JP2005126788A - 樹脂成形体の表面硬化方法及び表面硬化された樹脂成形体 - Google Patents

樹脂成形体の表面硬化方法及び表面硬化された樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性の低下や界面での接着不良といった問題を引き起こすことなく、樹脂成形体の表面近傍のみの弾性率を著しく向上せしめて十分に高硬度化することが可能な樹脂成形体の表面硬化方法、並びにそれによって表面の耐傷つき性及び耐摩耗性が飛躍的に向上した表面硬化された樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】 金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を発生させ、樹脂成形体の表面近傍領域に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を侵入させて金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子を分散せしめることを特徴とする樹脂成形体の表面硬化方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂成形体の表面硬化方法、並びにその方法により表面が硬化された樹脂成形体に関する。
樹脂フィルム等の樹脂成形体の表面を硬化(高硬度化)させる方法としては、樹脂成形体の表面に樹脂より弾性率(ヤング率)の高い金属や金属化合物からなる硬質薄膜を形成させる方法が知られており、いわゆるハードコート法、スパッタリング法等が一般的である。また、他の方法として、樹脂成形体の表面近傍に高エネルギーを照射して化学的に改質する、或いは化学反応により微粒子を形成させることによって樹脂表面を硬化させる方法が開発されており、例えば特開2000−204181号公報(特許文献1)や特開2000−21019号公報(特許文献2)にはいわゆるイオンビーム照射法(イオン注入法)が、特開平4−359932号公報(特許文献3)や特開平4−354869号公報(特許文献4)にはいわゆる高速プラズマ処理法が、例えば下記の非特許文献1にはいわゆる化学薬品処理法がそれぞれ記載されている。
しかしながら、従来の樹脂成形体の表面に硬質薄膜を形成させる方法においては、樹脂表面と硬質薄膜との間の界面で弾性率が急激に変化(10倍〜100倍)するため、界面での接着不良が発生しやすく、またこのような界面での弾性率の急激な変化によりその樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)が大きく低下してしまうという問題があった。また、従来のイオンビーム照射法(イオン注入法)や高速プラズマ処理法や化学薬品処理法によれば、架橋反応に伴って樹脂表面の弾性率がある程度は上昇するものの表面硬度の向上は未だ十分なものではなく、また架橋反応に付随する化学的変質(劣化)の影響によってその樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性が低下してしまうという問題があった。
特開2000−204181号公報 特開2000−21019号公報 特開平4−359932号公報 特開平4−354869号公報 K.W.Lee et al.,IBM J.Res.Develop.,38,457(1994)
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)の低下や界面での接着不良といった問題を引き起こすことなく、樹脂成形体の表面近傍のみの弾性率を著しく向上せしめて十分に高硬度化することが可能な樹脂成形体の表面硬化方法、並びにそれによって表面の耐傷つき性及び耐摩耗性が飛躍的に向上した表面硬化された樹脂成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金属、金属化合物又は炭素からなるターゲットに所定のパルス幅及び所定の照射強度のパルスレーザー光を照射して発生せしめた真空紫外光を照射しつつ飛散粒子を樹脂成形体の表面近傍領域に侵入・分散させることにより上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法は、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を発生させ、樹脂成形体の表面近傍領域に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を侵入させて金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子を分散せしめることを特徴とする方法である。
また、本発明の表面硬化された樹脂成形体は、
樹脂成形体と、
金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して発生せしめた金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ前記樹脂成形体の表面近傍領域に侵入させてなる、前記樹脂成形体の表面近傍領域に分散している金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子と、
からなることを特徴とするものである。
なお、上記本発明によれば樹脂成形体のマクロ的物性の低下や界面での接着不良といった問題を引き起こすことなく、樹脂成形体の表面近傍のみの弾性率が著しく向上して十分な高硬度化が達成されるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光が照射されると、ターゲット表面に高温のプラズマが形成され、そのプラズマから波長50nm〜100nmの真空紫外光が発生する。また、本発明にかかるパルスレーザー光の照射強度が10W/cm以上と高いと、発生する真空紫外光の光量がより大きくなる。このような真空紫外光は炭素(炭素原子)に対する吸収率が高いので、炭素原子を含有する樹脂成形体にこの真空紫外光が照射されると、樹脂成形体表面近傍では炭素原子の外殻電子であるp電子が励起もしくは電離することにより炭素原子とその炭素原子に結合する原子との間の結合が破壊され、樹脂成形体の表面近傍が非常に活性化される。一方、上記レーザー光が照射されたターゲット表面からはターゲットを構成する材料に応じて金属原子及び/又は炭素原子を含む原子や分子が高いエネルギーをもって飛散するほか、上記プラズマ内部もしくはプラズマにより加熱されたターゲット表面では、ターゲットを構成する材料が分解(蒸発)することにより形成された中性原子、イオン、並びに前記の分子、中性原子およびイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって数百m/secという高速で飛散する。そして、このような微細でかつ高速の飛散粒子が前記真空紫外光により活性化された樹脂成形体上に到達すると、飛散粒子は高いエネルギーをもっているため樹脂成形体の表面に衝突して表面近傍領域に侵入し、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子となって均一に分散する。その際、ナノ微粒子と樹脂との間に強い相互作用が働き、ナノ微粒子と樹脂が強固に結合すると共に表面近傍領域のみにおける高分子鎖の凝集構造(結晶・非晶構造、分子運動性等)が大きく変化して弾性率が著しく向上し、樹脂表面の十分な高硬度化が達成されるようになると本発明者らは推察する。また、このように本発明においては前記飛散粒子が侵入できる表面近傍領域のみを比較的少量のナノ微粒子によって改質するものであり、しかも飛散粒子の侵入度に応じてナノ微粒子は傾斜的に分散(深くなるほどナノ微粒子は少なくなる)していることから、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)に対する影響は極めて小さく、表面が硬化されること以外は樹脂成形体が本来有する特性は維持される。さらに、前述の通りナノ微粒子と樹脂は強固に結合していることから、これらの界面において接着不良は発生しない。
ここでいう波長50nm〜100nmの真空紫外光とは、50nm〜100nmの波長領域における少なくとも一部の波長を有する真空紫外光のことをいうが、以下の条件のうちの少なくとも一つの条件を満たしていることが好ましい。
(i)50nm〜100nmの波長領域に少なくとも一つの光強度のピークを有すること、
(ii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが100nm〜150nmの波長領域の光の全エネルギーより高いこと、
(iii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが50nm以下の波長領域の光の全エネルギーより高いこと
(iv)50nm〜100nmの波長領域の光のエネルギー密度が樹脂成形体上で0.1μJ/cm〜10mJ/cm(より好ましくは1μJ/cm〜100μJ/cm)であること。なお、樹脂成形体上における前記エネルギー密度が0.1μJ/cmより低くなると処理に要する時間が過度に長くなってしまう傾向にあり、他方、10mJ/cmより高くなると樹脂成形体が分解されてしまう傾向にある。
前記本発明の樹脂成形体の表面硬化方法並びに表面硬化された樹脂成形体においては、前記樹脂成形体の表面近傍領域が樹脂成形体の表面から200nmの深さの範囲の領域であることが好ましく、樹脂成形体の表面から100nmの深さの範囲の領域であることがより好ましい。前記ナノ微粒子が200nmより深い領域まで分散してしまうと、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性に対する影響が大きくなり、樹脂成形体本来の特性が損なわれる傾向にある。
また、前記本発明の樹脂成形体の表面硬化方法並びに表面硬化された樹脂成形体においては、前記ナノ微粒子の平均粒径が1nm〜200nmであることが好ましく、3nm〜100nmであることがより好ましい。前記ナノ微粒子の平均粒径が上記下限未満では樹脂を構成する高分子鎖と分子オーダで混合し、剛直な粒子としての特徴が失われる状態となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると外部変形に対して系全体の破壊起点となり得る異物として振舞う大きさとなる傾向にある。
さらに、前記本発明の樹脂成形体の表面硬化方法においては、容器内での減圧状態下、及び/又は、容器内若しくは容器外のいずれかでの水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において前記樹脂成形体の表面近傍領域に前記ナノ微粒子を分散せしめることが好ましい。このように内部が減圧状態となっている容器を用いると、真空紫外光が空気中の酸素等の真空紫外光吸収物質に吸収されることなく樹脂成形体表面に照射され、樹脂成形体表面がより効率良く活性化される傾向にある。また、シールドガス雰囲気下で処理すると、減圧状態とせずとも真空紫外光が真空紫外光吸収物質に吸収されることなく樹脂成形体表面に照射され、樹脂成形体表面がより効率良く活性化される傾向にある。さらに、後者の場合、前者の場合に比べて真空ポンプや耐圧容器を用いる必要がなくなるため、装置の簡便性および低コストという点でより好ましい傾向にある。
本発明の樹脂成形体の表面硬化方法によれば、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)の低下や界面での接着不良といった問題を引き起こすことなく、樹脂成形体の表面近傍のみの弾性率を著しく向上せしめて十分に高硬度化することが可能となる。したがって、このような方法によって表面硬化された本発明の樹脂成形体によれば、表面の耐傷つき性及び耐摩耗性を飛躍的に向上せしめることが可能となる。
以下、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法並びに表面硬化された樹脂成形体について、それらの好適な実施形態に即して詳細に説明する。
図1は、本発明に好適な樹脂成形体の表面硬化装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図であり、図1に示す樹脂成形体の表面硬化装置はいわゆるレーザーアブレーション装置1として構成されている。すなわち、図1に示すレーザーアブレーション装置1は、レーザー光源2と、レーザー光源2から発せられたレーザー光Lが導入される処理容器3とを備えており、処理容器3の内部にはレーザー光Lが照射されるターゲット4と、樹脂成形体6とが配置されている。また、同図中の5は、樹脂成形体6の表面近傍領域を示している。
レーザー光源2は、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒のパルスレーザー光を照射することができるレーザー光発生装置であればよく、特に制限されないが、例えばYAGレーザー装置、エキシマレーザー装置によって構成され、中でもYAGレーザー装置によって構成されることが好ましい。そして、レーザー光源2は、処理容器3の内部に配置されているターゲット4に向かってレーザー光Lを照射する位置に配置されている。また、図示はしていないが、レーザー光Lをターゲット4に照射した際にターゲット4の表面から金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子aおよび真空紫外光Lが効率的に発生するように、レーザー光Lの光路の途中にレンズ、鏡等を適宜配置してレーザー光のエネルギー密度や照射角度を調整してもよい。特に、集光レンズ(図示せず)を処理容器3の内部または外部に配置して、ターゲット4に照射されるパルスレーザー光Lの照射強度が10W/cm〜1012W/cmとなるようにすることが必要であり、10W/cm〜1011W/cmとなるようにすることが特に好ましい。
処理容器3は、少なくともターゲット4と樹脂成形体6とを内部に収容するための容器(例えばステンレス鋼製の容器)であり、レーザー光Lを容器3内に配置されたターゲット4の表面に導入するための窓7(例えば石英製の窓)を備えている。また、処理容器3には真空ポンプ(図示せず)が接続されており、容器3の内部を所定圧力の減圧状態に維持することが可能となっている。このように内部が減圧状態となる容器3を用いると、真空紫外光Lが空気中の酸素等の真空紫外光吸収物質に吸収されることなく樹脂成形体6の表面に照射され、樹脂成形体6の表面がより効率良く活性化される。なお、容器3の内部を減圧状態に維持する際の圧力としては、1Torr以下の圧力が好ましく、1×10−3Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
ターゲット4は、前述のレーザー光Lの照射により金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を発生する材料からなるものであり、このような材料としては各種の金属、金属化合物及び炭素からなる群から少なくとも一つの材料が選択される。このような金属材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属、半金属(メタロイド)、又はそれらの合金を用いることができ、例えば、Cu、Al、Ti、Si、Cr、Pt、Au、Ag、Pd、Zr、Mg、Ni、Fe、Co、Zn、Sn、W、Be、Ge、Mn、Mo、Nb、Ta、Hf、それらを主成分とする合金等が挙げられ、中でもCu、Al、Ti、Si、Znが好ましい。なお、ここでいう金属材料は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、砒化ガリウム、InP、ZnTe等の半導体であってもよい。また、金属化合物材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属又は半金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられ、中でも酸化亜鉛、チタニア、アルミナ、マグネシア、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、Fe,Cr,W,Mo,V等の金属元素の炭化物が好ましい。なお、ここでいう金属化合物材料は複数の金属元素を含有していてもよく、更に非金属元素を含んでいてもよい。また、炭素材料としては、各種の無定形炭素、グラファイト、ダイアモンド等が挙げられ、中でもグラファイト、ダイアモンドが好ましい。さらに、ターゲット4は、このような金属材料、金属化合物材料、炭素材料の複合材料であってもよい。なお、ターゲット4の形状等は特に制限されず、板状、ロッド状等に成形された前記ターゲット材料からなるバルク材や、前記ターゲット材料をテープ上に塗布、蒸着等によって形成したテープ状ターゲット等を用いることができる。
樹脂成形体6は、その表面近傍領域5に前記飛散粒子が侵入しうる樹脂基材であればよく、具体的には得られる製品の用途等によって適宜決定される。このような樹脂成形体を構成する樹脂としては、オレフィン系樹脂{ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリメチルペンテン等}、ブチルゴム、ポリエステル、ポリカーボーネート、ポリアセタール、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、アクリル樹脂{ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等}、アクリルゴム、フッ素樹脂{ポリ4フッ素化エチレン等}、フッ素ゴム、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン、シリコーン樹脂(ポリシロキサン等)、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、スチレン樹脂{ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−水添ブタジエン共重合体等}、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等の重合体(単独重合体又は共重合体)並びにそれらの積層体からなる樹脂成形体が挙げられ、中でも表面の高硬度化による耐傷付き性や耐摩耗性の効果が有効なディスク基板、ガラス代替部品、摺動部品、シール部品、表皮材等に用いられる樹脂を主な対象にするという観点から、ポリカーボネート、アクリル樹脂、各種ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、フッ素樹脂、各種ポリイミド、フェノール樹脂、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、シリコーンゴム等が好ましい。また、このような樹脂成形体は、必要に応じて染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、難燃剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候性付与剤、帯電防止剤、透明性改良剤等の添加剤を適量含有していてもよい。
このような樹脂成形体6の形状や厚さは特に制限されず、得られる製品の用途等によってフィルム状、板状、各種形状の成形体等が適宜選択される。なお、樹脂成形体6が樹脂フィルムの場合、その厚さは得られる製品の用途等によって適宜選択されるが、一般的には3μm〜1mm程度が好ましく、10μm〜1mm程度がより好ましい。
上述の樹脂成形体6とターゲット4との位置的関係は特に限定されず、樹脂成形体6の表面にターゲット4の表面から発生した真空紫外光Lが確実に照射されかつ飛散粒子aが効率良く侵入するようにターゲット4に対して樹脂成形体6が適宜配置され、図1においてはターゲット4の法線に対する角度Θが45°となる位置に樹脂成形体6が配置されている。また、ターゲット4にはターゲット駆動装置(例えばターゲット回転台、図示せず)が接続され、レーザー光Lの照射位置にターゲットの新鮮な面(レーザー光未照射面)が順次繰り出されるようになっている。さらに、樹脂成形体6にも樹脂成形体駆動装置(例えば樹脂成形体回転台、図示せず)が接続され、樹脂成形体6の表面がより均一に活性化されかつ飛散粒子aがより均一に侵入するようになっていてもよい。
以上、本発明に好適な樹脂成形体の表面硬化装置の一実施形態について説明したが、本発明に好適な装置は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、上記実施形態では処理容器3が真空ポンプ(図示せず)に接続されているが、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガスおよびアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のシールドガスを導入するためのガスボンベ(図示せず)に接続されていてもよく、その場合は容器3の内部を所定のシールドガス雰囲気に維持することが可能となる。このように内部がシールドガス雰囲気となっている容器3を用いると、容器3内を減圧状態とせずとも真空紫外光Lが真空紫外光吸収物質に吸収されることなく樹脂成形体6の表面に照射され、樹脂成形体6の表面がより効率良く活性化される。また、処理容器3に真空ポンプ(図示せず)およびガスボンベ(図示せず)の双方を接続し、容器3の内部を所定のシールドガス雰囲気にすると共に所定の圧力条件に維持することが好適である。このような条件としては、例えばヘリウムガス雰囲気で大気圧以下の圧力が好ましく、500Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
また、上記実施形態ではレーザー光源2が処理容器3の外部に配置されているが、処理容器3の内部に配置されていてもよく、その場合はレーザー光Lを容器3内に導入するための窓7は不要となる。
更に、上記実施形態ではターゲット4の法線に対する角度Θが45°となる位置に樹脂成形体6が配置されているが、このような位置関係に特に限定されるものではなく、ターゲット4の法線に対する角度Θが10°〜60°程度の範囲となる位置に樹脂成形体6が配置されていてもよい。また、例えば樹脂成形体6としてレーザー光Lを透過可能なものを用い、樹脂成形体6をレーザー光源2とターゲット4との間にターゲット4に対して対向配置せしめ、樹脂成形体6を透過したレーザー光Lがターゲット4に照射されるようにしてもよい。
また、ターゲット4としてレーザー光Lを透過可能なものを用い、ターゲット4をレーザー光源2と樹脂成形体6との間に配置せしめ、ターゲット4の裏面(透明フィルム側)から表面(ターゲット材料側)に透過したレーザー光Lによってターゲット4の表面(ターゲット材料側)から真空紫外光Lおよび飛散粒子aが発生し、それらが樹脂成形体6の表面に供給されるようにしてもよい。このような構成にすると、比較的大型の樹脂成形体に対する表面硬化処理がより容易になる傾向にある。また、このような構成に用いるターゲットとしては、レーザー光に対して透明なフィルム(例えばPETフィルム)上に前述のターゲット材料を蒸着、貼着等により積層したテープ状ターゲットが好ましい。
次に、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法の好適な一実施形態、並びにそれによって得られる本発明の表面硬化された樹脂成形体の好適な一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の樹脂成形体の表面硬化方法においては、前述のターゲット4にパルス幅100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光Lがレーザー光源2から照射される。すると、ターゲット4の表面に高温のプラズマPが形成され、そのプラズマPから大光量の波長50nm〜100nmの真空紫外光Lが発生する。また、それと同時に、レーザー光Lが照射されたターゲット4の表面からはターゲットを構成する材料に応じて金属原子及び/又は炭素原子を含む分子が高いエネルギーをもって飛散するほか、プラズマP内部もしくはプラズマPにより加熱されたターゲット4の表面からは、ターゲットを構成する分子が分解することにより形成された中性原子、イオン、並びに前記の分子、中性原子およびイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって高速で飛散する。なお、パルスレーザー光Lのパルス幅が100ピコ秒未満では短時間にレーザーのエネルギーが集中してターゲットに照射されるため波長50nm未満の光が発生するようになり、他方、100ナノ秒を超えるとレーザーのエネルギーが時間的に十分集中して照射されないため発生する光の波長が100nmを超えてしまう。また、発生する光Lの波長が50nm未満の場合並びに100nm超の場合はいずれも、炭素(炭素原子)に対する光Lの吸収率が低くなり、樹脂成形体6の表面が十分に活性化されず、飛散粒子aが樹脂成形体6の表面近傍領域5に侵入しても飛散粒子と樹脂との界面での結合性が乏しいため弾性率は十分に向上せず、高水準な硬度化が達成されない。さらに、ターゲット4に照射されるパルスレーザー光Lの照射強度が10W/cm未満では波長50nm〜100nmの真空紫外光Lが十分には発生しないため、樹脂成形体6の表面が十分に活性化されず、飛散粒子aが樹脂成形体6の表面近傍領域5に侵入しても飛散粒子と樹脂との界面での結合性が乏しいため弾性率は十分に向上せず、高水準な硬度化が達成されない。他方、照射強度が1012W/cmを超えるとターゲットに照射されたときに発生する電磁波の主たる波長域が50nm以下の波長域になるため、波長50nm〜100nmの真空紫外光Lの光量が減少してしまう。
そして、このようにパルスレーザー光Lの照射によりターゲット4の表面から発生した各種飛散粒子(アブレータ)aは、真空紫外光Lと共に樹脂成形体6の表面に供給される。このようにして樹脂成形体6の表面に照射された真空紫外光Lは炭素(炭素原子)に対する吸収率が高いので、真空紫外光Lが照射された樹脂成形体6の表面は十分に活性化される。そこに、微細な飛散粒子aが高いエネルギーをもって高速で到達するため、飛散粒子aは樹脂成形体6の表面に衝突して表面近傍領域5に侵入し、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子(図示せず)となって均一に分散する。それによってナノ微粒子と樹脂が強固に結合すると共に表面近傍領域のみにおける弾性率が著しく向上し、樹脂表面の十分な高硬度化が達成される。このようにして、その表面近傍領域5に前記ナノ微粒子が分散されることによって表面が十分に高硬度化されており、耐傷つき性及び耐摩耗性が飛躍的に向上した本発明の表面硬化された樹脂成形体が得られる。
なお、本発明においては前記飛散粒子aが侵入できる表面近傍領域5のみが比較的少量のナノ微粒子によって改質されており、しかも飛散粒子aの侵入度に応じてナノ微粒子は傾斜的に分散(深くなるほどナノ微粒子は少なくなる)していることから、樹脂成形体6が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)に対する影響は極めて小さく、表面が硬化されること以外は樹脂成形体6が本来有する特性は維持される。さらに、ナノ微粒子と樹脂は強固に結合していることから、これらの界面における接着不良の発生も十分に防止される。
このようにして得られる本発明の表面硬化された樹脂成形体における表面近傍領域5は、樹脂成形体の表面から200nmの深さの範囲の領域であることが好ましく、樹脂成形体の表面から100nmの深さの範囲の領域であることがより好ましい。前記ナノ微粒子が200nmより深い領域まで分散してしまうと、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性に対する影響が大きくなり、樹脂成形体本来の特性が損なわれる傾向にある。
また、前述のナノ微粒子の平均粒径は1nm〜200nmであることが好ましく、3nm〜100nmであることがより好ましい。前記ナノ微粒子の平均粒径が上記下限未満では樹脂を構成する高分子鎖と分子オーダで混合し、剛直な粒子としての特徴が失われる状態となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると外部変形に対して系全体の破壊起点となり得る異物として振舞う大きさとなる傾向にある。さらに、樹脂成形体6における前記ナノ微粒子の含有量は特に制限されないが、樹脂成形体6の表面近傍領域5(ここでは表面から200nmの深さの範囲の領域)におけるナノ微粒子の含有量が0.01〜30体積%程度であることが好ましく、0.05〜10体積%程度であることがより好ましく、0.1〜5体積%程度であることが特に好ましい。表面近傍領域5におけるナノ微粒子の含有量が上記下限未満では、ナノ微粒子が分散されたことによる表面の硬化が十分に達成されない傾向にあり、他方、上記上限を超えると樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性に対する影響が大きくなって樹脂成形体本来の特性が損なわれる傾向にある。
なお、前記ナノ微粒子は、前述の通り飛散粒子aが樹脂成形体6の表面に衝突して表面近傍領域5に侵入して形成された金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノサイズの微粒子であり、前述のターゲット4に用いた金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料と同様の材料からなる微粒子であるが、一旦飛散粒子aとなった分子等により再構成されたものであるためターゲット4に用いた材料と同じ組成になるとは限らない。しかしながら、いずれの組成にせよ飛散粒子aが樹脂成形体6に侵入して形成されたナノ微粒子は表面近傍領域5中に均一に分散し、ナノ微粒子と樹脂との間に強い結合が形成される。
また、樹脂成形体6の表面近傍領域5にナノ微粒子を分散せしめるのに要する時間(レーザー光照射時間)は、硬化表面近傍領域5に分散したナノ微粒子が表面を硬化せしめるのに足りる所望の量となり、かつ、ナノ微粒子(飛散粒子a)同士が結合して薄膜化しないように適宜決定されるが、一般的には1秒〜1800秒程度が好ましく、3秒〜600秒程度が特に好ましい。なお、ナノ微粒子(飛散粒子a)同士が結合して薄膜化してしまうと、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性に対する薄膜の影響が大きくなり、樹脂成形体本来の特性が損なわれる傾向にある。
なお、上述の本発明の樹脂成形体の表面硬化方法においては、樹脂成形体6の表面近傍領域5にナノ微粒子を分散せしめる際に樹脂成形体を高温に加熱する必要はなく、樹脂成形体温度は特に制限されないが、一般的には室温〜50℃程度であればよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3)
[樹脂表面の硬化処理工程]
レーザー光源2としてYAGレーザー装置(スペクトラフィジックス社製、商品名:PRO−290)、処理容器3として石英窓付の真空容器(ステンレス鋼製、容量20リットル)、ターゲット4としてディスク形状の酸化亜鉛(高純度化学社製ZnO、純度4N、直径40mm、厚さ5mm)、樹脂成形体6としてポリアミド6(PA6)フィルム(宇部興産社製、1015Bフィルム、直径100mm、厚さ50μm)を用いて図1に示す樹脂成形体の表面硬化装置を作製した。なお、樹脂成形体6はターゲット4の法線に対する角度Θが60°となる位置に配置し、樹脂成形体6とターゲット4との間の距離(中心間の距離)は90mmとした。
次に、作製された装置を用い、容器3の内部を圧力が5×10−2Torrの真空度とし、ターゲット4を48rpm、樹脂成形体6を200rpmで回転させた状態で、レーザー光源2から波長532nm、照射強度1GW/cm(実施例1、2)又は4GW/cm(実施例3)、パルス幅7ナノ秒、周波数10Hzのパルスレーザー光Lをターゲット4に10秒間(実施例1)又は30秒間(実施例2、3)照射した。容器3内部が減圧状態のためパルスレーザー光Lは減衰することなくターゲット4に到達し、ターゲット4の表面には高温のプラズマPが形成され、波長が50nm〜100nmの範囲にある真空紫外光Lが発生し、同時に、ターゲット4の表面から亜鉛及び酸素の中性原子、イオン、およびこれら中性原子、イオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタ等の飛散粒子(アブレータ)aが飛散した。そして、樹脂成形体6の表面にプラズマPから発生した真空紫外光(VUV)Lが照射されて十分に活性化され、そこに微細な飛散粒子aが高いエネルギーをもって高速で衝突して表面近傍領域5に侵入し、微粒子として分散した。なお、樹脂成形体温度は約25℃であった。次いで、上記樹脂成形体6の裏面に対しても、上記と同様にして樹脂表面の硬化処理を施した。
[微粒子の分散状態の評価]
このようにして樹脂表面の硬化処理を施した樹脂成形体の表面近傍領域の断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、微粒子が分散している領域の深さ及び微粒子の平均粒径は以下の通りであった。また、実施例3で得られた表面硬化された樹脂成形体の表面近傍領域断面の電子顕微鏡写真を図2に示す。
(微粒子分散領域の深さ) (微粒子の平均粒径)
実施例1 約 50nm 約 5nm
実施例2 約 70nm 約 5nm
実施例3 約100nm 約10nm。
[動的粘弾性試験]
樹脂表面の硬化処理を施した樹脂成形体から短冊状試験片(幅5mm×長さ40mm)を切り出し、アイティー計測社製粘弾性測定装置を用いて各試験片の28℃及び40℃における貯蔵弾性率(E’)並びに28℃及び40℃における力学損失(tanδ)を以下の測定条件:
測定温度範囲:25℃〜200℃
周波数:10Hz
動的振幅:0.05%
の下で測定した。得られた結果を表1及び表3に示す。
(比較例1)
実施例1〜3で用いたポリアミド6(PA6)フィルムについて樹脂表面の硬化処理を施すことなく実施例1〜3と同様にして貯蔵弾性率及び力学損失を測定した。得られた結果を表1及び表3に示す。
(比較例2)
樹脂表面の硬化処理工程において、樹脂成形体6の表面に飛散粒子aのみが到達し、真空紫外光Lは照射されないようにした以外は実施例3と同様にして樹脂表面が処理された樹脂成形体を作製し、実施例3と同様にして貯蔵弾性率及び力学損失を測定した。得られた結果を表1及び表3に示す。
(実施例4)
樹脂成形体6として無機充填材分散ポリアミド6(NCH)フィルム(宇部興産社製、1015C2フィルム、クレイ2重量%添加、直径100mm、厚さ50μm)を用いるようにした以外は実施例3と同様にして樹脂表面が硬化処理された樹脂成形体を作製し、実施例3と同様にして貯蔵弾性率及び力学損失を測定した。得られた結果を表2及び表4に示す。また、実施例3と同様にして微粒子の分散状態を評価したところ、微粒子が分散している領域の深さは約70nm、微粒子の平均粒径は約10nmであった。
(比較例3)
実施例4で用いた無機充填材分散ポリアミド6(NCH)フィルムについて樹脂表面の硬化処理を施すことなく実施例4と同様にして貯蔵弾性率及び力学損失を測定した。得られた結果を表2及び表4に示す。
(比較例4)
樹脂表面の硬化処理工程において、樹脂成形体6の表面に飛散粒子aのみが到達し、真空紫外光Lは照射されないようにした以外は実施例4と同様にして樹脂表面が処理された樹脂成形体を作製し、実施例4と同様にして貯蔵弾性率及び力学損失を測定した。得られた結果を表2及び表4に示す。
表1〜4に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法により真空紫外光及び飛散粒子により処理された実施例1〜3及び実施例4の樹脂成形体は、未処理の樹脂成形体(比較例1及び比較例3)に比べて貯蔵弾性率E’が1.06〜1.18倍に上昇しており、表面が高硬度化されていることが確認された。
一方、真空紫外光をカット(遮断)して飛散粒子のみにより処理した比較例2及び比較例4の樹脂成形体においては貯蔵弾性率E’の上昇は見られず、却って貯蔵弾性率E’は低下していた。かかる貯蔵弾性率E’の低下は、樹脂成形体中に分散した微粒子が界面での接着性がない異物として作用したためと推察される。このことから、真空紫外光による樹脂表面近傍の高分子鎖の活性化(飛散粒子との相互作用増大)が不可欠であることが確認された。
また、樹脂の粘弾性を反映する系のエネルギー損失能に相当する力学損失tanδの測定値に関しては、実施例1〜3及び実施例4の樹脂成形体は、比較例1及び比較例3の樹脂成形体に対して貯蔵弾性率E’が上昇していることに伴って力学損失tanδが小さくなるのではなく、むしろ若干増加する傾向が見られた。かかる力学損失tanδの増加は、樹脂と微粒子との間の相互作用に起因していると推察され、本発明の硬化処理によって樹脂本来の特性が失われないことが確認された。一方、このような力学損失tanδの増加は比較例2及び比較例4の樹脂成形体では確認されなかった。
以上説明したように、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法によれば、樹脂成形体が本来有しているマクロ的な物性(表面以外の軟質性、高伸長性、粘弾性等)の低下や界面での接着不良といった問題を引き起こすことなく、樹脂成形体の表面近傍のみの弾性率を著しく向上せしめて十分に高硬度化することが可能となる。したがって、このような方法によって表面硬化された本発明の樹脂成形体によれば、表面の耐傷つき性及び耐摩耗性を飛躍的に向上せしめることが可能となる。したがって、本発明の樹脂成形体の表面硬化方法並びに表面硬化された樹脂成形体は、表面に高硬度が要求される各種の樹脂成形体、例えばディスク基板、ガラス代替部品、摺動部品、シール部品、表皮材等の用途をはじめ広範な分野において非常に有用である。
本発明に好適な樹脂成形体の表面硬化装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。 実施例3において得られた表面硬化された樹脂成形体の表面近傍領域断面の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1…樹脂成形体の表面硬化装置、2…レーザー光源、3…処理容器、4…ターゲット、5…表面近傍領域、6…樹脂成形体、7…窓、L…パルスレーザー光、L…真空紫外光、a…飛散粒子、P…プラズマ。

Claims (7)

  1. 金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を発生させ、樹脂成形体の表面近傍領域に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を侵入させて金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子を分散せしめることを特徴とする樹脂成形体の表面硬化方法。
  2. 前記樹脂成形体の表面近傍領域が、樹脂成形体の表面から200nmの深さの範囲の領域であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体の表面硬化方法。
  3. 前記ナノ微粒子の平均粒径が1nm〜200nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形体の表面硬化方法。
  4. 減圧状態、及び/又は、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において前記樹脂成形体の表面近傍領域に前記ナノ微粒子を分散せしめることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の樹脂成形体の表面硬化方法。
  5. 樹脂成形体と、
    金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して発生せしめた金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ前記樹脂成形体の表面近傍領域に侵入させてなる、前記樹脂成形体の表面近傍領域に分散している金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるナノ微粒子と、
    からなることを特徴とする表面硬化された樹脂成形体。
  6. 前記樹脂成形体の表面近傍領域が、樹脂成形体の表面から200nmの深さの範囲の領域であることを特徴とする請求項5記載の表面硬化された樹脂成形体。
  7. 前記ナノ微粒子の平均粒径が1nm〜200nmであることを特徴とする請求項5又は6記載の表面硬化された樹脂成形体。
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