JP2005147422A - 熱交換器のシミュレータ、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラム - Google Patents
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Abstract
チューブ間の接続関係を明確にするとともに空気又は冷媒の状態パラメータを簡単に記憶可能なメモリ構造を持った熱交換器のシミュレータを提供すること。
【解決手段】
フィンとチューブからなる熱交換器の熱交換量をシミュレーションによって求める熱交換器のシミュレータにおいて、熱交換器を構成するチューブを分割してNo.を付し、各々のチューブの接続関係を表現するために、マトリクスの行番号i及び列番号jに各々のチューブNo.を対応させ、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されていないときは“0”とし、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されているときは“1” とする各マトリクスの要素mi,jからなる隣接マトリクスを作成し、この隣接マトリクスの“1”の要素部分を作動流体に関する状態パラメータに置き換えたものをそれぞれメモリ構造とする。
【選択図】 図1
Description
冷媒に関するエネルギー保存方程式:
ここで、Q1rはエンタルピーの差による冷媒側の熱交換量、Q2rは温度の差による冷媒側の熱交換量、Grは冷媒流量、hr,inとhr,outはそれぞれCVの流入側と流出側における冷媒の固有エンタルピー、Tr,inとTr,outはそれぞれCVの流入側と流出側における冷媒の温度、αrは冷媒の局所熱伝達係数、Twallはチューブ壁の温度をそれぞれ表している。
冷媒に関する運動量保存方程式:
ここで、Δptotalは冷媒の総圧力降下、Δpaccは冷媒の加速圧力降下であり、式(5)は二相領域での加速圧力降下を表している。また、Grは冷媒流量、χrは冷媒の乾度、ξはボイド率、ρvとρlはそれぞれ蒸気と液体の密度である。
空気側の圧力降下は通常非常に小さいので無視され、エネルギー保存方程式のみが考慮される。
ここで、Q1aはエンタルピーの差による空気側の熱交換量、Q2aは温度の差による空気側の熱交換量、Gaは空気流量、ha,inとha,outはそれぞれCVの流入側と流出側における空気の固有エンタルピー、Ta,inとTa,outはそれぞれCVの流入側と流出側における乾球温度、ηoはフィンの効率、αaは空気の局所熱伝達係数をそれぞれ表している。
フィン−チューブに関しては、エネルギー保存方程式のみを考慮する。定常状態の条件下ではフィンとチューブにはエネルギーの蓄積はなく、入ってくるエネルギーは出て行くエネルギーに等しい。つまり、フィンとチューブに蓄積されたエネルギーQwは、
Qw=Q1r+Q1a=0 …(9)
上記の式(1)、(4)、(6)、(9)は、単一のCVに関する全ての支配方程式である。
先ず、熱交換器のシミュレータを動作させる前に、ユーザは以下の与えられた情報を入力する必要がある。その情報としては、(1)フィン−チューブ熱交換器の構造上のパラメータ、(2)作動流体である冷媒と空気の流入状態のパラメータ(圧力、エンタルピー、冷媒流量、風上側の空気速度等)、(3)チューブ間の接続関係、等があり、この入力された情報を用いて熱交換器のシミュレーションを行う。
このプリプロセッサでは、チューブ間の接続関係を隣接マトリクスで表現することを目的としており、その流れとして5つのステップを必要とする。ステップ1では、入力データに基づいて熱交換器で使用する各々のチューブをコード化し、ステップ2では、冷媒回路の配置を方向性を持ったグラフに変換し、ステップ3では、方向性を持ったグラフを隣接マトリクスに変換し、ステップ4では、隣接マトリクスに基づいて冷媒流路を探索し生成させ、ステップ5では、冷媒の情報を記憶させるために、ステップ4で作成したマトリクスを修正する。以下、各ステップを詳細に説明する。
チューブNo.をコード化するために使用する一般的なルールは以下に示すとおりである。(1)一番目の列のチューブNo.を下のチューブから上に1、2、3、・・・とコード化する。(2)最後の列が終わるまで残った列のチューブNo.を連続して下のチューブから上にコード化する。(3)2つの他の仮想的なチューブを付け加える。それはそれぞれ流入冷媒の導入部及び流出冷媒の導出部を表す。流入冷媒導入部はチューブNo.0とコード化し、流出冷媒導出部はチューブ数の合計に1を加えたチューブNo.にコード化される。
具体的には、図6に示すような2列4段のチューブからなる熱交換器において上記ステップ1の内容を適用すると、(1)のルールから1列目のチューブはチューブNo.1〜4にコード化され、(2)のルールから2列目のチューブはチューブNo.5〜8にコード化され、さらに、(3)のルールから流入冷媒導入部をチューブNo.0でコード化し、流出冷媒導出部をチューブNo.9でコード化することで、図6に示すようなチューブNo.が付されることになる。
冷媒回路の配置は方向性を持ったグラフに変換される。方向性を持ったグラフの頂点はチューブを表し、方向性を持ったグラフの辺は2つのチューブの関係を表している。図6に示す2列4段のチューブからなる熱交換器では、図中の表側のチューブの接続関係は実線で表し、裏側のチューブの接続関係は破線で表しており、この図6における冷媒回路の配置を方向性を持ったグラフに変換すると、図2に示すようなものになる。
隣接マトリクスは、上記の方向性を持ったグラフに基づいたチューブ間の関係を表現するために導入される。マトリクスの各要素は以下のように与えられる。
このようにして生成された隣接マトリクスにおいて、ある列に含まれる要素の数の和は、その列に対応するNo.のチューブに合流するチューブの数を表す。また、ある行に含まれる要素の数の和は、その行に対応するNo.のチューブから分岐するチューブの数を表す。さらに、隣接マトリクスの行方向は流出方向の接続を、列方向は流入方向の接続をそれぞれ表し、図2の持つ方向性を表現している。
図2に示す方向性を持ったグラフに基づいて生成したものが、図3(a)に示す隣接マトリクスであり、図6に示す2列4段のチューブからなる熱交換器の接続関係を10行10列のマトリクスで表現している。この図3(a)に示す隣接マトリクスの外側に記されている0〜9の数字は、図6のチューブNo.に対応している。
数値計算において冷媒回路の配置は非常に重要である。そこで、上記隣接マトリクスに基づいて冷媒流路を単純な流れの経路として定義しておくことで、さらに計算を容易に行えるようにする。具体的には、ある合流点又は分岐点から始まり、他の合流点又は分岐点に出会うまでの冷媒流の方向に従って続くチューブをトレースしたものを冷媒流路として定義する。冷媒回路が、ある分岐点からいくつかのブランチに分岐するとき、最も小さいチューブNo.のブランチについて他の合流点又は分岐点に出会うまで探索し、その後同じ方法で残りのブランチについて探索作業を行うために先の分岐点に戻る。このようにして冷媒流路をすべて探索して生成する。図3(a)に示す隣接マトリクスに基づいて冷媒流路を探索し生成すると、図2及び図6に示す熱交換器における0−8−4、3−2、7−6、5−1−9の4つの冷媒流路を見出すことができる。
図2に示した方向性を持ったグラフからも分かるように、チューブは分岐点を持ち、分岐点から分岐する各ブランチには分岐前の冷媒が分割して流れることになる。このような分岐点において冷媒がどのような割合で分岐して流れるかは計算上重要な問題であり、これをデータとして前もって入力しておく必要がある。この入力データを、上記ステップ3で作成した図3(a)に示す隣接マトリクスの“1”の要素の部分に置き換えることによって、各チューブの冷媒流量を容易に知ることができる。例えば、図2に示す方向性を持ったグラフにおいて、分岐前の冷媒流量が10で、2分岐した場合の冷媒流量をそれぞれ5とする入力データを、図3(a)に示す隣接マトリクスの“1”の要素の部分に置き換えると、図3(b)に示すような簡単なメモリ構造を提供することが可能となり、これにより、その後の計算においてデータを読み込む際のデータ構造を簡単化することができる。
このメインプロセッサにおいては、分割したCVの支配方程式を全て解いて、CV毎の熱交換量を求めるが、従来方式とは異なるアルゴリズムを使用することにより、解の収束性を向上させシミュレーション時間を短縮させる。以下、CVの支配方程式を解くための本発明によるアルゴリズムのフローチャートを図4及び図5を用いて説明する。
前記メインプロセッサにおいて求めた全てのCVのシミュレーション結果は、このポストプロセッサにおいてメモリ構造化されて、シミュレーション結果の表示や別のシミュレーションに適用するなどの更なる操作のために出力される。これは、前記プリプロセッサでメモリ構造化を行った方法と同様に、CVのシミュレーション結果の各値を図3(a)に示す隣接マトリクスの“1”の要素の部分に置き換えることによって、冷媒情報を記憶させる簡単なメモリ構造を提供するものである。具体的には、例えば、空気又は冷媒に関する状態パラメータとしての流量、流入/流出温度、流入/流出エンタルピー等のメインプロセッサで求めた各値をそれぞれのパラメータ毎にマトリクスとして図3(b)に示すメモリ構造化することで、これらのデータの利用を容易に行うことが可能となる。
この場合には、従来の局所交互反復アルゴリズムに比べて本発明の全体交互反復アルゴリズムの計算時間は、1/50の時間で済むことを意味している。実際には、反復回数はそれぞれ異なり、一概に同一の値を用いて計算できるものではないが、前記反復回数N1〜N12の値を5〜20に設定することで、全体としての計算時間を約1/12〜1/200に短縮することができる。
Claims (3)
- フィンとチューブからなる熱交換器の熱交換量をシミュレーションによって求める熱交換器のシミュレータにおいて、熱交換器を構成するチューブを分割してNo.を付し、各々のチューブの接続関係を表現するために、マトリクスの行番号i及び列番号jに各々のチューブNo.を対応させ、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されていないときは“0”とし、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されているときは“1” とする各マトリクスの要素mi,jからなる隣接マトリクスを作成し、この隣接マトリクスの“1”の要素部分を作動流体に関する状態パラメータに置き換えたものをそれぞれメモリ構造として具備することを特徴とする熱交換器のシミュレータ。
- フィンとチューブからなる熱交換器の熱交換特性をシミュレーションによって求める熱交換器のシミュレーション方法において、熱交換器を構成するチューブを分割してNo.を付す手順と、各々のチューブの接続関係を表現するために、マトリクスの行番号i及び列番号jに各々のチューブNo.を対応させ、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されていないときは“0”とし、列番号jに対応するチューブが行番号iに対応するチューブに接続されているときは“1” とする各マトリクスの要素mi,jからなる隣接マトリクスを作成する手順と、この隣接マトリクスの“1”の要素部分を既知の作動流体に関する状態パラメータに置き換えたものをそれぞれメモリ構造として格納する手順と、前記既知の状態パラメータからなるメモリ構造を用いて熱交換器の熱交換特性を計算する手順と、隣接マトリクスの“1”の要素部分を前記計算によって求めた熱交換特性に関する状態パラメータに置き換えたものをそれぞれメモリ構造として格納する手順とからなることを特徴とする熱交換器のシミュレーション方法。
- 請求項2を実行するためのシミュレーションプログラム。
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