JP2005090830A - マイクロチャネル型蒸発器 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロチャネル型蒸発器の熱交換効率を向上して小型化を図る。
【解決手段】伝熱板1の上面の液相領域6及び気相領域8に、隣接するフィン列間で互いにピッチを半周期ずらした複数列の微細なフィン10、11を設ける。フィン10、11は、その側面が被蒸発液体の流れる方向と直角となる方向に設定される。伝熱板1の上面の気液二相領域7には、フィンは設けられていない。一方、被蒸発液体通路の液相領域6及び気相領域8に対応する伝熱板1の下面の加熱ガス通路6には、加熱ガスの流れ方向に沿った複数のフィン13、12が設けられている。被蒸発液体の気液二相領域7に対応する加熱ガス通路である伝熱板1の下面には、フィンは設けられていない。
【選択図】図2
【解決手段】伝熱板1の上面の液相領域6及び気相領域8に、隣接するフィン列間で互いにピッチを半周期ずらした複数列の微細なフィン10、11を設ける。フィン10、11は、その側面が被蒸発液体の流れる方向と直角となる方向に設定される。伝熱板1の上面の気液二相領域7には、フィンは設けられていない。一方、被蒸発液体通路の液相領域6及び気相領域8に対応する伝熱板1の下面の加熱ガス通路6には、加熱ガスの流れ方向に沿った複数のフィン13、12が設けられている。被蒸発液体の気液二相領域7に対応する加熱ガス通路である伝熱板1の下面には、フィンは設けられていない。
【選択図】図2
Description
本発明はマイクロチャネル型蒸発器に係り、特に燃料改質型燃料電池に好適なマイクロチャネル型蒸発器に関する。
燃料電池は、水素ガスなどの燃料ガスと酸素を有する酸化ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電解質両面に設けた電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。特に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取り扱いが容易なことから電動車両用の電源として注目されている。
燃料電池に水素を供給する方法としては、高圧水素タンクや水素吸蔵合金タンク等の水素貯蔵装置から直接水素を供給する方法と、メタノールや炭化水素等の原燃料から水素を取り出して供給する燃料改質法とがある。燃料改質法では、原燃料が液体の場合、蒸発器により燃料や水を蒸発させて燃料改質器に導き、燃料改質器における燃料改質反応により水素を生成している。
車載用として好適な小型高効率の蒸発器としては、冷媒を蒸発させる自動車空気調和用の蒸発器が知られている(例えば特許文献1)。この従来技術によれば、中実の中間プレートを介在させて、一対のコアプレートを重ね合わせた積層型構造としている。この積層構造により、一方のコアプレートと中間プレートの一面に挟まれた往側流路と、他方のコアプレートと中間プレートの他面に挟まれた復側流路とを形成している。被蒸発流体である冷媒は、まず往側流路を加熱されながら流下し、次いで中間プレート下部の透孔を介して往側流路から復側流路へ移動し、最後に復側流路を上昇する際に蒸発するようになっている。
特許第2786728号(第3頁、第1図)
しかしながら、上記従来の蒸発器にあっては、高熱流束領域において熱交換能力が低下するという問題点があった。以下、この問題点について説明する。
まず、本明細書中の「マイクロチャネル」を以下のように定義する。伝熱面から離脱する気泡(以下、離脱気泡と呼ぶ)の直径より被蒸発液体の通路間隙が小さい場合に、その通路をマイクロチャネルと定義する。言い換えれば、伝熱面から成長した被蒸発液体の気泡が離脱径より小さい段階で伝熱面により押しつぶされて、気泡と伝熱面間に被蒸発液体の薄層(microlayer;マイクロレイヤ)が形成される場合をマイクロチャネルと定義する。
蒸発器の伝熱面から離脱する離脱気泡直径は、同じ被蒸発液体として水を用いた場合でも、伝熱面の表面性状、過熱度によって異なる。具体的には、図6に示すように、例えば親水性が高い酸化チタン被膜(図中□表示)の伝熱面の場合には、0.8[mm]程度、疎水性が高いシリコーン樹脂被膜(図中◇表示)の伝熱面の場合には、2.5[mm]程度の離脱気泡直径を示しており、即ち、その直径以下の通路間隙を有する蒸発器がマイクロチャネル型蒸発器である。
図7(a)は、平行平板型蒸発器における伝熱面同士の間隙が狭い(実線)場合と広い(破線)場合との伝熱面の過熱度と熱流束との関係を示すグラフである。図7(a)に示す様にある温度と熱流束の点で2本の実線が交差し、伝熱面同士の間隙が狭い場合、熱流束が低い領域では良好な熱伝達特性を示すが、熱流束が高い領域では熱伝達特性が低下し、それに伴い限界熱流束(Critical Heat Flux;CHF)も低下する特性を示す。逆に、伝熱面同士の間隙が広い場合には、熱流束が高い領域では良好な熱伝達特性を示すが、熱流束が低い領域では熱伝達特性が低下する。
このメカニズムとして、伝熱面のドライアウトによる熱伝達率の低下があげられる。図7(b)に蒸発管における流動、伝熱様式の変化を示す。蒸発管内の液体は、上流(図中下方)ではほぼ100%液相であるが、下流(図中上方)へ行くに従って、徐々に液相中に気泡分が増加する2相状態となり、ドライアウト位置より下流(ポスト・ドライアウト)では、伝熱面上に被蒸発液体は存在せず、完全に乾いた伝熱面となる。ポストドライアウトの噴霧流域では、伝熱面に常に接触する液体がないので、著しい熱伝達特性の低下が示されている。
また図7(c)には、蒸発管における加熱熱流束と熱伝達率分布を示す。図中A→B→C→Dの順で熱流束が大きくなる。熱流束の増大に伴い熱伝達率低下(噴霧流)の領域が上流へと移動していることが示されている。これら熱伝達率の低下を改善するためには、噴霧流(ポストドライアウト)領域に被蒸発液体を供給して伝熱面が濡れた状態を保持する必要がある。
図8は、高熱流束領域におけるマイクロチャネルの沸騰様相を示す模式図である。伝熱面101の図中下方(上流)から被蒸発液体106が供給され、蒸気107は上方(下流)から排出される。被蒸発液体106は、伝熱面101で加熱され、気液界面104より上方では、被蒸発液体は、噴霧流105となっている。
伝熱面101のウエット領域102と噴霧流領域103との界面である気液界面104は、熱流束の増大に伴い下方(上流)に移動し、熱移動として効率的に利用できる伝熱面のウエット領域102は限られ、伝熱面全体での熱交換効率は低下する。熱交換効率を向上させるには、伝熱面中の熱伝達率の高いウエット領域102の比率を高める必要がある。
図9(a)は、被蒸発液体のクオリティに対応する熱伝達率、(b)は被蒸発液体のクオリティに対応する熱流束をそれぞれ示す図である。図9(a)に示すように、伝熱表面がドライアウト点A(このA点のクオリティをXa とする)よりクオリティが小さい濡れた(ウエット)状態の領域を維持することが蒸発器の熱伝達率向上に必要である。また図9(b)に示すように、ドライアウト前の領域とドライアウト後の領域との境界の熱流束は、クオリティの増加に対して右下がりとなる。そしてクオリティXa に対する熱流束は、qcaとなり、これより小さい熱流束に制御することが必要である。
本発明は、上記問題点を解決するため、伝熱面から離脱する気泡の直径より被蒸発液体の通路間隙が小さいマイクロチャネル型蒸発器において、前記被蒸発液体通路の気液二相領域に接する前記伝熱面に前記被蒸発液体の薄液膜が形成されることを要旨とする。
本発明によれば、被蒸発液体通路の気液二相領域に接する伝熱面に被蒸発液体の薄液膜が形成されるので、気液二相領域に接する伝熱面が常に熱伝達率の高い状態に保持されることができ、マイクロチャネル型蒸発器の熱交換効率の向上が図れるとともに、マイクロチャネル型蒸発器を小型化することができるという効果がある。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の各実施例で説明するマイクロチャネル型蒸発器(以下、単に蒸発器と略す)は、例えば、燃料電池車両用の燃料改質器に好適な蒸発器である。
図1は、対向流型蒸発器における熱交換性能向上の基本的な考え方を説明する図であり、それぞれ被蒸発液体のクオリティに対する(a)蒸発器の模式図、(b)熱流束q〔kW/m2 〕、(c)温度T〔K〕、(d)有効伝熱面積A〔m2 〕、(e)熱伝達率h〔kW/m2K 〕をそれぞれ示す。図1(a)に示すように、クオリティxは、被蒸発液体の状態(相)を示す指数であり、クオリティx=0は液相、0<x<1は気液二相、x=1は気相をそれぞれ示す。気液二相領域において、クオリティxが大きくなるほど、蒸気の比率が高くなる。
蒸発器の隔壁を介して加熱ガス側から被蒸発液体側へ移動する単位時間当たりの移動熱量Qは、次の式(1)で示される。
(数1)
Q=A0K0ΔT …(1)
1/A0K0 =1/h1(Aw+ηf1Af1)+1/h2(Aw+ηf2Af2) …(2)
ここで、A0 は隔壁の有効伝熱面積、K0 はA0 を基準とした熱通過率、ΔTは隔壁両側の温度差である。さらに、1/A0K0 は、隔壁面積Aw 、被蒸発液体側の熱伝達率h1 、被蒸発液体側のフィン効率ηf1、被蒸発液体側のフィン面積Af1、加熱ガス側の熱伝達率h2 、加熱ガス側のフィン効率ηf2、加熱ガス側のフィン面積Af2とすれば、式(2)で表される。
Q=A0K0ΔT …(1)
1/A0K0 =1/h1(Aw+ηf1Af1)+1/h2(Aw+ηf2Af2) …(2)
ここで、A0 は隔壁の有効伝熱面積、K0 はA0 を基準とした熱通過率、ΔTは隔壁両側の温度差である。さらに、1/A0K0 は、隔壁面積Aw 、被蒸発液体側の熱伝達率h1 、被蒸発液体側のフィン効率ηf1、被蒸発液体側のフィン面積Af1、加熱ガス側の熱伝達率h2 、加熱ガス側のフィン効率ηf2、加熱ガス側のフィン面積Af2とすれば、式(2)で表される。
図1(b)に示すように、蒸発器の被蒸発液体通路の気液二相領域において、熱流束qが限界熱流束qc に比べて高い場合、この気液二相領域に接する伝熱面を濡れた状態(薄液膜が形成された状態)に保持して熱交換効率を高める為には、対処の方向に二通りがある。その第1の方向Aは、図中Aで示すように、熱流束qを限界熱流束qc より小さな値へ引き下げることであり、第2の方向Bは、図中Bで示すように、限界熱流束qc を熱流束qより大きな値へ引き上げることである。
次に、図1(c)、(d)、(e)を参照して、方向Aを実現するには、気液二相領域において、熱伝達のパラメータをどのように動かせばよいかを説明する。
まず、図1(c)に示すように、方向Aを実現する第1の方法A−(1)は、被蒸発液体側の温度を上昇させて、加熱ガス側との温度差ΔTを小さくすることであり、方向Aを実現する第2の方法A−(2)は、加熱ガス側の温度を低下させて、被蒸発液体側との温度差ΔTを小さくすることである。
また、図1(d)に示すように、方向Aを実現する第3の方法A−(3)は、被蒸発液体側の有効伝熱面積を低下させることであり、方向Aを実現する第4の方法A−(4)は、加熱ガス側の有効伝熱面積を低下させることである。
さらに、図1(e)に示すように、方向Aを実現する第5の方法A−(5)は、被蒸発液体側の熱伝達率を低下させることであり、方向Aを実現する第6の方法A−(6)は、加熱ガス側の熱伝達率を低下させることである。
方向Aとは逆に、方向Bとして、限界熱流束qc を熱流束qより大きな値へ引き上げるためには、気液二相領域における被蒸発液体側の伝熱面の表面性状を改善することにより限界熱流束qc を向上させることが考えられる。
以下、実施例により具体的な説明を行う。
次に、図面を参照して、本発明に係る蒸発器の実施例1を説明する。本実施例は、図1に示した方向A、即ち被蒸発液体通路の気液二相領域における熱流束を抑制する第1の方法A−(1)から第6の方法A−(6)までを全て実施しているが、何れか1つ乃至何れか5つの方法の組み合わせでも本発明の効果を奏することは明らかである。
図2は、実施例1の蒸発器を構成する伝熱板を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は被蒸発液体側平面図、(c)は加熱ガス側平面図である。
図2において、略長方形の伝熱板1は、上面が被蒸発流体側、下面が加熱ガス側となっていて、図中左から被蒸発液体通路の液相領域6、気液二相領域7、気相領域8に分けられる。そして、伝熱板1の上面左側が被蒸発液体入口2、上面右側が蒸気出口3、下面右側が加熱ガス入口4、下面左側が加熱ガス出口5となっている。即ち、被蒸発液体は、伝熱板1の上面を右向きに流れ、加熱ガスは、伝熱板1の下面を左向きに流れる所謂対向流型の蒸発器の例を示している。
伝熱板1の上面の液相領域6には、隣接するフィン列間で互いにピッチを半周期ずらした複数列の微細なフィン10が設けられている。これらのフィン10は、その側面が被蒸発液体の流れる方向と直角となる方向に設けられている。また、伝熱板1の上面の気液二相領域7には、フィンは設けられていない。また、伝熱板1の上面の気相領域8には、液相領域6と同様に、隣接するフィン列間で互いにピッチを半周期ずらした複数列の微細なフィン11が設けられている。これらのフィン11は、その側面が被蒸発液体の蒸気が流れる方向と直角となる方向に設けられている。
一方、伝熱板1の下面の液相領域6には、加熱ガスの流れ方向に沿った複数のフィン13が設けられている。また、伝熱板1の下面の気相領域8には、液相領域6と同様に、加熱ガスの流れ方向に沿った複数のフィン12が設けられている。
尚、伝熱板1の気液二相領域7の上面には、フィンは設けられていない。同様に、伝熱板1の気液二相領域7の下面には、フィンは設けられていない。
このように、被蒸発液体通路の気液二相領域のフィンを削除、または有効伝熱面積を液相または気相の単相領域のそれより小さな面積とすることにより、被蒸発液体通路の気液二相領域における熱通過率が低減して、方法A−(3)が実現される。これにより熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
また、被蒸発液体通路の気液二相領域に対応する加熱ガス通路のフィンを削除、または有効伝熱面積を液相または気相の単相領域のそれより小さな面積とすることにより、被蒸発液体通路の気液二相領域に対応する加熱ガス通路における熱通過率が低減して、方法A−(4)が実現される。これにより、熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
また、液相領域6の被蒸発液体通路の間隙であるギャップ21(フィン10の高さ)及び気相領域8の被蒸発液体通路の間隙であるフィン11の高さであるギャップ23に比べて、気液二相領域7の被蒸発液体通路の間隙であるギャップ22は、拡大されている。
このように、気液二相領域の被蒸発液体通路の間隙を液相領域または気相領域のそれより拡大することにより、被蒸発液体通路の気液二相領域の熱通過率が低減して、方法A−(5)が実現される。これにより熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
同様に、液相領域6に対応する加熱ガス通路の間隙であるギャップ24及び気相領域8に対応する加熱ガス通路の間隙であるギャップ26に比べて、気液二相領域7に対応する加熱ガス通路の間隙であるギャップ25は、拡大されている。
このように、被蒸発液体の気液二相領域に対応する加熱ガス通路の間隙を液相領域または気相領域に対応する加熱ガス通路のそれより拡大することにより、被蒸発液体通路の気液二相領域に対応する加熱ガス通路の熱通過率が低減して、方法A−(6)が実現される。これにより熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
また、図1(b)に示すように、伝熱板1の被蒸発液体側の気液二相領域7と気相領域8との間には、チョーク14が設けられ、チョーク14の気液二相領域側近傍には、気液二相領域の温度又は圧力を検出するセンサ15が設けられている。このチョーク14により、気液二相領域7の圧力が上昇し、気液二相領域7における飽和蒸気温度が上昇する。その結果、加熱ガスと被蒸発液体との気液二相領域の温度差ΔTが低下して、方法A−(1)が実現される。これにより、熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
さらに、図1(c)に示すように、伝熱板1の液相領域6に対応する加熱ガス通路から気液二相領域7に対応する加熱ガス通路をバイパスして、気相領域8に対応する加熱ガス通路に至るバイパス通路であるバイパス管16と、このバイパス管16を開閉するバイパスバルブ17が設けられている。
バイパスバルブ17を開いて、バイパス管16に加熱ガスを流すことにより、被蒸発液体通路の気液二相領域7に対応する加熱ガス通路の加熱ガス温度を低下させることができる。その結果、加熱ガスと被蒸発液体との気液二相領域の温度差ΔTが低下して、方法A−(2)が実現される。これにより、熱流束を抑制して伝熱表面の濡れ性を改善し、蒸発器の熱効率を向上させることができる。
また、本実施例の変形例として、チョーク14の開度を制御する図示しないチョークバルブを設け、このチョークバルブ及びバイパスバルブ17の開閉制御をセンサ15が検出した温度に基づいて、被蒸発液体通路の気液二相領域7の温度を最適に制御することもできる。
即ち、図5に破線で示すように、被蒸発液体通路の気液二相領域7の目標温度を設定し、センサ15で検出した温度が目標温度を超えたらチョークバルブを閉じると共にバイパスバルブ17を開き、センサ15で検出した温度が目標温度より低下したらチョークバルブを開くと共にバイパスバルブ17を閉じるように制御する。これにより、気液二相領域の温度が目標温度を超えたら、チョークバルブを閉じることにより蒸気圧力を上げて沸騰温度を上昇させて限界熱流束を向上させ、バイパスバルブを開くことにより被蒸発液体の気液二相領域に対応する加熱ガス通路の温度を低下させることができる。
これとは逆に、気液二相領域の温度が目標温度より低下したら、チョークバルブを開くことにより蒸気圧力を下げて沸騰温度を下降させ、バイパスバルブを開くことにより被蒸発液体の気液二相領域に対応する加熱ガス通路の温度を上昇させることができる。
こうして被蒸発液体通路の気液二相領域7の温度が目標温度となるように制御し、最大の熱交換性能を得ることができる。
尚、チョークバルブとして、熱膨張率の異なる二種の金属を張り合わせたバイメタルのリードバルブを用いると、温度センサの温度検出機能と、チョークバルブの温度に従った開閉機能とを一つの部品により簡単に実現することができる。
次に、図面を参照して、本発明に係る蒸発器の実施例2を説明する。本実施例は、図1に示した方向B、即ち被蒸発液体通路の気液二相領域における限界熱流束を向上する方策である。
図3は、実施例2の蒸発器を構成する伝熱板を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は被蒸発液体側平面図、(c)は加熱ガス側平面図である。
図3において、略長方形の伝熱板1は、上面が被蒸発流体側、下面が加熱ガス側となっていて、図中左から被蒸発液体通路の液相領域6、気液二相領域7、気相領域8に分けられる。そして、伝熱板1の上面左側が被蒸発液体入口2、上面右側が蒸気出口3、下面右側が加熱ガス入口4、下面左側が加熱ガス出口5となっている。即ち、被蒸発液体は伝熱板1の上面を右向きに流れ、加熱ガスは伝熱板1の下面を左向きに流れる所謂対向流型の蒸発器の例を示している。
被蒸発液体通路の気液二相領域7に対向する伝熱板1の上面の領域には、限界熱流束を向上させるための表面処理、及び表面構造が形成されている。限界熱流束を向上させる表面処理としては、親水性処理、及び表面粗さの最適化処理がある。本実施例では、親水性の酸化チタン被膜を形成して伝熱表面の濡れ性を向上させるている。また、表面処理により沸騰核密度を増加させるために、ショットピーニング処理を施して表面粗さを最適化している。
また、図3(b)に示すように、被蒸発液体通路の気液二相領域7に対向する伝熱板1の上面の領域には、表面直下に縦横に複数の溝31が形成され、溝31の縦方向と横方向との交差位置には、表面に連通する孔32が設けられている。被蒸発液体は、この溝31に入り込み、周囲から加熱されて蒸発し、孔32から蒸気となって放出される。
図4は、図3の溝31と孔32とを詳細に説明する図である。図4(a)、(b)に示すように、等間隔の縦溝31a、横溝31bが碁盤の目の様に設けられ、各溝の交点には、伝熱板の表面と連通する孔32が設けられている。
次に、図4(c)を参照して、この表面構造を形成する方法を説明する。まずステンレス鋼、チタン、チタン合金等の金属薄板の一方の面に孔32、他方の面に溝31をそれぞれエッチングで形成した溝付板34を作成する。次いで、この溝付板34と、基板33とを重ねて、高温高圧下で数時間放置し、拡散接合により溝付板34と基板33とを一体に接着する。基板33の材質は、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等であるが、溝付板34と同材質とする方が耐食性を考慮すると好ましい。
このように本実施例では、被蒸発液体通路の気液二相領域に接する伝熱板の領域に、マトリックス状の溝31と孔32を設けた3次元の表面構造により、被蒸発液体の保水性を向上させ、限界熱流束を向上させることができる。
以上、好ましい実施例について説明したが、これらは本発明を限定するものではない。以上の実施例は、被蒸発液体通路の気液二相領域に薄液膜が形成されにくい、熱流束が限界熱流束超えてしまう場合の実施例である。しかし、この場合とは逆に、熱流束が限界熱流束に対して充分低い場合には、気液二相領域の熱流束を引き上げることにより熱交換性能を向上させるための方策が必要となり、図1の方法A−(1)ないし方法A−(6)及び上記実施例で示した内容とは、反対の内容となることは、明らかである。
また、被蒸発液体の通路間隙の形状寸法や、フィンの形状寸法は、蒸発器の目的、被蒸発液体の種類、沸点、粘性、または蒸発器の容量等によって、適宜決めることができる。
1…伝熱板
2…被蒸発液体入口
3…蒸気出口
4…加熱ガス入口
5…加熱ガス出口
6…液相領域
7…気液二相領域
8…気相領域
10,11,12,13…フィン
14…チョーク
15…センサ
16…バイパス管
17…バイパスバルブ
21,22,23,24,25,26…ギャップ(通路間隙)
2…被蒸発液体入口
3…蒸気出口
4…加熱ガス入口
5…加熱ガス出口
6…液相領域
7…気液二相領域
8…気相領域
10,11,12,13…フィン
14…チョーク
15…センサ
16…バイパス管
17…バイパスバルブ
21,22,23,24,25,26…ギャップ(通路間隙)
Claims (13)
- 伝熱面から離脱する気泡の直径より被蒸発液体通路の間隙が小さいマイクロチャネル型蒸発器において、
前記被蒸発液体通路の気液二相領域に接する前記伝熱面に被蒸発液体の薄液膜が形成されることを特徴とするマイクロチャネル型蒸発器。 - 前記被蒸発液体通路の気液二相領域における単位面積当たりの熱通過率を気相または液相の単相領域の熱通過率と異ならせたことを特徴とする請求項1記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域は、前記被蒸発液体通路の液相領域と気相領域とに挟まれた領域であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域と気相領域との間にチョーク部を設けたことを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記気液二相領域と気相領域との境界近傍の伝熱面温度または圧力により前記チョーク部の開口面積を制御することを特徴とする請求項4記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記伝熱面を加熱する加熱ガスの通路をバイパスするバイパス手段を設け、
該バイパス手段は、前記被蒸発液体通路の液相領域に対応するガス通路から前記気液二相領域に対応するガス通路を迂回して気相領域に対応するガス通路へ、前記加熱ガスの少なくとも一部をバイパスさせることを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。 - 前記気液二相領域と気相領域との境界近傍の伝熱面温度または圧力により前記バイパス手段の開口面積を制御することを特徴とする請求項6記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域に設けた伝熱フィンの面積は、前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域に設けた伝熱フィンの面積とは異なる面積を有することを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記伝熱面を加熱する加熱ガスの前記気液二相領域に対応する加熱ガス通路に設けた伝熱フィンの面積は、前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域に対応する加熱ガス通路に設けた伝熱フィンの面積とは異なることを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域の通路高さを前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域の通路高さと異ならせたことを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域に対応する加熱ガスの通路高さを前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域に対応する加熱ガスの通路高さと異ならせたことを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域の伝熱面性状を前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域の伝熱面性状と異ならせたことを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
- 前記被蒸発液体通路の気液二相領域の伝熱面構造を前記被蒸発液体通路の液相領域または気相領域の伝熱面構造と異ならせたことを特徴とする請求項2記載のマイクロチャネル型蒸発器。
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2003
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