JP4595903B2 - キャピラリを含むマルチパス熱交換器の圧力降下特性の計算方法、マルチパス熱交換器の熱交換特性の計算方法、マルチパス熱交換器の熱交換特性のシミュレーションプログラム、当該シミュレーションプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体及び当該シミュレーションプログラムを実装したシミュレーション装置 - Google Patents
キャピラリを含むマルチパス熱交換器の圧力降下特性の計算方法、マルチパス熱交換器の熱交換特性の計算方法、マルチパス熱交換器の熱交換特性のシミュレーションプログラム、当該シミュレーションプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体及び当該シミュレーションプログラムを実装したシミュレーション装置 Download PDFInfo
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Description
なお、この図9のフローチャートは後述する本発明における冷媒圧力降下の計算モジュールの一部と同一のものであるため、詳細な説明については省略する。
以下、図面を用いて詳細に説明を行う。
本発明におけるシミュレーション対象は、複数のキャピラリ(例えば、パス毎に)を含むマルチパス熱交換器である。このような熱交換器について正確にシミュレーションを行うには、新しい数学的モデルを導入する必要がある。これに伴い、本明細書中においては複数の数式を用いて説明を行うが、その数式における文字や添字を以下のように定義する。
熱交換器は、任意の分岐か合流の冷媒パスを持つことができ、熱交換器の数個又は全ての入口パスでキャピラリを加えることができる。複数のキャピラリを持つマルチパス熱交換器に対して、パス間の冷媒分配は、非常に重要である。そこで、冷媒分配を都合良く記述するために、シミュレーション対象の全てのパスは、分かり易くするためにメインパス(MP)とサブパス(SP)の2つのタイプに分類されている。メインパス(MP)は、同じ入口チューブと出口チューブを持つパスのグループとし、サブパス(SP)は、1つのMP中のパスの1つとする。
例えば、図2(a)は、10−チューブ・2−キャピラリ含む簡素化したマルチパス熱交換器の回路図を示すものである。また、図2(b)は、簡易化した場合の関連したメインパス(MP)とサブパス(SP)を示している。
なお、図2に示した回路図からも分かるように、本発明におけるMP_No."1"とコード化されたパスは、入口側にキャピラリが接続されたパスであり、他のNo.でコード化されたメインパスは、キャピラリが接続されていないパスとなっている。よって、以降において説明する圧力降下計算モジュールにおいて、キャピラリのチョーク判断を行う必要があるのはMP_No."1"についてのみであり、他のメインパスについてはチョーク判断を行うことなく圧力降下の計算が行われることになる。
本発明において、複数のキャピラリを持つマルチパス熱交換器においてシミュレーションによって求めるべきパラメータは、冷媒圧力降下Δprである。この冷媒圧力降下Δprを求めることができれば、パス内部の冷媒の状態を知ることができ、熱交換特性についても正確に計算を行うことが可能となる。一般的にこの冷媒圧力降下Δprは、パスの等価流動抵抗Sとパスの冷媒質量流束Gとの積によって求めることが可能である。等価流動抵抗Sはパスに与えられた条件によって決定される一定値であり、冷媒質量流束Gは他のパスとの接続関係によって決定される値である。この冷媒質量流束Gを求めるにあたって冷媒質量流量Mを考慮しなければならないが、この冷媒質量流量Mはキャピラリがチョークした場合には他の条件にかかわらず一定値Mcとなってしまう。これがキャピラリを含むマルチパス熱交換器のシミュレーションを難しくしている要因である。そこで、キャピラリがチョークしていない場合とチョークしている場合とに分けて、それぞれ冷媒質量流量Mを考える必要がある。
図3は、各入口パスにキャピラリを含む共通マルチパス熱交換器の回路図を示す。複雑な冷媒回路がある熱交換器に対して、キャピラリは、まさしく図3に示されるように熱交換器入口チューブと同じく、No."1"MP(MP1)の入口チューブに加えられる。もし、キャピラリがない場合は、入口パス内を流れる冷媒の質量連続方程式は、以下の通りである。
M’r,1j = M”r,1j (j = 1, 2, …, m) (1a)
Mr,in = ΣM’r,1j (j = 1, 2, …, m) (1b)
キャピラリを含まない熱交換器の一般的な数学的モデルでは、冷媒入口パラメータMr,in,pr,in,hr,inは既知であり、M’r,1j(j=1,2,…,m)は、未知のパラメータであり、計算される必要がある。G’r,1j(j=1,2,…,m)間の関係が、次式のように既知であれば、
G’r,11 : G’r,12 : … : G’r,1m = a1: a2: … : am (1c)
G’r,1j(j=1,2,…,m)は、式(1b)と式(1c)から計算することが出来る。従って、M’r,1j(j=1,2,…,m)は、式(1a)を使用して得られるG’r,1j(j=1,2,…,m)とM”r,1j(j=1,2,…,m)で計算できる。キャピラリを含まない場合においては、式(1c)は、それぞれのサブパスでは、冷媒圧力降下と、M’r,1jとΔpr,1j(j=1,2,…,m)間の関係が同じであると考えて決定されている。ここで、キャピラリを含んでいる場合であっても、どのキャピラリもチョークしていないならば、上記のキャピラリを含まない場合の冷媒分配方法は、そのままキャピラリを含む場合に使用できる。
もし、従来の冷媒分配モデルをなお使用するならば、M’r,1j(j=1,2,…,m)は、式(1b)及び式(1c)から得られる。同時に、チョークしたキャピラリの冷媒質量流量Mr,1k(k∈mc)は、式(2a)を満足しなければならない。もし、式(1b,1c)と式(2a)の2つの制限が対立するならば、矛盾した正常でない結果が生じる。従って、キャピラリを含まない熱交換器の冷媒分布に対するモデルは、特に、いくつかのキャピラリがチョークしている場合は、キャピラリを含むマルチパス熱交換器には直接適用出来ない。
(1) すべてのキャピラリがチョークしていないならば、連続方程式は、式(1b,2a,2b)を満足する。式(1b,1c)と式(2a)を2つの矛盾した制限により生じる矛盾する冷媒質量流量ΔMrは、以下の通りである。
ここで、M’r,1kは、式(1b,1c)から得られる。
(2) もし、すべてのパス上のすべてのキャピラリがチョークしているならば、連続方程式は、以下の通りである。
Mr,in > Mr,out = ΣM’r,1j (j = 1, 2, …, m) (4a)
これは、熱交換器の入口での既知の総冷媒質量流量が、すべてのキャピラリの既知の形状パラメータで対立していることを意味している。式(1b,1c)と式(2a)を2つの矛盾した制限により生じる矛盾する冷媒質量流量ΔMrは、以下の通りである。
ΔMr = Σ(M’r,1j−Mr,1j,c) (j = 1, 2, …, m) (4b)
ここで、M’r,1jは、式(1b,1c)から得られる。
上記の2つの場合での冷媒分配のメカニズムは異なるので、困難さは、いかに矛盾した冷媒に対応するかであり、また、いかに各パスの等冷媒圧力降下を満足するために冷媒の再分配をするかである。
以上のように、キャピラリにはチョークという特性があるため、チョークする可能性を考慮した上で冷媒圧力降下を求めるためのモデリングアプローチを行わなければならない。そして、チョークしたキャピラリが含まれる場合には、チョークによって流れることのできなくなった分の冷媒を他のパスに再分配する必要がある。以下、実際に冷媒圧力降下を求めるためのモデリングアプローチについて説明を行う。
分岐又は合流するパスに対して、分岐又は合流点での支配方程式は、下流分岐の入口冷媒状態パラメータを決定するのに必要である。以下の方程式は、図4(a)に示されている分岐No.iの流動に対して使用される。
Mr,i =ΣMr,ij (j = 1, 2, …, m) (5)
hr,i = hr,ij (j = 1, 2, …, m) (6)
pr,i = pr,ij (j = 1, 2, …, m) (7)
Δpr,ij = Δpr,ik (j, k = 1, 2, …, m) (8)
以下の方程式は、図4(b)に示されている合流No.iの流動に対して使用される。
他の冷媒状態パラメータは、既知の圧力とエンタルピで冷媒状態方程式を使用して得ることが出来る。
冷媒圧力降下Δprに対する方程式は、以下のように簡略化して表わすことが出来る。
Δpr = SG2 (12)
Sは、与えられたSPに対しての等価流動抵抗である。ここで、No."i"MPにおいて、各SPは、熱交換器の同じ分岐点から始まり、出口で終わる。従って、MPiでの冷媒圧力降下は、以下のように得られる。
Δpr,ij = Sr,ijGr,ij 2 (j = 1, 2, …, m) (13)
ここで、Δpr,ij,Sr,ij及びGr,ijは、それぞれ、No."i"のMP内のNo."j"のSPにおける冷媒の圧力降下、等価流動抵抗、そして、冷媒質量流束である。式(8)と式(13)に従って、同じMPの各SPでの冷媒流動の分配は次のように得られる。
式(5)と(14)に従って、No."i"MPのNo."j"SP内の冷媒質量流束の比率は、次のように計算される。
従って、No."i"MPの各SP内の冷媒質量流束は、次の式で計算できる。
Gr,ij =εr,ijGr,i,in (j = 1, 2, …, m) (15b)
図3より、Δprは、以下の方程式で計算される。
Δpr,1j = Δpr,1j,cap +Δpr,1j,tube+Δpr,1j,dc (j = 1, 2, …, m) (16a)
ここで、Δpr,1j,dcは、キャピラリからフィン付きチューブまでの拡大断面積による、キャピラリとフィン付きチューブ間の接続点での冷媒側圧力降下である。キャピラリ内で冷媒のチョークがない時は、各パス上の冷媒質量流束は、式(5−8,14−16a)で計算できる。もし、式(16)中のΔpr,1j,cap及びΔpr,1j,dcが"0"であるならば、上記の式は、キャピラリを含まない熱交換器に対する式に簡略化される。そして、各パス上の冷媒質量流束は、式(5−8,14,15,16b)で計算できる。
Δpr,1j =Δpr,1j,tube (j = 1, 2, …, m) (16b)
もし、キャピラリ内の冷媒流動が一部のキャピラリでチョークしている場合であっても、キャピラリ内の全ての冷媒流動がチョークされているわけではないのならば、初期の冷媒分配方法は、式(5−8,14−16a)がなお使用される。
しかし、各SPに分配される冷媒はキャピラリモジュールの算出の1回か数回の後に再調整されなければならない。式(3)から、チョークされたキャピラリに対する余剰冷媒流動(M’r,1k−Mr,1k,c)があることが分かる。その余剰冷媒は、真の冷媒分配特性に反映させるため、他のSP間で再分配されるべきである。反復計算処理で各パスの冷媒質量流量の正しい比率が得られ、各パスでの冷媒質量流量の比率が式(14)で既に調整されているので、チョークしていないキャピラリを持つSPへの余剰冷媒の平均的な分配は、各SPの冷媒質量流量の比率を激しく動かさない。従って、機能的分配の方策は、上記の余剰冷媒に対応するよう適用させられる。機能的分配の方策を使用することによって、冷媒分配が次のように再調整される。
ここで、M’(0) r,1kは、式(5−8,14−16a)で得られたM’r,1kの換算値である。
ここで、M’(0) r,1jは、式(5−8,14−16a)から得られるM’r,1jの換算値である。
もし、全てのパス上のキャピラリの全ての冷媒がチョークされているならば、全てのキャピラリを通る実際の総冷媒質量流量は、全てのキャピラリがチョークされているために、熱交換器の入口に付与された冷媒質量流量未満である。式(4b)から、少なくともさらに対応しなければならない冷媒Σ(M’r,1j−Mr,1j,c)があることが分かる。実際には、すべてのキャピラリがチョークする時は、最小の冷媒圧力降下を持つSP上のチョークキャピラリが、そのMPの冷媒圧力降下を制限する。従って、冷媒分配方法は、最小の冷媒圧力降下を持つSPに基づくべきである。
そこで、標準パスとしての最小冷媒圧力降下とΔpr,sとして対応する最小冷媒圧力降下を持つSPを指示する。その結果、以下の方程式は、標準パス圧力降下に基づく他のSP上での冷媒質量流束を決定するために使用される。
ここで、関数"f"は、式(16a)から得ることができる。
キャピラリ内の冷媒流動は、等エンタルピ一方向均質の流動として考えられる。各キャピラリに対して、形状パラメータと冷媒入口パラメータ(pr,in,cap,hr,in,cap及びGr,in,cap)が与えられ、冷媒出口パラメータ(pr,out,cap,hr,out,cap及びGr,out,cap)は、エネルギー保存方程式、連続方程式、および、運動量保存方程式を解くことで得られる。
キャピラリ内の冷媒流動に対するエネルギー保存方程式:
hr,in,cap = hr,out,cap (20)
キャピラリ内の冷媒流動に対する連続方程式は、冷媒流動がチョークされているかどうかによって異なる。
非チョーク冷媒流動の場合 :Gr,out,cap = Gr,in,cap (21)
チョーク冷媒流動の場合 :Gr,out,cap = Gr,c,cap (22a)
ここで、Gr,cは、以下の基準により、反復処理で計算される。
dLcap/dp = 0 (22b)
キャピラリ内の冷媒流動に対する運動量保存方程式:
シミュレーションにおいて正確な結果を得るためには、キャピラリがチョークしたか否かを判断してチョークしている場合にはそれに適した処理を行う必要がある。キャピラリがチョークする条件は、キャピラリの入り口側の圧力と出口側の圧力の差が一定値以上となることであるが、キャピラリの出口側圧力は未知であるため、計算によって求める必要がある。
その解析手順としては、先ず、キャピラリを冷媒の流れ方向に沿って複数のコントロールボリューム(検査体積。以下、CV)に分割する。そして、入り口側に近いCVから順番に、式(22b)によって求めた質量流速Gを用いて出口側の圧力降下を求める。このようにしてCV毎の圧力降下を計算して求めこれを加算し、その圧力降下量がチョークする値となった時点でのキャピラリの長さを求める。このチョーク条件となるキャピラリの長さと実際のキャピラリの長さを比較して、実際のキャピラリの長さの方が長い場合には、そのキャピラリはチョークしたと判断する。
フィン付きチューブの機能のモデルは、冷媒、フィン付きチューブ及び空気の3つの部分を含む。チューブ内の冷媒流動は、一次元軸流であり、チューブに沿った軸伝導は無視される。以下は、フィン付きチューブのシミュレーションの支配方程式の要約である。
ここで、空気質量流量Maは、最前列での上流のCVに基づいて計算される。αaは、選択された実験的相関関係から計算される。
ここで、Δpa,finは、フィン表面による空気側圧力降下であり、Δpa,tubeは、チューブ表面による空気側圧力降下である。
ここで、Qcondはフィンによる総熱伝導であり、Qfront,Qback,Qtop及びQbottomは、それぞれ、最前列、最後尾、最上部列、及び最下部列にもっとも近くのフィンによる熱伝導である。フィン付きチューブのCVに対しての入力パラメータは、hr,in,pr,in,Gr,in,Tdb,in,Twb,in,Ga及びpa,inである。これに対して出力側のパラメータとして、9つの未知の変数(Ta,out,Tr,out,hr,out,ha,out,pr,out,pa,out,Gr,out,Ga,out,Twall)が存在する。しかし、空気/冷媒の状態方程式が導入されている時は、7つの未知の変数(Ta,out,pa,out,Ga,out,hr,out,pr,out,Gr,out及びTwall)が残り、式(24),(25),(26),(27),(28),(29)及び(30)の一式が解ける。
キャピラリのCVに対しての入力パラメータは、hr,in,cap,pr,in,cap,Gr,in,capである。これに対して出力側のパラメータとして、4つの未知の変数(Tr,out,cap,hr,out,cap,pr,out,cap,Gr,out,cap)が存在する。冷媒の状態方程式が導入されている時は、3つの未知の変数(hr,out,cap,pr,out,cap,Gr,out,cap)が残り、式(20),(21又は22)及び(23)の一式が解ける。
図1に示すのは、圧力降下計算モジュールにおける各パス毎の冷媒圧力降下量の計算の流れを表したフローチャートである。(S101)〜(S119)は、フローチャートにおける各ステップを表しており、以下、順をおって説明を行う。先ず、図1の(S101)において、MP_No.を"1"とし、(S102)においてパラメータの初期化を行う。ここでのパラメータは、キャピラリに分岐する前の冷媒質量流量、エンタルピ及び圧力や、各キャピラリにおける冷媒圧力降下、各キャピラリに対する冷媒分配などであり、前記の式(5−8,14−16a)を使用して求められる。
全てのキャピラリがチョークしているわけではない場合には、チョークによって流れることが出来なくなった冷媒をさらに冷媒を流す余裕のある他のキャピラリに再分配することによってチョークを解消できる可能性がある。よって、(S106)において、式(17,18)に基づいて冷媒の再分配を行った後に(S107)に進む。
全てのキャピラリがチョークしている場合には、最小の冷媒圧力降下を持つSP上のチョークキャピラリが、そのMPの冷媒圧力降下を制限する。そこで、(S114)において、標準パスとしての最小冷媒圧力降下Δpr,sとして対応する最小冷媒圧力降下を持つSPを指示する。この標準パスの圧力降下Δpr,sは他のSP上での冷媒質量流束を決定するために使用され、(S115)において、式(19a,19b)によって冷媒質量流束が求められる。その後、(S116)においてMP_No.を"2"として再度(S103)に戻る。
(S112)では、最後のメインパス(MP_No.が最大)であることを確認するまで、(S119)でMP_No.を1ずつ増やしながら(S102)→(S112)の処理を繰り返す。このようにして、最後のメインパスについての処理が終了したことを(S112)で確認した後に、(S113)でデータを保存して、圧力降下計算モジュールを終了する。
冷媒再分配の具体例について説明する。例えば、ある熱交換器に流入した冷媒が3つのキャピラリを介してパスに接続されており、3つのキャピラリa、b、cのチョーク流量がそれぞれ5g/s、7g/s、3g/sである場合を想定する。
(1)熱交換器に流入したトータル流量が10g/sであって、式(5−8,14−16a)を使用して冷媒分配を行った結果が、3g/s、5g/s、2g/sであったとすると、各キャピラリを通る流量はチョーク流量よりも小さいため、3つのパス共にチョークは発生しない。
(2)熱交換器に流入したトータル流量が10g/sであって、式(5−8,14−16a)を使用して冷媒分配を行った結果が、3g/s、3g/s、4g/sであったとすると、キャピラリcにおいてチョーク流量を越えてしまうためチョークが発生する。よって、この流すことの出来ない1g/sの流量を式(17,18)に基づいて再分配(例えば、a、bに均等に再分配)することで、調整後の各キャピラリの流量は3.5g/s、3.5g/s、3g/sとなる。
(3)熱交換器に流入したトータル流量が20g/sであって、式(5−8,14−16a)を使用して冷媒分配を行った結果が、6g/s、9g/s、5g/sであったとすると、全てのキャピラリにおいて冷媒流量がチョーク流量よりも大きいため、3つのパス共にチョークが発生する。仮にキャピラリcの圧力降下が最も小さいとすると、このキャピラリcに接続されたパスが標準パスとして選択され、キャピラリa及びbにおいてもキャピラリcと同じ圧力降下であるものとしてしまう。この圧力降下に対応した流量がキャピラリa、bにおいて流れることとなり、例えば、各キャピラリの流量は4g/s、6g/s、3g/sとなる。
以上のように、キャピラリのチョーク発生の如何によって冷媒再分配を行ってから冷媒圧力降下を計算するため、精度の高いシミュレーションを行うことができる。
なお、上記MP_No.が"1"であるメインパスにおいて、キャピラリが接続されていないパスがある場合、そのパスにはチョークの発生しないキャピラリが接続されているものとすればよい。
圧力降下計算モジュールの終了後に、伝熱計算モジュールに移行する。伝熱計算モジュールで行う処理は、特許文献1による従来技術と同様であり、CV毎にエネルギー保存方程式を解くことで計算が行われる。具体的には、式(24a−24c)、式(27a−27c)及び式(30a,30b)が適宜用いられる。
(1)実験システム
複数のキャピラリを含む熱交換器に対する提案モデルとアルゴリズムを検証するために、試験装置を構築し、検証を行った。実験装置の回路図と試験パスの実験装置は、図5に示してある。実験条件は、図8に示してある。
試験システムは、風洞、冷媒回路、空気と冷媒の流動制御システム、および、データ取得システムなど4つのサブシステムから成る。空気の温度と湿度は、温湿度コントロール室で制御される。空気流量は、標準のノズルを使用して測定される。空気と冷媒の温度は、±0.05℃の精度があるT型熱電対を使用して測定される。冷媒の質量流量は、フルレンジ0~200kg/hで、最大誤差0.12%未満の質量流量メータで測定される。冷媒圧力は、フルレンジ0~5MPaで、0.12%未満の誤差の絶対圧力トランスデューサを使用して測定される。冷媒の質量流量は、電子膨張弁(EEV)に対するパルス制御器によって、一定に調整される。パス入口冷媒のエンタルピは、EEVの入口で測定される圧力と温度によって決定される。接続配管は、周囲との熱交換を防ぐために十分、絶縁されている。熱交換量は、フルレンジ0~5kWで、最大誤差4%未満のカロリーメータを使用して、空気エンタルピ法で測定される。実験データは、空気側乾球温度と湿球温度が安定になった後で、計測される。データは、5分毎に取得システムで計測され、計7回のデータが計測される。次に、7回の回収データの平均値は、実際の実験データとして使用される。
熱交換器をシミュレートするために、適用な熱伝達と圧力降下相関関係が選択される。冷媒の熱特性は、REFPROPVer.7.1に基づいて計算される。このような条件のもとで、シミュレーションと実験データ間の熱交換量と冷媒側圧力降下の比較を行い、その結果をそれぞれ、図6と図7に示した。この図6と図7から、計算された熱交換量と実験の熱交換量の偏差は±5%未満で、計算された冷媒側圧力降下と実験の冷媒側圧力降下の偏差は±15%未満であることが分かる。
これにより、エアコン等において、キャピラリを含むマルチパス熱交換器の設計段階でキャピラリの設定を適宜変更してシミュレーションを行うことによって、より効率の良いキャピラリの配置等を開発する際に細部の変更等による全体への影響を実際の試作を行わずに知ることが出来るため、開発コストの削減等の効果を得ることが出来、また、開発に要する期間を短縮することが可能となる。
Claims (6)
- 複数のパス(冷媒流路)を各々接続し、かつ前記パスのうち少なくとも1つのパスの流入側に当該パスへ流入する冷媒流量を調整するためのキャピラリチューブ(以下、キャピラリ)を接続して構成するマルチパス熱交換器の冷媒圧力降下特性の計算方法であって、前記マルチパス熱交換器における複数のパスの割付と各々のパス間の接続関係、前記キャピラリの長さ、内径及び前記複数のパスと前記キャピラリの接続関係とを初期設定情報として設定する第1の手順と、前記複数のパスに分岐する前の入口側における冷媒質量流量、エンタルピ、圧力及び前記キャピラリにおける冷媒圧力降下、前記キャピラリに対する冷媒の分配などのパラメータの初期化を行う第2の手順と、前記初期設定情報によって定まるキャピラリのチョーク流量と冷媒分配との比較によって前記キャピラリがチョークしたか否かを判断する第3の手順と、全てのキャピラリがチョークしている場合に、最小の冷媒圧力降下を持つキャピラリに接続されたサブパスを標準パスとして選択するとともに当該冷媒圧力降下を用いて他のサブパス上での冷媒質量流束を演算する第4の手順と、チョークしたキャピラリは存在するが全てではない場合に、キャピラリへの冷媒の再分配を行う第5の手順と、キャピラリでの冷媒圧力降下とサブパスでの冷媒圧力降下を演算する第6の手順と、求めた各冷媒圧力降下が収束するか否かを判断する第7の手順と、冷媒圧力降下が収束しない場合に、キャピラリへの冷媒の再分配を行った後に前記第3〜第7の手順を再度実行させる第8の手順とからなることを特徴とするマルチパス熱交換器の冷媒圧力降下特性の計算方法。
- 前記第5の手順における冷媒の再分配は、チョークしたキャピラリにおける余剰冷媒をチョークしていないキャピラリ及び/又は前記チョークしたキャピラリと接続されていないサブパスに対して分配し直して実行することを特徴とする請求項1記載のマルチパス熱交換器の冷媒圧力降下特性の計算方法。
- 請求項1又は2における第1の手順乃至第8の手順によって冷媒圧力降下特性を計算する第1のステップと、全てのパスの各々の部分毎にエネルギー保存方程式を解くことによって熱交換特性を計算する第2のステップと、前記第1のステップで求めた冷媒圧力降下特性及び第2のステップで求めた熱交換特性とが収束しているか否かを判断し、収束していない場合にはそれぞれの結果を他方の計算に反映させながら第1のステップ及び第2のステップを収束するまで繰り返す第3のステップと、前記冷媒圧力降下特性及び熱交換特性が収束した場合の結果をシミュレーション結果として得る第4のステップとを実行するプロセスを具備してなることを特徴とするマルチパス熱交換器の熱交換特性のシミュレーション方法。
- 請求項3記載の各ステップをコンピュータに実行させ、これによって求めたい熱交換器の熱交換特性のシミュレーションを行うことを特徴とするマルチパス熱交換器の熱交換特性のシミュレーションプログラム。
- 請求項4記載のシミュレーションプログラムを記憶させたことを特徴とするマルチパス熱交換器の熱交換特性のシミュレーションプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
- 請求項4記載のシミュレーションプログラムを実装したシミュレーション装置。
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