JP2005108789A - モールドセパレータおよび固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多数本の流路溝3が酸化剤ガス入口マニホールド6から酸化剤ガス出口マニホールド7に至るようにモールドセパレータ1の一面のほぼ全面に蛇腹状に形成されて、第1反応ガス流路2を構成している。そして、溝方向を平行とする流路溝3の領域において、同一側に位置する溝側面がモールドセパレータ1の一面に対して鋭角な傾斜側面4に形成され、他方の側面はモールドセパレータ1の一面に対して直角な直角側面5に形成されている。
【選択図】図1
Description
このことから、カーボン粉末と合成樹脂とを混練して金型に圧縮もしくは射出してセパレータを成形するモールド成形が経済的な方法として広く用いられていた。しかし、モールド成形により、セパレータ表面に対して直角な両側面を有する流路溝を形成する場合、溝凸部(流路溝間の部位)の一部が欠けたり、金型を抜くときに大きな力を必要とし、セパレータ自身が割れたりして、歩留まりが極めて悪くなる。
そこで、流路溝を形成するための金型凸部を台形断面形状とし、成形されたモールドセパレータを金型から抜き易くする対策が採られている。この従来のモールドセパレータに形成された流路溝の両側面は、セパレータ表面に対して鋭角な傾斜側面となっている(例えば、特許文献1参照)。
液滴は重力によって電極基材から剥がれ落ちて流路溝の下側の側面を転がって排出される。酸化剤ガス側と燃料側が元々飽和水蒸気に近いレベルまで加湿されているので、生成水によって生じる液滴は、酸化剤ガス側および燃料側の両方に生じる。そして、液滴が流路溝に滞留すると、反応ガスの流れが妨げられ、セル電圧が大きく低下したり、燃料欠乏によってセパレータのカーボンが腐蝕するなどの不具合が生じることになる。
また、この発明による固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に酸化剤電極と燃料電極とが接合一体化された電極・膜接合体と、セパレータとを交互に積層して構成された積層体を有し、酸化剤ガス流路溝が上記セパレータの酸化剤電極に面する有効面積部に酸化剤ガス入口マニホールドから酸化剤ガス出口マニホールドに至るように形成され、燃料流路溝が上記セパレータの燃料電極に面する有効面積部に燃料入口マニホールドから燃料出口マニホールドに至るように形成されており、上記積層体を横積みにして運転される固体高分子形燃料電池であって、鉛直方向に立てて並べられている上記セパレータの上記酸化剤ガス流路溝および上記燃料流路溝の溝方向を水平方向とする領域における鉛直方向下側の溝側面が、上記酸化剤電極および上記燃料電極の面する電極に対して直角に接するように形成され、鉛直方向に立てて並べられている上記セパレータの上記酸化剤ガス流路溝および上記燃料流路溝の溝方向を水平方向とする領域における鉛直方向上側の溝側面が、上記酸化剤電極および上記燃料電極の面する電極に対して鋭角に接するように形成されている。
図1はこの発明の実施の形態1に係るモールドセパレータを示す平面図、図2は図1のII−II矢視断面におけるモールドセパレータを金型から抜く状態を説明する断面図である。
図1において、モールドセパレータ1は、フェノール樹脂とカーボン粒子との混練物をモールド成形して矩形平板状に作製されている。そして、各マニホールドがモールドセパレータ1の相対する1対の辺の縁部にそれぞれ形成されている。つまり、第1反応ガス入口マニホールド6、冷却水入口マニホールド10および第2反応ガス出口マニホールド9がモールドセパレータ1の1辺に穿設され、第2反応ガス入口マニホールド8、冷却水出口マニホールド11および第1反応ガス出口マニホールド7がモールドセパレータ1の相対する他辺に穿設されている。なお、第1反応ガスが酸化剤ガスに対応し、第2反応ガスが燃料に対応する。
この第1反応ガス流路2の各流路溝3の両側面が、図2に示されるように、モールドセパレータ1の一面に対して鋭角な傾斜側面4と、モールドセパレータ1の一面に対して直角の直角側面5とから構成されている。そして、第1反応ガス流路2を構成する平行に配列されている流路溝3部分においては、溝方向と直交する方向に関して、同一側に位置する各流路溝3の側面がモールドセパレータ1の一面に対して鋭角な傾斜側面4に形成されている。つまり、図1中、左右方向に延びる流路溝3の部分では、上側に位置する側面が傾斜側面4に形成され、上下方向に延びる流路溝3の部分では、左側に位置する側面が傾斜側面4に形成されている。
モールド上金型12は、図2に示されるように、金型凸部13が、モールド上金型12の一面に、第1反応ガス流路2の流路溝パターンと面対称のパターンに形成されている。そして、金型凸部13の両側面が、モールド上金型12の一面に対して傾斜する傾斜側面14と、直角な直角側面15となっている。
まず、モールド上金型12を下金型(図示せず)にセットし、フェノール樹脂とカーボン粒子との混練物を金型内に充填する。そして、モールド上金型12を加圧し、モールドセパレータ1が圧縮成形される。ついで、モールド上金型13が、図2中左斜め方向(図1中左上角方向)に抜かれた後、モールドセパレータ1が下金型から取り外される。
なお、比較例1によるモールドセパレータ50は、図3および図4に示されるように、第1反応ガス流路52を構成する各流路溝53の両側面が、モールドセパレータ50の一面に対して直角の直角側面5で構成されている点を除いて、モールドセパレータ1と同様に構成されている。そして、このモールドセパレータ50のモールド成形に適用されるモールド上金型55の金型凸部56の両側面が、モールド上金型55の一面に対して直角な直角側面15となっている。そして、混練物の圧縮成形後、モールド上金型55が、図4中上方向に抜かれ、モールドセパレータ50が下金型から取り外される。
このことから、第1反応ガス流路2の各流路溝3の一方の側面に形成され傾斜側面4が金型からモールドセパレータ1を外し易くするのに役立っていることが明らかである。
図5はこの発明の実施の形態2に係るモールドセパレータを示す平面図、図6は図5のVI−VI矢視断面におけるモールドセパレータを金型から抜く状態を説明する断面図である。
図5において、モールドセパレータ20では、流路溝23が、上述の流路溝3と同様に、第1反応ガス入口マニホールド6から第1反応ガス出口マニホールド7に至るようにモールドセパレータ20の一面のほぼ全面に蛇腹状に多数本形成されて、第1反応ガス流路22が構成されている。そして、第1反応ガス流路22の各流路溝23の両側面が、モールドセパレータ20の一面に対して鋭角な傾斜側面4と、モールドセパレータ20の一面に対して直角の直角側面5とから構成されている。そして、第1反応ガス流路22を構成する平行に配列されている流路溝23部分においては、各流路溝23の同一側に位置する側面が傾斜側面4に形成されている。さらに、流路溝23の直角側面5の9箇所にモールドセパレータ20の一面に対して鋭角な傾斜側面24(特定領域)が形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1によるモールドセパレータ1と同様に構成されている。
そして、モールドセパレータ20のモールド成形では、フェノール樹脂とカーボン粒子との混練物が圧縮成形された後、モールド上金型25が、図6中左斜め方向(図5中左上角方向)に抜かれる。
従って、流路溝23の直角側面5の一部に形成されている傾斜側面27が、金型をモールドセパレータ20から容易に外すように作用することが明らかである。
そこで、この実施の形態2によれば、流路溝23間の部位の欠けやモールドセパレータ20自身の割れの発生を確実に抑えることができ、歩留まりを一層高めることができる。
図7はこの発明の実施の形態3に係る固体高分子形燃料電池を示す単セルの断面拡大図である。
図7において、単セル30は、上記実施の形態1による2枚のモールドセパレータ1によりMEA(電極・膜接合体)31を挟持して構成されている。MEA31は、酸化剤触媒層34が設けられた酸化剤電極基材33と燃料触媒層36が設けられた燃料電極基材35とにより固体高分子電解質膜32を挟み込み、ホットプレスにより一体化されて構成されている。また、モールドセパレータ1の一方は、流路溝3が第2反応ガス入口マニホールド8と第2反応ガス出口マニホールド9とを連通するように蛇腹状に形成されたものである。
また、図示していないが、単セル30を所定数積層し、冷却水流路が形成されたモールドセパレータを所定数の単セル30毎に配置して固体高分子形燃料電池が構成される。そして、固体高分子形燃料電池は、単セル30の積層方向を水平方向として使用される。
ここで、比較例2によるモールドセパレータ60は、図11および図12に示されるように、第1反応ガス流路62を構成する各流路溝63の両側面が、モールドセパレータ60の一面に対して鋭角な傾斜側面4で構成されている点を除いて、モールドセパレータ1と同様に構成されている。
その結果、セル電圧の変動が長期にわたって小さく抑えられ、セル電圧の低下率が小さい固体高分子形燃料電池(単セル30)が得られる。
図8はこの発明の実施の形態4に係る固体高分子形燃料電池を示す単セルの断面拡大図である。
図8において、単セル40は、上記実施の形態2による2枚のモールドセパレータ20によりMEA31を挟持して構成されている。また、モールドセパレータ20の一方は、流路溝23が第2反応ガス入口マニホールド8と第2反応ガス出口マニホールド9とを連通するように蛇腹状に形成されたものである。
ここで、傾斜側面24が形成されている流路溝23の領域では、流路断面積が他の流路溝23の領域の流路断面積より大きくなっている。そこで、液滴29は、傾斜側面24と電極基材33、35とで形成される鋭角な領域に滞留する液滴29に阻害されることなく、溝方向を水平方向とする流路溝23の領域を流れることになるので、液滴29のほとんどが、流路溝23内に滞留することなく排出される。その結果、流路溝23内での液滴29の過度の滞留がなくなり、反応ガスがスムーズに流れ、さらに滞留する液滴29周囲の反応ガスの濃度の低下が抑えられるので、セル電圧の変動およびセル電圧の低下率が小さくなったものと推考される。
そして、傾斜側面24と電極基材33、35とで形成される鋭角な領域に滞留される液滴29が、電極基材33、35に接触し、固体高分子電解質膜32の加湿に供せられるので、固体高分子電解質膜32がセル面内の9箇所で有効に加湿され、高いセル電圧が得られたものと推考される。
さらに、傾斜側面24がセル面内の9箇所に形成されているので、固体高分子電解質膜32の加湿に供せられる液滴29が僅かであり、MEA31の膨潤が抑えられ、MEA31の亀裂の発生が抑制される。
図9はこの発明の実施の形態5に係る固体高分子形燃料電池を示す単セルの断面拡大図である。
図9において、単セル40Aでは、流路溝23の直角側面5の一部に形成された傾斜側面24に相対する電極基材33、35の電極基材部41が、他の部位より撥水性を弱められている。
なお、他の構成は上記実施の形態4と同様に構成されている。
この運転試験結果から、この実施の形態5による単セル40Aでは、およそ700時間の連続運転の間、セル電圧の変動は3mV以内と極めて安定しており、セル電圧の低下率も5mV/1000hrと低いことが確認された。また、セル電圧が、実施の形態3に対して、7mVほど高く、内部抵抗が低いことが確認された。
また、傾斜側面24と電極基材33、35とで形成される鋭角な領域に滞留される液滴29が、撥水性を弱められた電極基材部41から固体高分子電解質膜32の加湿に供せられるので、固体高分子電解質膜32がセル面内の9箇所で有効に加湿され、高いセル電圧が得られたものと推考される。
図10はこの発明の実施の形態6に係る固体高分子形燃料電池を示す単セルの断面拡大図である。
図10において、単セル40Bでは、流路溝23の直角側面5の一部に形成された傾斜側面24に相対する触媒層34、36の領域に触媒層34、36の欠落部42を形成している。そして、欠落部42において、電極基材33、35が固体高分子電解質膜32に直接接している。
なお、他の構成は上記実施の形態4と同様に構成されている。
この運転試験結果から、この実施の形態6による単セル40Bでは、およそ700時間の連続運転の間、セル電圧の変動は4mV以内と極めて安定しており、セル電圧の低下率も6mV/1000hrと低いことが確認された。また、セル電圧が、実施の形態3に対して、3mVほど高く、内部抵抗が低いことが確認された。
また、傾斜側面24と電極基材33、35とで形成される鋭角な領域に滞留される液滴29が、触媒層34、36の欠落部42を通って固体高分子電解質膜32の加湿に供せられるので、固体高分子電解質膜32がセル面内の9箇所で有効に加湿され、高いセル電圧が得られたものと推考される。
また、本発明は、直線状の流路溝がモールドセパレータの表面に平行に多数本形成されているものにも適用できる。この場合、溝方向と直交する方向における同一の側に位置する各流路溝の側面に傾斜側面を形成すればよい。そして、固体高分子形燃料電池においては、溝方向が水平方向を向き、かつ、流路溝部の傾斜側面が鉛直方向の上方に位置するように、モールドセパレータを鉛直に立てて組み込まれればよい。
Claims (6)
- カーボン粒子と樹脂との混練物又は膨張黒鉛の平板をモールド成形してなるモールドセパレータであって、
上記モールドセパレータの少なくとも一面に複数本の流路溝が形成され、
上記複数本の流路溝のそれぞれは、一方の溝側面が上記モールドセパレータの表面に対して直角になるように形成され、他方の溝側面が上記モールドセパレータの表面に対して鋭角になるように形成されていることを特徴とするモールドセパレータ。 - 上記モールドセパレータの表面に対して直角になるように形成されている上記流路溝の一方の溝側面の一部を上記モールドセパレータの表面に対して鋭角になるように構成した特定領域が複数箇所設けられていることを特徴とする請求項1記載のモールドセパレータ。
- 固体高分子電解質膜の両側に酸化剤電極と燃料電極とが接合一体化された電極・膜接合体と、セパレータとを交互に積層して構成された積層体を有し、
酸化剤ガス流路溝が上記セパレータの酸化剤電極に面する有効面積部に酸化剤ガス入口マニホールドから酸化剤ガス出口マニホールドに至るように形成され、燃料流路溝が上記セパレータの燃料電極に面する有効面積部に燃料入口マニホールドから燃料出口マニホールドに至るように形成されており、
上記積層体を横積みにして運転される固体高分子形燃料電池において、
鉛直方向に立てて並べられている上記セパレータの上記酸化剤ガス流路溝および上記燃料流路溝の溝方向を水平方向とする領域における鉛直方向下側の溝側面が、上記酸化剤電極および上記燃料電極の面する電極に対して直角に接するように形成され、
鉛直方向に立てて並べられている上記セパレータの上記酸化剤ガス流路溝および上記燃料流路溝の溝方向を水平方向とする領域における鉛直方向上側の溝側面が、上記酸化剤電極および上記燃料電極の面する電極に対して鋭角に接するように形成されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池。 - 上記酸化剤電極および上記燃料電極の面する電極に対して鋭角に接する特定領域が、上記酸化剤ガス流路溝および上記燃料流路溝の溝方向を水平方向とする領域における鉛直方向下側の溝側面に部分的に複数箇所形成され、該特定領域における流路断面積が他の部分の流路断面積より大きいことを特徴とする請求項3記載の固体高分子形燃料電池。
- 上記酸化剤電極および上記燃料電極の電極基材の上記特定領域に接する部位の撥水性が、他の部分より弱められていることを特徴とする請求項4記載の固体高分子形燃料電池。
- 上記特定領域に接する上記酸化剤電極および上記燃料電極の触媒層の部位が欠落され、上記酸化剤電極および上記燃料電極の電極基材が上記固体高分子電解質膜に直接接していることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の固体高分子形燃料電池。
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