JP2005161134A - バイオマスのタール分解用触媒およびその利用 - Google Patents

バイオマスのタール分解用触媒およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 バイオマスを熱分解する際に、効率的かつ低コストでタールを分解し、かつ分解したタールを燃料ガスとして回収することができるタール分解用触媒、およびその利用方法を提供する。
【解決手段】 FeO、Fe23、Fe34等の酸化鉄を含む組成物を触媒として用い、バイオマス、特に木質系バイオマスを600℃の低温条件下で熱分解すれば、脱揮発過程において生成したタールをほぼ100%分解し、燃料ガスとして回収することが可能となる。また当該触媒を繰返し使用においても高い触媒活性を保持し、かつ触媒として非常に安価である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱分解によるバイオマスのガス化の際に生成されるタール分解用触媒およびその代表的な利用に関するものであり、特に600℃付近の低温条件下でバイオマスのタールを分解し、かつ分解したタールを燃料ガスとして回収することができるバイオマスのタール分解用触媒、および該バイオマスのタールの分解用触媒を用いたバイオマスの熱分解方法、並びに燃料ガスの製造方法に関するものである。
近年バイオマスをエネルギーとして利用することが注目されており、国家プロジェクトとして位置付けられ、また新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにもなっている。バイオマスのエネルギーの利用方法としては、バイオマスを直接燃焼させて熱・電気エネルギーを得る方法、または熱分解によって燃料ガスを得る方法等が知られている。
バイオマス、特に木質バイオマスは主にセルロースからなり、その他ヘミセルロースとリグニンを含んでいる。かかる木質バイオマスから熱分解によって燃料ガスを得ようとする場合、CO、CO2、H2、炭化水素等の揮発分と、チャー(炭素、炭)とが生成されるが、このとき同時にタールも生成する。かかるタールは、しばしばガス化装置のパイプラインの閉塞をおこす。タールは、850℃で十分な滞留時間をとると、無触媒でも分解するが、高温であるためエネルギー効率の低下をきたす。そこで、従来、タールの生成による諸問題を解消するための技術が提案されている。
生成したタールに対する対処法としては、例えば、タールを捕捉・分離した後、燃焼して処理する方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、タールを分離した上で、燃料ガスに分解することなく燃焼してしまう。それゆえ、バイオマスを有効に利用するという観点からは不十分な技術となっている。
バイオマスを有効に利用するためには、タールの生成を抑制することができ、かつ低温でガス化効率の高い触媒を利用する技術の開発が必要となる。なお、バイオマスの熱分解装置における稼動温度は、熱ロス、反応分解速度等の理由から、600℃程度が好ましいとされている。
バイオマスの熱分解・ガス化に用いられる触媒としては、例えば、ドロマイト(苦石灰、CaMg(CO3)2)が知られている(例えば非特許文献2参照)が、ドロマイトは低タール化に有効ではなく、高CO2条件下では、ドロマイト触媒の活性が失活するなどの問題点があることが知られている。
一方、低タール化が可能な技術としては、(a)触媒としてRh/CeO2/M(Mは、SiO2、Al23、またはZrO2)を用いる方法(例えば特許文献1参照)、(b)触媒としてかんらん石を用いる方法(例えば非特許文献3参照)等が知られている。
NEDO、"バイオマスエネルギー高効率変換技術開発、バイオマスの低温流動層ガス化技術の開発(平成13年から17年)技術原簿"〔平成15年11月27日検索〕<URL:http://www.nedo.go.jp/iinkai/hyouka/bunkakai/15h/1/1/index.html> David Sutton, Brian Kelleher, Julian R.H. Ross "Review of literature on catalysts for biomass gasification " Fuel Processing Technology 73 (2001) 155-173. S. Rapagna, N. Jand, A. Kiennemann, P.U. Foscolo "Steam-gasification of biomass in a fluidized-bed of olivine particles. " Biomass and Bioenergy 19 (2000) 187-197. 特開2003−246990号公報(公開日:平成15年9月5日)
しかしながら、上述した低タール化が可能な技術では、確かに低タール化が可能ではあるものの、効率的かつ低コストで低タール化を実現することが困難であるという問題が生じている。
具体的には、まず、上記(a)の技術では、触媒として用いているRh/CeO2/Mを構成するRh(ロジウム)やCe(セリウム)やCeO2(セリア)が著しく高価であるため、低コスト化が困難となっている。また、この触媒は耐久性が低い等の問題もあるため、触媒にかかるコストを低減することは困難であり、触媒の補給等の手間を考慮すれば、全体的な効率性にも欠けるものとなり得る。
一方、上記(b)の技術では、触媒としてかんらん石を用いているので、バイオマスの熱分解における反応至適温度が800℃と高温となり、熱効率の低下という点で問題がある。したがって、この技術では、熱効率の点から全体的な効率性の向上が見込めず、同じく熱効率が悪いことから低コスト化についても不十分なものとなる。
よって以上示したごとく、上記従来の方法は、バイオマスを熱分解して燃料ガスを得る方法としては十分満足のいくものとはなっていなかった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイオマスを熱分解する際に、効率的かつ低コストでタールを分解し、かつ分解したタールを燃料ガスとして回収することができるタール分解用触媒、およびその利用方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、600℃付近の低温条件下でバイオマスのタールを分解し、かつ分解したタールを燃料ガスとして回収することができるバイオマスのタール分解用触媒の検索を行った。その結果、Fe23を触媒として木質バイオマスを600℃で熱分解した際に、生成したタールが分解し、ほぼ100%と非常に高いガス収率を得ることができることを発見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、上記課題を解決するために以下の発明を包含する。
(1)バイオマスの熱分解において生成されるタールの分解反応を触媒し、かつ酸化鉄を含む組成物からなることを特徴とするバイオマスのタール分解用触媒。
(2)前記酸化鉄が、FeO、および/またはFe23、および/またはFe34であることを特徴とする(1)に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
(3)前記タールの分解反応が、800℃未満で行われることを特徴とする(1)または(2)に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
(4)前記タールの分解反応が、200℃以上600℃以下で行われることを特徴とする(3)に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
(5)前記バイオマスが、木質バイオマスであることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のバイオマスのタール分解用触媒。
(6)バイオマスを熱分解してガス化する反応時に、(1)ないし(5)のいずれかに記載のバイオマスのタール分解用触媒を用いることを特徴とするバイオマスの熱分解方法。
(7)バイオマスが充填された反応槽を800℃未満まで加熱する工程を含むことを特徴とする(6)に記載のバイオマスの熱分解方法。
(8)前記反応槽の加熱温度を、200℃以上600℃以下とすることを特徴とする(7)に記載のバイオマスの熱分解方法。
(9)上記(6)ないし(8)のいずれかに記載のバイオマスの熱分解方法であって、さらに空気および/または水蒸気を導入する工程を含むことを特徴とするバイオマスの熱分解方法。
(10)前記バイオマスの充填量に対するバイオマスのタール分解用触媒の充填割合が、少なくともバイオマスの充填量に対して4分の1以上であることを特徴とする(6)ないし(9)のいずれかに記載のバイオマスの熱分解方法。
(11)原料としてバイオマスを用い、かつ、(6)ないし(10)のいずれかに記載のバイオマスの熱分解方法を用いることを特徴とする燃料ガスの製造方法。
なお、これまでのバイオマスの熱分解装置では、バイオマスと触媒を同一の反応槽に充填して熱分解を行っているため、バイオマスからの揮発分の脱離と、タール、チャーのガス化(分解)を分けて観察することができなかった。そこで本発明者等は、図1(a)に記載の管型流通式2段反応装置3を独自に開発し、これをバイオマスのタール分解用触媒の検索に採用した。かかる管型流通式2段反応装置3では、バイオマスが充填されている上段電気炉4と触媒が充填されている下段電気炉6により構成されており、それぞれ異なった温度に加熱することが可能である。その結果揮発分からのガス化量とタール、チャーからのガス化量を分けて観察することができ、試験対象である触媒が、バイオマスのタールの分解を触媒しているかどうかを直接的に判断することが可能となった。本発明は、かかる管型流通式2段反応装置を採用したことによって完成するに至ったともいえる
本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒は、バイオマス、特に木質バイオマスの熱分解の際に生成され、バイオマスのガス化装置のパイプラインの閉塞の原因となるタール分解を触媒する。それゆえ、バイオマスのガス化装置のタールによるトラブルを回避することができるという効果を奏する。
また本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒は、酸化鉄(FeO、および/またはFe23、および/またはFe34)を含有する組成物よりなる。それゆえ低コストでバイオマスのガス化を行うことが可能であるという効果を奏する。
また本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒は、800℃未満、特に200℃以上600℃以下という低温条件において、バイオマスのタールを分解することが可能である。それゆえ、高い熱効率をもってバイオマスのガス化を行うことができるという効果を奏する。
一方本発明にかかるバイオマスの熱分解方法では、上記本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒を用いている。それゆえ、バイオマスのガス化装置のパイプライン等の閉塞によるトラブルに見舞われることなく、装置の稼動を行うことができるという効果を奏する。また前記と同様、低温条件においてバイオマスのガス化を行うことが可能であり、高い熱効率をもってバイオマスのガス化を行うことができるという効果を奏する。
さらには、本発明にかかる燃料ガスの製造方法は、上記バイオマスの熱分解方法を用いて燃料ガスを発生させることにより達成される。よって、低コストかつ高効率に燃料ガスを製造することができるという効果を奏し、また製造した燃料ガスは、エネルギー源として利用できるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、(A)バイオマスのタール分解用触媒、および(B)当該バイオマスのタール分解用触媒を用いたバイオマスの熱分解方法、並びに(C)燃料ガスの製造方法に関する。以下それぞれの発明について説示する。
(A)本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒
本発明にかかる触媒は、バイオマスの熱分解において生成されるタールの分解を触媒し、かつ酸化鉄を含む組成物からなることを特徴とするバイオマスのタール分解用触媒である。
(A−1)バイオマス
バイオマスとは、生物量ともいわれ、生態学の用語では、一定空間内の現存する全ての生物を有機物に換算した量のことをさすが、現在では生態学の領域を越えて広く用いられるようになり、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄積されたものと定義されている。バイオマスをエネルギー資源としての利用は、石油代替エネルギーとして注目されている。またバイオマスは、元来大気中の二酸化炭素が固定されたものであり、燃焼させても光合成によって常に新たなバイオマスが生産されるため、二酸化炭素のバランスを崩さない(カーボンニュートラル)という特徴を有した再生可能なエネルギーとしても注目されている。
バイオマスをその用途、資源の観点から様々な分類例が見られるが、例えばエネルギー資源利用を前提として分類すると、農産バイオマス(例えば、稲ワラ、モミ殻、麦ワラ等)、木質バイオマス(例えば低利用広葉樹材、間伐材などの木材、廃材、薪、木炭等)、畜産バイオマス(例えば家畜の糞尿等)、水生バイオマス(例えばジャイアントケルプ、ウキクサ、ホテイアオイ等)、栽培バイオマス(例えば油ヤシ、落花生、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、キャッサバ等)、および生活廃棄物バイオマス(例えば都市ゴミ、し尿、下水汚泥等)等に分類することができる。
(A−2)バイオマスのエネルギー変換技術
上記バイオマスをエネルギー資源として利用するためには、エネルギー変換技術が必須である。現在各所で、バイオマスのエネルギー変換技術の開発・改良が行われているが、低コスト化、高エネルギー変換効率化、高出力化等の課題を有している。
バイオマスのエネルギー変換技術としては、バイオマスを直接燃焼させて電気、熱を得る方法、熱化学的に燃料ガス、液体燃料に変換する方法、生物学的にメタン、水素、アルコール等に発酵させて変換する方法等が挙げられる。特に木質バイオマスは、水分を多量に含む場合が多く、直接燃焼させる方法には好適でなく、また難分解性のセルロース、ヘミセルロース、リグニン等を含んでいるため、生物発酵によるエネルギー変換には好適でない。したがって木質バイオマスからエネルギーを取り出す場合においては、熱分解によって燃料ガスに変換する方法が好適であり、その技術開発が進められている。
(A−3)バイオマス(木質バイオマス)の熱分解
木質バイオマスを熱分解によって燃料ガス化(以下適宜、ガス化と称する)する過程において、200℃〜500℃の低温でバイオマスから揮発分が脱離する過程(脱揮発過程)がある。この過程では、二酸化炭素やメタン等のガス状物質とともに、比較的高沸点のタールが発生する。このタールは、ガス化装置の低温部分で凝固・固化し、ガス化装置のパイプラインの閉塞を起こす等トラブルの原因となる。よってバイオマスを安定的に燃料ガス化するためには、タールを分解し、ガス化装置のトラブルを回避する必要がある。タール分は、850℃で十分な滞留時間を持たせると、無触媒条件下でも分解するが、高温であるためエネルギー効率の低下をきたしてしまう。そこで低温条件下(800℃未満、好ましくは200℃以上600℃以下)の条件下において、タールを分解・ガス化し、タールから燃料ガス(以下適宜、ガスと称する)を回収する反応を触媒する物質がもとめられている。
(A−4)バイオマスのタール分解用触媒
本発明にかかるバイオマスのタール分解用触媒(以下本発明の触媒と称する)とは、前述のごとく低温条件下(800℃未満、好ましくは200℃以上600℃以下)の条件下において、タールを分解・ガス化し、タールから燃料ガス(ガス)を回収する反応を触媒する物質である。特に本発明の触媒は、酸化鉄を含む組成物からなるものである。ここでいう酸化鉄を含む組成物は、酸化鉄のみからなるもの、およびその他の物質を含むものも含む意味である。また酸化鉄が主成分であっても、副成分であってもよい。さらに酸化鉄は、FeOであっても、Fe23(三酸化二鉄)であっても、Fe34(四酸化三鉄)もよい。また鉄鉱石、ウエスタイト、マグネタイト、ヘマタイト、マグヘマタイト等の天然物であってもよく、合成物であってもよい。特に鉄鉱石は、安価であり大量のバイオマスを処理する際には好適である。合成方法、原料は特に限定されるものではない。例えば、原料に硝酸塩、硫酸塩、塩化物を用いて、アンモニアまたは尿素を沈殿剤として、いわゆる均一沈殿法により調製することができる。また本発明の触媒は、上記各酸化鉄の混合物であってもよい。
なお本発明の触媒の使用形態・大きさ・形状等は特に限定されるものではない。後述する実施例においては、上記均一沈殿方法により得られた塊状酸化鉄を破砕し、平均粒径0.38mmの触媒を調製してバイオマスの熱分解に使用している。
(A−5)本発明の触媒を用いたバイオマスのタールの分解
次に、本発明の触媒が、バイオマスのタールの分解・ガス化を触媒することについて説明する。後述する実施例においては、硝酸鉄第2鉄または塩化第2鉄から合成した本発明の触媒を用いて、スギソーダストを管型流通式2段反応装置にて600℃の条件下で熱分解を行っている。
ここで上記実施例に使用する管型流通式2段反応装置3(以下適宜当該装置3と称する)の概略側面図を図1(a)に示した。当該装置3は、直管7に上段電気炉4と下段電気炉6の2段電気炉が装備されている。これによって上下の電気炉内を異なる温度で加熱することが可能となっている。上段電気炉4にバイオマス試料を充填し、下段電気炉6に触媒を充填する。例えば、後述する実施例においては、上段電気炉4に木質バイオマス試料としてスギソーダスト(粒径:0.20mm、充填容積0.24cm3)を充填し、下段電気炉6に後述する実施例に示す方法により合成した本発明の触媒(粒径:0.38mm、充填容積:0.065cm3または0.26cm3)を充填している。
従来の熱処理装置は、当該装置とは異なりバイオマス試料と触媒を直接接触させて熱処理を行っているため、脱揮発過程とチャー・タールの分解(ガス化)過程を分離して観察することができなかった。当該装置3によれば、このように熱分解するバイオマス試料と触媒を混合することなく分離して熱処理を行うことができ、かつそれぞれの電気炉(上段電気炉4、および下段電気炉6)で異なった温度に加熱できるため、それらの工程を分離して観察することができるようになった。つまり、従来の装置では、試験対象である触媒がバイオマスからの熱処理(ガス化)の際にタールの生成自体を抑制する効果があるのか、あるいは一旦生成したタールを分解してガス化するために結果としてタールの蓄積が減少するのかを確認することはできなかったが、当該装置によればそれを確認することが可能となったということである。
図1(b)を加えてより具体的に説明する。なお、図1(b)は、前述のごとく上段電気炉4にバイオマス試料、下段電気炉6に本発明の触媒を充填し、上段電気炉4をそれぞれ200℃(図1(b)白抜き楕円のシンボルで示す)、350℃(図1(b)白抜き長方形シンボルで示す)、500℃(図1(b)黒塗り三角のシンボルで示す)、および850℃(図1(b)黒塗りひし形のシンボルで示す)とし、下段電気炉6を700℃一定としていた場合の反応管7内の各温度分布(図1(b)の縦軸のAは上段電気炉4の温度を示し、Bは電気炉つなぎ目5の温度を示し、Cは下段電気炉6の温度を示す)を示している。なお後述する実施例においては、下段電気炉6を600℃一定、上段電気炉4を170℃〜850℃に毎分3℃で昇温させている。
バイオマスを熱処理する際には、当該装置3の入口11から、水蒸気−窒素(H2O−N3)を入口ガスとして導入(流入)させている。ここで入口ガスは、バイオマスの熱分解(ガス化)反応によって生じたタールを下段電気炉6の触媒と接触させるためにタールの移動媒体として必要である。ただしタールと触媒が接触することができる装置(手段)を用いてバイオマスの熱分解を行うのであれば、特にかかる入口ガスを導入する必要はない。
入口ガスの組成は特に限定されるものではないが、図1(a)に示す場合においては例えば、水蒸気−窒素(H2O−N3)を用いている。特に水蒸気(H2O)は、タールと反応して水素や一酸化炭素といった燃料ガスを生成するために用いている。よってタールと反応し、水素や一酸化炭素といった燃料ガスを生成する物質であれば特に限定されるものではない。
また入口ガスの導入(流入)流速は、特に限定されるものではない。なお後述する実施例においては、30%水蒸気−窒素(H2O−N3)を流速20cc/minにて導入(流入)している。
上段電気炉4でバイオマスが200℃〜500℃付近まで加熱されると、バイオマスの揮発分からのガスおよびタールが生成される。生成された揮発分からのガスおよびタールは、入口ガスによって本発明にかかる触媒が充填された下段電気炉6に移動する。下段電気炉6では、揮発分からガスおよびタールが本発明の触媒と接触し、700℃(図1の条件)で加熱される。このときの当該装置3の出口12からのガス発生量・成分と、比較として下段電気炉6内に触媒を充填しない場合それと比較することによって、タールの分解・ガス化を直接的に観察することができる。
後述する実施例においては、下段電気炉6内を600℃一定にし、本発明の触媒とスギソーダストとの充填比率を1:1にした場合において、スギソーダストにおける揮発分の95%のガス化に成功している。つまり本発明の触媒によって、スギソーダストの脱揮発過程において生成したタールのほとんどが本発明の触媒によって分解・ガス化されたということがわかる。よって、本発明の触媒は、バイオマス、特に木質バイオマスの熱分解の際に生じるタールを600℃という低温条件下でほぼ完全に分解し、ガス化して回収することができるというものである。本発明の触媒を用いてバイオマスの熱分解に本発明の触媒を使用すれば、生成されたタールを分解することができるため、タールによるパイプライン等の閉塞等の不具合を回避できるため、装置の洗浄操作を減じることができ、装置の連続操業、さらにはランニングコストのダウンができる。
(B)本発明にかかるバイオマスの熱分解方法
本発明にかかるバイオマスの熱分解方法(以下適宜本熱分解方法と称する)は、上記(A)にて説示した本発明の触媒を使用して行うことにより達成される。よって循環流動床式ガス化炉等を用いて本発明の触媒とバイオマスとを一つの反応槽に充填し、直接接触させて熱分解させてもよいし、前記管型流通式2段反応装置等を用いて本発明の触媒とバイオマスと別個に充填し、直接接触させずに熱分解させてもよい。
(B−1)本熱分解方法における各工程
本ガス化方法は、熱分解によって行うため、加熱工程が必要である。加熱方法は特に限定されるものではなく、電気・ガス等の外部エネルギーを利用して公知の加熱手段により加熱してもよい。またバイオマスの燃焼熱やバイオマスの低温ガス化でガス化されずに残るバイオマスチャーを燃焼させてその熱を加熱に利用すれば、他のエネルギーの使用する必要が無く非常に好ましい。
また該加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、熱効率の低下等の理由から、800℃未満であることが好ましく、600℃以下であることがさらに好ましい。また加熱温度の下限についても特に限定されるものではないが、反応速度の問題、バイオマスの脱揮発過程が起こる温度等を考慮すれば、200℃以上であることが好ましい。また加熱温度は一定である必要はなく、規則的に変動していてもよいし、ランダムに変動していてもよい。
一方、本ガス化方法には、さらに空気および/または水蒸気を導入する工程があることが好ましい。特に水蒸気(H2O)はタールと反応して水素や一酸化炭素といった燃料ガスを生成させるためには好適に用いられる。また特に上記管型流通式2段反応装置において該工程は、バイオマスの熱分解(ガス化)反応によって生じたタールを下段電気炉の触媒と接触させるためにタールの移動手段(工程)として必要である。
(B−2)本発明の触媒とバイオマスとの充填比率
本発明の触媒とバイオマスとの充填比率の至適条件は、加熱温度、加熱時間、反応槽の形状、触媒の組成、触媒の粒径、バイオマスの種類、形状、水分含量等の種々要因によって異なるため、限定することはできない。よって、それぞれのシチュエーションに応じて最適な充填比率を決定する必要がある。たとえば、後述する実施例においては、本発明にかかる触媒の充填量がバイオマスの充填量と等量または、4分の1量にして熱分解を行っているが、実施例の条件下でバイオマスの揮発分のガス収率はそれぞれ、約95%、約70%であった。よって触媒の充填比率は高いことが好ましいが、バイオマスの充填量の少なくとも4分の1量あれば比較的高いガス収率を得ることができる。
(B−3)本発明の触媒の耐久性
本発明の触媒の耐久性は、その触媒の組成・使用条件等の種々要因によって異なるため限定することはできない。後述する実施例においては、本発明の触媒の一例について耐久性を試験している。その結果、本発明の触媒のタール分解触媒活性は、4回の使用においても初回使用の60%以上を保持しており、耐久性に優れた触媒であるということがわかった。よって、本発明の触媒は繰返し使用することができ、本熱分解方法は、低いランニングコストで実施することができる。
(C)本発明にかかる燃料ガスの製造方法
本発明にかかる燃料ガスの製造方法(以下本製造方法)は、原料としてバイオマスを用い、かつ、上記(B)のバイオマスの熱分解方法により燃料ガスを発生させるというものである。また発生した燃料ガスは、適宜回収してそのまま燃料として利用してもよいし、貯蔵タンクに充填してもよい。また燃料ガスはそのまま成分調整せずに用いてもよいし、利用目的に応じて成分調整して利用してもよい。ここで成分調整とは、必要なガス成分を製造した燃料ガスに添加すること、および製造した燃料ガスから必要な成分のみを分離することを含むものである。
図12を用いて、本製造方法の概略および製造された燃料ガスの用途の一例を示す。図12に示す本製造方法には循環流動床式ガス化炉を用いており、原料のバイオマスとして間伐剤、廃材の木質バイオマスを使用している。ここの本発明にかかる触媒(酸化鉄)を加え、水蒸気・空気を導入しながら熱分解を行っている。なお熱分解は、上記(B)で説示したごとく低温条件下で行われる。本製造方法によれば、H2、CO、CH4、およびCO2等の燃料ガス(図12中ではガス化ガスと表記)が高収率をもって得ることができる。製造した燃料ガスの用途として、例えば、H2は燃料電池に利用する事ができ、自動車等に応用できる。またH2とCOによれば、ガスエンジンに利用することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下本発明を実施例および図1〜11に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔材料および方法〕
まず本実施例に用いた材料および方法について説明する。
<触媒>
硝酸第2鉄の水溶液をアンモニアにより沈殿させた。得られた沈殿物を数回洗浄した後、ろ過により取得した。取得した沈殿物を110℃、25時間乾燥を行った後、空気中で700℃、1時間焼成して酸化鉄を調製した。また塩化第2鉄を原料として、同様の方法により、酸化鉄を調製した。上記方法により得られた塊状酸化鉄を破砕し、平均粒径0.38mmの触媒を調製した。
<バイオマス>
本実施例においては、スギソーダスト(平均粒径0.20mm)をバイオマス試料として用いた。
<反応装置>
反応装置は、図1(a)に示した管型流通式2段反応装置3を用いた。
<試験方法>
反応装置上部入口11より30%H2O−N3を流速20cc/minにて導入(流入)した。また反応装置上段電気炉4にスギソーダスト(バイオマス試料)を充填し、下段電気炉6に触媒を充填して試験を行った。また比較として、下段電気炉6に触媒を充填しない場合においても試験を行った。また下段電気炉6は600℃一定とし、上段電気炉4は170℃〜850℃まで毎分3℃の定速で昇温させた。反応装置下部出口12からのガスは、間歇的にサンプリングを行い、ガス組成をガスクロマトグラフィーによって分析した。またサンプリングバッグを用いて全てのガスを採取し、スギソーダスト(バイオマス試料)からの発生したガスの定量を行った。上記実験を行うことにより、バイオマス試料の揮発分から発生したガス(上段電気炉4の温度が500℃になるまでに発生したガス)と、チャーになった後に発生したガス(上記電気炉の温度が500℃以上になった後に発生したガス)をそれぞれ分離して測定することが可能となる。
<スギソーダストのガス化特性検討>
上記条件下で触媒を充填した場合における発生ガスを分析した結果を図2(b)に示し、触媒を充填していない場合における発生ガスを分析した結果を図2(a)に示した。図2の横軸は、上段電気炉4における温度を示し、同図縦軸は、H2、CO、CH4の生成率を示した。またH2の結果は黒塗り四角のシンボルで示し、COの結果は黒塗り三角のシンボルで示し、CH4の結果は黒塗りひし形のシンボルで示した。
図2(a),(b)において500℃以下で発生した炭素含有ガス(炭酸ガス、一酸化炭素、メタン、エチレン)は、バイオマスの揮発分からの発生ガスと定義し、500℃以上で発生したガスは、チャーからの発生ガスと定義した。
図3は、下段電気炉6に触媒を充填せずに(無触媒条件下)、上段電気炉4の温度を170℃〜850℃まで毎分3℃の定速で昇温させ、下段電気炉6を600℃、700℃、750℃、850℃としたときの発生ガスを分析した結果を図3に示した。またこのときの入口ガスは、30%H2O−N3を流速20cc/minにて導入した。ここで、図3の横軸は、下段電気炉6の温度を示し、同図縦軸は炭素基準のガス収率を示した。なお、炭素基準のガス収率は、得られた炭素含有ガスのトータル量(カーボンCとしてのモル数)を、ガス化に使用してソーダストに含まれる炭素量(モル数)で割った値である。また、図中白抜き棒グラフは揮発分からのガス収率を示し、横しま棒グラフはチャーからのガス収率を示し、黒塗り棒グラフは全ガス収率を示した。
図3に示すごとく、下段温度600℃とした場合、揮発分から発生した炭素含有ガス(炭酸ガス、一酸化炭素、メタン、エチレン)のガス収率は、約26%であった。一方、下段電気炉の温度を850℃にした場合は、64%であり、チャーからの発生ガス収率を加えると、ほぼ100%であった。よって、下段電気炉の温度が600℃で無触媒下では、温度が低いためにスギソーダストの揮発分の大部分が、タールになったといえる。以上の結果をもとにしてスギソーダストの揮発分全てがガス化された場合の炭素基準のガス収率は64%とし、この値を基準として揮発分のガス収率を算出することとした。すなわち、500℃以下で得られた炭素基準のガス収率が64%となった場合、揮発分(タール分含む)は、100%ガス化され、タールは発生しなかったということとなる。
〔実施例1:硝酸塩から調製した酸化鉄触媒による揮発分の分解〕
下段電気炉6に硝酸塩より調製した酸化鉄を充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した。なお、触媒の充填量は、スギソーダストと等量または4分の1量とした。また比較として無触媒条件下の場合も同様にした。
図4に500℃までに発生したガス量(揮発分からの発生ガス量)を示した。このとき図4横軸は触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また図4縦軸は、揮発分からの発生ガス量を示した。さらに、図4中の黒塗り棒グラフはH2の結果、斜線棒グラフはCOの結果、縦しま棒グラフはCH4の結果、白抜き棒グラフはC24の結果、横しま棒グラフはCO2の結果を示した。
図4に示すごとく、充填量無触媒条件下の場合と比較して、触媒を充填した場合は、炭酸ガスと水素が多量に発生していた。
また図5(a)に発生したガスの全量から揮発分のガス収率(炭素基準)を算出した結果を示した。図5(a)横軸は図4のそれと同様、触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また同図縦軸は、揮発分のガス収率(炭素基準)を示した。
図5(a)に示すごとく、充填した触媒量をスギソーダストと等量にした場合において、揮発分の95%がガス化された。すなわち揮発分および揮発成分から発生したタールが熱分解され、燃料ガスに変換されたことを示している。また、充填した触媒量をスギソーダストの4分の1量にした場合においても、揮発分の約70%がガス化されており、本発明の触媒によるバイオマスのタール分解の効果は明らかである。
一方、図5(b)に発生したガスの発熱量の合計を示した。図5(b)横軸は図4のそれと同様、触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また同図縦軸は、発生ガスの発熱量を示した。
図5(b)によると、触媒を充填した場合と無触媒の場合と比較して、発熱量の顕著な増加が見られなかった。この原因は、揮発分から発生したガスの一部が炭酸ガスや水蒸気に変換されたためと考えられる。この変換に酸化鉄中の酸素が使用されていたため、反応後は酸化鉄がマグネタイトになっていた。
〔実施例2:硝酸塩から調製した触媒の繰返し使用〕
硝酸塩から調製した触媒が還元性ガスでマグネタイトに還元されたことから、使用後の触媒を再度使用する検討を行った。使用後の本発明の触媒の温度を下げた後に反応槽から取り出し、再度反応槽に充填してスギソーダストの熱分解に使用した。
図6に触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用(図中横軸触媒1で表記)、2回目使用(図中横軸触媒2で表記)、3回目使用(図中横軸触媒3で表記)、4回目使用(図中横軸触媒4で表記)、および比較として無触媒(図中横軸無触媒で表記)の場合における揮発成分から発生したガス量(図中縦軸)を示した。また、図6中の黒塗り棒グラフはH2の結果、斜線棒グラフはCOの結果、縦しま棒グラフはCH4の結果、白抜き棒グラフはC24の結果、横しま棒グラフはCO2の結果を示した。
図6に示すごとく、2回目使用以降も無触媒のものに比して多量の炭酸ガスを発生したが、1回目使用に比して炭酸ガスの発生量が減少し、その代わりに一酸化炭素と水素の発生量が増加した。これは、2回目以降は触媒がマグネタイトに還元されたため、触媒(酸化鉄)中の酸素がガスの酸化に寄与しなくなったことが原因と考えられる。
次に触媒の各使用回数による揮発成分のガス収率(炭素基準)を算出した結果を図7(a)に示した。なお図7(a)中、触媒1は触媒の1回目使用の結果、触媒2は2回目使用、触媒3は3回目使用、触媒4は4回目使用、および無触媒は、無触媒条件下の結果をそれぞれ示した。また縦軸は、揮発成分のガス収率(炭素基準)を示した。
図7(a)に示すごとく、1回使用に比して2回目以降のガス収率は低下したものの、それ以降は安定したガス収率(約70%)を示した。
また触媒の各使用回数における発生ガスの発熱量の合計を図7(b)に示した。なお図7(b)中、触媒1は触媒の1回目使用の結果、触媒2は2回目使用、触媒3は3回目使用、触媒4は4回目使用、および無触媒は、無触媒条件下の結果をそれぞれ示した。また縦軸は、発生ガスの発熱量の合計を示した。
その結果、1回使用に比して、2回目以降の発生ガスの発熱量は増加し、それ以降は、ほぼ一定値を示した。またその値は、無触媒の場合に比べていずれも高値を示した。
以上実施例1および2の結果より、硝酸鉄から調製した本発明の酸化鉄触媒は、600℃の低温条件下でバイオマスのタールの分解・ガス化を高活性をもって触媒し、さらに繰り返して使用することができるものであることがわかった。
〔実施例3:塩化鉄から調製した酸化鉄触媒による揮発分の分解〕
下段電気炉6に塩化鉄より調製した酸化鉄を充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した。なお、触媒の充填量は、スギソーダストと等量または4分の1量とした。
図8に500℃までに発生したガス量(揮発分からの発生ガス量)を示した。このとき図8横軸は触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また図8縦軸は、揮発分からの発生ガス量を示した。さらに、図8中の黒塗り棒グラフはH2の結果、斜線棒グラフはCOの結果、縦しま棒グラフはCH4の結果、白抜き棒グラフはC24の結果、横しま棒グラフはCO2の結果を示した。
図8に示すごとく、無触媒の場合と比較して、触媒を充填した場合は、炭酸ガスと水素が多量に発生した。
また図9(a)に発生したガスの全量から揮発分のガス収率(炭素基準)を算出した結果を示した。図9(a)横軸は図8のそれと同様、触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また同図縦軸は、揮発分のガス収率(炭素基準)を示した。
図9(a)に示すごとく、充填した触媒量を増加させるにつれて、揮発分のガス収率が増加した。
一方、図9(b)に発生したガスの発熱量の合計を示した。図9(b)横軸は図8のそれと同様、触媒の充填条件を示し、図中無触媒は無触媒条件下、触媒Aはスギソーダストの4分の1量の触媒を充填した場合、触媒Bはスギソーダストと等量の触媒を充填した場合の結果を示した。また同図縦軸は、発生ガスの発熱量を示した。
図9(b)に示すごとく、充填した触媒量を増加させるにつれて、揮発分からのガスの発熱量が増加した。このことは、前述の硝酸塩を原料として酸化鉄を調製した場合とは異なる結果であった。
〔実施例4:塩化鉄から調製した触媒の繰返し使用〕
塩化鉄から調製した触媒の繰返し使用について検討した。方法は、実施例2に示す方法と同様にして行った。
図10に触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用(図中横軸触媒1で表記)、2回目使用(図中横軸触媒2で表記)、および比較として無触媒(図中横軸無触媒で表記)の場合における揮発成分から発生したガス量(図中縦軸)を示した。また、図10中の黒塗り棒グラフはH2の結果、斜線棒グラフはCOの結果、縦しま棒グラフはCH4の結果、白抜き棒グラフはC24の結果、横しま棒グラフはCO2の結果を示した。
図10に示すごとく、2回目使用では水素および炭酸ガスの発生量は低下したが、一酸化炭素の発生量は増加した。
次に触媒の各使用回数による揮発成分のガス収率(炭素基準)を算出した結果を図11(a)に示した。なお図11(a)中、触媒1は触媒の1回目使用の結果、触媒2は2回目使用、および無触媒は、無触媒条件下の結果をそれぞれ示した。また縦軸は、揮発成分のガス収率(炭素基準)を示した。
図11(a)に示すごとく、1回使用に比して2回目のガス収率は低下したものの、約70%以上と高いガス収率を示した。
また触媒の各使用回数における発生ガスの発熱量の合計を図11(b)に示した。なお図11(b)中、触媒1は触媒の1回目使用の結果、触媒2は2回目使用、および無触媒は、無触媒条件下の結果をそれぞれ示した。また縦軸は、発生ガスの発熱量の合計を示した。
図11(b)に示すごとく、1回使用と2回目の発生ガスの発熱量は同程度であり、その値は無触媒の場合に比べて高値を示した。また硝酸塩を原料として調製した酸化鉄を触媒とした場合に比しても高値を示した。
以上実施例3,4の結果より、塩化鉄から調製した本発明の酸化鉄触媒は、600℃の低温条件下でバイオマスのタールの分解・ガス化を高活性をもって触媒し、さらに繰り返して使用することができるものであることがわかった。また、触媒の違い(例えば、原料、酸化の状態、不純物の含量・組成等)によって、触媒活性に違いが有るということがわかった。
本発明によれば、ガス化装置のトラブルの原因であるタールを分解することが可能となるため、800℃未満という低温条件下でガス化装置の高い稼動率を得ることができる。さらにタールを分解し燃料ガスとして回収するため、バイオマスを高効率にガス化することができる。それゆえ、バイオマスをエネルギーとして有効活用することができ、エネルギー産業や化学産業に利用が可能となる。また将来の枯渇が懸念されている化石燃料の代替エネルギーの一部として利用することができ、産業界全体、さらには我々人類の社会生活の上においても非常に重要である。
図1(a)は、管型流通式2段反応装置の概略側面図であり、図1(b)は、管型流通式2段反応装置の各部位における温度分布を示す折れ線図である。 図2(a)は、下段電気炉は600℃一定とし、上段電気炉は170℃〜850℃まで毎分3℃の定速で昇温させたときの触媒を充填した場合の発生ガスを分析した結果を示す折れ線図であり、図2(b)は、下段電気炉は600℃一定とし、上段電気炉は170℃〜850℃まで毎分3℃の定速で昇温させたときの無触媒条件下でのスギソーダストからの発生ガスを分析した結果を示す折れ線図である。 無触媒条件下で、下段電気炉は600℃〜850℃まで50℃間隔で変化させ、上段電気炉を170℃〜850℃まで毎分3℃の定速で昇温させたときの、スギソーダストからの炭素基準のガス収率を示すヒストグラムである。 下段電気炉に硝酸塩より調製した酸化鉄をスギソーダストと等量または4分の1量充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した際の、500℃までに発生したガス量を示すヒストグラムである。 図5(a)は、下段電気炉に硝酸塩より調製した酸化鉄をスギソーダストと等量または4分の1量充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した際の、500℃までに発生したガスの全量から揮発分のガス収率を算出した結果示すヒストグラムであり、図5(b)は、発生したガスの発熱量の合計を示すヒストグラムである。 硝酸塩より調製した酸化鉄触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用、2回目使用、3回目使用、4回目使用、および比較として無触媒の場合における発生したガス量を示すヒストグラムである。 図7(a)は、硝酸塩より調製した酸化鉄触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用、2回目使用、3回目使用、4回目使用、および比較として無触媒の場合における揮発成分のガス収率を算出した結果を示すヒストグラムであり、図7(b)は触媒の各使用回数における発生ガスの発熱量の合計を示すヒストグラムである。 下段電気炉に塩化鉄より調製した酸化鉄をスギソーダストと等量または4分の1量充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した際の、500℃までに発生したガス量を示すヒストグラムである。 図9(a)は、下段電気炉に硝酸塩より調製した酸化鉄をスギソーダストと等量または4分の1量充填し、温度を600℃一定としてスギソーダストを熱分解した際の、500℃までに発生したガスの全量から揮発分のガス収率を算出した結果示すヒストグラムであり、図9(b)は発生したガスの発熱量の合計を示すヒストグラムである。 塩化鉄より調製した酸化鉄触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用、2回目使用、および比較として無触媒の場合における発生したガス量を示すヒストグラムである。 図11(a)は、塩化鉄より調製した酸化鉄触媒とスギソーダストとの充填量を同量にした場合における、触媒の1回目使用、2回目使用、および比較として無触媒の場合における揮発成分のガス収率を算出した結果を示すヒストグラムであり、図11(b)は触媒の各使用回数における発生ガスの発熱量の合計を示すヒストグラムである。 本発明にかかる燃料ガスの製造方法の概略、および製造された燃料ガスの用途の一例を示す模式図である。
符号の説明
3 管型流通式2段反応装置
4 上段電気炉
5 電気炉つなぎ目
6 下段電気炉
7 直管
11 入口
12 出口

Claims (11)

  1. バイオマスの熱分解において生成されるタールの分解反応を触媒し、かつ酸化鉄を含む組成物からなることを特徴とするバイオマスのタール分解用触媒。
  2. 前記酸化鉄が、FeO、および/またはFe23、および/またはFe34であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
  3. 前記タールの分解反応が、800℃未満で行われることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
  4. 前記タールの分解反応が、200℃以上600℃以下で行われることを特徴とする請求項3に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
  5. 前記バイオマスが、木質バイオマスであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイオマスのタール分解用触媒。
  6. バイオマスを熱分解してガス化する反応時に、
    請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイオマスのタール分解用触媒を用いることを特徴とするバイオマスの熱分解方法。
  7. バイオマスが充填された反応槽を800℃未満まで加熱する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のバイオマスの熱分解方法。
  8. 前記反応槽の加熱温度を、200℃以上600℃以下とすることを特徴とする請求項7に記載のバイオマスの熱分解方法。
  9. 請求項6ないし8のいずれか1項に記載のバイオマスの熱分解方法であって、さらに空気および/または水蒸気を導入する工程を含むことを特徴とするバイオマスの熱分解方法。
  10. 前記バイオマスの充填量に対するバイオマスのタール分解用触媒の充填割合が、少なくともバイオマスの充填量に対して4分の1以上であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載のバイオマスの熱分解方法。
  11. 原料としてバイオマスを用い、かつ、請求項6ないし10のいずれか1項に記載のバイオマスの熱分解方法を用いることを特徴とする燃料ガスの製造方法。
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