1つの局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織への血球の接着を阻害する方法を提供する。この方法は、この生物学的組織へのこの血球の接着を阻害するに十分な量の融合ポリペプチドを、この生物学的系に添加する工程を包含し、
ここで、この融合ポリペプチドは、第2のポリペプチドに作動可能に連結された第1のポリペプチドを含み、この第1のポリペプチドは、糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一領域を含み、そしてこの第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含む。
1つの実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がインビトロ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がエキソビボ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がインビボ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記血球が血小板である。好ましい実施形態において、上記方法は、上記血小板が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチン、またはトロンビンを発現する。
別の実施形態において、上記方法は、上記血球が白血球である。好ましい実施形態において、上記方法は、上記白血球が、Mac−1リガンドまたはセレクチンリガンドを発現する。
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的組織が、フォン・ビルブラント因子またはトロンビン、糖タンパク質Ibα、またはP−セレクチンと複合体化している。
別の局面において、本発明は、第2のポリペプチドに作動可能に連結された第1のポリペプチドを含む、融合ポリペプチドを提供し、この第1のポリペプチドは、糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一領域を含み、そしてこの第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含む。
1つの実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、膜糖タンパク質Ibαポリペプチドの細胞外部分を含む。好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、白血球インテグリンMac−1ポリペプチド、フォン・ビルブラント因子、トロンビン、およびP−セレクチンからなる群より選択される1つ以上のポリペプチドに結合する。より好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、配列番号1と少なくとも85%相同性である。より好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、重鎖免疫グロブリンポリペプチドの一領域を含む。さらにより好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、免疫グロブリン重鎖のFc領域を含む。別のさらにより好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも弱いエフェクター機能を有する。なおさらにより好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、低い親和性でかまたは親和性なしで、Fcレセプターに結合する。なおさらにより好ましい別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、低い親和性でかまたは親和性なしで、補体タンパク質C1qに結合する。
別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、配列番号1を含む。
別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、野生型GPIbαポリペプチドよりもタンパク質分解に対して耐性である。
別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、野生型糖タンパク質Ibαポリペプチドが上記フォン・ビルブラント因子ポリペプチドに結合するよりも高い親和性で、上記第1のポリペプチドがこのフォン・ビルブラント因子ポリペプチドに結合する。好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、野生型GPIbαポリペプチドのアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換G233VまたはM239Vのうちの少なくとも1つを含む。別の好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第1のポリペプチドが、野生型GPIbαポリペプチドのアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換G233VおよびM239Vを含む。
別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、重鎖免疫グロブリンポリペプチドの一領域を含む。好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、免疫グロブリン重鎖のFc領域を含む。より好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも弱いエフェクター機能を有する。さらにより好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、低い親和性でかまたは親和性なしで、Fcレセプターに結合する。別のさらにより好ましい実施形態において、上記融合ポリペプチドは、上記第2のポリペプチドが、低い親和性でかまたは親和性なしで、補体タンパク質C1qに結合する。
別の実施形態において、上記融合ポリペプチドは、GP1b302−Igのアミノ酸配列(配列番号1)、GP1b302/2A−Igのアミノ酸配列(配列番号2)、GP1b302/4X−Igのアミノ酸配列(配列番号3)、GP1b290Igのアミノ酸配列(配列番号4)、GP1b290/2V−Igのアミノ酸配列(配列番号5)またはGP1b290/1A−Igのアミノ酸配列(配列番号6)を含む。
別の局面において、本発明は、上記融合ポリペプチドを含む、多量体ポリペプチドを提供する。
1つの実施形態において、上記多量体ポリペプチドは、二量体である。
別の局面において、本発明は、上記の融合ポリペプチドをコードする、DNA分子を提供する。
別の局面において、本発明は、上記のDNA分子を含む、ベクターを提供する。
別の局面において、本発明は、上記のベクターを含む、細胞を提供する。
別の局面において、本発明は、糖タンパク質Ibαポリペプチド−免疫グロブリン融合ポリペプチドを発現するための方法を提供し、この方法は、この糖タンパク質Ibαポリペプチド−免疫グロブリン融合ポリペプチドの発現を生じる条件下で、請求項34に記載の細胞を培養する工程を包含する。
別の局面において、本発明は、上記の融合ポリペプチドを含む、薬学的組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、上記のDNA分子を含む、薬学的組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織へのタンパク質の接着を阻害する方法を提供し、この方法は、この生物学的組織へのこのタンパク質の接着を阻害するに十分な量の上記の融合ポリペプチドを、この生物学的系に添加する工程を包含する。
1つの実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がインビトロ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がエキソビボ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的系がインビボ系である。
別の実施形態において、上記方法は、上記タンパク質が膜に結合している。好ましい実施形態において、上記方法は、上記タンパク質が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子、またはトロンビンである。
別の実施形態において、上記方法は、上記タンパク質が溶液中にある。好ましい実施形態において、上記方法は、上記タンパク質が、フォン・ビルブラント因子、またはトロンビンである
別の実施形態において、上記方法は、上記生物学的組織が、糖タンパク質Ibα、Mac−1、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子、およびトロンビンからなる群より選択されるタンパク質と、複合体化している。
別の局面において、本発明は、被験体における血小板活性化と関連する障害を処置する方法を提供し、この方法は、上記の融合ポリペプチドを、この障害を処置する必要のある被験体に投与する工程を包含する。
1つの実施形態において、上記の方法は、上記障害が、血栓性疾患と関連がある。
別の実施形態において、上記の方法は、上記障害が、虚血性心疾患、アンギナ、急性心筋梗塞、発作、静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、または動脈血栓症である。
別の実施形態において、上記の方法は、上記障害が、アンギナである。好ましい実施形態において、上記の方法は、上記アンギナが、不安定狭心症である。
別の実施形態において、上記の方法は、上記被験体がヒトである。
別の実施形態において、上記の方法は、上記被験体に、アセチルサリチル酸、ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、クロピドグレル、P−セレクチンアンタゴニスト、トロンビンインヒビター、および血栓崩壊性酵素からなる群より選択される化合物を投与する工程をさらに包含する。
別の局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織への血球の接着を阻害する組成物を提供し、この組成物は、上記の融合ポリペプチドを含む。
1つの実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がインビトロ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がエキソビボ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がインビボ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記血球が血小板である。好ましい実施形態において、上記の組成物は、上記血小板が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチン、またはトロンビンを発現する。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記血球が白血球である。好ましい実施形態において、上記の組成物は、上記白血球が、Mac−1リガンドまたはセレクチンリガンドを発現する。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的組織が、フォン・ビルブラント因子またはトロンビン、糖タンパク質Ibα、またはP−セレクチンと複合体化している。
別の局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織へのタンパク質の接着を阻害する組成物を提供し、この組成物は、上記の融合ポリペプチドを含む。
1つの実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がインビトロ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がエキソビボ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的系がインビボ系である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記タンパク質が膜に結合している。好ましい実施形態において、上記の組成物は、上記タンパク質が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子、またはトロンビンである。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記タンパク質が溶液中にある。好ましい実施形態において、上記の組成物は、上記タンパク質が、フォン・ビルブラント因子、またはトロンビンである。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記生物学的組織が、糖タンパク質Ibα、Mac−1、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子、およびトロンビンからなる群より選択されるタンパク質と、複合体化している。
別の局面において、本発明は、被験体における血小板活性化と関連する障害を処置する組成物を提供し、この組成物は、上記の融合ポリペプチドを含む。
1つの実施形態において、上記の組成物は、上記障害が、血栓性疾患と関連がある。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記障害が、虚血性心疾患、アンギナ、急性心筋梗塞、発作、静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、または動脈血栓症である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記障害が、アンギナである。好ましい実施形態において、上記の組成物は、上記アンギナが、不安定狭心症である。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記被験体がヒトである。
別の実施形態において、上記の組成物は、上記被験体に、アセチルサリチル酸、ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、クロピドグレル、P−セレクチンアンタゴニスト、トロンビンインヒビター、および血栓崩壊性酵素からなる群より選択される化合物を投与する工程の前、その工程と同時、またはその工程の後に上記被験体に投与される。
別の局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織への血球の接着を阻害するための組成物の製造における、上記の融合ポリペプチドの使用を提供する。
別の局面において、本発明は、生物学的系における生物学的組織へのタンパク質の接着を阻害するための組成物の製造における、上記の融合ポリペプチドの使用を提供する。
別の局面において、本発明は、被験体における血小板活性化と関連する障害を処置するための組成物の製造における、上記の融合ポリペプチドの使用を提供する。
本発明は、概して、血管関連障害を処置または予防するための組成物および方法に関し、より詳細には、血小板糖タンパク質IBα由来ポリペプチドを含む組成物、およびその組成物の使用方法に関する。
本発明は、白血球への血小板の接着を阻害する糖タンパク質Ibα由来の融合タンパク質の発見に部分的には基づく。従って、この糖タンパクK質Ibα由来の融合タンパク質は、血管炎症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、および血管形成術に関連する再狭窄に関連する血管状態を処置するために、使用され得る。このポリペプチドは、本明細書中において、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドと呼ばれる。
1つの局面において、本発明は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを提供し、この糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、第2のポリペプチドに作動可能に連結された第1のポリペプチドを含み、この第1のポリペプチドは、糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一領域を含む。この第2のポリペプチドは、好ましくは、多量体(例えば、二量体)を形成する。好ましい実施形態において、この第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含む。いくつかの実施形態において、この融合タンパク質は、GP1b302−Igの配列(配列番号1)、GP1b302/2A−Igの配列(配列番号2)、GP−1b302/4X−Igの配列(配列番号3)、GP1b290Igの配列(配列番号4)、GP1b290/2V−Igの配列(配列番号5)、もしくはGP1b290/1A−Igの配列(配列番号6)、またはそれらのフラグメント、ホモログ、アナログ、もしくは誘導体を含む。これらのポリペプチドの配列が、以下に提供される:
GP1b302/Ig
生物学的組織に対する白血球の接着を阻害する方法もまた、本発明により提供され、この方法は、白血球と、本発明に従う糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドとを接触させる。白血球と生物学的組織の接着を阻害するに十分な量で、この白血球が接触される。
別の局面において、本発明は、血小板活性化と関連した障害を処置する方法を提供する。この方法は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドの有効量を被験体に投与する工程を包含する。
本明細書中に記載の糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸、ならびに糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクター、および本明細書中に記載のこのベクターまたは核酸を含む細胞もまた、本発明により含まれる。
糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを含む薬学的組成物、ならびに糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体もまた、本発明により含まれる。
別段に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載のものと同様または等価な方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料が、以下に記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかである。
(発明の詳細な説明)
本発明は、糖タンパク質Ibαタンパク質−免疫グロブリンの融合タンパク質を含有する、融合タンパク質を提供する。この融合タンパク質は、生物学的組織(例えば、血管内皮など)への血小板および白血球の接着の阻害に有用である。本発明の融合タンパク質、またはこれらの融合タンパク質をコードする核酸は、薬学的組成物に組み込まれ得、そして被験体に投与されて、糖タンパク質Ibαリガンド(例えば、フォン・ビルブラント因子、Mac−1、P−セレクチン、またはトロンビン)と細胞(例えば、血小板)表面上の糖タンパク質Ibαタンパク質との間の相互作用を阻害し得る。結合の阻害は、インビボでの糖タンパク質Ibαタンパク質媒介血小板凝集および糖タンパク質Ibαタンパク質関連シグナル伝達を抑制する。
この糖タンパク質Ibαタンパク質−免疫グロブリンの融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質同族リガンドのバイオアベイラビリティーを調節するために用いられ得る。この糖タンパク質Ibαタンパク質リガンド/糖タンパク質Ibαタンパク質の相互作用の阻害は、とりわけ血管炎症および血小板活性化に関連する他の血管障害の処置に、治療的に有用である。
(糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド)
種々の局面において、本発明は、第2のポリペプチドに作動可能に連結された第1のポリペプチドを含む、融合タンパク質を提供し、この第1のポリペプチドは、糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一部を含む。本明細書中で用いられる場合、糖タンパク質Ibα「融合タンパク質」または糖タンパク質Ibα「キメラタンパク質」は、非糖タンパク質Ibαポリペプチドに作動可能に連結された糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一部を包含する。「糖タンパク質Ibαポリペプチド」とは、糖タンパク質Ibαポリペプチドの少なくとも一部に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいい、一方で、「非糖タンパク質Ibαポリペプチド」とは、この糖タンパク質Ibαタンパク質と実質的に相同でなく(例えば、糖タンパク質Ibαポリペプチドまたは糖タンパク質Ibαフラグメントと異なり)、かつ同じ生物由来もしくは異なる生物由来である、タンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。糖タンパク質Ibα融合タンパク質において、この糖タンパク質Ibαポリペプチドは、Ibαタンパク質の全てまたはIbαタンパク質の一部に対応し得る。
1つの実施形態において、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも1つの、生物学的に活性な部分を含む。別の実施形態において、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも2つの、生物学的に活性な部分を含む。なお別の実施形態において、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも3つの、生物学的に活性な部分を含む。この融合タンパク質において、用語「作動可能に連結された」とは、その第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、糖タンパク質Ibαポリペプチドに関連する少なくとも1つの機能を可能にする様式で(最も代表的には、ペプチド結合のような共有結合を介して)化学的に連結されていることを示すことが、意図される。糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸を指すために用いられる場合、この作動可能に連結されたという用語は、その糖タンパク質Ibαポリペプチドをコードする核酸と、その非糖タンパク質Ibαポリペプチドをコードする核酸とが、互いにインフレームで融合されていることを意味する。この非糖タンパク質Ibαポリペプチドは、この糖タンパク質IbαポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
さらなる実施形態において、この糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、1つ以上のさらなる部分に連結され得る。例えば、この糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、さらに、GST融合タンパク質に連結され得る。ここで、この糖タンパク質Ibα融合タンパク質配列は、このGST(すなわち、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)配列のC末端に融合される。そのような融合タンパク質は、糖タンパク質Ibα融合タンパク質の精製を容易にし得る。
別の実施形態において、この融合タンパク質は、そのN末端に、異種シグナル配列(すなわち、糖タンパク質Ibα核酸によってコードされるポリペプチド中に存在しないポリペプチド配列)を含む。例えば、ネイティブの糖タンパク質Ibαシグナル配列が、除去され得、そして別のタンパク質由来のシグナル配列で置換され得る。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、糖タンパク質Ibαの発現および/または分泌は、異種のシグナル配列の使用を介して増大され得る。
本発明のキメラタンパク質および融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって産生され得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、従来技術に従って(例えば、ライゲーションのための平滑末端または付着末端の使用、適切な末端を提供するための制限酵素消化、付着末端の適切な充填、所望されない結合を防ぐためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素ライゲーションによって)、インフレームで、共に連結される。別の実施形態において、この融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅が、アンカープライマーを用いて実施され得る。このアンカープライマーは、2つの連続する遺伝子フラグメントの間に相補的突出部をもたらし、この2つの連続する遺伝子フラグメントは、続いてアニーリングされ、そして再び増幅されて、キメラ遺伝子配列を作製し得る(例えば、Ausubelら(編)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターが、市販されている。糖タンパク質Ibαコード核酸は、この免疫グロブリンタンパク質にその融合部分がインフレームで連結されるように、そのような発現ベクターへとクローン化され得る。
種々の実施形態において、この糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、配列番号1〜6のうちの1つ以上のアミノ酸配列を含む。
糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、オリゴマー(例えば、二量体または三量体)として存在し得る。好ましくは、この糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、二量体である。
その第1のポリペプチド、および/または第1のポリペプチドをコードする核酸は、GP Ibαコード配列を用いて構築され得る。GP Ibαコード配列は、当該分野において公知であり、そして例えば、欧州特許出願公開第0 317 278 A2、およびLopezら、84:5615−19、1987に記載される。GP IbαポリペプチドおよびGP Ibαポリペプチドをコードする核酸の他の供給源としては、各々、GenBank登録番号BAB12038ならびに同AB038516、同D85894および同BAA12911(ヒト配列)、ならびに各々、GenBank登録番号AAC53320および同U91967が挙げられる。これらは、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される。
いくつかの実施形態において、このGP Ibαポリペプチド部分は、改変体GP Ibαポリペプチドとして提供される。この改変体GP Ibαポリペプチドは、天然に存在するGP Ibα配列(野生型)中に1つの変異を有し、この変異は、白血球細胞表面分子へのこのGP Ibαポリペプチドの(非変異配列と比較して)高い親和性での結合を生じる。例えば、この変異体ポリペプチドは、フォン・ビルブランド因子(vWF)に、より高い親和性で結合し得る。この増大した反応性、すなわち過剰応答性は、低濃度のリストセチンを用いて評価され得る。あるいは、このポリペプチドとvWFとの反応性を決定するための任意の他の適切な手段もまた、vWFと「より」反応性である(すなわち、天然に存在する野生型GP Ibαよりも反応性である)ポリペプチドを同定するために利用され得る。vWFに、より高い親和性で結合するGP Ibαポリペプチド改変体の例としては、GP Ibαポリペプチドのヒンジ領域中に配列変化を含むGP Ibα改変体が挙げられる。このヒンジ領域は、残基220〜310を含む領域として規定される。そしてこのヒンジ領域は、このGP IbαポリペプチドにおいてvWFに対する主要な結合部位であることが報告されている。このヒンジ領域における変異としては、野生型GP Ibαにおいてグリシンをコードする残基233での変異が挙げられる。グリシン233をバリンに置換することが好ましいが、他のアミノ酸でもまた置換され得る。このヒンジ領域での変異のための第2の部位は、残基239であり、野生型GP Ibαにおいて、この残基239は、メチオニンをコードする。メチオニン239をバリンに置換することが好ましいが、他のアミノ酸でもまた置換され得る。さらに、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に適するGP Ibαポリペプチドのヒンジ領域改変体は、233位および239位の両方の残基に変異を有する。(例えば、Dongら、JBC275:36 27663−27670(2000)を参照のこと。)従って、本発明は、改変体GP Ibαポリペプチドの239位に置換(例えば、M239V置換)を有する融合タンパク質を含む。233位に置換(例えば、G233V)を有する融合タンパク質、ならびに233位および239位の両方での置換(例えば、G233V置換およびM239V置換)を有する改変体GP Ibαポリペプチドを含む融合タンパク質もまた、本発明の範囲内にある。
いくつかの実施形態において、このGP Ibαポリペプチド部分は、改変体GP Ibαポリペプチドとして提供される。この改変体GP Ibαポリペプチドは、天然に存在するGP Ibα配列(野生型)中に変異を有し、この変異は、タンパク質分解に対して(非変異配列と比較して)耐性であるGP Ibα配列を生じる。天然に存在するGP Ibα配列中のトリプシン切断部位が記載されている。(例えば、Titaniら、PNAS 84:5610−5614、(1987)を参照のこと。)
いくつかの実施形態において、その第1のポリペプチドは、全長GP Ibαポリペプチドを含む。あるいは、その第1のポリペプチドは、全長に満たないGP Ibαポリペプチドを含む。例えば、その第1のポリペプチドは、600アミノ酸長未満(例えば、500アミノ酸長以下、250アミノ酸長以下、150アミノ酸長以下、100アミノ酸長以下、50アミノ酸長以下、または25アミノ酸長以下)である。
第1のポリペプチドの例としては、GP1b302のGP Ibαポリペプチド配列(配列番号7)、GP1b302/2AのGP Ibαポリペプチド配列(配列番号8)、GP1b/4XのGP Ibαポリペプチド配列(配列番号9)、GP1b290のGP Ibαポリペプチド配列(配列番号10)、GP1b290/2VのGP Ibαポリペプチド配列(配列番号11)、およびGP1b290/1AのGP Ibαポリペプチド配列(配列番号12)のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む、ポリペプチドが挙げられる。
この融合タンパク質中に含まれ得るシグナルペプチドは、
である。所望される場合、1つ以上のアミノ酸が、さらに、そのGP Ibα部分を含む第1のポリペプチド部分と、第2のポリペプチド部分との間に挿入され得る。
好ましくは、その第2のポリペプチドは、可溶性である。いくつかの実施形態において、この第2のポリペプチドは、その連結されたポリペプチドの半減期(例えば、血清半減期)を増大させる。いくつかの実施形態において、その第2のポリペプチドは、この融合ポリペプチドと第2のGP Ibαポリペプチドとの会合を容易にする配列を含む。好ましい実施形態において、この第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含む。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当該分野において公知であり、そして例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載される。
いくつかの実施形態において、この第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、この第2のポリペプチドは、全長に満たない免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、Fv、またはFc)を含む。好ましくは、この第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖を含む。より好ましくは、この第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含む。
本発明の別の局面において、この第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能より弱いエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能としては、例えば、Fcレセプター結合活性、補体結合活性、およびT細胞除去活性が挙げられる。(例えば、米国特許第6,136,310号を参照のこと。)T細胞除去活性をアッセイする方法、Fcエフェクター機能をアッセイする方法、および抗体安定性をアッセイする方法は、当該分野において公知である。1つの実施形態において、この第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対して低い親和性を有するか、または全く親和性を有さない。代替的な実施形態において、この第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対する低い親和性を有するか、または全く親和性を有さない。
好ましい第2のポリペプチド配列としては、配列番号12のアミノ酸配列が挙げられる。この配列は、Fc領域を含む。下線のアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置に見出されるアミノ酸とは異なるアミノ酸である:
配列番号1〜6の融合ポリペプチドをコードするDNA配列を、それぞれ、配列番号15〜20の配列として以下に開示する。
本発明の別の局面は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、アナログ、もしくはホモログをコードする核酸を含むベクター(好ましくは、発現ベクター)に関する。本明細書中で使用する場合、用語「ベクター」は、連結された別の核酸を輸送し得る核酸分子をいう。1つの型のベクターは、「プラスミド」である。プラスミドは、環状の二本鎖DNAループをいい、その中にさらなるDNAセグメントを連結し得る。別の型のベクターは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得るウイルスベクターである。特定のベクターは、導入された宿主細胞中で自律複製し得る(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組込まれ、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらに作動可能に連結された遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」という。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、交換可能に使用され得る。なぜならば、プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるからである。しかし、本発明は、等価な機能を提供するこのような他の形態の発現ベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば複製不全レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス))を包含することが意図される。
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含む。このことは、組換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づき選択された、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に連結される」は、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で調節配列に連結されていることを意味することが意図される。
用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載される。調節配列としては、多くの型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的な発現を指向する調節配列、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指向する調節配列(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることが、当業者により理解されている。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入され、それによって、本明細書中に記載されるような核酸によりコードされるタンパク質またはペプチド(融合タンパク質または融合ペプチドを含む)(例えば、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドの変異形態など)を生成し得る。
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物細胞または真核生物細胞における糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドの発現のために設計され得る。例えば、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、細菌細胞(例えば、Escherichia coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞、または哺乳動物細胞において発現され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)においてさらに議論されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写および翻訳され得る。
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを用いて、Escherichia coliにおいて最も頻繁に実施される。融合ベクターは、コードするタンパク質に(通常は、組換えタンパク質のアミノ末端に)多くのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、代表的に、以下の3つのプロセスに役立つ:(i)組換えタンパク質の発現の増大;(ii)組換えタンパク質の可溶性の増大:および(iii)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによる、組換えタンパク質の精製における補助。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位が、融合部分と組換えタンパク質の連結部に導入され、融合タンパク質の精製後の、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族の認識配列として、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが挙げられる。代表的な融合発現ベクターとして、標的の組換えタンパク質にグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを融合する、それぞれ、pGEX(Pharmacia Biotech,Inc;SmithおよびJohnson,1988.Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)、およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられる。
適切な誘導性の非融合E.coli発現ベクターの例として、pTrc(Amrannら,(1988)Gene 69:301−315)およびpET 11d(Studierら,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)60−89)が挙げられる。
E.coliにおける組換えタンパク質発現を最大化する1つのストラテジーは、組換えタンパク質をタンパク質分解切断する能力が損傷した宿主細菌においてタンパク質を発現させることである。例えば、Gottesman,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)119−128を参照のこと。別のストラテジーは、各アミノ酸に対する個々のコドンがE.coliにおいて優先的に使用されるコドンとなるように、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を変更することである(例えば、Wadaら,1992.Nucl.Acids Res.20:2111−2118を参照のこと)。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準的なDNA合成技術により実施され得る。
別の実施形態において、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母Saccharomyces cerivisaeにおける発現のためのベクターの例として、pYepSec1(Baldariら,1987.EMBO J.6:229−234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz,1982.Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら,1987.Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)、およびpicZ(InVitrogen Corp,San Diego,Calif.)が挙げられる。
あるいは、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞にて発現され得る。培養昆虫細胞(例えば、SF9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとして、pAcシリーズ(Smithら,1983.Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers,1989.Virology 170:31−39)が挙げられる。
さらに別の実施形態において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物中で発現される。哺乳動物発現ベクターの例として、pCDM8(Seed,1987.Nature 329:840)、およびpMT2PC(Kaufmanら,1987.EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞において使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしば、ウイルス調節エレメントにより提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40から獲得される。原核生物細胞および真核生物細胞の両方に対して適切な他の発現系については、例えば、Sambrookら,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の第16章および第17章を参照のこと。
別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指向し得る(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例として、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら,1987.Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(CalameおよびEaton,1988.Adv.Immunol.43:235−275)、T細胞レセプター(WinotoおよびBaltimore,1989.EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら,1983.Cell 33:729−740;QueenおよびBaltimore,1983.Cell 33:741−748)の特定のプロモーター、神経特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle,1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら,1985.Science 230:912−916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)が挙げられる。発達により調節されるプロモーター(例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss,1990.Science 249:374−379)およびα−フェトタンパク質プロモーター(CampesおよびTilghman,1989.Genes Dev.3:537−546))もまた、包含される。
本発明はさらに、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。すなわち、このDNA分子は、NOV糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドmRANに対してアンチセンスなRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で、調節配列に作動可能に連結される。アンチセンス方向にクローニングされた核酸に作動可能に連結される調節配列は、種々の細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続的な発現を指向するよう選択され得る。例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサー、あるいは調節配列は、アンチセンスRNAの構成性発現、組織特異的発現、または細胞特異的発現を指向するよう選択され得る。アンチセンス発現ベクターは、高度に効率的な調節領域の制御下でアンチセンス核酸を生成する組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒化ウイルスの形態であり得、その活性は、ベクターの導入される細胞型により決定され得る。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の調節の議論については、例えば、Weintraubら,「Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis」,Reviews−Trends in Genetics,第1(1)巻,1986を参照のこと。
本発明の別の局面は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中で交換可能に使用される。このような用語は、特定の対象細胞のみをいうのではなく、このような細胞の子孫または潜在的な子孫もいうことが理解される。特定の改変が、変異または環境の影響のいずれかに起因して、次の世代で生じ得るので、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書中で使用される用語の範囲になおも含まれる。
宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、細菌細胞(例えば、E.coli)、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞(例えば、ヒト、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞またはCOS細胞)において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術を通じて原核生物細胞または真核生物細胞中に導入され得る。本明細書中で使用する場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための、当該分野で認識されている種々の技術をいうことが意図され、これらとして、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが挙げられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)および他の研究マニュアルに見出され得る。
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、細胞の少しの画分のみが、それらのゲノムに外来DNAを組込み得ることが知られている。これらの組込み体(integrant)を同定および選択するために、一般的に、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。種々の選択マーカーとして、薬物(例えば、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキセート)に対する耐性を与える選択マーカーが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸と同一ベクターで宿主細胞に導入され得るか、または別々のベクターで導入され得る。導入される核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択により同定され得る(例えば、選択マーカー遺伝子を組込まれた細胞が生存し、他の細胞が死滅する)。
本発明の宿主細胞(例えば、培養原核生物宿主細胞または培養真核生物宿主細胞)は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを生成する(すなわち、発現する)ために使用され得る。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用して糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを生成するための方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、本発明の宿主細胞(糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが導入された宿主細胞)を、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドが生成されるような適切な培地中で培養する工程を包含する。別の実施形態において、本発明はさらに、培地または宿主細胞から糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを単離する工程を包含する。
融合ポリペプチドは、従来の条件(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動など)に従って単離および精製され得る。例えば、免疫グロブリン融合タンパク質は、この融合タンパク質のFc部分に選択的に結合する固定化されたプロテインAまたはプロテインGを含むカラムに溶液を通すことにより精製され得る。例えば、Reis,K.J.ら,J.Immunol.132:3098−3102(1984);PCT出願公開番号WO87/00329を参照のこと。融合ポリペプチドは、カオトロピック塩による処理または酢酸水溶液(1M)による溶出によって溶出され得る。
あるいは、本発明に従う融合ポリペプチドは、当該分野で公知の方法を用いて化学合成され得る。ポリペプチドの化学合成は、例えば、に記載されている。種々のタンパク質合成法が当該分野で一般的であり、ペプチド合成機を用いた合成が挙げられる。例えば、Peptide Chemistry,A Practical Textbook,Bodasnsky編、Springer−Verlag,1988;Merrifield,Science 232:241−247(1986);Baranyら、Intl.J.Peptide Protein Res.30:705−739(1987);Kent,Ann.Rev.Biochem.57:957−989(1988)、およびKaiserら、Science 243:187−198(1989)を参照のこと。ポリペプチドは、標準的なペプチド精製技術を用いて、それらが化学前駆体も他の化学物質も実質的に含まないように精製される。用語「化学前駆体も他の化学物質も実質的に含まない」は、ペプチドが、そのペプチドの合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離されたペプチド調製物を含む。1つの実施形態において、用語「化学前駆体も他の化学物質も実質的に含まない」として、約30%未満(乾燥重量)の化学前駆体または非ペプチド化学物質、より好ましくは、約20%未満の化学前駆体または非ペプチド化学物質、さらにより好ましくは、約10%未満の化学前駆体または非ペプチド化学物質、そして最も好ましくは、約5%未満の化学前駆体または非ペプチド化学物質を有するペプチド調製物が挙げられる。
ポリペプチドの化学合成は、改変アミノ酸または非天然アミノ酸(D−アミノ酸および他の有機低分子を含む)の組込みを容易にする。ペプチド中の1つ以上のL−アミノ酸と、対応するD−アミノ酸アイソフォームとの置換は、酵素的加水分解に対するペプチドの耐性を増大するために、および生物学的に活性なペプチドの1つ以上の特性(すなわち、レセプター結合、機能的強度、または作用期間)を増強するために使用され得る。例えば、Dohertyら,1993.J.Med.Chem.36:2585−2594;Kirbyら,1993.J.Med.Chem.36:3802−3808;Moritaら,1994.FEBS Lett.353:84−88;Wangら,1993.Int.Pept.Protein.Res.42:392−399;FauchereおよびThiunieau,1992.Adv.Drug.Res.23:127−159を参照のこと。
ペプチド配列への共有結合性架橋の導入は、ペプチド骨格を立体配置的および組織分布的に束縛し得る。このストラテジーは、増大した能力、選択性、および安定性を有する融合ポリペプチドのペプチドアナログを開発するのに使用され得る。環状ペプチドのコンホメーションエントロピーはその直鎖状の対応物よりも低いので、特異的なコンホメーションの採用は、非環状アナログよりも環状アナログについて、より小さいエントロピーの減少で生じ得、それによって、結合のための自由エネルギーをより都合良くする。大環状化は、ペプチドN末端とC末端との間、側鎖とN末端またはC末端との間[例えば、pH8.5のK3Fe(CN)6によって](Samsonら,Endocrinology,137:5182−5185(1996))、または2つのアミノ酸側鎖の間でアミド結合を形成することによりしばしば達成される。例えば、DeGrado,Adv Protein Chem,39:51−124(1988)を参照のこと。ジスルフィド架橋はまた、それらの可撓性を減少させるために、直鎖配列に導入される。例えば、Roseら,Adv Protein Chem,37:1−109(1985);Mosbergら,Biochem Biophys Res Commun,106:505−512(1982)を参照のこと。さらに、ペニシラミン(Pen,3−メルカプト−(D)バリン)によるシステイン残基の置換は、いくつかのオピオイドレセプター相互作用の選択性を増大するために使用されている。LipkowskiおよびCarr,Peptides:Synthesis,Structures,and Applications,Gutte編,Academic Press pp.287−320(1995)。
(糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドまたは同一物をコードする核酸を含む薬学的組成物)
本発明の糖タンパク質Ibα融合タンパク質、またはこれらの融合タンパク質をコードする核酸分子(本明細書中で「治療剤」または「活性化合物」ともよばれる)、ならびにそれらの誘導体、フラグメント、アナログ、およびホモログは、投与に適した薬学的組成物中に組込まれ得る。このような組成物は、代表的に、核酸分子、タンパク質、または抗体、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用する場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合し得る、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切なキャリアは、当該分野で標準的な参考文献である、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。このようなキャリアまたは希釈剤の好ましい例として、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油)もまた使用され得る。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤がその活性薬剤に不適合である場合を除いて、この組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物もまた、この組成物中に組込まれる。
本明細書中に開示される活性薬剤はまた、リポソームとして処方され得る。リポソームは、例えば、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるような、当該分野で公知の方法によって調製される。循環時間が増大したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を使用した逆相エバポレーション法により生成され得る。リポソームは、規定された孔サイズのフィルターを通して押出されて、所望の直径を有するリポソームが得られる。
本発明の薬学的組成物は、その意図された投与経路と適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与)、経口投与(例えば、吸入)、経皮投与(すなわち、局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)および張度を調節するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)により調節され得る。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入され得る。
注入用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(ここでは、水溶性)または分散物、および滅菌注入可能溶液または分散物の即座の調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与に関して、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、そして容易な注入性(syringeability)が存在する程度に流動性であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。このキャリアは、例えば、以下を含む溶媒または分散媒体であり得る:水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)ならびにそれらの適切な混合物。適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合には、要求される粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注入可能組成物の吸収期間の延長は、組成物に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含ませることによってもたらされ得る。
滅菌注射可能溶液は、必要量のこの活性化合物(例えば、糖タンパク質Ibα融合タンパク質)を、適切な溶媒中に、上記で列挙される成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、必要な場合、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散物は、活性化合物を、基本の分散媒体と上記で列挙される成分から必要とされる他の成分とを含む滅菌ビヒクル中へ組み込むことによって調製される。滅菌注射可能液剤の調製のための滅菌粉末の場合において、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、予め滅菌濾過されたその溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る。
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤へと圧縮され得る。経口治療投与の目的のために、この活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、そして錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬としての使用のために流体キャリアを使用して調製され得、ここで、この流体キャリア中のこの化合物は、経口的に適用され、そして音を立てられ、そして吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質が、この組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、任意の以下の成分または同様の性質を有する化合物を含み得る:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes));潤滑剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);あるいは香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー)。
吸入による投与について、この化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を含む圧縮容器またはディスペンサー、あるいは噴霧器から、エアロゾル噴霧の形態で送達される。
全身的投与はまた、経粘膜手段または経皮手段により得る。経粘膜投与または経皮投与について、浸透される障壁に適切な浸透剤が、処方物において使用される。このような浸透剤は、一般的に、当該分野で公知であり、そして、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻噴霧または坐剤の使用によって達成され得る。経皮投与については、この活性化合物は、当該分野で一般的に公知である軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリーム剤へ処方される。
この化合物はまた、直腸送達のための坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような従来の坐剤基剤と共に)または貯留(rentention)浣腸の形態で調製され得る。
1つの実施形態において、この活性化合物は、身体からの迅速な排出に対してこの化合物を保護するキャリアを用いて調製され(例えば、制御放出処方物)、これには、移植片およびマイクロカプセル化された送達系が挙げられる。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。このような処方物の調製のための方法は、当業者には明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手され得る。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞へ標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
いくつかの実施形態において、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態で、経口組成物または非経口組成物を処方する。本明細書で使用される投薬単位形態は、処置される被験体に対する単位投薬量として適切な物理的に分離した単位をいい;各単位は、必要とされる薬学的キャリアと関連して所望の治療的効果を生じるように計算された、所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態についての詳細は、この活性化合物の固有の特徴、および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのこのような活性化合物を調合する分野に固有の制限によって決定されるか、あるいはこれらに直接依存する。
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入され得、そして遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、被験体へ、例えば静脈内注射、局所投与(例えば、米国特許第5,328,470号を参照のこと)によって、または定位注射(例えば、Chenら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057を参照のこと)によって送達され得る。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物には、受容可能な希釈剤中の遺伝子治療ベクターが挙げられ得るか、または遺伝子送達ビヒクルが組み込まれる徐放性マトリックスが挙げられ得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞からインタクトで産生され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
所望であれば、徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成形物品(例えば、薄膜、またはマイクロカプセル)の形態にある。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミンとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸のコポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸)は、100日を超える日数にもわたって分子の放出を可能にする一方、特定のヒドロゲルは、より短時間にわたりタンパク質を放出する。
薬学的組成物は、投与のための使用説明書と共に、容器、包装、またはディスペンサーに含まれ得る。
(生物学的系において接着を阻害する方法)
本発明はまた、生物学的系において生物学的組織に対する血球の接着を阻害する方法を含む。この方法は、生物学的系に、生物学的組織への血球の接着を阻害するに十分な量の本発明の融合ポリペプチドを添加する工程を包含する。
血球は、例えば、白血球、血小板または赤血球であり得る。この白血球は、生物学的組織へ接着し得る任意の白血球であり得る。種々の局面において、白血球は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球または好酸球)、単球(すなわち、マクロファージ)またはリンパ球(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、腫瘍浸潤性リンパ球またはナチュラルキラー細胞)である。いくつかの実施形態において、白血球は、β2インテグリン(例えば、Mac−1)を発現する。あるいは、この白血球は、セレクチンリガンドを発現する。
本発明は、生物学的系における生物学的組織へのタンパク質の接着を阻害する方法もまた提供する。この方法は、生物学的系に、このタンパク質の生物学的組織への接着を阻害するに十分な量の本発明の融合ポリペプチドを添加する工程を包含する。
このタンパク質は、膜結合型(例えば、共有結合、非共有結合、イオン結合)であり得る。あるいは、このタンパク質は、可溶性形態で(すなわち、溶液中に)あり得る。このタンパク質は、フォン・ビルブラント因子、トロンビン、糖タンパク質IbαのP−セレクチンである。
本明細書中で使用される場合、「生物学的組織」は、細胞内物質(例えば、細胞外マトリクスタンパク質、ポリサッカリドおよびプロテオグリカン)を含むかまたは含まない、1つ以上の細胞を含むことを意味する。生物学的組織はまた、単独で細胞外マトリクス物質(例えば、内皮下層結合組織マトリクス)を含む。いくつかの局面において、この生物学的組織は、血管内皮である。この生物学的組織は、1つ以上の血小板または白血球であり得る。種々の局面において、この生物学的組織は、GP Ib−IX−V複合体の成分(例えば、糖タンパク質Ibα、Mac−1、Pセレクチン、トロンビンまたはフォン・ビルブラント因子)と複合体化される。「複合体化」は、生物学的組織がGP Ib−IX−V複合体の成分の可溶性形態を含むことを意味する。あるいは、「複合体化」は、生物学的組織が、GP Ib−IX−V複合体の成分を発現する細胞を含むことを意味する。
本明細書中で使用される場合、生物学的系とは、生物学的成分(例えば、細胞、タンパク質、糖質、脂質または核酸)を含む任意の系を含むことを意味する。生物学的系は、インビボ、エキソビボまたはインビトロの系であり得る。
「接着」とは、任意の白血球−生物学的物質の相互作用(例えば、ローリング、安定した結合または特異的相互作用)を含むことを意味する。
血球またはタンパク質の生物学的組織への接着の阻害は、当該分野で公知の方法を使用して測定され得る。例えば、糖タンパク質Ibαの生物学的組織への結合を検出するためのアッセイは、Simonら、J.Exp.Med.192:193−204,2000およびそれに引用された参考文献に記載される。種々の実施形態において、GP Ibα融合タンパク質の結合は、血球またはタンパク質の生物学的組織への結合を少なくとも30%、50%、75%、90%、95%、99%または99.9%阻害する。
接着はまた、生理学的流れの条件より大きい条件または小さい条件(静的な条件、ならびに静的および剪断条件の連続的適用を含む)下で評価され得る。接着は、例えば、比色的に、蛍光的に、フローサイトメトリーにより、または並行プレートフローチャンバアッセイを使用して決定され得る。
本発明はまた、生物学的に活性な治療化合物(本明細書中以降、治療剤)を被験体に投与することにより、被験体における血小板活性化と関連する障害を処置する方法を提供する。あるいは、被験体はまた、以下のアセチルサリチル酸(例えば、アスピリン)、ヘパリン(例えば、未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン)、糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、クロピドグレル(clopidogrel)、P−セレクチンアンタゴニスト、トロンビンインヒビターまたは血栓溶解酵素のうちの1つ以上を投与される。
被験体は、例えば、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ)であり得る。
治療剤としては、例えば、(i)糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド、ならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログのいずれか1つ以上;(ii)糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドに対する抗体;および(iii)糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸、ならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログが挙げられる。
本質的に、血小板活性化に病因学的に関連している任意の障害は、予防または処置に反応しやすいと考えられる。この障害は、例えば、血管炎症、アテローム硬化症、再狭窄(例えば、血管形成に関連する再狭窄)、および/または血栓形成疾患(例えば、アンギナ(すなわち、安定なアンギナおよび不安定なアンギナ)、急性心筋梗塞、発作、静脈血栓症または動脈血栓症)に関連する状態であり得る。