ゴルフボールは、一般的には、糸巻きボールとソリッドボールに分類されてきた。糸巻きボールは、大抵、液体又はソリッドセンタが引き伸ばされたエラストマー材料で巻きつけられたものから構成されている。糸巻きボールは、一般的には高性能ゴルフボールとして考えられるものであり、弾性、スピン特性及びゴルフクラブで打ったときの感触が良好である。しかしながら、糸巻きボールは、ソリッドゴルフボールと比べると一般に製造が難しい。
初期のソリッドゴルフボールは、大抵ツーピースボールであった。即ち、コアとカバーを含んでいるものであった。最近開発されたソリッドボールは、ボールのプレー特性を改善するために、コアと、マントル層と、カバーとから構成されている。
従来技術には、特定のプレー特性を与えるように設計された様々なゴルフボールが含まれている。それらの特性は、通常、ゴルフボールの初速度とスピンである。こららは、いろいろなタイプのプレーヤーに対して最適化される。例えば、あるプレーヤーはゴルフボールをコントロールして止めるためにスピンレートの大きいボールを好む。他のプレーヤーは、飛距離を最大にするためにスピンレートがが小さく弾性の大きいボールを好む。一般的には、ハードコアとソフトカバーを有するゴルフボールはスピンレートが大きい。逆に、ハードカバーとソフトコアを有するゴルフボールはスピンレートが小さい。ハードコアとハードカバーを有するゴルフボールは、大抵、飛距離に対して弾性が非常に大きく飛距離の点でよいが、感触が硬くかつグリーンでのコントロールが難しい。従来技術の種々の文献は、ソリッドゴルフボールのプレー適性を改善するためにマントル層又は第2カバー層を追加することに関するものであった。
ゴルフボールのスピンレートは、多くのパラメータにより最終的にもたらされる標的であり、その1つはボール内の密度又は比重の配分である。スピンレートは、熟練したゴルファーにとってもレクレーションのためのゴルファーにとってもゴルフボールの重要な特性である。スピンレートが大きいと、PGAプロやハンディキャップの少ないプレーヤーのような熟練したプレーヤーがゴルフボールのコントロールを最大限に活用することができる。高スピンレートゴルフボールは、グリーンへのアプローチショットに有利である。ボールをグリーンに止めるためにバックスピンをかけてコントールする性能やボールをドロー又はフェードするサイドスピンによってボールについてのプレーヤーのコントロールが実質的に改善される。つまり、熟練したプレーヤーは、大抵、スピンレートの大きいゴルフボールを好んで用いる。
他方、ボールのスピンを意図的にコントロールすることができないレクレーションのためのプレーヤーは、大抵、高スピンレートのゴルフボールを好まない。これらのプレーヤーにとっては、スライスやフックが一番の障害である。クラブヘッドがボールを打ったとき、しばしば意図せずにゴールにサイドスピンが加わってしまい、意図したコースからボールがそれる。サイドスピンは、ボールに対するプレーヤーのコントロールを低下させるとともにボールの移行距離を縮める。あまりスピンしないゴルフボールは、ショットがクラブフェースからスクエアに打たれない場合でも誤ってラインからそれる傾向がない。スピンの少ないボールは、フック或いはスライスを直さないが、少ないスピンがサイドスピンの悪影響を減少させる。したがって、レクレーションのためのプレーヤーは、スピンレートの小さいゴルフボールを好む。
ボールの各層又はマントルの密度又は比重を再配分することは、ゴルフボールのスピンレートをコントロールする重要な手段である。ある場合には、ボールの外側部分からボールのセンタに重量を再配分して慣性モーメントを減少させ、よってスピンレートが増加する。例えば、特許文献1(米国特許第4,625,964号)には、比重が少なくとも1.50で直径が32mm未満のコアと、コアとカバーとの間に比重が小さい中間層をもつ、慣性モーメントの小さいゴルフボールが開示されている。特許文献2(米国特許第5,104,126号)には、低密度シンタクチックフォーム配合物により封入された、比重が少なくとも1.25の高密度の内側コアをもつボールが開示されている。特許文献3(米国特許第5,048,838号)には、比重が1.2〜4.0で直径が15〜25mmの範囲にある高密度の内側コアと比重が内側コアの比重より小さい0.1〜3.0の外側層をもつ、他のゴルフボールが開示されている。特許文献4(米国特許第5,482,285号)には、外側コアの比重を0.2〜1.0まで減らすことによって慣性モーメントを小さくした他のゴルフボールが開示されている。
他の場合には、ボールの内側部分から外側に重量を再配分して慣性モーメントを増大させ、よってスピンレートを減少させる。特許文献5(米国特許第6,120,393号)には、中空内側コアと1以上の弾性外側層とによりボールのソフトコアを形成し、さらにハードカバーを付与して構成されたゴルフボールが開示されている。特許文献6(米国特許第6,142,887号)には、金属、セラミック材料又は複合材料からつくられた1以上のマントル層と、マントル層から内向きに配置されたポリマーの球状基材を含む高慣性モーメントゴルフボールが開示されている。
これらの文献や他の文献には、比重範囲、コアの直径範囲又は外側層の厚さ範囲等の高又は低スピンレートボールの具体的な例が開示されている。しかしながら、ゴルフボールのスピンレートをコントロールする万能なガイドラインを与えていない。つまり、当該技術においてスピンレートをコントロールするゴルフボールの改良が依然として求められている。他の従来技術のゴルフボールは、所望のプレー特性を与える多重コア層を有する。例えば、特許文献7(米国特許第5,184,828号)には、十分なスピンレートを維持しつつ、リバウンド特性とキャリー距離が優れるように構成された2つのコア層を有するゴルフボールを得ることが言及されている。更に詳しくは、その特許には、内側コアと外側層とが開示され、また、ゴルフボールの最大の硬度が内側コアの外側位置にあるように外側層と内側コアにおける硬度の分布を調整することが教示されている。その特許は、コアにおけるかかる硬度の分布によって、硬度が最大となる境界領域に、高いエネルギーを蓄積させることができると主張している。その特許は、更に、クラブフェースのエネルギーが最大硬度領域に十分に送られ、内側コアに向って伝達され、結果としてリバンド係数が高くなると主張している。しかしながら、ハードコアとソフトカバーをもつゴルフボールはスピンが最も大きいので、その特許によって教示された硬度分布では、ドライバーで打ったときに境界面でコアの最大の硬度が生じる。そのボールはドライバースピンレートが比較的大きく、飛距離がほとんどでない。その特許のボールは外側コア層が軟らかいので、スピンが望ましい8番アイアンのような短いショット用にはボールのスピンレートが小さいにちがいない。従って、この特許によって教示されたボールは、多くの欠点があると思われる。
ソリッドゴルフボールのプレー特性を改善するために、Rockets(商標)と呼ばれるボールがキャスコ社(Kasco,Inc.)から供給された。Rocketsボールは、センタと、2つの層と、カバーとを含んでいる。センタと2つの層は、すべてポリブタジエンゴムから構成されている。
特に、そのようなボールに対する試験によれば、ゴルフボールが直径約2.54cm(約1.0インチ)のセンタと、平均厚さが約0.318cm(約0.125インチ)の第1層と、平均厚さが約0.330cm(約0.13インチ)の第2層を含んでいることがわかった。センタのショアC硬度が中心で約59でコアセンタとセンタの外面間のセンタ中点で60である。第1層のショアC硬度は約61であり、第2層のショアC硬度は約73である。Rocketsゴルフボールのカバーは、ショアD65より硬く、圧縮度が約88である。
各層の分割線から判断すると、キャスコ社は、センタを形成し、センタの周りに第1層を圧縮成形し、センタと第1層上に第2層を圧縮成形することにより、Rocketsゴルフボールコアを製造していると思われる。カバーはリトラクタブルピン射出成形を用いて成形されると思われる。キャスコ法による問題は、そのように形成されたゴルフボールのコアが同心的でないことである。即ち、ボールのセンタがボールの残りの部分と同心的でなく、上記の層の厚さは均一でない。更に詳しくは、第1層は片側の最大厚さが0.353cm(0.139インチ)あり、反対側の最小厚さが0.269cm(0.106インチ)あった。従って、第1層の厚さの分散が0.084cm(0.033インチ)あった。同様に、第2層は第1側の最大厚さが0.394cm(0.155インチ)あり、反対側の最小厚さが0.107cm(0.042インチ)あった。従って、第2層の厚さの差は0.107cm(0.042インチ)あった。このように、これらのゴルフボールには重要な同心性の問題があることは明らかである。
米国特許第4,625,964号明細書
米国特許第5,104,126号明細書
米国特許第5,048,838号明細書
米国特許第5,482,285号明細書
米国特許第6,120,393号明細書
米国特許第6,142,887号明細書
米国特許第5,184,828号明細書
図1および図2を参照すると、ゴルフボール10はコア16とカバー15とを有する。コア16は、センタ11と、少なくとも1のコア層を有する。図1は、2つの外側コア層、すなわち、中間コア層13および比較的固い最外側コア層14を有する、この発明の実施例を示している。ただし、図2は5層のコア層を有する実施例を示している。こららコア層は、第1中間コア層17a、第2中間コア層17b、第3中間コア層17c、第4中間コア層17dおよび第5コア層であり、第5コア層は一般にかなり固く、最外側コア層14とも呼ばれる。
図2において、センタ11は、好ましくは、センタ材料プレップから球を圧縮成形することにより形成されている。圧縮成型ソリッドセンタは周知であり、とくに説明を要しない。
図3および図4を参照すると、この発明の第1実施例においてセンタの周りに多層を形成するために、好ましくはラミネート20が形成されている。ラミネート20は、少なくとも2層、好ましくは3層22、23及び24から構成されている。ラミネート20は、コア材料から薄いシート32、33、及び34の圧延から形成されている。特に、各シートは、完成したゴルフボール10において層12、13及び14(図1の層13、図14や図2の層17a〜17d、14が対応する。図3以降の図は3層のラミネートから3層のコア層を生成するので、便宜上、これらの層を層12、13、14と呼ぶ)の厚さよりわずかに厚い厚さに形成される。それぞれの厚さは、変動してもよく、すべての厚さは、好ましくは約0.0254〜0.254cm(約0.010〜0.100インチ)、更に好ましくは約0.0254〜0.127cm(約0.010〜0.050インチ)厚である。
好ましくは、シート32、33、34は、各層に用いられる未硬化コア材料を混合し、その材料をシートにカレンダ圧延することにより調製される。シートは共に積み重ねられてカレンダ圧延機を用いて3層22、23及び24を有するラミネート20を形成する。シートは、押出しにより製造することもできる。シート32、33及び34の厚さは、非常に均一でなければならない。即ち、各シートの厚さは、約0.013cm(約0.005インチ)より大きく変動してはならない。
代替実施例においては、ラミネート20は、更に、各材料層の間に接着剤を用いて構成し得る。好ましくは、ロードアイランド州ウォーリックのRBCインダストリーズ製のEpoxy Resin #1028のようなエポキシ樹脂が用いられる。接着剤は、せん断強さや引張強さが良好でなければならず、好ましくは引張強さが10.34MPa(約1500psi)を超える。更に、硬化したときに接着剤が脆くなってはならない。硬化したときの接着剤のショアD硬度は60未満が好ましい。シートに適用される接着剤は、非常に薄く、好ましくは約0.010cm(約0.004インチ)厚未満でなければならない。
図5〜図8を参照する。この発明の方法の次のステップでは、センタの周りに多層を形成する。これは、好ましくは、2つのラミネート20と21を上型36と下型37の間に置くことにより行われる。型36と37は、米国特許第4,508,309号に記載されたもののような型フレーム38と入れ替え可能な型半体39から構成されている。ラミネート20と21は、型半体39の中のキャビティどおりに形成されている。好ましくは、ラミネートは、真空源40を用いることにより吸引形成される。真空源40によりラミネート20及び21が半体型キャビティ(型半体)39どおりに吸引形成されるので、層の厚さの均一性が維持される。センタ11は、ラミネート20と21がキャビティどおりに形成された後にラミネート間に挿入され、ラミネート20と21が当該技術において周知の温度と圧力条件下でセンタ11の回りに圧縮成形される。
図7と図8を参照する。型半体39は複数の穴41を有する。圧縮成形ステップでは、少なくとも3つの穴を介してラミネートから過剰な層材料を抜き取り、ラミネート材料の流れがセンタ11の周りに対称でありかつセンタ11が横からの流れパターンのためにシフトしないようにする。好ましくは、型半体39は4〜6個の穴を有する。
図9〜図12を参照する。この発明の次のステップではコア16の周りにカバー15を形成する。コア16は、センタ11と外側層12、13及び14から構成され、1組のカバー型半体50と51の中に複数の引込可能ピン52によって支持されている。引込可能ピン52は、型設計の当業者に周知の通例の手段によって作動する。型半体50と51がコア16を支持しているピン52と共に閉じられた後に、カバー材料が複数の注入口又はゲート49を通って液体状態で型に注入される。ゲート49は、エッジゲート或いはサブゲートであり得る。エッジゲートにおいては、得られたゴルフボールは、すべて相互接続され、大きな鋳型で一緒に型半体50と51から除去することができる。サブゲート開閉により型半体50と51からゴルフボールを射出している間に型ランナがゴルフボールから自動的に分離される。
図10と図11を参照する。引込可能ピン52はカバー材料の所定量が型半体50と51に注入された後に引っ込む。カバー材料の所定量は、実質的に注入すべき材料のすべてである。従って、コア16はカバー材料で実質的に包まれ、引込ピン52が除去されたときに移動しない。これより、液体のカバー材料がコア16と型半体50と51間のキャビティを流れるとともに実質的に充填することができる。同時に、同心性がコア16と型半体50と51の間に維持される。
カバー材料をコア16の周りに固化させ、よってカバー15が形成する。次に、ゴルフボール10が型半体50と51から取り出され、当該技術において周知のプロセスを用いて仕上げられる。型半体50と51の温度と硬化時間は一般的に当該技術において既知であり、下で詳細に述べられる、カバー15の材料に左右される。
図12を参照して、この発明のカバー15を形成する代替的な手法が図示される。2つのカバー層半球55と56は、所望のカバー材料、好ましくは射出成形プロセスによって予備成形されている。半球55と56は、コア16の周りに位置し、よってアセンブリ57を形成し、次に2つの圧縮型半体53と54を含んでいる圧縮型58の中に配置される。型半体53と54は、接合面が触れるまで相互に向って進め、型58を加熱して半球を融解させる。型半体53と54がコア16の周りに半球55と56を圧縮加熱してカバー材料を成形する。
図1と図2に戻って説明する。コア16の全直径は、約3.81cm(約1.50インチ)より大きく、好ましくは4.01cm(1.58インチ)より大きく、最も好ましくは約4.06cm(約1.60インチ)より大きい。センタ11のショアC表面硬度は、約80未満、好ましくは約70未満である。センタ11の圧縮度は約70未満、好ましくは約60未満、最も好ましくは約50未満であり、更にCOR値は約0.700、好ましくは約0.750である。圧縮度は、試験すべきゴルフボールセンタ、ゴルフボールコア又はゴルフボールにばね荷重力をかけることにより測定し、手動器具(「Atti gauge」)はニュージャージー州ユニオンシティのAtti Engineering Company製である。連邦ダイヤルゲージ、D81−C型を備えたこの機械は、既知の荷重下で調整したばねを用いる。試験すべき球は、このばねに対して距離が0.508cm(0.2インチ)伸びる。ばねが0.508cm(0.2インチ)縮む場合には、圧縮度は100である。ばねが0.254cm(0.1インチ)縮む場合には、圧縮度は0とする。従って、圧縮性の大きい軟らかい材料のアッティゲージ値は硬い圧縮性の少ない材料より小さい。この器具を用いて測定した圧縮度は、PGA圧縮度とも呼ばれる。センタ11は、高シス又は高トランスのポリブタジエンのような熱硬化性配合物であってもよく、熱硬化又は熱可塑性メタロセン(又は他の単一位置触媒ポリオレフィン)、例えば、ポリブタジエン、ポリエチレンコポリマー、又はEPR又はEPDMを含んでいてもよい。メタロセンの場合には、ポリマーはペルオキシドのようなフリーラジカル源又は高エネルギー放射線で架橋されていてもよい。センタ11は軟らかくて安定している(fast)ことが非常に望ましい。センタ11の直径は重要ではないが、薄い外側コア層が望ましいので約2.54cm(約1.00インチ)より大きくなければならないが、約4.11cm(約1.62インチ)の外径まで大きくてもよい。
図1の封入用の2以上のコア層は同一の材料でもよいし、異なる材料でもよく、これは上述のセンタ11と同じである。ただし、少なくとも1つのコア層はセンタ11に較べて著しく硬く(stiff、hard)なければならない。層12〜14のうちの少なくとも1層のショアC硬度は80以上、好ましくは90以上であり、曲げ弾性(ASTMD−790による)は約207MPa(約30,000psi)より大きい。更に、コア層12〜14のうちの少なくとも1層の比重は、1.25g/ccより大きく、好ましくは1.50g/ccより大きく、最も好ましくは1.75g/ccより大きい。これにより、ボール全体の慣性モーメントが大きくなり、その結果、ドライバーゴルフクラブを用いたときのスピンレートが小さくなる。これと同時に、センタ11や任意の内側コアラミネート層12−13に非充填又は均一発泡の密度低下材料を用いて、ボールの慣性モーメントを更に大きくしてもよい。外側コア層12〜14のそれぞれの厚さは、0.00254cm〜0.254cm(0.001〜0.100インチ)、好ましくは約0.0254cm〜0.0127cm(約0.010〜0.050インチ)である。必要に応じて、1以上の層12〜14は、センタ11による水分吸収によるCOR値低下を防ぐ水分バリヤ層として機能してよい。水分バリヤの使用は、特開2003−154036公報(米国特許出願第09/973,342号)に記載されており、詳細はこれを参照されたい。図1には、単一層14が上記機能の1種以上、即ち、剛性、高比重、又は水分バリヤに役立つこの発明の実施例が記載されている。更に詳しくは、層12〜14のうちの1つの水蒸気透過率がカバーより小さい。
カバー15は、ウェッジクラブで打ったときにボールに高部分スピンを与える比較的軟らかい材料の1以上の層を含んでいる。カバー15は単一層であることが好ましい。カバー15は、注入成型ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンアイオノマー、又は熱可塑性、例えば、熱可塑性ウレタン、アイオノマーブレンド、フューズボンド等によって実現されるように耐久性が良好でなければならない。ショアD硬度は65未満でなければならず、好ましくは、60未満であり、厚さは、好ましくは約0.0254cm〜0.140cm(約0.010〜0.055インチ)、更に好ましくは約0.0508〜0.101cm(約0.020〜0.040インチ)である。多層カバーは、スピンや感触を微調整するのに用いることができるが、この発明は、最適性能を実現するためには多層カバーを必要としない。
この発明の実施例によれば(例1とも呼び、図1に示される)、センタ11の直径は4.06cm(1.60インチ)、ショアD硬度は60、圧縮度は50、CORは0.800である。また、比重は約1.1g/ccである。センタ11は、2つのコア層、すなわち、中間コア層13および最外側コア層14により封入される。最外側コア層14は、ショアC硬度が80以上、厚さが0.0508cm(0.020インチ)であり、最外側コア層14の比重が1.3g/ccより大きくなるようにタングステン充填剤を有している。カバー15は、注入成型ポリウレタンのような材料からなり、硬度が65D未満であり、厚さが0.0508cm(0.020インチ)である。ボール10全体のCOR値は0.790より大きく、好ましくは0.800より大きく、圧縮度は100未満、好ましくは90未満である。最外側コア層14は、水分バリヤとして機能し得る。水蒸気透過率はカバー層より小さく、更に好ましくはSurlyn(商標)のようなアイオノマー樹脂の水蒸気透過率より小さく、約0.45〜約0.95g/mm/m2/日の範囲にある。水蒸気透過率は、単位面積単位時間当たり一定の厚さの材料へ拡散する水蒸気質量として定義される。水蒸気透過率を測定する好ましい規格としては、特に、ASTM F1249−90“変調した赤外センサを用いたプラスチックフィルム又はシートの水蒸気透過率の標準試験法”又はASTM F372−99“赤外検出法を用いた可撓性バリヤ材料の水蒸気透過率の標準試験法”等が含まれる。
他の実施例において(例2ともいう。図2に示される)、コア11は、その直径の大きさが約4.06cm(約1.60インチ)の代わりに約3.81cm(約1.50インチ)である以外は例1と同じである。センタ11は、4つの中間層17a、17b、17c、および17d並びに堅固な最外側コア層14により封入されている。コア層の任意のものが水分バリアとして機能する。一般に、最外側コア層14は、堅固であり、90以上のショアD硬度を有し、厚さが約0.0635cm(約0.025インチ)であり比重が約1.25g/ccであり、好ましくは1.50g/ccであり、最も好ましくは約1.75g/ccである。最外側コア層14の厚さは約0.00254cm(約0.001インチ)から約0.254cm(約0.1インチ)の間である。カバー15の固さは約60D未満であり、厚さは約0.0254cm(約0.01インチ)から約1.56cm(約0.55インチ)の間である。センタ11の曲げ弾性係数は137.9MPa(20000psi)未満であり、中間層17a、17b、17cおよび17d並びに最外側コア層4の曲げ弾性係数のレベルは徐々に増大し、最外側コア層の曲げ弾性係数は206.8MPa(30000psi)より大きく、好ましくは275.8MPa(40000psi)より大きい。コア層の各々の厚さは約0.00254cm(約0.001インチ)から約0.254cm(約0.10インチ)の範囲である。最外側コア層14の剛性特性を内側中間層17a、17b、17cおよび17dの1つが同様に有するような実施例も可能であるが、最外側コア層14の剛性はボール10の全体としての所望の性能には不可欠である。
上記の2つの実施例は、特開2002−325863公報(米国特許出願同第09/815,753号)や米国特許出願第09/948,692号のゴルフボール構成をより改善したものである。センタ11と内部ラミネート層12〜14の充填(又は発泡させるか、その他、比重を下げる手法を行なう)によって慣性モーメントを調整することによって、飛距離とスピンを更に向上させる機会が得られる。低比重センタ11又は層12又は13は、低比重がゴルフボールの軟らかい圧縮度と反発弾性に寄与する限り、多くの適切な材料から製造され得る。材料は、エポキシ、ウレタン、ポリエステル又は適切な熱硬化性バインダーのポリマーマトリックス中の中空球充填剤又はマイクロスフェアを用いた熱硬化性シンタクチックフォームからのものであり得る。その硬化した配合物の比重は1.1g/cc未満、好ましくは1.0g/ccである。更に、多くの発泡した、または他の手法で比重を下げた熱可塑性又は熱硬化性ポリマー配合物、例えば、米国特許第5,824,746号や同第6,025,442号に記載されているメタロセン触媒ポリマー及びそのブレンドを用いることができる。詳細はこれら文献を参照されたい。更に、比重が1.0g/cc未満である熱硬化性ポリウレタン配合物、例えば、核形成反応射出成形又は注型ポリウレタンを用いることができる。そのような配合物によりガス充填又は多孔性固体層を得ることができる。
米国特許第5,971,870号に述べられた通り、充填剤は細分された形でもよく、典型的には細分された形でもあり、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。例えば、一般的には約20メッシュ未満、好ましくは約100メッシュサイズの米国規格サイズである。ただし一般には長尺で用いる繊維やフロックを除く。フロックサイズや繊維のサイズは処理を容易にするのに十分な程度に小さくしなければならない。充填剤粒径は、所望の効果、コスト、添加の容易さ、又は粉塵の問題に左右される。充填剤は、好ましくは沈降水和シリカ、クレー、タルク、アスベスト、ガラス繊維、アラミド繊維、雲母、メタケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リトポン、ケイ酸塩、炭化ケイ素、ケイソウ土、ポリ塩化ビニル、炭酸塩、金属、金属合金、炭化タングステン、金属酸化物、金属ステアリン酸塩、炭素質粒状物質、マイクロバルーン、及びその組合わせからなる群より選ばれる。適切な充填剤限定的でない例、その密度、及び好ましい用途は、次の通りである。
[表1:充填材の例−その1]
[表2:充填材の例−その2]
1:内側カバー層の密度を調整するのに特に有効なタイプ。
2:内側カバー層の屈曲モジュラスを調整するのに特に有効なタイプ。
3:内側カバー層の離型を調整するのに特に有効なタイプ。
4:内側カバー層のメルトフローインデックスを増大するのに特に有効なタイプ。
最内側コア層12および最外側コア層14に関連して中間コア層13の硬度を増加させることにより、ボール10に、アイオノマーの内部カバー層を用いた二重カバー層ゴルフボールと主に関連付けられていた性能特性が付与される。
2.54cm(0.1インチ)以下の小さなセンタと、各層の厚さが0.254cm(0.1インチ)より大きい比較的厚いコア層とにより生成されたゴルフボールを試験すると、この構造はボールの初速度を下げ、ボールのスピンレート効果を減少させることがわかる。セットの中の種々のクラブでゴルフボールを打つと、インパクト速度とインパクト角が変わる。概して、ツアープロの場合、ドライバーのインパクト速度は毎時約177km(約110マイル)である。平均的なプロが5番アイアンのインパクト速度は毎時約145km(約90マイル)であり、ウェッジのインパクト速度は毎時約129km(約80マイル)未満である。更に、ゴルフボールに対する力は、2つの成分、クラブフェースに直交する垂直力とクラブフェースに平行な接線力に分かれる。たいていのプロはロフトが約10度のドライバーを用いるので、接線力は垂直力より著しく小さい。しかしながら、ロフトが48〜60度のウェッジを用いる場合、接線力は非常に重要になる。例えば、実験データから、インパクト速度が約153km(約95マイル)で角度が20度のクラブヘッドにおいては、ツーピースボールの最大たわみは約0.384cm(約0.151インチ)であることがわかる。毎時153km(95マイル)、インパクト角40度でクラブヘッドが当たると、ボールの最大たわみは約0.325cm(約0.128インチ)又は差が0.058cm(0.023インチ)である。従って、インパクトたわみはインパクト角に著しく依存し、外側層が0.254cm(0.1インチ)未満にすることにより、ボールのスピン特性は下で詳述されるようにセットの中の種々のクラブに依存する。ゴルフボールは、センタ、コア層及びカバー材料の硬度と密度を適切に選択することによりすべてのタイプのゴルファ用に製造できる。徐々に硬くなる比較的薄い複数の外側層をもつゴルフボールコアを作ることにより、ボールのスピンレートは、高スピンレートゴルフボールを所望するプレーヤーにとって、驚くほど良好になる。より具体的には、このタイプのプレーヤーがショートアイアンで打ったときに、外側層とカバーだけがボールのスピンレートに影響する。非常に硬い外側コア層と軟らかいカバーを組合わせることにより、ウェッジの角度が約48〜60度のようなショートアイアンショットの場合にスピンレートが最大になる。ロフトが約32度の6番アイアンのようなミドルアイアンショットの場合にスピンレートをわずかに下げて十分な飛距離が得られることを確実にするために第2層は第3層より軟らかい。同様に、ロフトが約20度の3番アイアンのようなロングアイアンの場合にスピンレートを下げ、飛距離を良くし、かつ弾道を適切にするために、第1層は第2層より軟らかい。最後に、ロフトが約8〜12度のドライバーによる低スピンレートを達成するために、センタは非常に軟らかい。
表3は、最初の実施例においてゴルフボールコアを構成し得る内容物を示すものである。この実施例のゴルフボールコアを調製するために用いられる組成は、すべてポリブタジエン100部に対する百分の1部(pph)による。これらの実施例の配合物に用いられる充填剤は、粉砕再生材料と硫酸バリウム(BaSO1/4)である。Vulcup 40KE(商標)とVarox 231XL(商標)はフリーラジカル開始剤であり、それぞれa−aビス(t−ブチルペロキシ)ジイソプロピルベンゼンおよび1,1−ジ(t−ブチルペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
ペロキシドを除くすべての成分をプロセスラボブラベンダミキサで約82〜93℃(約180〜200°F)まで混合した。ペロキシドは、第2段階で始めの混合物に添加し、得られた混合物をブラベンダーから取り出し、均一性を保証するためにラボミルにより混和した。混合した後、実験室用ミルを用いてハンドロールにかけ、断片すなわち“プレップ”に切断した。コアセンタ11をつくるために、そのプレップを約160℃で約15時間圧縮成形した。外層をつくるために、ポリブタジエンゴム材料を平らなシートに圧延し、そのシートを積み重ねてラミネートを形成した。次に、ラミネートを上記センタの周りに圧縮成形した。完成ゴルフボールを形成するために、コアを研磨し、カバー層に用いるのに適した材料のカバーの2つの半球に挿入した。材料には、特許出願に開示されたもの、又は国際出願第00/23519号、同第01/29129号に記載されたもののような多くの部分的又は完全に中和されたアイオノマーを含むことができる。また、脂肪族又は芳香族ポリエーテル又はポリエステルポリウレタンを含む熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタン又はポリウレア、例えば、米国特許第6,309,313号、同第6,210,294号、同第6,117,024号、同第5,908,358号、同第5,929,189号、同第5,334,673号及び米国出願第09/466,434号に開示されたものであるがこれらに限定されない。更に、他の適切なカバー材料は米国特許第5,919,100号や他の関連出願にも開示されている。
コア層12、13及び14に戻ると、これらの層は熱硬化性又は熱可塑性材料から製造され得る。例えば、第1、第2及び第3層12、13及び14は、熱可塑性エラストマー、官能基化スチレン−ブタジエンエラストマー、熱可塑性ゴム、熱硬化性エラストマー、熱可塑性ウレタン、メタロセンポリマー、ウレタン、又はアイオノマー樹脂、又はそのブレンドから形成され得る。
熱可塑性エラストマーとしては、動的加硫熱可塑性エラストマー又はそのブレンドが含まれる。適切な動的加硫熱可塑性エラストマーとしては、Santoprene(商標)、Sarlink(商標)、Vyram(商標)、Dytron(商標)およびVistaflex(商標)が含まれる。Santoprene(商標)は、動的加硫PP/EPDMの商標である。Santoprene(商標)203−40は、好ましいSantoprene(商標)の例であり、アドバンスドエラストマーシステムから市販されている。
適切な官能基化スチレン−ブタジエンエラストマーの例としては、シェルコーポレーションから市販されているKraton FG−1901xやFG−1921xが挙げられる。適切な熱可塑性ポリウレタンの例としては、B.F.グッドリッチカンパニーから市販されているEstane(商標)58133、Estane(商標)58134又はEstane(商標)58144が挙げられる。更に、上記第1、第2又は第3層12、13及び14の材料は、発泡高分子材料の形であってもよい。例えば、適切なメタロセンポリマーとしては、メタロセン単一位置触媒系発泡体に基づく熱可塑性エラストマーの発泡体が挙げられる。そのメタロセン系発泡体は、マサチューセッツ州ハイアニスのセンチネルプロダクツから市販されている。
適切な熱可塑性ポリエーテルエステルとしては、デュポンから市販されているHtrel(商標)、Htrel(商標)G3548W、又はHtrel(商標)G4078Wが含まれる。適切な熱可塑性ポリエーテルアミドとしては、Elf−Atochemから市販されているPebax(商標)2533、Pebax(商標)3533、Pebax(商標)1205又はPebax(商標)4033が含まれる。適切な熱可塑性ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレートが含まれる。
適切な熱可塑性アイオノマー樹脂は、炭素原子3〜12個を有する不飽和モノ又はジカルボン酸又はそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種を有するモノオレフィンのポリマーに交差金属結合を与えることにより得られる。そのポリマーは、1〜50重量%の不飽和モノ又はジカルボン酸及び/又はそのエステルを含有する。特に、酸含有エチレンコポリマーアイオノマーのような低モジュラスアイオノマーには、E/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンであり、Xはポリマーの0〜50(好ましくは0〜25、最も好ましくは0〜2)重量%に存在するアクリレート又はメタクリレートのような軟化コモノマーであり、Yはポリマーの5〜35(好ましくは10〜35、最も好ましくは15〜35、アイオノマーを高酸アイオノマーにする)重量%に存在するアクリル酸又はメタクリル酸であり、酸部分は1〜100%(好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも約60%)中和されてリチウム*、ナトリウム*、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛*又はアルミニウム(*=好適)のようなカチオン、又はそのカチオンの組合わせによってアイオノマーを形成する。)が含まれる。個々の酸含有エチレンコポリマーとしては、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルメタクリレート、又はエチレン/アクリル酸/n−ブチルメタクリレートが含まれる。好ましい酸含有エチレンコポリマーとしては、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート又はエチレン/アクリル酸/メチルアクリレートコポリマーが含まれる。最も好ましい酸含有エチレンコポリマーは、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレート、又はエチレン/(メタ)アクリル酸/メチルアクリレートコポリマーである。
そのようなアイオノマー樹脂としては、SURLYN(商標)やlotek(商標)があり、それぞれデュポンとエクソンから市販されている。同様に、バラタ、エラストマー又はポリエチレンのような他の従来の材料もこの発明の第1、第2及び第3層12、13及び14に用いることができる。
そのような熱可塑性ブレンドは、約1重量%〜約99重量%の第1熱可塑性材料と約99重量%〜約1重量%の第2熱可塑性材料を含んでいる。
好ましくは、熱可塑性ブレンドは、約5重量%〜約95重量%の第1熱可塑性材料と約5重量%〜約95重量%の第2熱可塑性材料を含んでいる。この発明の好適実施例においては、ブレンドの第1熱可塑性材料は、動的加硫熱可塑性エラストマー、例えば、Santoprene(商標)である。
この発明のゴルフボールの硬度、ベイショア反発弾性モジュラス(Bayshore resillience modulus)、センタの直径および層の厚さのような性質は、ゴルフボールのスピン、初速度又は感触のようなプレー特性に影響することがわかった。
この発明のゴルフボールの全径サイズは、どのようなものでもよい。合衆国ゴルフ協会(USGA)規格はコンペゴルフボールのサイズの最低を直径が4.267cm(1.680インチ)より大きいものに制限しているが、直径の最大については規格がない。更に、レクリエーションプレーにはいかなる大きさのゴルフボールも使用し得る。本ゴルフボールの好ましい直径は、約4.267cm〜約4.572cm(約1.680インチ〜約1.800インチ)である。更に好ましい直径は、約4.267cm〜約4.470cm(約1.680インチ〜約1.760インチ)である。最も好ましい直径は、約4.267cm〜約4.420cm(約1.680インチ〜約1.740インチ)である。
本明細書に開示されたこの発明の例示的実施例が上で述べた目的を満たしていることは明らかであるが、当業者が多くの変更や他の実施例を実施できることは当然である。従って、この発明の趣旨と範囲に入っているそのような変更や実施例のすべては特許請求の範囲に包含される。