JP2005102619A - 細胞変態装置及び細胞変態方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 単位時間当たりの細胞処理数が多く、細胞毎の処理にばらつきが少ない細胞変態装置及び細胞変態方法を提供する。
【解決手段】細胞と、この細胞を維持するリンガー液とを含む流体を収納する機械振動部16と、この機械振動部16に収納された流体中の振動子の質量と流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を振動子に印加する機械振動印加手段31とを備える。
【選択図】 図2


Description

本発明は生体から取り出した細胞の代謝の活性化、若しくはウイルスや細菌に侵されている細胞を見分けて破壊する細胞変態装置及び細胞変態方法に関する。
従来、細胞の構造、状態、機能を変化させるための一般的な手法としては、顕微鏡とマイクロッペット、マイクロピンセットを組み合わせた装置などが考えられる。この方法は、細胞を基板上で固定して光学顕微鏡で観察しながらマイクロピペットを差し込んでDNAやRNA103、或いは酵素などを注入して細胞変態を行なう。又、細胞のタンパク質を分析するためには、染色して蛍光顕微鏡で観察、又乾燥させて電子顕微鏡で観察する必要がある。
細胞の核に存在するDNAを取り出して遺伝子組換えを行なったり、人工的に生成したRNA103やタンパク質を細胞質に注入して、細胞分裂の制御やウイルスへの抵抗力を高めたりする細胞操作は、一つずつ丁寧に細胞を顕微鏡で観察しながらマイクロピペットを用いて行なわれる。その他、細胞に短時間電気パルスを印加して細胞膜に一時的に孔を開ける方法や、膜小胞に導入物質を入れて細胞膜と融合させる方法もある(非特許文献1参照)。
特開2001−275663号公報 B.アルバーツ(Alberts)他著「細胞の分子生物学(Molecular biology of the cell )第3版」、ガーランド出版社(Garland Publishing Inc.)p.185
上記の背景技術の課題は単位時間当たりの細胞処理数が少ないこと、細胞毎の処理にばらつきが大きいことである。
このため、本発明は、単位時間当たりの細胞処理数が多く、細胞毎の処理にばらつきが少ない細胞変態装置及び細胞変態方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の特徴は、(イ)細胞を含む流体を収納する機械振動部と、(ロ)この機械振動部に収納された流体中の振動子の質量と流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を振動子に印加する機械振動印加手段とを備える細胞変態装置であることを要旨とする。
本発明の第2の特徴は、(イ)生体から取り出した細胞を流体に含ませて容器に収納するステップと、(ロ)この容器に収納された流体中の振動子の質量と流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を、振動子に印加するステップとを含む細胞変態方法であることを要旨とする。
本発明によれば、処理の必要のある細胞だけを選択的に選び、この選択された細胞の構造、状態、機能等を変化させることが出来るので、単位時間当たりの細胞処理数が多く、細胞毎の処理にばらつきが少ない細胞変態装置及び細胞変態方法を提供することが出来る。
動物や植物の細胞は様々な種類があり機能も多様である。しかしながら、基本的な構成要素は共通性があり、それは、細胞膜、細胞質、細胞核、ミトコンドリアなどである。細胞核の中には遺伝子が貯蔵されており、細胞分裂の際には2倍体になり、遺伝情報が継承される。生体が正常に機能している場合、細胞はお互いに連携して組織や臓器を機能させている。しかしながら、疾病になった場合、何らかの形で細胞レベルに問題が生じている。例えば、遺伝子病の場合は遺伝子のDNA配列が正常な場合と比較して異なっており、インフルエンザの場合はウイルスが細胞膜95を突破して細胞質に侵入している状態である。又エイズの場合は、HIV(ヒト免疫不全症ウイルス)の外殻を構成している糖タンパク質(gp120)がCD4陽性ヘルパーT細胞の膜タンパクであるCD4分子を認識して攻撃する。ガンの場合は、細胞の分裂機構に問題が生じており、細胞分裂が制御不能な状態である。
本発明の第1〜第5の実施の形態を説明する前に、細胞中の「振動子」の振動の基本方程式に関して説明する。
(振動の基本方程式)
図3(a)に示すように、細胞膜95には、可動(動ける)タンパク質91、固定(動けない)タンパク質92a、受容体(レセプター)タンパク質92bが存在している。この可動タンパク質91は、細胞中の「振動子」の一例として機能する。受容体タンパク質92bは、細胞膜95で隔てられている細胞の内外情報の伝達を行なう。
Bをボルツマン定数、Tを:絶対温度とすると、減衰摩擦係数Cxは、拡散定数Dとの間に
x=kBT/D ・・・・・・(1)
の関係がある。典型的な拡散定数Dの値としてD=10-8[cm2/s]を仮定することが可能である。
図3(a)においてxとyを同一の絶対観測軸からの変位とすると、振動子である可動タンパク質91(質量M)91の運動方程式としては、次式が成立する:
M・x"=−Cx(x'−y') ・・・・・・(2)
ここで、x"はxの2次の時間微分、x'及びy'はそれぞれx及びyの2次の時間微分である。可動タンパク質91の膜上の相対位置パラメータを:
Δx=x−y ・・・・・・(3)
とすると(2)式より
M・Δx"+Cx・Δx'=−M・y" ・・・・・・(4)
が得られる。y"はyの2次の時間微分である。(4)式を解くために、振動子である可動タンパク質91の変動振幅Δx及び細胞の強制振動振幅yを、可動タンパク質91の振動数ω、複素振幅A及びBを用いて、以下のように定義する。
Δx=A・exp(iωt) ・・・・・・(5)
y=B・exp(iωt) ・・・・・・(6)
ここで、振動子である可動膜タンパク質以外は図3(a)の系では膜に固定されており、可動タンパク質91の復元力に関係するバネ定数kは、極めて小さく、k〜0と見なせると仮定する。但し、長鎖のタンパク質や、細胞内の繊維質(細胞骨格)に結合している場合は、バネ定数kは有限の値を取る。(4)式に(5)式と(6)式を代入して、AとBとの絶対値の比を励振効率を:
η=|A/B| ・・・・・・(7)
と定義して整理すると次式が得られる:
(Cx/M・ω)2=η-2−1 ・・・・・・(8)
ここで、
η-2 >>1 ・・・・・・(9)
の場合を扱うと、
η〜M・ω/Cx ・・・・・・(10)
(10)式とω=2πf(周波数Hz)より、図1の質量Mと周波数fの関係が得られる。但し、図1では質量Mは、分子量で表示されている。図1は、典型的な値としてD=10-8[cm2/s]、絶対温度T=310Kの場合について、励振効率ηをパラメータとして示す計算値である。前述のように励振効率ηは、(7)式で定義しているので、(10)式から、振動子である可動タンパク質91の特有の振動数(周波数)ω:
ω=(Cx/M)(Δx/Δy) ・・・・・(11)
が得られる。(11)式からから細胞変態の指針を得ることが出来る。
(Cx/M)は振動子が可動タンパク質91の場合は、可動タンパク質91により決まり、Δxは受容体(固定タンパク)92bと可動タンパク質91が衝突するために必要な平均移動距離から決まる。一方Δyは細胞に損傷を与えないために設定される。したがって(11)式より外部強制振動の周波数が得られる。例えば、減衰摩擦係数CxはT=310Kとして前述の値を用い、更に、質量M(分子量表示)=100kDa、Δx=10nm、Δy=100μmとすると、f=410MHzが得られる。
上記の細胞中の振動子の振動の基本方程式を基礎として、以下に、本発明の第1〜第5の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1〜第5の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることが出来る。
(11)式は、細胞中の「振動子」が可動タンパク質91の場合のみに限定されるものではなく、以下の第2〜第5の実施の形態においては、ナノ粒子又は、修飾したナノ粒子等、更には可動タンパク質91と修飾したナノ粒子の結合体等が細胞中の「振動子」として機能する。「ナノ粒子」とは、一般には、粒子の径が100nm程度以下の金属、蛍光体、プラスティック、半導体、高分子有機物、無機化合物等の微細な粒子と定義されている。例えば、金属ナノ粒子は、粒径が5nm以下になると顕著な量子サイズ効果を示すようになり、バルクでは見られない特異な物理的・化学的性質が発現する。なかでも、粒径2nm以下の金属ナノ粒子は室温でクーロン閉塞現象を示等の特殊な効果が報告されている。操作の容易性を考慮すれば、粒径1nm〜100nm程度のナノ粒子が好適である。又、実用的な意味からは、粒径5nm〜100nm程度のナノ粒子でも、十分に適用可能であり、一定の場合は、粒径10nm〜100nm程度のナノ粒子でも良い。又、以下の説明から理解出来るように、最適のナノ粒子の大きさは対象とする細胞の大きさとの相対的関係で決まり、巨大な細胞膜であれば、粒径100nm程度以上の微粒子でも採用可能である。
この場合、(11)式の質量Mは、振動子となるナノ粒子、修飾したナノ粒子、可動タンパク質91と修飾したナノ粒子の結合体の質量に置き換えられることは勿論である。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る細胞変態装置は、図2に示すように、アクチュエータ基板1aとカバーガラス2aとを備えている。アクチュエータ基板1aは、シリコン(Si)等の半導体基板が使用可能で、アクチュエータ基板1aの表面には、細胞群をリンガー液と共に注入し、一時収納する細胞注入槽11aと処理の終わった細胞群とリンガー液を一時保存し、排出する排出槽14aが形成され、細胞注入槽11aと排出槽14aとの間には、幅1μm〜1mm、好ましくは幅数μm〜数百μm、深さ1μm〜数百μm、好ましくは深さ数μm〜数十μmの流路(マイクロ流路)16が形成され、生体から分離・採取した細胞群がリンガー液と共に、この流路(マイクロ流路)16を流れる。「リンガー液」は、細胞を生体外で生きた状態に維持するために用いられる液体で、ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素のイオンを含む。細胞注入槽11aの近傍の流路16には入口側マイクロバルブ12a及び入口側マイクロポンプ13aが配置されている。排出槽14aの手前の流路16には出口側マイクロバルブ15aが配置されている。出口側マイクロバルブ15aが閉じられた状態で、リンガー液と共に流路16に注入された細胞は、流路16に収納されるので、流路16は「細胞収納部」として機能する。図3に示した細胞の強制振動の振幅Δy=100μmとすると、縦波の超音波で細胞の強制振動する場合は、流路(マイクロ流路)16の幅は細胞の強制振動の振幅Δy=100μmに選定出来る。即ち、印加される機械振動のモードによっては、流路(マイクロ流路)16の幅に一定の制限を与えることが可能である。
アクチュエータ基板1aの材料としては、Si基板等の半導体基板、石英ガラス等のガラス基板、アルミナ(Al23)等のセラミック基板の他、アクリル等のプラスティック(高分子材料)からなる基板や金属基板等が採用可能である。フォトリソグラフィ技術による法微細加工の容易性やMEMS技術の適用性を考慮すると、半導体基板、ガラス基板、セラミック基板等が好ましい。但し、基板材料に応じて、フォトリソグラフィ技術以外のレーザ加工、超音波加工、放電加工、プラズマ加工、ダイヤモンドドリル等による微細機械加工法も適用可能である。例えば、アクチュエータ基板1aがSi基板の場合は、流路(マイクロ流路)16は、水酸化カリウム(KOH)水溶液、エチレンジアミン水溶液、若しくは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等によるSi基板の異方性エッチング等で形成出来る。異方性エッチングによれば、(100)面のSi基板であれば、(100)面に約55°で交わる(111)面からなるV字型溝として流路(マイクロ流路)16を形成出来る。その他、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリング等種々の方法で、垂直側壁を有するU字型の流路(マイクロ流路)16を形成出来る。
入口側マイクロバルブ12a及び出口側マイクロバルブ15aとしては、ダイアフラム型(メンブレン型)、圧電素子型、静電型、電磁バルブ型やバイメタル・形状記憶合金型等の種々のマイクロバルブが使用可能である。入口側マイクロポンプ13aとしては、圧電素子型、静電型、電磁バルブ型やバイメタル・形状記憶合金型等の種々のマイクロポンプが使用可能である。更には、熱膨張や加熱による流体飽和蒸気圧の温度依存性と相変化による比容積の変化を利用するマイクロポンプ、磁性流体に磁場を印加するマイクロポンプ、高電界中で発生する電界と流体間の特殊な相互作用を利用したEHDポンプ等も使用可能である。
入口側マイクロポンプ13aと出口側マイクロバルブ15aとの間の流路16が機械振動部を構成している。この機械振動部の両側には、超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が、アクチュエータ基板1aに埋め込まれて配置されている。超音波発生素子(機械振動印加手段)31としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、リチウムナイオベイト(LiNbO3)、ビスマスゲルマニウムオキサイド(Bi12GeO20)等の圧電結晶が使用可能である。アクチュエータ基板1a自身をこれらの圧電結晶で構成しても良い。アクチュエータ基板1aをこれらの圧電結晶を用いて構成した場合は、すだれ状電極で弾性表面波を発生し、弾性表面波が流路16を横切るようにすることが可能になる。更にはガリウム砒素(GaAs)のガンダイオードを用いて超音波を発生させても良い。超音波検出素子(機械振動検出素子)33としてはGaAsバルク超音波検出素子等が使用可能である。アクチュエータ基板1aには、超音波発生素子(機械振動印加手段)31に印加する高周波のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング素子32が埋め込まれている。超音波発生素子(機械振動印加手段)31とインピーダンスマッチング素子32とはマイクロストリップ線路等の電気配線51bで接続されている。インピーダンスマッチング素子32は、同様にマイクロストリップ線路等の電気配線51aを介して外部回路に図示を省略した同軸ケーブルで接続されている。超音波検出素子(機械振動検出素子)33は、超音波発生素子(機械振動印加手段)31から照射される超音波の強度をモニタして、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を駆動する高周波発信器の出力をフィードバック制御する。
アクチュエータ基板1aの細胞注入槽11a及び排出槽14aの位置に対応するカバーガラス2aには、細胞注入口21a及び排出口22aが設けられている。これらの細胞注入口21a及び排出口22aは、カラス基板に化学エッチングで開口しても良く、或いはレーザドリルで孔を開けても良い。アクチュエータ基板1aとカバーガラス2aとは、例えば、加熱ながら電圧を印加して接着する陽極融着法等の貼り合わせ法(直接接合法)で貼り合わせられている。
第1の実施の形態に係る細胞変態方法は、図2に示す細胞変態装置を用い、以下のような手順で行えば良い:
(イ)図2に示す細胞変態装置の入口側マイクロバルブ12aを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞群をリンガー液と共に、細胞注入口21aから細胞注入槽11aへ注入する。
(ロ)次に、出口側マイクロバルブ15aを閉じた状態で、入口側マイクロバルブ12aを開き、入口側マイクロポンプ13aを作動させ、細胞注入槽11aから細胞群をリンガー液と共に流路16に注入する。
(ハ)細胞群がリンガー液と共に流路16に注入されると同時に、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を動作させ、図1の質量Mと周波数fとの関係を参照して、特定の周波数の超音波を、細胞群に照射する。
(ニ)超音波の細胞群への照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15aを開け、細胞群をリンガー液と共に、排出槽14aへ送り込み、排出槽14aから排出口22aを介して所定の容器へ排出する。
第1の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、図3(b)に示すように、振動子である可動タンパク質91は、細胞外部から照射された超音波の強制振動で周期運動をさせることで、細胞膜95上の受容体(固定タンパク質)92bに可動タンパク質91が反復衝突し、そのコンフォーメーション(形)を一定時間変形させ、細胞内のシグナル伝達分子に影響を与え、生体から分離・採取した細胞の機能を変えることが出来る。例えば、受容体(固定タンパク質)92bが変形して、細胞内のシグナル伝達分子に影響を与えれば、生体から分離・採取した細胞の代謝機能が変化する。
第1の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、このようにして、振動子である可動タンパク質91と固定タンパク質92aとの衝突により、生体から分離・採取した細胞に影響を与えることが出来るが、一方で、可動タンパク質91の振動で細胞膜95を穿孔することも可能である。無論、このためには、振動強度や振動時間を一定以上に設定する必要がある。細胞膜95に孔があくと、細胞の外部からイオンや高分子などが流れ込み(導入効率はΔxに比例)細胞の状態を変化させる。あらかじめ細胞外に細胞変態に有効なイオンや高分子(タンパク質、RNA103/DNA)を注入しておけば、生体から分離・採取した細胞の修復又は、細胞の構造、状態、機能の変化が行なえる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図3(a)の可動タンパク質91が生体の細胞中の「振動子」として機能すると説明した。本発明の第2の実施の形態に係る細胞変態装置においては、ナノ粒子又は、修飾したナノ粒子、更には可動タンパク質91と修飾したナノ粒子の結合体が生体の細胞中の「振動子」として機能する。
本発明の第2の実施の形態に係る細胞変態装置は、図4に示すように、アクチュエータ基板1bと、アクチュエータ基板1bに貼り合わせ法(直接接合法)等で貼り合わせられたカバーガラス2bとを備えている点では、第1の実施の形態に係る細胞変態装置と同様である。しかし、カバーガラス2bには、細胞注入口21b及び排出口22bの他に、ナノ粒子又は表面を高分子等で修飾したナノ粒子を注入するナノ粒子注入口23が設けられている点が、第1の実施の形態に係る細胞変態装置とは異なる。
「表面を高分子等で修飾したナノ粒子」とは、図5に示すように、ナノ粒子100の表面に多種類の役割の異なる、DNA102,RNA103,タンパク質92c、高分子101等を結合したナノ粒子を意味する。更に、図示を省略した酵素などを、ナノ粒子100の表面にあらかじめ結合させておいても良い。或いは、図6に示すように、ナノ粒子100の表面を高分子101等で、一部又は全部を被覆したナノ粒子を意味する。例えば、DNA102,RNA103,タンパク質92c、高分子101等の含まれた水溶液中に金属ナノ粒子100を入れて表面吸着現象を利用すれば、DNA102,RNA103,タンパク質92c、高分子101等の表面の帯電部分に金属ナノ粒子100が引き寄せられ、表面を高分子等で修飾したナノ粒子100が生成される。
第2の実施の形態に係る細胞変態装置では、アクチュエータ基板1bの表面には、細胞注入口21b、排出口22b及びナノ粒子注入口23に対応して、細胞注入槽11b、排出槽14b及びナノ粒子注入槽11cが形成されている。ナノ粒子注入槽11cには、ナノ粒子又は高分子等で修飾したナノ粒子を注入するナノ粒子が一時貯蔵される。
細胞注入槽11bには幅数〜数百μm、深さ数〜数十μm程度のマイクロ流路である細胞流路16aが接続され、ナノ粒子注入槽11cには、同様なマイクロ流路であるナノ粒子流路16bが接続されている。細胞流路16aとナノ粒子流路16bとは合流し、集合流路16cとなり、排出槽14bに導かれる。集合流路16cも、幅数〜数百μm、深さ数〜数十μm程度のマイクロ流路であるが、流量を考慮すると、マイクロ流路の断面積は、細胞流路16aとナノ粒子流路16bの断面積の合計程度が好ましい。
細胞注入槽11bの近傍の細胞流路16aには第1入口側マイクロバルブ12b及び第1入口側マイクロポンプ13bが配置され、ナノ粒子注入槽11cの近傍のナノ粒子流路16bには第2入口側マイクロバルブ12c及び第2入口側マイクロポンプ13cが配置されている。
細胞流路16aとナノ粒子流路16bとの合流点近傍の集合流路16cには、攪拌槽17が配置されている。攪拌槽17は、例えばマイクロスクリューをマイクロアクチュエータで駆動するような構造が採用可能である。攪拌槽17の下流側で、攪拌槽17の近傍の集合流路16cには、中間マイクロバルブ18及び中間マイクロポンプ19が配置され、排出槽14bの手前の集合流路16cには出口側マイクロバルブ15bが配置されている。
第1入口側マイクロバルブ12b、第2入口側マイクロバルブ12c、中間マイクロバルブ18及び出口側マイクロバルブ15bとしては、第1の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロバルブが使用可能である。第1入口側マイクロバルブ12b、第2入口側マイクロポンプ13c及び中間マイクロポンプ19も、第1の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロポンプが使用可能である。
中間マイクロポンプ19と出口側マイクロバルブ15bとの間の集合流路16cが機械振動部を構成している。この機械振動部の両側には、第1の実施の形態に係る細胞変態装置と同様な、超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が、アクチュエータ基板1bに埋め込まれて配置されている。アクチュエータ基板1bには、超音波発生素子(機械振動印加手段)31に印加する高周波のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング素子32が埋め込まれている。超音波発生素子(機械振動印加手段)31とインピーダンスマッチング素子32とは電気配線51bで接続され、インピーダンスマッチング素子32は、外部回路に図示を省略した同軸ケーブルで接続され点等は、第1の実施の形態に係る細胞変態装置と同様であり、重複した説明を省略する。
第2の実施の形態に係る細胞変態装置においては、細胞注入口21bを介して細胞を細胞注入槽11bに注入し、ナノ粒子注入口23を介して、ナノ粒子注入槽11cにナノ粒子又は表面を高分子等で修飾したナノ粒子を注入し、収納する。そして、細胞流路16aを流れてきた細胞と、ナノ粒子流路16bを流れてきた表面を高分子等で修飾したナノ粒子100(以下において「修飾ナノ粒子100」という。)が、合流したのち、攪拌槽17で攪拌される。この結果、図6に示すように、修飾ナノ粒子100が、脂質二重層からなる細胞膜95に結合する。或いは、細胞と修飾ナノ粒子100を混合し、攪拌することにより、例えば、図9に示すように、細胞膜95にある特殊タンパク質92cと修飾ナノ粒子100が選択的に結合する。
例えば、図11(a)に示すように、ナノ粒子100を、卵白由来のタンパク質であるアビジン111で被覆して修飾ナノ粒子100を作製しておけば、アビジン111は一分子当たりに4分子のビオチン残基112に非常に強く結合出来る。そして一本鎖のビオチン残基112は、DNA鎖の末端であるが、図11(a)に示すように他の一本鎖のDNAと選択的に結合する。即ち、アデニンAとチミンT、グアニンGとシトシンCとで塩基対と呼ばれる水素結合を作り、二重螺旋(二本鎖)を形成するように相補結合する。アデニンAとチミンTは2本、グアニンGとシトシンCは3本の水素結合を作ることが出来る。
図11(b)及び(c)に示すもう一種類の核酸であるRNA(リボ核酸)のペントースはリボースであり,塩基もチミンTの代わりにウラシルUを含んでいる。DNA内の遺伝子領域は、タンパク質合成に使えるメッセンジャーRNAという一本鎖の分子にコピーされる。図11(b)に示す一本鎖のメッセンジャーRNAは,細胞質に移動し、一本鎖のDNAと相補結合により選択的に結合する。
又別のタイプの一本鎖のRNA(トランスファーRNA)は,図11(c)に示すように一本鎖のRNAと相補結合により選択的に結合し、タンパク鎖が作られる。このようにして、修飾ナノ粒子100を作製しておけば、修飾ナノ粒子100にある特殊タンパク質92cが選択的に結合し、特有な糖鎖を結合することが出来る。
修飾ナノ粒子100が、図6に示すように細胞膜95に結合すれば、あとは前述のように(11)式を用いて、振動子の振動の周波数を決めて、細胞の構造、状態、機能を変化させれば良い。即ち、修飾ナノ粒子100が、細胞膜(脂質二重層)95に結合した後に、特定の周波数の機械振動を印加して、図5に示すように、細胞膜95を穿孔、或いは図6に示すように、細胞膜95にある受容体タンパク質(レセプター)92bと衝突させることが出来る。或いは、ナノ粒子100を細胞質に導入させることで細胞の機能を変化させることが出来る。
なお、表面を高分子等で修飾しない孤立したナノ粒子100の場合も、(11)式を用いて、振動子となる孤立したナノ粒子100の質量に対応する周波数を決めて、機械振動を印加すれば図7に示すように、細胞膜95を穿孔出来る。即ち、図7に示す細胞膜95の穿孔は、修飾ナノ粒子100に対しても、孤立したナノ粒子100に対しても実現可能である。
そして、図8に示すように修飾ナノ粒子100と受容体92bとの衝突により、受容体92bと結合しているホルモン99などのメッセンジャー分子の離脱が起こる。
又、修飾ナノ粒子100を膜タンパク質91と選択的に結合させ、その後に(11)式で決まる、振動子となる修飾ナノ粒子100と膜タンパク質91との結合体の振動の周波数の機械振動を印加し、図9に示すように、細胞膜95にある受容体タンパク質(レセプター)92bと衝突させることで細胞の機能を変化させることが出来る。
このように、特定の周波数の機械振動を印加して細胞膜95を穿孔したり、ナノ粒子100をキャリアー(配達手段)として細胞質に高分子101などを導入させることで細胞の機能を変化させるこが出来る。したがって、振動子となる修飾ナノ粒子100或いは、孤立したナノ粒子100を利用することで、多彩な細胞変態を行なうことが可能になる。
第2の実施の形態に係る細胞変態方法は、第1の実施の形態に係る細胞変態方法での可動タンパク質91の役割を、振動子となる修飾ナノ粒子100或いは、孤立したナノ粒子100が肩代わりした方法に対応する。
以下においては、ナノ粒子100の表面を高分子等で修飾しない非修飾ナノ粒子100を用いる場合について、具体的な作業手順を示す:
(イ)先ず、水溶液中で金属イオンを凝集させ加熱生成する方法、或いは真空蒸着法により基板表面に金属の2次元の島状構造を作製した後、熱処理を行う方法などでナノ粒子100を作製する。溶液中でFe Cl3・6H2OとNH4OHを反応させて凝集現象で沈殿させて磁性ナノ粒子(Fe2O3)を作製しても良い。
(ロ)次に、図4に示す細胞変態装置の第1入口側マイクロバルブ12bを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞群をリンガー液と共に、細胞注入口21bから細胞注入槽11bへ注入する。更に、第2入口側マイクロバルブ12cを閉じた状態で、非修飾ナノ粒子100の一群をリンガー液と共に、ナノ粒子注入口23からナノ粒子注入槽11cへ注入する。
(ハ)次に、中間マイクロバルブ18を閉じた状態で、第1入口側マイクロバルブ12bを開き、第1入口側マイクロポンプ13bを作動させ、細胞注入槽11bから細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aに注入する。同時に、第2入口側マイクロバルブ12cを開き、第2入口側マイクロポンプ13cを作動させ、ナノ粒子注入槽11cから非修飾ナノ粒子100の一群をリンガー液と共にナノ粒子流路16bに注入する。この結果、細胞群と非修飾ナノ粒子100の一群とは、集合流路16cで混合される。
(ニ)更に、中間マイクロバルブ18を閉じた状態で、攪拌槽17を作動させ、非修飾ナノ粒子100の一群と細胞群を均一になるまで十分に攪拌する。
(ホ)非修飾ナノ粒子100の一群と細胞群とが十分に攪拌された後、出口側マイクロバルブ15bを閉じた状態で、中間マイクロバルブ18を開き、中間マイクロポンプ19を作動させ、表面を細胞群で修飾した非修飾ナノ粒子100の一群を集合流路16cの下流に放流する。表面を細胞群で修飾した非修飾ナノ粒子100の一群が集合流路16cの下流に放流されると同時に、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を動作させ、前述した(11)式から求められる特定の周波数の超音波を、細胞群に照射する。但し、(11)式の質量Mは、振動子となる非修飾ナノ粒子100の質量を考慮した値になる。特定の周波数の超音波で、非修飾ナノ粒子100に機械振動を印加すれば図7に示すように、非修飾ナノ粒子100が細胞膜95を穿孔し、細胞の構造、状態、機能等を変化させることが出来る。或いは、非修飾ナノ粒子100を受容体92bと繰り返し衝突させ、受容体92bと結合しているホルモン99などのメッセンジャー分子の離脱を生じさせ、細胞の構造、状態、機能等を変化させることが出来る。
(ヘ)超音波の細胞群への照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15bを開け、細胞群をリンガー液と共に、排出槽14bへ送り込み、排出槽14bから排出口22bを介して所定の容器へ排出する。
次に、ナノ粒子100の表面を高分子等で修飾した修飾ナノ粒子100を作製し、細胞膜95自体と結合させる場合について、具体的な作業手順を示す:
(イ)先ず、前述と同様に、水溶液中で金属イオンを凝集させ加熱生成する方法等で、金属ナノ粒子100を作製する。そして、タンパク質の水溶液中に金属ナノ粒子100を入れて、タンパク質の表面の帯電部分に金属ナノ粒子100を引き寄せる。このように、表面吸着現象により金属ナノ粒子100の表面をタンパク質で被覆し、修飾ナノ粒子100を作製する。
(ロ)次に、図4に示す細胞変態装置の第1入口側マイクロバルブ12bを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞群をリンガー液と共に、細胞注入口21bから細胞注入槽11bへ注入する。更に、第2入口側マイクロバルブ12cを閉じた状態で、修飾ナノ粒子100の一群をリンガー液と共に、ナノ粒子注入口23からナノ粒子注入槽11cへ注入する。
(ハ)次に、中間マイクロバルブ18を閉じた状態で、第1入口側マイクロバルブ12bを開き、第1入口側マイクロポンプ13bを作動させ、細胞注入槽11bから細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aに注入する。同時に、第2入口側マイクロバルブ12cを開き、第2入口側マイクロポンプ13cを作動させ、ナノ粒子注入槽11cから修飾ナノ粒子100の一群をリンガー液と共にナノ粒子流路16bに注入する。この結果、細胞群と修飾ナノ粒子100の一群とは、集合流路16cで混合される。
(ニ)更に、中間マイクロバルブ18を閉じた状態で、攪拌槽17を作動させ、修飾ナノ粒子100の一群と細胞群を均一になるまで十分に攪拌し、図6に示すように、修飾ナノ粒子100を細胞膜95に結合させる。或いは、図9に示すように、可動タンパク質91と修飾ナノ粒子100とを選択的に結合させる。
(ホ)修飾ナノ粒子100の一群と細胞群とが十分に攪拌された後、出口側マイクロバルブ15bを閉じた状態で、中間マイクロバルブ18を開き、中間マイクロポンプ19を作動させ、表面を細胞群で修飾した修飾ナノ粒子100の一群を集合流路16cの下流に放流する。表面を細胞群で修飾した修飾ナノ粒子100の一群が集合流路16cの下流に放流されると同時に、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を動作させ、前述した(11)式から求められる特定の周波数の超音波を、細胞群に照射する。但し、(11)式の質量Mは、振動子となる修飾ナノ粒子100の質量若しくは、振動子となる可動タンパク質91と修飾ナノ粒子100の結合体の全体の質量を考慮した値になる。特定の周波数の機械振動を修飾ナノ粒子100印加して、図5に示すように、細胞膜95を穿孔、或いは図6に示すように、細胞膜95にある受容体タンパク質(レセプター)92bと衝突させる。或いは、図9に示すように、可動タンパク質91と結合した修飾ナノ粒子100を受容体タンパク質(レセプター)92bと衝突させることで細胞の機能を変化させる。
(ヘ)超音波の細胞群への照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15bを開け、細胞群をリンガー液と共に、排出槽14bへ送り込み、排出槽14bから排出口22bを介
以上のように、第2の実施の形態に係る細胞変態方法においては、修飾ナノ粒子100は、膜タンパク質92cの実効分子量を増加するの役割、RNA103などを運搬する役割を果たしている。
ナノ粒子100はその表面を修飾した修飾ナノ粒子100とすることが出来るので、DNA102,RNA103、タンパク質92c、酵素、蛍光分子、高分子101などを細胞内に運搬することが出来、それによって細胞質や細胞核に存在するDNA102、RNA103や酵素に対して干渉することが出来る。したがって、第2の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、正常でない状態にある細胞にナノ粒子100を作用させて細胞の修復を図ることが可能である。基本的な原理は、ナノ粒子100を外力や選択的結合特性(例えば細胞やタンパク質92cに特有な糖鎖を認識する)を用いて精密誘導しながら細胞の特定の場所に相互作用させて付着させ、更に外力でナノ粒子100を励起することで細胞の活性度や細胞分裂を制御する。
即ち、細胞膜95の穿孔により、図5のようにナノ粒子100が細胞内に入り込み、表面にある高分子101が細胞内のRNA103/タンパク質92c/酵素などと結合し、或いはターゲット細胞に特定のRNA103を注入して、様々な生化学反応を制御し、細胞を修復することが可能となる。
第2の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、図8に示すようにナノ粒子100と受容体92bとの衝突により、受容体92bと結合しているホルモン99などのメッセンジャー分子の離脱が起こる。これにより、好ましくないな細胞活性が抑制されて、細胞の構造、状態、機能を変化させることが可能になる。
更に、ニューロン(脳神経細胞)の場合、細胞膜95上の可動タンパク質91やナノ粒子100は特に他の膜タンパク質92cと衝突しなくとも、振動変位により図10に示すように細胞膜95に隣接する結合水94のエントロピーを増加させることで、麻酔作用などを誘発して、神経伝達を制御することが可能である。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る細胞変態装置は、図12に示すように、細胞流路16aの第1入口側マイクロポンプ13bの下流側に、ウイルスや細菌に侵されている細胞を見分ける細胞解析部(細胞診断用CT部)7が設けられている点が、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置とは異なる。細胞解析部7は、生体から分離・採取した細胞の3次元構造を得るCT(コンピュータ・トモグラフィー)部分である。
細胞流路16aの細胞解析部7の下流側には、第1中間マイクロバルブ18a及び第1中間マイクロポンプ19aが配置され、第1中間マイクロポンプ19aの下流側で、細胞流路16aとナノ粒子流路16bとが合流している。細胞流路16aとナノ粒子流路16bとの合流点近傍の集合流路16cには、攪拌槽17が配置されている。攪拌槽17の下流側で、攪拌槽17の近傍の集合流路16cには、第2中間マイクロバルブ18b及び第2中間マイクロポンプ19bが配置されている。第1中間マイクロバルブ18a及び第2中間マイクロバルブ18bとしては、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロバルブが使用可能であり、第1中間マイクロポンプ19a及び第2中間マイクロポンプ19bも、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロポンプが使用可能である。
第2中間マイクロポンプ19bと出口側マイクロバルブ15bとの間の集合流路16cが機械振動部を構成している。この機械振動部の両側には、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置と同様な、超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が、アクチュエータ基板1bに埋め込まれて配置されている。アクチュエータ基板1bには、超音波発生素子(機械振動印加手段)31に印加する高周波のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング素子32が埋め込まれ、超音波発生素子(機械振動印加手段)31とインピーダンスマッチング素子32とは電気配線51bで接続され、インピーダンスマッチング素子32は、外部回路に図示を省略した同軸ケーブルで接続され点等は、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置と同様であり、重複した説明を省略する。
又、図12では、図示を省略しているが、アクチュエータ基板1bには、貼り合わせ法(直接接合法)等でカバーガラス2bが貼り合わせられていることは、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置と同様である。
細胞解析部7は、種々の構造が採用可能である。例えば、図13(a)に示すような光ビームを利用した構造や、図13(b)に示すような電子線を用いる構造が採用可能である。図13(a)及び図13(b)は、図12のA−A方向から見た断面図に相当する。
図13(a)に示すように、アクチュエータ基板1bには、細胞流路16aを横切るように、回転テーブル71が埋め込まれている。したがって、細胞解析部7においては、細胞流路16aは、カバーガラス2b側の溝により実現され、回転テーブル71の上を、細胞9がリンガー液と共に流れる。更に、図13(a)に示すように、アクチュエータ基板1bには面発光レーザダイオード72とSiフォトダイオード73がそれぞれ埋め込み実装されている。面発光レーザダイオード72から出射したレーザ光(光ビーム)はカバーガラス2bの溝に設けられた第1ミラー74aで反射されて細胞9を通過後に再びカバーガラス2bの溝に設けられた第2ミラー74bで反射され、その後にSiフォトダイオード73で検出される。図13(a)に示す細胞解析部7においては、回転テーブル71により、細胞9を回転させながらSiフォトダイオード73からの信号を計算機処理することで、細胞9の3次元構造が得られ、ウイルスや細菌に侵されている細胞を見分けることが出来る。回転テーブル71としては、圧電素子型、電磁駆動型等の構造が採用可能である。
図13(b)に示す電子ビームを利用する場合は、電子線源75として、例えば放射性同位元素32Pを用いる。β崩壊により、最大1.707Vの電子線が電子線源75放出される。図13(a)と同様に、図13(b)の場合も、アクチュエータ基板1bには、細胞流路16aを横切るように、回転テーブル71が埋め込まれている。このため、細胞解析部7においては、細胞流路16aは、カバーガラス2b側の溝により実現され、回転テーブル71の上を、細胞9がリンガー液と共に流れる。図13(b)では、アクチュエータ基板1bの上部に電子線源75とSiフォトダイオード76とが、互いに対向して実装されている。電子線源75を出射した電子線は細胞9を通過後にSiダイオードで吸収され
信号が得られる。光ビームの場合と同様に、細胞9の3次元構造が得られる。
他は、第1及び第2の実施の形態に係る細胞変態装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
なお、図12では、細胞解析部7が第1入口側マイクロポンプ13bと第1中間マイクロバルブ18aとの間にいるが、集合流路16cの下流側に更に第2の細胞解析部を配置しても良い。即ち、集合流路16cの両側の超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が配置された箇所の下流側に、第2の細胞解析部を配置することにより、生体から分離・採取した細胞9の構造、状態、機能等を変化させる前と変化させた後を比較することが可能になる。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る細胞変態装置は、図14に示すように、集合流路16cの超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が配置された領域の下流側に、光、電波、磁界、放射線などの電磁波を照射する照射部8が設けられている点が、第3の実施の形態に係る細胞変態装置とは異なる。照射部8は、細胞膜95に結合した修飾ナノ粒子100、或いは、細胞の膜タンパク質と結合した修飾ナノ粒子100が、外部から照射された電磁波のエネルギーを励起光、励起電子、或いは励起熱等の物理刺激に変換し、これらを細胞に更に与えるためのセルである。
このため、集合流路16cの超音波発生素子(機械振動印加手段)31と超音波検出素子(機械振動検出素子)33が配置された領域(機械振動部)の下流側には、第3中間マイクロバルブ18c及び第3中間マイクロポンプ19cが配置され、第3中間マイクロポンプ19cの下流側に照射部8が配置されている。第3中間マイクロバルブ18cとしては、第1〜第3の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロバルブが使用可能であり、第3中間マイクロポンプ19cも、第1〜第3の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロポンプが使用可能である。他は、第3の実施の形態に係る細胞変態装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
又、図14では、図示を省略しているが、アクチュエータ基板1bには、貼り合わせ法(直接接合法)等でカバーガラス2bが貼り合わせられていることは、第1〜第3の実施の形態に係る細胞変態装置と同様である。
照射部8は、図15(a)〜(c)に示すような種々の構造が採用可能である。図15(a)〜(c)は、それぞれ図14のB−B方向から見た断面図に相当する。図15(a)に示す照射部8においては、アクチュエータ基板1bには発光素子81と受光素子82bが集合流路16cを介して互いに対向するように埋め込み実装されている。更に、受光素子82bの上部にはフィルタ82aが埋め込み実装されている。発光素子81としては、青色や紫外のGaN系LED等を用いることが可能である。発光素子81から出射したレーザ光(光ビーム)はカバーガラス2bを伝送線路として反射伝搬し、その後に受光素子82bで検出される。このため、集合流路16cの上部を除き、カバーガラス2bの伝送線路として機能する領域の上面及び下面には金属薄膜が堆積され、反射鏡を構成している。
図15(b)に示す照射部8においては、マイクロコイル83が集合流路16cの近傍に埋め込み実装され、マイクロコイル83による磁束線が集合流路16cを横切ることにより、細胞を磁界励起可能なように構成されている。図15(c)に示す照射部8においては、放射線センサ84が集合流路16cの近傍に埋め込み実装され、集合流路16cに照射された放射線の強度をモニタ可能なように構成されている。放射線センサ84としては、例えばCdTe、CdZn1−xTe検出素子等の半導体検出素子が使用可能である。
図16(a)は、ナノ粒子100及びその近傍に外部から光、電波、磁界、放射線などの電磁波を照射することで、ナノ粒子100の近傍に励起光、励起電子或いは励起熱を発生させて細胞の構造、状態、機能を変化させる効果を高める様子を模式的に示す図である。例えば、図15(a)に示す照射部8において、蛍光体ナノ粒子100に光、電波等の電磁波が照射されれば、蛍光体ナノ粒子100からは励起光が発生する。具体的には、CdSからなる蛍光体ナノ粒子100であれば、外部からの紫外線の照射を受けて、粒子径などに依存するが、おおよそ600〜700nmの発光波長の励起光が発生する。
或いは、図15(b)に示す照射部8において、磁性体ナノ粒子100に交流磁場が印加されれば、磁性体ナノ粒子100からは、励起熱が発生する。更に、図15(c)に示す照射部8において、金属ナノ粒子100に放射線(X線)が照射されれば、金属ナノ粒子100からは、励起電子が発生する。
このように、ナノ粒子100が、目標とする細胞内の場所に近づいた段階で、ナノ粒子100の近傍に励起光、励起電子或いは励起熱が発生すると、タンパク質92d、DNA102或いはRNA103への影響が増加して、細胞変態効果が向上する。例えばナノ粒子100が蛍光体の場合、蛍光体ナノ粒子100から発生した長波長光はエネルギー源の酵素をONにして細胞を活性化し、蛍光体ナノ粒子100から発生した短波長光は、DNA102を切断してアポトーシス(細胞のプログラム死)を引き起こす。
第4の実施の形態に係る細胞変態方法として、CdSe蛍光体ナノ粒子を図14に示す細胞変態装置に対して用いる場合について、説明する:
(イ)先ず、コロイド化学を駆使して、CdSe蛍光体ナノ粒子100を作製する。即ち、液相中で原料を化学反応させて沈殿を作り、そのサイズをnmレベルに抑える。例えば以下の化学反応を利用する:
Cd(ClO4)2 + Na2Se → CdSe ・・・・・(12)
そして、タンパク質の水溶液中にCdSe蛍光体ナノ粒子100を入れて、タンパク質の表面の帯電部分にCdSe蛍光体ナノ粒子100を引き寄せる。このように、表面吸着現象によりCdSe蛍光体ナノ粒子100のタンパク質で被覆(修飾)し、修飾ナノ粒子を作製する。
(ロ)次に、図14に示す細胞変態装置の第1入口側マイクロバルブ12bを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞群をリンガー液と共に、細胞注入口21bから細胞注入槽11bへ注入する。更に、第2入口側マイクロバルブ12cを閉じた状態で、表面をタンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子100をリンガー液と共に、ナノ粒子注入口23からナノ粒子注入槽11cへ注入する。
(ハ)次に、第1中間マイクロバルブ18aを閉じた状態で、第1入口側マイクロバルブ12bを開き、第1入口側マイクロポンプ13bを作動させ、細胞注入槽11bから細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aを介して、細胞解析部7に注入する。細胞解析部7においては、図示を省略した回転テーブルにより、細胞を回転させながら、光又は電子線を照射し、その検出器からの信号を計算機処理することで、細胞の3次元構造を得る。細胞の3次元構造が得られたら、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、第1中間マイクロバルブ18aを開き、第1中間マイクロポンプ19aを作動させ、細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aの更に下流の集合流路16cに向けて放流する。
(ニ)一方、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、第2入口側マイクロバルブ12cを開き、第2入口側マイクロポンプ13cを作動させ、ナノ粒子注入槽11cからタンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子100をリンガー液と共にナノ粒子流路16bに注入する。この結果、細胞群とタンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子100とは、集合流路16cで混合される。その後、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、攪拌槽17を作動させ、タンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子100と細胞群を均一になるまで十分に攪拌する。この攪拌により、
タンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子10を細胞膜95に結合させる、或いは、細胞の膜タンパク質と選択的に結合させる。
(ホ)タンパク質で被覆(修飾)したCdSe蛍光体ナノ粒子100が、細胞膜95、或いは、細胞の膜タンパク質と選択的に結合した後、第3中間マイクロバルブ18cを閉じた状態で、第2中間マイクロバルブ18bを開き、第2中間マイクロポンプ19bを作動させ、細胞膜95又は膜タンパク質と結合したCdSe蛍光体ナノ粒子100(以下において「細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100」という。)を集合流路16cの下流に放流する。細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100が集合流路16cの下流に放流されると同時に、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を動作させ、前述した(11)式から求められる特定の周波数の超音波を、細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100に照射する。但し、(11)式の質量Mは、表面を修飾したCdSe蛍光体ナノ粒子100の質量、又は表面を修飾したCdSe蛍光体ナノ粒子100とタンパク質の質量の合計を考慮した値になる。
(ヘ)細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100への超音波の照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15bを閉じた状態で、第3中間マイクロバルブ18cを開け、第3中間マイクロポンプ19cを作動させ、細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100をリンガー液と共に、照射部8へ送り込む。照射部8では、図15(a)に示すように、発光素子81からの紫外光が、カバーガラス2bを伝送線路として反射伝搬し、CdSe蛍光体ナノ粒子100への照射される。CdSe蛍光体ナノ粒子100は、外部からの発光素子81からの紫外線の照射を受けて600〜700nmの波長の発光をする。蛍光体ナノ粒子100から発生した600〜700nmの波長の光は、エネルギー源の酵素をONにして細胞を活性化する。
(ト)細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100への紫外線の照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15bを開け、細胞膜等に結合した蛍光体ナノ粒子100をリンガー液と共に、排出槽14bへ送り込み、排出槽14bから排出口22bを介して所定の容器へ排出する。
この一連のプロセスにより、ナノ粒子100は構造、状態、機能等を変化させる必要のある細胞に選択的に取り込まれ、目標とする DNA102やRNA103に干渉して細胞変態を行なう。
第4の実施の形態に係る細胞変態方法の道具立てとしては、図14に示すようなバイオMEMSを利用に細胞変態装置の他、密閉微小容器に周波数可変の振動子などを組み合わせて構成しても良い。
第4の実施の形態に係る細胞変態方法においては、ナノ粒子100は、膜タンパク質92cの実効分子量を増加するの役割、RNA103などを運搬する役割、外部からの光、電波、磁界、放射線などの電磁波のエネルギーを励起熱や電子のエネルギーに変換する役割を果たしている。既に説明したように、ナノ粒子100はその表面を修飾することが出来るので、DNA102,RNA103、タンパク質92c、酵素、蛍光分子、高分子101などを細胞内に運搬することが出来、それによって細胞質や細胞核に存在するDNA102、RNA103や酵素に対して干渉することが出来る。更に第4の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、ナノ粒子100の素材としてとして、磁性体、蛍光体を利用することが出来るので、外部磁界や放射線で間接的に細胞内に熱エネルギーや光エネルギーを送り込むことが出来、細胞内の酵素やDNA102に対して影響を与えることが可能である。
第4の実施の形態に係る細胞変態方法の変形例としては、細胞分裂を抑制する応用がある。図16(b)に示すように、ナノ粒子100を振動や磁力で細胞の核膜97の中まで誘導して染色体98に結合出来れば染色体98の重量が増加する。これにより、染色体98の固有共鳴振動数が低周波数側にシフトして共鳴ピークを利用した有糸細胞分裂の抑制が効果的に行なえる。
更に、図16(c)に示すように、染色体98に結合したナノ粒子100に光、電波、磁界、放射線などの電磁波を印加することでその近傍にある動原体微小管123a,123bに影響を与えて細胞分裂を抑制可能である。図16(c)の左側の動原体微小管123aは、染色体98と左側の中心体122aを結ぶ直径が25nm程度の繊維状の構造をなし、右側の動原体微小管123bは、染色体98と右側の中心体122bを結ぶ直径が25nm程度の繊維状の構造をなしている。例えば、細胞分裂中期の染色体98にナノ粒子100を付着させて重量を増加させ、外部から強制機械振動を印加したときの共鳴周波数を低周波側に変化させ、選択的に悪性細胞の細胞分裂を阻止することが可能である。更に、細胞分裂中期の染色体98にナノ粒子100を付着させ、外部から光、電波、磁界、放射線などの電磁波をナノ粒子100に作用させることにより、選択的に悪性細胞の細胞分裂を阻止することが可能である。
その他、ナノ粒子100の表面にDNA102/RNA103を付けておくことで核膜97内の遺伝子と結合して遺伝子をOFF状態にすることが出来るので遺伝子構造、状態、機能を変化させることも行なえる。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る細胞変態装置は、図17に示すように、集合流路16cの第1の超音波発生素子(第1の機械振動印加手段)31aと第1の超音波検出素子(第1の機械振動検出素子)33aが配置された領域の下流側において、更に、第2の修飾ナノ粒子が流れる第2ナノ粒子流路16dが合流している点が、第4の実施の形態に係る細胞変態装置とは異なる。「第2の修飾ナノ粒子」とは、第2の実施の形態での定義と同様に、表面に多種類の役割の異なる、DNA,RNA,タンパク質、高分子、酵素等が結合したナノ粒子を意味する。即ち、集合流路16cの第1の超音波発生素子(第1の機械振動印加手段)31aと第1の超音波検出素子(第1の機械振動検出素子)33aが配置された領域の下流側には、第3中間マイクロバルブ18c及び第3中間マイクロポンプ19cが配置され、この第3中間マイクロポンプ19cの下流側に第2ナノ粒子流路16dが合流している。
このため、アクチュエータ基板1bの表面には、第2の修飾ナノ粒子を注入し、一時収納する第2ナノ粒子注入槽11dが形成され、第2ナノ粒子注入槽11dには、マイクロ流路である第2ナノ粒子流路16dが接続されている。第2ナノ粒子注入槽11dの近傍の第2ナノ粒子流路16dには第3入口側マイクロバルブ12d及び第3入口側マイクロポンプ13dが配置されている。集合流路16cの第1ナノ粒子流路16bの合流点以降の断面積は、細胞流路16aと第1ナノ粒子流路16bの2本のマイクロ流路の断面積の合計程度で、集合流路16cの第2ナノ粒子流路16dの合流点以降の断面積は、細胞流路16a、第1ナノ粒子流路16bと第2ナノ粒子流路16dの3本のマイクロ流路の断面積の合計程度が好ましい。但し、上流側から3本のマイクロ流路の断面積の合計程度の均一の断面積のマイクロ流路としても構わない。
集合流路16cと第2ナノ粒子流路16dとの合流点近傍の集合流路16cには、第2攪拌槽17bが配置されている。第2攪拌槽17bは、第2の実施の形態に係る細胞変態装置と同様な、マイクロスクリューをマイクロアクチュエータで駆動するような構造が採用可能である。第2攪拌槽17bの下流側の第2攪拌槽17bの近傍の集合流路16cには、第4中間マイクロバルブ18d及び第4中間マイクロポンプ19dが配置されている。
第4中間マイクロバルブ18d及び第4中間マイクロポンプ19dの下流側の集合流路16cの両側には、第1の実施の形態に係る細胞変態装置と同様な、第2超音波発生素子(第2機械振動印加手段)31bと第2超音波検出素子(第2機械振動検出素子)33bが、アクチュエータ基板1bに埋め込まれて配置されている。アクチュエータ基板1bには、第2超音波発生素子(第2機械振動印加手段)31bに印加する高周波のインピーダンスを整合する第2インピーダンスマッチング素子32bが埋め込まれている。第2超音波発生素子(第2機械振動印加手段)31bと第2インピーダンスマッチング素子32bとは電気配線51dで接続され、第2インピーダンスマッチング素子32bは、電気配線51cを介して外部回路に図示を省略した同軸ケーブルで接続されている点等は、第1〜第4の実施の形態に係る細胞変態装置と同様であり、重複した説明を省略する。
本発明の第5の実施の形態に係る細胞変態装置においては、第1超音波発生素子(第1機械振動印加手段)31aと第1超音波検出素子(第1機械振動検出素子)33aが両側に配置された領域の集合流路16cが構成する第1の機械振動部に加え、第2超音波発生素子(第2機械振動印加手段)31bと第2超音波検出素子(第2機械振動検出素子)33bが両側に配置された集合流路16cの領域が第2の機械振動部を構成している。この第2の機械振動部の下流側には、第5中間マイクロバルブ18e及び第5中間マイクロポンプ19eが配置され、更にその下流側には、照射部8が配置されている。照射部8の下流側の排出槽14bの手前には出口側マイクロバルブ15bが配置されている。
第4中間マイクロバルブ18d及び第5中間マイクロバルブ18eとしては、第1〜第4の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロバルブが使用可能であり、第4中間マイクロポンプ19d及び第5中間マイクロポンプ19eも、第1〜第4の実施の形態に係る細胞変態装置において説明したような、種々のマイクロポンプが使用可能である。他は、第4の実施の形態に係る細胞変態装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
又、図17では、図示を省略しているが、アクチュエータ基板1bには、貼り合わせ法(直接接合法)等でカバーガラスが貼り合わせられており、このカバーガラス2bには、細胞注入口、第1ナノ粒子注入口及び排出口に加え、第2ナノ粒子注入口が設けられている点が、第2〜第4の実施の形態に係る細胞変態装置とは異なる。
第5の実施の形態に係る細胞変態装置においては、図示を省略した細胞注入口を介して細胞を細胞注入槽11bに注入し、図示を省略した第1ナノ粒子注入口を介して、第1ナノ粒子注入槽11cにDNA,RNA,タンパク質、高分子、酵素等で修飾した第1ナノ粒子Aを注入する。そして、細胞流路16aを流れてきた細胞と、第1ナノ粒子流路16bを流れてきたDNA,RNA,タンパク質、高分子、酵素等で修飾した第1ナノ粒子Aが、合流したのち、第1攪拌槽17aで攪拌される。この攪拌により、第1ナノ粒子Aの表面に、細胞膜にある特殊タンパク質を結合させる(第1段階の結合):
RNA+A→RNA・A ・・・・・(13)
特殊タンパク質と第1ナノ粒子Aとが結合すれば、前述のように(11)式を用いて、周波数を決めて細胞膜の穿孔をし、細胞質への第1ナノ粒子Aの導入を実行する。こうして、第1段階の結合により、特殊タンパク質と選択的に結合した第1ナノ粒子Aが、ターゲット細胞に特定のRNAを注入することが可能になる。第1段階の結合で結合しなかった第1ナノ粒子Aは、図示を省略したフィルタ等で除去する。
一方、図示を省略した第2ナノ粒子注入口を介して、第2ナノ粒子注入槽11dにDNA,RNA,タンパク質、高分子、酵素等で修飾した第2ナノ粒子Bが注入される。そして、集合流路16cを流れてきた第1ナノ粒子Aと、第2ナノ粒子流路16dを流れてきたDNA,RNA,タンパク質、高分子、酵素等で修飾された第2ナノ粒子Bが、合流したのち、第2攪拌槽17bで攪拌される。この結果、第1ナノ粒子Aの表面に第2ナノ粒子Bを結合させる(第2段階の結合):
RNA・A+B→RNA・A・B ・・・・・(14)
第1ナノ粒子Aと第2ナノ粒子Bと結合すれば、この結合ナノ粒子A・Bに対して(11)式を用いて、周波数を決めて細胞膜の穿孔をし、細胞質への結合ナノ粒子A・Bの導入を実行する。この結合ナノ粒子A・Bを照射部8に移動し、照射部8において、外部から光、電波、磁界、放射線などを照射することで、連鎖的なエネルギー変換を誘起する。例えば、第1ナノ粒子Aを金(Au)、第2ナノ粒子Bを蛍光体とする。このとき、結合ナノ粒子A・Bに放射線(X線)を照射した場合は、第1ナノ粒子Aから励起電子が放出され、この励起電子が第2ナノ粒子Bに照射され、第2ナノ粒子Bから短波長の光子が放出され、RNAが短波長の光子により、切断される。このように、結合ナノ粒子A・Bに連鎖的なエネルギー変換を誘起させることで、結合ナノ粒子A・Bの近傍に、励起光、励起電子或いは励起熱等を発生させ、受容体、細胞膜、RNA、DNAなどを変化させることが、可能になる。例えば、悪性細胞に対しては、アポトーシスのスイッチをオンにし、又、機能が低下している良性細胞を活性化させることが出来る。
このように、結合ナノ粒子A・Bが、目標とする細胞内の場所に近づいた段階で、結合ナノ粒子A・Bの近傍に、連鎖的なエネルギー変換で、励起光、励起電子或いは励起熱等を発生させ、タンパク質、DNA或いはRNAへの影響を増加させ、細胞変態効果を向上させることが出来、多彩な細胞変態を行なうことが可能になる。
第5の実施の形態に係る細胞変態方法においては、第1ナノ粒子Aを金(Au)、第2ナノ粒子Bを蛍光体とし、図17に示す細胞変態装置に対して用いる場合について、説明する:
(イ)先ず、第1ナノ粒子A及び第2ナノ粒子Bを用意する。第1ナノ粒子Aは、水溶液中で金属イオンを凝集させ加熱生成する方法、或いは真空蒸着法により基板表面に金属の2次元の島状構造を作製した後、熱処理を行う方法などを用いれば良い。第2ナノ粒子Bは、第4の実施の形態と同様に、コロイド化学を駆使して作製すれば良い。そして、タンパク質の水溶液中に第1ナノ粒子A及び第2ナノ粒子Bを入れて、表面吸着現象を利用し、タンパク質の表面の帯電部分に第1ナノ粒子A及び第2ナノ粒子Bを引き寄せ、それぞれタンパク質で被覆された第1ナノ粒子A及び第2ナノ粒子Bを作製する。
(ロ)次に、図17に示す細胞変態装置の第1入口側マイクロバルブ12bを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞群をリンガー液と共に、細胞注入口21bから細胞注入槽11bへ注入する。更に、第2入口側マイクロバルブ12cを閉じた状態で、第1ナノ粒子Aをリンガー液と共に、第1ナノ粒子注入口から第1ナノ粒子注入槽11cへ注入する。同様に、第3入口側マイクロバルブ12dを閉じた状態で、第2ナノ粒子Bをリンガー液と共に、第2ナノ粒子注入口から第2ナノ粒子注入槽11dへ注入する。
(ハ)次に、第1中間マイクロバルブ18aを閉じた状態で、第1入口側マイクロバルブ12bを開き、第1入口側マイクロポンプ13bを作動させ、細胞注入槽11bから細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aを介して、細胞解析部7に注入する。細胞解析部7においては、図示を省略した回転テーブルにより、細胞を回転させながら、光又は電子線を照射し、その検出器からの信号を計算機処理することで、細胞の3次元構造を得る。細胞の3次元構造が得られたら、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、第1中間マイクロバルブ18aを開き、第1中間マイクロポンプ19aを作動させ、細胞群をリンガー液と共に細胞流路16aの更に下流の集合流路16cに向けて放流する。
(ニ)一方、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、第2入口側マイクロバルブ12cを開き、第2入口側マイクロポンプ13cを作動させ、第1ナノ粒子注入槽11cから第1ナノ粒子Aをリンガー液と共に第1ナノ粒子流路16bに注入する。この結果、細胞群と第1ナノ粒子Aとは、集合流路16cで混合される。その後、第2中間マイクロバルブ18bを閉じた状態で、第1攪拌槽17aを作動させ、第1ナノ粒子Aと細胞群を均一になるまで十分に攪拌する。
(ホ)第1ナノ粒子Aと細胞群とが十分に攪拌された後、第3中間マイクロバルブ18cを閉じた状態で、第2中間マイクロバルブ18bを開き、第2中間マイクロポンプ19bを作動させ、第1ナノ粒子Aを集合流路16cの下流に放流する。第1ナノ粒子Aが集合流路16cの下流に放流されると同時に、超音波発生素子(機械振動印加手段)31を動作させ、(11)式から求められる特定の周波数の超音波を、第1ナノ粒子Aに照射する。但し、(11)式の質量Mは、第1ナノ粒子Aの質量を考慮した値になる。
(ヘ)超音波の第1ナノ粒子Aへの超音波の照射が終了したら、第4中間マイクロバルブ18dを閉じた状態で、第3中間マイクロバルブ18cを開け、第3中間マイクロポンプ19cを作動させ、第1ナノ粒子Aをリンガー液と共に第2攪拌槽17b移動する。一方、第4中間マイクロバルブ18dを閉じた状態で、第3入口側マイクロバルブ12dを開き、第3入口側マイクロポンプ13dを作動させ、第2ナノ粒子注入槽11dから第2ナノ粒子Bをリンガー液と共に第2ナノ粒子流路16dに注入し、第2攪拌槽17bに収納する。この結果、第1ナノ粒子Aと第2ナノ粒子Bとは、第2攪拌槽17bで混合される。その後、第4中間マイクロバルブ18dを閉じた状態で、第2攪拌槽17bを作動させ、第1ナノ粒子Aと第2ナノ粒子Bを均一になるまで十分に攪拌し、第1ナノ粒子Aと第2ナノ粒子Bとが結合した結合ナノ粒子A・Bを生成する。
(ト)結合ナノ粒子A・Bを生成された後、第5中間マイクロバルブ18eを閉じた状態で、第4中間マイクロバルブ18dを開き、第4中間マイクロポンプ19dを作動させ、結合ナノ粒子A・Bを集合流路16cの下流に放流する。結合ナノ粒子A・Bが集合流路16cの下流に放流されると同時に、第2超音波発生素子(機械振動印加手段)31bを動作させ、(11)式から求められる特定の周波数の超音波を、結合ナノ粒子A・Bに照射する。但し、(11)式の質量Mは、結合ナノ粒子A・Bの質量を考慮した値になる。
(チ)出口側マイクロバルブ15bを閉じた状態で、第5中間マイクロバルブ18eを開け、第5中間マイクロポンプ19eを作動させ、結合ナノ粒子A・Bをリンガー液と共に、照射部8へ送り込む。照射部8では、外部から結合ナノ粒子A・Bに放射線(X線)を照射照射する。結合ナノ粒子A・Bに放射線(X線)を照射すると、第1ナノ粒子Aから励起電子が放出される。この励起電子が第2ナノ粒子Bに照射され、第2ナノ粒子Bから短波長の光子が放出され、RNAが短波長の光子により、切断される。
(リ)結合ナノ粒子A・Bへの放射線(X線)の照射が終了したら、出口側マイクロバルブ15bを開け、結合ナノ粒子A・Bをリンガー液と共に、排出槽14bへ送り込み、排出槽14bから排出口を介して所定の容器へ排出する。
第5の実施の形態に係る細胞変態方法において、更に、第1ナノ粒子Aと第2ナノ粒子Bに加え、第3、第4のナノ粒子を用いるようにしても良い。
第5の実施の形態に係る細胞変態方法によれば、複数種類のナノ粒子を用いることで、短時間に多種類の細胞変態を実行出来る。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第5の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、第1乃至第5の実施の形態に係る細胞変態装置においては、マイクロバルブとマイクロポンプを用いたMEMSポンプ方式の構造を主に説明した。しかし、流体駆動方式は、MEMSポンプ方式に限定されるものではなく、バイオMEMSで利用される一般的な方法である外付ポンプ方式を用いても良い。
或いは、図18に示すような、マイクロ磁性粒子駆動方式の流体駆動方式も採用可能である。図18では、アクチュエータ基板1b中に設けられた集合流路16cの一部を模式的に示している。集合流路16cの近傍には、磁界発生器63が配置されている。カバーガラス2bには、入口導管61に接続された磁性粒子注入口及び出口導管62に接続された排出口、細胞、ナノ粒子100又は表面を高分子等で修飾したナノ粒子100を注入する細胞/ナノ粒子注入口が設けられている。図18に示すマイクロ磁性粒子駆動方式の細胞変態装置においては、入口導管61を介して磁性粒子130をリンガー液と共に注入し、同時に細胞/ナノ粒子注入口から細胞、ナノ粒子100をリンガー液と共に導入する。磁界発生器63を作動させ、アクチュエータ基板1bの外側から磁界を印加すると、磁性粒子130がマイクロチャンネルの溶液中を移動して流体の流れを作る。それによって図18に示すように、細胞やナノ粒子100も移動させることが可能である。
又、第1乃至第5の実施の形態に係る細胞変態方法においてはバイオMEMSを用いた細胞変態装置を用いる場合について説明したが、密閉容器中で、これら第1乃至第5の実施の形態に係る細胞変態方法の一連のプロセスを実行することが出来、細胞変態のシミュレーションを行なえる。この際、ナノ粒子100の細胞内への導入効率を上げるために、密閉微小容器の内圧を増加させても良い。
更に、ナノ粒子100に機械振動を与えるには、超音波の印加以外、磁性を有するナノ粒子100、即ち、ナノ磁気ビーズに交流磁界を印加して機械振動を誘起する方法もある。
更に、細胞膜95内に入れる方向性を出すには、圧力勾配(▽P)印加の他に、静止磁場勾配(▽H)の印加がある。
又、細胞変態に焦点をあて説明してきたが、第1乃至第5の実施の形態に係る細胞変態装置は、細胞に付随するタンパク質92c/RNA103/DNA102などをセンシングする装置として機能させることが出来る。即ち、ナノ粒子100を選択的にタンパク質92c/RNA103/DNA102と結合する高分子101で表面修飾して、その後に標的とナノ粒子100の結合状態を検出する装置として機能させることも可能である。
或いは、ナノ粒子に対象に対する細胞やタンパク質の糖鎖を認識して選択的に結合する高分子を付加し、かつ磁性や蛍光特性をもたせることで、細胞に付随するタンパク質、遺伝子、DNA、RNA、ホルモン、酵素などの位置を検出するセンサとして機能させることも出来る。
更に、第1乃至第5の実施の形態に係る細胞変態方法においては生体外に取り出した細胞の構造、状態、機能を変化させる方法について説明したが、生体内の細胞に対しても、同様な機械振動の印加、電磁波の照射で有効な治療を行えることは勿論である。なお、「生体」とは、生物の生きている体の意であり、生活現象を行うあらゆる動物及び植物を含む。例えば、動物であれば、原生動物門、中生動物門、海綿動物門、刺胞動物門、有櫛動物門、扁形動物門、紐形動物門、曲形動物門、袋形動物門、軟体動物門、環形動物門、星口動物門、有爪動物門、緩歩動物門、舌形動物門、節足動物門、触手動物門、管艶動物門、毛顎動物門、半索動物門、棘皮動物門、原索動物門、脊椎動物門等の動物が含まれる。周知のように、脊椎動物門には、軟骨魚綱、硬骨魚綱、両生綱、爬虫綱、鳥綱、哺乳綱が含まれる。例えば、これらの軟骨魚綱、硬骨魚綱、両生綱、爬虫綱、鳥綱、哺乳綱の動物の生体内の細胞に対してナノ粒子を注入する場合は、これらの動物の体に小さな孔を開け、その孔から細い管を入れ、細い管を介してナノ粒子を注入すれば良い。この際、腹腔鏡や内視鏡で観察しながら、目的とする細胞にナノ粒子を注入し、超音波を外部から照射すれば良い。更に、電磁波を照射する場合は、別の同軸ケーブルやガラスファイバー等の別の細管を介して、腹腔鏡や内視鏡で観察しながら、電磁波を照射すれば良い。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
可動タンパク質の質量Mとこの可動タンパク質の振動周波数fとの関係を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る細胞変態装置の概略を示す模式的な鳥瞰図である。 図3(a)は、細胞膜の構造を示す模式図で、図3(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る細胞変態方法における可動タンパク質と受容体(固定タンパク質)との反復衝突を説明する模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係る細胞変態装置の概略を示す模式的な鳥瞰図である。 DNA,RNA,タンパク質、高分子等が結合したナノ粒子と細胞膜との相互作用を説明する模式図である。 表面を高分子等で修飾したナノ粒子が、脂質二重層からなる細胞膜に結合し、更に、このナノ粒子が細胞膜の受容体タンパク質(レセプター)と反復衝突する様子を説明する模式図である。 強制振動により、ナノ粒子が、細胞膜を穿孔する様子を説明する模式図である。 ナノ粒子が細胞膜の受容体タンパク質(レセプター)と反復衝突し、ホルモンなどのメッセンジャー分子を離脱させる様子を説明する模式図である。 可動タンパク質と結合したナノ粒子が受容体タンパク質(レセプター)と衝突することで細胞の機能を変化させる様子を説明する模式図である。 ナノ粒子の振動変位が細胞膜に隣接する結合水のエントロピーを増加させる様子を説明する模式図である。 表面を高分子等で修飾したナノ粒子の、特定のタンパク質との選択的結合を説明する模式図である。 本発明の第3の実施の形態に係る細胞変態装置の概略を示す模式的な鳥瞰図である。 本発明の第3の実施の形態に係る細胞変態装置の細胞解析部の詳細を示す模式的な断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係る細胞変態装置の概略を示す模式的な鳥瞰図である。 本発明の第4の実施の形態に係る細胞変態装置の照射部の詳細を示す模式的な断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係る細胞変態方法を説明する模式図である。 本発明の第5の実施の形態に係る細胞変態装置の概略を示す模式的な鳥瞰図である。 本発明の他の実施の形態に係る細胞変態装置の流体駆動方式を説明する模式的な断面図である。
符号の説明
1a,1b…アクチュエータ基板
2a,2b…カバーガラス
7…細胞解析部
8…照射部
9…細胞
10…ナノ粒子
11a…細胞注入槽
11b…細胞注入槽
11c…ナノ粒子注入槽(第1ナノ粒子注入槽)
11d…第2ナノ粒子注入槽
12a…入口側マイクロバルブ
12b…第1入口側マイクロバルブ
12c…第2入口側マイクロバルブ
12d…第3入口側マイクロバルブ
13a…入口側マイクロポンプ
13b…第1入口側マイクロポンプ
13c…第2入口側マイクロポンプ
13d…第3入口側マイクロポンプ
14a,14b…排出槽
15a…出口側マイクロバルブ
15b…出口側マイクロバルブ
16…流路
16a…細胞流路
16b…ナノ粒子流路(第1ナノ粒子流路)
16c…集合流路
16d…第2ナノ粒子流路
17…攪拌槽
17a…第1攪拌槽
17b…第2攪拌槽
18…中間マイクロバルブ
18a…第1中間マイクロバルブ
18b…第2中間マイクロバルブ
18c…第3中間マイクロバルブ
18d…第4中間マイクロバルブ
18e…第5中間マイクロバルブ
19…中間マイクロポンプ
19a…第1中間マイクロポンプ
19b…第2中間マイクロポンプ
19c…第3中間マイクロポンプ
19d…第4中間マイクロポンプ
19e…第5中間マイクロポンプ
21a,21b…細胞注入口
22a,22b…排出口
23…ナノ粒子注入口
32…インピーダンスマッチング素子
32b…第2インピーダンスマッチング素子
51a…電気配線
51b…電気配線
51c…電気配線
51d…電気配線
61…入口導管
62…出口導管
63…磁界発生器
71…回転テーブル
72…面発光レーザダイオード
73…Siフォトダイオード
74a…第1ミラー
74b…第2ミラー
75…電子線源
76…Siフォトダイオード
81…発光素子
82a…フィルタ
82b…受光素子
83…マイクロコイル
84…放射線センサ
91…タンパク質
91…可動タンパク質
91…膜タンパク質
92a…固定タンパク質
92b…受容体タンパク質(レセプター)
92c…特殊タンパク質(膜タンパク質)
92d…タンパク質
94…結合水
95…細胞膜
97…核膜
98…染色体
99…ホルモン
100…ナノ粒子(修飾ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、蛍光体ナノ粒子、金属ナノ粒子、非修飾ナノ粒子)
101…高分子
102…DNA
103…RNA
111…アビジン
112…ビオチン残基
122a,122b…中心体
123a,123b…動原体微小管
130…磁性粒子
A…アデニン
C…シトシン
G…グアニン
T…チミン
U…ウラシル

Claims (10)

  1. 細胞を含む流体を収納する機械振動部と、
    該機械振動部に収納された前記流体中の振動子の質量と前記流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を前記振動子に印加する機械振動印加手段
    とを備えることを特徴とする細胞変態装置。
  2. 前記振動子は、細胞膜に存在する可動なタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の細胞変態装置。
  3. 前記機械振動部は、アクチュエータ基板に設けられたマイクロ流路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞変態装置。
  4. 前記機械振動部は、
    前記アクチュエータ基板に設けられ、前記細胞を含む流体が流れる細胞流路と、
    前記アクチュエータ基板に設けられ、ナノ粒子を含む流体が流れるナノ粒子流路
    とが合流した集合流路を備えることを特徴とする請求項3に記載の細胞変態装置。
  5. 前記ナノ粒子流路には、前記ナノ粒子の表面に高分子、RNA、DNA、タンパク質、酵素の少なくともいずれか1が結合した修飾ナノ粒子が流れることを特徴とする請求項4に記載の細胞変態装置。
  6. 前記振動子の質量は、
    前記修飾ナノ粒子の質量、若しくは
    細胞膜に存在する可動なタンパク質の質量と前記修飾ナノ粒子の質量との合計
    で与えられることを特徴とする請求項5に記載の細胞変態装置。
  7. 前記機械振動部の下流側に、前記ナノ粒子に対して、電磁波を照射する照射部を備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の細胞変態装置。
  8. 前記機械振動部の下流側に、前記ナノ粒子とは異なる第2ナノ粒子を含む流体が流れる第2ナノ粒子流路が合流することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の細胞変態装置。
  9. 生体から取り出した細胞を流体に含ませて容器に収納するステップと、
    該容器に収納された前記流体中の振動子の質量と前記流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を、前記振動子に印加するステップ
    とを含むことを特徴とする細胞変態方法。
  10. 前記容器中に、ナノ粒子の表面に高分子、RNA、DNA、タンパク質、酵素の少なくともいずれか1が結合した修飾ナノ粒子を注入し、前記細胞と前記修飾ナノ粒子を混合し、前記修飾ナノ粒子と前記細胞の細胞膜又は前記細胞中のタンパク質とを結合させるステップを、前記振動を印加するステップの前に実行することを特徴とする請求項9に記載の細胞変態方法。
JP2003341855A 2003-09-30 2003-09-30 細胞変態装置及び細胞変態方法 Pending JP2005102619A (ja)

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