JP2005105400A - 成膜装置、成膜方法、光学素子、及び光学系 - Google Patents

成膜装置、成膜方法、光学素子、及び光学系 Download PDF

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Abstract

【課題】
プラズマダメージを殆ど受けることなく光学素子基板等の成膜対象に良好な薄膜を成膜することができ、その成膜対象の光吸収特性を低減することができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】
このスパッタ装置1は、導電性ターゲット2に電圧を印加することによりプラズマを発生させ、そのプラズマにより気化したターゲットの粒子を光学素子基板110の表面に堆積させることにより、光学素子基板110の表面に導電性薄膜と反応性ガス3とを反応させ、光学素子基板110の表面に導電性薄膜を形成する成膜装置であって、電圧の印加により発生するプラズマを指向させるチムニーユニット114を有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子等の基板表面に薄膜を形成する成膜装置に係り、特に、半導体露光装置に用いられるレンズ、ミラー等の光学素子表面にフッ化物を用いた反射膜又は反射防止膜等の薄膜を形成する成膜装置に関する。
光学素子の基板等の表面に形成される反射膜や反射防止膜等(以下、薄膜という。)は、一般にフッ化マグネシウム(MgF)等の低屈折率材料及び酸化アルミニウム(Al)等の高屈折率材料のいずれか一方又は組合せにより構成される。それらの薄膜は、要求される光学特性によってその膜厚が調整され、また、多層膜として構成された場合はその層構成等も調整されて形成(成膜)される。
この成膜においては、成膜対象としての基板が大面積であっても高速に成膜することが可能であることから、一般的に真空蒸着法が使用されることが多い。しかしながら、この真空蒸着法に使用される装置は、大型であること、膜厚の高制御性が困難であること、自動生産機への対応が困難であること等の課題を有していた。また、この真空蒸着法は、低温で成膜を行う必要がある場合に薄膜の膜強度が弱くなってしまい、充分な機械特性が得られないという課題も有していた。そこで近年、工程の省力化による生産効率の向上、薄膜の品質安定性、薄膜の膜質(膜強度、密着性)等の面で良好な特性を有すると考えられるスパッタ法による成膜が注目されている。
一方、半導体集積回路の微細パターンの露光・転写には、いわゆるステッパ又はスキャナと呼ばれる半導体露光装置(以下、露光装置という。)が用いられている。この露光装置に使用される露光光源は、半導体の高集積化に伴いArFレーザ(波長193nm)からFエキシマレーザ(157nm)へとその短波長化が進んでいる。この露光装置には多数のレンズが搭載されるので、レンズ1枚あたりの透過率損失が小さくても、露光光が多数のレンズを透過した結果大きな透過率損失となってしまう場合がある。そのような場合、露光光源の強度が大きくても露光対象の照射面における光量が不足してしまい、充分な光学特性が得られなくなってしまう。この現象は、上記の紫外領域の光源の場合のみならず、可視光源の場合でも生じ得る。
スパッタ法により金属フッ化物薄膜を成膜する方法として、基板上に金属薄膜を成膜する工程と、金属薄膜をフッ素ガス雰囲気下で加熱してフッ素化反応を行う工程とを含むものがある(例えば、特許文献1参照。)。このものによれば、金属ターゲットを用いて、フッ素リッチな環境においてスパッタリングにより成膜を行うことが可能である。
特開2001−267233号公報
しかしながら上記特許文献1に記載の方法に基づいて光学素子にフッ化物薄膜を成膜した場合に、プラズマが光学素子基板に接触することにより、成膜中の薄膜又は成膜対象としての光学素子基板に荷電粒子によるダメージを与えてしまい、結合欠陥等を生じてしまう場合がある。このプラズマ荷電粒子の接触によるダメージをプラズマダメージといい、この結合欠陥等によって光学素子の光吸収特性が増加してしまう場合がある。
特に、上記のように露光装置においては露光光源の短波長化が進んでいるので、露光装置に用いられる光学素子基板に成膜された薄膜が僅かな光吸収特性を有した場合であっても、その影響は大きなものとなってしまう。その結果、露光装置が充分な性能を発揮することができないという問題がある。
露光装置内の光学系は一般に数十枚のレンズによって構成されており、そのレンズ両面には屈折率の異なる複数の誘電体材料が数層〜数十層の多層膜の反射防止膜として形成されている。例えば、光学系が30枚のレンズによって構成され、レンズの露光光源波長における光の透過率がそのレンズ1面あたり99%である場合、光学系全体としての光の透過率は54.7%(すなわち0.99の60乗)となってしまう。
さらに、光学素子の反射防止膜が光吸収特性を有していると光学素子表面において発熱してしまうという問題もある。それにより光学素子表面が変形してしまい、収差等の悪影響を生じ、回路パターンの投影露光特性が劣化してしまう場合がある。特に露光光が集光される部分では、熱により薄膜自体が破壊される恐れがある。
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、プラズマダメージを殆ど受けることなく光学素子基板等の成膜対象に良好な薄膜を成膜することができ、その成膜対象の光吸収を低減することができる成膜装置を提供することを例示的目的とする。
上記の例示的目的を達成するために、本発明の例示的側面としての成膜装置は、ターゲットに電圧を印加することによりプラズマを発生させ、プラズマにより気化したターゲットの粒子を成膜対象の表面に堆積させることにより、成膜対象の表面に薄膜を形成する成膜装置であって、電圧の印加により発生するプラズマを指向させるプラズマ指向手段を有することを特徴とする。
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
以上説明したように、本発明に係る成膜装置によれば、プラズマダメージを殆ど受けることなく光学素子基板等の成膜対象に良好な薄膜を成膜することができ、その成膜対象の光吸収を低減することができる。また大面積の成膜対象に対しても均一な膜厚の薄膜を形成することができ、特に露光装置の光学系に適した光学素子とすることができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態に係る成膜装置を説明する。図1に示すように、成膜装置としてのスパッタ装置1は、成膜室100、電源113、不活性ガス供給手段107、反応性ガス供給手段111、予備真空室108を有して大略構成される。
図に示すように、成膜室100には反応性ガス供給手段111が接続されて、成膜室100内部にフッ化ガス等の反応性ガス3が供給されるようになっている。フッ化ガスとしては、例えばフッ素(F)ガス、テトラフルオロメタン(CF)ガス、フッ化窒素(NF)ガス、トリフルオロメタン(CHF)ガス又はこれらのガスのうち数種が混合されて使用される。
また、後述するように、成膜室100内部に配置されたターゲットユニット119に不活性ガス供給手段107が接続されて、その内部にはアルゴン(Ar)ガス、キセノン(Xe)ガス、ネオン(Ne)ガス、クリプトン(Kr)ガス等の不活性ガス4が供給されるようになっている。これらの不活性ガス4としては、上記のガスのうち数種が混合されて使用される場合もある。
成膜室100は、バルブ115を介して接続された排気手段105によって、その内部を減圧して真空とすることができるように構成されている。この排気手段105としては、例えば、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ、冷凍ポンプ(クライオポンプ)等又はそれらの組合せが用いられ、成膜室100内部を5.0e−7Torr(6.7e−7Torr)の高真空とすることができるようになっている。
成膜室100内部には、薄膜材料の一部としての導電性ターゲット2が配置されている。この導電性ターゲット2は、例えばマグネシウム(Mg)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)等の金属材料であり、電源113に接続されて高電圧が印加されるようになっている。その電源113は、プラズマ生起用の高周波重畳電源であって、異常放電対策が施されている。この電源113は、直流の矩形反転電圧が供給可能であり、その反転周波数は1kHz〜350kHzまでの範囲において調整可能とされている。
導電性ターゲット2の周囲を囲むように、ターゲットユニット119が配置されている。このターゲットユニット119は導電性材料で形成され、不活性ガス供給手段107によってターゲットユニット119内部に不活性ガス4が供給されることにより、導電性ターゲット2周囲を不活性ガス4環境下とする。
ターゲットユニット119の一方の面119a、すなわち不活性ガス供給手段107が接続されている面は、成膜室100を介して電気的に接地されている。そして、他方の面119b、すなわち成膜対象としての光学素子基板110に対向する側の面には、図に示すようにプラズマ指向手段としてのチムニーユニット114が設けられている。このチムニーユニット114は、導電性ターゲット2に電圧が印加されることにより発生するプラズマを指向するためのものであり、本実施の形態においては金属等の導電性材料であって円筒形状を呈している。
図9にターゲット周辺の装置構成とチムニーユニットの詳細を示した。同図において、901はリング形状の導電性ターゲット、902はマグネット、903は不活性ガス供給手段、904は電源、905はターゲットホルダー、906はシールド板、907は絶縁部材である。チムニーユニット114はシールド板906の上に固定されている。
再び図1に戻り、電源113によって導電性ターゲット2に高電圧が印加されると、プラズマが発生し、この導電性ターゲット2が粒子(以下、ターゲット粒子という。)となる。そのターゲット粒子が反応性ガス3と反応することにより、光学素子基板110の表面に、ターゲット粒子と反応性ガス3との反応生成物としての導電性薄膜が形成される。反応性ガス3としてフッ化ガスを用い、導電性ターゲットとしてMg、La、Gd、Nd、Na、Ba等の金属を用いた場合は、導電性薄膜としてフッ化マグネシウム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ネオジウム、フッ化ナトリウム、フッ化バリウム等の金属薄膜が光学素子基板110の表面に成膜される。
この成膜時に発生するプラズマはあらゆる方向に放射されるので、光学素子基板110の表面にまでプラズマが届いてしまう場合がある。光学素子基板110表面とプラズマとが接触すると成膜される導電性薄膜又は光学素子基板110事自体にいわゆるプラズマダメージを与えてしまい、必要な光学特性を得られない。しかしながら、このチムニーユニット114によって、光学素子基板110への到達が低減されるようにプラズマが指向されることにより、上記のプラズマダメージを低減することができる。具体的には、ターゲットユニット119内で発生するプラズマが大きく広がってしまうのを防ぐため、円筒形状のチムニーユニット114がプラズマの放射角度を狭めるように指向する。プラズマはチムニーユニット114の円筒側壁によって遮蔽され、光学素子基板110にまで殆ど到達しない。もちろん、プラズマの指向効率を向上させるためには、チムニーユニット114の円筒側壁の高さ(図中水平方向長さ)が高いほど、円筒の直径が小さいほどよい。しかしながらこれらの寸法は成膜効率に影響する場合があるので、チムニーユニット114の各部の寸法はプラズマの指向効率と成膜効率とのバランスにより決定されることとなる。
成膜室100の、ターゲットユニット119が配置されている側と反対の側には、ゲートバルブ118を介して予備真空室108が設けられている。この予備真空室108内部は予備排気手段120及びバルブ106によって真空とすることができるようになっている。予備真空室108内部には、搬送手段109によって光学素子基板110が搬送可能に配置されている。この光学素子基板110の成膜時の位置近傍には、図示しないプラズマ測定ユニットも配置され、これにより電子密度等のパラメータ測定が可能となっている。
次に、このスパッタ装置1を用いた光学素子基板110表面への薄膜の成膜方法について説明する。
まず成膜室100内部に配置されたターゲットユニット119内部に導電性ターゲット2を位置させ、その後、バルブ115を開成して排気手段105によりこの成膜室100を減圧し、成膜室100内部を5.0e−7Torr(6.7e−7Torr)の高真空とする。ゲートバルブ118を閉成した状態で予備真空室108内に、搬送手段109により成膜対象としての光学素子基板110を搬送可能に位置させ、予備真空室108内部を成膜室100内部同様高真空とする。
反応性ガス供給手段111により成膜室100内に反応性ガス3を供給し、不活性ガス供給手段107によりターゲットユニット119内に不活性ガス4を供給し、成膜室100内部を所定の圧力に調整する。その後、導電性ターゲット2に電源113により電圧を印加し放電を生起させると、それによりプラズマが発生する。そのプラズマインピーダンスが安定した後に、ゲートバルブ118を開成し、搬送手段109によって光学素子基板110を導電性ターゲット2から所定の距離の位置まで搬送する。
電圧の印加により導電性ターゲット2からターゲット粒子が生成され、そのターゲット粒子が反応性ガス3と反応する。その反応による反応生成物が光学素子基板110の表面に導電性薄膜として形成され、成膜が進行する。ターゲットユニット119の他方の面119bには円筒形状のチムニーユニット114が設けられており、その円筒側壁によってプラズマを遮蔽することによりプラズマを指向する。それにより、プラズマの光学素子基板110への到達が低減され、成膜された薄膜や光学素子基板110自体がいわゆるプラズマダメージを殆ど受けることがない。
成膜中及び放電生起時に使用するガスは処理が必須であるガスを用いるため排気系は吸着塔若しくは燃焼塔に接続され、大気中への暴露を防ぐ処理が施されている。
成膜開始より所定時間が経過すると、成膜を終了すべく電源113による電圧の印加を終了する。反応性ガス供給手段111、不活性ガス供給手段107による反応性ガス3、不活性ガス4の供給も停止し、搬送手段109により光学素子基板110を予備真空室108内へと引き戻す。
その後、ゲートバルブ118を閉成し、予備真空室108内に図示しない窒素供給手段により窒素を供給して略大気圧とした後、光学素子基板110を取り出す。取り出された成膜後の光学素子基板110は、図示しない真空紫外分光測定器によって真空紫外光の吸収率が測定され、その光学特性が評価される。
[実施例1]
導電性ターゲット2としてMg金属ターゲットを使用する。ターゲットユニット119の内部に取外し可能にMgターゲットを配置して、ターゲットユニット119の他方の面119bにチムニーユニット114を取付けた場合と取付けない場合との光学素子基板110近傍での電子密度の測定をプラズマ測定手段により行った。
電源113として直流電源を用い、Mgターゲットと直流電源との間に異常放電対策用にSprc−leV(AE社製)を使用した。不活性ガス4としてArガス200sccm、反応性ガス3としてArで12%に希釈されたFガス200sccmを成膜室100内に導入し、直流電源より500Wの電力をMg金属ターゲットに供給して放電を生起させた。このときの成膜中の圧力は4mTorrである。ターゲット電圧が安定した後にプラズマ測定手段によって光学素子基板110近傍での電子密度を測定した。
その測定結果を図2に示す。図2において横軸は、成膜室100の辺1aの略中央を起点として辺1bに沿った方向における距離であり、辺1bの略中央に相当する位置が300mmの距離となる。図からわかるように、辺1bの中央に近づくにつれて電子密度が大きくなり、また、チムニーユニット114を用いない場合よりも用いた場合の方が電子密度が小さい。すなわち、チムニーユニット114によってプラズマが指向されて、光学素子基板110近傍にプラズマが到達しにくくなっていることがわかる。
[実施例2]
上記実施例1の場合と同様の条件下で、光学素子基板110として2mm厚のフッ化カルシウム(CaF)合成結晶基板を用いた。予め、アルコール:エーテル比が1:3の溶剤によって表面の付着物(ゴミ、埃等)を除去し、UV/O3装置によって表面に残存する有機汚染物を除去したCaF合成結晶基板を、搬送手段109に配置してスパッタ装置1によりMgF薄膜の成膜を行った。成膜は、チムニーユニット114がある場合とない場合との2種類の条件下で行った。
成膜後の光学素子CaF合成結晶基板の各波長における光の吸収率を真空紫外分光器によって測定した結果を図3に示す。図3では、チムニーユニット無しでの170nmでの単位膜厚あたりの吸収を1としたときの比率で図示している。図3に示すように、チムニーユニット114がある場合はチムニーユニット114がない場合に比べて、波長の測定全域において光吸収が減少していることがわかる。したがって、チムニーユニット114の使用により、良好な光吸収特性を有する薄膜を光学素子基板に成膜することができる。
上記実施例1,2より、プラズマにより発生した荷電粒子が、薄膜または薄膜と光学素子基板との境界近傍においてそれらにダメージを与え、そのダメージによって長波長領域から短波長領域にかけて光学素子の光吸収が増加していることがわかる。また、チムニーユニット114を使用することにより光学素子基板近傍における電子密度を低減することができ、その結果プラズマダメージを低減できて、光学素子の光吸収を低減することができる。
[実施例3]
スパッタ装置1の成膜室100内部に配置されたチムニーユニット114の円筒側壁に磁場発生手段を配置する。このときの様子を図10に示した。図10においては、図9と同じものは同一符号を記し、説明を省略する。図10では、チムニーユニット114の円筒側壁に磁場発生手段201が配置されている。この磁場発生手段としては永久磁石でも電磁石でもよく、導電性ターゲット2に電圧印加して生成されたターゲット粒子によって発生する磁場と相反する磁場を形成するように配置する。これにより、チムニーユニット114の周囲にはターゲット粒子によって発生する磁場と逆方向の磁場を形成される。
このように磁場発生手段によりターゲット粒子による磁場と相反する磁場を発生させた場合と、磁場発生手段により磁場を発生させない場合との2種類の条件下で成膜を行った。導電性ターゲット2、反応性ガス3,不活性ガス4としては上記実施例1と同様のものを用い、成膜時におけるプラズマ測定手段による電子密度の測定結果を図4に示した。図4における縦軸及び横軸は図2と同様である。
図4からわかるように、磁場発生手段によりターゲット粒子による磁場と相反する磁場を発生させた場合の方が、磁場発生手段により磁場を発生させない場合よりも光学素子基板110近傍(すなわち、230mm〜300mm付近の位置)における電子密度が小さい。すなわち、磁場発生手段により、プラズマの指向性をさらに向上させることができ、光学素子基板110に到達するプラズマをさらに低減することができる。したがって、光学素子基板110及びその表面に成膜された薄膜のプラズマダメージをより一層低減することができる。
[実施例4]
上記実施例3の場合と同様の条件下で、光学素子基板110として2mm厚のフッ化カルシウム(CaF)合成結晶基板を用いた。CaF合成結晶基板の表面付着物、有機汚染物の除去についても実施例3と同様に行い、磁場発生手段によりターゲット粒子による磁場と相反する磁場を発生させた場合と、磁場発生手段により磁場を発生させない場合との2種類の条件下で成膜を行った。
成膜後の光学素子CaF合成結晶基板の各波長における光の吸収率を真空紫外分光器によって測定した結果を図5に示す。図5は磁場チムニーユニットの170nmでの単位膜厚あたりの吸収を1としたときの比率で図示している。図5に示すように、磁場発生手段により磁場を発生させた場合は磁場を発生させない場合に比べて、波長の測定全域において光吸収が減少していることがわかる。特に長波長側では光吸収の減少は著しく、例えばArFレーザ光の波長領域(193nm)やFレーザ光の波長領域(157nm)においても光吸収は減少している。したがって、磁場発生手段による磁場を発生させることにより、良好な光吸収特性を有する薄膜を光学素子基板に成膜することができる。
[実施例5]
導電性ターゲット2としてLa金属ターゲットを用い、不活性ガス4としてArガス150sccm、反応性ガス3としてArで12%に希釈されたFガス150sccmを成膜室100内に導入した。このときの成膜中の圧力は3mTorrである。電源113として直流電源を用い、400Wの電力をLa金属ターゲットに印加して、チムニーユニット114を用いて成膜を行った場合とチムニーユニット114を用いずに成膜を行った場合との比較結果を図6に示した。
図5より、導電性ターゲット2の材料がMgからLaに変更され、成膜される導電性薄膜がフッ化マグネシウムからフッ化ランタンに変更されても、成膜後の光学素子の光吸収特性の傾向が同様であることがわかる。すなわち、導電性ターゲット2の種類が変わっても、チムニーユニット114によってプラズマが指向されて、光学素子基板110近傍にプラズマが到達しにくくなっていることがわかる。
[実施例6]
この実施例6においては、図7に示すようなスパッタ装置10を用いて成膜を行った。このスパッタ装置10は、大略図1に示すスパッタ装置1と同様であるが、光学素子基板125と導電性ターゲットとの相対位置を変化させつつ成膜することが可能となっている。すなわち、光学素子基板125上に成膜される導電性薄膜を均一とするために、例えばこの実施例では、光学素子基板125を回転軸127を中心として回転させつつ成膜を行うことができる。
予め、光学素子基板125を支持部材126に支持させたうえで図示しない搬送手段に取付け、その光学素子基板125を図示しない予備真空室内に位置させた。成膜室123及び予備真空室を排気手段129によって高真空となるように減圧し、搬送手段により光学素子基板125を成膜室123内に移動した。ガス供給手段122より不活性ガス及び反応性ガスを成膜室123内に供給し、ターゲットユニット124内に配置された導電性ターゲットに電圧を印加して成膜を開始した。
ターゲットユニット124には、図に示すようにシャッター128が設けられている。プラズマインピーダンスが安定するまではシャッター128が閉成され、光学素子基板125に成膜されないようにしている。プラズマインピーダンスが安定してからシャッター128を開成し、回転軸127を中心として光学素子基板125を図中X軸周りに回転させつつ成膜を行う。同時に、回転軸に沿って図中Y軸方向に光学素子基板125、ターゲットユニット124を移動させつつ、光学素子基板125表面に形成される薄膜が均一となるように成膜する。
このようにして光学素子基板125表面に成膜された導電性薄膜の膜厚ムラを測定した結果を図8に示す。図8において、縦軸は光学素子基板125の中心部における薄膜の膜厚を100としたときの相対膜厚の比であり、横軸は光学素子基板125の中心から測定位置までの距離である。また、光学素子基板125としては、直径400mmの平面基板、直径300mmの凹面基板及び凸面基板を用いた。
図8からわかるように、いずれの光学素子基板においても、膜厚ムラは1%以内となっている。したがって、ステッパ等の露光装置の光学系として用いられる大径レンズや大型ミラーの場合であっても、この成膜方法によって充分均一な膜厚の薄膜を成膜することができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
本出願は、更に以下の事項を開示する。
[実施態様1] 導電性ターゲットに電圧を印加することにより生成された該導電性ターゲットの粒子と反応性ガスとを反応させ、成膜対象の表面に導電性薄膜を形成する成膜装置であって、
前記電圧の印加により発生するプラズマを指向させるプラズマ指向手段を有することを特徴とする成膜装置。
本発明の実施の形態に係るスパッタ装置の概略ブロック構成図である。 実施例1において、チムニーユニットがある場合とない場合の光学素子基板近傍における電子密度を測定した結果を示す図である。 実施例2において、チムニーユニットがある場合とない場合のそれぞれにおいて成膜された光学素子の光吸収を測定した結果を示す図である。 実施例3において、磁場発生手段によって磁場を発生させた場合と磁場を発生させない場合の光学素子基板近傍における電子密度を測定した結果を示す図である。 実施例4において、磁場発生手段によって磁場を発生させた場合と磁場を発生させない場合のそれぞれにおいて成膜された光学素子の光吸収を測定した結果を示す図である。 実施例5において、導電性ターゲットとしてLa金属ターゲットを用いるとともにチムニーユニットを用いた場合と用いない場合のそれぞれにおいて成膜された光学素子の光吸収を測定した結果を示す図である。 実施例6において使用されるスパッタ装置の概略ブロック構成図である。 図7に示すスパッタ装置によって成膜された光学素子基板上の薄膜の膜厚を測定した結果を示す図である。 チムニーユニットを説明するためのターゲット周辺のスパッタ装置の図である。 磁場付きチムニーユニットを説明するためのターゲット周辺のスパッタ装置の図である。
符号の説明
1,10:スパッタ装置(成膜装置)
2:導電性ターゲット
3:反応性ガス
4:不活性ガス
110,125:光学素子基板(成膜対象)
114:チムニーユニット(プラズマ指向手段)

Claims (14)

  1. ターゲットに電圧を印加することによりプラズマを発生させ、該プラズマにより気化した該ターゲットの粒子を成膜対象の表面に堆積させることにより、前記成膜対象の表面に薄膜を形成する成膜装置であって、
    前記電圧の印加により発生するプラズマを指向させるプラズマ指向手段を有することを特徴とする成膜装置。
  2. 前記ターゲット粒子と反応する反応性ガス供給手段を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記反応性ガスが、フッ化ガスであることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
  4. 前記反応性ガスが、フッ素ガス、テトラフルオロメタンガス、フッ化窒素ガス、トリフルオロメタンガスのうちから選択された少なくともいずれか一つのガスであることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
  5. 前記プラズマ指向手段が、前記プラズマの前記成膜対象への到達が低減されるように該プラズマを指向することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  6. 前記プラズマ指向手段が、筒形状であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  7. 前記プラズマ指向手段が、導電性材料であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  8. 前記ターゲット周囲を囲むように配置され、かつ、内部に不活性ガスが供給されるターゲットユニットに前記プラズマ指向手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  9. 前記プラズマ指向手段が、前記ターゲットユニットの前記成膜対象に対向する側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  10. 前記プラズマ指向手段の周囲に、前記ターゲットの粒子によって発生する磁場と逆方向の磁場が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  11. 前記ターゲットが、マグネシウム、ランタン、ガドリニウム、アルミニウム、ネオジウム、ナトリウム、バリウムのうちから選択されたいずれか一の材料であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  12. ターゲットに電圧を印加することによりプラズマを発生させ、該プラズマにより気化した該ターゲットの粒子を成膜対象の表面に堆積させることにより、前記成膜対象の表面に薄膜を形成する成膜方法であって、前記電圧の印加により発生するプラズマの前記成膜対象への到達が低減されるように該プラズマを指向することを特徴とする成膜方法。
  13. 請求項12に記載の成膜方法によって表面に薄膜が形成されたことを特徴とする光学素子。
  14. 複数の光学素子が組み合わせられて構成された光学系であって、該光学素子のうち少なくとも一の光学素子に請求項13に記載の光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
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