JP2005137253A - ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー - Google Patents

ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー Download PDF

Info

Publication number
JP2005137253A
JP2005137253A JP2003376800A JP2003376800A JP2005137253A JP 2005137253 A JP2005137253 A JP 2005137253A JP 2003376800 A JP2003376800 A JP 2003376800A JP 2003376800 A JP2003376800 A JP 2003376800A JP 2005137253 A JP2005137253 A JP 2005137253A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
block
poly
polyion
ethyleneimine
ethyloxazoline
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003376800A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4368183B2 (ja
Inventor
Jinka Kin
仁華 金
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kawamura Institute of Chemical Research
Original Assignee
Kawamura Institute of Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawamura Institute of Chemical Research filed Critical Kawamura Institute of Chemical Research
Priority to JP2003376800A priority Critical patent/JP4368183B2/ja
Publication of JP2005137253A publication Critical patent/JP2005137253A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4368183B2 publication Critical patent/JP4368183B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Abstract

【課題】 無毒性で生体親和性に優れ、かつ親水性と疎水性とを併せ持つポリ(エチルオキサゾリン)を構造中に有し、安定に生体物質を保持できるポリイオン会合体、および該会合体からなる生体物質キャリアーを提供すること。
【解決手段】 カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有するブロック共重合体、およびアニオン性の生体物質とからなり、前記ブロック共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とがイオン結合したポリイオン会合体、および該会合体からなる生体物質キャリアー。生体物質を体内の分解酵素から守り、遺伝子を標的細胞まで安全に運ぶことができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、合成高分子と生体物質との複合体材料に関し、より詳しくは、荷電のない親水性部位とカチオン荷電の部位とを有するブロック共重合体のカチオン荷電部位が、アニオン性の生体高分子や生体組織とイオン会合することにより形成されるポリイオン会合体、およびその会合体からなる生体物質キャリアーに関する。
カチオン性合成ポリマーと生体高分子、例えば、DNA、蛋白、細胞とのイオン会合体は、遺伝子工学、蛋白工学、細胞工学など多くの領域に応用される。特に、遺伝子治療における遺伝子ベクターの構築には合成ポリマーとしてカチオン性ポリマーが最も注目されている。カチオン骨格として用いられるポリマーとしては、例えば、ポリビニルアミン類(特許文献1)、ポリエチレンイミン類(非特許文献1)、ポリリジン類(非特許文献2)が開示されている。
これらのカチオン性ポリマーの中でも、従来から製紙工業の凝集剤、化粧品添加剤など工業用品に用いられたポリエチレンイミンがDNAキャリアーとして最も有効であることが開示され(非特許文献3、4)、それを用いた遺伝子搬送と遺伝子発現に関する研究が急激に増えるようになった。しかしながら、市販のポリエチレンイミンは、多分岐性ポリマーであり、その構造には二級アミン以外に、三級アミンと一級アミンが含まれている。このような組成からのポリエチレンイミンはDNAとポリイオンコンプレックスを形成するにしても、そのコンプレックスの構造、形状、寸法を制御することには不利である。
二級アミンのみで構成されるポリエチレンイミンを合成するためには、まずポリオキサゾリンを合成し、それを加水分解することにより得ることができる。線状のポリ(エチレンイミン)をDNAとの複合体形成に用いることができるが、その複合体の構造、形状、寸法をもっと精密に制御するにはポリ(エチレンイミン)が含まれた共重合体型のポリマーを構築することが要求される。その例として、ポリ(エチレンイミン)とポリ(エチレンオキシド)から構成されたブロック共重合体、いわゆるカチオンブロックを有する二重親水性ブロック共重合体が取り上げられている(非特許文献5)。このようなブロック共重合体を用いた場合、カチオンブロックであるポリエチレンイミン部分はアニオン性のDNAとイオン結合し、水中不溶なイオンコンプレックスを形成するが、中性のブロックであるポリ(エチレンオキシド)はイオンコンプレックス部分の外表面を覆う形で、コア−コロナ型イオン会合ミセルを形成する。このようにして得られるイオン会合ミセルの安定性は極めて高く、これらのブロックの組成比、重合度などを変えることにより、イオン会合ミセルの寸法、形状は容易に制御される。
カチオンブロックを有する二重親水性ブロック共重合体のほとんどはポリ(エチレンオキシド)を中性のブロックとして含む。これは、遺伝子キャリアーとして有効であるが、遺伝子治療におけるDNA搬送と細胞内でのDNA発現機構に関しては系統的な知見が示されておらず、経験上の蓄積が圧倒的である。従って、遺伝子治療用のポリマー構造、およびそのポリマーとDNAからの複合体に関しては、多様性が求められ、改良された様々な複合体開発の必要性がますます高まっている。
ポリ(エチレンオキシド)は無毒性、生体親和性などの特徴を有するため、食品添加剤として従来から広範に使用され、最近は医療での応用にも多くの関心を集めている。ポリ(エチレンオキシド)と構造は異なるが、同様な生体親和性と無毒性を示す水溶性ポリマーとして、ポリ(エチルオキサゾリン)も最近注目を浴びるようになっている。例えば、脂質膜表面にポリ(エチルオキサゾリン)を吸着させ、それを薬剤徐放性システムに用いることができる(非特許文献6)。
遺伝子治療用のベクターの調製にポリ(エチレンオキシド)に比べ、ポリ(エチルオキサゾリン)は水分子と比較的に弱い水素結合を形成するため、親水性(水溶性)でありながら、また潜在的な疎水性(脂溶性)を有する。このような特徴は他の水溶性ポリマーには見られない。従って、ポリエチルオキサゾリンのような水溶性ポリマーと他のカチオンポリマーとを共重合体構造に合わせ持たせ、それをDNAのキャリアーとして用いることは非常に有用である。かつて、ポリ(エチレンイミン)を主鎖とし、その主鎖窒素に、側鎖としてのポリ(エチルオキサゾリン)を導入し得たグラフト共重合体の合成例は開示されている(特許文献2)。しかし、ポリ(エチルオキサゾリン)とカチオンポリマーを合わせ持つブロック共重合体の合成例は未だにない。
ポリ(エチレンイミン)が遺伝子治療に適切なカチオンポリマーであることは多くの研究から実証されているが、そのカチオンポリマーと中性のポリマーとして、無毒性で生体親和性に優れ、かつ親水性と疎水性とを併せ持つポリ(エチルオキサゾリン)とから構成される共重合体の開発、および該共重合体とDNAとの複合体の構築は、優れた特性を有する生体高分子キャリアーの実現、特に遺伝子治療用ベクターを実現するための重要な課題である。
特開2000−135082号公報 特開平08−120035号公報 O. Boussif et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995年、第92巻、pp7297-7301. M.X. Tang et al., Gene Therapy, 1997年、第4巻、pp823-832. H. Pollard et al., J. Biol. Chem. 1998年、第273巻、pp7507-7511. V. Serguei et al., Bioconjugate Chem. 1998年、第9巻、pp805-812. Y. Akiyama etal., Macromolecules, 2000年、第33巻、pp5841-5845 M. C. Woodle et al., Bioconjugate Chem. 1994年、第5巻、pp493-496.
本発明が解決しようとする課題は、無毒性で生体親和性に優れ、かつ親水性と疎水性とを併せ持つポリ(エチルオキサゾリン)を構造中に有し、安定に生体物質を保持できるポリイオン会合体、および該会合体からなる生体物質キャリアーを提供することにある。
遺伝子治療などの生体物質のキャリアーとして使用するポリマーは、生体親和性とカチオン性の二つの要素を満たさなければならない。本発明においては、カチオン性の親水性ポリマー単位としてポリ(エチレンイミン)を使用することにより、これら生体親和性とカチオン性を充足できる。さらに、非イオン性の親水性ポリマー単位としてポリ(エチルオキサゾリン)を選定し、この二つのポリマー骨格から構成されたブロック共重合体と、前記カチオン性のポリ(エチレンイミン)単位と結合し得るアニオン性基を有する生体高分子とを水中で混合させ、両者をイオン結合させることにより、イオン結合部分が水不溶性となり、ポリイオンミセルの固体状粒子を形成できる。その固体状粒子周囲は非イオン性親水性部分により被われ、水中安定したコロイド粒子を容易に形成することができる。得られるコロイド粒子は内部にはDNAが取り込まれ、その外部は水溶性状態のコロナが存在する。そのコロナを形成する部分が生体親和性、さらには生体接着性を有するポリ(エチルオキサゾリン)である。
また、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックを有するブロック共重合体を用いることで、該ブロック共重合体とアニオン性生体物質、例えばDNAとが、イオン結合した会合体によりコロイド状粒子が得られる。このコロイド粒子は、内層と外層という層構造に分かれているが、内層はカチオンポリマーであるポリ(エチレンイミン)ブロックとDNAなどのアニオン性生体物質とのイオン会合体であり、外層は親水性ポリマーであるポリ(エチルオキサゾリン)ブロックである。親水性ポリマー層はコロイド粒子の物理的な安定性を高める働きをするだけではなく、DNAなどの生体物質と外部物質と接触を防ぐ働きもする。
すなわち本発明は、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有するブロック共重合体、およびアニオン性の生体物質とからなり、前記ブロック共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とがイオン結合したポリイオン会合体、および該ポリイオン会合体からなる生体物質キャリアーを提供するものである。
本発明のポリイオン会合体は、生体物質キャリアーとして有用なポリ(エチレンイミン)ブロックと、無毒性で生体親和性に優れ、かつ親水性と疎水性とを併せ持つポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有するブロック共重合体をキャリアー用ポリマーとして使用することにより、水中安定したコロイド粒子を容易に形成することができる。また、得られるコロイド粒子は外層がポリ(エチルオキサゾリン)からなるため、該コロイド粒子は物理的な安定性が高く、内部に取り込まれたDNAなどの生体物質の外部物質との接触を防ぐことができることから、生体内に注入された場合にも、ポリ(エチルオキサゾリン)の層はDNAなどの生体物質を体内の分解酵素から守り、遺伝子を標的細胞まで安全に運ぶことができる。
本発明のポリイオン会合体は、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有するブロック共重合体、およびアニオン性の生体物質とからなり、前記ブロック共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とがイオン結合したものである。
[ブロック共重合体]
上記ブロック共重合体の有するカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックは、エチレンイミンおよびそのエチレンイミンの水素がアルキル基に置換された単位から構成されたカチオン形態のものであり、親水性を有するブロックである。すなわち、主鎖窒素が二級アミン、三級アミンのプロトン化された形態、あるいは四級アンモニウム形態のものが挙げられる。なかでも、アニオン性の生体物質、特に核酸(DNA、RNA)と良好なイオン結合力を有し、かつ水素結合を形成できる二級アミン類のポリエチレンイミンを使用することがより好ましい。
また、上記ブロック共重合体の有するポリ(エチルオキサゾリン)ブロックは、該ブロックを構成するエチルオキサゾリン構造が良好な親水性を有すると共に、潜在的な疎水性をも有する。さらに、ポリ(エチルオキサゾリン)は無毒性であり、生体親和性、生体接着性などにも優れることから、本発明のブロック共重合体は遺伝子治療用をはじめとする生体物質キャリアー用のポリマーとして好適に使用できる。
上記ブロック共重合体は、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有し、該カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とのイオン結合部分が水不溶性となることにより、その構造中に親水性部分と疎水性部分とを有するポリイオン会合体を形成できる。このため該ブロック共重合体は、線状、星型状を問わず、安定なコロイド状粒子を形成することができ、さらに、その組成比を制御することによりコロイド状粒子の粒子径の制御が容易であることから、生体物質を内部に取り込んだポリイオン会合体のコロイド状粒子を得るのに極めて有効である。
上記ブロック共重合体のなかでも、特に下記式(i)
Figure 2005137253
(式中pは10〜50000の整数を表す。)
で表されるポリ(エチレンイミン)ブロックと、下記式(ii)
Figure 2005137253
(式中qは10〜5000の整数を表す。)
で表されるポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有し、前記式(i)で表されるポリ(エチレンイミン)ブロックがカチオン化されてなるブロック共重合体は、特に生体物質キャリアー用途に好適に使用することができる。
上記ブロック共重合体を構成するカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとは、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックをA、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックをBと表記すると、A−B、A−B−A、B−A−B、A−B−A−B−・・・のように結合しているものであり、なかでも、ブロック共重合体の一分子鎖中のブロック数が、コロイド状粒子を形成しやすいジブロックまたはトリブロックであることが好ましく、各々のブロックが直鎖状であることが好ましい。
上記ブロック共重合体としては、下記式(1)あるいは下記式(2)で表される構造が代表的な構造としてあげられる。
X−(A−B)n、またはX−(B−A)n (1)
(式(1)中、Xは1価以上の重合開始化合物残基、Aはカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロック、Bは非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロック、nはXの価数の範囲内で、少なくとも1の整数である。)
[X−(A−B)n]m−Y、または[X−(B−A)n]m−Y (2)
(式(2)中、Xは一価以上の重合開始化合物残基、Yは一価以上の末端化合物残基、Aはポリ(エチレンイミン)ブロック、Bはポリ(エチルオキサゾリン)ブロック、nはXの価数の範囲内で少なくとも1の整数、mはYの価数の範囲内で少なくとも1の整数である。)
上記式(1)および(2)中の1価以上の重合開始化合物としては、カチオン開環リビング重合の開始剤であり、低分子化合物と高分子化合物のいずれでもよい。かかる重合開始剤としては、好ましくは1〜12価のもので、その価数に応じてカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロック、または非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックと結合している。そのため、該重合開始剤の価数が1および2の場合には、直鎖状のブロック共重合体となり、それ以上の価数であれば星型のブロック共重合体、特にベンゼン骨格の6価では典型的な星型のものとなる。
かかる低分子化合物類の重合開始剤としては、分子中に塩化アルキル基、臭化アルキル基、ヨウ化アルキル基、トルエンスルホニルオキシ基、あるいはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基などの官能基を有する化合物を用いることができる。具体的には、たとえば、塩化メチルベンゼン、臭化メチルベンゼン、ヨウ化メチルベンゼン、トルエンスルホン酸メチルベンゼン、トリフルオロメチルスルホン酸メチルベンゼン、臭化メタン、ヨウ化メタン、トルエンスルホン酸メタンまたはトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメチルスルホン酸無水物、5−(4−ブロモメチルフェニル)−10,15,20−トリ(フェニル)ポルフィリン、ブロモメチルピレンなどの1価のもの、ジブロモメチルベンゼン、ジヨウ化メチルベンゼン、などの2価のもの、トリブロモメチルベンゼンなどの3価のもの、テトラブロモメチルベンゼン、テトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン、テトラブロモエトキシフタロシアニンなどの4価のもの、ヘキサブロモメチルベンゼンなどの5価以上のものが挙げられる。
これらの中でも、臭化アルキル、ヨウ化アルキル、トルエンスルホン酸アルキル、トリフルオロメチルスルホン酸アルキルは重合開始効率が高く、特に臭化アルキル、トルエンスルホン酸アルキルを使用するのが好ましい。
高分子化合物の重合開始剤としては、たとえば、ポリ(エチレングリコール)の末端炭素原子に臭素原子あるいはヨウ素原子が結合したもの、末端酸素原子にトルエンスルホニル基が結合したものなどを使用することができる。その場合、ポリ(エチレングリコール)の分子量は800〜10000であればよく、1500〜5000であれば特に好適である。
上記式中の1価以上の末端化合物としては、実質的にカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックまたは非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックの末端を停止するものであり、好ましくは1〜12価のもので、その価数に応じてイオン性の親水性ポリマーブロックAまたは非イオン性の親水性ポリマーブロックBの末端で結合している。そのため、該化合物の価数が1および2の場合には、直鎖状の水溶性ブロック共重合体となり、それ以上の価数であれば星型やその複数の結合体である水溶性ブロック共重合体となる。
かかる末端化合物の具体的なものとしては、5−(4−アミノフェニル)−10,15,20−トリ(フェニル)ポルフィリン、テトラ(4−アミノフェニル)ポルフィリン、アミノピレン、5−(4−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリ(フェニル)ポルフィリン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、テトラ(3,5−ジヒドロキシフェニル)ポルフィリン、アミノメチルピレン、テトラアミノフタロシアニンなどが挙げられ、これらの化合物は、置換基を有していてもよい。
なお、本発明に使用するブロック共重合体は、重合開始剤残基を有しているが、必ずしも上記末端化合物の残基を有していなくともよく、その場合重合開始剤から解離した基や水素が結合している。
本発明に使用するブロック共重合体は、質量平均分子量が1000〜1000000の範囲、特に5000〜100000の範囲とすることでコロイド安定性が向上するため好ましい。また、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックの重合度としては10〜50000の範囲、特に20〜500の範囲であることが好ましく、非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックの重合度としては10〜5000の範囲、特に20〜500の範囲とすることが好ましい。各々のブロックの重合度を上記範囲とすることにより、共重合体の取扱いの容易さやカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質との会合効率を向上させることができる。
また、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとの比率は、そのポリマーを形成する構造単位のモル比(エチレンイミン単位)/(エチルオキサゾリン単位)で5/1〜1/5の範囲とすることが好ましい。両者のモル比を該範囲とすることにより、ポリ(エチレンイミン)ブロックの有する優れた生体物質キャリアーとしての特性を損なうことなく、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックの有する特性を充分に発現できる。
[ブロック共重合体の製造方法]
本発明において使用するブロック共重合体を合成する方法としては、その前駆共重合体である、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとから構成されるブロック共重合体(以下、該ブロック共重合体を前駆共重合体と略記する。)のポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックを優先的に加水分解することにより得られる。
前駆共重合体は、2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンを、前記した重合開始化合物の存在下でカチオン開環リビング重合した後、得られたリビングポリマーに、さらに2−エチル−2−オキサゾリンを重合させることによって得ることができる。また、2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンの重合と、2−エチル−2−オキサゾリンの重合を交互に繰り返すことによって、多ブロックの前駆共重合体とすることもできる。
ここで使用する重合開始化合物の価数が1および2の場合には、直鎖状のブロック共重合体となり、それ以上の価数であれば星型のブロック共重合体が得られる。
上記カチオン開環リビング重合において使用できる溶媒としては、公知慣用の非プロトン性の不活性溶媒や非プロトン性の極性溶媒などを使用することができる。
目的のブロック共重合体は、得られた前駆共重合体中のポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックを優先的に加水分解反応させることにより得られるが、該加水分解反応はエマルジョン状態で行う必要がある。
ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロック、およびポリ(エチルオキサゾリン)ブロックは、いずれも水溶性であるが、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロック、およびポリ(メチルオキサゾリン)ブロックに比べて、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックの方が有機溶媒に対して高い溶解性を有することから、前駆共重合体の水溶液に、ポリ(エチルオキサゾリン)を溶解するが水とは非相溶の有機溶媒を混合して攪拌すると、(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックは水相に溶解し、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックは有機溶媒相に溶解してエマルジョンを形成する。この場合、前駆共重合体は、乳化剤として作用する。該エマルジョンはO/W型であってもW/O型のいずれであってもよい。
該エマルジョン形成時に使用する有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、メトキシベンゼン、トルエン、およびこれらの混合溶媒などを使用できる。
エマルジョン形成後、水相に加水分解触媒として、酸またはアルカリを添加してポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックを優先的に加水分解させる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸など通常の無機酸類を、またアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど通常の無機アルカリ類を使用することができる。
O/W型エマルジョンを反応場とする場合を例に挙げると、水相の酸またはアルカリの濃度は、加水分解されるポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックを構成するモノマー単位のモル数の少なくとも2倍相当量であればよく、50倍以内とするのが好ましい。50倍を超えると、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックが加水分解を受けやすくなる。最も好ましい範囲は2〜5倍である。
加水分解反応温度は100℃以下が好ましく、使用する酸またはアルカリの濃度に合わせて設定するとよい。酸またはアルカリの濃度が高い場合は、温度を低く、たとえば室温程度に設定し、酸またはアルカリの濃度が低い場合は、反応温度を高めに設定するとよい。
酸を用いたO/W型エマルジョンの加水分解反応系では、反応の進行に伴って反応系内でのO/W型エマルジョンが水中ミセルに変換するので、そのミセルの形成を目安として、反応の終点を判断することができる。たとえば、反応の初期においては、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックは水相に溶解してO/W型エマルジョンを形成するが、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックが塩酸存在下に加水分解されて生成するポリ(エチレンイミン)ブロックの塩酸塩は、酸性の水相ではポリマー結晶となる。該ポリマー結晶は酸性の水相に不溶であるためエマルジョンが破壊され、その結果、該ポリマー結晶がコアとなり、そのまわりを水溶性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックが覆ったコア−コロナ型のミセルが形成される。水相は不透明なミセル分散液となり、有機溶媒は油滴ではなく、油相として水相から分離する。この現象は視覚によって明確に観測でき、反応の終点の目安とすることができる。
一般的に、加水分解反応は2〜48時間が好適であるが、酸の濃度、反応温度などの条件によって適宜選択すればよい。上記加水分解反応によって、前駆共重合体のポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(メチルオキサゾリン)ブロックが優先的に加水分解されてポリ(エチレンイミン)ブロックとなり、目的のブロック共重合体が得られるが、この際、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックもいくらか加水分解を受けてエチレンイミン単位となる。
しかし、この加水分解反応は、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロック中のランダムな位置で起こるのではなく、水と非相溶の有機溶媒中に溶解しているポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックが、撹拌や分子鎖の熱運動によって水相に引き出された部分で起こる。すなわち、ポリ(エチレンイミン)ブロックに隣接した部分の(エチルオキサゾリン)単位が加水分解される結果、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックが加水分解を受けなかった場合と比較して、単に、目的のブロック共重合体中のポリ(エチレンイミン)ブロックの分子鎖長が幾分長くなり、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックの分子鎖長が幾分短くなるにすぎない。
得られたブロック共重合体中のエチレンイミンの窒素原子を酸性条件でプロトン化することにより、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとからなるブロック共重合体を得ることができる。
上記合成方法において、O/W型エマルジョンを形成させるための好ましい配合例は、目的のブロック共重合体1gに対し、水5〜40ml、水と非相溶の有機溶媒は0.5〜6mlである。
[アニオン性生体物質]
アニオン性の生体物質としては、上記したカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとイオン結合して水不溶性となる物質であればよい。このような生体物質としては、その構造中にアニオン性基を有するDNA、蛋白質、細胞、あるいはウイルスなどが挙げられる。
このようなアニオン性の生体物質としては、特に遺伝子と関わる物質を用いることが好ましく、それらは核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドの如きDNAまたはRNAなどの物質であることが好ましい。
上記核酸は核酸の断片もしくは核酸の一部であってもよい。また、核酸として、一本鎖もしくは二本鎖、線状鎖もしくは環状鎖、天然もしくは合成の如き、DNAまたはRNAの断片であってもよいが、遺伝子治療用核酸としては、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、tRNA、アンチセンスRNA、リボソームRNA、リボザイム、あるいはRNAをコードするDNAなどが特に好ましい。
[コロイド粒子]
本発明のコロイド状粒子は、上記ブロック共重合体と、上記生体物質とを水に溶解した水溶液を攪拌または振動させるか、あるいは上記ブロック共重合体の水溶液と上記生体物質の水溶液とを攪拌または振動下で混合させることにより、容易に得ることができる。水溶液中で、共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、生体物質中のアニオン性基とがイオン結合し、該イオン結合部分が水不溶性となる。使用する共重合体、あるいは生体物質は、各々単一種類のみを使用しても、構造の異なる複数種類を使用してもよい。
ブロック共重合体と生体物質との比率は、共重合体中のカチオン性基の総モル数と、着色性化合物アニオン性基の総モル数との比が10/1〜1/4の範囲であれば本発明の生体物質が含まれるコロイド粒子を好適に調整でき、2/1〜1/2の範囲であればより好ましい。
得られるコロイド粒子は、共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと前記生体物質とのアニオン結合部、例えば生体物質が核酸である場合のリン酸アニオン結合部分が水不溶性となることに由来し、さらに該生体物質と結合した部分同士は疎水結合により一定大きさのポリイオン会合体に成長する。このポリイオン会合体周囲は非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックからなる親水性部分により被われ、イオンコンプレックスミセルであるコロイド粒子を容易に形成することができる。
共重合体が星状のブロック共重合体である場合には、星状の中心部分がカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックの末端と結合した構造、あるいは星状の中心部分が非イオン性のポリ(エチルオキサゾリン)ブロックと結合した構造があり得るが、いずれの構造においても、カチオン性の(ポリエチレンイミン)ブロックと生体物質とがイオン結合した水不溶性部分が疎水会合してコロイド粒子状に成長することができる。
得られるコロイド粒子の粒径は、使用する共重合体の重合度、および共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックの組成を調整することにより容易に制御することができ、重合度が大きいほど、あるいはイオン性の親水性ポリマー単位(a)の組成が大きいほど、その粒径は大きくなる傾向がある。これら重合度やカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックの組成は、使用する共重合体の種類により適宜調整する必要があるが、コロイド粒子の平均粒径は20nm〜5μm程度の範囲に制御することができる。
本発明のコロイド粒子は、カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とのイオン結合により形成された内層の周囲に、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックからなる外層を形成しているため物理的な安定性が高く、また、内部に取り込まれたDNAなどの生体物質の外部物質との接触を防ぐことができることから、生体内に注入された場合にも、ポリ(エチルオキサゾリン)の層はDNAなどの生体物質を体内の分解酵素から守り、遺伝子を標的細胞まで安全に運ぶことができる。
以下、実施例および参考例によって本発明をさらに具体的に説明する。
特に断らない限り、「%」は「質量%」を表す。
<分子量測定法>
東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフィー「HLC−8000」(RI検出器、TSKge12000x1+3000Hxl+5000Hxl+guardcolumnHx1−H、溶媒ジメチルホルムアミド、流速1.0ml/分、温度40℃)を使用して測定した。
<粒径および粒径分布の測定法>
日機装株式会社製UPA粒度分析計「Microtrac 9203」(レーザー光波長780nm、反射角180o、温度25℃)を使用して、動的光散乱(DLS)法による粒径および粒径分布を測定した。
(合成例1)
<星型ブロック共重合体の前駆体(1−1)の合成>
内部をアルゴンガスで置換した反応容器に、四官能性のカチオン開環リビング重合開始剤であり、星型のブロック前駆体の核(1)となるテトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン0.022g(0.027mmol)、ヨウ化ナトリウム0.12g、およびN,N−ジメチルアセトアミド6mlを加え、室温で3時間攪拌した。この溶液に、2-エチル-2-オキサゾリン0.99g(10mmol)を加え、100℃に昇温し24時間撹拌した。
反応液温度を60℃に下げた後、2−メチル−2−オキサゾリン1.53g(18mmol)を加え、100℃に昇温して24時間攪拌した。反応混合液の温度を室温に下げ、メタノール10mlを加えた後、反応混合液を減圧濃縮した。この濃縮液をジエチルエーテル100ml中に注いで、重合体を沈殿させた。
得られた重合体のメタノール溶液を、ジエチルエーテル中に注いで再沈殿させ、吸引濾過後、濾過物を真空乾燥し、星型のブロック前駆体(1−1)2.4gを得た。収率は95%であった。
分子量測定およびH−NMR測定した結果、その質量平均分子量が25800、その分子量分布が1.72であった。
1H−NMR(δTMS=0,CDCl)測定からメチルオキサゾリンブロックにおける側鎖メチル基のシグナル(CH:1.97ppm)と、エチルオキサゾリンブロックにおける側鎖エチル由来のシグナル(CH:1.14ppm,CH:2.41ppm)および両ブロックの主鎖エチレンシグナル(CHCH:3.45ppm)を確認した。また、星型ポリマー中心に位置するポルフィリン骨格のピロール環のプロトンは8.82ppmに現れた。1H−NMR測定による積分比から、メチルオキサゾリンブロックと、エチルオキサゾリンブロックのモル組成比は71:29であることがわかった。
<星型の水溶性ブロック共重合体(1−2)の合成>
上記でのブロック前駆体(1−1)0.5gを、15mLのクロロホルム中に溶解させた後、それに5mol/lの塩酸水溶液0.8mlを加えた。この混合液を撹拌してW/O型エマルジョンを得た。該エマルジョンを60℃に加熱し、48時間攪拌した。反応液にアセトン50mlを加えて重合体を沈殿させた後、吸引濾過し、アセトンで洗浄した。得られた重合体を乾燥し、エチレンイミンブロックと、エチルオキサゾリンブロックとからなる分子鎖を有する水溶性ブロック共重合体(1−2)0.45gを得た。
分子鎖中のエチレンイミンブロックと、エチルオキサゾリンブロックのモル組成比は79:21であった。この星型の水溶性ブロック共重合体は、核にポルフィリン構造を有するため、該ブロック共重合体水溶液の吸収スペクトルにおいて、ポルフィリンに固有のソレー(Soret)帯に由来する420nm(free base)の強い吸収が観測された。
(合成例2)
<比較用星型ポリエチレンイミンの合成>
内部をアルゴンガスで置換した反応容器に、四官能性のカチオン開環リビング重合開始剤であり、星型のブロック前駆体の核(1)となるテトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン0.022g(0.027mmol)、ヨウ化ナトリウム0.12g、およびN,N−ジメチルアセトアミド6mlを加え、室温で3時間攪拌した。この溶液に、2−メチル−2−オキサゾリン1.53g(18mmol)を加え、100℃に昇温し24時間撹拌した。反応混合液の温度を室温に下げ、メタノール10mlを加えた後、反応混合液を減圧濃縮した。この濃縮液をジエチルエーテル50ml中に注いで、重合体を沈殿させた。得られた重合体を再び5mLのメタノールに溶解させた後、50mLのジエチルエーテル中再沈殿させ、吸引濾過後、濾過物を真空乾燥し、星型のポリメチルオキサゾリン1.47gを得た。収率は95%であった。
分子量測定およびH−NMR測定した結果、その質量平均分子量が19800、その分子量分布が1.5であった。
1H−NMR(δTMS=0,CDCl)測定からエチルオキサゾリンブロックにおける側鎖メチル基のシグナル(CH:1.97ppm)と主鎖エチレンシグナル(CHCH:3.45ppm)を確認した。
上記で得た星型ポリ(メチルオキサゾリン)0.5gを5mol/lの塩酸水溶液4mlに溶解した。この溶液を90℃に加熱し、7時間攪拌した。反応液温度を室温まで下げた後、アセトン20mlを加えて重合体を完全に沈殿させた。吸引濾過後、アセトンで数回洗浄し、得られた重合体粉末を乾燥し、星状ポリ(エチレンイミン)0.42gを得た。1H−NMRにより、メチルオキサゾリンのメチル基由来の1.97ppmのシグナルが完全に消失したことを確認した。
(実施例1)
<星型の水溶性ブロック共重合体(1−2)とDNAとのポリイオン会合体>
合成例1で得た星型の水溶性ブロック共重合体(2−1)0.015gを1mlの蒸留水に溶解し、この溶液を、サケの精子から抽出したDNAの水溶液4ml(濃度2.2mg/ml)中に滴下し、1時間攪拌した。該分散液について、動的光散乱法によって、星型の水溶性ブロック共重合体(2−1)とDNAとのポリイオン会合体の粒子形成を確認したところ、平均粒径が146nmとなる単分散状態のナノ粒子が観測された。さらに、この分散液に、0.2gの食塩を加え、塩濃度を0.69mol/lに調製し、再び会合粒子の粒径を確認したところ、平均中心粒径は172nmであった。DNAを含むナノ粒子は、これほどの高濃度の食塩中でも全く凝集することなく、これを半年間放置した後にも粒径変化は起こらず、きわめて高い安定性を保持した。この安定性の高さは、星型の水溶性ブロック共重合体(1−2)のエチルオキサゾリンブロックがイオン会合コアを取り囲む水溶性コロナ層を形成したことを強く示唆する。この中性のコロナ層が塩の静電気的な遮蔽効果を弱める働きをしたと推測できる。
<ポリイオン会合体の31P−NMR測定>
星型の水溶性ブロック共重合体(1−2)とDNAとのポリイオン会合体には、核酸のリン酸基が取り込まれるが、それのNMRシグナルを測定した。星型の水溶性ブロック共重合体(1−2)19mgと鮭の精子から抽出されたDNA9mgを0.6mLの重水中に溶解させ、ポリイオン会合体のコロイド液を調製した。このコロイド分散液中の燐原子のシグナルは0.35ppmで現れた。これはDNA単独の場合、燐原子シグナルが−160ppmに現れることと大きく異なった。即ち、水溶性ブロック共重合体(1−2)とDNAとのポリイオン会合体はエチレンイミンのカチオンとDNA中のリン酸基のアニオンとのイオン結合により形成されたことを示唆する。
(比較例1)
<星型の水溶性ポリ(エチレンイミン)とDNAとのポリイオン会合体>
合成例2で得た星型ポリ(エチレンイミン)0.015gを1mlの蒸留水に溶解し、この溶液を、サケの精子から抽出したDNAの水溶液4ml(濃度2.2mg/ml)中に滴下し、1時間攪拌した。該分散液について、動的光散乱法によって、星型ポリエチレンイミンとDNAとのポリイオン会合体の粒子形成を確認したところ、平均粒径が68nmであった。この分散液に、0.2gの食塩を加え、塩濃度を0.69mol/lに調製したところ、系内では凝集による沈殿が生じた。この沈殿は加熱または超音波処理でも解くことができなかった。これは実施例1でのポリイオン会合体が食塩存在下でも安定性を保つ結果と対照的であり、本発明でのポリ(エチレンイミン)とポリ(エチルオキサゾリン)から構成されたブロック共重合体がDNAのキャリアーとしての有効性を示唆することと考えられる。

Claims (11)

  1. カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと、ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとを有するブロック共重合体、およびアニオン性の生体物質とからなり、前記ブロック共重合体中のカチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックとアニオン性の生体物質とがイオン結合したポリイオン会合体。
  2. 前記ブロック共重合体が下記一般式(1)
    X−(A−B)n、またはX−(B−A)n (1)
    (式(1)中、Xは一価以上の重合開始化合物残基、Aはポリ(エチレンイミン)ブロック、Bはポリ(エチルオキサゾリン)ブロック、nはXの価数の範囲内で少なくとも1の整数である。)で表され、かつ質量平均分子量が1000〜100000の範囲である請求項1に記載のポリイオン会合体。
  3. 前記ブロック共重合体が下記一般式(2)
    [X−(A−B)n]m−Y、または[X−(B−A)n]m−Y (2)
    (式(2)中、Xは一価以上の重合開始化合物残基、Yは一価以上の末端化合物残基、Aはポリ(エチレンイミン)ブロック、Bはポリ(エチルオキサゾリン)ブロック、nはXの価数の範囲内で少なくとも1の整数、mはYの価数の範囲内で少なくとも1の整数である。)で表され、かつ質量平均分子量が3000〜100000の範囲である請求項1に記載のポリイオン会合体。
  4. 前記カチオン性のポリ(エチレンイミン)ブロックと前記ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックとの比率が、各々のポリマーを形成する構造単位のモル比(エチレンイミン単位)/(エチルオキサゾリン単位)で5/1〜1/5の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  5. 前記ポリ(エチレンイミン)ブロックが、下記式(i)
    Figure 2005137253
    (式中pは10〜50000の整数を表す。)
    で表される直鎖状ポリ(エチレンイミン)、であり、前記ポリ(エチルオキサゾリン)ブロックが、下記式(ii)
    Figure 2005137253
    (式中qは10〜5000の整数を表す。)
    で表される直鎖状ポリ(エチルオキサゾリン)である請求項1〜4のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  6. 前記Xが1〜12価の重合開始化合物残基である請求項2〜5のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  7. 前記Yが1〜12価の末端化合物残基である請求項3〜5のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  8. 前記Xが、ベンゼン骨格、ポルフィリン骨格、フタロシアニン骨格、またはピレン骨格のいずれかの骨格を有する重合開始化合物の残基である請求項2〜7のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  9. 前記生体物質が核酸である請求項1〜8のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  10. コロイド粒子状である請求項1〜9のいずれかに記載のポリイオン会合体。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー。
JP2003376800A 2003-11-06 2003-11-06 ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー Expired - Fee Related JP4368183B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003376800A JP4368183B2 (ja) 2003-11-06 2003-11-06 ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003376800A JP4368183B2 (ja) 2003-11-06 2003-11-06 ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005137253A true JP2005137253A (ja) 2005-06-02
JP4368183B2 JP4368183B2 (ja) 2009-11-18

Family

ID=34687734

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003376800A Expired - Fee Related JP4368183B2 (ja) 2003-11-06 2003-11-06 ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4368183B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102013016750A1 (de) * 2013-10-02 2015-04-02 Friedrich-Schiller-Universität Jena Neue Poly(ethylenimin) basierte Copolymere zur Anbindung und Freisetzung von genetischem Material, insbesondere von DNA/RNA, sowie Verfahren zu deren Herstellung und Verwendung
WO2016032940A1 (en) * 2014-08-26 2016-03-03 Novartis Ag Poly(oxazoline-co-ethyleneimine)-epichlorohydrin copolymers and uses thereof
CN110723910A (zh) * 2019-10-23 2020-01-24 东南大学 一种控制细胞黏附和脱离的细胞培养材料及制备方法
JP2020512448A (ja) * 2017-03-14 2020-04-23 フリードリヒ−シラー−ユニバーシタット イエナ ポリ(オキサゾリン)安定化剤を含有する有機ポリマー粒子および有機ポリマー粒子の安定化のためのポリ(オキサゾリン)の使用

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102013016750A1 (de) * 2013-10-02 2015-04-02 Friedrich-Schiller-Universität Jena Neue Poly(ethylenimin) basierte Copolymere zur Anbindung und Freisetzung von genetischem Material, insbesondere von DNA/RNA, sowie Verfahren zu deren Herstellung und Verwendung
US10131747B2 (en) 2013-10-02 2018-11-20 Smartdyelivery Gmbh Poly(ethylene imine)-based copolymers for bonding to and releasing genetic material, in particular DNA/RNA, and method for the production and use of same
WO2016032940A1 (en) * 2014-08-26 2016-03-03 Novartis Ag Poly(oxazoline-co-ethyleneimine)-epichlorohydrin copolymers and uses thereof
KR20170045253A (ko) * 2014-08-26 2017-04-26 노파르티스 아게 폴리(옥사졸린-Co-에틸렌이민)-에피클로로히드린 공중합체 및 그의 용도
CN106661224A (zh) * 2014-08-26 2017-05-10 诺华股份有限公司 聚(噁唑啉‑共‑乙烯亚胺)‑表氯醇共聚物及其用途
US9720138B2 (en) 2014-08-26 2017-08-01 Novartis Ag Poly(oxazoline-co-ethyleneimine)-epichlorohydrin copolymers and uses thereof
CN106661224B (zh) * 2014-08-26 2019-10-11 诺华股份有限公司 聚(噁唑啉-共-乙烯亚胺)-表氯醇共聚物及其用途
KR102397772B1 (ko) 2014-08-26 2022-05-13 알콘 인코포레이티드 폴리(옥사졸린-Co-에틸렌이민)-에피클로로히드린 공중합체 및 그의 용도
JP2020512448A (ja) * 2017-03-14 2020-04-23 フリードリヒ−シラー−ユニバーシタット イエナ ポリ(オキサゾリン)安定化剤を含有する有機ポリマー粒子および有機ポリマー粒子の安定化のためのポリ(オキサゾリン)の使用
JP7193470B2 (ja) 2017-03-14 2022-12-20 フリードリヒ-シラー-ユニバーシタット イエナ ポリ(オキサゾリン)安定化剤を含有する有機ポリマー粒子および有機ポリマー粒子の安定化のためのポリ(オキサゾリン)の使用
CN110723910A (zh) * 2019-10-23 2020-01-24 东南大学 一种控制细胞黏附和脱离的细胞培养材料及制备方法
CN110723910B (zh) * 2019-10-23 2021-12-07 东南大学 一种控制细胞黏附和脱离的细胞培养材料及制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4368183B2 (ja) 2009-11-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Li et al. Integrated POSS-dendrimer nanohybrid materials: current status and future perspective
Fan et al. Conjugation of poly (ethylene glycol) to poly (lactide)-based polyelectrolytes: An effective method to modulate cytotoxicity in gene delivery
Jin et al. Biocompatible or biodegradable hyperbranched polymers: from self-assembly to cytomimetic applications
Zhang et al. Architecture, self-assembly and properties of well-defined hybrid polymers based on polyhedral oligomeric silsequioxane (POSS)
Kang et al. Stereocomplex block copolymer micelles: Core− shell nanostructures with enhanced stability
Chen et al. Dual stimuli‐responsive supramolecular polypeptide‐based hydrogel and reverse micellar hydrogel mediated by host–guest chemistry
JP5671553B2 (ja) 生分解性ポリマ、遺伝子治療および薬物送達のためのその複合体、ならびにそれに関連する方法
Du et al. Preparation of biocompatible zwitterionic block copolymer vesicles by direct dissolution in water and subsequent silicification within their membranes
TWI363771B (en) Organo-inorganic compound nanofiber, organo-inorganic compound structrue, and method for producing the same
Wu et al. Direct aqueous self-assembly of an amphiphilic diblock copolymer toward multistimuli-responsive fluorescent anisotropic micelles
Tu et al. Enhancement of cellular uptake and antitumor efficiencies of micelles with phosphorylcholine
US7645828B2 (en) Monodisperse silica spheres containing polyamine and process for producing the same
KR101286854B1 (ko) 폴리락트산(a)과 폴리에틸렌글리콜(b)로 이루어진 bab형 삼중 블록 공중합체, 이의 제조방법 및 이를 이용한 약물전달체
Zhao et al. Thermosensitive micelles from PEG-based ether-anhydride triblock copolymers
JP4226016B2 (ja) ポリアミンを含む単分散性シリカ微粒子及びその製造方法
Daubian et al. One-pot synthesis of an amphiphilic ABC triblock copolymer PEO-b-PEHOx-b-PEtOz and its self-assembly into nanoscopic asymmetric polymersomes
Yuan et al. PEG-detachable and acid-labile cross-linked micelles based on orthoester linked graft copolymer for paclitaxel release
Li et al. Synthesis and self-assembly behavior of pH-responsive star-shaped POSS-(PCL-P (DMAEMA-co-PEGMA)) 16 inorganic/organic hybrid block copolymer for the controlled intracellular delivery of doxorubicin
Alavi et al. Hyperbranched–dendrimer architectural copolymer gene delivery using hyperbranched PEI conjugated to poly (propyleneimine) dendrimers: synthesis, characterization, and evaluation of transfection efficiency
Wang et al. Bioreducible and core‐crosslinked hybrid micelles from trimethoxysilyl‐ended poly (ε‐caprolactone)‐S‐S‐poly (ethylene oxide) block copolymers: Thiol‐ene click synthesis and properties
JP6238263B2 (ja) 芳香族n−複素環を有する薬物デリバリ用ポリカーボネート
JP4368183B2 (ja) ポリイオン会合体およびポリイオン会合体からなる生体物質キャリアー
Wang et al. Morphological evolution of self-assembled structures induced by the molecular architecture of supra-amphiphiles
Zeng et al. Poly (L-lysine)-based cylindrical copolypeptide brushes as potential drug and gene carriers
Hoskins et al. Novel fluorescent amphiphilic poly (allylamine) and their supramacromolecular self‐assemblies in aqueous media

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061012

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20061012

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090730

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090804

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090825

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090825

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120904

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120904

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130904

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees