JP2005095162A - スクアレンエポキシダーゼ促進因子ノックアウト動物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 コレステロール代謝異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための医薬品のスクリーニングやコレステロール代謝研究に有用な実験動物の提供。
【解決手段】 スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されていることを特徴とする非ヒト哺乳動物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スクアレンエポキシダーゼ促進因子(以下、「SPF」という)を欠失した非ヒト哺乳動物とその使用に関する。
コレステロールは生体膜の主要な構成成分の一つとして、また胆汁酸 (The Bile Acids, 2, 1-32, 1973)及びステロイドホルモン(Endocrinology, 6, section 7, 1975)の前駆体として、生体にとって必須の成分であり、種々の栄養的、生理的条件下において各臓器・組織が必要とする適切な量のコレステロールが供給されている。
動物細胞では、(i)細胞内での生合成、(ii) 血中からLDL受容体を介した供給、という二つの経路で自らに必要なコレステロールを獲得している。そして、細胞内でのコレステロールの生合成速度を制御することによって、また細胞外液からのコレステロールの取り込みや細胞外への放出速度をそれぞれの細胞が合目的に変化させることによってその恒常性が保たれている。実際、LDL受容体やコレステロール生合成系酵素群は、細胞内コレステロール量によりフィードバック制御されていることが知られている(Adv. Lipid. Res., 14, 1-74, 1976)。従って、このようなコレステロールの恒常性を維持する機構を明らかにすることは、臨床的にも大いに関心の持たれる研究分野である。このような背景のもと、コレステロールの代謝経路についても精力的に研究がなされてきた。そのなかでもHMG-CoA還元酵素についての研究は特に盛んに行われ、コレステロール生合成の律速酵素がHMG-CoA還元酵素であることや、この酵素がステロールによる転写レベルの調節を受けること(Nature, 343, 425-430, 1990)が明らかとなった。更にこのHMG-CoA還元酵素の阻害剤が開発され、動脈硬化を予防する抗高脂血症治療薬として現在もっとも広く用いられている。
このようにコレステロールの代謝経路はその前半経路については、臨床的な興味からよく研究されてきたが、その一方で後半の経路については研究が遅れていた。しかしながら近年HMG-CoA還元酵素の下流に位置するイソペンテニルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸、ファルネシルピロリン酸が、様々な蛋白質やRNA修飾の基質となっていることが分かった(Nature, 343, 425-430, 1990)。なかでも、上記ピロリン酸類が、細胞内情報伝達や細胞増殖に重要な役割を果たすと考えられるp21 Ras (Nature. 343, 425-430, 1993)や低分子量G蛋白質 (Cell. 65, 1-4, 1991)などの機能発現に必須な修飾に関わっていることが明らかとなった。従って、HMG-CoA還元酵素の阻害剤は、上記ピロリン酸類の生成をとめてしまうこととなるので、深刻な副作用が懸念される。実際、培養細胞にHMG-CoA還元酵素阻害剤を添加すると細胞周期が停止し、増殖が起こらなくなることが知られている(J. Biol. Chem., 256, 6762-6768, 1981)。
このため、このような非ステロール生合成の分岐以後のコレステロールの代謝経路、すなわちスクアレンからスクアレン-2,3-オキサイドを経てラノステロールに至る段階に対する関心が強まっている。この各段階を担う酵素、スクアレン合成酵素・スクアレンエポキシダーゼ・オキシドスクアレンシクラーゼは各々1992年・1995年・1995年に哺乳類からのcDNAクローニングが報告され(J. Biol. Chem., 267, 21368-21374, 1992; J. Biol. Chem., 270, 17-20, 1995; Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 92, 9274-9278, 1995)、その後各酵素の阻害剤の開発が進められてきているが、現在までに臨床応用されているものはまだ無い。
上記の三つの酵素の中でもスクアレンエポキシダーゼは、コレステロール生合成系で唯一の酸素添加酵素であり、ステロール環形成の基質を合成する重要な酵素である。しかもHMG-CoA還元酵素と比較してもその比活性及び発現量は極めて低いことから(J. Lipid. Res., 31, 2087-2094, 1990;J. Lipid. Res., 31, 2095-2101, 1990)、この段階がボトルネックになっており、スクアレンエポキシダーゼの活性調節によりコレステロール生合成の後半経路の進行を決定していることが示唆される。
スクアレンエポキシダーゼの生化学的な研究は1950年代より米国のKonrad Blochらのグループにより進められてきた。彼らはラットの肝臓を用いて、そのミクロソーム分画にスクアレンをエポキシ化するスクアレンエポキシダーゼが存在することを見い出したが、さらにこの酵素の活性化には、肝臓可溶性分画(100,000×g遠心上清)が必要なことを明らかにした(非特許文献1)。その後、この肝臓可溶性分画中の活性化因子は、スクアレンエポキシダーゼ促進因子[squalene epoxidase promoting factor:SPF (Supernatant Protein Factor)]と命名された(非特許文献2〜4)。
SPFは、一次構造上α−トコフェロール輸送蛋白質(α−TPP)や細胞内レチナール結合蛋白質(cellular retinaldehyde binding protein)などの脂質輸送蛋白質ファミリーに属し、in vitroにおいてスクアレン及びスクアレン2,3-オキシドの膜間輸送活性を有することが確認されている。本発明者らは、その精製蛋白質の部分アミノ酸配列からラット及びヒト由来のSPFをコードするDNAを単離して塩基配列を決定し、アミノ酸配列を推定したところ、SPFは403のアミノ酸から成る分子量46,165Daの新規蛋白質であることが判明した(特許文献1、非特許文献5)。
ヒトSPFの主要な発現臓器は肝臓、脳、前立腺で、ラット及びマウスSPFの主要な発現臓器は肝臓、小腸、脳であり、腎臓、膵臓、末梢白血球にも少量発現が認められる。ヒト肝癌由来細胞株HepG2細胞に強制発現させると細胞のコレステロール生合成系の亢進が認められることからSPFはその発現臓器に特異的なコレステロール生合成促進作用を有すると考えられる。
このように、SPFは、スクアレンエポキシダーゼを活性化し、コレステロール生合成促進作用を有するので、この阻害剤が開発できれば、従来の薬物とは明らかに作用点が異なる新規な作用機序を有するコレステロール低下剤として提供することができる。また、HMG-CoA還元酵素阻害剤には横紋筋融解という重篤な副作用が知られているが、SPF遺伝子は横紋筋に発現していないため、SPF阻害剤は従来のHMG-CoA還元酵素阻害剤が持つ横紋筋融解という副作用のない新規の高脂血症治療薬になりうると考えられる。
SPF遺伝子のクローニングによってSPFの分子レベルでの解析は可能となったが、個体レベルでの生理的機能の解析には至らない。従って、SPFの欠損した遺伝的に安定な変異動物が系統的に得られれば、該蛋白質の個体レベルでの生理的機能の研究だけでなく、SPF阻害剤のスクリーニングやコレステロール代謝研究のための実験動物として有用であると期待される。しかしながら、現在のところSPF遺伝子の機能が欠損した遺伝的に安定な動物は知られていない。
Tchen T., Bloch K., J. Biol. Chem., 226, 921-930, 1957 Yamamoto, S., and Bloch, K., J.Biol.Chem., 245, 1670-1674, 1970 Tai, H.-H., and Bloch, K., J.Biol.Chem., 247, 3767-3773, 1972 Ferguson, J.B., and Bloch, K., J. Biol. Chem., 252, 5381-5385, 1977 Shibata, N., Arita, M., Misaki, Y., Dohmae, N., Takio, K., Ono, T., Inoue, K., Arai, H., Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 98, 2244-2249, 2001 WO01/64740号公報
従って、本発明の課題は、医薬品のスクリーニングやコレステロール代謝研究に有用なSPF遺伝子ノックアウト動物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、人為的にSPF遺伝子を欠損させた哺乳動物モデルの作製を試みた。具体的には、実施例に詳しく示されるように、マウスSPF遺伝子のクローニングを行い、これを用いて相同組換え用ベクターを構築し、これをマウス胚性幹細胞(ES細胞)に導入して組換えクローンを得て、それをマウス個体に戻すという手法により変異したSPF遺伝子を持つマウスを得ることに成功した。そして、本マウスの機能解析を進めたところ、SPF mRNAの発現は抑制されているにも関わらず、予想外にも血漿コレステロールのレベルは野生型と差がないこと、また本マウスに高脂血症治療剤であるフィブレート(Fibrate)系薬剤を投与したところ、トリグリセリドの低下とともに、コレステロールも低下するという興味のある知見を得ることができた。さらに、動脈硬化モデル動物を使用してSPFを欠損させると、LDL/IDL画分やVLDL画分のコレステロールが低下するという知見を得ることができた。本発明はかかる知見をもとに完成されたものである。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されていることを特徴とする非ヒト哺乳動物。
(2) スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現の抑制が、該遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部の欠損によるものであることを特徴とする(1)に記載の非ヒト哺乳動物。
(3) 非ヒト哺乳動物が、げっ歯類に属する動物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の非ヒト哺乳動物。
(4) げっ歯類に属する動物が、マウスであることを特徴とする(3)に記載の非ヒト哺乳動物。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物から調製される非ヒト哺乳動物細胞。
(6) スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されており、かつ、個体へ分化可能であることを特徴とする非ヒト哺乳動物細胞。
(7) スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現の抑制が、該遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部の欠損によるものであることを特徴とする(6)に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
(8) 非ヒト哺乳動物細胞が、げっ歯類に属する動物の細胞であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
(9) げっ歯類に属する動物の細胞が、マウス細胞であることを特徴とする(8)に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
(10) 細胞が、胚性幹細胞であることを特徴とする(5)から(9)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物細胞。
(11) 以下の工程を含む(1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物の作製方法。
(a) (6)から(10)に記載の非ヒト哺乳動物細胞を、妊娠した雌から得た胚に挿入し、キメラ胚を作製する工程
(b) 該キメラ胚を偽妊娠させた雌の子宮に移植する工程
(12) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物、又は(5)から(10)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物細胞を用いることを特徴とする、コレステロール代謝異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための医薬品のスクリーニング方法。
(13) (12)に記載のスクリーニング方法によって得られるコレステロール代謝異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための医薬品。
(14) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、該非ヒト哺乳動物のコレステロール値を指標として被験物質の中からコレステロール生合成阻害物質をスクリーニングする方法。
(15) (14)に記載のスクリーニング方法によって得られるコレステロール生合成阻害物質。
(16) コレステロール生合成代償機構を阻害する作用を有することを特徴とする、(15)に記載のコレステロール生合成阻害物質。
(17) 以下の工程を含むスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤のスクリーニング方法。
(a) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物に核内受容体PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor-α)活性化状態下で被験物質を投与する工程
(b) 野生型非ヒト哺乳動物に核内受容体PPARα活性化状態下で被験物質を投与する工程
(c) 被験物質投与後における(b)の動物のコレステロール値が、(a)の動物のコレステロール値と同等である場合の被験物質をスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤として選択する工程
(18) PPARα活性化状態がフィブレート系薬剤の投与または絶食により誘導したものである、(17)に記載の方法。
(19) さらに、LDL受容体またはApoEを破壊した、(1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物。
(20) 以下の工程を含むスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤のスクリーニング方法。
(a) (19)に記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程
(b) LDL受容体またはApoEを破壊した非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程
(c) 被験物質投与後における(b)の動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値が、(a)の動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値と同等である場合の被験物質をスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤として選択する工程
(21) (17)、(18)、又は(20)のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られたスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤。
(22) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物を用いてコレステロール生合成経路代償機構を解明する方法。
(23) (1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物を用いてコレステロール恒常性機構を解明する方法。
本発明によれば、SPF遺伝子の発現が人為的に抑制された非ヒト哺乳動物が提供される。本発明の非ヒト哺乳動物は、SPFの生理的機能の個体レベルでの解析、コレステロール代謝機構の研究、コレステロール生合成代償機構及びコレステロール恒常性機構の解明、SPF阻害剤のスクリーニング、コレステロール生合成代償機構の阻害物質のスクリーニングのためのツールとして有用である。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
1.非ヒト哺乳動物及びそれから調製される細胞
本発明の「非ヒト哺乳動物」及びそれから調製される細胞は、スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されていることを特徴とする。本明細書において該動物を「SPF遺伝子ノックアウト動物」ともいう場合がある。
遺伝子の発現を抑制する手段としては、SPF遺伝子又はその発現制御領域の一部を欠損させる手段を例示することができるが、これに限定されるわけではない。なお、本発明において「遺伝子の発現の抑制」には、完全な抑制及び部分的な抑制が含まれる。「完全な抑制及び部分的な抑制」とは野生型細胞におけるSPF遺伝子の発現と比較して、その遺伝子が発現しないか、あるいは低レベルでしか発現しないことをいう。また、特定の環境下での抑制も含まれる。更に、2つのアレルの一方の発現が抑制されている場合も含まれる。
本発明において、「非ヒト哺乳動物」とは、ヒトを除く哺乳動物であれば特に限定されないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等のげっ歯類に属する動物が好ましく、その中でもマウスが特に好ましい。
2.非ヒト哺乳動物細胞
本発明の「非ヒト哺乳動物細胞」は、スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されており、かつ、個体へ分化可能であることを特徴とするものである。遺伝子の発現を抑制する手段及びその意味、並びに対象とする非ヒト哺乳動物の種類は、上記のSPF遺伝子ノックアウト動物の場合と同様である。
また、細胞とは、代表的には胚性幹(ES)細胞をいい、卵又は精子であってもよい。
上記の非ヒト哺乳動物細胞を作製する方法は特に限定されないが、SPF遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部の欠損によりSPF遺伝子の発現を抑制した細胞は、相同組換え用ベクターを構築し、該ベクターを適当な細胞内に導入することにより作製することができる。
相同組換え用ベクター(ターゲティングベクターともいう)は、標的動物の内在性SPF遺伝子の機能を欠損させるために設計された核酸配列を含む。このような核酸配列は、例えば、SPF遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部を欠失させた核酸配列でもよく、また、SPF遺伝子又はその発現制御領域に他の遺伝子が挿入された核酸配列であってもよい。SPF遺伝子又はその発現制御領域に挿入される他の遺伝子としては、ポジティブ/ネガティブ選別を行うためのマーカーとしても機能する遺伝子が好ましい。ポジティブ選択マーカー遺伝子としてはネオマイシン耐性遺伝子(G418耐性により選択)やβ−ガラクトシダーゼ遺伝子などが、ネガティブ選択マーカー遺伝子としては単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(ガンミクロビル耐性により選択)やジフテリア毒素Aフラグメント遺伝子などが挙げられる。また、このようなターゲティングベクターを構築する際に、ターゲティングベクター構築用として市販されているプラスミドベクターを利用してもよい。
これら遺伝子のSPF遺伝子における挿入場所は、標的における内在性SPF遺伝子の発現を抑制しうる位置であれば特に限定されないが、通常エクソンに欠損が生じるように挿入する。マウスのSPF遺伝子は、作成した制限酵素地図(図1)によると、該ゲノム遺伝子は8個のエクソンを含むが、このうち、エクソン3、4、5にSPF遺伝子の欠損が生じるようにマーカー遺伝子を挿入して、相同組換え用ベクターを構築するのが好ましい。
クローニングしたSPF遺伝子へのこれらの遺伝子の挿入は、試験管内において、通常のDNA組み換え技法を用いて行うことができる(Sambrook,J.et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
このようにして構築された相同組み換え用ベクターを、制限酵素で切断して直鎖状DNAとし、例えばフェノール・クロロフォルム抽出、アガロース電気泳動、超遠心等により精製して、個体へ分化させることが可能な細胞、例えば、ES細胞に導入し、該細胞中のSPF遺伝子との相同組み換えを行う。相同組換え用ベクターはES細胞に直接挿入してもよいし、あるいはES細胞への挿入に先立って増幅用の適当なベクターにクローニングすることもできる。好ましいベクターとしては、pBluescript II SKベクター(Stratagene,San Diego,CA)又はpGEM7(Promega Corp,Madison,WI)のような細菌細胞で容易に増幅されるものが挙げられる。
ここで、ノックアウト動物を作出するのに用いるES細胞は、作出すべきノックアウト動物と通常同一種である。従って、例えば、マウス胚性幹細胞が、ノックアウトマウスの作出のために通常使用される。
相同組み換え用ベクターの細胞への導入は、当業者によく知られた方法、例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法などを利用して行うことができるが、エレクトロポレーションが好ましい。この結果、一部の細胞内においては細胞中のSPF遺伝子と相同組み換え用ベクターの対応する領域との間で組み換えが生じ、相同組み換え用ベクター中に構築されていた遺伝子と野生型の遺伝子とが置き換わることとなる。このようにしてマーカー遺伝子が挿入されたSPF遺伝子を持つ細胞を得ることができる。
相同組換え用ベクターにおいてマーカー遺伝子を利用している場合には、所望の相同組換えが行なわれた細胞は、SPF遺伝子が失活し、同時にマーカー遺伝子を得ることとなるので、このマーカー遺伝子を指標とすることにより選抜を行うことができる。例えば、マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を用いた場合には、ベクター導入後の細胞を、致死濃度の薬剤の存在下で培養することにより、所望の相同組換えが行なわれた細胞を選抜することができる。具体的には、ES細胞を適当な選択培地中、例えばネオマイシン耐性遺伝子とチミジンキナーゼ遺伝子を組み込んだ相同組換え用ベクターを構築した場合には、培地中にネオマイシンとガンシクロビルを含む選択培地中で培養する。両薬剤に対し薬剤耐性を呈して増殖してきたES細胞に、導入遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子が組み込まれたことは、PCR等で容易に同定することができる。更に相同組換え用ベクターの外側の5’上流もしくは3’下流のDNA一部をプローブとしてサザンブロット解析することにより、相同組み換えを起こしたかどうかを確認することもできる。
また、マーカー遺伝子が抗生物質耐性遺伝子以外である場合、ES細胞ゲノムDNAのサザンブロット解析を、マーカー遺伝子の配列に対してのみハイブリダイズするように設計されたプローブを用いて行うことができる。マーカー遺伝子が、その活性が検出できる酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ)をコードする遺伝子である場合、適当な条件下で酵素基質を細胞に添加し、酵素活性を分析することができる。
相同組換え体の検定は、Sambrookら(前掲)によって記載されているような標準的方法を用いてDNAを細胞から抽出し、次いで、該DNAを、特定の制限酵素(類)で消化したゲノムDNAに対して特異的パターンでハイブリダイズするように設計されたプローブを用いてサザンブロット解析することによって行う。別法としては、ゲノムDNAを、特定のサイズ及び配列のDNA断片を増幅するように特別に設計されたプローブを用いるPCRによって増幅することによって行うことできる(すなわち、適当な位置に相同組換え用ベクターを含有する細胞のみが適当なサイズのDNA断片を生じる)。また、相同組換え用ベクターがランダムに挿入されていないことを相同組換え用ベクター内のDNAをプローブとしてサザンブロット解析することにより確認できる。これらの方法を組み合わせることにより、相同組み換えを起こしたES細胞(以下、相同組換えES細胞という)を取得することができる。
このようにして調製された非ヒト哺乳動物細胞は、上述のSPF遺伝子ノックアウト動物を作製するために利用することができる。また、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物から調製される細胞と同様に医薬品のスクリーニングにも利用することができる。
3.SPF遺伝子ノックアウト動物の作製方法
本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物の作製方法は、(a)上述の非ヒト哺乳動物細胞、即ち相同組換えES細胞を妊娠した雌から得た胚に挿入し、キメラ胚を作製する工程、及び(b)該キメラ胚を偽妊娠させた雌の子宮に移植する工程を含む。
(a)キメラ胚を作製する工程
胚に挿入する細胞としてES細胞を用いる場合には、これを胚盤胞に注入することによりキメラ胚を作製することができる。注入に用いる胚盤胞は妊娠した雌の子宮を灌流することによって得ることができる。
ES細胞の注入は、好ましくはマイクロインジェクションによって行うことができる。マイクロインジェクションでは、約10〜30個のES細胞をマイクロピペットに収集し、適当な発生分化の段階にある胚に注入して、ES細胞を胚盤胞に取り込ませる。マイクロインジェクションは、例えばHogan, B.L.M., Alaboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1986;Yagi T. et. al., Analytical Biochem. 214, 70, 1993の記載に基づき、倒立顕微鏡下で、マイクロマニピュレーター、マイクロインジェクター、インジェクションピペット及びホールディングピペットを用いて行うことができる。
胚に注入した細胞(ES細胞)が発生分化中の胚に取り込まれたか否かを個体作製後に検定できるようにするために、作製された個体の外部的特徴(例えば、毛色)が、注入した細胞に由来する部分と胚盤胞に由来する部分とで異なるように、胚盤胞を選択することが好ましい。
(b)キメラ胚の移植工程
次に、上記で得られたキメラ胚を偽妊娠させた哺乳動物の子宮角に移植する。多くの場合、移植後17日目には産仔が得られる。産仔は通常、相同組換えを起こしたES細胞と、受精卵を採取した細胞のキメラとなる。
このキメラ動物を、適当な系統の同種動物と交配させることによって産仔(F1ヘテロ型産仔)を得、相同組換えES細胞の生殖系列への伝達を検定を行う。娩出される産仔はキメラマウスの生殖細胞が相同組換えES細胞に由来していれば該ES細胞が由来するマウスと同じ野生色を呈し、胚盤胞に由来していれば該胚盤胞が由来するマウスと同じ黒色を呈する。
また、上記で得られたF1ヘテロ型産仔どうしを交配してF2ホモ型産仔を得ることができる。本発明の動物は、キメラ型動物、F1ヘテロ型動物及びF2ホモ型動物を包含する。SPF遺伝子の機能欠損の効果の点からF2ホモ型動物が好ましい。本発明の非ヒト哺乳動物のmRNAの発現の有無はノーザンブロット解析、RT-PCR、RNAseプロテクションアッセイ、in situ等により確認できる。
4.本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物の利用
本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物は、下記の用途に該動物を生かしたまま使用してもよいし、該動物より摘出した組織、器官、細胞を使用することもできる。
(1)医薬品のスクリーニング
本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物はSPF mRNAの発現は抑制されているにも関わらず、予想外にも血漿コレステロールのレベルは野生型と差がなく、またコレステロール生合成酵素のmRNA発現が増加するという特徴を有する。これは、SPF遺伝子のノックアウトによって、コレステロール生合成の代償機構が働いている可能性が示唆される。
また、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物は、核内受容体PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor-α)活性化状態下において、野生型動物では血漿コレステロールのレベルが変化しないのに対し、ノックアウト動物ではそのレベルが下がるという興味のある挙動を示す。
さらに、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物に対し、LDL受容体またはApoEをさらに破壊した動物(以下、本動物を「ダブルノックアウト動物」という)、LDL受容体またはApoEのみを破壊した非ヒト哺乳動物ではLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値が変化しないのに対し、ダブルノックアウト動物ではそのレベルが下がるという興味のある挙動を示す。
上記のことから、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物、及びダブルノックアウト動物は、以下の態様で医薬品のスクリーニングに使用することができる。
例えば、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物に被験物質を投与し、該ノックアウト動物のコレステロール値を指標として被験物質の中からコレステロール生合成代償機構の阻害物質をスクリーニングすることができる。本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物は、SPF遺伝子の欠失に伴ってコレスロール値が低下せず、何らかのコレステロール生合成代償機構が働いていると考えられる。従って、この代償機構の阻害物質が存在すれば、コレステロール生合成が進まずコレステロール値が低下することになるので、コレステロール値が低下した場合の被験物質は、コレステロール生合成代償機構の阻害物質の候補とすることができる。
あるいは、野生型非ヒト哺乳動物に、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物を対照(コントロール)としてPPARα活性化状態下で被験物質を投与し、両動物のコレステロール値の差を調べることによってSPF阻害剤をスクリーニングすることができる。PPARα活性化状態下では野生型動物はコレステロール値が低下しないのに対し、本発明のSPF遺伝子ノックアウト動物はコレスロール値が低下することから、野生型動物のSPFをSPF阻害剤で機能を喪失させると、SPF遺伝子ノックアウト動物のコレステロール値と同レベルまでコレステロール値が低下すると考えられる。従って、両動物のコレステロール値が同等である場合の被験物質を、SPF阻害剤の候補とすることができる。
ここで、PPARα活性化状態は、高脂血症治療薬であるフィブレート系薬剤の投与、または絶食により誘導することができる。
あるいは、LDL受容体またはApoEのみを破壊した非ヒト哺乳動物に、本発明のダブルノックアウト動物を対照(コントロール)として被験物質を投与し、両動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値の差を調べることによってSPF阻害剤をスクリーニングすることができる。LDL受容体またはApoEのみを破壊した非ヒト哺乳動物はLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値が低下しないのに対し、本発明のダブルノックアウト動物は当該値が低下することから、LDL受容体またはApoEのみを破壊した非ヒト哺乳動物のSPFをSPF阻害剤で機能を喪失させると、ダブルノックアウトのLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値と同レベルまで低下すると考えられる。従って、両動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値が同等である場合の被験物質を、SPF阻害剤の候補とすることができる。
上記のスクリーニングで得られた阻害物質(剤)は、新たな作用点をもち、コレステロール生合成の盛んな臓器に特異的なコレステロール低下作用を有する。従って、該阻害物質はコレステロール代謝異常に関連する各種疾患、例えば、高脂血症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、高血圧症等の治療及び/又は予防用医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法の対象となる被験物質の種類は特に限定されない。例えば、天然に生じる分子(例えば、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質、核酸など);脂質、ステロイド、グリコペプチド、糖蛋白質、プロテオグリカンなど;あるいは天然に生じる分子の合成アナログ又は誘導体(例えば、ペプチド擬態物など);及び天然に生じない分子(例えば、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作成した低分子有機化合物);ならびにそれらの混合物などを挙げることができる。また、被験物質としては単一の被験物質を独立に試験しても、いくつかの候補となる被験物質の混合物(ライブラリーなどを含む)について試験をしてもよい。複数の被験物質を含むライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)、ペプチドライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)などが挙げられる。
(2)コレステロール代謝機構の研究
本発明の非ヒト哺乳動物は、コレステロール生合成の臓器特異的な調節因子であるSPFの生理的機能の個体レベルでの解析や、コレステロール代謝機構の研究に用いることができる。コレステロール代謝機構としては、具体的には、SPF遺伝子欠損で機能するコレステロール生合成代償機構の解明、SPFの核内受容体PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor-α)を介した脂質代謝変動で働きうるコレステロール生合成代償機構の解明などが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1) SPF遺伝子の相同組み換え用ベクターの作製
本実施例では、マウスSPF遺伝子の相同組み換え用ベクターを構築するために、まずマウスSPFゲノム遺伝子のクローニングを行った。このゲノムDNAを用い、ポジティブ/ネガティブ選別を行うために、ネオマイシン耐性遺伝子及びジフテリアトキシン-A遺伝子を挿入した相同組み換え用ベクターを構築した。この際、ネオマイシン耐性遺伝子は、エクソン3, 4, 5と置き換わるように挿入し、正常なSPFが作製できないようにした。以下具体的に説明する。
(1)マウスSPF遺伝子のクローニング
ラット由来SPFとホモロジーを有する遺伝子をマウスゲノムDNA配列データベース(Genbank)から検索を行った結果、AI256582として登録されていた配列と90%以上の相同性を示した。この配列情報をもとにマウス由来SPFをコードする全長DNAを増幅すると予想される以下のプライマーを設計した。
マウス由来SPF増幅用プライマー:
「mSPF-1」ATGGATCCATGAGCGGCAGAGTCGGTGAC(配列番号3)
「mSPF-2」AAGTCGACTTATTTGGGGGTGTCTGC(配列番号4)
マウス由来SPFをコードするDNAは、マウス肝臓から精製したRNAをテンプレートとし、「mSPF-1」「mSPF-2」をプライマーとして用い、Pyrobest DNA polymerase(Takara Shuzo社製)を用いたRT-PCRにより増幅した。増幅断片を制限酵素BamHI, SalIで処理した後、プラスミドpcDNA3(Invitrogen社製)に挿入し、プラスミド「pcDNA3-mSPF」を得た。このクローン中に含まれるSPFをコードする全長DNAの塩基配列をABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready reaction Kit, 377 DNA Sequencer (Applied Biosystems社製)を用いて決定した。こうして得られたマウスSPF cDNAの配列を配列番号1に、そのアミノ酸配列を配列番号2に示す。
マウスSPFゲノムDNAは以下のようにしてクローニングした。
マウスSPF cDNAの全オープンリーディングフレームをプローブとしてプラークハイブリダイゼーション法によりマウス(129/SVJ)genomic DNA Lambda FIX IIライブラリーをスクリーニングした。得られた陽性クローン(BS-MG6)から調製したファージDNAをpBluescriptIIにサブクローニングした(SPF-MG6)。SPF-MG6の7428bpの塩基配列のシークエンスを行い、エクソン1がSPF-MG6に含まれていることを確認した。
クローンBS-MG6を主要な制限酵素(EcoRI、SmaI、SacI、SpeI、XbaI、SacII)で切断し、その制限酵素サイトの位置の地図を作製した(図1)。
(2) 相同組み換え用ベクターの構築
SPF-MG6から以下のようにして相同組み換え用のベクターを構築した。まず、SPF-MG6をSmaI/SacIIで切断し、この切断末端をTakara DNA Ligation Kit(Takara)を用いた方法によりpBluescriptIIにサブクローニングした(pBS-SPF-5’)。次いでpBS-SPF-5’をSalIで切断し、チミジンキナーゼ遺伝子を持つpMCDT-A(A+T/pau)に組込んだ(pMC-SPF-5’)。次に、SPF-MG6をBamHI/XhoIで切断し、ネオマイシン耐性遺伝子を持つpKJ2に組込んだ(pKJ-SPF-3’)。なおこの際にpKJ2もBamHI/XhoIで切断しているため、ネオマイシン耐性遺伝子のpolyA添加シグナルがはずれている。最後にpKJ-SPF-3’をSalI/XhoIで切断し、pMC-SPF-5’のXhoIサイトに組み込み、相同組み換え用ベクター(SPF Targeting Vector)を得た。
このベクターは以下のような特徴を持つ(図1)。
(i)第3, 4, 5エクソンに置き換わる形でネオマイシン耐性遺伝子が挿入されている。
(ii)ネガティブ選択用マーカー遺伝子としてジフテリアトキシン-A遺伝子を持つ。
(iii)野生型SPF遺伝子との相同部分は、ネオマイシン耐性遺伝子の上流が約10kb、ネオマイシン耐性遺伝子下流が約1kbである。
(実施例2) 相同組み換えによる変異SPF遺伝子を持つES 細胞の樹立
本実施例では、相同組み換え用ベクターを、エレクトロポレーション法によりマウスES細胞 AB2.2-Prime ES Cells(LEXICON社The Mouse Kit)に導入し、次いでG418により選択培養を行った。得られたG418耐性コロニーについて、PCR及びサザンブロットにより相同組み換え体の検定を行った。以下、具体的に説明する。
(1) 相同組み換え用ベクターのマウスES細胞への導入
相同組み換え用ベクター(SPF Targeting Vector)DNA 30μgを制限酵素で切断することにより線状化し、精製した。このDNAをマウスES細胞 AB2.2-Prime ES Cells(LEXICON社The Mouse Kit) 3x107 個を含むエレクトロポレーション用緩衝液(ダルベッコPBS (GIBCO14190-144))に懸濁し、Field Strength 575V/cm、Capacitance 500μFの条件で、遺伝子導入を行った。導入後24時間から終濃度300μg/mlのG418(Genetisin, Sigma)で選択培養を行った。
ES細胞の培養には、DMEM(GIBCO 11965−092)培養液に終濃度15%の牛胎児血清、終濃度2mMのL-グルタミン(GIBCO 25040-081)、終濃度100μMβメルカプトエタノール(GIBCO 21985-023 )、そして終濃度50U/mlのペニシリンと終濃度50μg/mlのストレプトマイシンを添加したES細胞用培地を用いた(以下ES Cell Medium)。
また、ES細胞用のフィーダー細胞としてはSTO細胞を用い、培養液はDMEM(GIBCO11965−092)に終濃度7%のFBSを添加したものを用いた。STO細胞(5×107細胞/バイアル)を、37℃で急速融解後、フィーダー用培地で細胞数4.4×105 cells/mlに調整し、あらかじめゼラチンコート(IWAKI)した培養器に、100mmφディッシュの場合は12ml、60mmφディッシュの場合は4ml、6穴プレートの場合は2ml/穴、24穴プレートの場合は0.5ml/穴、そして96穴プレートの場合は75μl/穴ずつ分注した。以上のように作製したフィーダー細胞は3週間以内に使用した。
遺伝子導入後11日目から、以下のようにして出現したG418耐性コロニーを96穴のマイクロプレートに継代した。すなわち、マイクロピペットを用いてG418耐性コロニーを30μlのトリプシン・EDTA(GIBCO 25200-072)溶液を含む96穴のマイクロプレート(Corning 2586OMP)に移し換え、数分間処理した後、70μlのES細胞培養用培地を加え、ピペッティングすることによって単一細胞にした。この細胞懸濁液を96穴のマイクロプレート(Falcon 3072)に移し換え培養を継続した。3日後、96穴のマイクロプレート上の細胞がコンフルエントに達した段階で、以下のようにして細胞を2つに分割した。すなわち、細胞にTEを25μl加え分散させ、ES細胞用培地を25μl加えピペッティングすることによって単一細胞にした後、2×Freezing medium(DMEM:ESQ FBS:DMSO=2:2:1)を50μl加え、その20μlをES細胞用培地150μlの入ったゼラチンコートした96穴マイクロプレート(Iwaki 4860-020)に継代し、PCRによる相同組み換え体検定用のDNAを抽出するために培養した。残りのES細胞には、流動パラフィン100μl(0.2μmのフィルターで濾過滅菌したもの)を加え、-80℃で凍結保存した。尚、DNA抽出用のES細胞の培養にはフィーダー細胞は用いず、その他のES細胞の培養には全てフィーダー細胞を用いて行った。
(2) PCRによる相同組み換え体検定
相同組み換え体の検定は、PCRによって以下の通りに行った。すなわち、コンフルエントの状態まで細胞が増殖した96穴プレートの各ウェルから培地を取り除き、Lysis buffer (10xTaq buffer 5μl、5% NP-40 5μl、Proteinase K 4μl、H2O 36μl)を加え、55℃で2時間加温した。溶解したサンプルを0.5mlチューブに回収し、95℃で15分間処理した後10,000rpmで10〜15分間遠心し、その上清1μlをPCR用の鋳型DNAとして用いた。
PCRのプライマーは、相同組み換え用ベクター上のネオマイシン耐性遺伝子と、相同組み換え用ベクターに含まれないエクソン5と6との間、約1.0kbが増幅されるように設計した(図1)。すなわち、ネオマイシン耐性遺伝子上の配列を含むNeo-fwdプライマー:5'-TCGCCTTCTATCGCCTTCTTGACG-3'(配列番号5)及び第5, 6エクソンの間に位置するSG-40プライマー:5'-AGAAGACAATTTGGGGAGCTAGC-3'(配列番号6)を用いて、以下の条件でPCRを行った。
(反応液組成)
10 x ExTaqバッファー(TaKaRa) 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
ExTaq(TaKaRa) 0.5μl
10μM Neo-fwdプライマー 1μl
10μM SG-40プライマー 1μl
サンプル 1μl
H2O 37.5μl
(反応条件)
95℃、2分→(94℃、30秒→60℃、45秒→72℃、1分30秒) x 5サイクル→(94℃、30秒→57℃、45秒→72℃、1分30秒) x 35サイクル→72℃、5分
PCRの結果から相同組み換え体であると考えられたクローンは、12個であった。PCR解析で相同組み換えが確認されたクローンは、凍結保存してあった96穴プレートを37℃に温めることにより融解し、24穴プレートに継代した。この24穴プレートを24時間、37℃で培養後、DMSOと流動パラフィンを除くために培地を交換した。それぞれのクローンが75〜90%コンフルエントに達した時点で24穴から6穴プレートに継代した。さらに、6穴プレートに75〜90%コンフルエントまで増殖したものが2穴分得られたところで、1穴分は凍結保存し、残りの1穴分は胚盤胞への注入及びDNA抽出に使用した。
凍結保存は以下の如く行った。すなわち、細胞をESQ PBSで2回リンスした後、0.5mlのトリプシン・EDTA( GIBCO25200-072 )を加え、37℃で15〜20分間保温しトリプシン処理を行った後、さらに0.5mlのES Cell mediumを加え、35〜40回ピペッティングを行いES細胞の塊を完全に解離させた。この細胞懸濁液を15ml遠心チューブに移し、さらに1mlのES Cell Mediumでウェルを洗ってチューブに回収した。チューブを1,000rpmで7分間遠心し、培地を取り除き 0.25ml ES Cell Medium に再懸濁し、0.25mlの2 x Freezing medium を加えた。クライオジェニックバイアルにウェルの中身を移し、-80℃で凍らせ、液体窒素中で保存した。
胚盤胞への注入及びDNA抽出用の細胞は、 ES細胞の塊を完全に解離させた後、その四分の一を胚盤胞への注入に用い、残りの細胞の三分の一、及び三分の二をそれぞれゼラチンコートした60mmディッシュに継代した。前者は細胞がコンフルエントにまで増殖したところでサザンブロット解析用のゲノムDNAを抽出し、後者の細胞はコンフルエントにまで増殖したところで3本に分けて凍結した。
(実施例3) 組み換えSPF遺伝子を持つES細胞によるキメラマウスの作製
相同組み換えが確認されたES 細胞クローンについて、C57BL/6J系マウスの胚盤胞をホスト胚としてキメラ胚を作製し、それを偽妊娠マウスの子宮角に移植して産仔を得た。ホスト胚の採取は、妊娠2日目に、100μM EDTAを添加した Whitten's培地で、卵管と子宮を灌流することによって行った。8細胞期胚又は桑実胚を24時間Whitten's培地で培養し、得られた胚盤胞を注入に用いた。注入に用いたES 細胞は、継代してから2あるいは3日目にTE処理により分散させ、顕微操作に供するまで4℃で静置した。
ES 細胞の注入用ピペットと胚保定用ピペットは、外径1mmの微小ガラス管(NARISHIGE)を微小電極作製器(Sutter社P-98/IVF)を用いて細く引き延ばした後、マイクロフォージ(De Fonburun)を用いて外径50〜100μmの部分で切断し、さらに口径を10〜20μmに加工したものを用いた。注入用ピペットと保定用ピペットは、先端から約5mmの部分を約30度曲げて、マイクロマニピュレーター(LEITZ)に接続した。顕微操作に用いたチャンバーとしては、穴あきスライドグラスにカバーグラスを蜜蝋で接着したものを用い、その上に約20μlの0.3% BSAを加えたHepes-buffered Whitten's培地のドロップを2個置き、上面を流動パラフィン(ナカライテスク261-37 SP)で覆った。一方のドロップには、約100個のES細胞を入れ、他方には拡張胚盤胞を10〜15個入れ、胚1個あたり10〜15個のES 細胞を注入した。
顕微操作はすべて、倒立顕微鏡下で行った。操作胚は、1〜2時間の培養後、偽妊娠2日目のICR系受容雌の子宮角に移植した。分娩予定日に至っても産仔を娩出しなかった受容雌については、帝王切開を施し、里親に保育させた。
C57BL/6J系マウスの胚盤胞40個に、クローンNO.17のES細胞を注入した結果、40個の胚盤胞への注入が成功した(成功率100%)。この40個を偽妊娠2日目のICR系受容雌の子宮角に移植した結果、9匹の産仔が得られた。相同組み換え体に由来する部分の毛色は野生色を呈し、C57BL/6J系マウスに由来する部分の毛色はブラック色を呈する。得られた9匹の産仔のうち、8例が毛色からキメラマウスと判定できた。これらのキメラマウスにおける毛色から判断したES細胞の寄与率は10〜90%の幅であった。同様に、クローンNo.64の ES細胞からもキメラマウスが得られた。
(実施例4)相同組み換え体の生殖系列への伝達の検定
実施例3のキメラマウスをC57BL/6J系マウスと交配させ、ES細胞由来の産仔が得られるか否かを検定した。キメラマウスの生殖細胞がES細胞に由来していれば、娩出される産仔の毛色は、野性色を呈し、C57BL/6J系マウスの胚盤胞に由来していればブラック色を呈することとなる。クローンNo.64 ES細胞については、雄キメラマウス1例において、ES細胞の生殖系列への伝達が確認された。またクローンNo.17 ES細胞についても、ES細胞の生殖系列への伝達が確認された。
次に、これらの野性色マウスの尾の一部からDNAを抽出し、PCRにより、変異SPFアリルが伝達されているかを調べた。その結果、クローンNo.17 ES細胞由来の産仔、そしてクローンNo.64 ES細胞由来の産仔においても変異SPFアリルが伝達されていることが確認された。片側のアリルのSPF遺伝子に変異を持つヘテロ欠損マウス同士の交配により、両側のアリルに変異を持つホモ欠損マウスの作製を行った。野生型、ヘテロ欠損そしてホモ欠損マウスの各遺伝子型の解析は、PCRによって行った。すなわち、変異アリルの存在を前述のNeo-fwdプライマーとSG-40プライマーの組み合わせでPCRを行い、野生型アリルの存在をSG-40プライマーとエクソン5の配列を含む SG-20プライマー:5’-gtatccagcagaccacaaag-3’(配列番号7)との組み合わせでPCRを行った。尚、SG-40とSG-20プライマーとの組み合わせで行うPCRの反応は、前述のNeo-fwdとSG-40のプライマーの組み合わせでPCRを行う条件と同様である。この2つのプライマーの組み合わせを用いPCRを行い、野生型アリルの存在が検出でき、変異アリルの存在が検出できないものを野生型マウス、その反対に野生型アリルの存在が検出できず、変異アリルの存在が検出できたものをホモ欠損マウス、そして野生型と変異アリル両方が検出された場合をヘテロ欠損マウスと判定した。その結果得られた産仔の各遺伝子型は、野生型:ヘテロ欠損:ホモ欠損マウスの比率が、6匹:18匹:4匹(計28例)であり、ほぼメンデルの法則通り1:2:1の割合になっていた。メンデルの法則どおりの理論値では、28例では7匹:14匹:7匹になる。
(実施例5)ウェスタンブロット法、定量PCRによる相同組み換え体検定
(1) ウェスタンブロット法
まずウェスタンブロット法による相同組み換え体検定のため、普通食で飼育した8週齢オスのSPF欠損マウスと野生型マウス(互いに同腹の仔)より肝臓を摘出し、2.5倍量のSETバッファーにてホモジェネートした後、遠心分離により100,000×g上清画分を調製した。各々50μg/laneになるように10%ゲルにアプライし、ウェスタンブロット法により各サンプル中のSPFの蛋白発現量を調べた。一次抗体には2000倍希釈したanti-mouse SPF monoclonal antibody (mouse SPFの288-403aaの領域を認識する抗体で免疫動物はラット)を二次抗体には2000倍希釈したanti-rat IgG monoclonal antibody-HRP conjugatedを用いECL発色を行った。なおコントロールとして一次抗体には2000倍希釈したanti-mouse αTTP monoclonal antibody (免疫動物はラット)を二次抗体には2000倍希釈したanti-rat IgG monoclonal antibody-HRP conjugatedを用いECL発色を行なった。
(2) 定量PCR
次に定量PCRによる相同組み換え体検定のため、普通食で飼育した8週齢オスのSPF欠損マウスと野生型マウス(互いに同腹の仔)より肝臓を摘出し、ISOGENにてtotal RNAを調製した。ここで得られたtotal RNAのうち2μgを用いてSuperScript First-Strand Synthesis Systemにより逆転写反応を行ってcDNAを調製し、SYBER Greenを用いた定量PCRによりmouse SPF1のmRNAの発現量を調べた。
(反応液組成)
SYBER Green Master mix 5μl
Fwd primer 2μl
Rev primer 2μl
Sample 1μl
(PCR反応条件)
50℃、2 min → 95℃、10 min → (95℃、15 sec → 60℃、1 min)×40 cycles
(使用プライマー)
mouse SPF-fwd : 5’-ttccggaagcaaaaggaacat-3’(配列番号8) 300 nM
mouse SPF-rev : 5’-gcctgacagatactgttggatcac-3’(配列番号9) 900 nM
mouse β-Actin-fwd : 5’-atgaagatcaagatcattgctcctc-3’(配列番号10) 900 nM
mouse β-Actin-rev : 5’-acatctgctggaaggtggacaac-3’(配列番号11) 300 nM
その結果、作製したSPF遺伝子ノックアウトマウスでは、蛋白質レベル(図2A)、mRNAレベル(図2B)ともにSPFの発現は認められなかった。従って作製したマウスはSPFの欠損マウスであることが確認された。
(実施例6) SPF遺伝子ノックアウトマウスにおけるコレステロール代謝酵素のmRNA発現量の検討
普通食で飼育した8週齢オスのSPF欠損マウスと野生型マウス(互いに同腹の仔)より肝臓を摘出し、ISOGENにてtotal RNAを調製した。ここで得られたtotal RNAのうち2μgを用いてSuperScript First-Strand Synthesis Systemにより逆転写反応を行ってcDNAを調製し、SYBER Greenを用いた定量PCRによりコレステロール代謝に関わる種々の酵素(HMG-CoA synthase、HMG-CoA reductase、Squalene synthase、Squalene epoxidase、LDL receptor、MTP、ACAT、CYP7a、SPF3、SR-BI、ABCA1、PLTP、LPL、delta-6-desaturase、ABC-G8)のmRNAの発現量を調べた。反応液組成、PCR反応条件は実施例5と同じである。
(使用プライマー)
mouse HMG-CoA synthase fwd : 5’-cttgctttgctcgttcttct-3’(配列番号12) 300 nM
mouse HMG-CoA synthase rev : 5’-tcggtcaccggttcctccctca-3’(配列番号13) 300nM
mouse HMG-CoA reductase fwd : 5’-tggaattatgagtgccctaaa-3’(配列番号14) 300nM
mouse HMG-CoA reductase rev : 5’-ccgcgttatcgtcaggatgatg-3’(配列番号15) 300nM
mouse Squalene synthase fwd : 5’-ctccaaacaggactgggacaa-3’(配列番号16) 300nM
mouse Squalene synthase rev : 5’-aatagacgagaaaggccaattcc-3’(配列番号17) 300nM
mouse Squalene epoxidase fwd : 5’-aagaaagaacagctggagtccaa-3’(配列番号18) 300nM
mouse Squalene epoxidase rev : 5’-gtcacgaacgaggtcgacact-3’(配列番号19) 300 nM
mouse LDL receptor fwd : 5’-tgctgctgccggagttg-3’(配列番号20) 900 nM
mouse LDL receptor rev : 5’-gcgatgcattttccgtctct-3’(配列番号21) 900 nM
mouse MTP fwd : 5’-attgagcggtctggatttacaac-3’(配列番号22) 300 nM
mouse MTP rev : 5’-aggtagtgacagatgtggcttttg-3’(配列番号23) 900 nM
mouse ACAT fwd : 5’-gcctatactgccaggagtggtatg-3’(配列番号24) 300 nM
mouse ACAT rev : 5’-gtcaccatcccccagaatgtt-3’(配列番号25) 900 nM
mouse CYP7a fwd : 5’-tagctctttacccacagttaatgca-3’(配列番号26) 300 nM
mouse CYP7a rev : 5’-caaggtaccggtcgtatttaaaagt-3’(配列番号27) 900 nM
mouse SPF3 fwd : 5’-cagcagaacctggaccagatc-3’(配列番号28) 300 nM
mouse SPF3 rev : 5’-gaccaccagagtcatagagttgga-3’(配列番号29) 300 nM
mouse SR-BI fwd : 5’-ccctaacccaaaggagcattc-3’(配列番号30) 300 nM
mouse SR-BI rev : 5’-tgcatcttcacagaacagttcatg-3’(配列番号31) 300 nM
mouse ABCA1 fwd : 5’-ttggaaagattctctatacacctgaca-3’(配列番号32) 300 nM
mouse ABCA1 rev : 5’-tgccctccaggtcatgga-3’(配列番号33) 300 nM
mouse PLTP fwd : 5’-ccatgctgggacggtgtt-3’(配列番号34) 300 nM
mouse PLTP rev : 5’-tcgatgcccacgagatcat-3’(配列番号35) 300 nM
mouse LPL fwd : 5’-caagaccttcgtggtgatcca-3’(配列番号36) 300 nM
mouse LPL rev : 5’-tacagggcggccacaagt-3’(配列番号37) 300 nM
mouse delta-6-desaturase fwd : 5’-gacataaagagcctgcatgtgttt-3’(配列番号38) 300 nM
mouse delta-6-desaturase rev : 5’-gggcaggtatttcagcttcttc-3’(配列番号39) 300 nM
mouse ABC-G8 fwd : 5’-ttcacctacagtggtcagtccaa-3’(配列番号40) 300 nM
mouse ABC-G8 rev : 5’-aactgagccagctgctcaaac-3’(配列番号41) 300 nM
その結果、野生型マウスと比べSPF欠損マウスではコレステロール生合成に関わる酵素のmRNA発現に増加傾向が見られ、特にHMG-CoA合成酵素(HMG-CoA synthase)やスクアレンエポキシダーゼ(Squalene epoxidase)では1.64、1.90倍と比較的大きな発現増加が認められた(図3)。SPF欠損マウスでは図6にもあるように血漿コレステロールレベルに大きな差はないことから、こうしたコレステロール生合成酵素のmRNA発現増加はコレステロール生合成を維持する代償機構の可能性が示唆される。またABCA1も1.5倍以上の発現増加が見られる一方、SR-BIでは0.84倍と減少傾向が見られ、血漿リポ蛋白質の分泌促進と異化代謝低下により、血漿コレステロールレベルをある程度維持するように働いていると考えられる。
(実施例7)SPFの核内受容体PPARαによる発現制御
まず個体レベルにおけるSPFの発現制御機構を調べるため、脂質代謝を変動させるとされている様々な薬剤刺激を野生型マウスに与えた。具体的には8週齢オスの野生型マウス(C57BL/6J)を6日間、普通食、0.5%コール酸・2%コレステロール混餌食、20% Fish oil添加食、又は0.2%Fenofibrate混餌食にて飼育した。肝臓を摘出し、2.5倍量のSETバッファーにてホモジェネートした後、遠心分離により100,000×g上清画分を調製した。各々50μg/laneになるように10%ゲルにアプライし、ウェスタンブロット法によりSPFの蛋白発現量を調べた。抗体の条件は実施例5に記載した通りである。
その結果、SPFの蛋白発現がFenofibrate(リバンチル:グレラン製薬)混餌食においてのみ約2倍に増加することが分かった(図4)。Fenofibrateはフィブレート系薬剤の一種であり、高脂血症治療薬として本邦において用いられている。そこでこの現象がフィブレート系薬剤に共通した効果か検討するため、8週齢オスの野生型マウス(C57BL/6J)を6日間普通食又は0.2% Fenofibrate混餌食又は0.2% Ciprofibrate[Modalim(登録商標):Sanofi-Synthelabo]混餌食にて飼育し、肝臓を摘出し、2.5倍量のSETバッファーにてホモジェネートした後、遠心分離により100,000×g上清画分を調製した。各々50μg/laneになるように10%ゲルにアプライし、ウェスタンブロット法によりSPFの蛋白発現量を調べた。抗体の条件は実施例5に記載した通りである。
また、上記の摘出した肝臓からISOGENにてtotal RNAを調製し、得られたtotal RNAのうち2μgを用いてSuperScript First-Strand Synthesis Systemにより逆転写反応を行ってcDNAを調製し、SYBER Greenを用いた定量PCRによりSPFのmRNAの発現量を調べた。定量PCRの条件及び用いたプライマーは実施例5に記載した通りである。
その結果、Fenofibrate及びCiprofibrateの両方でSPFの発現が蛋白質・mRNAレベル共におよそ2倍に増加しており、この現象がフィブレート系薬剤に共通の効果であることが分かった(図5A)。フィブレートは核内受容体PPARαのアゴニスト活性を有する。そこでこの増加がPPARαを介するものか検討するため同様の実験をPPARα欠損マウスにて行った。その結果PPARα欠損マウスではこのようなフィブレートによるSPFの発現増加は見られなかったことから、SPFはPPARαを介した発現制御を受けていると考えられた(図5B)。
(実施例8)フィブレート処理したSPF遺伝子ノックアウトマウスにおける血漿コレステロールの低下
これまでにPPARαは脂質代謝、特に脂肪酸代謝に関わる酵素の転写制御を介して、脂質代謝を制御していることが知られている。先の結果よりSPFはPPARαにより、その発現が蛋白質・mRNAレベルで制御されていたことから、SPF遺伝子ノックアウトマウスをフィブレート処理することで何らかの脂質代謝の変化がおこるのではないかと考えられた。
そこで、8週齢オスのSPF欠損マウスと野生型マウス(互いに同腹の仔)を6日間普通食又は0.2%fenofibrate混餌食にて飼育し、(i)静脈より採血し血漿を調製し、血漿中のコレステロール及びトリグリセリド値を測定、(ii)肝臓を摘出し、Bligh-Dyer法により脂質抽出し、コレステロール及びトリグリセリド値を測定した。その結果、SPF欠損マウスにフィブレートを投与すると血漿コレステロールが約35%と有意に低下することが分かった。野生型マウスではフィブレートを投与してもこのような血漿コレステロールの有意な減少は見られないことから、この効果はSPF欠損による効果であると考えられる(図6)。その他の脂質データについては野生型マウスとSPF欠損マウスで有意な差は認められなかった。
以上の結果から、SPFはPPARαを介した脂質代謝変動時におけるコレステロール代謝に特異的な調節因子であるという新たな知見が得られた。従来、フィブレートなどのPPARα作用薬はトリグリセリドの低下を目的とした高脂血症治療薬であり、コレステロールへの関与はほとんど顧みられていなかった。今回の発見はPPARαが脂肪酸代謝のみならずコレステロール代謝にも関与することを示唆するものであった。同時に、SPF阻害剤は、フィブレートを併用することでコレステロール、トリグリセリドを両方低下させることができるので、臨床的応用範囲が広いといえる。
(実施例9)絶食状態によるSPF欠損マウスのコレステロール代謝への影響
核内受容体PPARαは生理的には、例えば絶食状態のようにエネルギー供給が著しく低下したときに活性化され、体内にエネルギーを供給するように働く転写因子として位置づけられている。実施例7及び8で示した通り、SPFがPPARαによりその発現が蛋白質・mRNAレベルで制御されていること、そしてPPARαアゴニストによりSPF欠損マウスの血漿コレステロールレベルが低下することが確認された。そこで絶食状態におけるSPF欠損マウスの生理機能を検討した。
(1) 血漿中のコレステロール・トリグリセリド・グルコース濃度の測定
7週齢オスのSPF欠損マウスと野生型マウス(互いに同腹の仔)を絶食状態で48時間飼育した。
上記SPF欠損マウスと野生型マウスの静脈より絶食0、24、48時間で採血し、血漿を調製し、血漿中のコレステロール・トリグリセリド・グルコース濃度をそれぞれ測定した。
図7Aに野生型マウスにおける測定結果を、図7BにSPF欠損マウスにおける測定結果を示す。
SPF欠損マウスを絶食すると血漿コレステロールが経時的に有意に低下したのに対し、野生型マウスでは絶食してもこのような血漿コレステロールの有意な減少は見られなかった。また、血漿トリグリセリドやグルコース濃度は両マウスともに絶食により同程度低下した。これらの結果から、血漿コレステロール低下は、SPF欠損に起因する特異的な効果であると考えられた。
(2)肝臓におけるSPF蛋白発現量、SPF mRNA及びコレステロール生合成系酵素のmRNA測定
絶食状態または摂食状態で48時間飼育した野生型マウスより肝臓を摘出した。摘出した肝臓を2.5倍量のSETバッファーにてホモジェネートした後、遠心分離により(100,000×g)上清画分を調製した。各々50μg/laneになるように10%ゲルにアプライし、ウェスタンブロット法によりSPFの蛋白発現量を調べた(抗体の条件は実施例5と同じ)。
絶食状態または摂食状態で48時間飼育したSPF欠損マウスと野生型マウスよりそれぞれ肝臓を摘出し、ISOGENにて肝臓total RNAを調製した。ここで得られたtotal RNAのうち2μgを用いてSuperScript First-Strand Synthesis Systemにより逆転写反応を行い、cDNAを調製し、SYBER Greenを用いた定量PCRによりコレステロール生合成系酵素とSPFのmRNAの発現量を調べた(定量PCRの条件及び用いたプライマーは実施例5と同じ)。
図7Cに示すように、野生型マウスは絶食させると肝臓におけるSPFのmRNA及び蛋白質発現が増加した。
また、図7Dに示すように、コレステロール生合成系酵素については両マウスともに絶食により肝臓におけるmRNA発現が著しく低下した。
以上の結果から、絶食状態にある野生型マウスとSPF欠損マウスにおいて、コレステロール生合成系酵素の発現は両マウスともに同様に減少するのに対し、血中コレステロールはSPF欠損マウスでは減少したが、野生型マウスでは変動しないことがわかった。野生型マウスでは絶食状態において肝臓でのSPFの発現が増加したことから、コレステロール生合成の維持はSPFの発現によるものであると予想された。
(3)肝臓におけるコレステロール量測定
肝臓におけるコレステロール生合成能を調べるため、肝臓においてde novo合成されたコレステロール量を以下のようにして測定した。14Cで放射標識したMevalonolacton(コレステロール生合成中間体の一種)を絶食状態または摂食状態で48時間飼育したSPF欠損マウスと野生型マウスに腹腔内投与し、30分後に肝臓を摘出した後、Bligh-Dyer法により脂質抽出し、放射標識されたコレステロール量を調べた。
図7Eに示すように、摂食状態にある野生型マウスとSPF欠損マウスのコレステロール生合成能はほぼ同程度であったが、絶食状態にある野生型マウスでは約50%、SPF欠損マウスでは約20%まで摂食状態に比べてコレステロール生合成能が低下した。
上記の各試験の結果から、絶食状態の野生型マウスでは、肝臓におけるコレステロール生合成能が低下し(図7C)、また、コレステロール生合成酵素の発現量が減少している(図7D)にも関わらず、血漿コレステロール濃度が維持されている(図7A)ことがわかった。
絶食状態では、肝臓におけるコレステロール生合成酵素の発現を制御する転写因子SREBPの活性は低下するが、PPARαは活性化されることから、絶食状態での血漿コレステロール濃度の維持には、SREBPではなくPPARαの発現制御を受けるSPFの関与が考えられる。すなわち、絶食状態においては、PPARαの活性化に伴ってSPFの発現量が増加することによって、コレステロール生合成系酵素の発現低下が補われ、他の末梢組織に供給するコレステロールが確保されるという全く新規なコレステロール恒常性機構が存在することが示唆される。
(実施例10)LDL受容体・SPFダブルノックアウトマウス、ApoE・SPFダブルノックアウトマウスの作製およびその血漿リポ蛋白画分中のコレステロール量の検討
動脈硬化症モデルマウスとして知られているLDL受容体ノックアウトマウス、ApoEノックアウトマウスのそれぞれに、SPFノックアウトマウスをかけあわせ、SPF, LDL受容体ダブルホモマウス(spf -/-, ldlr -/-)、SPF, ApoEダブルホモマウス(spf -/-, apoe -/-)を作製した。
普通食にて飼育した12〜14週齢オスのSPF, LDL受容体ダブルホモマウス(spf -/-, ldlr -/-)とLDL受容体単独ホモマウス(spf +/+, ldlr -/-)、12〜19週齢メスのSPF, ApoEダブルホモマウス(spf -/-, apoe -/-)とApoE単独ホモマウス(spf +/+, apoe -/-)より採血し、血漿を調製した後、ゲル濾過カラムによりサイズ分画して各フラクションのコレステロール量を調べた。
SPF・LDL受容体ダブルノックアウトマウスでは、LDL/IDL画分とHDL画分にコレステロールの高いピークが見られるなか、SPF, LDL受容体ダブルホモマウスはLDL受容体単独ホモマウスに比べLDL/IDL画分のコレステロールのみが顕著に低下し、HDL画分のコレステロールは殆ど変化しなかった(図8A)。
一方、SPF・ApoEダブルノックアウトマウスでは、VLDL画分にのみコレステロールの高いピークが見られるなか、SPF, ApoEダブルホモマウスはApoE単独ホモマウスに比べ顕著に低下した(図8B)。
これまでの疫学的調査によりVLDLやLDL画分のコレステロールが高いほど動脈硬化になりやすく、逆にHDL画分のコレステロールが高いほど動脈硬化になりにくいことが報告されている。上記の結果により、動脈硬化モデル動物を使用してSPFを欠損させると、LDL/IDL画分やVLDL画分のコレステールが低下するという知見を得ることができた。従って、動脈硬化の危険因子であるVLDLやLDL画分のコレステロールのみを低下させる薬剤の標的としてSPFが有望であり、SPF阻害剤は病的な高脂血症状態においてその治療効果を示すことが強く示唆された。
本発明の非ヒト哺乳動物によってスクリーニングされるSPF阻害剤、コレステロール生合成阻害物質は、従来の薬剤とはその作用点の異なるコレステロール低下剤として提供でき、高脂血症をはじめとするコレステロール代謝異常に関連する疾患の治療及び/又は予防に有用である。
図1は、PF-MG6(野生型アレル)の制限酵素地図、ターゲティングベクター、ターゲットされたアレルを示す。 図2Aは、SPF遺伝子ノックアウトマウス(spf(-/-))および野生型マウス(spf(+/+))におけるSPF発現量(蛋白質レベル)を示す。 図2Bは、SPF遺伝子ノックアウトマウス(spf(-/-))および野生型マウス(spf(+/+))におけるSPF発現量(RNAレベル)を示す。 図3は、SPF遺伝子ノックアウトマウス(spf(-/-))および野生型マウス(spf(+/+))おける種々のコレステロール代謝酵素の発現量(RNAレベル)の比較を示す(各表の下の数字は野生型を1とした場合の倍数を示す)。 図4は、脂質代謝を変動させる薬剤で刺激した野生型マウスにおけるSPF発現のウェスタンブロット法による解析結果、ならびにSPF発現量(蛋白質レベル)を示す。 図5Aは、Fenofibrate及びCiprofibrateで処理した野生型マウスにおけるSPF発現量(蛋白質レベル、RNAレベル)を示す。 図5BはFenofibrate及びCiprofibrateで処理したPPARα欠損マウスにおけるSPF発現量(蛋白質レベル、RNAレベル)を示す。 図6は、野生型マウス(WT)及びSPF遺伝子ノックアウトマウス(KO)の血漿及び肝臓におけるコレステロール量、トリグリセリド量を示す。 図7Aは、絶食状態においた野生型マウスにおける血漿中コレステロール量、トリグリセリド量、グルコース量の経時的変化を示す。 図7Bは、絶食状態においたSPF遺伝子ノックアウトマウス(spf(-/-))における血漿中コレステロール量、トリグリセリド量、グルコース量の経時的変化を示す。 図7Cは、絶食または摂食状態においた野生型マウスにおける肝臓におけるSPF発現量(蛋白質レベル、RNAレベル)を示す。 図7Dは、絶食または摂食状態においた野生型マウス(WT)及びSPF遺伝子ノックアウトマウス(spf -/-)における肝臓における種々のコレステロール代謝酵素の発現量(RNAレベル)の比較を示す。 図7Eは、絶食または摂食状態においた野生型マウス(WT)及びSPF遺伝子ノックアウトマウス(spf -/-)における肝臓におけるコレステロール量の比較を示す。 図8Aは、SPF, LDL受容体ダブルホモマウス(spf -/-, ldlr -/-)及びLDL受容体単独ホモマウス(spf +/+, ldlr -/-)の血漿リポ蛋白画分中のコレステロール量の比較を示す。 図8Bは、ApoEダブルホモマウス(spf -/-, apoe -/-)とApoE単独ホモマウス(spf +/+, apoe -/-)の血漿リポ蛋白画分中のコレステロール量の比較を示す。

Claims (23)

  1. スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されていることを特徴とする非ヒト哺乳動物。
  2. スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現の抑制が、該遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部の欠損によるものであることを特徴とする請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。
  3. 非ヒト哺乳動物が、げっ歯類に属する動物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非ヒト哺乳動物。
  4. げっ歯類に属する動物が、マウスであることを特徴とする請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物から調製される非ヒト哺乳動物細胞。
  6. スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現が人為的に抑制されており、かつ、個体へ分化可能であることを特徴とする非ヒト哺乳動物細胞。
  7. スクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)をコードする内在性遺伝子の発現の抑制が、該遺伝子又はその発現制御領域の少なくとも一部の欠損によるものであることを特徴とする請求項6に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
  8. 非ヒト哺乳動物細胞が、げっ歯類に属する動物の細胞であることを特徴とする請求項6又は7に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
  9. げっ歯類に属する動物の細胞が、マウス細胞であることを特徴とする請求項8に記載の非ヒト哺乳動物細胞。
  10. 細胞が、胚性幹細胞であることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物細胞。
  11. 以下の工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物の作製方法。
    (a) 請求項6から10に記載の非ヒト哺乳動物細胞を、妊娠した雌から得た胚に挿入し、キメラ胚を作製する工程
    (b) 該キメラ胚を偽妊娠させた雌の子宮に移植する工程
  12. 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物、又は請求項5から10のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物細胞を用いることを特徴とする、コレステロール代謝異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための医薬品のスクリーニング方法。
  13. 請求項12に記載のスクリーニング方法によって得られるコレステロール代謝異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための医薬品。
  14. 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、該非ヒト哺乳動物のコレステロール値を指標として被験物質の中からコレステロール生合成阻害物質をスクリーニングする方法。
  15. 請求項14に記載のスクリーニング方法によって得られるコレステロール生合成阻害物質。
  16. コレステロール生合成代償機構を阻害する作用を有することを特徴とする、請求項15に記載のコレステロール生合成阻害物質。
  17. 以下の工程を含むスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤のスクリーニング方法。
    (a) 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物に核内受容体PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor-α)活性化状態下で被験物質を投与する工程
    (b) 野生型非ヒト哺乳動物に核内受容体PPARα活性化状態下で被験物質を投与する工程
    (c) 被験物質投与後における(b)の動物のコレステロール値が、(a)の動物のコレステロール値と同等である場合の被験物質をスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤として選択する工程
  18. PPARα活性化状態がフィブレート系薬剤の投与または絶食により誘導したものである、請求項17に記載の方法。
  19. さらに、LDL受容体またはApoEを破壊した、請求項1〜4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物。
  20. 以下の工程を含むスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤のスクリーニング方法。
    (a) 請求項19に記載の非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程
    (b) LDL受容体またはApoEを破壊した非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する工程
    (c) 被験物質投与後における(b)の動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値が、(a)の動物のLDL/IDL-コレスロール値またはVLDL-コレステロール値と同等である場合の被験物質をスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤として選択する工程
  21. 請求項17、18、又は20のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られたスクアレンエポキシダーゼ促進因子(SPF)阻害剤。
  22. 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物を用いてコレステロール生合成経路代償機構を解明する方法。
  23. 請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト哺乳動物を用いてコレステロール恒常性機構を解明する方法。
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