JP2005139381A - アクリル樹脂系2液型組成物 - Google Patents

アクリル樹脂系2液型組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 アクリル樹脂系2液型組成物において、主剤に硬化剤を混合して塗布すると室温でも短時間で予備硬化し、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるのに予備硬化のための設備・工程が不要で製造コストを下げることができること。
【解決手段】 主剤の成分としてはアクリル樹脂としてコアにPBMA、シェルにPMMAを用いたコアシェル型アクリル樹脂を用い、可塑剤としてDINP(フタル酸ジイソノニル)、充填剤の微粒タイプとして炭酸カルシウム、粗粒タイプとして重炭酸カルシウム、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤としてイミダゾール系化合物をそれぞれ用いた。硬化剤の成分である高極性高沸点化合物としては、エチルグリコールアセテートをアクリル樹脂100重量部に対して60重量部配合した。試験の結果、混合物の指触乾燥時間・硬化物状態・接着強度・硬化物の柔軟性のいずれも良好であった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクリル樹脂を中心とする主剤に硬化剤を混合して塗布すると室温でも短時間で予備硬化し、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるのに予備硬化のための設備・工程が不要なアクリル樹脂系2液型組成物に関するものである。なお、本明細書及び特許請求の範囲においては、「アクリル樹脂」はアクリル酸エステル樹脂及びメタクリル酸エステル樹脂の総称として用いられる。
従来、自動車等の製造工程において使用される接着剤やシーリング剤は、所定の部位に塗布された後、仮止めや耐指触性確保のため、予備乾燥炉・ドライヤー・電磁誘導加熱等によって予備硬化が行われていた。このため、予備硬化用の設備費用やランニングコストがかかって製造コストが上昇するとともに、製造工程が長くなって品質も低下し易い傾向があった。
そこで、予備硬化用の加熱設備を用いることなく室温でも予備硬化する2液混合型の物質として、エポキシ樹脂からなる主剤とアミン系やメルカプタン系からなる硬化剤(エポキシ樹脂系)、或いはポリオール系からなる主剤とイソシアネート系からなる硬化剤(ウレタン樹脂系)、が考えられる。
しかしながら、上記エポキシ樹脂系2液型組成物においては、低温硬化は可能であるが硬化物の柔軟性に乏しく、接着剤やシーリング剤としては使い難い。さらに、硬化剤のアミン系化合物の毒性やメルカプタン系化合物の臭気が問題となる。また、ウレタン樹脂系2液型組成物においても硬化剤のイソシアネート系化合物の毒性や、空気中の湿気と反応するので密閉保管が必要であり取扱いにくいという問題点があった。
そこで、本発明は、アクリル樹脂を中心とする主剤に硬化剤を混合して塗布すると室温でも短時間で予備硬化し、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるのに予備硬化のための設備・工程が不要で製造コストを下げることができ、硬化物が柔軟性を有し、安全性も高いアクリル樹脂系2液型組成物を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、アクリル樹脂を主体とする主剤と硬化剤とからなる2液型組成物であって、前記主剤としてコアシェル型アクリル樹脂または共重合型アクリル樹脂と、可塑剤と、充填剤と、エポキシ樹脂用硬化剤とを具備し、前記硬化剤として高極性高沸点化合物と、エポキシ樹脂と、充填剤とを具備するものである。
請求項2の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、請求項1の構成において、前記コアシェル型アクリル樹脂のコアにPBMA(ポリメタクリル酸ブチル)を、シェルにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いたものである。
請求項3の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、請求項1または請求項2の構成において、前記高極性高沸点化合物として室温で液体の高極性化合物であり、沸点が150℃以上、好ましくは180℃以上の多価アルコール類、ケトン類またはエステル類を用いたものである。
請求項4の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記主剤と前記硬化剤とを混合して室温予備硬化した後に、約140℃〜約200℃で約30分の広範な加熱温度範囲で良好な硬化物が得られるものである。
請求項1の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物においては、コアシェル型アクリル樹脂または共重合型アクリル樹脂を用いているが、ゾル安定性と硬化物性の両立を図るためコアとシェルに異なるアクリル樹脂を用いており、いずれも乳化重合法で製造されるため、室温下ではこのアクリルポリマーの外殻部にはシェルポリマーの他に乳化剤も存在しており、これがバリアとなって内部に可塑剤が侵入するのを防いでいる。但し、高極性化合物の沸点が低いと本硬化のときに発泡現象が生じてしまうので、高極性高沸点化合物を用いる必要がある。
一方、硬化剤中に含まれるエポキシ樹脂が主剤中に含まれるエポキシ樹脂用硬化剤と反応すると、エポキシ樹脂のエポキシ基が開環して接着性を生ずる。これによって、アクリル樹脂系2液型組成物の混合物を接着剤・シーリング剤として用いることができる。本硬化の際には、高温になるので分子運動が盛んになって分子間距離が拡がり、可塑剤がアクリルポリマー内部まで浸透しゲル化・相溶して硬化物になると考えられる。この2液型組成物には、毒性の強い化合物や反応熱を伴うものは一切含まれていないので、取扱い易く安全である。
このようにして、主剤に硬化剤を混合して塗布すると室温でも短時間で予備硬化し、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるのに予備硬化のための設備・工程が不要で製造コストを下げることができ、硬化物が柔軟性を有し、安全性も高いアクリル樹脂系2液型組成物となる。
請求項2の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、主剤中のアクリルポリマーのコアにPBMA(ポリメタクリル酸ブチル)を、シェルにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いている。これによって、PMMAによってゾル安定性が得られ、PBMAによって硬化物性が確保される。
このようにして、ゾル安定性と硬化物性を兼ね備えたアクリル樹脂系2液型組成物となる。
請求項3の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物においては、高極性高沸点化合物として室温で液体の高極性化合物であり、沸点が150℃以上、好ましくは180℃以上の多価アルコール類、ケトン類またはエステル類を用いており、具体的化合物としてはエチルグリコールアセテート等が挙げられる他、他類の化合物として、N−メチル−2−ピロリドン等の高極性高沸点化合物等も挙げられる。そして、沸点が150℃以上、好ましくは180℃以上であることによって、約140℃〜約200℃の温度範囲で行われる本硬化のときに発泡現象が生じることなく良好な硬化物が得られる。
このようにして、主剤に硬化剤を混合して塗布すると室温でも短時間で予備硬化し、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるのに予備硬化のための設備・工程が不要で製造コストを下げることができ、本硬化でも良好な硬化物が得られるアクリル樹脂系2液型組成物となる。
請求項4の発明にかかるアクリル樹脂系2液型組成物は、主剤と硬化剤を混合して室温で短時間で予備硬化した後に、約140℃〜約200℃で約30分の広範な加熱温度範囲における本硬化においても、良好な硬化物が得られるものである。自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いるためには、製品が大きくて薄い部分と厚い部分が混在していることから、部材の薄い部分は早く高温に達し、部材の厚い部分はなかなか温度が上がらないので、全体に温度のバラツキが生じる。しかし、本発明のアクリル樹脂系2液型組成物は、約140℃〜約200℃で約30分の広範な加熱温度範囲における本硬化においても良好な硬化物が得られるものであるため、約30分の本硬化で全体が均一に硬化して、工程が短縮され製品の品質も向上する。
このようにして、自動車等の製造工程において接着剤やシーリング剤として用いることができるアクリル樹脂系2液型組成物となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態のアクリル樹脂系2液型組成物においては、主剤の成分としてはアクリル樹脂としてコアにPBMA、シェルにPMMAを用いたコアシェル型アクリル樹脂を用い、可塑剤としてDINP(フタル酸ジイソノニル)、充填剤の微粒タイプとして炭酸カルシウム、粗粒タイプとして重炭酸カルシウム、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤としてイミダゾール系化合物をそれぞれ用いた。
一方、硬化剤の成分としては、高極性高沸点化合物の量と種類を、実施例1,2,3及び比較例1,2,3について、それぞれ変化させた。実施例1〜3及び比較例1〜3の配合(重量比)について、上記の主剤とともに(表1)に纏めた。
Figure 2005139381
(表1)に示されるように、主剤の成分と配合は全ての例について同一である。これに対して、硬化剤の成分である高極性高沸点化合物としては実施例1においては、高極性高沸点化合物Aとしてエチルグリコールアセテートをアクリル樹脂100重量部に対して60重量部配合した。また、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型のエポキシ樹脂を30重量部、充填剤の微粒タイプとして炭酸カルシウムを30重量部、粗粒タイプとして重炭酸カルシウムを70重量部配合した。
実施例2においては、高極性高沸点化合物A即ちエチルグリコールアセテートをアクリル樹脂100重量部に対して30重量部配合した。その他の成分については、実施例1と同一である。実施例3においては、高極性高沸点化合物BとしてN−メチル−2−ピロリドンをアクリル樹脂100重量部に対して50重量部配合した。その他の成分については、実施例1と同一である。
比較例1においては、高極性高沸点化合物CとしてDMP(フタル酸ジメチル)をアクリル樹脂100重量部に対して50重量部配合した。その他の成分については、実施例1と同一である。比較例2においては、高極性高沸点化合物Dとしてメチルイソブチルケトンをアクリル樹脂100重量部に対して50重量部配合した。その他の成分については、実施例1と同一である。比較例3においては、高極性高沸点化合物Eとして酢酸エチルをアクリル樹脂100重量部に対して50重量部配合した。その他の成分については、実施例1と同一である。
これら6種類のアクリル樹脂系2液型組成物について、主剤と硬化剤とを混合して、混合物の性能を調べた。その結果も(表1)に纏められている。
まず、指触乾燥時間の測定方法としては、主剤と硬化剤を所定量混合して幅5mm、厚み3mmで塗布する。雰囲気温度は25℃として、これを指触によって評価し、指に材料が付着しなくなる時間を測定した。その結果、実施例1,実施例3,比較例2,比較例3においては指触乾燥時間は約10分、また実施例2においては約40分で良好な結果を示したが、比較例1においては指触乾燥時間は1時間以上であり、実用上問題があることが判明した。
次に、硬化物状態の評価方法としては、主剤と硬化剤を所定量混合して幅5mm、厚み3mmで塗布したものを25℃で1時間放置後、150℃で30分間焼き付けた。これをナイフ等でカットして、硬化物の外・内部について観察した。その結果、実施例1〜3及び比較例1については異常は認められなかったが、比較例2においては内部発泡を起こしており、さらに比較例3においては著しい発泡が見られ、いずれも本硬化後の状態に問題があることが判明した。
次に、接着強度の測定方法としては、主剤と硬化剤を所定量混合し、長さ100mm、幅25mmで厚み0.8mmの2枚の鋼板に、それぞれ長さ25mm、幅一杯に塗布して貼り合わせた。これを25℃で1時間放置後、150℃で30分間焼き付けた。冷却後、島津製作所製オートグラフを用いて50mm/minの速度で引張り破断時の強度を測定した。その結果、実施例1は接着強度0.8MPa、実施例2は1.3MPa、実施例3は1.0MPa、比較例1は0.9MPaと、それぞれ充分な接着強度を示したが、比較例2は0.6MPaとやや低く、比較例3は0.3MPaとさらに低い値を示した。
次に、柔軟性の評価方法としては、主剤と硬化剤を所定量混合して幅5mm、厚み3mmで塗布したものを25℃で1時間放置後、150℃で30分間焼き付けた。冷却後、1インチのマンドレルを使用して折り曲げ、表面状態について観察した。その結果、実施例1〜3,比較例1,2とも異常は見られず、柔軟性についてはいずれも問題ないことが分かった。なお、比較例3については上述の如く本硬化させると著しい発泡を起こすため、評価することができなかった。
以上の混合物性能評価結果より、実施例1〜3については実用上問題のないアクリル樹脂系2液型組成物であるが、比較例1については室温硬化に時間が掛かり過ぎて実用的でなく、また比較例2,比較例3については高極性化合物の沸点が低すぎて(比較例2のメチルイソブチルケトンの沸点は116.2℃、比較例3の酢酸エチルの沸点は76.8℃)、本硬化時の150℃の高温で気化して発泡するため、接着剤やシーリング剤として使用することはできない。
さらに、実施例1〜3については、約140℃〜約200℃の広範な温度範囲で問題なく本硬化するため、自動車等の製造工程において鋼板等の部材の薄い部分は早く高温に達し、部材の厚い部分はなかなか温度が上がらないので、全体に温度のバラツキが生じるが、約30分の本硬化で全体が均一に硬化して、工程が短縮され製品の品質も向上する。
本実施の形態においては、アクリル樹脂としてコアにPBMA、シェルにPMMAを用いたコアシェル型アクリル樹脂を用いたが、PBMA、PMMA以外のアクリルポリマーを用いることもできる。また、共重合タイプのアクリル樹脂を用いることもできる。共重合タイプのアクリル樹脂も乳化重合法で製造されているので、高極性高沸点化合物を用いて、同じメカニズムで室温硬化させることができる。
また、可塑剤としてDINP(フタル酸ジイソノニル)を用いたが、他にもDOP(フタル酸ジオクチル)等のフタル酸系ほかTCP(リン酸トリクレジル)等のリン酸系等、一般的な可塑剤全般を用いることができる。
また、充填剤としては炭酸カルシウム及び重炭酸カルシウムを用いているが、他にもタルク、硫酸バリウム、カオリン、クレー等を用いることができる。
さらに、エポキシ樹脂の硬化剤として硬化温度の高いジシアンジアミドを用いているが、他にもADH(アジピン酸ジヒドラジド)等の各種硬化剤が使用可能である。また、エポキシ樹脂の硬化促進剤としてイミダゾール系化合物を用いたが、他にもアミン系、ウレア系等の硬化促進効果のある助剤を用いることができる。
本発明を実施するに際しては、アクリル樹脂系2液型組成物のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、本実施の形態に限定されるものではない。

Claims (4)

  1. アクリル樹脂を主体とする主剤と硬化剤とからなる2液型組成物であって、
    前記主剤としてコアシェル型アクリル樹脂または共重合型アクリル樹脂と、可塑剤と、充填剤と、エポキシ樹脂用硬化剤とを具備し、
    前記硬化剤として高極性高沸点化合物と、エポキシ樹脂と、充填剤とを具備することを特徴とするアクリル樹脂系2液型組成物。
  2. 前記コアシェル型アクリル樹脂のコアにPBMA(ポリメタクリル酸ブチル)を、シェルにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いたことを特徴とする請求項1に記載のアクリル樹脂系2液型組成物。
  3. 前記高極性高沸点化合物として室温で液体の高極性化合物であり、沸点が150℃以上の多価アルコール類、ケトン類またはエステル類を用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクリル樹脂系2液型組成物。
  4. 前記主剤と前記硬化剤とを混合して室温予備硬化した後に、約140℃〜約200℃で約30分の広範な加熱温度範囲で良好な硬化物が得られることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のアクリル樹脂系2液型組成物。
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