JP2005086903A - 磁性体を用いた熱発電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】 温度によって磁化が変化する磁性体に対する加熱温度と冷却温度との温度差が小さくても、大きな磁化の差を得ることができ、大きな電気エネルギー出力を得ることを可能とする。
【解決手段】 磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する磁性体を用いた熱発電機において、感温性磁性材料11に対して、加熱と冷却を繰り返すことによって磁性体11に巻かれたコイル14を通る磁束が変化し、その変化に伴いコイル14に起電力が生じる。このとき、感温性磁性材料は、温度変化による常磁性から強磁性への相転移が一次転移であるのでそのときに磁化の変化は急峻であり、加熱温度と冷却温度とを相転移温度を挟むように設定することで、加熱と冷却との温度差が小さくても、大きな磁化の変化を得ることができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。
【選択図】 図7
【解決手段】 磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する磁性体を用いた熱発電機において、感温性磁性材料11に対して、加熱と冷却を繰り返すことによって磁性体11に巻かれたコイル14を通る磁束が変化し、その変化に伴いコイル14に起電力が生じる。このとき、感温性磁性材料は、温度変化による常磁性から強磁性への相転移が一次転移であるのでそのときに磁化の変化は急峻であり、加熱温度と冷却温度とを相転移温度を挟むように設定することで、加熱と冷却との温度差が小さくても、大きな磁化の変化を得ることができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。
【選択図】 図7
Description
本発明は、磁性体を用いた熱発電機に関し、より詳細には、工場などからの温排水のような低質の熱を回収して電力に変換する磁性体を用いた熱発電機に関するものである。
磁性体を用いた熱発電機は、温度によって磁化が変化する磁性材料を利用したものであり、今日まで幾つかの装置が提案されている。
磁性体を用いた熱発電機としては図1に示すようなものがある。図1は、温度によって磁化が変化する磁性材料1を挟むように永久磁石2を配設し、二つの永久磁石を連結させるようにヨーク3が配設された磁気回路において、ヨーク3の磁束の変化に対応した電圧を発生させるようにコイル4が巻かれた装置である。(特許文献1参照)
温度によって磁化が変化する磁性体1は、温度により磁化および透磁率が変化する物質で、特許文献1においては温度によって磁化が変化するフェライトが例示されている。また温度によって磁化が変化する磁性体としては、ニッケル鉄合金であるサーマロイなど、整磁材料と呼ばれる材料が用いられることが多い。
温度によって磁化が変化する磁性体1は、温度により磁化および透磁率が変化する物質で、特許文献1においては温度によって磁化が変化するフェライトが例示されている。また温度によって磁化が変化する磁性体としては、ニッケル鉄合金であるサーマロイなど、整磁材料と呼ばれる材料が用いられることが多い。
図1の装置において、温度によって磁化が変化する磁性材料1は、冷却することで磁化が大きくなる材料のことである。同図において、温度によって磁化が変化する磁性材料1を冷却して透磁率を大きくすることで、磁気回路が閉じた状態となりヨーク3を通る磁束が増す。これによりコイル4は磁束の変化に伴う起電力を生じ、電気出力を得ることができる。逆に、温度によって磁化が変化する磁性材料1を加熱すると透磁率が小さくなりヨーク3を通る磁束は減少するため、コイル4は冷却時と逆符号の起電力を生じる。よって加熱,冷却を交互に行うことにより、コイル4から交流電気出力を得ることができる。
また、図2に示すようにコイル4が温度によって磁化が変化する磁性材料1に巻かれた構造の装置を用いることもできる。この場合、ヨーク3を用いずに永久磁石のみを用いた磁気回路の場合などに有効である。また、図3のように温度によって磁化が変化する磁性材料1の近傍にコイル4を配設し、温度によって磁化が変化する磁性材料1近傍の漏洩磁束の変化によりコイルに起電力を発生する構造を用いてもよい。また、図4に示すように、温度によって磁化が変化する磁性材料1に巻いたコイル4aと温度によって磁化が変化する磁性材料1近傍に設置したコイル4bを、互いの起電力が増すように、直列接続する構造であっても良い。
図2の装置においては、温度によって磁化が変化する磁性材料1を冷却すると温度によって磁化が変化する磁性材料1自体の磁化が大きくなり、温度によって磁化が変化する磁性材料1を貫く磁束が増す。これにより、温度によって磁化が変化する磁性材料1に巻かれたコイル4は磁束の変化に伴う起電力を生じ、電気出力を得ることができる。また、温度によって磁化が変化する磁性材料1を加熱した場合は逆の磁束変化が生じ、コイル4には冷却時と逆符号の起電力を生じることになる。従って、図2に示す装置においても、加熱冷却を交互に行うことにより、コイル4から交流電気出力を得ることができる。
また、図3および図4に示された装置においても、温度によって磁化が変化する磁性材料を加熱または冷却することにより、それぞれのコイルを通る磁束が変化し、その磁束の変化に伴う起電力が生じる。従って、その加熱冷却を繰り返すことにより、図1および図2に示された装置と同様に、交流電気出力を発生する。
また、同様の装置において、温度によって磁化が変化する磁性材料としてRCo5系材料やR2Fe17系材料(Rは希土類金属)などの、温度あるいは磁場により磁気モーメントの方向を90度変えるという、所謂、スピン再配列現象を有する材料を用いた熱発電機が提案されている。(特許文献2参照)スピン再配列現象を有する材料としてNdCo5を用いた場合、図5に示すように、265ケルビンを常磁性から強磁性への相転移温度(キュリー温度)として、その前後の温度幅40℃の変化によりNdCo5の磁化は13.2kG(1.32T)変化する。例えば図2に示す装置において温度によって磁化が変化する磁性材料1としてNdCo5を用い、永久磁石により1テスラの磁場が印加されるとすると、NdCo5の磁化の変化分をΔM、磁石から発生する磁場μ0Hとして、転移温度を挟んだ40℃の温度変化により得られる磁気的エネルギーΔUは
ΔU=−ΔM・H=1.32/μ0 (μ0:真空の透磁率)
となり、そのうちジュール熱損失等を差し引いた分を電気エネルギーとして取り出すことが可能である。
ΔU=−ΔM・H=1.32/μ0 (μ0:真空の透磁率)
となり、そのうちジュール熱損失等を差し引いた分を電気エネルギーとして取り出すことが可能である。
これらの熱発電機は、工場等からの温排水、機器等の排熱、地熱等の天然熱源などからの比較的低質(低温)の熱を回収し、従来であれば捨てられていた熱エネルギーを利用し、エネルギーの有効活用および省エネルギーに貢献するように使用されることが考えられている。そのためには熱源(工場等からの温排水等)と冷却源(主に大気または水等)との温度差が小さくても、大きな磁化の差ΔMが得られ、大きな電気エネルギー出力を得られるようにしなければならない。
しかしながら、上述の熱発電機では、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合、大きな磁化の差を得ることが難しい。
本発明は、小さな温度差でも大きな磁化の差を得ることにより、大きな電気エネルギー出力を得ることが可能な熱発電機を提供する。
よって、本発明は、温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、前記磁性体を加熱するための加熱源と、前記磁性体を冷却するための冷却源と、前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、前記加熱の温度と前記冷却の温度は、前記磁性体の一次相転移による、温度変化に対する磁化の変化が最も大きい温度を挟んだ両側の温度であることを特徴とする。
さらに、本発明は、温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、前記磁性体を加熱するための加熱源と、前記磁性体を冷却するための冷却源と、前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、前記加熱の温度と前記冷却の温度は、前記磁性体の磁化の変化が一次転移と同様に急峻である二次相転移による、温度変化に対する磁化の変化が最も大きい温度を挟んだ両側の温度であることを特徴とする。
さらに、本発明は、温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、予め磁化された該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、前記磁性体を加熱するための加熱源と、前記磁性体を冷却するための冷却源と、前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、前記加熱された温度と前記冷却された温度との温度差が10℃以下の場合、0.5テスラ以上の磁化の変化を生じることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、常磁性から強磁性への相転移が一次転移である磁性材料を備えたので、工場等の温排水等の熱源と空気または水等の冷却源との温度差が小さい場合でも、磁性材料の加熱部分と冷却部分との間の磁化の差を大きくすることができ、大きな電気エネルギー出力を得ることが可能である。また、磁性材料の組成を変えることにより、常磁性から強磁性への相転移温度を任意に変えることができる。
本発明の熱発電機においては、温度によって磁化が変化する磁性材料(本明細書では、「感温性磁性材料」ともいう)として、温度変化による常磁性と強磁性との相転移が一次の相転移であり、相転移温度(キュリー温度)近傍の磁化の変化が従来の感温性磁性材料と比較して急峻である物質を用いる。または、温度変化による常磁性と強磁性との相転移が二次相転移であるが、一次相転移に極めて近い状態であり、キュリー温度近傍の磁化の変化が従来の感温性磁性材料と比較して急峻である物質を用いても良い。
図6(a)および(b)は、本発明に係る常磁性と強磁性とが一次相転移である物質の温度と磁化の関係を示す図である。
図6(a)に示すように、キュリー温度近傍で磁化が急峻に変化する物質に対して、本発明に係る熱発電機に用いる感温性磁性材料の加熱温度(以降単に、加熱温度と呼ぶ)と本発明に係る熱発電機に用いる感温性磁性材料の冷却温度(以降単に、冷却温度と呼ぶ)とを、キュリー温度を挟むようにして設定する。すなわち、加熱温度をキュリー温度よりわずかに高い温度に設定し、冷却温度をキュリー温度よりわずかに低い温度に設定すると、加熱部分と冷却部分との間で大きな磁化の差が生じる。このようにして得られた磁化の差から大きな電気エネルギーを得ることができる。
図6(b)に示すように、一次相転移では通常、キュリー温度近傍で磁化のヒステリシスが見られる。この場合において、加熱温度を昇温ヒステリシス曲線の最高温度よりわずかに高い温度に設定し、冷却温度を降温ヒステリシス曲線の最低温度よりわずかに低い温度に設定する。それにより、過熱部分と冷却部分との間に大きな磁化の差が生じる。従って、小さな温度差で大きな電気エネルギーを得ることができる。
上述のような温度変化による常磁性から強磁性への相転移が一次である物質としては、Mn(As,Sb)、MnFe(P,As)、La(Fe,Si)13Hy、Gd5(Si,Ge)4などが存在する。またこれらの物質は、組成によっては相転移が二次になることがあるが、一次相転移に近い状態では、二次相転移による磁化の変化は急峻である。すなわち、温度による常磁性から強磁性への相転移が二次であっても、小さな温度差で大きな磁化の差を生じるものであれば、本発明に含まれる。
上述のように、本発明によれば、温度変化による常磁性から強磁性への相転移が一次である物質において、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、大きな磁化の差を得ることができる。好ましくは、温度差10℃以下で、磁化の差が0.5テスラ以上である場合が望ましい。
(実施形態1)
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度よって磁性が変化する磁性材料としてMnAsおよびMn(As0.95Sb0.05)を用いる場合である。
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度よって磁性が変化する磁性材料としてMnAsおよびMn(As0.95Sb0.05)を用いる場合である。
図7は、MnAsおよびMn(As0.95Sb0.05)の磁化の温度変化を示す図である。
図7において、MnAsの場合、常磁性と強磁性との相転移にヒステリシスが見られ、一次相転移であることがわかる。従って、冷却温度を降温ヒステリシス曲線の最低温度よりもわずかに低い温度に設定し、加熱温度を昇温ヒステリシス曲線の最高温度よりもわずかに高い温度の設定することで、冷却時と加熱時との間に大きな磁化の差を生じることができる。例えば、冷却温度を水の温度として35℃に、加熱温度を工場等の温排水の温度として50℃に設定した場合、冷却部分と加熱部分の磁化の差は約0.8テスラとなり、従来の感温性磁性材料であるNdCo5のキュリー温度近傍における温度差15℃での磁化の差約0.5テスラと比較すると、MnAsを用いた場合は、約1.5倍の磁化の差を得ることができる。従って、従来の材料を用いたときの約1.5倍の電気エネルギー出力が期待できる。また、従来の材料であるNdCo5は、冷却温度が265ケルビン以下でなければならなかったが、本実施形態で用いたMnAsの冷却温度は、室温に設定することができる。
図7において、MnAsの場合、常磁性と強磁性との相転移にヒステリシスが見られ、一次相転移であることがわかる。従って、冷却温度を降温ヒステリシス曲線の最低温度よりもわずかに低い温度に設定し、加熱温度を昇温ヒステリシス曲線の最高温度よりもわずかに高い温度の設定することで、冷却時と加熱時との間に大きな磁化の差を生じることができる。例えば、冷却温度を水の温度として35℃に、加熱温度を工場等の温排水の温度として50℃に設定した場合、冷却部分と加熱部分の磁化の差は約0.8テスラとなり、従来の感温性磁性材料であるNdCo5のキュリー温度近傍における温度差15℃での磁化の差約0.5テスラと比較すると、MnAsを用いた場合は、約1.5倍の磁化の差を得ることができる。従って、従来の材料を用いたときの約1.5倍の電気エネルギー出力が期待できる。また、従来の材料であるNdCo5は、冷却温度が265ケルビン以下でなければならなかったが、本実施形態で用いたMnAsの冷却温度は、室温に設定することができる。
図8は、本発明に係る感温性磁性材料を用いた熱発電機を示す図である。
図8において、感温性磁性材料の粒を含む容器11(以降、単に容器11と呼ぶ)は、コイル14によって巻かれており、コイル14の円周方向が磁場に垂直になるように磁場発生装置22内の磁場中に配設されている。磁場発生装置22によって、容器内の感温磁性材料は磁化される。コイル14は、電圧計15に接続されている。また、容器11は、図示していない第1供給管と接続されている。第1供給管は、図示していない弁を介して図示していない加熱源を供給する第2供給管と図示していない冷却源を供給する第3供給管とに接続される。加熱源および冷却源は、図示していないポンプによって第2供給管および第3供給管へと供給される。弁は、図示していないアクチュエータによって制御されている。さらに、容器11は、図示していない排水管が接続されている。
図8において、感温性磁性材料の粒を含む容器11(以降、単に容器11と呼ぶ)は、コイル14によって巻かれており、コイル14の円周方向が磁場に垂直になるように磁場発生装置22内の磁場中に配設されている。磁場発生装置22によって、容器内の感温磁性材料は磁化される。コイル14は、電圧計15に接続されている。また、容器11は、図示していない第1供給管と接続されている。第1供給管は、図示していない弁を介して図示していない加熱源を供給する第2供給管と図示していない冷却源を供給する第3供給管とに接続される。加熱源および冷却源は、図示していないポンプによって第2供給管および第3供給管へと供給される。弁は、図示していないアクチュエータによって制御されている。さらに、容器11は、図示していない排水管が接続されている。
本実施形態においては、弁、ポンプ、第1供給管、第2供給管および第3供給管により作用手段が構成される。
図8において、電圧計15と図示していないバッテリを並列に接続しても良い。また、コイル14を容器11の近傍に配設しても良い。さらに、感温性磁性材料11に巻かれたコイルと容器11の近傍に配設されたコイルとを直列に接続するようにしても良い。
以下で、感温性磁性材料としてMnAsを用いた場合の、図8で例示した熱発電機の動作を説明する。
アクチュエータにより弁を第2供給管に切り替えることにより加熱源である工場等の温排水を容器11に供給して、容器11を加熱すると、容器11中の感温性磁性材料の磁化は小さくり、コイル14を通る磁束は減少する。この磁束の変化に伴い、コイル14に起電力が生じる。このとき、容器11に注入された工場等の温排水は排水管によって排水される。次に、アクチュエータにより弁を第3供給管に切り替えることにより冷却源である水を容器11に供給して、容器11を冷却する。このとき、容器11中の感温性磁性材料の磁化は大きくなり、コイル14を通る磁束は増加する。この磁束の変化に伴い、コイル14に加熱時とは逆符号の起電力が生じる。容器11に注入された工場等の温排水は排水管によって排水される。この加熱冷却を周期的に繰り返すことにより、コイル14に発生する電圧を電圧計15によって測定する。
本実施形態においては、加熱源を工場等の温排水としたが、例えば、機器等の排熱、地熱等の天然熱源等のように、感温性磁性材料を加熱するものであれば、本実施形態の加熱源として用いることができる。また、冷却源を水としたが、例えば、大気等のように、感温性磁性材料を冷却するものであれば、本実施形態の冷却源として用いることができる。
本実施形態では、加熱温度を50℃、冷却温度を35℃と設定したが、加熱温度は、昇温ヒステリシス曲線の最高温度よりも高い温度であればいずれでも良く、冷却温度は、降温ヒステリシス曲線の最低温度よりも低い温度であればいずれでも良い。
図8に例示された熱発電機において、感温性磁性材料として、従来より用いられるNdCo5を用いた場合と本実施形態で用いたMnAsを用いた場合とについて同じ加熱温度と冷却温度とによって、熱を電気エネルギーに変換したところ、本実施形態で用いたMnAsを用いた場合の方が大きな電気エネルギーを得ることができる。
また、背景技術で示した図1〜図4の構成の熱発電機において、感温性磁性材料として本実施形態で用いたMnAsを用いた場合においても上述と同様に、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、得られる磁化の差は大きく、大きな電気エネルギーを得ることができる。
図7中に示されるように、MnAsのヒ素(As)を5%アンチモン(Sb)で置換した物質であるMn(As0.95Sb0.05)の場合には、キュリー温度が低下し、相転移のヒステリシスが小さくなる。さらにアンチモン10%以上置換した物質では、キュリー温度はさらに低下する。またヒステリシスは消失し、二次の相転移となる。このような材料ではヒステリシスが無いため、より小さな温度差で比較的大きな出力を得る場合に有効である。また、組成すなわちアンチモン置換量によりキュリー温度が調節できるため、加熱源である工場等の温排水等の温度、または冷却源である大気の温度あるいは水温に合わせて、最適な組成の材料を選ぶことができる。Sb置換のみならず、他の置換元素を加えることによっても、同様にキュリー温度およびヒステリシス形状を変化させることができ、使用条件によって適当な材料を選択することが可能である。
以上本実施形態によれば、磁性体を用いる熱発電機において、感温性磁性材料としてMnAsおよびMn(As0.95Sb0.05)を用いると、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、大きな磁化の差を得ることができ、従って、大きな電気エネルギーを得ることができる。また、冷却温度を室温に設定することができる。さらに、Mn(As0.95Sb0.05)において、アンチモンの置換量を変化させると、それに伴ってキュリー温度を変化させることができる。
(実施形態2)
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度よって磁性が変化する磁性材料としてMnFe(P0.45As0.55)を用いる場合である。
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度よって磁性が変化する磁性材料としてMnFe(P0.45As0.55)を用いる場合である。
なお、MnFe(P1-xAsx)は、PとAsとの構成比が、1−x対xであることを示している。本実施形態においては、MnFe(P1-xAsx)は、0.2≦x≦0.8の範囲で用いることができる。
本実施形態において、MnFe(P0.45As0.55)は、常磁性から強磁性へと相転移するキュリー温度約25℃において、急激な磁化の変化が見られる。すなわち、MnFe(P0.45As0.55)は、一次の相転移を示す材料である。従って、約25℃を挟むようにして、加熱温度および冷却温度を設定することにより、大きな磁化の差を得ることができる。また、キュリー温度が約25℃であるので、冷却温度を室温に設定することができる。
本実施形態において、図8で例示した熱発電機を用いるが、その構成、動作は実施形態1で説明したのでここでは省略する。
図8の熱発電機において、感温性磁性材料としてMnFe(P0.45As0.55)を用いる。例えば、冷却温度を17℃、加熱温度を32℃に設定した場合、冷却部分と加熱部分の磁化の差は約0.8テスラとなる。これは実施形態1のMnAsの場合と同様に、従来材料であるNdCo5と比較して、小さい温度差で大きな電気エネルギー出力を得ることができることを示している。
また、背景技術で示した図1〜図4の構成の熱発電機において、感温性磁性材料として本実施形態で用いたMnFe(P0.45As0.55)を用いた場合においても上述と同様に、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、得られる磁化の差は大きく、大きな電気エネルギーを得ることができる。
また、本実施形態で用いたMnFe(P0.45As0.55)においては、リン(P)とヒ素(As)との組成比を変化させることで、キュリー温度を変化させることができる。具体的にはAsの比率を小さくするとキュリー温度は低下し、逆にAsの比率を大きくすることでキュリー温度を上昇させることができる。また、他の置換元素を加えることによってもキュリー温度を変化させることができる。
従って、実施形態1のMn(As,Sb)と同様に、組成によりキュリー温度を調節することで、熱源温度などの使用環境により最適な材料を選択することができる。
(実施形態3)
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度のよって磁性が変化する磁性材料としてLa(Fe0.88Si0.12)13H1.5を用いる場合である。
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度のよって磁性が変化する磁性材料としてLa(Fe0.88Si0.12)13H1.5を用いる場合である。
なお、La(Fe1-xSix)13Hyは、FeとSiとの構成比が、1−x対xであることを示している。本実施形態においては、La(Fe1-xSix)13Hyは、0.2≦x≦0.8および0≦y≦3の範囲で用いることができる。
本実施形態において、La(Fe0.88Si0.12)13H1.5は、常磁性から強磁性へと相転移するキュリー温度約60℃において、急激な磁化の変化が見られる。すなわち、La(Fe0.88Si0.12)13H1.5は、一次の相転移を示す材料である。従って、約60℃を挟むようにして、加熱温度および冷却温度を設定することによって、大きな磁化の差を得ることができる。また、キュリー温度が60℃であるので、冷却温度を室温に設定することができる。
本実施形態において、図8で例示した熱発電機を用いるが、その構成、動作は実施形態1で説明したのでここでは省略する。
図8の熱発電機において、感温性磁性材料としてLa(Fe0.88Si0.12)13H1.5を用いる。例えば、冷却温度を52℃、加熱温度を67℃に設定した場合、冷却部分と加熱部分の磁化の差は約0.7テスラとなる。これは実施形態1のMnAsの場合と同様に、従来材料であるNdCo5と比較して、小さい温度差で大きな電気エネルギー出力を得ることができることを示している。
また、背景技術で示した図1〜図4の構成の熱発電機において、感温性磁性材料として本実施形態で用いたLa(Fe0.88Si0.12)13H1.5を用いた場合においても上述と同様に、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、得られる磁化の差は大きく、大きな電気エネルギーを得ることができる。
また、本実施形態で用いたLa(Fe0.88Si0.12)13H1.5においては、水素の組成比を変化させることで、キュリー温度を変化させることができる。具体的には水素の組成比を小さくすることによりキュリー温度を低下させることができる。また、他の置換元素を加えることによってもキュリー温度を変化させることができる。
従って、実施形態1のMn(As,Sb)と同様に、組成によりキュリー温度を調節することで、熱源温度などの使用環境により最適な材料を選択することができる。
(実施形態4)
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度のよって磁性が変化する磁性材料としてGd(Si0.5Ge0.5)4を用いる場合である。
本実施形態は、本発明に係る熱発電機の温度のよって磁性が変化する磁性材料としてGd(Si0.5Ge0.5)4を用いる場合である。
なお、Gd(Si1-xGex)4は、SiとGeとの構成比が、1−x対xであることを示している。本実施形態においては、Gd(Si1-xGex)4は、0.4≦x≦0.6の範囲で用いることができる。
本実施形態において、Gd(Si0.5Ge0.5)4は、キュリー温度約3℃において、急激な磁化の変化が見られる。すなわち、Gd(Si0.5Ge0.5)4は、一次の相転移を示す材料である。従って、約3℃を挟むようにして、加熱温度および冷却温度を設定することにより、おおきな磁化の差を得ることができる。また、キュリー温度が3℃であるので、従来の材料であるNdCo5よりも冷却温度を高く設定することができる。
本実施形態において、図8で例示した熱発電機を用いるが、その構成、動作は実施形態1で説明したのでここでは省略する。
図8の熱発電機において、感温性磁性材料としてGd(Si0.5Ge0.5)4を用いる。例えば、冷却温度を0℃、加熱温度を15℃に設定した場合、冷却部分と加熱部分の磁化の差は約0.6テスラとなる。これは実施形態1のMnAsの場合と同様に、従来材料であるNdCo5と比較して、小さい温度差で大きな電気エネルギー出力を得ることができることを示している。
また、背景技術で示した図1〜図4の構成の熱発電機において、感温性磁性材料として本実施形態で用いたGd(Si0.5Ge0.5)4を用いた場合においても上述と同様に、加熱温度と冷却温度との温度差が小さい場合でも、得られる磁化の差は大きく、大きな電気エネルギーを得ることができる。
また、本実施形態で用いたGd(Si0.5Ge0.5)4においても、シリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)組成比を変化させることで、キュリー温度を変化させることができる。また、他の置換元素を加えることによってもキュリー温度を変化させることができる。
従って、実施形態1のMn(As,Sb)と同様に、組成により相転移温度を調節することで、熱源温度などの使用環境により最適な材料を選択することができる。
Claims (7)
- 温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、
前記磁性体を加熱するための加熱源と、
前記磁性体を冷却するための冷却源と、
前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、
前記加熱の温度と前記冷却の温度は、前記磁性体の一次相転移による、温度変化に対する磁化の変化が最も大きい温度を挟んだ両側の温度であることを特徴とする熱発電機。 - 温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、
前記磁性体を加熱するための加熱源と、
前記磁性体を冷却するための冷却源と、
前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、
前記加熱の温度と前記冷却の温度は、前記磁性体の磁化の変化が一次転移と同様に急峻である二次相転移による、温度変化に対する磁化の変化が最も大きい温度を挟んだ両側の温度であることを特徴とする熱発電機。 - 前記磁性体は、MnAs、Mn(As1-xSbx)(0<x≦0.2)で表される化合物、またはMnFe(P1-xAsx)(0.2≦x≦0.8)で表される化合物、またはLa(Fe1-xSix)13Hy(0≦x≦0.2、0≦y≦3)で表される化合物、またはGd5(Si1-xGex)4(0.4≦x≦0.6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の熱発電機。
- 前記磁性体にバイアス磁場を印加する磁場発生装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3記載の熱発電機。
- 前記加熱源は、工場等の温排水、機器等の排熱または地熱等の天然熱源であることを特徴とする請求項1乃至4記載の熱発電機。
- 前記冷却源は、大気、または水であることを特徴とする請求項1乃至4記載の熱発電機。
- 温度によって常磁性から強磁性へ相転移して磁化が変化する磁性体を用い、予め磁化された該磁性体に対して加熱および冷却を繰り返すことで熱を電気エネルギーに変換する熱発電機において、
前記磁性体を加熱するための加熱源と、
前記磁性体を冷却するための冷却源と、
前記加熱源による加熱と前記冷却源による冷却とを交互に前記磁性体に作用させる作用手段とを備え、
前記加熱された温度と前記冷却された温度との温度差が10℃以下の場合、0.5テスラ以上の磁化の変化を生じることを特徴とする熱発電機。
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---|---|---|---|
JP2003316087A JP2005086903A (ja) | 2003-09-08 | 2003-09-08 | 磁性体を用いた熱発電機 |
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JP2003316087A JP2005086903A (ja) | 2003-09-08 | 2003-09-08 | 磁性体を用いた熱発電機 |
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Cited By (2)
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JP2011520252A (ja) * | 2008-04-28 | 2011-07-14 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア | 熱磁気発生機 |
CN102373354A (zh) * | 2010-08-25 | 2012-03-14 | 中国科学院金属研究所 | 一种室温磁致冷材料 |
-
2003
- 2003-09-08 JP JP2003316087A patent/JP2005086903A/ja active Pending
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