JP2005084047A - たんぱく質分離用高速二次元電気泳動システム - Google Patents

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金祥 李
Tamao Kawanishi
玉緒 川西
Tomoya Umemura
知也 梅村
Kinichi Tsunoda
欣一 角田
Ayaka Ogasawara
絢香 小笠原
Takehiko Kitamori
武彦 北森
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Abstract

【課題】 従来の二次元ゲル電気泳動システムの利点を保持しつつ、前記のとおりの、技術的に熟練が必要で、特に一次元ゲルの取り扱いが難しく、一次元目の電気泳動に2〜16時間を要し、二次元の分離終了までに場合によっては2日間もの長い時間がかかり、高分子量たんぱく質への適用が困難であって、一次元目から二次元目のゲルへのたんぱく質の輸送効率が低く試料の無駄が多い、などの問題点を解決する新たな二次元ゲル電気泳動システムを実現する。
【解決手段】 二次元ゲル電気泳動システムにおける等電点分離系において、ゲルの支持体としてナイロン系糸状体を配設一体化しているたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システムとする。
【選択図】 なし

Description

この出願の発明は、たんぱく質分離用の高速二次元電気泳動システムに関するものである。
二次元ゲル電気泳動法は、ポストゲノム研究の中心的課題である細胞内たんぱく質の種類・量・機能などの解析(プロテオー厶解析)のための重要なバイオツールの一つである。この方法は、たんぱく質の分離に関し、非常に優れた分解能を有し、一度に数百種類にも及ぶたんぱく質の分離が可能であって、様々な目的に広く適用可能で、比較的大量の試料処理が可能である、などの他法の追随を許さない優れた特長があり、一応完成された方法と認められている。しかし、次のような重要な問題点も残されている。それは、技術的に熟練が必要で、特に一次元ゲルの取り扱いが難しいこと、一次元目の電気泳動に2〜16時間を要し、二次元の分離終了までに場合によっては2日間もの長い時間がかかること、高分子量たんぱく質への適用が困難であり、一次元目から二次元目のゲルへのたんぱく質の輸送効率が低く試料の無駄が多いこと、などである。
これらの諸点については、以下に、より詳しく例示説明することができる。
たとえば、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2−D PAGE)はプロテオームの解析において、その分離能が非常に高いことから、強力な(タンパク質の)分離技術として用いられている。この分離技術は、一次電気泳動として、棒状もしくはストリップゲルで等電点電気泳動(IEF)を行い等電点(pI)により分離した後に、二次電気泳動としてスラブ(平板)ゲルでSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行い、分子量(MM)に従い、タンパク質を分離する。最終的に、分離されたタンパク質は通常はCBB染色もしくは銀染色により可視化される(非特許文献1−2)。
2−D PAGEは1975年に初めて開発され(非特許文献3)、過去28年間にわたり、特に一次泳動については、多くの手法と機器の改良が行われてきた。これらの改良は簡便化および再現性の向上に貢献してきたが、この技術にはいまだ多くの制約が残されている(非特許文献4−5)。
その大きな制約のひとつは、不溶性(すなわち疎水性)タンパク質の検出能が、100kDaを超えるような水溶性タンパク質に匹敵するほど低いことが挙げられる。これらのタンパク質はサンプル調製の際に、IEFゲルにロードする際に、等電点もしくは等電点近傍に凝集する際に、また一次泳動から二次泳動へ移る際に、損失が発生する。この弱点を克服するためにいくつかの方法が用いられている。たとえば、より強力なカオトロープや界面活性剤を使用してIEF泳動に際して不溶性タンパク質を可溶化させておく(溶解度を増大および維持する)方法、サンプルの調製方法の改良、およびIEFアクリルアミドゲルの(ゲル網目)細孔サイズの拡大する方法、もしくはアクリルアミドゲルの代用としてアガロースゲルを使用する方法が挙げられる。これらの方法のなかでも、ゲル細孔サイズの拡大が単純かつもっとも効果的な方法であると思われる。たとえば、Candianoらによって(非特許文献6)、通常4%Tであるアクリルアミド濃度を3.3%Tに下げ、単純にゲルマトリックスを薄めて使用することで、2〜3倍強いタンパク質の染色強度を示す2−Dマップ(=二次元電気泳動像)を得られることが報告されている。しかしながら、(アクリルアミド濃度が)3%T以下になると通常の取扱いが非常に困難となるため、それ以上ゲル濃度を低くするにはいたらなかった。他の例としては、一次泳動でアガロースゲルを用いる方法では、例えば一次泳動にアクリルアミドゲルを用いた場合に2−Dマップで検出されないmyosin H鎖(〜200kDa)のような分子量の大きなタンパク質を含むニワトリ骨格筋のほぼすべてのタンパク質が分離されている。しかし、アガロースゲルの場合、IEF泳動中に2−Dマップの再現性を低下させる電子浸透圧効果(electorendosmotic effect)による悪影響を受けることがよく知られている。
他の制約(問題点)として、IEFで特に両性電解質キャリア(CA)によって形成されたpH勾配を利用している場合に、2−Dマップの再現性が悪いことが挙げられる。CAを用いた場合、pH勾配はカソードに向かう性質(カソードドリフト)とともに中央部で平坦化する性質(プラトー現象)があり、泳動の時間経過とともにpH勾配が不安定化するため、IEF平衡に到達することができない。すなわち一次泳動(1−D)パターンは泳動時間依存性となる。さらにアルカリ性のタンパク質はカソードドリフトによりカソード溶液中に散逸してしまうので、非平衡pH勾配電気泳動(non−equilibrium pH−gradient electrophoresis:NEPHGE)によってのみ分離することが可能である。この問題点は1982年に導入された不動pH勾配ゲル(IPGs)により大きく改善された(非特許文献7)。IPGsはアクリルアミドのゲルマトリックスに共有結合するImmobiline(イモビリン)とよばれる化合物を用いることで作られており、ゲル中のpH勾配は所望のpH勾配の端値にそれぞれ調製されたImmobilineでgradient gelを作成することで形作られる。そのため、pH勾配はゲル中で固定化される。しかし、IPGsの作成は、CAによるpH勾配ゲルの作成にくらべより手が込んで複雑で、より高度なゲル作成装置が必要ある。現在では市販の(プレキャスト)IPGsも利用することできるようになったが、CAによるpH勾配ゲルに比較して非常に大きなコストがかかる。
さらに、現在用いられている2−D PAGEはいまだにたくさんの段階で手作業に依存しているため再現性が悪く、この点での問題を抱えている。たとえば、IEFは通常はガラス管内に充填された一次泳動ゲルで行われることが多いが、一次泳動後はガラス管から機械的にゲルを取り出して二次泳動に供する。このガラス管内の泳動ゲルを押し出す操作において加えられた力により、軸方向にゲルが圧縮される。さらに、この取り出されたゲルは二次泳動に供される前の処理操作中に引き伸ばす力も加えられる。この力によりゲルは引き伸ばされ、さらに破損する場合もある。2−Dマップの再現性の保証するためには、IEFゲル(一次泳動ゲル)を変形または破損させる可能性のあるいかなる力が加えられないことが望ましい。
そして、付け加えるならばゲルの作成、サンプルのロード、電気泳動、染色は非常に手間がかかり、時間がかかる作業である(非特許文献8−9)。
Rabilloud T.,Ed.Proteome Research:Two−Dimensional Gel Electroph oresis and Identification Methods;Springer Verlag:Berlin,2000. Link,A.J.,Ed.2−D ProteomeAnalysis Protocols;Humana Press:Toto wa,NJ,1999. O’Farrell,P.H.J.Biol Chem.1975,250,4007−4021. Ong,S.−E.;Pandey,A.Biomol.Eng.2001,18,195−205. Rabilloud,T.Proteomics 2002,2,3−10. Candiano,G.;Musante,L.;Bruschi,M.;Ghiggeri,G.M.;Herbert,B.;Anto nucci,F.;Righetti,P.G.Electrophoresis 2002,23,292−297. Bjellqvist,B.;Ek,K.;Righetti,P.G.;Gianazza,E.;Gorg,A.;Westermei er,R.;Postel,W.J.Biochem.Biophys.Methods 1982,6,317−339. Gorg,A.;Obermaier,C.;Boguth,G.;Harder,A.;Scheibe,B.;Wildgruber, R.;Weiss,W.Electrophoresis 2000,21,1037−1053. Lopez,M.F.Electrophoresis 2000,21,1082−1093.
そこで、この出願の発明は、以上のような背景を踏まえて、技術的に熟練が必要で、特に一次元ゲルの取り扱いが難しいことや、一次元目の電気泳動に時間を要し、二次元の分離終了までに場合によっては2日間もの長い時間がかかること、高分子量たんぱく質への適用が困難であり、一次元目から二次元目のゲルへのたんぱく質の輸送効率が低く試料の無駄が多い、などの問題点を解消した、改善された新しいたんぱく質分離用の高速二次元電気泳動システムを提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、二次元ゲル電気泳動システムにおける等電点分離系において、ゲルの支持体としてナイロン系糸状体を配設一体化していることを特徴とするたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システムを提供する。
また、この出願の発明は、第2には、糸状体はマルチフィラメント糸状体であることを特徴とする上記のたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システムを提供し、第3には、糸状体の存在下での重合ゲル化により糸状体とゲルとが一体化されていることを特徴とする上記のたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システムを提供する。
さらには第4には、アクリルアミドゲルの濃度が2%Tまでの低濃度範囲にあることを特徴とするたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システムを提供する。
以上のとおりのこの出願の発明は、従来の二次元電気泳動システムにおけるボトルネックは等電点分離系(IEF)の一次電気泳動用ゲルにあると考えてなされたものであって、特有のナイロン系を一次電気泳動用ゲルの支持体として用いることにより、(A)ゲルが物理的に強くなったため、扱いやすく、またゲル中をたんぱく質が動きやすい低濃度ゲルの作製が可能になり、また、(B)ゲルが細くなったため、電気泳動中の放熱効果が改善され高電圧の印加が可能になるという、二つの効果が発現される。このナイロン系担持ゲルを用いることにより、従来の二次ゲル電気泳動システムの利点を保持しつつ、前記のとおりの、技術的に熟練が必要で、特に一次元ゲルの取り扱いが難しく、一次元目の電気泳動に2〜16時間を要し、二次元の分離終了までに場合によっては2日間もの長い時間がかかり、高分子量たんぱく質への適用が困難であって、一次元目から二次元目のゲルへのたんぱく質の輸送効率が低く試料の無駄が多い、などの問題点を解決することのできる新たな二次元ゲル電気泳動システムが実現される。すなわち、このシステムでは、扱いやすい、極めて高速、高分子量のたんぱく質の分離へ適用可能、一次元目から二次元目のゲルへのたんぱく質の輸送効率が高い、といった特長を有している。さらにナイロン系担持ゲルは、実験室でも簡単に製作可能である。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明では、前記のように、二次元ゲル電気泳動システムにおける等電点分離系(IEF)において、ゲルの支持体としてナイロン系糸状体を用いて、これとゲルとを一体化している。この場合のゲル支持体としての糸状体は、その素材がナイロン、もしくはナイロンを主として、たとえばナイロンが半量以上を占めるナイロン系の糸状体である。そしてより好適には、マルチフィラメントを紡いだものの使用が考慮される。この場合、ナイロン以外のアミド系、たとえばアクリルアミドや、ポリエステルとの混紡として構成することも考慮される。
なお、糸状体については、分析サンプルを汚染するものであってはならない。また、表面に固定された負電荷がないものとする。固定された負電荷はIEFの際に使用するCA(両性電解質キャリア)によるpH勾配を不均一にしてしまうおそれがある。
このようなナイロン系糸状体は、ゲルの全体積に占める割合としては、通常5〜80%(ゲル体積20〜95%)が考慮される。
ゲルとしては従来同様のアクリルアミドゲルが代表的なものとして例示される。これらのゲルは、上記の糸状体の存在下での重合ゲル化によって、糸状体と一体化されることになる。このような一体化ゲルは、たとえば、ガラス板等の板状体に成形した溝内に糸状体を装入し、次いでゲル化用の溶液を注入して重合ゲル化させることで形成することができる。
この出願の発明によれば、従来では通常4%T程度までのゲル濃度しか達成できなかったが、2%T程度の低濃度まで可能とすることができる。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
LMSゲルの調製
まず図1に示したゲル作成用の装置を組み立てた。作成装置の上板(1)および下板(2)は5mm厚のアクリル板から作製されている。機械処理で幅1.2mm、深さ1.2mm、延長120mmの溝(3)が下板(2)に正確に彫られている。ゲルの注入口(4)および排出口(5)は上板(1)と、これに連通する形態で下(2)に設けてある。超低濃度・極細ゲルの調製に際しては、不織マルチフィラメント糸(〜1.0mm直径/ナイロン製)をゲル構造の保持および強化に用いた。
このナイロンマルチフィラメント糸としては、市販品(Hamanaka社の販売するRichMove製の糸(Col.No.510,Lot No.C)を用いた。この糸はナイロンマルチフィラメントを紡いだもので、やわらかく、艶がない。ナイロン糸は適当な長さにして溝(3)にはめ合わせてのち、上板(1)をのせた。上板(1)と下板(2)を固定し、窒素ガスを注入口(4)から溝(3)に流し、排出口(5)から排出させ、これを数分間行った。この窒素置換は(表面積の大きい)ナイロン繊維が吸収した酸素を除去するのに必要である。アクリルアミドゲル溶液は蒸留水で所定の濃度に調製し、真空脱気した。ゲルの原溶液にはアクリルアミドとN,N′−メチレンビスアクリルアミド以外の試薬は含まれていない。過硫酸アンモニウムとTEMEDを適量づつ脱気したゲル溶液に加えた後に、ゲル溶液をシリンジでゆっくりと溝に注入し、最低でも1時間は静置して重合させた。ついで、下板(2)から上板(1)をはずした。固まったゲル(以下、これをLMSゲルと呼ぶ。LMS=Loose Multifilament nylon Strings)は一組のピンセットで蒸留水中に移し、少なくとも1時間は蒸留水に浸しておいた。この操作はLMSゲル中の遊離イオンの除去に必要であった。最後にLMSゲルをCA(両性電解質キャリア)、界面活性剤、そしてカオトロープ(6mol/1尿素、2mol/1チオ尿素)というIEF用試薬を含む溶液中で1時間静置した。IEFに先立ち、LMSゲルを適当な長さ(7.1mm)にカットして分割した。上記の手順により2%T(5.4%C)まで希釈した超低濃度LMSゲルの作成に成功した。
LMSゲルを用いたIEF
図2に示したLMSゲル用のIEF装置を新たに作成した。装置本体は5mm厚のアクリル板でできている。冷却水チャンバーの上板(6)には5つの幅の広い溝(7)(幅10mm、深さ2mm、全長70mm)が成形されており、この幅広の溝(7)の中にそれぞれ5つの幅の狭い溝(8)(幅1.2mm、深さ1.2mm、全長70mm)が彫り込まれている。泳動サンプルは細い溝にそってマイクロピペットでアプライしたのち、先ほど作成したLMSゲル(9)を細い溝にはめ込んだ。IEF中にLMSゲル(9)が乾燥しないよう、広い溝にカバー(10)(幅10mm、高さ5mm、長さ70mmアクリルブロックを使用)を置いて、ゲルが入った狭い溝を覆った。LMSゲル(9)はゲル両端からそれぞれ0.5mm以内の部分で直接電極(白金ホイルで覆った銅ブロック)に接続されている。冷却水は10℃に設定し、窒素雰囲気下で空気中二酸化炭素の影響を排除してIEF電気泳動を行った。IEFは所定電圧到達までは定電流で行い、所定電圧到達後は泳動終了まで所定IEF電圧を保持(定電圧泳動)した。
pH勾配の測定
IEFに用いたLMSは5mmづつに断片化して、それぞれ窒素雰囲気下のバイアルで1時間、脱気した蒸留水25μlに溶解させた。pH値はpH測定器(B212、Horiba、JAPAN)で測定した。
平衡、SDS−PAGE、染色
平衡およびSDS−PAGEは、基本的にO’Fannelの方法(非特許文献3)に従って行った。
平衡に達するまでの時間は、O’Fannelの方法で使用されてたゲルに比べて、LMSゲルが非常に薄いため、本研究では40分に短縮した。SDS−PAGEではスタッキングゲルでの起こりうる大分子量のタンパク質の逸失を最小限に押さえるため、スタッキングゲル(幅8cm、高さ1cm、厚さ1mm)を2.5%T(2.6%C)まで希釈した。ランニングゲル(=resolving gel)は幅8cm、高さ6.5cm、厚さ1mmで、9%T(2.6%C)一定濃度であった。SDS−PAGEはゲル1枚あたり50mAの定電流でおこなった。染色は市販の銀染色キットを使用し、定法により行った。
pH勾配の安定性
CAによるpH勾配は「カソードドリフトと「プラトー現象」によって悪影響を受ける。一般的なIEF系において、これらの現象は泳動(分離)時間とともにその影響が増し、また電圧上昇をもたらす。この出願の発明の新規なIEF系の評価にあたり、CAによるpH勾配の安定性についても評価を行った。その結果を図3(A)(B)(C)図4(A)(B)に示した。なお、図4(C)は異なった電流値における分離時間の作用としての電圧変化を示したものである。
この結果よりpH勾配は基本的にゲルに沿ってリニアに形成されており、どの場合も優れた安定性が認められた。110分を超えるIEFでのpH勾配の時間安定性は検討されていない。というのは、110分というのが240kDaのタンパク質をIEFで分離(平衡化)するのに十分な時間であったからである。事実、170分までの分離時間に関して優秀な安定性を示している(図5)。
pH3.5〜10のCA(によるpH勾配)の場合、測定されたpH勾配はpH4〜9.3(図3B、図4A)の範囲であり、ゲル作成時より若干狭くなっている。尿素とNP−40を含む場合のpH勾配(図3A)は、それらをどちらも含まない場合のpH勾配(図3B)より若干狭くなっていることから、尿素とNP−40がpH勾配の形成に少し影響していることが示された。この2つの結果はCAによるpH勾配全般について言えることと考えられる。
異なる(アクリルアミド)濃度のLMSゲルを用いたIEF(の分離)時間
IEF(でタンパク質を分離するのに必要な)時間は、いくつかのパラメーター、たとえばゲルの性質、ゲルマトリックスの網目の度合い、pH勾配の態様、温度、印加電力そして分析サンプルなどに依存する。一般的に、サンプルのロード操作にかかる時間を含めて、現在の一般的なIEFけいでは、IEFが安定状態となる(=タンパク質がそれぞれの等電点へ十分に分離)するのに10時間以上必要とされている。
そこで、この出願の発明の新規IEF系でのIEF時間は、3種類の天然色素タンパク質を用い、4%T、2.5%T、2%TのそれぞれのLMSゲルを使って(それぞれIEFを行って)評価した。
色素タンパク質としては、
C−phycocyanin(MW:264kDa,pI:4.3)
Hemoglobin(MW:67kDa,pI:7.2)
Cytochrome C(MW:13kDa,pI:9.6)
を用いた。測定結果を図5に示すが、これはそれぞれ異なった泳動時間において撮影した写真である。これらのタンパク質は泳動分離後(染色することなく)すぐに検出可能であるばかりでなく、幅広い分子量(13〜264kDa)とpI(4.3〜9.6)をカバーしている。
図5より次の3点が認められた。(1)すべての場合で、巨大タンパク質のc−phycocyanin(264kDa)に限ってみても、分離(に必要な)時間は110分より長くはない。これは既存のIEF系に比べて格段に短時間である。(2)分離(に必要な)時間は、2%Tで、2.5%Tでそれぞれ70分、90分であり、4%Tの場合にくらべてさらに短かった。これはゲルの濃度が低いとゲルの網目が拡大し、タンパク質の移動するさいの抵抗が弱まることに起因している。(3)どのタンパク質も等電点へ分離した後にはそこにとどまりつづけた。このことは、とりもなおさず、新規IEF系では、pH勾配が非常によく安定したものであることを証明している。また同じくこのことより、(LMSゲルのアクリルアミド濃度が)2%T、2.5%Tおよび4%Tでそれぞれ70分、90分および110分以内にIEF平衡に達している。
異なった濃度のLMSゲルへのサンプルのロード容量
より多くのタンパク質を一度に分離できる(←タンパク質のロード可能容量が大きい)というのが、特にゲル電気泳動で求められている。図5では、どの濃度のゲルにおいても同量のタンパク質を泳動しているにもかかわらず、低濃度ゲルの方が高濃度ゲルより、分離されたタンパク質バンドが狭い範囲(シャープ)であった。すなわちこれは、低濃度ゲルの方が、高濃度ゲルよりもより多くのタンパク質を泳動できるということを示している。より低濃度のLMSゲルの使用は、より大きなサンプルのロード容量を実現するために簡便かつ効果的な方法である。
LMSゲルの再現性
IEFにおける分離パターンの再現性は天然色素タンパク質を使いLMSゲルで検証した。その結果を図6に示した。この(図6は5つのLMSゲルについて3種類のタンパク質でIEFを行ったものである。IEFはそれぞれ別個に行い、泳動時間ごとに写真を撮影した5つのLMSゲルは、どの時間の3種類のどのタンパク質のバンドにおいても、非常に類似したバンド位置を示し、これにより再現性が確実であることが示された。
新規IEF系のプロテオーム2−D PAGEへの適用
最終的に、新規IEF系では、一次泳動(IEF)において4%Tおよび2%TのLMSゲルを用い、タンパク質の2−D PAGEへ適用した。その結果を図7に示した。ニワトリ骨格筋より抽出したタンパク質をサンプルとして用いた。ニワトリの骨格筋には、従来の2−D PAGEでは検出が難しいとされているミオシンH鎖、C−Protein、M−Proteinなどの難水溶性、高分子量のタンパク質が含まれているために、サンプルとして選定した。比較のため、上記の2通りの実験(=図7の2−D PAGE)は、サンプルのロード、泳動、染色の条件を厳密に同一にして行った。
図7にも示したように、2%TのLMSゲルによる2−D PAGEのタンパク質マップの方が、4%のLMSゲルによる場合より、より強い染色強度を示すことが確認された。さらに、4%T LMSゲルの場合の2−Dタンパク質マップには認められない多数のタンパク質のスポットが、2%T LMSゲルの場合の2−Dタンパク質マップでは検出できることが明らかとなった。さらに重要なことには、2%T LMSゲルの場合の2−Dタンパク質マップでは、ミオシンH鎖(〜200kDa)が含まれるであろう100kDaを超える大分子量のタンパク質が、高い染色強度で明確に検出することができることである。Hirabayashiらは、何通りかの一般的な方法でを試みて、一次泳動にアクリルアミドゲルを使用した場合の2−Dタンパク質マップではミオシンH鎖は検出できなかったことを報告している。(Electrophoresis 2000,21,446−451)。これに対し、この出願の発明として例示された低濃度LMSゲルでは、IEFゲルへロードする際のサンプルタンパク質のゲル中への移動能、および一次泳動ゲル(LMSゲル)から二次泳動ゲルへのタンパク質の移動能が、明確に向上できることが示唆される。
以上のように、超低濃度(アクリルアミド)2%Tゲルを用いることで、260kDaにいたる大分子量のタンパク質(例えば図5および図6のc−phycocyanin)が明確に(IEFで)分離され、1次泳動ゲルから2次泳動ゲルへ移動可能であるという事実が明らかになった。
以上のとおりの結果からは、この出願の発明のIEF系は既存のIEF系と比べ、以下の点で優れていることがわかる。
ルーズマルチフィラメントを用い2%Tまでアクリルアミド濃度を下げた(LMSs)超低濃度かつ極細のゲル(LMSゲル)を、簡便に作成可能である。
LMSゲルは超低濃度にかかわらず、頑丈で取扱いが容易である。
この出願の発明のIEF装置はCAによるIEF系で必須だった電極電解液を必要としない。これはIEFの取扱いを簡略化するだけでなく、pH勾配の安定化にも大きく貢献している。
この出願の発明のIEF系は、IEFをガラス管で行わなくてよいため、既存のIEF系で問題となっているCAによるpH勾配の安定性に対するガラス管の悪影響を完全に排除することができる。
電極電解液、ガラス管および遊離イオンによる悪影響を排除することによるLMSゲルにおけるCAによるpH勾配の非常に優れた安定性が、十分に長時間にわたるIEFを可能としている。そしてこの系により、正確な(忠実な)IEF平衡が実現することができる。これは既存のCAによるIEF系では不可能と考えられていたことである。
超低濃度LMSゲルの優れた分析的な特徴は、既存の系で用いられている4%(アクリルアミド)のIEFゲルより、IEF時間(=等電点分離に要する時間)、LMSゲルへのタンパク質の導入(=ロード可能量と透過分子量)、1次泳動ゲルから2次泳動ゲルへのタンパク質の移動能が格段に向上できる。
さらに、LMSゲルは容易に作成できることから、2−D PAGEの分析能をはっきりと向上させ、また高速なタンパク質分離手法として小型化された2−D PAGE系が用いられるようになる可能性がある。
この出願の発明によって、高分子量たんぱく質への適用が可能な高速二次元電気泳動システムが実現され、プロテオーム解析のための革新技術として、医療や生命科学研究の発展に大きく貢献することができる。
LMSゲル作成装置の組み立てを例示した図である。 LMSゲルを用いたIEF装置を例示した図である。 pH勾配に対するIEFの影響を例示した図である。LMSゲル濃度は2.5%T(5.4%C)である。LMSゲルをインキュベート(前処理)はそれぞれ図表に記載された試薬類を含む10%(v/v)グリセロール溶液で行った。IEFは900Vに達するまでは定電流(0.09mA/gel)で行い、900Vに到達後はIEF終了まで900Vの電圧を維持した。 pH勾配に対する電圧の影響(AおよびB)、電流を一定とした場合のIEF時間と電圧変化(C)を例示した図である。LMSゲルとその前処理は図3の条件に同じ。 異なる濃度のLMSゲルを用いた色素タンパク質のIEFを例示した図である。LMSゲルの前処理に用いられる処理液は1%(v/v)pH3.5−10両性電解質、および1%(v/v)pH5−8両性電解質、2%NP−40および10%(v/v)グリセロール溶液であった。IEFの電力操作は図3と同様におこなった。タンパク質を適量のゲル前処理液に溶解し、どちらのLMSゲルにもそれぞれのタンパク質を等量づつ次のとおりロードした:c−phycocyanin(分子量264kDa、pI4.3、左側のバンド)16μg、ヘモグロビン(分子量67kDa、pI7.2.中央のバンド)70μg、シトクロムc(分子量13kDa、pI9.6.右側のバンド)32μg。 個別に泳動を行ったLMSを用いた色素タンパク質のIEFを例示した図である。凡例は図5と同様であるが、ゲル濃度のみ全て2.5%である。 一次泳動に4%Tおよび2%TのLMSゲルを用いたニワトリ骨格筋抽出サンプルの2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2−D PAGE)を例示した図である。抽出サンプルをロード量はどちらのゲルに5μlであった。IEFは1200Vに達するまでは定電流(0.09mA/gel)で行い、その後は1200Vの電圧を維持し、1時間泳動を行った。

Claims (4)

  1. 二次元ゲル電気泳動システムにおける等電点分離系において、ゲルの支持体としてナイロン系糸状体を配設一体化していることを特徴とするたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システム。
  2. 糸状体はマルチフィラメント糸状体であることを特徴とする請求項1のたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システム。
  3. 糸状体の存在下での重合ゲル化により糸状体とゲルとが一体化されていることを特徴とする請求項1または2のたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システム。
  4. アクリルアミドゲルの濃度が2%Tまでの低濃度範囲にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのたんぱく質分離用高速二次元電気泳動システム。
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