、金属粒子を充分に樹脂マトリックス中に分散させるために、カップリング剤を含有するものであってもよい。上記カップリング剤は、金属粉末と樹脂とからなる樹脂組成物において通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等を挙げることができる。上記カップリング剤は、上記混合金属粉末の合計量に対して、0.5〜10質量%の割合で含有することが好ましい。上記カップリング剤を使用する場合は、タングステン粉末及びその他の金属粉末をあらかじめカップリング剤によって処理した後、樹脂との混合を行うことが好ましい。混合金属粉末のカップリング剤による処理は、公知の通常の方法によって行うことができる。
上記混合金属粉末含有樹脂組成物は、更に、本発明の重合金シートの効果に影響を与えない範囲で、界面活性剤、分散助剤等のその他の添加剤を使用するものであってもよい。
上記混合金属粉末含有樹脂組成物は、上記原料を溶融混錬、自動乳鉢を用いた混錬等の通常の方法によって混合することによって製造することができる。上記溶融混錬方法としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機等によって溶融混錬を行う方法等を挙げることができる。
本発明の重合金シートの製造方法は、工程(3)として、上記混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形するものである。上記混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形する方法としては特に限定されず、例えば、有機溶媒を添加して樹脂を溶解し、シート形状に成形した後有機溶媒を留去することによるキャスト法や、単軸押出機又は二軸押出機を使用して溶融後、Tダイから樹脂を押出すことによる溶融押出成形法等を挙げることができる。このよう方法によって成形することにより、均一な厚みのシート成形物を連続的に効率よく得ることができる。
上記シート成形物の厚みは、混合金属粉末含有樹脂組成物の組成及び得ようとする合金シートの厚みに応じて、適宜必要な厚みとすることができる。
上記工程(3)によって得られたシート形状の成形物は、次いで工程(4)によって還元性雰囲気中で加熱しながら脱脂される。上記シート成形物を脱脂することによって、上記樹脂が分解され、二酸化炭素、水蒸気、炭化水素等となって除去され、金属成分のみが残存する。
上記脱脂後、工程(5)として得られたシート形状の脱脂物を非酸化又は還元雰囲気中(例えば水素)で焼結する。焼結温度は、下限1300℃、上限1600℃の範囲内である。1600℃を超える温度で焼結を行うと、焼結時液相量が大きくなり過ぎ、液相の表面張力で形状に丸みを帯び、シート形状が保持できないため好ましくない。また、1300℃未満で焼結を行うと、液相量が不足し緻密化が達成できないため、目的とする比重が得られず、かつ強度も不足するので好ましくない。
上記シート形状の脱脂物を加熱すると、1380℃付近で上記その他の金属が溶融し、生成した液相がタングステン粒子を濡らし、液相中にタングステンが溶け込み、緻密化が進行する。例えば、焼結温度1450℃で1時間保持した後冷却することによって良好なタングステン重合金シートが得られる。
上記焼結を行う方法としては特に限定されず、例えば、上記シート形状の脱脂物を所定の温度に設定された連続炉中に供給する方法等を挙げることができる
本発明のタングステン重合金の製造方法は、更に工程(6)として得られたシート形状の焼結体を圧延するものである。このような工程を含むことにより、厚さ10〜300μmのタングステン重金属シートを得ることができる。圧延の程度は、用途によって変化させることができ、より薄いタングステン重金属シートが必要な場合は、処理時間を長くすればよい。上記圧延の方法としては特に限定されず、一般的に圧延装置として使用されている機器を挙げることができる。
本発明は、上記タングステン重合金シートの表面に電着塗料組成物によって形成された電着塗膜層を有してなることを特徴とする塗装重合金シートでもある。上記塗装重合金シートは、重合金シートからなる層によってX線及びγ線を遮蔽し、有機物である電着塗膜層によって中性子線を遮蔽することも期待できる。また、密着性が良好な電着塗膜層を形成することによって、重合金シートに対して防食性を付与することができるため、重合金シートが劣化しにくくなる点でも好ましい。
上記電着塗膜層は、膜厚が下限10μm、上限150μmの範囲内であることが好ましい。10μm未満であると、防食性が充分でないおそれがあり、150μmを超えると、均一な塗膜を得ることが難しく、厚膜化したことによる効果の向上がみられないため、経済的に不利である。上記上限は、100μmであることがより好ましい。
上記電着塗膜層は、上記重合金シートの表面に電着塗料組成物を電着塗装し、得られる皮膜を加熱硬化させることにより形成される。上記電着塗膜層を形成するために使用される電着塗料組成物において、塗膜を形成するイオン性樹脂としては、通常の電着塗料に用いられる樹脂であれば特に限定されないが、カチオン性樹脂であることが好ましい。
上記電着塗料組成物は、更に、必要に応じて、通常の電着塗料に用いられるその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては特に限定されず、例えば、硬化剤、硬化触媒、顔料、防錆剤、顔料分散樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の塗料用添加剤等を挙げることができる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;塩基性ケイ酸塩、リンモリブデン酸アルミニウム等の防錆顔料;カオリン、クレー、タルク等の体質顔料等の一般に使用されるものを挙げることができる。上記防錆剤としては、特に限定されず、例えば、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、カルシウム担持シリカ、カルシウム担持ゼオライト等を挙げることができる。
上記電着塗料組成物の電着塗装方法は特に限定されるものではなく、通常の電着塗装方法に応じて行うことができる。また、電着塗装は、重合金シートの片面のみに施すものであっても、両面に施すものであってもよい。
上記電着塗料組成物の硬化温度は、130℃〜220℃に設定されていることが好ましい。硬化温度が130℃より低温である場合は、得られる塗膜の平滑性が低下するおそれがある。硬化温度が220℃より高温である場合は、得られる塗膜の物性が低下するおそれがある。上記硬化温度の設定は、硬化官能基、硬化剤及び触媒の種類や量等の調整といった当業者に公知の方法で行うことができる。
本発明における硬化温度とは、30分間の加熱でゲル分率85%の塗膜を得るための温度のことをいう。上記ゲル分率の測定は、試験塗板をアセトンに浸漬し5時間還流させた時の、試験前後における試験塗板の質量差から算出する方法により行われる。
本発明は、上記塗装重合金シートを用いた放射線遮蔽材料でもある。
本発明の重合金シートは、70〜95質量%のタングステン及び5〜30質量%の少なくとも1種類のその他の金属を含んでいる。つまり、タングステンを多量に含有することによって高比重を有するものであるから、X線及びγ線を遮蔽することができる。また、タングステンの焼結を促進する少なくとも1種類のその他の金属を含んでいるものであることから、純タングステンに比べ比較的低温で緻密化可能であり、焼結体は延性に優れているため、圧延による平坦化及び厚さ調整のための圧延加工が比較的容易である。また、上記重合金シートに電着塗料組成物によって形成された電着塗膜層を有する本発明の塗装重合金シートは、塗膜層によって中性子線も遮蔽することが期待できるものであるため、放射線遮蔽材として優れた性質を有するものである。また、電着塗膜によってシート表面を被覆したものであることから、防食性にも優れ、上記重合金シートの劣化を抑制することができる。
また、本発明のタングステン重合金シートの製造方法は、タングステン粉末、少なくとも1種類のその他の金属及び樹脂からなる混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形後、焼成する重合金シートの製造方法である。上記製造方法は、従来の一般的な製造装置を用いることによって、簡便にタングステンを主体とする重合金シートを得ることができるものである。
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
平均粒度2μmのタングステン粉末、及び、タングステン以外のその他の金属として、平均粒度5μmのカルボニルニッケル粉末と平均粒度6μmのカルボニル鉄粉末とを、それぞれタングステン85.0質量%、ニッケル10.5質量%、鉄4.5質量%の比率で秤量する。上記比率の粉末10kgにエタノール5Lを加えアトライタミル中で4時間混合する。混合後エタノールを蒸発させ乾燥して混合金属粉末を得た。
得られた混合金属粉末とエポリードPB3600(ダイセル化学工業社製エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ当量188〜213、熱分解温度250℃)とを固形分質量比25/2となるようにプレミックスした後、自動乳鉢を用いて30分間混練して混合金属粉末含有樹脂組成物を得た。
表面をシリコン処理した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた混合金属粉末含有樹脂組成物を、ドクターブレードを用いてキャスティングして室温にて30分間放置した後、70℃に設定した乾燥炉で30分間乾燥させ、更に、90℃に設定した乾燥炉で30分間乾燥させて、乾燥膜厚200μmのシート形状に成形した。
得られたシート形状の成形物をアルミナ等の平坦なセッター上に置き、水素雰囲気中で、室温から700℃まで10時間で昇温させ、その後700℃で3時間保持し脱脂した。
得られたシート脱脂体を水素雰囲気中1450℃で1時間焼結する。焼結後の寸法は25%程度収縮した。焼結後のシートは、膜厚160μmである。
得られた焼結体を500〜600℃に加熱し、加工率7%で3パス圧延し、約130μmの平坦で均一な厚さのシートが得られた。得られたシートの比重は、17.5であった。
実施例2
平均粒度3μmのタングステン粉末、平均粒度5μmのカルボニルニッケル粉末、及び平均粒度1.5μmのコバルト粉末を、それぞれタングステン82質量%、ニッケル12質量%、コバルト6質量%の比率で秤量する。上記比率の粉末10kgにエタノール10Lを加えボールミル中で12時間混合する。混合後エタノールを蒸発させ乾燥して混合金属粉末を得た。
得られた混合金属粉末とビスフェノール−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂(重量平均分子量14000、エポキシ当量1176、熱分解温度300℃)とを固形分質量比25/2となるようにプレミックスした後、自動乳鉢を用いて30分間混練して混合金属粉末含有樹脂組成物を得た。
表面をシリコン処理した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた混合金属粉末含有樹脂組成物を、ドクターブレードを用いてキャスティングして室温にて30分間放置した後、70℃に設定した乾燥炉で30分間乾燥させ、更に、90℃に設定した乾燥炉で30分間乾燥させて、乾燥膜厚150μmのシート形状に成形した。
得られたシート形状の成形物をアルミナ等の平坦なセッター上に置き、水素雰囲気中で、室温から700℃まで10時間で昇温させ、その後700℃で3時間保持し脱脂した。
得られたシート脱脂体を水素雰囲気中1480℃で1時間焼結する。焼結後の寸法は25%程度収縮した。焼結後のシートは、膜厚120μmである。
得られた焼結体を500〜600℃に加熱し、加工率5%で2パス圧延し、約108μmの平坦で均一な厚さのシートが得られた。得られたシートの比重は、17.3であった。
実施例3〜4
インシュリード1004(日本ペイント社製電解活性型エレクトロコーティング材)をステンレス容器に移して電着浴とし、ここに被塗装物として、実施例1及び2で得られた各シートが陰極となるようにして、乾燥膜厚15μmとなるようにそれぞれ電着塗装を行った。電着塗装後、ステンレス容器内の電着浴から引き上げ水洗した後、180℃で25分間加熱することにより、各塗装重合金シートが得られた。
上述のように、実施例により得られたシートは高比重を有するため、優れた遮蔽性能を有するものである。また、鉛を使用していないため、人体への毒性が低いシートである。更に、得られたシートは厚みが薄いが、均一性、平滑性に優れるものである。
本発明のタングステン重合金シートは、11〜18.7の比重、10〜300μmの厚みを有し、X線、γ線の遮蔽効果に優れた性質を有する。本発明の合金シートは、上記効果を有するものであるため、放射線施設や放射線廃棄物、核燃料等の貯蔵、輸送容器及び関連機器等に放射線遮蔽材料として使用すると、鉛にくらべ高密度であるため、必要な体積が小さくてすむという利点がある。また、電着塗膜層を有する本発明の塗装合金シートは、中性子線も遮蔽することができるものであるため、優れた放射線遮蔽材として使用することができる。更に、本発明のタングステン重合金シートの製造方法によって、上述したような優れた性質を有するタングステン重合金シートを簡便に製造することができる。

Claims (9)

  1. タングステン及び少なくとも1種類のその他の金属からなるタングステン重合金シートであって、
    前記タングステンの含有量が70〜95質量%であり、前記その他の金属の含有量が5〜30質量%であり、
    厚さ10〜300μmで、比重11〜18.7であることを特徴とするタングステン重合金シート。
  2. その他の金属は、ニッケルを必須として、更に、鉄、コバルト及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでなる請求項1に記載のタングステン重合金シート。
  3. ニッケルと、鉄、コバルト及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1つとの質量比は、1:1〜4:1である請求項2に記載のタングステン重合金シート。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のタングステン重合金シートを用いた放射線遮蔽材料。
  5. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のタングステン重合金シートの表面に、電着塗料組成物によって形成された電着塗膜層を有してなることを特徴とする塗装重合金シート。
  6. 請求項5に記載の塗装重合金シートを用いた放射線遮蔽材料。
  7. 請求項1に記載のタングステン重合金シートを製造するための重合金シートの製造方法であって、
    タングステン粉末と、少なくとも1種類のその他の金属粉末とを混合する工程(1)、
    工程(1)により得られた混合金属粉末と樹脂とを混練する工程(2)、
    工程(2)により得られた混合金属粉末含有樹脂組成物をシート形状に成形する工程(3)、
    工程(3)により得られたシート形状の成形物を脱脂する工程(4)、
    工程(4)により得られたシート形状の脱脂物を還元性雰囲気中、1300℃〜1600℃で焼結する工程(5)及び
    工程(5)により得られたシート形状の焼結体を圧延する工程(6)
    からなることを特徴とするタングステン重合金シートの製造方法。
  8. その他の金属粉末は、ニッケル粉末を必須として、鉄粉末、コバルト粉末及び銅粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属粉末を含んでなる請求項7に記載のタングステン重合金シートの製造方法。
  9. 樹脂は、熱可塑性樹脂である請求項7又は8に記載のタングステン重合金シートの製造方法。
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