JP2005095173A - 低酸素応答の検出方法 - Google Patents

低酸素応答の検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005095173A
JP2005095173A JP2004256245A JP2004256245A JP2005095173A JP 2005095173 A JP2005095173 A JP 2005095173A JP 2004256245 A JP2004256245 A JP 2004256245A JP 2004256245 A JP2004256245 A JP 2004256245A JP 2005095173 A JP2005095173 A JP 2005095173A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
hypoxic
hypoxic response
test compound
expression
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004256245A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaomi Nangaku
正臣 南学
Tetsuhiro Tanaka
哲洋 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2004256245A priority Critical patent/JP2005095173A/ja
Publication of JP2005095173A publication Critical patent/JP2005095173A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】 本発明は、低酸素応答を検出するベクターの作製およびこれを発現し細胞の低酸素応答をモニター可能な遺伝子組み換え細胞、および遺伝子組み換え動物の提供を課題とする。
【解決手段】 低酸素応答配列(HRE)を利用し、新しい低酸素応答発現カセットを構築した。発現カセットを保持した細胞は、低酸素応答によって外来性遺伝子を発現する。外来性遺伝子の発現を指標として、細胞の低酸素応答を検出することができる。低酸素応答の調節作用を有する化合物のスクリーニングが可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞、および組織の低酸素応答をモニターするための方法に関する。
低酸素状態は、ヒトの多くの重大な疾患の病因の一つである。脳卒中、心筋梗塞のような致死的疾患から、腎不全の進行(非特許文献1/Jacobson HR: Chronic renal failure: pathophysiology. Lancet 338:419-423, 1991、非特許文献2/Bohle A, Kressel G, Muller CA, et al.: The pathogenesis of chronic renal failure. Pathol Res Pract 185:421-440, 1989)、末梢血管障害に至るまで、低酸素状態が病態生理の中心となる疾患は少なくない。
一方、固形腫瘍の内部は、血管の形成が不十分であるため、低酸素状態にあることが知られている。特に低酸素の重篤な腫瘍細胞は、低酸素に対して抵抗性を示す性質を獲得しており、また薬剤も血流不全のため到達しにくいことなどから、予後不良であることが分かっている(非特許文献3/Brizel DM, Sibley GS, Prosnitz LR, et al.: Tumor hypoxia adversely affects the prognosis of carcinoma of the head and neck. Int J Radiat Oncol Biol Phys 38:285-289, 1997、非特許文献4/Hockel M, Knoop C, Schlenger K, et al.: Intratumoral pO2 predicts survival in advanced cancer of the uterine cervix. Radiother Oncol 26:45-50, 1993、非特許文献5/Nordsmark M, Overgaard M, Overgaard J: Pretreatment oxygenation predicts radiation response in advanced squamous cell carcinoma of the head and neck.Radiother Oncol 41:31-39, 1996)。
生体は、低酸素状態に対する様々な反応機構を有している。主要臓器への血流の優先的配分、心拍出量の増加、呼吸数増大などは、低酸素状態に対する生体の生理学的代償機構である。また分子レベルでは、低酸素状態に応答して、生体は、エリスロポエチン(Epo)や血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の発現、あるいは解糖系酵素などの転写の調節による代償機構を作動させる。
このような低酸素応答を研究し、様々な疾患に対する新たな治療法を開発し評価するために、生体内で低酸素状態にある細胞を同定し、低酸素のレベルを定量的に評価する方法は重要である。しかし、現時点ではこのような方法は限られたものしかない。酸素電極を用いた方法は正確であるが、特殊な機器を必要とする。また酸素電極によって測定することができる範囲は、非常に限られているという欠点がある。
ピモニダゾール(pimonidazole)のような2-ニトロイミダゾール誘導体が、低酸素を感知できる化学物質として、特に癌研究の分野で利用されてきた。ピモニダゾールは、酸素分圧が10 mmHgの生きている低酸素細胞に結合する性質がある(非特許文献6/Durand RE, Raleigh JA: Identification of nonproliferating but viable hypoxic tumor cells in vivo. Cancer Res 58:3547-3550, 1998)。しかしこの方法は、薬物の前投与が必要であり、定量性も不十分であるなどの問題点がある。このため、「正確で」「定量性があり」「組織レベルでの広い範囲の検索が可能な」新しい酸素状態のモニター法の提供が待たれている。
Jacobson HR: Chronic renal failure: pathophysiology. Lancet 338:419-423, 1991 Bohle A, Kressel G, Muller CA, et al.: The pathogenesis of chronic renal failure. Pathol Res Pract 185:421-440, 1989 Brizel DM, Sibley GS, Prosnitz LR, et al.: Tumor hypoxia adversely affects the prognosis of carcinoma of the head and neck. Int J Radiat Oncol Biol Phys 38:285-289, 1997 Hockel M, Knoop C, Schlenger K, et al.: Intratumoral pO2 predicts survival in advanced cancer of the uterine cervix. Radiother Oncol 26:45-50, 1993 Nordsmark M, Overgaard M, Overgaard J: Pretreatment oxygenation predicts radiation response in advanced squamous cell carcinoma of the head and neck. Radiother Oncol 41:31-39, 1996 Durand RE, Raleigh JA: Identification of nonproliferating but viable hypoxic tumor cells in vivo. Cancer Res 58:3547-3550, 1998
本発明は、細胞や組織の低酸素応答をモニターするための方法、およびそれを可能とする細胞や遺伝子組み換え動物の提供を課題とする。
低酸素誘導性因子1(Hypoxia-inducible factor 1:HIF1)は低酸素応答における最も重要な分子であり、Epo、VEGF、解糖系酵素などの発現を調節している。HIF1はαおよびβのサブユニットからなるヘテロダイマーを形作る。HIF1-αは塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(basic helix-loop-helix:bHLH)スーパーファミリーの一員であり、殆ど全ての細胞において発現している(Wiener CM, Booth G, Semenza GL: In vivo expression of mRNAs encoding hypoxia-inducible factor 1. Biochem Biophys Res Commun 225:485-488, 1996)。
通常の酸素分圧下ではHIF1-αは酸素依存性分解ドメイン(oxygen-dependent degradation domain)にあるプロリル基が酵素的に水酸化される。これを認識したフォン・ヒッペル‐リンダウ蛋白質(von Hippel-Lindau protein:pVHL)が結合し、ポリユビキチン化を起こし、HIF1-αはユビキチン-プロテアソーム系により速やかに分解される。一方、低酸素下ではこの水酸化が起こらずHIF1-αは分解を免れ、恒常的に発現しているHIF1-β(芳香族炭化水素受容体核移行因子(aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator;ARNT))と結合し、更にcis-コンセンサスHIF1結合部位(低酸素症応答配列(hypoxia-responsive element:HRE))と結合して、低酸素応答を引き起こす(Semenza GL: Regulation of mammalian O2 homeostasis by hypoxia-inducible factor 1. Annu Rev Cell Dev Biol 15:551-578, 1999、Semenza GL: HIF-1: mediator of physiological and pathophysiological responses to hypoxia. J Appl Physiol 88:1474-1480, 2000、Wenger RH: Mammalian oxygen sensing, signalling and gene regulation. J Exp Biol 203 Pt 8:1253-1263, 2000)。
以上のような背景に基づいて、HREを癌の遺伝子治療への応用を試みた報告がある(Dachs GU, Patterson AV, Firth JD, et al.: Targeting gene expression to hypoxic tumor cells. Nat Med 3:515-520, 1997、Shibata T, Giaccia AJ, Brown JM: Development of a hypoxia-responsive vector for tumor-specific gene therapy. Gene Ther 7:493-498, 2000)。すなわち、血流の不足によって低酸素状態にある癌組織において、特異的な遺伝子の発現を誘導し、癌を治療しようとする試みである。しかし、細胞や組織における酸素分圧の測定にHREを応用した報告は無い。
これらの知見から、本発明者らはHREに着目し、HREを選択的エンハンサーとして用いることにより、低酸素応答特異的に遺伝子の発現を誘導できるのではないかと考えた。そして、実際にラットのVEGF遺伝子のHREをエンハンサーとして用いたレポーターベクターを作製し、そのレポーター活性が低酸素に対して濃度依存的に応答することを確認した。さらに、本発明者らは該ベクターを組み込んだトランスジェニックラットを作製し、該トランスジェニックラットにより、広い範囲における酸素濃度の検知、および細胞レベルでの低酸素状態の検出が可能であることを確認して本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の低酸素応答の測定方法、それを可能とする細胞、およびトランスジェニック動物を提供する。
〔1〕以下の工程を含む、細胞の低酸素応答の検出方法。
(1)次の要素(a)および(b)を含む発現カセットを細胞に導入する工程、
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における外来性遺伝子の発現を検出する工程、および
(3)外来性遺伝子の発現が細胞の低酸素応答を示す工程
〔2〕細胞が、培養細胞である〔1〕に記載の方法。
〔3〕細胞が、非ヒト動物の組織を構成する細胞である〔1〕に記載の方法。
〔4〕非ヒト動物が前記発現カセットを全身性に発現可能に保持している〔3〕に記載の方法。
〔5〕非ヒト動物がラットである〔3〕に記載の方法。
〔6〕発現カセットが、低酸素応答配列の繰り返し配列を有する〔1〕に記載の方法。
〔7〕低酸素応答配列の繰り返しの数が、2〜10である〔6〕に記載の方法。
〔8〕低酸素応答配列の繰り返しの数が、2〜7である〔7〕に記載の方法。
〔9〕低酸素応答配列が配列番号:7に記載の塩基配列を含む〔1〕に記載の方法。
〔10〕外来性遺伝子が、シグナルを生成する蛋白質をコードする遺伝子である〔1〕に記載の方法。
〔11〕以下の工程を含む、被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法。
(1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物の存在下で低酸素ストレスを与えるか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に前記細胞と被験化合物を接触させる工程
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
〔12〕対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが増強しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答の増強作用が検出される〔11〕に記載の方法。
〔13〕対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが低下しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答の抑制作用が検出される〔11〕に記載の方法。
〔14〕以下の工程を含む、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法。
(1)〔11〕に記載の方法によって、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する工程、および
(2)対照と比較して、細胞の低酸素応答のレベルに差がある被験化合物を細胞の低酸素応答を調節する活性を有する化合物として選択する工程
〔15〕次の工程を含む、被験化合物が生体の低酸素応答を調節する活性を検出する方法。
(1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞を含む非ヒト動物に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物を低酸素ストレスと同時に投与するか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に被験化合物を投与する工程
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
〔16〕対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが増強しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答の増強作用が検出される〔15〕に記載の方法。
〔17〕対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが低下しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答の抑制作用が検出される〔15〕に記載の方法。
〔18〕低酸素ストレスを特定の組織に対して与え、当該組織における外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む〔15〕に記載の方法。
〔19〕非ヒト動物が前記発現カセットを全身性に発現可能に保持している〔15〕に記載の方法。
〔20〕非ヒト動物が前記発現カセットを発現可能に保持した細胞を含むトランスジェニック動物である〔15〕に記載の方法。
〔21〕非ヒト動物がラットである〔15〕に記載の方法。
〔22〕以下の工程を含む、生体の低酸素応答を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法。
(1)〔15〕に記載の方法によって、被験化合物の生体の低酸素応答を調節する活性を検出する工程、および
(2)対照と比較して、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する被験化合物を選択する工程
〔23〕〔14〕または〔22〕に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、低酸素応答の調節剤。
〔24〕次の要素を含む発現カセットを細胞に導入する工程を含む、低酸素応答検出用細胞の製造方法。
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
〔25〕次の工程を含む、低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法。
(1)動物の受精卵に次の要素を含む発現カセットを導入する工程、および
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)工程(1)の受精卵から発生した初代トランスジェニック動物のうち導入した発現カセットを保持した個体を選択する工程
〔26〕更に次の工程(3)及び(4)を含む〔25〕に記載の低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法。
(3)工程(2)で選択した個体と正常動物を交配させて外来性遺伝子をヘテロで保有するF1動物を得る工程、および
(4)工程(3)で得たF1動物同士を交配させて外来性遺伝子をホモで保有するF2動物を得る工程、
〔27〕以下の要素を含む発現カセットを発現可能に保持した形質転換細胞。
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
〔28〕以下の要素を含む発現カセットを発現可能に保持した非ヒト哺乳動物。
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
〔29〕非ヒト哺乳動物がラットである〔28〕に記載の非ヒト哺乳動物。
本発明は、以下の工程を含む、細胞の低酸素応答の検出方法に関する。
(1)次の要素(a)および(b)を含む発現カセットを細胞に導入する工程、
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における外来性遺伝子の発現を検出する工程、および
(3)外来性遺伝子の発現が細胞における酸素分圧の低下を示す工程
本発明において、低酸素応答とは、細胞、組織、あるいは生体の、低酸素ストレスによって誘導される変化を言う。より具体的には、低酸素ストレスによって引き起こされる細胞の変化を、低酸素応答という。したがって低酸素応答の検出とは、低酸素によってもたらされた細胞の変化を検出することを意味する。低酸素ストレスは、その原因により、細胞に対する低酸素ストレス、組織に対する低酸素ストレス、そして生体に対する低酸素ストレスなどに分類することもできる。たとえば、特定の臓器に対する血流の停止によってもたらされる低酸素ストレスは、組織に対する低酸素ストレスである。また、生体を低酸素条件下に置くことは、生体に対する低酸素ストレスと言うことができる。このような低酸素ストレスによって引き起こされる、細胞の変化は、本発明における低酸素応答に含まれる。更に低酸素ストレスには、細胞に対する酸素供給の低下や、呼吸機能の阻害が含まれる。
本発明において、低酸素応答の検出は、定性的な検出と、応答のレベルの定量的な評価を含む。本発明の検出方法によって、細胞における低酸素応答の有無を知ることができる。低酸素応答の定性的な検出によって、たとえば、ある環境の変化が細胞に低酸素ストレスを与えるかどうかを明らかにすることができる。
あるいは本発明の検出方法によって、低酸素応答のレベルを定量的に評価することもできる。細胞が受ける低酸素ストレスの程度に応じて、低酸素応答のレベルは変化する。したがって、その量的な違いを明らかにすることができる方法は、低酸素ストレスの細胞に対する影響の程度を評価する上で重要である。あるいは、後に述べるような低酸素応答を調節する作用の評価方法において、定量的な評価方法は有用である。
本発明による細胞の低酸素応答の検出方法は、(1)次の要素(a)および(b)を含む発現カセットを細胞に導入する工程を含む。
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
本発明における(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)は、低酸素条件において発現が誘導される遺伝子の発現調節領域である。低酸素応答配列として、低酸素ストレスによって活性化される転写因子の認識配列を利用することができる。たとえば高等動物においては、低酸素条件下でHIF1あるいはHLFが活性化されることが明らかにされている。HLF(HIF1α like factor、EPAS-1、HIF2α、あるいはMOP2とも呼ばれる)は、先に述べたHIF1と一次構造が類似している転写因子である(Ema, M et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,94, 4273-4278, 1997)。HLFは、HIF1と同様にArntとのヘテロ2量体を構成して転写活性を獲得する。HIF1はほとんど全ての組織で発現している転写因子である。したがって本発明におけるHREとしては、HIF1によって認識されるHREが好ましい。特に、生体における低酸素応答を検出するためには、広範囲な発現が期待できるHIF1のHREが有利である。
低酸素ストレスによって発現が誘導される遺伝子について、HREの塩基配列が明らかにされている。公知のHREの塩基配列を以下に示す。各種のゲノムに見出されるこれらの塩基配列を含む塩基配列を本発明のHREとして利用することができる。
TACGTGCTGT(ヒトのエリスロポエチン/配列番号:8)
TACGTGCTGC(マウスのエリスロポエチン/配列番号:9)
TACGTGCTGC(マウスのホスホフルクトキナーゼ/配列番号:10)
GACGTGACTC(ヒトのアルドラーゼA/配列番号:11)
TACGTGACGG(ヒトのエノラーゼ1/配列番号:12)
GGCGTGCCGT(ヒトのグルコーストランスポーター1/配列番号:13)
TACGTGGGCT(ヒトのVEGF/配列番号:14)
GACGTGCTGG(マウスのヘムオキシゲナーゼ1/配列番号:15)
TACGTGCGCT(ヒトのトランスフェリン/配列番号:16)
GACGTGCTCT(ヒトのIGFBP-1/配列番号:17)
TACGTGCTGC(マウスの誘導型一酸化窒素合成酵素/配列番号:18)
TACGTGCtGc/t(コンセンサス配列/配列番号:19)
本発明に利用することができるHREの例を以下に示す。
CCACAGTGCATACGTGGGCTTCCACAGGTCGTCT(配列番号:7)(ラットVEGF)
本発明におけるHREは、低酸素応答を検出すべき細胞が有する転写因子によって認識されるものであれば、制限されない。好ましいHREは、低酸素応答を検出すべき細胞の生物種と同じ生物種由来のHREである。たとえばラットの細胞で本発明の方法を実施する場合には、HREもラット由来であることが望ましい。
上記HREは、単独で用いることもできるし、同一あるいは異なるHREを複数連結して用いることもできる。本発明者らは、複数のHREを連結することによって、低酸素応答にともなう外来性遺伝子の発現レベルが増強されることを確認した。本発明においては、外来性遺伝子の発現レベルを低酸素応答のマーカーとして利用する。したがって、外来性遺伝子の発現レベルの増強によって、本発明による低酸素応答の検出感度の向上が期待できる。HREは、たとえば2〜10のHREを連結することによって、外来性遺伝子の発現レベルが増強される。より好ましいHREの数は、2〜7である。HREは、前記HREの塩基配列のみを連結しても良いし、リンカーを介して連結されていても良い。またHREの必須配列を含む、異なる長さの塩基配列からなるHREを連結することもできる。
たとえば、配列番号:7からなるHREを2〜7回繰り返して配置したとき、その制御下に発現する外来性遺伝子の発現レベルは、繰り返しの数に対応して上昇する。
本発明において、上記(a)HREは(b) HREに機能的に連結された外来性遺伝子とともに発現カセットとして用いられる。機能的な連結とは、HREの制御下に、その下流に配置された外来性遺伝子が発現することを言う。下流とは、HREの3'側を意味する。すなわち、HREを認識する転写因子の働きによって、その下流に配置された外来性遺伝子が発現するとき、HREと外来性遺伝子は機能的に連結されている。外来性遺伝子とは、人為的に導入された任意の遺伝子を含む。したがって、たとえ宿主細胞と同じ種に由来する遺伝子であっても、それが人為的に導入される場合には外来性の遺伝子である。
外来性遺伝子をHREの制御下に発現させるために、本発明の発現カセットには、更に付加的な発現制御領域を配置することができる。具体的には、プロモーターやターミネータなどの発現制御領域を配置することができる。たとえば、CMVプロモーターの下流に外来性遺伝子を配置することにより、外来性遺伝子の発現レベルを向上させることができる。HREとプロモーターの配置順序は任意である。たとえば、図3に示すように、HRE/プロモーター/外来性遺伝子の順に、各領域を配置することができる。
本発明において、発現カセットは、低酸素応答を検出すべき細胞に導入される。細胞への発現カセットの導入には、任意の方法を利用することができる。たとえば、発現カセットを保持した適当な発現ベクターを細胞に導入することができる。各種の細胞への導入と発現が可能なさまざまな発現ベクターが公知である。組み換えベクターの構築や該ベクターの細胞への導入などの一般的な遺伝子操作は、例えば、文献(J. Sambrook and D. W. Russell eds., "Molecular cloning: a laboratory manual", 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001)に記載の常法に従って行うことができる。
発現カセットは、生体の組織を構成する細胞に導入することもできる。生体に外来性の遺伝子を導入するためには、たとえば遺伝子治療の分野で利用されている遺伝子導入技術を利用することができる。具体的には、例えば、レトロウイルス、単純性ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、シンドビスウイルス、ポックスウイルスなどに由来するベクターを利用することができる。
また、温度感受性リポソーム、血中安定性リポソーム、カチオニックリポソーム、pH感受性リポソームおよびウイルスのエンベロープ蛋白質を組み込んだ再構成リポソームなどのリポソーム製剤、HVJ(センダイウイルス)-リポソーム [T. Nakagawa et al., Drug Delivery System, 11, 411 (1996)]、VSV(水疱性口内炎ウイルス)-リポソーム(特開平11-187873号)などのウイルスの膜融合能を付与した膜融合リポソーム製剤を利用して発現カセットを導入することもできる。
更に、発現カセットを胚に導入して得ることができるトランスジェニック動物の細胞を、本発明における細胞として利用することもできる。本発明における発現カセットを導入したトランスジェニック動物を得るための方法は制限されない。任意の遺伝子を動物に導入してトランスジェニック動物を得るための方法は公知である。本発明に用いることができるトランスジェニック動物の製造方法は後に述べる。
本発明においては、(2)細胞における外来性遺伝子の発現を検出し、そして(3)外来性遺伝子の発現が細胞の低酸素応答を示す。したがって、外来性遺伝子は、その発現を容易に検知できる遺伝子であることが望ましい。このような遺伝子として、発光蛋白質、蛍光蛋白質、あるいは酵素活性を有する蛋白質などを示すことができる。酵素活性蛋白質は、当該活性を光や色の変化によって検出することができる酵素が有利である。また、細胞の応答を観察するため、少なくとも低酸素応答を検出するための培養中に、細胞そのものに対して不活性な蛋白質をコードする遺伝子であることが望ましい。
たとえば、緑色蛍光蛋白質(GFP)は蛍光性の蛋白質として好ましい。あるいはルシフェラーゼやβガラクトシダーゼは、酵素活性を有する蛋白質として好ましい。更に、実施例において示したように、検出可能なタグを外来性遺伝子として発現させることもできる。タグとしては、FLAGタグ、mycタグ、あるいはヒスチジンタグなどを示すことができる。
細胞において発現した外来性遺伝子は、それぞれの発現産物の特徴に応じた方法によって検出することができる。たとえば、ルシフェラーゼは、ルシフェリンとATPを利用した発光反応によって、検出することができる。発光強度を定量的に測定することにより、発現レベルを定量的に評価することもできる。またGFPのような蛍光蛋白質は、その蛍光強度を直接検出することができる。更にタグは、それを認識する抗体などによって免疫学的に検出することができる。このようにして、被験細胞における外来性遺伝子の発現を検出し、外来性遺伝子の発現が検出された場合には、その細胞が低酸素応答を示したことが検出される。
本発明において、低酸素応答を検出すべき細胞は、前記HREを認識する転写因子を発現している任意の細胞を用いることができる。たとえば、当該転写因子を発現している培養細胞、あるいは生体の組織を構成する細胞における、低酸素応答を検出することができる。
また、前記発現カセットを導入されたトランスジェニック動物を用いることにより、生体に対する低酸素ストレスの影響を明らかにすることができる。具体的には、トランスジェニック動物になんらかの低酸素ストレスを与えたときに、低酸素ストレスが各組織でどのような低酸素応答を引き起こすのかを明らかにすることができる。
本発明の低酸素応答の検出方法を生体において実施する場合には、生理的な機能の評価が容易な動物を利用するのが好ましい。たとえばラットは、マウスに比較して、生理学的データの信頼性が高い。またラットでは、種々の臓器障害モデルが確立されている。そのため、低酸素モデルの評価も容易である。
本発明の低酸素応答の検出方法は、被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法に利用することができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む、被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法に関する。
(1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物の存在下で低酸素ストレスを与えるか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に前記細胞と被験化合物を接触させる工程
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
更に、本発明の検出方法を利用して、被験化合物の生体内における低酸素応答を調節する活性を検出することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、被験化合物が生体の低酸素応答を調節する活性を検出する方法に関する。
(1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞を含む非ヒト動物に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物を低酸素ストレスと同時に投与するか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に被験化合物を投与する工程
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
本発明に用いる前記発現カセットを導入した細胞は、先に述べたようにして調製することができる。本発明において、発現カセットを発現可能に保持する細胞とは、外来性遺伝子をHREの制御下に発現することができることをいう。たとえば、発現カセットが導入され、かつHREを認識する転写因子を発現している細胞は、発現カセットを発現可能に保持する細胞に含まれる。
得られた細胞に対して、被験化合物を接触させる方法とタイミングは任意である。培養細胞における低酸素応答を観察する場合には、培養細胞に被験化合物を直接接触させることができる。あるいは被験化合物が蛋白質である場合には、細胞内において当該蛋白質をコードする遺伝子を強制発現させることによって、被験化合物を細胞に接触させることができる。更に、被験化合物を分泌する細胞を、低酸素応答を検出すべき細胞と共存させることによって、被験化合物と細胞とを接触させることもできる。
本発明の被験化合物としては、制限されないが、有機または無機の化合物、核酸、蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、および動物組織抽出液などが挙げられる。また、本発明の被験化合物には、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー技術によって得られた化合物群、およびファージディスプレイ法によって作成されたランダムペプチド群などを用いることができる。これらの化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。本発明の被験化合物の具体的な例としては、例えば、コバルト塩およびそれと同様の作用を有する低分子の化合物が挙げられる。
被験化合物の生体における作用を検出するためには、被験化合物は生体に投与される。たとえばトランスジェニック動物の細胞における低酸素応答に対する作用を評価する場合、被験化合物は任意の方法によって生体に投与される。具体的には、低酸素応答を観察すべき組織への局所的な投与、あるいは全身性の投与を例示することができる。投与方法は、筋肉注射、皮下注射、静脈注射、経口、塗布、あるいは吸引などの任意の方法を利用すればよい。生体に投与された被験化合物は、生体を構成する細胞に対して、直接的、あるいは間接的に作用し、細胞における低酸素応答を変化させる作用が検出される。生体における作用を評価することにより、細胞には直接作用しないが、他の細胞に対する作用を通じて間接的に低酸素応答を調節する作用を検出することができる。
本発明を実施するための、発現カセットを発現可能に保持する細胞を含む非ヒト動物はトランスジェニック動物に限定されない。たとえば、特定の臓器に発現カセットを導入された非ヒト動物を利用して、当該組織における低酸素応答に対する被験化合物の作用を評価することもできる。
細胞と被験化合物を接触させるタイミングは任意である。たとえば、被験化合物存在下で細胞に低酸素ストレスを与えることができる。あるいは、予め被験化合物を接触させた細胞に、低酸素ストレスを与えることもできる。更に、低酸素ストレスを与えた後の細胞に、被験化合物を接触させることもできる。低酸素ストレス負荷の前に被験化合物を接触させることにより、細胞の低酸素応答に対する被験化合物の影響を評価することができる。逆に、低酸素ストレスを与えた後に被験化合物を接触させるときは、被験化合物が低酸素応答した後の細胞に与える影響を評価することができる。
本発明の方法において、低酸素ストレスには、細胞の酸素要求を満たさない条件を与えることができる任意の方法が含まれる。本発明における低酸素ストレスとしては、物理的な方法や、生理的な方法を示すことができる。物理的な方法としては、酸素分圧の低い環境下に細胞を置くことや、生体に対する酸素の供給を遮断する方法が含まれる。あるいは、生体の特定の組織に対する血流を遮断することも、物理的な方法に含まれる。
一方生理的な方法には、細胞や生体に呼吸阻害剤を与える方法などが含まれる。生理的な低酸素ストレスは酸素分圧の変化を伴わないため、化学物質ではその影響を評価することはできない。これに対して本発明は、細胞の低酸素応答を直接評価できる。その結果、生理的な低酸素ストレスによってもたらされる細胞の低酸素応答であっても評価することができる。
低酸素ストレスを与えた細胞は、次いで前記外来性遺伝子の発現レベルが測定される。発現レベルは、低酸素ストレスを解除した後に測定することもできるし、低酸素ストレスを与えながら測定することもできる。外来性遺伝子の発現レベルの測定方法については既に述べた。
そして外来性遺伝子の細胞における発現レベルの測定の結果、(3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性が検出される。本発明において、細胞の低酸素応答を調節する活性とは、低酸素応答の抑制と増強が含まれる。すなわち、前記外来性遺伝子の発現レベルが対象と比較して低い場合には、被験化合物は、細胞の低酸素応答の抑制作用を有していることがわかる。逆に、前記外来性遺伝子の発現レベルが対象と比較して高い場合には、被験化合物は、細胞の低酸素応答を増強したことがわかる。
本発明において、比較すべき対照としては、細胞の低酸素応答に対する影響が明らかな状態で、同様の処理を行った細胞を用いることができる。たとえば、被験化合物の不存在下で、被験化合物を与えた場合と同じ処理を与えた細胞を対照とすることができる。あるいは、低酸素応答に対して影響を与えないことが明らかな生理食塩水を与えた細胞を対照とすることもできる。また、被験化合物をコードする遺伝子を保持した発現ベクターの導入によって、被験化合物と細胞とを接触させた場合には、当該遺伝子を含まない空ベクター(Mockベクター)を導入した細胞を対照とすることができる。
加えて、細胞の低酸素応答に与える影響が明らかな化合物を接触させた細胞を、対照とすることもできる。たとえば、低酸素応答を抑制(または増強)することが明らかな化合物を接触させた細胞を対照とした場合には、被験化合物の作用が、当該化合物と比較して大きいのかあるいは小さいのかを評価することができる。
本発明の被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法に基づいて、当該活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法を提供する。
(1)本発明の被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法によって、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する工程、および
(2)対照と比較して、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する被験化合物を選択する工程
本発明のスクリーニング方法によって選択された化合物は、細胞の低酸素応答の調節剤として有用である。たとえば、低酸素応答を増強する作用を有する化合物は、低酸素ストレスによってもたらされる細胞の障害を抑制するための医薬品として有用である。具体的には、梗塞部位の細胞障害の抑制剤として有用である。
一方、細胞の低酸素応答を抑制する化合物は、低酸素応答によってもたらされる細胞障害を増強するための薬剤として利用することができる。このような薬剤を利用して、腫瘍の低酸素応答の抑制によって腫瘍細胞にダメージを与えることができる。腫瘍組織内部が低酸素ストレス状態にありながら、細胞障害が起こりにくい理由として、腫瘍の低酸素応答の亢進が考えられる。このような腫瘍の低酸素応答を抑制し、低下させることで、腫瘍細胞にダメージを与え、腫瘍の治療効果を得ることができる。
本発明の方法は、呼吸阻害剤などの生理的な低酸素ストレスが細胞に与える影響を評価することができる。したがって、癌細胞の呼吸阻害による治療方法の評価に有用である。
すなわち本発明は、前記スクリーニング方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、細胞の低酸素応答の調節剤を提供する。本発明の低酸素応答の調節剤には、抑制剤と増強剤が含まれる。すなわち本発明のスクリーニング方法によって選択された被験物質は、更に安全性や安定性などを試験したうえで、細胞の低酸素応答を調節するための医薬組成物の有効成分とすることができる。本発明の医薬組成物は、公知の製剤学的製造法により製剤化して投与することができる。また有効成分である化合物自体を直接投与することもできる。製剤化する場合は、例えば、薬剤として一般的に用いられる媒体または担体と適宜組み合わせて投与することができる。
また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、鼻腔内投与、気管支内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、患部への直接投与などの方法で行うことができる。投与量は、患者の体重、年齢、健康状態、あるいは投与方法などの条件によって変動するが、当業者であれば適宜適当な投与量を選択することができる。
すなわち、たとえば前記発現カセットを導入したトランスジェニックラットにおいて、細胞の低酸素応答に対する治療効果を、様々な投与量の間で比較することにより有効濃度が決定される。そして、上記のような各投与ルートによって、低酸素応答を調節すべき組織における投与化合物の濃度がその有効濃度に達するような投与量を経験的に決定する。一般的な投与形態においては、有効成分が全身に分布するものとして、体重1kg当たりの投与量を決定する。実験動物における薬物動態の解析結果に基づいて目的の臓器に対する移行性が高いと考えられる化合物であれば、投与量をより低く設定することができる。
本発明の医薬組成物は、決定された投与量と投与形態とを考慮して、媒体や担体と配合される。必要な投与量を達成することができるように有効成分を配合することは、当業者が通常行っている。本発明による医薬組成物の投与量は、体重1kgあたり通常1μgから10g、より一般的には10μg〜100mgとすることができる。また、注射剤の場合は経口投与の10分の1〜100分の1程度を投与量の目安とすることができる。さらに特殊な製剤設計を施すことにより、投与量を調整することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、適当な担体に保持することによって徐放化製剤とすることもできるが、このような製剤においては、高い血中濃度を維持することができるので、配合量を低く設定することができる。
加えて本発明は、次の要素を含む発現カセットを細胞に導入する工程を含む、低酸素応答検出用の細胞の製造方法を提供する。以下の発現カセットを細胞に導入するための方法は先に述べたとおりである。
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
また本発明は、上記要素(a)および(b)を含む発現カセットを発現可能に保持した形質転換細胞に関する。本発明の形質転換細胞は、細胞の低酸素応答の検出方法、更には当該方法に基づく被験化合物の低酸素応答の調節作用の評価に有用である。
あるいは本発明は、次の工程を含む、低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法を提供する。
(1)動物の受精卵に次の要素を含む発現カセットを導入する工程、および
(a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
(b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
(2)工程(1)の受精卵から発生した初代トランスジェニック動物のうち導入した発現カセットを保持した個体を選択する工程
また本発明は、更に次の工程(3)及び(4)を含む低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法を提供する。
(3)工程(2)で選択した個体と正常動物を交配させて外来性遺伝子をヘテロで保有するF1動物を得る工程、および
(4)工程(3)で得たF1動物同士を交配させて外来性遺伝子をホモで保有するF2動物を得る工程、
本発明における発現カセットは、十分に精製されトランスジェニック動物の作製に用いられる。トランスジェニック動物は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに、発現カセットを導入することによって作製される。発現カセットを導入する細胞としては、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階、より具体的には単細胞あるいは受精卵細胞の段階で、通常8細胞期以前のものが利用される。発現カセットの導入方法としては、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等が公知である。さらに、こうして得られた形質転換細胞を上述の胚芽細胞と融合させることによりトランスジェニック動物を作製することもできる。
発現カセットを導入する細胞は、トランスジェニック動物の作製が可能なあらゆる非ヒト脊椎動物に由来する細胞であることができる。具体的には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、イヌ、あるいはネコ等の細胞を利用することができる。たとえばラットにおいては、排卵誘発剤を投与したメスのラットに正常なオスのラットを交配させることにより、発現カセットの導入が可能な受精卵を回収することができる。ラット受精卵では、一般に雄性前核へのマイクロインジェクションにより発現カセットが導入される。発現カセットを導入した細胞は、体外での一晩程度の培養の後、導入に成功したと思われるものが代理母の卵管に移植され、トランスジェニックキメラ動物が誕生する。代理母には、精管を切断したオスと交配させて偽妊娠状態としたメスが利用される。
生まれたトランスジェニックキメラ動物は、その体細胞の遺伝子を解析することによって、ゲノムに発現カセットが組み込まれていることを確認した上で、F1動物の誕生のために正常な動物と交配させる。このとき、望ましくは、より多くのコピー数を持つ個体を選択するようにする。一般に発現カセットとして導入した外来性のDNAは、ゲノムの同一の部分に複数コピーが直列に組み込まれる。通常はこの組み込みコピー数が多いほど、多量の遺伝子発現につながり、より明瞭な発現型が期待できるためである。体細胞ゲノムにおいて、発現カセットが正しい方向で組み込まれていることは、発現カセットに特異的なプライマーを用いたPCRによって確認することができる。また、ドットブロット法によって、コピー数の相対的な比較が可能である。
この交配の結果誕生するF1動物の中で、体細胞に発現カセットを備えるものは、ヘテロザイゴート(heterozygote)ながら生殖細胞に発現カセットを伝えることができるトランスジェニック動物である。したがって、F1動物の中から体細胞に発現カセットを保持するものを選び、これらを両親とするF2動物を誕生させることができれば、発現カセットをホモで保持するホモザイゴート動物(homozygote animal)がF2動物として得られる。
加えて本発明は、上記要素(a)および(b)を含む発現カセットを発現可能に保持した非ヒト哺乳動物を提供する。本発明の非ヒト哺乳動物は、生体における細胞の低酸素応答の検出方法、更には当該方法に基づく被験化合物の低酸素応答の調節作用の評価に有用である。
細胞培養
不死化ラット細胞株(Immortalized Rat Proximal Tubular Cells:IRPTC)は、雄Wistarラットの近位尿細管由来であり、Julie R. Ingelfinger博士(Massachusettes General Hospital、米国)より供与された(Tang SS, Jung F, Diamant D et al., Temperature-sensitive SV40 immortalized rat proximal tubule cell line has functional renin-angiotensin system., Am. J. Physiol. 268:F435-446)。
細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地(日水製薬)に25mM HEPES(pH 7.4)(Sigma、米国)、5%ウシ胎児血清(JRH Biosciences、米国)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.01mM非必須アミノ酸を添加した培地で37℃、5%CO2/95%空気の条件下で培養を行った。
低酸素は、マルチガスインキュベーター(APM-30D、アステック、日本)にて1〜10%O2/5% CO2の条件で誘導した。
低酸素反応性ベクターの作製
低酸素に対する応答性を最適化したベクターを作製するために、様々な数のHREのタンデムリピートをヒト最小CMVプロモーター(human minimal CMV promoter:hmCMVp)の上流に配置したルシフェラーゼレポーターベクターをpGL3-basic vector(Promega、米国)を利用して作製した。これらは、組み込まれたHREの数に対応して、pHRE x0, 1, 3, 5, 7 -CMV-Lucと命名した。
両端にNhe1認識サイトを持つHREの合成オリゴヌクレオチドを作製し(5’-CTAGCCCACAGTGCATACGTGGGCTTCCACAGGTCGTCTG-3’(配列番号:1) および 5’-CTAGCAGACGACCTGTGGAAGCCCACGTATGCACTGTGGG-3’(配列番号:2))、これをpGL3-basic vector にクローニングした。また、hmCMVpの合成フラグメントを作製し、これを上記ベクターに組み込んだ。
臓器内でのルシフェラーゼの発現を組織レベルで調べるために、ルシフェラーゼのN末に3x FLAGのタグを付加した。pGL3-basicのルシフェラーゼ遺伝子を以下の塩基配列を有するプライマーを使ってPCRで増幅した。配列番号:3のプライマーは、FLAGタグをコードする塩基配列がルシフェラーゼのシグナル配列の後に挿入されている。したがって、このプライマーを使ったPCRによって、FLAGタグを付加したルシフェラーゼ遺伝子を合成することができる。
fw: 5’-ACCATGGACTACAAAGACCATGACGGTGATTATAAAGATCATGACATCGATTACAAGGATGACGATGACAAGGAAGACGCCAAAAACATAAAG-3’(配列番号:3)
rv: 5’-TTTCGAAGTACTCAGCGTAAG-3’(配列番号:4)
PCRの反応サイクルは次のとおりである。
95℃30秒、55℃30秒、72℃45秒の条件を30サイクル(最後に72℃7分伸長)
増幅された約240 bpのフラグメントは、Nco I /Nsp Vにより切断し、pGL3レポーターベクターの同じサイトに組み込んだ。全てのシークエンスは、ジ・デオキシ法により確認した(ABI 377, Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)。
一過性発現解析
低酸素に対し最も誘導性のよいプロモーター/エンハンサーのコンストラクトを見出すため、異なった数のHREを持つレポーターベクタープラスミドをIRPTCに遺伝子導入し、これを低酸素環境下で培養し、デュアルルシフェラーゼアッセイを行った。
一過性トランスフェクションは、1.0x105個のIRPTCを24穴の培養ディッシュ(TPP, Switzerland)にて培養し、18〜24時間後に細胞を 500 ngのベクタープラスミド、25 ngのpRL-CMV (Promega)、1μlの陽性荷電リポソームLIPOFECTAMINE Reagent (GIBCO Life Technologies)とともに血清を含まない培地中で6時間インキュベートすることにより行った。24時間後、細胞は低酸素による刺激を加えた後、100μlの溶解バッファーにて溶かし、ピッカジーンデュアルシステム(Toyo ink, Tokyo, Japan)を用いてLumat 9507 luminometer(EG and Berthold)にてルシフェラーゼアッセイを行った。
ウエスタンブロットおよび免疫細胞染色
FLAGのタグを付加したルシフェラーゼ遺伝子産物の細胞内での発現を確認するため、ウエスタンブロットと免疫細胞染色を行った。
ウエスタンブロットでは、RIPAバッファー(150 mM NaCl, 1% NP-40, 0.5% デオキシコール酸ナトリウム, 0.1% SDS, 50 mM Tris-HCl, pH 8.0)を用いて細胞融解液を作り、蛋白質40 μgを還元条件下で10% SDS-PAGEにて電気泳動した。電気泳動後、サンプルはフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Millipore, Japan)にトランスファーした。この膜は、5%スキムミルクにてブロックした後、マウス抗FLAGモノクローナル抗体(M2)(Sigma) 1/350とともにインキュベーションし、アルカリフォスファターゼ抗マウスIgG (Promega)にて検出した。
免疫細胞染色のためには、4穴のLab-Tekチェンバースライド(Nalge Nunc International, IL, USA)にベクタープラスミドをトランスフェクトしたIRPTCを培養し、これを低酸素条件下にて培養した。4%パラホルムアルデヒドにて固定した後、0.1%トライトンX−100にて透過処理を行って、抗FLAG抗体 1/350、ビオチン化抗マウスIgG (Vector, CA, USA)1/400、オレゴングリーン488ストレプトアビジン1/400を用いて検出した。
HRE-ルシフェラーゼトランスジェニックラットの作成
低酸素の感知に最もよいベクターであることを確認したpHRE x7-CMV-Lucを、Kpn 1/ BamH1サイトにて切断した2.4 kbpのフラグメントを単離し、これをWistar近交系の受精卵の前核にマイクロインジェクションした。インジェクションされた卵は、偽妊娠を誘起したラットの卵管へ移植した。出生したラットが3週齢になった時点で、尾の一部を切断し、ゲノムDNAを抽出しサザンブロットを行った。制限酵素による切断はBamH1あるいは Pst Iを用いて行い、切断したゲノムDNAを電気泳動し、陽性荷電ナイロン膜(Amersham, Piscataway, NJ, USA)にトランスファーした後、導入した遺伝子の全長を[α-32P]にてラベルしたプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイズ後、洗浄を0.2xSSPE /0.1%SDS 65℃という最終ストリンジェンシーで行い、FUJI-BAS 2000 イメージングプレート(FUJIFILM, Tokyo, Japan)を用いて解析を行った。また、トランスジェニックラットの同定は、Luc-fw: 5’-GCCTACCGTGGTGTTCGTTTCC-3’(配列番号:5)およびLuc-rv: 5’-CGCCTCTTTGATTAACGCCCAG-3’(配列番号:6)のプライマーを用いてPCRを行い、800 bpのフラグメントが増幅されることを確認することによっても行った。
RT/リアルタイムPCR
トランスジェニックラットの低酸素反応性外来遺伝子の発現を調べるため、種々の臓器の総RNA をISOGEN(NIPPON GENE, Tokyo, Japan)を用いて精製し、1μg のRNAを逆転写し(ImProm-II Reverse Transcription System, Promega)、PCR用のテンプレートとした。使用プライマーとしては、5’-GCCTACCGTGGTGTTCGTTTCC-3’(配列番号:5)および 5’-CGCCTCTTTGATTAACGCCCAG-3’(配列番号:6)を用いた。PCRは、初期活性化を94℃15分で行い、更に94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を合計40サイクル行った。
臓器分布については、対照動物(通常酸素分圧のみ)と刺激を受けたラット)における発現カセットの発現状態を半定量PCRにより調べた。低酸素刺激は、コバルト塩の腹腔内投与によって与えた。1/20(vol/vol)のcDNA をテンプレートとし、PCRを28サイクル施行した。増幅した遺伝子は2%アガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムにて染色し、紫外線により可視化した。
更に、低酸素による誘導性の解析のために、リアルタイムPCRで発現カセットの発現状態を調べた。腎皮質を取り出し、テンプレート用のcDNAを作成し、QuantiTest CYBR Green PCR Kit(Qiagen, CA, USA)を利用し、iCycler(Bio-Rad, CA, USA)を用いてPCRを行った。ルシフェラーゼのプライマーとしては5’-GCCTACCGTGGTGTTCGTTTCC-3’(配列番号:5)および5’-CGCCTCTTTGATTAACGCCCAG-3’(配列番号:6)を、アクチンのプライマーとしては5’-AACCCTAAGGCCAACCGTGAAAAG-3’(配列番号:20)および5’-TCATGAGGTAGTCTGTCAGGT-3’(配列番号:21)を用いた。PCRの条件は、初期活性化として 94℃15分の後、94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を40サイクルの増幅を行った。結果は、標準曲線法により、ルシフェラーゼとβ−アクチンのmRNAの量比を定量することにより計算した。
VEGF発現の測定
mRNAをISOGENを用いて精製し、RNAを逆転写した後、QuantiTest CYBR Green PCR Kit (Qiagen, CA, USA)でiCycler (BIO-RAD)のシステムを用いてリアルタイム定量PCRを行った。
腎臓の虚血モデル
組織の虚血状態を調べるため、ラット腎虚血モデルを採用した。0日目には、体重300〜500gのトランスジェニックラット(n=5)をケタミンの腹腔内投与により麻酔し、体温を保温機を用いて一定に保ちつつ、腹部を正中にて切開し、左腎動脈および腎静脈を一塊として45分間微小動脈瘤クランプを用いて閉塞した。クランプ開放後、0、1、2、4、8および24時間後に、ラットを屠殺し、臓器を解析のために摘出した。
ピューロマイシン腎症モデル
本発明のトランスジェニックラットに、100 mg/kgのピューロマイシンを尾静脈より注射することによって、ピューロマイシン腎症(PAN)を誘導した。未刺激(対照、0週目)、ピューロマイシン注射後1週目、および2週目のラットを屠殺し、腎臓を解析のために摘出した。
5/6腎摘モデル
本発明のトランスジェニックラットの右腎を摘出し、1週間後に左腎動脈の3分枝のうち2分枝を結紮することにより、5/6腎摘モデル(RK)を作成した。未処理(対照、0週目)、左腎動脈の結紮後1週目および2週目のラットを屠殺し、腎臓を解析のために摘出した。
組織学的解析
メチル-カルノア(Methyl-Carnoy)固定し、パラフィン包埋した切片(厚さ3μm)を過ヨウ素酸シッフ試薬(Periodic acid-Schiff:PAS)染色し、光学顕微鏡にて評価した。
トランスジェニック動物の外来遺伝子であるFLAGのタグの付いたルシフェラーゼ遺伝子産物を同定するのには、抗FLAG抗体を1/350で使用し、TSA増感法(TSA Biotin System, Perkin Elmer, Boston, MA, USA)を用いた。
腎障害パラメーターの測定
血液尿素窒素(BUN)の測定は、WAKOのキットを用い、プロトコール通りに行った。尿細管間質(TI)障害は、その病理学的な障害の程度を、5段階にブラインドでスコアリングすることにより評価した。間質の細胞外基質(ECM)の蓄積は、取り込んだ画像をコンピューター解析し、ECMと判断される部分が全体のうちのどの程度を占めるかを評価することにより行った。
実施例1.低酸素反応性ベクターの作成
低酸素分圧を感知してレポーター活性を最大に上げるような低酸素反応性ベクターを作成するために、ラットVEGF遺伝子の5’領域にある34bp-HRE(配列番号:7)を利用した。組織レベルでの応答性も検知できるように、ルシフェラーゼは遺伝子改変でFLAGのタグを組み込み、HREは0、1、3、5、7個をタンデムで付加した。これらのレポーターベクターをIRPTCに遺伝子導入し、1%酸素下で24時間培養した。その結果、HREを1、3、5、7個を有するベクター(pHRE x1, 3, 5, 7 -CMV-Luc)を組み込んだIRPTCのルシフェラーゼ活性は、HREを含まないベクター(pHRE x0-CMV-Luc)を組み込んだIRPTCの活性と比較して、それぞれ3.2±0.2, 10.9±2.4, 14.8±2.7(p=0.022), 16.5±6.8(p=0.011)倍であった(図1A, デュアルルシフェラーゼアッセイ)。このルシフェラーゼ活性から判断すると、HREの数に応じて低酸素に対する反応性は上がるが、この反応性の増加はタンデムリピートの数が5ではプラトーに達していた。
更に、pHREx7-CMVLucのより詳細な解析を行った。1%酸素に対する曝露時間を変化させて調べたところ、12、18、24時間において、それぞれルシフェラーゼ活性は、通常酸素濃度下で培養した比較対象細胞に比べ5.5、9.8、16.5倍の上昇を示した[図1B]。更に、酸素濃度を変化させたところ、ルシフェラーゼ活性は酸素濃度が低くなるほど上がることが分かった[図1C]。酸素濃度が5%(分圧では35-40 mmHgに相当)で、レポーター活性は、通常酸素濃度下で培養した比較対象細胞に比べ2.1倍に上がり、以後は酸素濃度に逆相関して上昇し、このベクターが広い範囲の低酸素に濃度依存性に応答することが示された。
同様の実験を、hmCMVpの代わりに別種の組織非特異的なプロモーターであるチミジンキナーゼ(tk)プロモーターを利用して行ったところ、低酸素に対する反応性は観察されたものの、誘導性はhmCMVpに比べ軽度であった(データは示していない)。
FLAGのタグの付いたルシフェラーゼの発現は、ウエスタンブロットおよび免疫細胞染色法にても確認された[図2]。ウエスタンブロットでは、62.5 kDaのバンドが通常酸素濃度および低酸素において認められたが、バンドの強さは低酸素においてより顕著であった。免疫細胞染色法においては、染色は細胞質に認められ、同様の低酸素誘導性が確認された。
実施例2.低酸素反応性トランスジェニックラットの樹立
トランスジェニックラット作成のため、7x HREs の下流にFLAGのタグの付いたルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれた2.4 kbpのベクターフラグメントを精製し[図3]、これをWistarラットの200個の受精卵の前核にマイクロインジェクションした。出生した57匹のうち、13匹に尾DNAのPCRおよびサザンブロットによって発現カセットが確認された。更に、低酸素の科学的ミミック(mimic)であるコバルト投与による発現カセットの誘導性をみたところ、うち4匹(#167-12, #171-6, #166-6, #173-5)において著明な誘導性が認められた。
これらのヘテロラットは、メンデルの法則にしたがって、1:1の確率で子孫に導入遺伝子を伝達した。また、生育も正常で、種々の臓器の組織学的解析にも特に異常を認めず、血液検査上も問題はなかった。
定量的リアルタイムPCRによる解析では、導入遺伝子の発現量は#166-6 > #171-6 > #167-12 > #173-5で、これはそれぞれのラットに組み込まれている導入遺伝子のコピー数と対応していた。これら4系統のラットは、定常状態でも低酸素に対しても基本的に同じ挙動を示したため、以後の詳細な解析はコピー数の多い2系統(#166-6, #171-6)のヘテロラットにて行ったが、結果は全て同じであった。
実施例3.トランスジェニックラットにおける導入遺伝子の発現解析
無刺激の状態と刺激下での、トランスジェニックラットの様々な臓器における導入遺伝子の発現を調べるため、薬理学的に低酸素のミミックであるコバルト塩(30mg/kg)あるいはvehicle(PBS)の腹腔内投与を行い、脳、心臓、筋肉、肝臓、腎臓、肺よりRNAを抽出した。RT-PCRでは、導入遺伝子の発現の基礎値はほとんど検出できない程度であったが、コバルト投与によりバンドの著明な増強が認められ、導入遺伝子の低酸素反応性発現が確認された[図4]。
腎臓におけるルシフェラーゼの発現をリアルタイムPCRにより経時的に調べたところ、コバルトの投与(60 mg/kg i.p.)により経時的なルシフェラーゼの遺伝子発現の上昇が認められ、24時間後には、投与0時間後と比較して、8.9±4.3 倍に達した(p<0.01)[図5A]。
この遺伝子の発現部位を調べるため、タグとして付加した FLAG を染色をした (図5B)。この抗体はメサンギウム領域に交叉反応する抗原があり、対照動物でもメサンギウム領域に染色が認められたが、尿細管や間質には染色は認められなかった。一方、コバルト刺激においては、尿細管細胞、間質細胞、糸球体上皮細胞に、遺伝子発現の上昇が認められた。また、髄質では、低酸素の動物でも正常酸素分圧の動物でも遺伝子発現が認められ、これは正常でも髄質の酸素分圧が10-20mmHgと低く(皮質では50 mmHg)、髄質では正常状態でも HREが刺激されて遺伝子発現を促しているためと考えられる。
実施例4.虚血腎における導入遺伝子の発現解析
本発明の酸素分圧感知のためのトランスジェニックラットを用いて、腎臓における酸素状態をモニターした。45分間腎動脈をクランプし阻血した後に、その組織を解析したところ、低酸素に伴う腎障害に特徴的な尿細管間質障害が認められた[図6A、図6B]。そこで、この組織をFLAGに対する抗体で染色したところ、近位尿細管においてレポーター遺伝子の発現上昇がみられた [図6C、図6D]。この遺伝子発現は、クランプを解放した直後より認められ(I45 /R0 groups)、解放し酸素化を再開した後も4時間は認められた(I45 /R4)が、8時間後では消失していた。
実施例5.腎疾患モデルにおける導入遺伝子の発現解析
本発明のトランスジェニックラットを用いて作成した腎疾患モデルについて、酸素状態をモニターした。腎疾患としては、代表的な腎疾患モデル2種、ネフローゼ症候群のモデルであるピューロマイシン腎症(PAN)と、慢性腎不全モデルである5/6腎摘モデル(RK)を用いた。低酸素状態の評価は、抗FLAG抗体を用いた免疫染色による組織学的評価と、導入遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム定量PCRによって行った。
いずれの腎疾患モデルにおいても、病態の進行と共に導入遺伝子(pHRE x7-CMV-Luc)の発現量が増加し、腎臓が低酸素となることが観察された(図7A、B)。また、本発明のトランスジェニック動物を用いた方法は、他に低酸素によっても誘導されることが知られているVEGFの発現を評価した場合よりも鋭敏であることが示された(図7A、B)。両モデルにおける腎臓の低酸素の時間経過および空間的分布は異なっていた(図8)。また、これらのモデルにおける腎臓の低酸素状態は、血液尿素窒素(BUN)量により評価された腎機能(図9A)、組織学的に評価された尿細管間質障害 (図9B)、および間質の細胞外基質の蓄積(図9C)のいずれとも高い相関を示した。
本発明により、細胞の低酸素応答を感度よく感知する新しいベクターが得られた。更にこれを発現し細胞の低酸素応答をモニター可能な新しい遺伝子組み換え動物が提供された。細胞の低酸素応答をモニターできるような動物が作成された意義は非常に大きい。
低酸素応答を検知するシステムとして望ましい条件としては、以下の条件が挙げられる。まず、広い範囲の酸素濃度を感知できることが望ましい。従来用いられていた方法は、限られた範囲の酸素濃度しか検知できず、目的とする酸素濃度がその測定可能範囲からはずれていることが多かった。また、細胞レベルでの解像度をもって酸素濃度の情報が得られることが望ましい。
現在、低酸素の感知には2-ニトロイミダゾールやピモニダゾールなどの他のニトロイミダゾール誘導体が使用されている。このような化学物質は、数時間の経過で代謝を受けて細胞に結合する。そのため、化学物質が細胞に結合するまでの組織の血流と酸素含有量が一定であるということを前提としなければならない。しかし、現実の生体内で、このような条件を維持することは不可能である。また、これらの化学物質は酸素濃度が10 mmHg以下の細胞を検知する。これは通常の腫瘍細胞の酸素分圧よりも更に低い値である。つまり、腫瘍細胞における酸素分圧の観察ツールとして用いることはできない。
本発明によって提供されたトランスジェニックラットは、細胞の低酸素応答を検出する。そのため、比較的広い範囲内における酸素濃度の検知が可能である。外来性遺伝子として、ルシフェラーゼのようなシグナル生成蛋白質をコードする遺伝子を用いれば、低酸素応答をシグナルとして容易に検出することができる。本発明において、シグナルとは、理化学的な信号の変化を言う。発光、蛍光、あるいは酵素活性などがシグナルに含まれる。したがってシグナルを精製する蛋白質は、理化学的な信号の変化によって、その発現を検知することができる。
あるいはFLAGなどのタグをコードする遺伝子を利用すれば、免疫組織学的手法を用いて組織内での細胞レベルでの低酸素状態を感知することもできる。in vitro の実験からは、本発明の発現カセットによって感知する酸素濃度は1〜5%(7-40 mmHg)と考えられる。この範囲は10 mmHg以下の酸素分圧を感知する従来用いられていた2-ニトロイミダゾール誘導体を用いた方法よりも広い。またより酸素分圧の高い状態からのモニターが可能となっている。更に、本発明の発現カセットの発現は、低酸素ストレスの後、遅くとも45分以内に上昇を開始する。つまり化学物質を利用した低酸素の検出よりも、はるかに迅速に低酸素応答を検出することができる。
低酸素は、脳卒中、虚血性心疾患、末梢血管障害など、様々な病態で重要な役割を果たしている。また、腫瘍の内部の低酸素も、病態生理学的に重要である。脳卒中、心筋梗塞、癌は、3大成人病として、現在最も活発な研究対象となっている。本発明のトランスジェニック動物は、これらの病態に対する治療薬の開発やスクリーニング、更には薬剤の検定などのために有用である。更に、本発明はトランスジェニック動物であるために、均一の研究材料を大量に供給できる利点があり、精度の高い研究を可能とする。このように、3大成人病の研究に大きな進歩をもたらす新しい実験動物系が提供された意義は、非常に大きい。
A;HREの数に対するレポーターベクターの低酸素反応性を示す図。縦軸はルシフェラーゼ活性を示す。横軸はHREの数を変えたエンハンサーとプロモーターの組み合わせを示す。B;1%酸素に対する曝露時間とレポーターベクターの低酸素反応性の関係を示す図。縦軸はルシフェラーゼ活性を示す。横軸は1%酸素に対する曝露時間を示す。C;酸素濃度とレポーターベクターの低酸素反応性の関係を示す図。縦軸はルシフェラーゼ活性を示す。横軸は酸素濃度を示す。 ウエスタンブロット(上)および抗FLAG抗体を使った細胞染色法による、FLAG標識ルシフェラーゼの発現(通常酸素;中、および低酸素;下)を示す写真。ウエスタンブロット(上)のNは通常酸素条件、Hは低酸素条件の結果を示す。 トランスジェニックラット作製のための導入遺伝子のコンストラクト(発現カセット)の構造を示す図。 様々な臓器における無刺激の状態(C)とコバルト刺激下(Tx)での、導入遺伝子の発現を示す図。Br;脳、He;心臓、Mu;筋肉、Li;肝臓、Ki;腎臓、Lu;肺の結果を示す。 A;コバルト刺激下での、腎臓における経時的なルシフェラーゼの発現変化を示す図。縦軸はルシフェラーゼ遺伝子の発現量を示す。横軸はコバルト塩に対する曝露時間を示す。B;腎臓における導入遺伝子の発現部位を示す写真。 AおよびB;酸素分圧感知ラットの通常腎動脈組織(A)、および腎動脈をクランプし血流を停止した後の組織(B)を解析した結果を示す写真。CおよびD;酸素分圧感知ラットの通常腎動脈組織(C)、および腎動脈をクランプし血流を停止した後の組織(D)におけるレポーター遺伝子の発現を示す写真。 トランスジェニックラットを用いた腎疾患モデル(A, ピューロマイシン腎症;B, 5/6腎的モデル)における導入遺伝子の発現を示す図。 トランスジェニックラットを用いた腎疾患モデルにおける導入遺伝子の発現を示す写真。(A)、腎疾患を誘導していない対照;(B)、ピューロマイシン腎症(PAN)誘導後1週間;(C)、ピューロマイシン腎症(PAN)誘導後2週間;(D)、5/6腎摘モデル(RK)誘導後1週間;(E)、5/6腎摘モデル(RK)誘導後2週間。 腎疾患モデルにおける導入遺伝子の発現と、BANにより評価された腎機能との相関を示す図。 腎疾患モデルにおける導入遺伝子の発現と、組織学的に評価された尿細管間質障害との相関を示す図。 腎疾患モデルにおける導入遺伝子の発現と、間質の細胞外基質の蓄積との相関を示す図。

Claims (29)

  1. 以下の工程を含む、細胞の低酸素応答の検出方法。
    (1)次の要素(a)および(b)を含む発現カセットを細胞に導入する工程、
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
    (2)細胞における外来性遺伝子の発現を検出する工程、および
    (3)外来性遺伝子の発現が細胞の低酸素応答を示す工程
  2. 細胞が、培養細胞である請求項1に記載の方法。
  3. 細胞が、非ヒト動物の組織を構成する細胞である請求項1に記載の方法。
  4. 非ヒト動物が前記発現カセットを全身性に発現可能に保持している請求項3に記載の方法。
  5. 非ヒト動物がラットである請求項3に記載の方法。
  6. 発現カセットが、低酸素応答配列の繰り返し配列を有する請求項1に記載の方法。
  7. 低酸素応答配列の繰り返しの数が、2〜10である請求項6に記載の方法。
  8. 低酸素応答配列の繰り返しの数が、2〜7である請求項7に記載の方法。
  9. 低酸素応答配列が配列番号:7に記載の塩基配列を含む請求項1に記載の方法。
  10. 外来性遺伝子が、シグナルを生成する蛋白質をコードする遺伝子である請求項1に記載の方法。
  11. 以下の工程を含む、被験化合物が細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する方法。
    (1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物の存在下で低酸素ストレスを与えるか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に前記細胞と被験化合物を接触させる工程
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
    (2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
    (3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
  12. 対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが増強しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答の増強作用が検出される請求項11に記載の方法。
  13. 対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが低下しているときに、被験化合物の細胞の低酸素応答の抑制作用が検出される請求項11に記載の方法。
  14. 以下の工程を含む、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法。
    (1)請求項11に記載の方法によって、被験化合物の細胞の低酸素応答を調節する活性を検出する工程、および
    (2)対照と比較して、細胞の低酸素応答のレベルに差がある被験化合物を細胞の低酸素応答を調節する活性を有する化合物として選択する工程
  15. 次の工程を含む、被験化合物が生体の低酸素応答を調節する活性を検出する方法。
    (1)次の要素を含む発現カセットを発現可能に保持する細胞を含む非ヒト動物に低酸素ストレスを与える工程であって、被験化合物を低酸素ストレスと同時に投与するか、または低酸素ストレスを与える前若しくは後に被験化合物を投与する工程
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
    (2)細胞における前記外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
    (3)対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが変化しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答を調節する活性が検出される工程
  16. 対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが増強しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答の増強作用が検出される請求項15に記載の方法。
  17. 対照と比較して、外来性遺伝子の発現レベルが低下しているときに、被験化合物の生体の低酸素応答の抑制作用が検出される請求項15に記載の方法。
  18. 低酸素ストレスを特定の組織に対して与え、当該組織における外来性遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む請求項15に記載の方法。
  19. 非ヒト動物が前記発現カセットを全身性に発現可能に保持している請求項15に記載の方法。
  20. 非ヒト動物が前記発現カセットを発現可能に保持した細胞を含むトランスジェニック動物である請求項15に記載の方法。
  21. 非ヒト動物がラットである請求項15に記載の方法。
  22. 以下の工程を含む、生体の低酸素応答を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法。
    (1)請求項15に記載の方法によって、被験化合物の生体の低酸素応答を調節する活性を検出する工程、および
    (2)対照と比較して、細胞の低酸素応答を調節する活性を有する被験化合物を選択する工程
  23. 請求項14または請求項22に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、低酸素応答の調節剤。
  24. 次の要素を含む発現カセットを細胞に導入する工程を含む、低酸素応答検出用細胞の製造方法。
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
  25. 次の工程を含む、低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法。
    (1)動物の受精卵に次の要素を含む発現カセットを導入する工程、および
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
    (2)工程(1)の受精卵から発生した初代トランスジェニック動物のうち導入した発現カセットを保持した個体を選択する工程
  26. 更に次の工程(3)及び(4)を含む請求項25に記載の低酸素応答検出用非ヒト動物の製造方法。
    (3)工程(2)で選択した個体と正常動物を交配させて外来性遺伝子をヘテロで保有するF1動物を得る工程、および
    (4)工程(3)で得たF1動物同士を交配させて外来性遺伝子をホモで保有するF2動物を得る工程、
  27. 以下の要素を含む発現カセットを発現可能に保持した形質転換細胞。
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
  28. 以下の要素を含む発現カセットを発現可能に保持した非ヒト哺乳動物。
    (a) 低酸素応答配列(hypoxia responsive element)、および
    (b) 低酸素応答配列に機能的に連結された外来性遺伝子
  29. 非ヒト哺乳動物がラットである請求項28に記載の非ヒト哺乳動物。
JP2004256245A 2003-09-04 2004-09-02 低酸素応答の検出方法 Pending JP2005095173A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004256245A JP2005095173A (ja) 2003-09-04 2004-09-02 低酸素応答の検出方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003312236 2003-09-04
JP2004256245A JP2005095173A (ja) 2003-09-04 2004-09-02 低酸素応答の検出方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005095173A true JP2005095173A (ja) 2005-04-14

Family

ID=34467605

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004256245A Pending JP2005095173A (ja) 2003-09-04 2004-09-02 低酸素応答の検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005095173A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009099112A1 (ja) * 2008-02-04 2009-08-13 National University Corporation Okayama University 新規dna断片およびその用途
CN102847154A (zh) * 2004-08-16 2013-01-02 夸克医药公司 Rtp801的抑制剂的治疗性用途
WO2023214183A2 (en) 2022-05-06 2023-11-09 Antibody Analytics Limited Chemically induced proximity systems

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102847154A (zh) * 2004-08-16 2013-01-02 夸克医药公司 Rtp801的抑制剂的治疗性用途
WO2009099112A1 (ja) * 2008-02-04 2009-08-13 National University Corporation Okayama University 新規dna断片およびその用途
JP5493231B2 (ja) * 2008-02-04 2014-05-14 国立大学法人 岡山大学 新規dna断片およびその用途
US8865669B2 (en) 2008-02-04 2014-10-21 National University Corporation Okayama University DNA fragment and use thereof
WO2023214183A2 (en) 2022-05-06 2023-11-09 Antibody Analytics Limited Chemically induced proximity systems

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7125979B2 (en) Upstream control elements of the proopiomelanocortin gene and their use
Scott et al. Leptin targets in the mouse brain
Yu et al. Frizzled 1 and frizzled 2 genes function in palate, ventricular septum and neural tube closure: general implications for tissue fusion processes
Riccomagno et al. The RacGAP β2-Chimaerin selectively mediates axonal pruning in the hippocampus
Danglot et al. Absence of TI-VAMP/Vamp7 leads to increased anxiety in mice
Suzuki et al. Collapsin response mediator protein‐2 accelerates axon regeneration of nerve‐injured motor neurons of rat
CA2375106A1 (en) Compositions and methods for the therapeutic use of an atonal-associated sequence for deafness, osteoarthritis, and abnormal cell proliferation
PL208368B1 (pl) Sposób diagnozowania jaskry
US8470548B2 (en) Diagnosis of depression
US6475744B1 (en) Methods for identifying compounds which modulate circadian rhythm
US20100275283A1 (en) Model animal in which state of disease condition is observable in real time, gene construct for achieving the same and use of the same
JP2005095173A (ja) 低酸素応答の検出方法
US7129065B2 (en) bHLH-PAS proteins, genes thereof and utilization of the same
D’Amico et al. Thyroid-specific inactivation of KIF3A alters the TSH signaling pathway and leads to hypothyroidism
US6750375B2 (en) Transgenic mouse comprising a disruption in an RGS9 gene
US20070089177A1 (en) Transgenic animal and methods for decreasing cardiac cell death via cardiac-specific SIR2alpha overexpression
JP2010506569A (ja) α−シヌクレインを発現する細胞およびその使用
Kamba Assessing neuronal ciliary localization of Melanin Concentrating Hormone Receptor 1 in vivo
Riccomagno et al. The RacGAP β-chimaerin selectively mediates stereotyped hippocampal axonal pruning
US7445904B2 (en) Cysteine string protein and its role in neurodegenerative diseases
JP2021158940A (ja) アポトーシスの阻害剤及びhap1を発現する非ヒト哺乳動物
US20050091704A1 (en) Ant2 conditional knockout mouse and methods
Grosschedl et al. PIASy-Deficient Mice Display Modest Defects
Dobrowolski Expression and function of the connexin43G138R mutation in mice causing oculodentodigital dyplasia (ODDD) in human
Pilpel born in Jerusalem, Israel