JP2005105364A - 鋼帯の酸洗設備、鋼帯の焼鈍・酸洗設備および酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス鋼帯の酸洗処理において、硫酸スラッジの発生を効果的に低減すると共に、酸洗槽から排出された廃酸を効果的に回収・再生・供給する方法を提供する。
【解決手段】硫酸酸洗槽と硝弗酸酸洗槽を被処理ステンレス鋼帯の搬送方向に直列に並べたステンレス鋼帯の酸洗設備であって、該硫酸酸洗は、硫酸酸洗槽への給酸および硫酸酸洗槽からの廃酸をつかさどる硫酸の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂を配置する。
【選択図】図4
【解決手段】硫酸酸洗槽と硝弗酸酸洗槽を被処理ステンレス鋼帯の搬送方向に直列に並べたステンレス鋼帯の酸洗設備であって、該硫酸酸洗は、硫酸酸洗槽への給酸および硫酸酸洗槽からの廃酸をつかさどる硫酸の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂を配置する。
【選択図】図4
Description
本発明は、鋼帯の酸洗設備、鋼帯の焼鈍・酸洗設備および酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法に関するものである。
図1に示すような、ステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗設備は、焼鈍炉の下流側に酸洗設備を備えている。
この酸洗設備は、鋼帯表層の酸化スケールを除去することを目的として、通常2〜3槽のタンクが直列に設置されている。また、図2に示すように、酸洗槽の下部に設置された循環タンクを介して酸洗液を循環し、給酸と廃酸を行いながら鋼帯の酸洗を行っている。酸洗液も製造条件に対応して各種のものが用いられているが、最近では前段部分で硫酸が用いられることが多い。図中、番号1が硫酸酸洗槽、2が硫酸循環タンクである。
この酸洗設備は、鋼帯表層の酸化スケールを除去することを目的として、通常2〜3槽のタンクが直列に設置されている。また、図2に示すように、酸洗槽の下部に設置された循環タンクを介して酸洗液を循環し、給酸と廃酸を行いながら鋼帯の酸洗を行っている。酸洗液も製造条件に対応して各種のものが用いられているが、最近では前段部分で硫酸が用いられることが多い。図中、番号1が硫酸酸洗槽、2が硫酸循環タンクである。
ここで、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗メカニズムを示すと、以下のようになる。
鋼帯母材 Fe + H2SO4 → FeSO4 (溶解)+ H2↑
Cr + H2SO4 → CrSO4 (溶解)+ H2↑
酸化スケール Fe304 → Fe304 ↓(沈殿)
Cr203 → Cr203 ↓(沈殿)
鋼帯母材 Fe + H2SO4 → FeSO4 (溶解)+ H2↑
Cr + H2SO4 → CrSO4 (溶解)+ H2↑
酸化スケール Fe304 → Fe304 ↓(沈殿)
Cr203 → Cr203 ↓(沈殿)
上記したとおり、硫酸液中では酸化スケールは不溶性であるため沈殿し、酸洗槽の底や、硫酸酸洗槽への硫酸の給酸および廃酸を司る循環系に設置された循環タンクの底に堆積する。また、鋼帯母材成分の金属塩(硫酸鉄(FeSO4)、硫酸クロム(CrSO4))もある程度までは硫酸液中に溶解しているが、溶解限度を超えると析出し、酸化スケールと同様に酸洗槽底や循環タンク底に堆積するようになる。これらを併せて一般に硫酸スラッジと呼ぶ。
ステンレス鋼帯の硫酸酸洗に伴って、硫酸スラッジの堆積レベルが鋼帯の通過する領域にまで達すると、鋼帯がスラッジと接触してスリ疵などが発生する。そのため、従来は、図3に示すように、堆積したスラッジの量(スラッジ堆積深さ)に応じて定期的に設備の補修清掃が必要となり、人力による硫酸スラッジの除去作業を行っていた。
硫酸スラッジの発生量は、ステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗量に比例して多くなる。従って、生産性の向上を図ろうとすると、必然的に硫酸スラッジの除去作業すなわち定期清掃の頻度が増加することになる。
このため、ステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗能力を向上させようとしても、硫酸スラッジの清掃の間、焼鈍・酸洗操業を停止せざるを得ないことが障害になって、十分に焼鈍・酸洗能力の向上を図ることはできなかった。
硫酸スラッジの発生量は、ステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗量に比例して多くなる。従って、生産性の向上を図ろうとすると、必然的に硫酸スラッジの除去作業すなわち定期清掃の頻度が増加することになる。
このため、ステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗能力を向上させようとしても、硫酸スラッジの清掃の間、焼鈍・酸洗操業を停止せざるを得ないことが障害になって、十分に焼鈍・酸洗能力の向上を図ることはできなかった。
また、ステンレス鋼帯に限らず、炭素鋼も含め、鋼帯の酸洗に際しては、製造コストの面から、酸洗液を効果的に回収して、再利用することが求められる。
従来、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗における硫酸の回収方法としては、イオン交換膜を利用して、硫酸を選択的に拡散透析させて回収する方法が知られている(例えば特許文献1)。
従来、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗における硫酸の回収方法としては、イオン交換膜を利用して、硫酸を選択的に拡散透析させて回収する方法が知られている(例えば特許文献1)。
その他、硝弗酸酸洗槽からの硝弗酸の回収法として、特許文献2および特許文献3に開示の方法が知られている。
特許文献2および特許文献3に開示の方法はいずれも、金属イオンを含有する硝弗酸廃液を、pH調整し、ついでイオン交換樹脂を利用することによって、硝弗酸を回収・再生するものである。
特許文献2および特許文献3に開示の方法はいずれも、金属イオンを含有する硝弗酸廃液を、pH調整し、ついでイオン交換樹脂を利用することによって、硝弗酸を回収・再生するものである。
上述したとおり、ステンレス鋼帯の酸洗処理においては、硫酸スラッジの効果的な低減および酸洗液の効果的な回収・再生が要望されている。
本発明は、上記の要望に有利に応えるもので、硫酸スラッジの堆積を効果的に低減すると共に、酸洗槽から排出された廃酸を効果的に回収・再生・供給することができるステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗設備を、酸洗槽における酸洗液の効果的な回収・再生・供給方法と共に提案することを一つの目的とする。
本発明は、上記の要望に有利に応えるもので、硫酸スラッジの堆積を効果的に低減すると共に、酸洗槽から排出された廃酸を効果的に回収・再生・供給することができるステンレス鋼帯の焼鈍・酸洗設備を、酸洗槽における酸洗液の効果的な回収・再生・供給方法と共に提案することを一つの目的とする。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗工程に、特許文献1に記載の方法の適用を試みたところ、硫酸スラッジの低減はおろか、硫酸の回収もままならなかった。
この理由は、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗における廃酸流量は、酸洗槽1槽あたり最大で2m3/hにも及ぶのに対し、特許文献1に記載の透析の方法では処理能力があまりに小さすぎたためである。
この理由は、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗における廃酸流量は、酸洗槽1槽あたり最大で2m3/hにも及ぶのに対し、特許文献1に記載の透析の方法では処理能力があまりに小さすぎたためである。
次に、発明者らは、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗に際し、特許文献2および特許文献3に記載の方法の適用を試みた。
その結果、これらの方法ではいずれも、短時間のうちにイオン交換樹脂が機能しなくなって、操業の中断を余儀なくされた。
その結果、これらの方法ではいずれも、短時間のうちにイオン交換樹脂が機能しなくなって、操業の中断を余儀なくされた。
そこで、発明者らは、この原因について調査したところ、微細なスケールによってイオン交換樹脂が目詰まりを起こしていることがわかった。
すなわち、ステンレス鋼帯の酸洗工程の第1段階である硫酸酸洗工程では、第2段階である硝弗酸酸洗工程に比べてスケールの除去量が格段に多く、それに伴って粒径が2〜3μm 程度の微細なスケールも大量に発生するため、かかる微細スケールがイオン交換樹脂に付着してイオン交換樹脂の機能を阻害していたのである。
すなわち、ステンレス鋼帯の酸洗工程の第1段階である硫酸酸洗工程では、第2段階である硝弗酸酸洗工程に比べてスケールの除去量が格段に多く、それに伴って粒径が2〜3μm 程度の微細なスケールも大量に発生するため、かかる微細スケールがイオン交換樹脂に付着してイオン交換樹脂の機能を阻害していたのである。
そこで、発明者らは、硫酸酸洗槽の循環系において、硫酸酸洗槽から排出された廃酸がイオン交換樹脂に到達する前に、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去することにより、上記の問題を有利に解決した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
また、本発明は、上記の知見を、炭素鋼のような普通鋼帯の硫酸酸洗工程にも適用したものである。
また、本発明は、上記の知見を、炭素鋼のような普通鋼帯の硫酸酸洗工程にも適用したものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.硫酸酸洗槽と硝弗酸酸洗槽を被処理ステンレス鋼帯の搬送方向に直列に並べたステンレス鋼帯の酸洗設備であって、
該硫酸酸洗槽は、硫酸酸洗槽への給酸および硫酸酸洗槽からの廃酸を司る硫酸の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とするステンレス鋼帯の酸洗設備。
1.硫酸酸洗槽と硝弗酸酸洗槽を被処理ステンレス鋼帯の搬送方向に直列に並べたステンレス鋼帯の酸洗設備であって、
該硫酸酸洗槽は、硫酸酸洗槽への給酸および硫酸酸洗槽からの廃酸を司る硫酸の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とするステンレス鋼帯の酸洗設備。
2.上記1において、硫酸酸洗槽の他、硝弗酸酸洗槽にも硝弗酸の給酸、廃酸を司る循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とするステンレス鋼帯の酸洗設備。
3.酸洗槽を被処理鋼帯の搬送方向に直列に並べた鋼帯の酸洗設備であって、
該酸洗槽は、酸洗槽への給酸および酸洗槽からの廃酸を司る酸洗液の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とする鋼帯の酸洗設備。
該酸洗槽は、酸洗槽への給酸および酸洗槽からの廃酸を司る酸洗液の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とする鋼帯の酸洗設備。
4.上記1〜3のいずれかの酸洗設備の搬送方向上流側に、さらに焼鈍炉を備えたことを特徴とする鋼帯の焼鈍・酸洗設備。
5.硫酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の硫酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで硫酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した硫酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生硫酸を、新規の硫酸と一緒に硫酸酸洗槽へ供給することを特徴とする、硫酸酸洗槽における酸洗用硫酸の回収・再生・供給方法。
6.硫酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の硫酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで硫酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した硫酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生硫酸を、新酸の硫酸と一緒に硫酸酸洗槽へ供給すると共に、
硝弗酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ過したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させることにより、硝弗酸を回収し、回収して得られた硝弗酸の再生液を、新規の硝弗酸と一緒に硝弗酸酸洗槽へ供給することを特徴とする、硫酸酸洗槽および硝弗酸酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法。
硝弗酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ過したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させることにより、硝弗酸を回収し、回収して得られた硝弗酸の再生液を、新規の硝弗酸と一緒に硝弗酸酸洗槽へ供給することを特徴とする、硫酸酸洗槽および硝弗酸酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法。
7.酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生酸を、新酸と一緒に酸洗槽へ供給することを特徴とする、酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法。
本発明によれば、微細なスケールが大量に発生する硫酸酸洗に際して、かような微細スケールを効果的に除去し、硫酸の回収・再生を効率よく行うことができるので、生産性の向上および製造コストの低減を図ることができる。
また、本発明によれば、硫酸液循環系内に設けたイオン交換樹脂を利用して硫酸液中の金属イオンを連続的に除去し、硫酸液中の金属濃度を金属塩析出濃度以下に維持することができるので、硫酸スラッジの発生量を大幅に低減することができ、ひいては生産性の向上に寄与する。
また、本発明によれば、硫酸液循環系内に設けたイオン交換樹脂を利用して硫酸液中の金属イオンを連続的に除去し、硫酸液中の金属濃度を金属塩析出濃度以下に維持することができるので、硫酸スラッジの発生量を大幅に低減することができ、ひいては生産性の向上に寄与する。
以下、本発明を具体的に説明する。
図4に、本発明に従う硫酸酸洗設備を模式で示す。
図中、番号3は廃酸タンク、4はろ布方式のろ過器、5はイオン交換樹脂、6は回収酸タンクであり、これらで硫酸液の循環系を構成している。なお、7は廃液タンク、また8は硝弗酸酸洗槽である。
図4に、本発明に従う硫酸酸洗設備を模式で示す。
図中、番号3は廃酸タンク、4はろ布方式のろ過器、5はイオン交換樹脂、6は回収酸タンクであり、これらで硫酸液の循環系を構成している。なお、7は廃液タンク、また8は硝弗酸酸洗槽である。
本発明では、番号4で示すろ布方式のろ過器が特に重要である。すなわち、従来の砂ろ過器、中空糸膜のような清澄ろ過装置や沈降槽あるいはフィルタプレスなどのろ過器では、硫酸酸洗の際に発生する大量かつ微細なスケールを効果的に除去することはできないため、その後の処理に支障を来していたのは前述したとおりである。
そこで、本発明では、イオン交換樹脂の上流側に、ろ布方式のろ過器を設置することによって上記の問題を解決したのである。ろ布のことをバグフィルタと称することもある。
ここに、使用するろ布のメッシュの大きさは 0.1〜0.9 μm 程度とするのが好ましい。ちなみに、このメッシュの大きさは、最大の面積のメッシュと同面積の円の直径で表した値である。メッシュの大きさが 0.9μm を超えると、本発明で目標とする一つの粒内での粒径の最大値が 1.0μm 以上のスケールを完全に除去することができず、一方 0.1μm 未満では、廃酸流量が最大2m3/hにも及ぶステンレス鋼帯の硫酸酸洗では処理能力の面で問題が生じるからである。
そこで、本発明では、イオン交換樹脂の上流側に、ろ布方式のろ過器を設置することによって上記の問題を解決したのである。ろ布のことをバグフィルタと称することもある。
ここに、使用するろ布のメッシュの大きさは 0.1〜0.9 μm 程度とするのが好ましい。ちなみに、このメッシュの大きさは、最大の面積のメッシュと同面積の円の直径で表した値である。メッシュの大きさが 0.9μm を超えると、本発明で目標とする一つの粒内での粒径の最大値が 1.0μm 以上のスケールを完全に除去することができず、一方 0.1μm 未満では、廃酸流量が最大2m3/hにも及ぶステンレス鋼帯の硫酸酸洗では処理能力の面で問題が生じるからである。
なお、図4では、イオン交換樹脂5の上流にろ布方式のろ過器4を1台設置した場合について示したが、台数は複数であっても良い。また、その場合には、全てのろ過器にろ布を用いる必要はなく、少なくとも1台についてろ布を用いれば、残りは従来の砂ろ過器等を用いても良い。
上記のようにして一つの粒内での粒径の最大値が 1.0μm 以上の微細スケールが除去された硫酸液は、イオン交換樹脂に導かれる。
このイオン交換樹脂は、図5(a) に示すような構造になっている。ここで、同図(b) に示すように、H+ やSO4 2- のような遊離酸はイオン交換樹脂に吸着される一方、FeSO4 等の結合酸はイオン交換樹脂を透過して、廃液として系外に排出される。一方、遊離酸が吸着されたイオン交換樹脂に水を供給すると、イオン交換樹脂に吸着された硫酸イオンを水に溶解させて回収できる。
このイオン交換樹脂は、図5(a) に示すような構造になっている。ここで、同図(b) に示すように、H+ やSO4 2- のような遊離酸はイオン交換樹脂に吸着される一方、FeSO4 等の結合酸はイオン交換樹脂を透過して、廃液として系外に排出される。一方、遊離酸が吸着されたイオン交換樹脂に水を供給すると、イオン交換樹脂に吸着された硫酸イオンを水に溶解させて回収できる。
とはいえ、H+ やSO4 2- のような遊離酸をイオン交換樹脂に吸着する動作と、イオン交換樹脂に吸着された硫酸イオンを水に溶解させて回収する動作は、同時に行えるわけではないため、前者をある期間実施したあと後者をある期間実施する、という動作を繰り返し行うことになる。すると、後者を実施している期間中、前者が実施できなくなって操業を停止せざるを得ないため、次のようにするのが好ましい。すなわち、イオン交換樹脂を2つ以上並列して備えておき、1つのイオン交換樹脂で前者を実施している期間中は、他のイオン交換樹脂で後者を実施しておき、その期間の経過後、他のイオン交換樹脂で前者を実施する、という動作を切り返す。
ところで、かようなイオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂が有利に適合する。
アニオン交換樹脂の例としては、
1)アリル基を3個ないし4個含む第四アンモニウム塩を重合または共重合させたもの、
2)芳香族モノアミンまたはジアミンとホルマリンを強塩基性で縮合させたもの、
3)脂肪族モノアミン、グアニジン、ポリエチレンポリアミンなどとホルマリンおよびフェノール類を縮合させたもの、
4)フェノール樹脂にマンニッヒ反応により第三アミノ基を導入したもの、
5)スチレン(−ジビニルベンゼン)共重合体をクロルメチル化したのち、第三アミンと反応させたもの、
6)スチレン共重合体またはフェノール樹脂などをニトロ化還元したもの、
7)シアン基をもつ重合体を還元したもの
などが好適である。
アニオン交換樹脂の例としては、
1)アリル基を3個ないし4個含む第四アンモニウム塩を重合または共重合させたもの、
2)芳香族モノアミンまたはジアミンとホルマリンを強塩基性で縮合させたもの、
3)脂肪族モノアミン、グアニジン、ポリエチレンポリアミンなどとホルマリンおよびフェノール類を縮合させたもの、
4)フェノール樹脂にマンニッヒ反応により第三アミノ基を導入したもの、
5)スチレン(−ジビニルベンゼン)共重合体をクロルメチル化したのち、第三アミンと反応させたもの、
6)スチレン共重合体またはフェノール樹脂などをニトロ化還元したもの、
7)シアン基をもつ重合体を還元したもの
などが好適である。
かくして、回収された硫酸液は、回収酸タンク6に送られ、ここで必要に応じて新規の硫酸と混合されて、硫酸酸洗槽へ供給される。
以上、硫酸酸洗槽における硫酸液の回収・再生・供給方法について説明したが、本発明では、硝弗酸酸洗槽から排出された硝弗酸液の回収・再生・供給も、併せて行うことができる。
この硝弗酸液の回収・再生・供給も、前掲図4と同様な循環系を利用して行うことができる。
但し、硝弗酸酸洗処理に際しては、微細なスケールはほとんど除去されているので、ろ過器としては硫酸酸洗の場合のようにろ布方式のろ過器を用いる必要まではなく、砂ろ過器のような一般的なろ過器でも十分である。勿論、ろ布方式のろ過器を用いても別段支障はない。
この硝弗酸液の回収・再生・供給も、前掲図4と同様な循環系を利用して行うことができる。
但し、硝弗酸酸洗処理に際しては、微細なスケールはほとんど除去されているので、ろ過器としては硫酸酸洗の場合のようにろ布方式のろ過器を用いる必要まではなく、砂ろ過器のような一般的なろ過器でも十分である。勿論、ろ布方式のろ過器を用いても別段支障はない。
さらに、本発明は、ステンレス鋼帯の酸洗処理にだけでなく、普通鋼帯の酸洗処理にも適用することができる。炭素鋼など普通鋼帯の酸洗槽は、多くの場合、焼鈍炉を伴わないが、酸洗槽の循環系は、図4に示した循環系と同じである。ろ過器はろ布方式とし、イオン交換樹脂は、ステンレス鋼帯の酸洗処理の場合と同じく、アニオン交換樹脂とすればよい。
上記のようにして、硫酸液を回収・再生・供給することにより、硫酸液中の金属濃度を金属塩析出濃度以下に維持することができるので、硫酸酸洗槽で生成する硫酸スラッジを低減できる。その結果、硫酸酸洗槽における硫酸スラッジの析出量、堆積量も減少するので、従来に比べ定期清掃の頻度を大幅に減らすことができる。
図4に示す硫酸液の循環系を備える硫酸酸洗設備を用いて、ステンレス鋼帯の硫酸酸洗を実施した。
酸洗条件は次のとおりである。
・硫酸酸洗浴 硫酸濃度:25mass%、温度:75℃
・ラインスピード:50 m/min
・廃酸流量:2m3/h(酸洗槽1槽あたり)
・ろ布(バグフィルタ)メッシュ:0.2 μm
・イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂
酸洗条件は次のとおりである。
・硫酸酸洗浴 硫酸濃度:25mass%、温度:75℃
・ラインスピード:50 m/min
・廃酸流量:2m3/h(酸洗槽1槽あたり)
・ろ布(バグフィルタ)メッシュ:0.2 μm
・イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂
本発明に従う硫酸酸洗設備を用いることにより、ラインスピード:50 m/min、硫酸酸洗槽1槽あたり廃酸流量:2m3/hという高速通板においても、何らの支障なしにステンレス鋼帯の硫酸酸洗を実施することができた。
また、上記の硫酸酸洗処理における、酸洗液中の金属濃度および硫酸酸洗槽内の硫酸スラッジ堆積量について調べた結果を、図6および図7に示す。
図6,7に示したとおり、本発明によれば、白抜きで示す硫酸酸洗液中の金属濃度を金属塩析出濃度(100 %)未満に低減することにより、網かけで示す硫酸スラッジの堆積量(スラッジ堆積深さ)を従来の1/5程度にまで低減することができた。
その結果、硫酸スラッジの清掃周期は従来の5倍以上に延長され、生産性を格段に向上させることができた。
図6,7に示したとおり、本発明によれば、白抜きで示す硫酸酸洗液中の金属濃度を金属塩析出濃度(100 %)未満に低減することにより、網かけで示す硫酸スラッジの堆積量(スラッジ堆積深さ)を従来の1/5程度にまで低減することができた。
その結果、硫酸スラッジの清掃周期は従来の5倍以上に延長され、生産性を格段に向上させることができた。
1 硫酸酸洗槽
2 硫酸循環タンク
3 廃酸タンク
4 ろ布方式のろ過器
5 イオン交換樹脂
6 回収酸タンク
7 廃液タンク
8 硝弗酸酸洗槽
2 硫酸循環タンク
3 廃酸タンク
4 ろ布方式のろ過器
5 イオン交換樹脂
6 回収酸タンク
7 廃液タンク
8 硝弗酸酸洗槽
Claims (7)
- 硫酸酸洗槽と硝弗酸酸洗槽を被処理ステンレス鋼帯の搬送方向に直列に並べたステンレス鋼帯の酸洗設備であって、
該硫酸酸洗槽は、硫酸酸洗槽への給酸および硫酸酸洗槽からの廃酸を司る硫酸の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とするステンレス鋼帯の酸洗設備。 - 請求項1において、硫酸酸洗槽の他、硝弗酸酸洗槽にも硝弗酸の給酸、廃酸を司る循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とするステンレス鋼帯の酸洗設備。
- 酸洗槽を被処理鋼帯の搬送方向に直列に並べた鋼帯の酸洗設備であって、
該酸洗槽は、酸洗槽への給酸および酸洗槽からの廃酸を司る酸洗液の循環系を有し、該循環系は、廃酸の流れる方向に直列に、ろ布方式のろ過器とイオン交換樹脂をそなえることを特徴とする鋼帯の酸洗設備。 - 請求項1〜3のいずれかの酸洗設備の搬送方向上流側に、さらに焼鈍炉を備えたことを特徴とする鋼帯の焼鈍・酸洗設備。
- 硫酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の硫酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで硫酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した硫酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生硫酸を、新規の硫酸と一緒に硫酸酸洗槽へ供給することを特徴とする、硫酸酸洗槽における酸洗用硫酸の回収・再生・供給方法。
- 硫酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の硫酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで硫酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した硫酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生硫酸を、新酸の硫酸と一緒に硫酸酸洗槽へ供給すると共に、
硝弗酸酸洗槽から排出された廃酸を、ろ過したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させることにより、硝弗酸を回収し、回収して得られた硝弗酸の再生液を、新規の硝弗酸と一緒に硝弗酸酸洗槽へ供給することを特徴とする、硫酸酸洗槽および硝弗酸酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法。 - 酸洗槽から排出された廃酸を、ろ布方式のろ過器に導いて廃酸中に含まれる一つの粒内で粒径の最大値が 1.0μm 以上の固形粒子を除去したのち、イオン交換樹脂に導いて廃酸中の酸イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、ついで酸イオンが吸着したイオン交換樹脂に水を供給してイオン交換樹脂に吸着した酸イオンを水に溶解させて回収し、さらに回収して得られた再生酸を、新酸と一緒に酸洗槽へ供給することを特徴とする、酸洗槽における酸洗液の回収・再生・供給方法。
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