JP2005087194A - 微生物を用いた共役高度不飽和脂肪酸含有培養物および共役高度不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法 - Google Patents

微生物を用いた共役高度不飽和脂肪酸含有培養物および共役高度不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガン細胞を特異的かつ効果的に死滅させ得る殺ガン細胞剤及び、ガン疾患の予防や治療に有用な組成物を提供する。
【解決手段】菌体培養による2個以上の共役型2重結合構造を有する高度不飽和脂肪酸とその誘導体を有効成分としてなる特異的殺ガン細胞剤。また、該殺ガン細胞剤を配合してなる医薬用あるいは食用組成物。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
発明が属する技術分野
本発明は様々な生理活性を有する2個以上の共役型2重結合構造を有する高度不飽和脂肪酸とその誘導体とこれを有効成分する殺ガン細胞剤及びこれを配合してなる組成物に関するものである。より詳しくは微生物の培養により製造された共役ジエン以上の共役結合を含有する長鎖高度不飽和脂肪酸およびその誘導体とこれらを有効成分として含有してなるヒト由来ガン細胞を効率的に死滅させる殺ガン細胞剤及びこれを配合してなる医薬用組成物又は食用組成物に関するものである。
近年、脂質の生理活性や薬理作用についての研究が進み不飽和脂肪酸の代謝において様々の化学物質への変換とその働きについての解明がなされている。特に飽和脂肪酸、モノエン酸、不飽和脂肪酸の栄養学上の好ましい比率やイコサペンタエン酸(以下IPAと言う)、ドコサヘキサエン酸(以下DHAと言う)などの魚油由来のω3系の脂肪酸とリノール酸を中心とする植物由来のω6系の脂肪酸の比率が疾病との関連の中で重用視されている。
ω6系のリノール酸は皮膚を形成する上で不可欠の脂肪酸であり人体において鎖延長、不飽和化を受けてアラキドン酸(以下AAと言う)やω6ドコサペンタエン酸(以下DPAと言う)などになる。アラキドン酸は乳幼児期の成長に不可欠の脂肪酸でありかつアラキドン酸カスケードによりプロスタグランジンやロイコトリエンとなり人体の各部位で生理機能を果たしている。またαリノレン酸(ALN)を出発物質として鎖延長、不飽和化してイコサペンタエン酸(IPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω3系の脂肪酸の系列がある。IPAやDHAは魚油などに多く含まれるω3系の高度不飽和脂肪酸で人体内ではω6系などの他の系列の脂肪酸からは変換されない。従ってこれらの脂肪酸の欠乏が様々の疾病の原因になると言われている。
これらの多価不飽和脂肪酸の生理機能としてALNの記憶学習能向上作用(特開平1−153629)、抗アレルギー作用、血清脂質改善作用などがありAAでは血小板凝集作用、乳児期の成長への影響、IPAでは高脂血症改善効果が医薬用に認められコレステロール低減効果や赤血球変形能の向上効果(田村泰ら「食の科学」第161巻、33−39頁1991年)など、DHAについては血中脂質低下作用(今泉勝巳、「臨床栄養」第83巻4号440頁1993年等)血小板凝集抑制作用で(永川祐三ら「血液と脈管」第15巻2号138−141頁1984年)記憶学習能の改善(A.Hucas,et al.,The Lancet,339,261,1992)抗痴呆(M.Soderberg et al.,J.Immunology,150,3525,1993)、抗腫瘍効果(成沢富雄ら、「医学の歩み」第145巻911頁1988年)抗アレルギー効果(M.Shikano et al.,J.Immunology,150,3525,1933)などの作用が見いだされておりさらにDPAやミード酸について機能の研究が進められている。
一方多価不飽和脂肪酸の化学構造において共役リノール酸が牛の脂質の中に含まれこれが脂肪の蓄積を予防することが明らかになりアルカリ共役した共役リノール酸が体脂肪の低減効果(Lipids,31,853(1997))血中コレステロールの低下、抗腫瘍作用(M.A.Belury,Nutr.Res.,53,83,(1995))などの機能が見いだされている。また桐油やニガウリ種子油中に含まれるエレオステアリン酸などもより効果が高いものであることが公表されている。
すでにアルカリで共役化したIPAやDHA等の共役化高度不飽和脂肪酸を有効成分とした殺ガン細胞剤について特開2000−281572、特開2001−288079に出願されている。これらは共役トリエンを多く含むことから共役ジエンに比べ効果が高く、共役トリエンの中でも炭素数が20以上である長鎖の脂肪酸であることによって通常の細胞に対しより毒性が低いことをもとに出願している。
発明が解決しようとする課題
既述したように共役トリエン構造を有するIPAやDHAは殺ガン細胞効果に優れるとともに正常細胞に影響を及ぼさない効果が認められたが実際の治療においてその作用機序などを研究していく上でアルカリ共役化した共役トリエンがきわめて多数の位置及び幾何異性体をもっていることがその構造的な面での確認を困難にしている。また医薬においてはその純度面で極力単一の成分であることが望ましく異性体が多く含まれる場合はその各々の構造体を単離しそれぞれの機能と毒性に関する評価結果が求められる。これらの異性体は数十種類にも及びそれぞれを単離しその毒性や殺ガン細胞作用を評価することは至難のことである。従って化学的に単一か極力異性体の少ない製造方法を確立して、その殺ガン細胞作用を評価し医薬として、また食品用の組成物を提供することを課題とした。
課題を解決するための手段
本発明者らは、前記課題を解決するために、共役ジエン以上の共役ポリエン構造をもち、なおかつその異性体の少ない共役型高度不飽和脂肪酸の製造法について鋭意検討を加えた結果、天然の共役型多価不飽和脂肪酸から得られる共役型と同じ化学構造式を持ち脂肪酸の炭素鎖を延長した共役型高度不飽和脂肪酸を製造する菌体とその菌体からの共役型長鎖高度不飽和脂肪酸の製造法を確立しその顕著な殺ガン細胞効果を有することを見いだし本発明を完成した。
本発明においては単一の組成又は2から3種の化学構造の共役型構造を有する共役型高度不飽和脂肪酸を得ることを目的とした。天然に存在するトリエン以上の高度不飽和脂肪酸を選択的に単一の構造になるように共役化する方法や通常のアルカリ共役化した多数の異性体を含む多価不飽和脂肪酸をカラム分離などの方法によって異性体を精製し単一か2,3の化学構造を有する混合脂肪酸にすることについて検討を加えているが異性体数が多く単離することは困難であり良好な結果を得られていない。
以下に示すように本発明の目的は菌体培養中に共役型多価不飽和脂肪酸を与えることによって共役型構造を有し鎖延長されたより長鎖の共役型多価不飽和脂肪酸である目的物を作ることにある。また菌体培養よって単一か2,3の異性体のみから成り立つより長鎖の共役型多価不飽和脂肪酸化合物を作ることにある。これによって生理活性に有効な化合物のヒトの体内の代謝における化合物の特定が容易になり毒性上問題のないことの確認が容易になる。
さらに本発明における目的は共役型の多価不飽和脂肪酸を鎖延長をする菌体についても探索し培養し取り出すことにある。菌体については特に限定するものではないがその多くはいわゆるラビリンチュラ類としてラビリンチュラ科あるいはスラウストキトリウム科に属する海生菌でありこれらの菌体は炭素数の大きな不飽和結合の多い脂肪酸を生産する機能を有している。これらの機能を有している菌体に比較的炭素数の少ない共役型の脂肪酸を与えてより炭素数の大きな不飽和結合の多い共役脂肪酸をつくる菌体の探索とその菌体の培養条件の検討を行った。
本発明における菌体により鎖延長された2個以上の共役型2重結合構造を有する長鎖高度不飽和脂肪酸とその誘導体の製造方法はスラウストキトリウム科、ラビリンチュラ科などの菌体中で異性体の少ない化合物を作ることにある。これらの化合物は脂肪酸の形でも良いが様々の誘導体の形でも使用可能である。通常他の脂肪酸も含めた混合脂肪酸からなるトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドやリン脂質、セラミドやその配糖体を含むスフィンゴ脂質、スルフォキノボシルジグリセリドやモノグルコシルジグリセリドなどの糖脂質などの誘導体で抽出し使用することが可能である。これらの菌体によって鎖延長された2個以上の共役型2重結合構造を有する長鎖高度不飽和脂肪酸とその誘導体を殺ガン細胞剤の有効成分として医薬用組成物及び食用組成物を製造することが出来る。
本発明においては他の殺ガン細胞剤と同様に併用物質を使うことは可能である。また使用形態は通常の医薬組成物や食用の組成物として使用する形態は限定するものではない。また本発明で言う殺ガン細胞剤としての対象は人組織由来のモノであれば部位は特に限定するものではない。大腸、肝細胞、肺、胃や乳ガンなどのガン細胞に対して顕著な死滅効果を発揮するものである。
通常の菌体を用いて共役型の脂肪酸の鎖延長や不飽和結合の増加を促そうとすると共役酸の菌体に対する毒性により菌体が死滅したり、菌体の持つ変換特性によって共役型の構造が失われたりする。本発明で言う共役型高度不飽和脂肪酸を産生する菌体の多くはスラウストキトリウム科あるいはラビリンチュラ科の海生菌であり海藻やマングローブ落葉などから採取したものを用いる。一般にスラウストキトリウム科やラビリンチュラ科の海生菌の1種は脂肪酸を炭素源としDHA、IPAをはじめとする長鎖高度不飽和脂肪酸に変換する能力を有していることは特開2001−275656に記載されている。しかしながらこれらの菌体が共役脂肪酸を取り込み鎖延長し不飽和結合を増加させることは予期できるものではなかった。
発明者らは全国各地の海洋において様々のスラウストキトリウム科あるいはラビリンチュラ科の菌体を採取、分離しラビリンチュラ属の菌体を分離し本検討に用いた。これらの菌体の採取、培養、分離については特開2001−275656に記載されている方法などを用いることも出来るが方法については特に規定するものではない。
本発明で言う菌体は上記スラウストキトリウム科あるいはラビリンチュラ科に限定されずユーグレナ属、クロレラ属、ナンノクロロプシス属などで同様の効果を持つ菌体であれば使用可能である。ラビリンチュラ目はラビリンチュラ科、スラウストキトリウム科からなりラビリンチュラ科はラビリンチュラ属、スラウストキトリウ厶科はスラウストキトリウム属、シゾキトリウム属などの属が報告されている。ユーグレナは動物と植物の両方の分類がなされておりミドリムシ目に分類されている。クロレラ属としてはクロレラ・ブルガリス、クロレラ・ピレノイドサ、クロレラ・サッカロフィラなどいずれの菌体でも使用可能である。共役型脂肪酸をこれらの微生物の培養液に添加し、これらの鎖延長した共役型の長鎖高度不飽和脂肪酸を菌体中に蓄積しその培養物から脂質を回収して目的とする共役型の長鎖高度不飽和脂肪酸を得ることが出来る。
培地組成
共役型高度不飽和脂肪酸を得るための菌体の培養には、これらの菌が増殖可能な培地を滅菌し、種菌摂取後、増殖に適した条件で定常期に達するまで培養した後、目的とする共役型の脂肪酸を培地1リッターあたりに0.1〜50gを加えさらに培養を1〜48時間程度継続する。共役型の脂肪酸としては限定するものではないがアルカリ共役化したリノール酸や脱水ひまし油脂肪酸などの共役ジエン型脂肪酸や桐油やニガウリ種子油に含まれるエレオステアリン酸などの共役トリエン酸などが使われる。ザクロ種子や、キンセンカ種子、キササゲ種子などに含まれる共役酸も使用可能である。基本的には炭素数18以下の共役型脂肪酸の使用が好ましい。脂質の分散にはTween80等の界面活性剤と、窒素源として酵母エキスやペプトン、尿素、グルタミン酸ソーダ、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが使われ、無機塩としてリン酸カリウムなどが適宜使われる。炭素源としてグルコース、フルクトース、サッカロースなどの糖類、グリセリンなどが用いられる。
培養方法
必要に応じ、海水や人工海水を含めた培地で培養した培養液を同様の新しい培地に接種する。培養温度10℃から45℃で数日間、振とう培養し培地中で増殖させる。培養方法はこれらの方法に限定されるものではなく静置培養やタンク中で工業的に培養することも可能であるし、寒天培地等の固形培地の表面に増殖させることも可能である。
培養物
得られた培養液には菌体が増殖し、その中に脂肪酸が取り込まれ鎖延長や不飽和化が進んでいく。通常の炭素数18の共役脂肪酸は炭素数が20や22の脂肪酸となる。共役型の部分は保存され炭素数20以上の共役ジエン又は共役トリエン共役テトラエン構造を有する高度不飽和脂肪酸を得ることが出来る。これらの脂肪酸はほとんど1種か2種の構造を有しており共役ジエンや共役トリエン型のドコサヘキサエン酸やイコサペンタエン酸となる。さらに菌体中にはこれらの共役型高度不飽和脂肪酸は他の脂肪酸と混合した形でのトリグリセリドやリン脂質、スフィンゴ脂質として取り込まれている。培養液への脂肪酸添加は、培養開始時や培地調製時に添加しても良いし、菌体増殖が止まり、培養液が定常期に達してから添加することもできる。
培養油脂の回収法
得られた菌体から脂質を回収するにはこれらの培養液中の菌体を破砕しその破砕した菌体から直接ヘキサンなどの有機溶剤によって抽出するか菌体を濾取し得られた菌体を直接圧搾して油分を取り出すか、乾燥後粉砕機などで粉砕しヘキサンなどで抽出する方法がある。これらの脂質の回収法は何ら限定されるものではない。
以下、本発明を実施例によりより詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕50%濃度人工海水1リットルにグルコース20g、ポリペプトン10g、酵母エキス5g、寒天15.0gを溶解し滅菌後、市販の共役リノール酸(80%)、αエレオステアリン酸(76%)含む桐油脂肪酸などの共役型脂肪酸を各々4.5gを加えた後シャーレに10ml分注し寒天培地を得た。この寒天培地にラビリンチュラM−3の菌体の培養液100マイクロリットルを塗布し10日間室温で培養しラビリンチュラ塗布培地を得た。これらの培地を乾燥後ヘキサンで抽出しメチルエステル化後組成分析した。分析結果は表1の通りであった。
Figure 2005087194
実施例2 波照間島で採取したラビリンチュラM−8を500mlフラスコでグルコース3%、酵母1%、1/2人工海水(ASW)で28℃3日間前培養した。10リットル小型ジャーファメンターにグルコース3%、酵母1%、ASWを5リットル加えて培養液とする。これにスラントから前培養したラビリンチュラM−8の培養液を100ml加え、28℃で5日間培養する。攪拌は300回転とした。各共役リノール酸、αエレオステアリン酸を0.5%になるように加え、培養をさらに24時間継続する。得られた培養液1リットルをホモジナイザーで破砕し得られた液にヘキサン1リットルを加え脂質を抽出した。ヘキサン1リットルをさらに2回加えて抽出した。得られたヘキサン層を濃縮し、脂肪酸組成の分析を行った。結果を表1に記載する。
実施例3 実施例2においてαエレオステアリン酸を与えて得られたラビリンチュラの培養液100mlをホモジナイザーで破砕し混合物にヘキサン300mlで抽出し得られたヘキサン溶液を濃縮する。得られた濃縮物をアルカリアルコール溶液で鹸化したのち1N塩酸で中和し水溶液から脂肪酸をヘキサンで抽出した。ヘキサン相から得られた脂肪酸を分取液クロを用いて各炭素数分で分取した。C22の共役トリエン量は35%であった。
試験例1
前述の3個以上の共役型2重結合構造を有する高度不飽和脂肪酸とその誘導体の殺ガン細胞作用を以下に述べる方法で評価した。すなわち東北大学加齢医学研究所付属ガン細胞施設より分譲され、入手したヒト由来の5種のガン細胞である大腸ガン細胞(細胞番号(以下同様):TKG0379、以下DLD−1という)、肝臓ガン細胞(TKG0205、以下HepG2という)、肺ガン細胞(TKG0184、以下A549という)、乳ガン細胞(TKG0479、以下MCF7という)及び胃ガン細胞(TKG0228、以下MKN−7という)を用い、各細胞を96穴マイクロプレートに播種し、80%コンフレント(細胞充満度)に達した時点で、15μMの実施例3で得られた共役化DHAを含む0.5%血清アルブミンを加え、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で24時間インキュベートした後に生細胞数をMTT(3−(4,5−ジメチルアゾール−2−イル)−2,5−2H−テトラゾリウムブロマイド)法で調べた。なおMTT法は生細胞内酵素活性を指標としているためほとんどの細胞に適用でき、この結果も比較的安定しているので殺細胞作用の評価法として採用した。この結果を表2に示す。また非共役EPA及び非共役DHAを構成脂肪酸とする魚油(比較試料2)について同様に試験した結果を併記した。
Figure 2005087194
表2において、数値は試験試料を添加しない時のMTT活性(細胞生存率、%)を100とし、試験試料の添加濃度(15μM)における相対値を平均値±標準偏差(n=6)で示す(以下同様)。各試験試料の数値は比較試料1及び2の場合の値と比較して優位差があった(P<0.05)。このデータから、本発明に係る菌体培養によって得られた2個以上の共役型2重結合構造を有する高度不飽和脂肪酸はアルカリ共役化したEPA,DHAと同様の値であり魚油に比べて大腸ガン細胞に対して殺細胞効果が認められた。また肝臓ガン細胞、肺ガン細胞、胃ガン細胞についても同様の殺細胞効果が認められた。
試験例2
前述の各種共役多価不飽和脂肪酸類の正常細胞に対する影響を試験例1に記載の方法と同様にして評価した。ヒト由来の正常細胞はヒューマンサイエンス研究資源バンク(大阪)から入手した肺線維芽細胞(以下MRC−5という)、皮膚線維芽細胞(以下TIG−103という)、肺線維芽細胞(以下KMS−6という)を用いた。この結果を共役リノール酸エチルエステル及び魚油(未変性)についての結果とともに表3に示す。同表中の数値、記号の意味は表2と同じである。これらのデータから、n−3系脂肪酸の一種であるαリノレン酸、EPA,DHAなどの共役多価不飽和脂肪酸はヒト正常細胞の生育(分裂、増殖等)に対してほとんど影響を及ぼさず、とりわけ共役トリエン体を多く含むものはアルカリ共役でも菌体培養品であっても当該作用が強いことが明らかになった。
Figure 2005087194
実施例4
実施例1によって得られたαエレオステアリン酸から培養によって得られた菌体からのヘキサン抽出物から溶媒を溜去した油2.50kg、精製大豆油0.30kg、蜜蝋0.10kg、ビタミンE0.10kgを窒素ガス雰囲気下で約40℃に加温し、十分に混合して均質な液状物とした。これをカプセル充填機に供給して1粒内容量が300mgのゼラチン被覆カプセル製剤を試作した。これらの製剤は医薬用組成物又は食用組成物として利用できるものである。
発明の効果
本発明によれば2個以上の共役型2重結合構造を有する高度不飽和脂肪酸とその誘導体を有効成分としてなる殺ガン細胞剤が提供される。この殺ガン細胞剤はヒト由来の大腸ガン、肝臓ガン、肺ガン、乳ガン、あるいは胃ガンのガン細胞を死滅させる効果を有しかつ正常細胞の維持に対しては悪影響を及ぼすことはない。このような効果は共役リノール酸では認められることはない。本発明に従えば微生物中で鎖延長され、不飽和化された単一か又は2,3の異性体に限定された2個以上の共役型2重結合構造を有する長鎖高度不飽和脂肪酸とその誘導体はアルカリ共役化したEPA,DHAと同様の効果を有しなおかつ単一か又は2,3の異性体に限定された2個以上の共役型2重結合構造を有する長鎖高度不飽和脂肪酸とその誘導体であることによりその代謝などが容易に研究することが出来、医薬用としての利用は容易である。
本発明に従えば殺ガン細胞剤を配合してなる医薬用組成物又は食用組成物が提供される。該組成物はガン疾患の予防あるいは治療用途に利用され得るものである。

Claims (7)

  1. 2個以上の共役型2重結合構造を有する多不飽和脂肪酸とその誘導体を微生物にあたえて鎖延長および不飽和化することを特徴とする共役ジエン以上の共役構造を含有する長鎖高度不飽和脂肪酸およびその誘導体
  2. 請求項1に記載する共役ジエン以上の共役構造を含有する長鎖高度不飽和脂肪酸の炭素数が20以上である長鎖高度不飽和脂肪酸およびその誘導体
  3. 共役型長鎖高度不飽和酸が共役ジエン以上の不飽和構造を有するイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸あるいはドコサペンタエン酸およびその誘導体である請求項1に記載の長鎖高度不飽和脂肪酸およびその誘導体
  4. 請求項1〜3に記載の2個以上の共役型2重結合構造を有する多不飽和脂肪酸を細胞内に取り込み可能であり、かつ共役ジエン以上の共役構造を含有する長鎖高度不飽和脂肪酸生産能を有するスラウストキトリウム科あるいはラビリンチュラ科に属する微生物
  5. 請求項1〜3項に記載の共役長鎖高度不飽和脂肪酸およびその誘導体の製造法
  6. 請求項1〜3項に記載の化合物の生理活性がヒト由来のガン細胞に対する殺ガン細胞剤
  7. 請求項6項に記載のヒト由来のガン細胞に対する殺ガン細胞剤を配合してなる医薬用組成物又は食用組成物
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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